説明

電着塗装装置

【課題】極めてエネルギー効率の良い電着塗装装置を提供する。
【解決手段】電着塗装装置1は、排温水を生ずる工場に設置されており、脱脂液及び化成液の入った脱脂槽2及び化成槽4と、電着液の入った電着槽6と、脱脂液及び化成液を加熱するパイプ12,14,22,24内の加熱媒体を加熱すると共に、電着液を冷却するパイプ16,26内の冷却媒体を冷却するヒートポンプ10と、冷却媒体を排温水により加熱する熱交換機30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理電着塗装工程等に用いられる電着塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗装の前処理は、対象物を、加熱された脱脂液の入った脱脂槽、ないし同様に加熱された皮膜生成液の入った皮膜形成槽(化成槽)に順に浸漬して乾燥し、更に塗装中吸熱される下塗り用電着液の入った下塗り塗装槽(電着槽)に浸漬し通電することで行われる。従来、前処理電着塗装装置においては、脱脂槽・化成槽及び電着槽を個別に蒸気(温水タンク)又は冷水(冷水チラー)により加熱又は冷却していた。しかし、加熱又は冷却の連係は考慮されておらず、エネルギー効率を向上する余地があるものとなっていた。
【0003】
そこで、加熱又は冷却の連係を考慮して、下記特許文献1に記載のような前処理電着塗装装置が提案された。この前処理電着塗装装置は、脱脂液及び皮膜形成液を加熱する一方、下塗り用電着液を冷却するヒートポンプチラーを有しており、各液をそれぞれ独立に加熱・冷却するものに対してエネルギー効率に優れたものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−56980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この電着塗装装置では、単にヒートポンプチラーによって各液を加熱・冷却するに過ぎないため、エネルギー効率の向上度合に限界がある。又、この電着塗装装置では、熱の一部を直接大気中に放出する放出装置を備えることも想定されているが、放出される熱が無駄になっている面もある。
【0006】
そこで、請求項1,12に記載の発明は、極めてエネルギー効率の良い電着塗装装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、前処理液の入った前処理槽と、電着液の入った電着槽と、前記前処理液を加熱する加熱媒体を加熱すると共に、前記電着液を冷却する冷却媒体を冷却するヒートポンプと、前記冷却媒体を加熱する冷却媒体加熱機とを備えたことを特徴とするものであり、請求項2に記載の発明は、上記発明にあって、前記冷却媒体加熱機は、前記冷却媒体と冷却側加熱媒体とを導入し熱交換することで前記冷却媒体を当該冷却側加熱媒体により加熱する熱交換機であることを特徴とものであり、請求項3に記載の発明は、上記発明にあって、前記冷却側加熱媒体は、工場から生ずる排温水、補給水、排気又は排ガスの内の少なくともいずれかを含むものであることを特徴とものであり、請求項4に記載の発明は、上記発明にあって、前記冷却側加熱媒体は、冷却側加熱媒体用ヒートポンプから供給されることを特徴とするものであり、請求項5に記載の発明は、上記発明にあって、前記冷却媒体加熱機は、加熱用ヒートポンプであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項6に記載の発明は、上記目的に加えて、室温や液温に変動があったとしても自動的に効率の良好な運転がなされる電着塗装装置を提供する目的を達成するため、上記発明にあって、前記冷却側加熱媒体及び/又は前記冷却媒体の前記冷却媒体加熱機への流量を調節する流量調節手段と、前記冷却媒体が前記ヒートポンプへ戻る際の温度である冷水戻り温度を検知する温度センサと、前記温度センサと接続され、前記冷水戻り温度に応じて前記流量調節手段における流量を制御する自動制御装置とを更に備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項7に記載の発明は、上記目的に加えて、加熱冷却性能を確保しながら全体としての効率をより一層向上する目的を達成するため、上記発明にあって、前記ヒートポンプが複数台設置されており、前記自動制御装置は、少なくとも一部の所定の前記ヒートポンプにおける、前記加熱媒体が前記ヒートポンプから供給される際の温度である温水供給温度を検知する温水供給温度センサ、前記加熱媒体が前記ヒートポンプへ戻る際の温度である温水戻り温度を検知する温水戻り温度センサ、及び前記冷却媒体が前記ヒートポンプから供給される際の温度である冷水供給温度を検知する冷水供給温度センサ、並びに前記加熱媒体の流量を検知する流量計と接続されており、前記温水供給温度センサから得た前記温水供給温度と前記温水戻り温度センサから得た前記温水戻り温度の差、及び前記流量計から得た前記流量から把握した現在の加熱能力と、前記冷水供給温度センサから得た前記冷水供給温度から把握した定格運転時の加熱能力とから、当該ヒートポンプにおける負荷率を把握して、当該負荷率が設定値以下である場合に、前記ヒートポンプの一部につき運転を停止する制御を行い、当該ヒートポンプの運転停止後、前記温水供給温度センサから得た前記温水供給温度が設定値以下である場合に、停止した前記ヒートポンプにつき運転を再開する制御を行うことを特徴とするものである。
【0010】
請求項8に記載の発明は、上記目的に加えて、ヒートポンプを状況に応じて効率の良好な運転モードに切り替え可能として、全体としての効率をも一層向上する目的を達成するため、上記発明にあって、前記前処理液を加熱する第2加熱媒体を供給可能な加熱機を更に備え、前記ヒートポンプは、前記加熱媒体を冷却可能な冷却機と接続されており、前記自動制御装置は、前記冷水戻り温度センサから得た前記冷水戻り温度が所定値以上である場合に、前記加熱媒体を前記冷却機に供給して冷却された前記加熱媒体を受けると共に、前記加熱機により前記第2加熱媒体を供給して前記加熱媒体に代わり前記前処理液の加熱を行うことを特徴とするものである。
【0011】
請求項9に記載の発明は、上記目的に加えて、ヒートポンプを消費電力に応じて効率の良い運転に切り替え可能として、装置全体の消費電力が契約電力等を上回らないようにする目的を達成するため、上記発明にあって、前記前処理液を加熱する第2加熱媒体を供給可能な加熱機と、消費電力を検知する消費電力計とを更に備え、前記ヒートポンプは、前記加熱媒体を冷却可能な冷却機と接続されており、前記自動制御装置は、前記消費電力計と接続されており、前記消費電力計から得た消費電力が設定値以上である場合に、前記加熱媒体を前記冷却機に供給して冷却された前記加熱媒体を受けると共に、前記加熱機により前記第2加熱媒体を供給して前記加熱媒体に代わり前記前処理液の加熱を行うことを特徴とするものである。
【0012】
請求項10に記載の発明は、上記目的に加えて、ヒートポンプからの加熱媒体による加熱が不足しても加熱手段によりこれを補充可能とすることで全体としての加熱不足が防止されるようにする目的を達成するため、上記発明にあって、前記ヒートポンプからの前記加熱媒体を貯蔵する温水タンクと、当該温水タンク内の前記加熱媒体を加熱する加熱手段とを備え、前記温水タンクからの前記加熱媒体により前記前処理液を加熱する第2加熱媒体が加熱されることを特徴とする。
【0013】
請求項11に記載の発明は、上記目的に加えて、ヒートポンプの他に自動制御装置を設けることなく、排温水等を用いた極めて効率の良好な前処理液の加熱ないし電着液の冷却を、低コスト・低設備投資にて導入する目的を達成するため、上記発明にあって、前記ヒートポンプを複数備えていると共に、前記電着液を冷却する第4冷却媒体を供給可能な第2冷却機を備えており、更に一部の前記ヒートポンプの供給する前記冷却媒体につき、前記冷却側加熱媒体との熱交換機側と前記電着液の冷却側とで切り替え可能とし、前記前処理液の加熱負荷が比較的に軽い一方前記電着液の冷却負荷が比較的に重い場合に、前記一部のヒートポンプの前記冷却媒体で前記電着液を冷却する一方、残余の前記ヒートポンプの冷却媒体に前記冷却側加熱媒体を適用して、全ての前記ヒートポンプで前記前処理液を加熱し、前処理液の加熱前記負荷が比較的に重い一方前記電着液の冷却負荷が比較的に軽い場合に、前記一部のヒートポンプの前記冷却媒体にも前記冷却側加熱媒体を適用して、全ての前記ヒートポンプで前記前処理液を加熱し、前記第2冷却機の前記第4冷却媒体で電着液を冷却することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項12に記載の発明は、前処理液の入った前処理槽と、電着液の入った電着槽と、前記電着液を冷却する第1冷却媒体と、前記前処理液を加熱する加熱媒体を加熱すると共に、前記第1冷却媒体を冷却する第2冷却媒体を冷却するヒートポンプと、前記第1冷却媒体を第3冷却媒体により冷却するチラーと、前記第2冷却媒体と冷却側加熱媒体とを導入し熱交換することで前記第2冷却媒体を当該冷却側加熱媒体により加熱する冷却媒体加熱機とを備えたことを特徴とするものであり、請求項13に記載の発明は、上記発明にあって、前記冷却媒体加熱機は、前記第2冷却媒体と冷却側加熱媒体とを導入し熱交換することで前記第2冷却媒体を当該冷却側加熱媒体により加熱する熱交換機であることを特徴とするものであり、請求項14に記載の発明は、上記発明にあって、前記冷却側加熱媒体は、工場から生ずる排温水、補給水、排気又は排ガスの内の少なくともいずれかを含むものであることを特徴とものであり、請求項15に記載の発明は、上記発明にあって、前記冷却側加熱媒体は、冷却側加熱媒体用ヒートポンプから供給されることを特徴とするものであり、請求項16に記載の発明は、上記発明にあって、前記冷却媒体加熱機は、加熱用ヒートポンプであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項17に記載の発明は、上記目的に加えて、自動的に効率の良好な運転がなされる電着塗装装置を提供する目的を達成するため、上記発明にあって、前記冷却側加熱媒体及び/又は前記冷却媒体の前記冷却媒体加熱機への流量を調節する第1流量調節手段と、前記第2冷却媒体が前記ヒートポンプへ戻る際の温度である冷水戻り温度を検知する温度センサと、前記チラーからの前記第3冷却媒体の流量を調節する第2流量調節手段と、前記温度センサと接続され、前記冷水戻り温度に応じて前記第1流量調節手段及び第2流量調節手段における流量を制御する自動制御装置とを更に備えたことを特徴とするものである。
【0016】
又、本発明の一つは、上記目的に加えて、加熱冷却性能を確保しながら全体としての効率をより一層向上する目的を達成するため、上記発明にあって、前記ヒートポンプが複数台設置されており、前記自動制御装置は、少なくとも一部の所定の前記ヒートポンプにおける、前記加熱媒体が前記ヒートポンプから供給される際の温度である温水供給温度を検知する温水供給温度センサ、前記加熱媒体が前記ヒートポンプへ戻る際の温度である温水戻り温度を検知する温水戻り温度センサ、及び前記第2冷却媒体が前記ヒートポンプから供給される際の温度である冷水供給温度を検知する冷水供給温度センサ、並びに前記加熱媒体の流量を検知する流量計と接続されており、前記温水供給温度センサから得た前記温水供給温度と前記温水戻り温度センサから得た前記温水戻り温度の差、及び前記流量計から得た前記流量から把握した現在の加熱能力と、前記冷水供給温度センサから得た前記冷水供給温度から把握した定格運転時の加熱能力とから、当該ヒートポンプにおける負荷率を把握して、当該負荷率が設定値以下である場合に、前記ヒートポンプの一部につき運転を停止する制御を行い、当該ヒートポンプの運転停止後、前記温水供給温度センサから得た前記温水供給温度が設定値以下である場合に、停止した前記ヒートポンプにつき運転を再開する制御を行うことを特徴とするものである。
【0017】
請求項18に記載の発明は、上記目的に加えて、ヒートポンプをより効率の良い運転に切り替え可能として、全体としての効率をも一層向上する目的を達成するため、上記発明にあって、前記第1冷却媒体が前記電着槽側へ戻る際の温度である電着液戻り温度を検知する、前記自動制御装置と接続された電着液戻り温度センサを更に備え、前記自動制御装置は、前記第2流量調節手段における流量が設定値以下であり、且つ電着液戻り温度センサから得た電着液戻り温度が設定値以下である場合に、前記ヒートポンプの第2冷却媒体に係る冷却後の温度を上昇することを特徴とするものである。
【0018】
請求項19に記載の発明は、上記目的に加えて、ヒートポンプを状況に応じて効率の良好な運転モードに切り替え可能として、全体としての効率をも一層向上する目的を達成するため、上記発明にあって、前記前処理液を加熱する第2加熱媒体を供給可能な加熱機を更に備え、前記ヒートポンプは、前記加熱媒体を冷却可能な冷却機と接続されており、前記自動制御装置は、前記冷水戻り温度センサから得た前記冷水戻り温度が所定値以上であり且つ/又は前記第2流量調節手段における流量が設定値以上である場合に、前記加熱媒体を前記冷却機に供給して冷却された前記加熱媒体を受けると共に、前記加熱機により前記第2加熱媒体を供給して前記加熱媒体に代わり前記前処理液の加熱を行うことを特徴とするものである。
【0019】
請求項20に記載の発明は、上記目的に加えて、ヒートポンプを消費電力に応じて効率の良い運転に切り替え可能として、装置全体の消費電力が契約電力等を上回らないようにする目的を達成するため、上記発明にあって、前記前処理液を加熱する第2加熱媒体を供給可能な加熱機と、消費電力を検知する消費電力計とを更に備え、前記ヒートポンプは、前記加熱媒体を冷却可能な冷却機と接続されており、前記自動制御装置は、前記消費電力計と接続されており、前記消費電力計から得た消費電力が設定値以上である場合に、前記加熱媒体を前記冷却機に供給して冷却された前記加熱媒体を受けると共に、前記加熱機により前記第2加熱媒体を供給して前記加熱媒体に代わり前記前処理液の加熱を行うことを特徴とするものである。
【0020】
請求項21に記載の発明は、上記目的に加えて、ヒートポンプからの加熱媒体による加熱が不足しても加熱手段によりこれを補充可能とすることで全体としての加熱不足が防止されるようにする目的を達成するため、上記発明にあって、前記ヒートポンプからの前記加熱媒体を貯蔵する温水タンクと、当該温水タンク内の前記加熱媒体を加熱する加熱手段とを備え、前記温水タンクからの前記加熱媒体により前記前処理液を加熱する第2加熱媒体が加熱されることを特徴とする。
【0021】
請求項22に記載の発明は、上記目的に加えて、ヒートポンプの他に自動制御装置を設けることなく、排温水等を用いた極めて効率の良好な前処理液の加熱ないし電着液の冷却を、低コスト・低設備投資にて導入する目的を達成するため、上記発明にあって、前記ヒートポンプを複数備えていると共に、前記電着液を冷却する第4冷却媒体を供給可能な第2冷却機を備えており、更に一部の前記ヒートポンプの供給する前記冷却媒体につき、前記冷却側加熱媒体との熱交換機側と前記電着液の冷却側とで切り替え可能とし、前記前処理液の加熱負荷が比較的に軽い一方前記電着液の冷却負荷が比較的に重い場合に、前記一部のヒートポンプの前記冷却媒体で前記電着液を冷却する一方、残余の前記ヒートポンプの冷却媒体に前記冷却側加熱媒体を適用して、全ての前記ヒートポンプで前記前処理液を加熱し、前処理液の加熱前記負荷が比較的に重い一方前記電着液の冷却負荷が比較的に軽い場合に、前記一部のヒートポンプの前記冷却媒体にも前記冷却側加熱媒体を適用して、全ての前記ヒートポンプで前記前処理液を加熱し、前記第2冷却機の前記第4冷却媒体で電着液を冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、前処理液の加熱と電着液の冷却をヒートポンプで一括して行い、工場の排温水や別個のヒートポンプの温水等(冷却側加熱媒体)と電着液の冷却媒体とで熱交換を行う。従って、冷却側加熱媒体の冷媒への適用により加熱量に応じた過冷却を防止することができ、極めて効率の良い安定したヒートポンプの動作を確保することができる、という効果を奏し、冷却側加熱媒体として排温水を用いた場合には更に排温水の有するエネルギーを有効活用して排温水を冷却することもできる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1形態に係る電着塗装装置のブロック図である。
【図2】図1の電着塗装装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2形態に係る電着塗装装置のブロック図である。
【図4】図3の電着塗装装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3形態に係る電着塗装装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第5形態に係る電着塗装装置のブロック図である。
【図7】図6の電着塗装装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第6形態に係る電着塗装装置のブロック図である。
【図9】図8の電着塗装装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第7形態に係る電着塗装装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第8形態に係る電着塗装装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第9形態に係る電着塗装装置を示すブロック図であり、(a)は夏季等におけるものであって、(b)は冬季等におけるものである。
【図13】本発明の第10形態に係る電着塗装装置の、夏季における運転状態を示すブロック図ないし表である。
【図14】図13の電着塗装装置の、中間季における運転状態を示すブロック図ないし表である。
【図15】図13の電着塗装装置の、冬季における運転状態を示すブロック図ないし表である。
【図16】従来方式に係る電着塗装装置の、夏季における運転状態を示すブロック図ないし表である。
【図17】図16の電着塗装装置の、中間季における運転状態を示すブロック図ないし表である。
【図18】図16の電着塗装装置の、冬季における運転状態を示すブロック図ないし表である。
【図19】文献方式に係る電着塗装装置の、夏季における運転状態を示すブロック図ないし表である。
【図20】図19の電着塗装装置の、中間季における運転状態を示すブロック図ないし表である。
【図21】図19の電着塗装装置の、冬季における運転状態を示すブロック図ないし表である。
【図22】本発明・従来方式・文献方式に係る各電着塗装装置の、CO排出量やコスト等の算出状況を示す表である。
【図23】本発明・従来方式・文献方式に係る各電着塗装装置の、CO排出量やコスト等を示す表である。
【図24】本発明の第11形態に係る電着塗装装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態の例につき、適宜図面に基づいて説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。
【0025】
[第1形態]
図1は第1形態に係る電着塗装装置1の模式図であって、電着塗装装置1は、ここでは自動車のボディーを電着塗装する際の前処理工程に用いられる。なお、電着塗装装置1の塗装対象につき、自動車のパーツや、建設土木機械、特殊車両、鋼製家具、鋼製建具、自動販売機、重電機器、農業機械、プレハブ鉄骨、ハードディスクドライブ、マンホール蓋、空調機等とすることができる。
【0026】
電着塗装の前処理にあっては、塗装の質を確保するため、前処理電着塗装を行う前にボディーを脱脂し、下地の皮膜を化成する。これに応じて、電着塗装装置1は、それぞれボディーが浸漬可能である、脱脂液の入った脱脂槽2、化成液の入った化成槽4、及び電着液の入った電着槽6を備えている。なお、脱脂液及び化成液を併せて前処理液とし、脱脂槽2及び化成槽を併せて前処理槽とする。
【0027】
前処理液である脱脂液及び化成液は常温(室温)に比して(以下同様)高温で作用する一方、前処理電着塗装は通電による発熱を抑える必要があるため、脱脂液及び化成液は加熱され、電着液は冷却される。ここでは、脱脂液が摂氏(以下同様)60度前後、化成液が40度前後、電着液が30度前後に保持される。なお、適宜予備洗浄や予備脱脂、表面調整等の工程ないし槽を追加して良く、予備洗浄槽や予備脱脂槽等の加熱も共に行うのであれば、脱脂槽2ないし化成槽4と同様に実行することができる。この場合、前処理液に予備洗浄液や予備脱脂液等が含まれ、前処理槽に予備洗浄槽や予備脱脂槽等が含まれる。
【0028】
そして、電着塗装装置1は、このような加熱及び冷却を一括して行う排熱回収型のヒートポンプ10を備えている。ヒートポンプ10は、冷水を生成しながらその際発生する排熱を利用して温水を同時に生成しそれぞれ外部に供給するものであり、ここでは7度〜30度程度の冷水と40度〜70度程度の温水を同時に供給可能である近時開発されたもの(株式会社神戸製鋼所製高効率高温取出機HEM150HR)を用いる。ヒートポンプ10は、温冷水が同時に供給され十分に吸排熱されて常温で戻り再度温冷水とされる特性上、温冷水のバランスをとる必要があり、高温水を多量に取り出すには、高温水の熱が十分に対象へ吸収されて戻り、又低温水も多量に取り出された上で十分に熱を受けて戻る必要がある。なお、ヒートポンプ10として、最高80度の温水を供給可能であるものや、30度の冷水(排温水)で95度の温水を供給可能なもの等を用いても良い。
【0029】
ヒートポンプ10は、脱脂液及び化成液を加熱するため脱脂槽2ないし化成槽4に加熱媒体としての温水を供給するパイプ12,14を有すると共に、電着液を冷却するため電着槽6に冷却媒体としての冷水を供給するパイプ16を有する。又、脱脂槽2ないし化成槽4から水をヒートポンプ10に戻すパイプ22,24を有すると共に、電着槽6から水をヒートポンプ10に戻すパイプ26を有する。なお、各パイプには、図示しない熱交換機やタンクが介装されることがある。又、パイプ12,14を途中で一本にまとめヒートポンプ10に接続する等、パイプの配置等を適宜変更して良い。
【0030】
そして、電着塗装装置1は、ここではボディーのプレスや溶接等も行う工場に設置されている。当該工場からは、コンプレッサーの冷却水やスポット溶接機の冷却水といった排温水が拠出される。即ち、電着塗装装置1は、冷却側加熱媒体としての排温水を生ずる工場に設置されている。なお、上記に例示した塗装対象を含め、一般に電着塗装を行うのは他の機器も設置された排温水の存在する工場である。
【0031】
更に、電着塗装装置1における電着槽6からヒートポンプ10へのパイプ26には、熱交換機30が設置され、この熱交換機30には、前記排温水を導入するパイプ32と、熱交換後の排温水を導出するパイプ34とが接続されている。パイプ32には、流量調節手段としての流量調節弁36が設けられる。なお、流量調節手段として、流量調節弁36の他、吐出量を調整するポンプやインバーター、あるいはこれらの組合せ等を採用しても良い。
【0032】
このような電着塗装装置1は、次に説明するように動作する。
【0033】
例えば脱脂槽2及び化成槽4の加温負荷(加熱負荷)が併せて800kW(キロワット)であり、電着槽6の冷却負荷が300kWであったとする。この場合、ヒートポンプ10からは温水800kWの供給が必要であるが、この供給のため電気入力に200kWを要し、又冷水600kWが同時に供給される。温水800kWはパイプ12,14を通じ脱脂槽2ないし化成槽4に供給され、脱脂液ないし化成液を必要十分に加熱し、常温水となってパイプ22,24からヒートポンプ10に循環する。一方、冷水600kWはパイプ16を通じ電着槽6に供給され、電着液を十分に冷却するが、なお300kWの冷却が可能な状態でパイプ26に入る。そして、この冷却水は熱交換機30内で排温水のパイプ32の周囲に達し、熱交換機30の作用によって排温水の熱を300kW分奪い、常温となってヒートポンプ10に循環する。このような熱交換により排温水も冷却される。
【0034】
又、加温負荷や冷却負荷の変動には、ヒートポンプ10や流量調節弁36の調整によって対処する。これらの調整は、パイプ26のヒートポンプ10接続部付近の温度(冷水戻り温度)を検知するセンサや、パイプ22,24のヒートポンプ10接続部付近の温度(温水戻り温度)を把握するセンサと接続された図示しない自動制御装置により自動的に行われる。なお、自動制御装置は、ヒートポンプ10や流量調節弁36にそれぞれ配備される制御装置から構成するようにして良いし、独立した別体のものとしても良い。又、温度センサは、各槽あるいは他のパイプや熱交換機30の少なくともいずれかに配して良いし、パイプ26の電着槽6側に配して良い。更に、温度センサは、ヒートポンプ10の温水負荷追従装置に具備されたものとする代わりに、パイプ22,24の脱脂槽2,化成槽4側に配しても良い。
【0035】
即ち、図2に示すように、加温負荷を基準に温水に追従するように冷水を出し排温水の熱を回収する運転を許可していると自動制御装置がパイプ26の温度センサを監視する(ステップS1でYes)。この監視において、冷水戻り温度が設定値を下回ると(ステップS2でYes)、冷却負荷が比較的に軽くなっているので、パイプ26の冷水温度が設定値に上がるまで流量調節弁36を徐々に開放する(ステップS3〜S5)。一方、冷水戻り温度が設定値を上回ると(ステップS2でNo、ステップS6でYes)、冷却負荷が比較的に重くなっているので、パイプ26の冷水温度が設定値に下がるまで流量調節弁を徐々に絞る(ステップS7〜S9)。
【0036】
例えば、夏季等で加温負荷が比較的に軽い(600kW)場合、自動制御装置はパイプ22,24の温度センサによる温度上昇によってこれを把握し、ヒートポンプ10から出る温水の熱量を少なくする(600kW)。又、これに応じて冷水の逆の熱量が減ると(450kW)、上述のように流量調節弁36が絞られて排温水との熱交換量が相応に減らされる(150kW)。
【0037】
一方、冬季等で加温負荷が比較的に重い場合、自動制御装置はパイプ22,24の温度センサによる所定値からの温度不足によってこれを把握し、ヒートポンプ10から出る温水の熱量を増やし、これに応じて冷水の逆の熱量も増えるので、上述のように流量調節弁36を開放してパイプ26における熱交換の量を増やす。
【0038】
以上の電着塗装装置1は、排温水を生ずる工場に設置されており、脱脂液及び化成液の入った脱脂槽2及び化成槽4と、電着液の入った電着槽6と、脱脂液及び化成液を加熱するパイプ12,14,22,24内の加熱媒体を加熱すると共に、電着液を冷却するパイプ16,26内の冷却媒体を冷却するヒートポンプ10と、冷却媒体を排温水により加熱する熱交換機30とを備えている。
【0039】
従って、加温負荷に合わせてヒートポンプ10を作動させようとするが、冷却負荷が軽すぎで冷却水が常温で戻らず、加温水と冷却水のバランスがとれずにヒートポンプ10が停止してしまう事態を回避することができ、加熱ないし冷却をひとつのヒートポンプ10でまかなうことができる。又、ヒートポンプ10を冷却負荷に合わせて作動させ、不足する加温負荷に蒸気発生装置等の他熱源で対処する方式に比して、他熱源を設置する必要がなくシンプルな構成としてランニングコストや故障発生率を低減することができるし、他熱源駆動分のエネルギーが不要であって元来そのまま排熱されていた排温水のエネルギーを有効利用することができ、省エネルギー性に優れた電着塗装装置1とすることができ、更に他熱源駆動による二酸化炭素の排出を削減することもできる。
【0040】
なお、工場の排温水を脱脂槽2ないし化成槽4の加熱に用いる方式が考えられなくもないが、排温水と脱脂液ないし化成液の温度が同等であり有効に加熱することができない。これに対し、電着塗装装置1では、温度の低い冷却水に対して工場の排温水を適用するので、有効に排温水の熱を利用することができる。
【0041】
又、排温水の熱交換機30への流量を調節する流量調節弁36と、パイプ26内の冷却媒体がヒートポンプ10へ戻る際の温度である冷水戻り温度を検知する温度センサと、この温度センサと接続され、冷水戻り温度に応じて流量調節弁36の開度を制御して流量調節弁36における流量を制御する自動制御装置とを更に備えている。
【0042】
従って、ヒートポンプ10にとって適した冷却媒体の戻り温度ないし熱量となるように、工場の排温水との熱交換量を自動的に調整することができ、効率の良い加熱ないし冷却を自動的に行うことができる。
【0043】
[第2形態]
図3は第2形態に係る電着塗装装置101の模式図であって、電着塗装装置101は、電着槽とヒートポンプの間の構成以外は第1形態と変更例も含め同様である。
【0044】
電着塗装装置101は、パイプ16に流量調節弁102を有すると共に、パイプ16,26を結ぶ熱交換機104を備える。熱交換機104には、電着槽6の冷却部からのパイプ116が導入されるとともに、熱交換後の冷却水を電着槽6へ導出するパイプ126が配置されている。パイプ126には、熱交換機130が介装され、熱交換機130には、チラーとしての冷水チラー131からのパイプ132と、冷水チラー131へ戻るパイプ134とが接続されている。又、パイプ132には、流量調節弁136が介装されている。なお、チラーとして、クーリングタワーを用いても良い。
【0045】
電着塗装装置101の自動制御装置は、パイプ26の温度センサの監視に応じて排温水の流量調節弁36あるいは流量調節弁102を開閉可能であり、パイプ126の温度センサの監視に応じて排温水の流量調節弁136を開閉可能である。なお、パイプ126の温度センサは、熱交換機104側に設けても良いし、電着槽6側に設けても良い。
【0046】
このような電着塗装装置101は、次に説明するように動作する。
【0047】
電着塗装装置101では、ヒートポンプ10の他に冷水チラー131が設けられると共に、それぞれに電着液冷却器に対するパイプ回路、熱交換機30,130及び温度センサが設けられ、ヒートポンプ10の冷水が優先的に電着液冷却器に適用され、その後冷水チラー131の冷水が電着液冷却器に適用される。
【0048】
電着塗装装置101の自動制御装置は、第1形態と同様に流量調節弁36,102を制御してヒートポンプ10への冷水の戻り温度(熱量)を制御すると共に、図4に示すように、流量調節弁136を制御してパイプ126の電着槽6側の冷水温度(最終電着液戻り温度)を制御する。
【0049】
即ち、自動制御装置は、電着槽6に対する冷却運転中であれば(ステップS101でYes)、最終電着液戻り温度を温度センサにより把握し、当該温度が設定値未満であれば(ステップS102でYes)、流量調節弁136を徐々に絞り(ステップS103〜S105)、冷水チラー131による冷却量を減らして当該温度が設定値に近づくようにする。
【0050】
一方、最終電着液戻り温度が設定値を上回れば(ステップS102でNo、S106でYes)、流量調節弁136を徐々に開放し(ステップS107〜S109)、冷水チラー131による冷却量を増やして当該温度が設定値に近づくようにする。
【0051】
例えば、脱脂槽2及び化成槽4の加温のためヒートポンプ10はパイプ12,14に70度の温水を供給し、加熱後パイプ22,24から65度で戻っている一方、冷水がパイプ16において20度で供給され、熱交換機104,30を経て25度で戻っているとすると、パイプ116で冷却水は29度であるが、熱交換機104を介したヒートポンプ10の冷水の適用により当該冷却水が冷却され、更に熱交換機130を介した冷水チラー131の冷水の適用により当該冷却水が冷却されて、27度となり電着槽6に戻り、電着液が28度±1度の範囲に保持される。このとき、ヒートポンプ10の冷水を優先して電着液の冷却水に適用すると共に、ヒートポンプ10による温水の効率良い供給のため冷水を排温水で加温することで、ヒートポンプ10の効率につき優先的に配慮した状態での運転がなされる。又、最終的に電着液の冷却液は冷水チラー131の冷水により冷却度合を調整され、電着液の温度を適正な範囲に保持する。
【0052】
以上の電着塗装装置101では、排温水を生ずる工場に設置されており、脱脂液及び化成液の入った脱脂槽2及び化成槽4と、電着液の入った電着槽6と、この電着液を冷却するパイプ116,126内の第1冷却媒体と、前処理液を加熱する加熱媒体を加熱すると共に、第1冷却媒体を冷却するパイプ16,26内の第2冷却媒体を(熱交換機104を介して)冷却するヒートポンプと、第1冷却媒体をパイプ132内の第3冷却媒体により(熱交換機130を介して)冷却する冷水チラー131と、第2冷却媒体を排温水により加熱する熱交換機30とを備えている。
【0053】
従って、ヒートポンプ10側と冷水チラー131側とで個別に冷水温度を設定することができ、ヒートポンプ10の冷水をまず優先して適用し、補助的に冷水チラー131の冷水を適用することで、ヒートポンプ10にとって効率の良い状態での運転を確保することができる。又、各槽を独立して加熱・冷却していた従来の電着塗装装置からの置き換えの際余る冷水チラーを、前述のきめ細かい冷却制御のために有効活用することができる。
【0054】
又、排温水の熱交換機30への流量を調節する第1の流量調節弁36と、パイプ26内の第2冷却媒体がヒートポンプ10へ戻る際の温度である冷水戻り温度を検知する温度センサと、冷水チラー131からのパイプ132内の第3冷却媒体の流量を調節する第2の流量調節弁136と、温度センサと接続され、冷水戻り温度に応じて第1の流量調節弁36及び第2の流量調節弁136の開度を制御して第1の流量調節弁36及び第2の流量調節弁136における流量を制御する自動制御装置とを更に備えている。
【0055】
従って、ヒートポンプ10にとって適した冷却媒体の戻り温度ないし熱量となるように、工場の排温水との熱交換量を自動的に調整することができ、更に冷水チラー131による第1冷却媒体の調整的な冷却を実現して、ヒートポンプ10の運転を極めて効率の良い安定したものとしながら電着液の確実な冷却を図ることができる。
【0056】
[第3形態]
図5は第3形態に係る電着塗装装置の動作を示すフローチャートであって、当該電着塗装装置の構成は、第2形態の電着塗装装置101と同様であり、流量調節弁136の制御のみ相違する(図4に示す制御が図5に示す制御に代わる)。
【0057】
即ち、自動制御装置は、電着槽6に対する冷却運転中であれば(ステップS151でYes)、流量調節弁136の開度が上側設定値(例えば70%)を上回るかを判定し(ステップS152)、上回れば(Yes)、温度センサにより把握したヒートポンプ10の冷水戻り温度が下限値(例えば17度)を上回るか否か判定する(ステップS153)。下限値を上回れば(Yes)、流量調節弁136を開度65%以下となるまで徐々に絞り(ステップS154〜S157)、冷水チラー131による冷却量を減らしてヒートポンプ10の冷水による冷却を促進する。自動制御装置は、ヒートポンプ10の冷水戻り温度が下限設定値を上回る限り、流量調節弁136を徐々に絞り続ける(ステップS156)。
【0058】
一方、自動制御装置は、ステップS152で流量調節弁136の開度が上側設定値を上回らない(No)と判定すると、流量調節弁136の開度が下側設定値(例えば40%)未満であるかを判定し(ステップS158)、下側設定値未満であれば(Yes)、ヒートポンプ10の冷水戻り温度が上限値(例えば35度)未満か否か判定する(ステップS159)。上限値未満であれば、流量調節弁136を開度55%以上となるまで徐々に開放し(ステップS160〜S163)、冷水チラー131による冷却量を増やして電着槽6の適正な冷却に配慮する。自動制御装置は、ヒートポンプ10の冷水戻り温度が上限設定値未満である限り、流量調節弁136を徐放する(ステップS162)。
【0059】
以上の第3形態の電着塗装装置は、第2形態と同様に成り、特にヒートポンプ10の冷水戻り温度を用いて流量調節弁36のみならず流量調節弁136をも制御している。
【0060】
従って、第2形態の電着塗装装置101と同様の効果を奏し、特にヒートポンプ10の運転状態(冷水戻り温度)に応じて冷水チラー131の冷却水に係る流量調節弁136の開度を制御して、電着槽6を確実に冷却しながら、ヒートポンプ10の良好な状態(冷水戻り温度が適正な範囲となる状態)を冷水チラー131の流量調節弁136の調整により自動的に確保することができる。
【0061】
[第4形態]
第4形態に係る電着塗装装置は、第2形態・第3形態と同様に成るが、冷水チラー131に余力がある場合に、ヒートポンプ10をより効率の良い運転に切り替える動作が異なる。
【0062】
即ち、自動制御装置は、流量調節弁136の開度が所定値(例えば40%、以下同様)以下であり、電着液戻り温度が所定範囲(28度±1度)内に収まっている状態が所定時間(30分間以上)継続していることを把握すると、ヒートポンプ10の冷水温度が上昇するように(15度から20度)制御し、ヒートポンプ10の加熱能力やCOP(Coefficient of Performance、効率)が上昇するようにする(加熱能力373キロワット(kW)から426kW、COP2.94から3.37)。このとき、例えば電着液の冷却ないし排温水の調整された適用を経て20度でヒートポンプ10へ戻っていたのが、25度で戻るようになる。又、ヒートポンプ10の冷水温度が上昇し、ヒートポンプ10の効率が良くなるものの電着液の冷却度合が低下するので、その分流量調節弁136の開度を上げて(60%)、電着液戻り温度がなお所定範囲に収まるように制御する。
【0063】
以上の第4形態の電着塗装装置は、第2形態や第3形態と同様に成り、特に自動制御装置は、冷水チラー131に余力がある場合に、ヒートポンプ10につき冷水供給温度(第2冷却媒体の冷却後の温度)を上げる制御を行う。
【0064】
従って、第2形態や第3形態と同様の効果を奏し、特にヒートポンプ10につき一層効率良く温水を送出する運転となるよう状況に応じて切り替えることができて、電着塗装装置の冷却・加熱性能を十分なものとしながら、全体の効率を良好なものとすることができる。
【0065】
[第5形態]
図6に示すように、第5形態に係る電着塗装装置201は、第1形態に対しヒートポンプを1台追加して複数としたものとなっている。
【0066】
即ち、ヒートポンプ210,211が設置されており、ヒートポンプ210から脱脂槽2ないし化成槽4に対して温水供給用のパイプ212,214が配置されると共に、ヒートポンプ211から脱脂槽2ないし化成槽4に対して温水供給用のパイプ213,215が配置される。又、脱脂槽2ないし化成槽4からヒートポンプ210へ至る温水戻り用のパイプ222,224が配置されると共に、脱脂槽2ないし化成槽4からヒートポンプ211へ至る温水戻り用のパイプ223,225が配置される。
【0067】
更に、ヒートポンプ210から電着槽6に対して冷水供給用のパイプ216が配され、ヒートポンプ211から電着槽6に対して冷水供給用のパイプ217が配される。又、電着槽6からヒートポンプ210に対して冷水戻り用のパイプ226が配され、電着槽6からヒートポンプ211に対して冷水戻り用のパイプ227が配される。そして、パイプ226には、排温水案内用のパイプ32に対して熱交換をする熱交換機230が設けられ、パイプ227には、パイプ32と同様に設けられた別系統に係る排温水案内用のパイプ232に対して熱交換をする熱交換機231が設けられる。なお、パイプ32から熱交換機230を経た排温水はパイプ34へ至り、パイプ232から熱交換機231を経た排温水はパイプ234へ至る。又、パイプ32には流量調節弁36が設けられ、パイプ232には流量調整弁236が設けられる。
【0068】
図7は、電着塗装装置201の動作を示すフローチャートである。電着塗装装置201の自動制御装置は、双方のヒートポンプ210,211の運転中、一方のヒートポンプ211の負荷率を取得し、設定値(50%)以下であって運転効率が悪いと判断すると、ヒートポンプ210の負荷率が上昇するように運転すると共にヒートポンプ211の運転を停止して減台をする動作を実行する。
【0069】
即ち、温水に追従するように冷水を出す運転を許可していると(ステップS251でYes)、自動制御装置は、ヒートポンプ211の負荷率を算出し、設定値未満であるか判断する(ステップS252)。
【0070】
ここで、負荷率の算出は、次のように行う。即ち、負荷率は現在の加熱能力を定格(100%)運転時の加熱能力で割ることで得られるところ、定格加熱能力については冷水供給温度から対応表により取得する。冷水供給温度は自動制御装置と接続され各パイプ216,217に配置されたセンサにより把握し、対応表は自動制御装置の有する記憶装置にデータベースとして記憶される。対応表の例として、12度で349kW、15度で373kW、20度で426kW、25度で485kW、30度で556kWというものが挙げられ、対応表における温度に把握した温度がない場合には、最も近い温度におけるものを定格加熱能力とする等する。そして、例えば冷水が12度で供給され15度で戻っているとすると、加熱能力は12度に対応する349kWであるとされる。
【0071】
一方、現在の加熱能力については、温水の出入口温度差と温水流量を把握し、これらの値を乗ずることで算出する。温水の出入口温度は、パイプ213・215,223・225に配置した温度センサにより把握し、温水流量は、同様に配置した流量計により把握する。例えば、温水の出口温度(供給温度)はパイプ213・215の温度センサにより70度と把握され、温水の入口温度(戻り温度)はパイプ223・225の温度センサにより67度と把握されたとすると、出入口温度差は70−67=3度と把握される。又、温水流量は例えば1000立方メートル毎分であるとする。
【0072】
すると、現在の加熱能力は、3(度)×1000(立方メートル毎分)×60(分)/860(キロカロリー/kW)=209(kW)となる。よって、負荷率は209/349=60%と算出される。
【0073】
このように算出された負荷率が設定値未満であると判断されると(ステップS252でYes)、他のヒートポンプ210が運転中であるか否かを判断し(ステップS253)、運転中であれば(Yes)、ヒートポンプ211の運転優先順位がヒートポンプ210より下位かを判断する(ステップS254)。ここではヒートポンプ211の運転優先順位が下位であるため、ステップS255に移行し、ヒートポンプ211の負荷率が低く効率が比較的に悪いためにその運転を停止する。
【0074】
ヒートポンプ211が停止すると、脱脂槽2ないし化成槽4に対する温水加熱が停止した分だけ不足し、このことが自動制御装置により把握されるため、自動制御装置はヒートポンプ210の運転状態につき温水を高温で供給するものとする。よって、ヒートポンプ210の運転状態は負荷率が高く効率の良いものとなる。
【0075】
又、自動制御装置は、ヒートポンプ211の停止中、設定時間毎(5分毎)に、運転中のヒートポンプ210の温水出口温度が所定値(設定値−1度)未満であるか確認する(ステップS256〜S258)。設定値未満でなければ(ステップS257でNo)、温水加熱が不足しているものとして、停止中のヒートポンプ211を再起動する(ステップS259)。
【0076】
以上の第5形態の電着塗装装置では、ヒートポンプ210,211が複数台設置されており、自動制御装置は、少なくとも一部の所定のヒートポンプ211における、加熱媒体がヒートポンプ211から供給される際の温度である温水供給温度(温水出口温度)を検知する温水供給温度センサ、加熱媒体がヒートポンプ211へ戻る際の温度である温水戻り温度(温水入口温度)を検知する温水戻り温度センサ、及び冷却媒体(パイプ217内の冷水)がヒートポンプ211から供給される際の温度である冷水供給温度を検知する冷水供給温度センサ、並びに前記加熱媒体の流量を検知する流量計と接続されており、温水供給温度センサから得た温水供給温度と温水戻り温度センサから得た温水戻り温度の差、及び流量計から得た流量から把握した現在の加熱能力と、冷水供給温度センサから得た冷水供給温度から把握した定格運転時の加熱能力とから、ヒートポンプ211における負荷率を把握して、当該負荷率が設定値以下である場合に、ヒートポンプ211につき運転を停止し、ヒートポンプ211の運転停止後、温水供給温度センサから得た温水供給温度が設定値以下である場合に、停止したヒートポンプ211につき運転を再開する。
【0077】
従って、脱脂槽2ないし化成槽4を十分に加熱し、且つ電着槽6を十分に冷却しながら、複数のヒートポンプで負荷率が各々低くなるが故に全体としての効率に劣る場合に、一部のヒートポンプの運転を停止する減台制御を行うことができ、又温水供給温度が不足しそうな場合には減台制御に係るヒートポンプを自動で復帰させることができ、加熱冷却性能を確保しながら全体としての効率をより一層向上することができる。
【0078】
[第6形態]
図8に示すように、第6形態に係る電着塗装装置301は、第2形態に対し、冷却機としてのクーリングタワー302と、加熱機としてのボイラ304とを追加して成る。ヒートポンプ10とクーリングタワー302の間には、パイプ306,308が配されて温水回路が形成され、パイプ12・14,22・24の温水回路と切換可能とされている。又、ボイラ304から脱脂槽2ないし化成槽4へは、脱脂液ないし化成液を加温するための蒸気(第2加熱媒体)を供給する蒸気供給路310が形成されている。なお、冷却機としてチラーを採用して良く、加熱機として温水タンクを採用して良い。
【0079】
そして、電着塗装装置301の自動制御装置は、加温負荷に応じて運転されているヒートポンプ10について、夏場で加温負荷が比較的に低いとき等、冷却負荷が比較的に多く冷却が追いつかない場合に、クーリングタワー302と接続して冷却専用の冷房モードでの運転に切り替え、加温負荷に対してはボイラ304でまかなうように制御する。
【0080】
即ち、図9に示すように、自動制御装置は、ヒートポンプ10が運転中であれば(ステップS351でYes)、流量調節弁136の開度が設定値を上回るかを確認し(ステップS352)、上回ればヒートポンプ10の温水回路をクーリングタワー302側(パイプ306,308側)へ切り替えて(ステップS353)、ヒートポンプ10を冷房モードで運転させる。又、自動制御装置は、ステップS353において、ボイラ304からの蒸気を導入するため、パイプ310における蒸気の通過を許容する(図示しないパイプ310の弁を開く)。
【0081】
例えば、夏季にヒートポンプ10が加温負荷に合わせ負荷率60%(冷却能力148kW,定格246kW)で運転されている場合に、流量調節弁136の開度が85%以上となれば、十分に冷却できない状態が生じる可能性があることとなるので、自動制御装置は、電着液が所定範囲内にあることを確認し(28度)、ヒートポンプ10につき冷房モードに切り替え、ボイラ304の蒸気を脱脂槽2ないし化成槽4に適用する。このとき、温水が十分冷却されて戻ってくるため、ヒートポンプ10の冷却能力は450kWに増加し、電着液の冷媒(第1冷却媒体)が十分に冷却されることとなり、適宜第2流量調節弁136の開度が絞られる。
【0082】
なお、本形態においてもヒートポンプを複数設置することができ、この場合各々単独で冷房モードと通常モード(熱回収モード)が切り替え可能となるように、自動制御装置を形成し、個別の温水回路や温度センサを設けることができる。又、ヒートポンプ毎に予め順位を付しておき、下位のものから順に冷房モードに切り替えて良い。このとき、下位のヒートポンプのモードを切り替える前に、他のヒートポンプが(通常モードで)運転中であるか確認しても良い。
【0083】
以上の第6形態の電着塗装装置では、脱脂槽2ないし化成槽4を加熱する蒸気を供給可能なボイラ304を更に備え、ヒートポンプ10は、温水を冷却可能なクーリングタワー302と接続されており、自動制御装置は、流量調節弁136の開度が設定値以上である場合に、温水をクーリングタワー302に供給して冷却された温水を受けると共に、ボイラ304により蒸気を供給して温水に代わり脱脂液ないし化成液の加熱を行う。
【0084】
従って、加温負荷に合わせると冷却負荷が不足する夏季等において、ヒートポンプ10を冷却につき効率の良い冷房モードで運転する一方、加温には工場に従来から存在するボイラ304を有効利用することができ、又加温負荷と冷却負荷が釣り合う中間季等においてはヒートポンプ10を熱回収モードで加熱と冷却とを効率良く行うことができ、更に加温負荷に合わせると冷却過剰となり得る冬季等においてはヒートポンプ10の冷水で工場の排温水を冷却して加熱と冷却のバランスの取れた効率の良い状態でヒートポンプ10を運転することができ、装置全体として状況に応じ適切なモードを自動選択して極めて効率良い運転を実施することができる。
【0085】
[第7形態]
第7形態に係る電着塗装装置は、第6形態と同様に成るが、自動制御装置は更に、工場に設置された受電電力量(あるいは装置全体の消費電力量)を監視する電力計付きコンピュータであるデマンドコントローラ(消費電力計)と接続されており、又ヒートポンプ10を冷房モードに切り替えることを指令する冷房モード切り替えスイッチを備えている。そして、動作としては、自動制御装置がヒートポンプ10につき冷房モードとする条件につき、消費電力が所定値以上となり工場の受電能力を超えることが予測される場合とすることが第6形態と相違する。なお、冷房モード切り替えスイッチは、熱回収モードとの間でモードを順に繰り返し遷移させるモード遷移スイッチであっても良い。又、デマンドコントローラとの接続、あるいはスイッチの設置のうちの一方を省略しても良い。
【0086】
即ち、図10に示すように、自動制御装置は、ヒートポンプ10が熱回収モードで運転中であるかを確認し(ステップS381)、運転中であれば(Yes)、消費電力が設定値(契約電力あるいはこれより若干(0〜5%程度分)少ない値)以上である際に発信される信号がデマンドコントローラから出力されているか確認する(ステップS382)。消費電力が設定値以上である旨を示す信号がデマンドコントローラから出力されていれば(Yes)、温水回路をクーリングタワー302側へ自動で切り替え、ヒートポンプ10を冷房モードで起動させる(ステップS383)。又、当該信号がデマンドコントローラから出力されていなければ(ステップS382でNo)、冷房切り替えスイッチに入力があったかを判断し(ステップS384)、入力があれば(Yes)、やはり温水回路の切り替えと冷房モードへの移行とを行う(ステップS383)。
【0087】
例えば、ヒートポンプ10が熱回収モードで運転中、温水を70度で供給して65度で回収し、これに伴い冷水を15度で供給して排温水との熱交換後20度で回収しており、冷水供給量246kWで消費電力127kW(冷水側COP1.94)となっている際に、消費電力が所定値を超えているためこれを抑制しようとすると、自動制御装置は、ヒートポンプ10を冷房モードへ切り替え、冷水供給量246kWを維持しつつ消費電力を34.5kW(冷水側COP7.14)とする。一方、自動制御装置は、脱脂槽2ないし化成槽4につき、ボイラ304の蒸気で加熱させる。
【0088】
なお、ヒートポンプ10が冷房モードである際に、デマンドコントローラから消費電力が同一のあるいは別の所定値以下となって、工場の受電能力に余裕ができた場合には、自動制御装置が温水回路の切替と熱回収モードへの切り替えとを自動で行って良い。又、熱回収モード切換スイッチを設け、これに対する入力があると温水回路の切替と熱回収モードへの切り替えが行われるようにしても良い。
【0089】
あるいは、本形態においてもヒートポンプを複数設置することができ、この場合各々単独で冷房モードと熱回収モードが切り替え可能となるように自動制御装置を形成し、個別の温水回路や温度センサを設けることができる。又、ヒートポンプ毎に予め順位を付しておき、下位のものから順に冷房モードに切り替えて良い。このとき、下位のヒートポンプのモードを切り替える前に、他のヒートポンプが(通常モードで)運転中であるか確認しても良い。更に、第6形態と本形態との動作を併せて行って良い。
【0090】
以上の第7形態の電着塗装装置では、脱脂槽2ないし化成槽4を加熱する蒸気を供給可能なボイラ304と、消費電力を検知する消費電力計とを更に備え、ヒートポンプ10は、温水を冷却可能なクーリングタワー302と接続されており、自動制御装置は、消費電力計と接続されており、消費電力計から得た消費電力が設定値以上である場合に、温水をクーリングタワー302に供給して冷却された温水を受けると共に、ボイラ304により蒸気を供給して温水に代わり脱脂液ないし化成液の加熱を行う。
【0091】
従って、ヒートポンプ10で熱回収モードにより加熱と冷却とを行うと消費電力が契約電力等を超えてしまう場合に、自動制御装置がヒートポンプを効率の良い冷房モードで運転させることによって、ヒートポンプを消費電力に応じて効率の良い運転に切り替え可能として、装置全体の消費電力が契約電力等を上回らないようにすることができる。
【0092】
[第8形態]
第8形態に係る電着塗装装置は、第5形態と同様にヒートポンプ210,211を複数備えて成り、更にヒートポンプ210,211からの温水を貯蔵可能な温水タンクと、当該温水タンク内の温水を加熱するために当該温水タンクに蒸気を投入する加熱手段としてのボイラと、脱脂槽2ないし化成槽4を加熱する第2加熱媒体及びそのパイプと、温水タンクからの温水(加熱媒体)のパイプと第2加熱媒体のパイプとに介在された熱交換機とを備えている。第2加熱媒体は、当該熱交換機を介し、温水により加熱される。又、温水タンク内には、自動制御装置と接続された、タンク内の温水の温度を検知する温水タンク温度センサが設置されている。通常はヒートポンプ210を主に用い、ヒートポンプ211は予備機として優先順位の低い状態で運転される。なお、加熱手段として、蒸気ヒータや電気ヒータを用いて良い。
【0093】
そして、本形態の電着塗装装置では、内部を加温可能な温水タンクを介して脱脂槽2ないし化成槽4の加温を行うことにより、加熱量が不足したとしても温水タンクによりバックアップすることで加温を継続することが可能である。
【0094】
即ち、図11に示すように、自動制御装置は、前処理工程実施中であれば(ステップS401でYes)、温水タンク温度センサから得た温水タンク温度が設定値(68度)未満であるかを確認し(ステップS402)、設定値を下回れば(Yes)、ヒートポンプ210,211が温水追従モードで1台以上運転中であるか確認する(ステップS403)。そうであれば(Yes)、更に予備機としてのヒートポンプ211が停止しているか判断し(ステップS404)、停止していれば(Yes)、ヒートポンプ211を温水追従モードで追加的に自動起動させる(ステップS405)。
【0095】
一方、自動制御装置は、ヒートポンプ210,211が双方とも運転中でないか(ステップS403でNo)、あるいはヒートポンプ211が停止中でない場合には(ステップS404でNo)、温水タンク温度が前記設定値を下回る別の設定値(67度)をも下回るか判断し(ステップS406)、下回れば(Yes)、温水タンク温度が前記設定値(68度)になるまでボイラから蒸気を導入して温水を加温する(ステップS407〜S409)。
【0096】
以上の第8形態の電着塗装装置では、ヒートポンプ210,211からの温水(加熱媒体)を貯蔵する温水タンクと、温水タンク内の温水を加熱するボイラとを備え、温水タンクからの温水により脱脂槽2ないし化成槽4を加熱する第2加熱媒体を加熱する。
【0097】
従って、ヒートポンプ210,211からの温水が不足してもボイラによりこれを加温可能とすることで全体としての加熱不足を防止することができ、加温に関するバックアップ回路を設けて安定した加熱状態を提供することができる。
【0098】
[第9形態]
図12に示すように、第9形態に係る電着塗装装置501は、第5形態と同様ヒートポンプ510,511を複数備えて成り、更に電着槽6に対し、いずれも(第2)冷却機としての冷水チラー512ないしクーリングタワー513が、いずれかによる各冷媒を介した冷却のため、切り替え可能に設置されている。ヒートポンプ510の冷水側には、第1形態等と同様、工場の排温水との熱交換機が設置され、温水側には、第1形態と同様、脱脂槽2や化成槽4を加熱するための温水のパイプが配されている。一方、ヒートポンプ511の冷水側には、電着槽6を冷却するパイプと、ヒートポンプ510と同様の排温水との熱交換機を有するパイプとが切り替え可能に配され、温水側はヒートポンプ510と同様に成る。
【0099】
そして、電着塗装装置501は、自動制御装置を用いず、ヒートポンプの加熱負荷に追従する運転をもって、工場の排温水を利用した前処理液の加熱と電着液の冷却を、状況に応じ実行する。
【0100】
即ち、図12(a)に示すように、夏季等において加温負荷が比較的に穏やかであり(900kW)、冷却負荷が比較的に重い場合には(300kW)、ヒートポンプ510を排温水(430kW)により冷水温度を上げて運転し(30度を35度に上げる)、温水(550kW)を供給する一方、ヒートポンプ511の冷水(12度、220kW)を電着液の冷却に用いる(17度で戻る)。なお、電着液の冷却につき、冷水チラー512を適用して不足する冷却能力(80kW)を補い、又冷却負荷の変動に対応する(ヒートポンプ511の冷水の戻り温度につき冷水チラー512の適用により一定にしてヒートポンプ511の運転状態を安定させる)。
【0101】
一方、図12(b)に示すように、冬季等において加温負荷が比較的に重く(1100kW)、冷却負荷が比較的に穏やかである場合には、ヒートポンプ510,511を加熱専用とする。即ち、ヒートポンプ511の冷水側回路を排温水との熱交換機側に切り替え、ヒートポンプ510,511双方の冷水を排温水により昇温し(双方とも30度から35度へ)、温水(双方とも550kW)を脱脂槽2ないし化成槽4に供給する。なお、電着槽6の冷却は、クーリングタワー513に切り替えて適用することにより、専らクーリングタワー513のみにて賄う。又、夏季等と冬季等との動作の切り替えは、手動により季節毎(年2回)に行うことができる。
【0102】
以上の第9形態の電着塗装装置501では、ヒートポンプ510,511を複数備えていると共に、電着液を冷却する(第4)冷却媒体を供給可能な冷水チラー512ないしクーリングタワー513を備えており、更に一部のヒートポンプ511の供給する冷却媒体につき、排温水との熱交換機側と電着液の冷却側とで切り替え可能とし、前処理液の加熱負荷が比較的に軽い一方電着液の冷却負荷が比較的に重い場合に、一部のヒートポンプ511の冷却媒体で電着液を冷却する一方、残余のヒートポンプ510の冷却媒体に排温水を適用して、全てのヒートポンプ510,511で前処理液を加熱し、前処理液の加熱負荷が比較的に重い一方電着液の冷却負荷が比較的に軽い場合に、一部のヒートポンプ511の冷却媒体にも排温水を適用して、全てのヒートポンプ510,511で前処理液を加熱し、冷水チラー512ないしクーリングタワー513で電着液を冷却する。
【0103】
従って、ヒートポンプの他に自動制御装置を設けることなく、排温水を用いた極めて効率の良好な前処理液の加熱ないし電着液の冷却を、低コスト・低設備投資にて導入することができる。又、従来工場に設置されている冷水チラー512やクーリングタワー513を有効に活用することができる。
【0104】
[第10形態]
第10形態に係る電着塗装装置は、第2形態ないし第8形態を複合的に含んで成る。図13ないし図15に、当該電着塗装装置の夏季(6〜9月)・中間期(4,5,10,11月)・冬季(12〜3月)における例を示す。
【0105】
この電着塗装装置は、予備脱脂槽及び脱脂槽並びに化成槽を加熱すると共に、電着槽を冷却する。予備脱脂液は50度に保たれ、脱脂液は60度に保たれ、化成液は40度に保たれる一方、電着液は通電や攪拌による発熱にかかわらず30度に保たれる。なお、その他の槽や工程も図示するように存在する。この内、予備湯洗槽632を共に加熱して良く、あるいは加熱する槽等をそれぞれの単独を含む任意の組合せとしても良い。又、図中の丸で囲んだPは、ポンプである。
【0106】
予備脱脂液・脱脂液・化成液の各季の加熱負荷は、実際の工場における、温水ボイラに係る都市ガスの日ごとの使用量と、想定される操業日数と、ボイラー効率(0.86)とから換算し、図上部に示した。又、電着液の各季の冷水負荷は、実際の工場におけるサンプルから仮定し、図上部に示した。
【0107】
このような加熱・冷水負荷であるとして、コンピュータにより2台のヒートポンプや水冷チラー(上記の株式会社神戸製鋼所製高効率高温取出機と同等の性能を想定、なお冷却水の温度によりCOPが異なる)あるいは排温水の適用等をシミュレートすると、各季において図の各所に示すような各媒体の温度となり、各ヒートポンプの冷水供給状況や温水供給状況ないし消費電力は図右側に示す通りとなった。なお、温水を供給する温水タンクにあっては、ヒートポンプによる加熱で十分であり、都市ガス等を用いた追加的な加熱は不要であった。
【0108】
又、比較のため、第10形態のものと同様な塗装前処理工程における、ヒートポンプを用いず加熱と冷却とが別個独立している従来の形態(従来方式)と、単にヒートポンプのみを用いる前記特許文献1の形態(文献方式)とにつき、第10形態と同様各季ごとに順に図16ないし図18(従来方式)、及び図19ないし図21(文献方式)として示す。
【0109】
まず従来方式において、各季とも都市ガスによる温水タンクの加熱が必要であり、冬季・中間季・夏季の順で加熱量を要し都市ガスが多く必要になる。都市ガスの必要量ないしボイラ効率や給水温度等につき、図左下に示す。又、冷却については、本発明と同等な性能の水冷チラーを複数台用いるが、その際の消費電力を右側中央に示し、更に都市ガス必要量と併せてエネルギー使用量として右下に示す。
【0110】
次に文献方式において、加熱量を最も必要とする冬季における加熱能力を確保するためヒートポンプを3台設置し、他季においては冷却に対し余剰する加熱量に係る加熱媒体を専用のクーリングタワーで大気に放熱する。又、冬季において3台のヒートポンプでもまかなえない加熱は、温水タンクに対し都市ガスボイラの蒸気を供給して調整する。都市ガス使用量は左下に示し、各ヒートポンプの消費電力は右側に示し、消費電力の合計と都市ガス使用量(再掲)は右下に示す。
【0111】
これらの電着塗装装置における、各季の二酸化炭素(CO)の排出量及び電気・都市ガス使用量を算出した各表(1時間当たりのもの及び全季を通じたもの)を図22に示し、各季を合計したCO排出量、及び電気・都市ガス使用量ないしその原油換算値につき図23に示す。なお、CO排出係数は、都市ガスについて、地球温暖化対策の推進に関する法律施行令及び特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令を基に環境省が作成した「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」からの計算値(11000キロカロリー毎ノルマル立方メートル(kcal/Nm),2.3300キログラム(CO)毎ノルマル立方メートル(kg−CO/Nm))を用い、電気について、中部電力株式会社の08年度実績値(860キロカロリー毎キロワット時(kcal/kWh),0.4550kg−CO/kWh)を用いた。又、本発明の第10形態に係る電着塗装装置については、表中「本発明」と記載した。
【0112】
図22,23によれば、CO排出量について、文献方式でも従来方式に比べ20%の削減が可能であるが、本発明にあっては従来比42%減というように大幅な削減を達成している。又、電気使用量及び都市ガス使用量から換算した年間の原油消費量においても、文献方式では従来比13%の削減が可能であるが、本発明では従来比36%減となり、文献方式との比較でも約2倍の削減効果が得られている。
【0113】
[第11形態]
図24に示すように、第11形態に係る電着塗装装置601は、第10形態と同様、第2形態ないし第8形態を複合的に含んで成り、更に工場の排温水に係る回路に代えて前処理工程の排気に対する回路を設置して成る。
【0114】
即ち、電着塗装装置601は、ヒートポンプ10の温水側に温水タンク602を備えていると共に、温水タンク602側と脱脂槽2側,予備脱脂槽2a側,化成槽4側とでそれぞれ加温のための熱交換を行う熱交換機603,603a,604を備えており、温水タンク602から熱交換機603,603a,604へはそれぞれパイプ12,12a,14が延ばされていて、熱交換機603,603a,604から温水タンク602へはそれぞれパイプ22,22a,24が渡されている一方、熱交換機603,603a,604から順に脱脂槽2,予備脱脂槽2a,化成槽4に対してはそれぞれ加熱媒体の流通するパイプ606,606a,608が延ばされており、脱脂槽2,予備脱脂槽2a,化成槽4から順に熱交換機603,603a,604に対してはそれぞれ加熱媒体の流通するパイプ610,610a,612が延ばされている。又、温水タンク602には、その内部の温水を必要に応じて(厳寒期や冬季の始動時の緊急時等)加熱する蒸気を導き熱交換後排出する蒸気管614が接続されている。なお、図中丸内にPを表した記号はポンプを示す。又、同様に予備湯洗槽632を加温して良く、あるいは加温する槽等をそれぞれの単独を含む任意の組合せとしても良い。
【0115】
一方、電着塗装装置601にあっては、ヒートポンプ10の冷水側に冷水タンク620が介装されており、冷水タンク620には、電着液の最終的な温度を制御するため電着液の冷却媒体の流量を調整する流量調節弁102や熱交換機104が接続される他、冷水タンク620から冷水を受けて必要に応じて冷却し戻すクーリングタワー622が設置されている。なお、熱交換機104には、電着槽6を冷却する冷却媒体の流通するパイプ116,126も接続されている。
【0116】
又、電着塗装装置601の冷却側のパイプ26には、流量調節弁630を介して前処理工程に係る槽(ここでは予備湯洗槽632,予備脱脂槽2a,脱脂槽2,及び化成槽4が該当し、第1・第2水洗槽634,表面調整槽636,第3・第4・第5水洗槽(純粋洗浄)638,水切り乾燥ブース640,水洗槽642,電着塗装焼付炉644は含まれない)へのパイプ650ないしこれら槽より戻るパイプ652が接続されている。なお、接続先の前処理槽については、これらのいずれかないし任意の組合せであって良いし、排気の生ずる他の槽等のいずれかないし以上の任意の組合せであって良い。
【0117】
そして、電着塗装装置601のパイプ650,652には、それぞれ予備湯洗槽632,予備脱脂槽2a,脱脂槽2,化成槽4の排気Y1,Y2,Y3,Y4との熱交換機660,661,662,663が介装されている。熱交換機660,661,662,663は、排気Y1,Y2,Y3,Y4の通る排気管とパイプ650,652(の分岐管)とを導入し、排気Y1,Y2,Y3,Y4とパイプ650,652内の冷水とで熱交換をして、パイプ650,652内の冷水を排気Y1,Y2,Y3,Y4で加温する。このような加熱は排気Y1,Y2,Y3,Y4の状況(量や温度等)により変化するが、その加温は自動制御装置による流量調節弁630の制御により行われ、加温された冷水につきパイプ652によりパイプ26に合流してヒートポンプ10に戻される冷水が適切に冷熱の奪われた状態となるようにされている。
【0118】
以上の電着塗装装置601では、排気を生ずる工場に設置されており、脱脂液及び化成液の入った脱脂槽2,予備脱脂槽2a及び化成槽4と、電着液の入った電着槽6と、この電着液を冷却するパイプ116,126内の第1冷却媒体と、前処理液を加熱する加熱媒体を(熱交換機603,603a,604を介して)加熱すると共に、第1冷却媒体を冷却するパイプ16,26内の第2冷却媒体を(熱交換機104を介して)冷却するヒートポンプ10と、パイプ26内の第2冷却媒体を排気Y1,Y2,Y3,Y4により加熱する熱交換機660,661,662,663とを備えている。
【0119】
従って、電着塗装装置601にあっても、加温側に追従する運転を行うヒートポンプ10の冷水側につき、工場から排出される排気の有効活用により必要に応じ加熱して加温側に対する冷水側のバランスを適切にとることができ、極めてエネルギー効率の良好な状態でヒートポンプ10の運転を継続することができる。又、脱脂槽2に加え予備脱脂槽2aも加温することができる。なお、本形態の排気や上記の排温水の他、工場から生ずる補給水や排ガスあるいはこれらの組合せによりヒートポンプ10の冷水側を加熱することができる。
【0120】
更に、流量調節弁630の制御により、冷水や排気の状況に応じて適切な量だけ冷水を排気との熱交換機660〜663に供給することができ、極めて省エネルギーであるヒートポンプ10の運転を継続するために必要となる冷水の加熱を、自動で的確に行うことができる。加えて、温水タンク602が設けられているので、脱脂槽2,予備脱脂槽2a及び化成槽4を安定した動作において効率良く確実に加熱することができ、又蒸気導入により加熱の補助を受けることができる。更に、冷水タンク620が設けられ、あるいは冷水タンク620が冷水を排気による加熱のため送り出す流量調節弁630より電着槽6側に配置されているので、電着槽6を安定動作にて効率良く的確に冷却することができるし、クーリングタワー622による冷水冷却の補助を効率良く受けることができる。
【0121】
[その他の形態]
以上の形態にあっては、前処理槽の加熱と電着槽の冷却とを行うヒートポンプの冷水側に適用する冷却側加熱媒体として排温水を用いているが、各形態における排温水の代わりに、当該ヒートポンプとは別個のヒートポンプ(冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプ)により生成した温水を用いて良い。この場合、冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプの稼働分だけ使用するエネルギーが増加するが、その増加分は加熱冷却用ヒートポンプの温水の熱を捨てる場合のエネルギーに比べ少なくて済み、総合しても効率の良好な電着塗装装置とすることが可能である。又、冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプの温水及び工場の排温水と加熱冷却用ヒートポンプの冷水とを熱交換機に導入し、当該温水及び排温水を併せて加熱冷却用ヒートポンプの冷水に適用しても良い。更に、冷却側加熱媒体として、ボイラの蒸気等又はこれと排温水ないし冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプの温水との組合せを用いることができる。
【0122】
又更に、前処理槽の加熱と電着槽の冷却とを行うヒートポンプの冷媒を直接取り込み加熱してヒートポンプへ戻す別個のヒートポンプ(加熱用ヒートポンプ)を設けても良い。これに加え、ヒートポンプの冷媒を加熱する上述の各種熱交換機を併せて設置することもできる。又、前処理槽の加熱と電着槽の冷却とを行うヒートポンプの冷水側につき、ヒートポンプからの冷水を排温水と同様に工場で処理すると共に、冷水より高温の排温水を(適宜処理した後)ヒートポンプへ直接戻すようにし、あるいはこのように排温水がヒートポンプへ入るように排温水のパイプを流路切替え可能に配置することができる。
【符号の説明】
【0123】
1,101,201,301,501,601 電着塗装装置
2 脱脂槽(前処理槽)
4 化成槽(前処理槽)
6 電着槽
10,210,211,510,511 ヒートポンプ
30,230,231,660,661,662,663 熱交換機
36,236,630 (第1)流量調節弁
131 冷水チラー
136 (第2)流量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理液の入った前処理槽と、
電着液の入った電着槽と、
前記前処理液を加熱する加熱媒体を加熱すると共に、前記電着液を冷却する冷却媒体を冷却するヒートポンプと、
前記冷却媒体を加熱する冷却媒体加熱機と
を備えたことを特徴とする電着塗装装置。
【請求項2】
前記冷却媒体加熱機は、前記冷却媒体と冷却側加熱媒体とを導入し熱交換することで前記冷却媒体を当該冷却側加熱媒体により加熱する熱交換機である
ことを特徴とする請求項1に記載の電着塗装装置。
【請求項3】
前記冷却側加熱媒体は、工場から生ずる排温水、補給水、排気又は排ガスの内の少なくともいずれかを含むものである
ことを特徴とする請求項2に記載の電着塗装装置。
【請求項4】
前記冷却側加熱媒体は、冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプから供給される
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電着塗装装置。
【請求項5】
前記冷却媒体加熱機は、加熱用ヒートポンプである
ことを特徴とする請求項1に記載の電着塗装装置。
【請求項6】
前記冷却側加熱媒体及び/又は前記冷却媒体の前記冷却媒体加熱機への流量を調節する流量調節手段と、
前記冷却媒体が前記ヒートポンプへ戻る際の温度である冷水戻り温度を検知する冷水戻り温度センサと、
前記冷水戻り温度センサと接続され、当該冷水戻り温度センサから得た前記冷水戻り温度に応じて前記流量調節手段における流量を制御する自動制御装置と
を更に備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電着塗装装置。
【請求項7】
前記ヒートポンプが複数台設置されており、
前記自動制御装置は、
少なくとも一部の所定の前記ヒートポンプにおける、前記加熱媒体が前記ヒートポンプから供給される際の温度である温水供給温度を検知する温水供給温度センサ、前記加熱媒体が前記ヒートポンプへ戻る際の温度である温水戻り温度を検知する温水戻り温度センサ、及び前記冷却媒体が前記ヒートポンプから供給される際の温度である冷水供給温度を検知する冷水供給温度センサ、並びに前記加熱媒体の流量を検知する流量計と接続されており、
前記温水供給温度センサから得た前記温水供給温度と前記温水戻り温度センサから得た前記温水戻り温度の差、及び前記流量計から得た前記流量から把握した現在の加熱能力と、前記冷水供給温度センサから得た前記冷水供給温度から把握した定格運転時の加熱能力とから、当該ヒートポンプにおける負荷率を把握して、
当該負荷率が設定値以下である場合に、前記ヒートポンプの一部につき運転を停止する制御を行い、
当該ヒートポンプの運転停止後、前記温水供給温度センサから得た前記温水供給温度が設定値以下である場合に、停止した前記ヒートポンプにつき運転を再開する制御を行う
ことを特徴とする請求項6に記載の電着塗装装置。
【請求項8】
前記前処理液を加熱する第2加熱媒体を供給可能な加熱機を更に備え、
前記ヒートポンプは、前記加熱媒体を冷却可能な冷却機と接続されており、
前記自動制御装置は、前記冷水戻り温度センサから得た前記冷水戻り温度が所定値以上である場合に、前記加熱媒体を前記冷却機に供給して冷却された前記加熱媒体を受けると共に、前記加熱機により前記第2加熱媒体を供給して前記加熱媒体に代わり前記前処理液の加熱を行う
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の電着塗装装置。
【請求項9】
前記前処理液を加熱する第2加熱媒体を供給可能な加熱機と、消費電力を検知する消費電力計とを更に備え、
前記ヒートポンプは、前記加熱媒体を冷却可能な冷却機と接続されており、
前記自動制御装置は、前記消費電力計と接続されており、前記消費電力計から得た消費電力が設定値以上である場合に、前記加熱媒体を前記冷却機に供給して冷却された前記加熱媒体を受けると共に、前記加熱機により前記第2加熱媒体を供給して前記加熱媒体に代わり前記前処理液の加熱を行う
ことを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の電着塗装装置。
【請求項10】
前記ヒートポンプからの前記加熱媒体を貯蔵する温水タンクと、当該温水タンク内の前記加熱媒体を加熱する加熱手段とを備え、前記温水タンクからの前記加熱媒体により前記前処理液を加熱する第2加熱媒体が加熱される
ことを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の電着塗装装置。
【請求項11】
前記ヒートポンプを複数備えていると共に、前記電着液を冷却する第4冷却媒体を供給可能な第2冷却機を備えており、更に一部の前記ヒートポンプの供給する前記冷却媒体につき、前記冷却側加熱媒体との熱交換機側と前記電着液の冷却側とで切り替え可能とし、前記前処理液の加熱負荷が比較的に軽い一方前記電着液の冷却負荷が比較的に重い場合に、前記一部のヒートポンプの前記冷却媒体で前記電着液を冷却する一方、残余の前記ヒートポンプの冷却媒体に前記冷却側加熱媒体を適用して、全ての前記ヒートポンプで前記前処理液を加熱し、前処理液の加熱前記負荷が比較的に重い一方前記電着液の冷却負荷が比較的に軽い場合に、前記一部のヒートポンプの前記冷却媒体にも前記冷却側加熱媒体を適用して、全ての前記ヒートポンプで前記前処理液を加熱し、前記第2冷却機の前記第4冷却媒体で電着液を冷却する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電着塗装装置。
【請求項12】
前処理液の入った前処理槽と、
電着液の入った電着槽と、
前記電着液を冷却する第1冷却媒体と、
前記前処理液を加熱する加熱媒体を加熱すると共に、前記第1冷却媒体を冷却する第2冷却媒体を冷却するヒートポンプと、
前記第1冷却媒体を第3冷却媒体により冷却するチラーと、
前記第2冷却媒体を加熱する冷却媒体加熱機と
を備えたことを特徴とする電着塗装装置。
【請求項13】
前記冷却媒体加熱機は、前記第2冷却媒体と冷却側加熱媒体とを導入し熱交換することで前記第2冷却媒体を当該冷却側加熱媒体により加熱する熱交換機である
ことを特徴とする請求項12に記載の電着塗装装置。
【請求項14】
前記冷却側加熱媒体は、工場から生ずる排温水、補給水、排気又は排ガスの内の少なくともいずれかを含むものである
ことを特徴とする請求項13に記載の電着塗装装置。
【請求項15】
前記冷却側加熱媒体は、冷却側加熱媒体用ヒートポンプから供給される
ことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の電着塗装装置。
【請求項16】
前記冷却媒体加熱機は、加熱用ヒートポンプである
ことを特徴とする請求項12に記載の電着塗装装置。
【請求項17】
前記冷却側加熱媒体及び/又は前記冷却媒体の前記冷却媒体加熱機への流量を調節する第1流量調節手段と、
前記第2冷却媒体が前記ヒートポンプへ戻る際の温度である冷水戻り温度を検知する冷水戻り温度センサと、
前記チラーからの前記第3冷却媒体の流量を調節する第2流量調節手段と、
前記冷水戻り温度センサと接続され、当該冷水戻り温度センサから得た前記冷水戻り温度に応じて前記第1流量調節手段及び第2流量調節手段における流量を制御する自動制御装置と
を更に備えたことを特徴とする請求項12ないし請求項16のいずれかに記載の電着塗装装置。
【請求項18】
前記第1冷却媒体が前記電着槽側へ戻る際の温度である電着液戻り温度を検知する、前記自動制御装置と接続された電着液戻り温度センサを更に備え、
前記自動制御装置は、前記第2流量調節手段における流量が設定値以下であり、且つ電着液戻り温度センサから得た電着液戻り温度が設定値以下である場合に、前記ヒートポンプの第2冷却媒体に係る冷却後の温度を上昇する
ことを特徴とする請求項17に記載の電着塗装装置。
【請求項19】
前記前処理液を加熱する第2加熱媒体を供給可能な加熱機を更に備え、
前記ヒートポンプは、前記加熱媒体を冷却可能な冷却機と接続されており、
前記自動制御装置は、前記冷水戻り温度センサから得た前記冷水戻り温度が所定値以上であり且つ/又は前記第2流量調節手段における流量が設定値以上である場合に、前記加熱媒体を前記冷却機に供給して冷却された前記加熱媒体を受けると共に、前記加熱機により前記第2加熱媒体を供給して前記加熱媒体に代わり前記前処理液の加熱を行う
ことを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の電着塗装装置。
【請求項20】
前記前処理液を加熱する第2加熱媒体を供給可能な加熱機と、消費電力を検知する消費電力計とを更に備え、
前記ヒートポンプは、前記加熱媒体を冷却可能な冷却機と接続されており、
前記自動制御装置は、前記消費電力計と接続されており、前記消費電力計から得た消費電力が設定値以上である場合に、前記加熱媒体を前記冷却機に供給して冷却された前記加熱媒体を受けると共に、前記加熱機により前記第2加熱媒体を供給して前記加熱媒体に代わり前記前処理液の加熱を行う
ことを特徴とする請求項17ないし請求項19のいずれかに記載の電着塗装装置。
【請求項21】
前記ヒートポンプからの前記加熱媒体を貯蔵する温水タンクと、当該温水タンク内の前記加熱媒体を加熱する加熱手段とを備え、前記温水タンクからの前記加熱媒体により前記前処理液を加熱する第2加熱媒体が加熱される
ことを特徴とする請求項17ないし請求項20のいずれかに記載の電着塗装装置。
【請求項22】
前記ヒートポンプを複数備えていると共に、前記電着液を冷却する第4冷却媒体を供給可能な第2冷却機を備えており、更に一部の前記ヒートポンプの供給する前記冷却媒体につき、前記冷却側加熱媒体との熱交換機側と前記電着液の冷却側とで切り替え可能とし、前記前処理液の加熱負荷が比較的に軽い一方前記電着液の冷却負荷が比較的に重い場合に、前記一部のヒートポンプの前記冷却媒体で前記電着液を冷却する一方、残余の前記ヒートポンプの冷却媒体に前記冷却側加熱媒体を適用して、全ての前記ヒートポンプで前記前処理液を加熱し、前処理液の加熱前記負荷が比較的に重い一方前記電着液の冷却負荷が比較的に軽い場合に、前記一部のヒートポンプの前記冷却媒体にも前記冷却側加熱媒体を適用して、全ての前記ヒートポンプで前記前処理液を加熱し、前記第2冷却機の前記第4冷却媒体で電着液を冷却する
ことを特徴とする請求項12ないし請求項16のいずれかに記載の電着塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−133025(P2010−133025A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261206(P2009−261206)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【分割の表示】特願2008−310138(P2008−310138)の分割
【原出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)