電磁シールドシート
【課題】薄型化しても磁界シールド特性に優れた電磁シールドシートを提供する。
【解決手段】2層以上の強磁性体層2,3の各々を挟むように導体層1が積層された積層膜からなり、2層以上の強磁性体層2,3は、互いに異なる2種類以上の強磁性体からなる。
【解決手段】2層以上の強磁性体層2,3の各々を挟むように導体層1が積層された積層膜からなり、2層以上の強磁性体層2,3は、互いに異なる2種類以上の強磁性体からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電磁ノイズをシールドする電磁シールドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートブック型パーソナルコンピュータなどといったモバイル機器では、高い周波数で動作する電子部品から発生される電磁ノイズをシールドするために、電子部品を覆うように成形された金属板からなる板金シールドが用いられている。
【0003】
しかしながら、板金シールドは、シールドケースの高さが高くなるので、モバイル機器の薄型化の障害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−348916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モバイル機器の薄型化を実現するために、板金シールドの代わりに、銅(Cu)や銀(Ag)などからなる薄型の導電シートで電子部品を覆うことにより、電磁ノイズをシールドすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、薄い導電シートを用いた場合、磁界シールド効果が小さくなるため、導電シートの厚さをある程度厚くする必要がある。その結果、柔軟性に劣り、電子部品を完全に密閉することが困難になるので、大きなシールド効果を得ることができないという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、薄型化しても磁界シールド特性に優れた電磁シールドシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態に係る電磁シールドシートは、2層以上の強磁性体層の各々を挟むように導体層が積層された積層膜からなり、前記2層以上の強磁性体層は、互いに異なる2種類以上の強磁性体からなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係る電磁シールドシートの構成を示す断面図である。
【図2】実施形態1に係る電磁シールドシートの構成を示す断面図である。
【図3】実施形態1に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す斜視図である。
【図4】実施形態1に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図5】実施形態1、2に係るNi80Fe20の比透磁率の周波数特性を示す図である。
【図6】実施形態1に係るCo85Nb12Zr3の比透磁率の周波数特性を示す図である。
【図7】実施形態1に係る電磁シールドシートの断面図である。
【図8】導体のみの電磁シールドシートの断面図である。
【図9】Ni80Fe20を1層用いた電磁シールドシートの断面図である。
【図10】Co85Nb12Zr3を1層用いた電磁シールドシートの断面図である。
【図11】実施形態1に係る電磁シールドシートの磁界シールド効果の周波数特性を示す図である。
【図12】実施形態2に係る電磁シールドシートの斜視図である。
【図13】実施形態2に係る電磁シールドシートの断面図である。
【図14】実施形態2に係る電磁シールドシートの断面図である。
【図15】実施形態2に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図16】実施形態2に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図17】実施形態2に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図18】実施形態2に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図19】実施形態2に係る電磁シールドシートの磁界シールド効果の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電磁シールドシートの構成を示す断面図である。この電磁シールドシートは、基材4、導体層1、強磁性体層2、導体層1、強磁性体層3および導体層1が順次に積層された5層からなる積層膜によって構成されている。強磁性体層2、強磁性体層3は、導電性を有する強磁性体で構成するのが好ましい。強磁性体層2、強磁性体層3は、互いに異なる2種類の強磁性体からなる。
【0012】
導体層と強磁性体層を積層した電磁シールドシートは、強磁性体の強磁性共鳴周波数で磁界シールド効果が高くなる。従って、図2に示すような、強磁性体を一種類のみ用いた電磁シールドシートでは、その強磁性共鳴周波数において、特に高い磁界シールド効果が得られるが、広帯域に高い磁界シールド効果を得ることができなかった。
【0013】
実施形態1に係る図1に示す電磁シールドシートによれば、強磁性体層2と強磁性体層3との強磁性体を2種類用いているので、異なる強磁性共鳴周波数及び異なる強磁性共鳴周波数の間の周波数帯域で、高い磁界シールド効果を得ることができる。
【0014】
なお、図1に示す例では、強磁性体層2、強磁性体層3とこれらを挟むように形成された3層の導体層1とから構成されているが、強磁性体層を導体層で挟む構造であれば、導体層1および強磁性体層2、強磁性体層3の層数は上記に限定されない。強磁性体層2、および強磁性体層3の層数を増やすことにより磁界シールド効果を高めることができる。
【0015】
導体層1は、例えば銀(Ag)、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)などといった非磁性体(導体)から構成されている。また、高周波では比透磁率が10以下になるようなニッケル(Ni)またはコバルト(Co)の単体、またはその化合物からなる強磁性体も導体層1の構成物として考えられる。
【0016】
強磁性体層2、および強磁性体層3は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)の単体、あるいは、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)を含む化合物からなる軟磁性体から構成されている。化合物としては、例えば、Ni80Fe20、Co85Nb12Zr3、Co67Zr8O25を例示することができる。
【0017】
基材4は、絶縁体、導体、または半導体からなり、PETフィルム、ポリイミドシート等、柔軟性があるものでも、ガラスエポキシ基板、ガラス基板等、柔軟性がないものでもよい。また基材4は、シリコン、GaAs、SiC、GaN等の半導体でもよい。
【0018】
導体層1、および強磁性体層2、強磁性体層3は、スパッタ、蒸着、めっき、スプレー等の方法で成膜される。
【0019】
また、この磁界シールドシートは、導体層1を含むので、電界もシールドすることができ、磁界だけではなく電界もシールドする電磁シールドシートになる。
【0020】
次に、上記のように構成される電磁シールドシートの電磁ノイズのシールド効果をシミュレーションにより確認したので、その結果を説明する。
【0021】
図3は、実施形態1に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す斜視図であり、図4は、その断面図である。このシミュレーションモデルは、シリコン4b内の配線10をノイズ源としており、電磁シールドシートで電磁界を遮断する。シリコン4b内の配線10の幅は0.033mmであり、エポキシ樹脂4aの厚さは0.1mm、シリコン4bの厚さは0.5mm、PETシート5の厚さは0.1mmである。磁界シールド効果は磁界強度測定面Aでy方向の磁界強度を面積分した値の差分から算出した。磁界強度測定面Aは配線10から0.622um離れた直上に配置し、大きさは0.1mm角とした。
【0022】
電磁シールドシートは、導体層1、強磁性体層2、導体層1、強磁性体層3および導体層1が順次に積層された5層の積層膜からなり、導体層1の厚さは0.66um、強磁性体層2、および強磁性体層3の厚さは0.2umであり、電磁シールドシートの合計の膜厚は2.0umである。
【0023】
導体層1の導電率は10uΩcmである。強磁性体層2はNi80Fe20であり、図5に示す比透磁率の周波数特性とした。強磁性体層3はCo85Nb12Zr3あり、図6に示す比透磁率の周波数特性とした。強磁性共鳴周波数は890MHzである。この電磁シールドシートの断面図を図7に示す。
【0024】
比較のために、強磁性体を2種類用いた電磁シールドシートのシミュレーションモデルの他に、図8に示す導体のみの電磁シールドシート、および図9に示すNi80Fe20を1層用いた電磁シールドシート、図10に示すようなCo85Nb12Zr3を1層用いた電磁シールドシートのシミュレーションも行った。電磁シールドシートの合計の膜厚は全て2umとした。
【0025】
これら4つの電磁シールドシートの磁界シールド効果のシミュレーション結果を図11に示す。図9、図10に示した電磁シールドシートでは、それぞれNi80Fe20の強磁性共鳴周波数は500MHzであり、Co85Nb12Zr3の強磁性共鳴周波数は890MHzで磁界シールド効果が最大値をとる。これらは、図8で示した導体のみの電磁シールドシートよりも10〜8000MHzで高い磁界シールド効果を有している。
【0026】
これらと比較して、図7に示した電磁シールドシートでは、Ni80Fe20の強磁性共鳴周波数は500MHz以上で、Co85Nb12Zr3の強磁性共鳴周波数は890MHz以下で60dB以上の磁界シールド効果を有しており、広帯域に高い磁界シールド効果が得られている。
【0027】
以上のことから、図7のように異なる強磁性共鳴周波数を有する2種類の軟磁性体を用いた電磁シールドシートでは、それらの強磁性共鳴周波数、およびその間の帯域で高い磁界シールド効果が得られる。
【0028】
また、異なる層で磁気異方性を2方向に誘導し、直交する2方向に磁界シールド効果を上昇させることもできる。図12は磁気異方性の容易軸方向を異なる層で、直交させた例である。磁気異方性は磁界を印加しながら成膜する等の方法で誘導する。
【0029】
またシールドの最上層に、酸化、吸湿を防止する目的で、Tiやポリミド等の保護膜を形成することもある。
【0030】
なお、3点の周波数で磁界シールド効果の極大値を持ち、より広帯域な磁界シールド効果を有する電磁シールドシートを実現するためには、3種類の強磁性体を用いれば良い。3種類の強磁性体は、NiFe、CoNbZrに加え、2.6GHzに強磁性共鳴周波数を持つCo67Zr8O25等を用いれば良い。
【0031】
(実施形態2)
図13(a)に示す電磁シールドシートは、基材4の上に、強磁性体層2、導体層1、強磁性体層2および導体層1が順次に積層された4層からなる積層膜によって構成されている。図13(b)に示す電磁シールドシートは、基材4の上に、導体層1、強磁性体層2、導体層1および強磁性体層2が順次に積層された4層からなる積層膜によって構成されている。
【0032】
また、図14に示す電磁シールドシートは、基材4の上に、強磁性体層2、導体層1、および強磁性体層2が順次に積層された3層からなる積層膜によって構成されている。図13、および図14に示す電磁シールドシートは導体のみからなる電磁シールドシートよりも高い磁界シールド効果を得ることができる。
【0033】
なお、図13に示す例では、強磁性体層2と導体層1が2層ずつ、順次積層されているが、基材4に隣接する層が強磁性体層2で最上層が導体層1、もしくは基材4に隣接する層が導体層1で最上層が強磁性体層2であれば、導体層1および強磁性体層2の層数は上記に限定されない。
【0034】
また、図14に示す例では、導体層1とこれらを挟むように形成された2層の強磁性体層2から構成されているが、導体層1を強磁性体層2で挟む構造であれば、強磁性体層2、および導体層1の層数は上記に限定されない。
【0035】
導体層1は、例えば銀(Ag)、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)などといった非磁性体(導体)から構成されている。また、高周波では比透磁率が10以下になるようなニッケル(Ni)またはコバルト(Co)の単体、またはその化合物からなる強磁性体も導体層1の構成物として考えられる。
【0036】
強磁性体層2は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)の単体、あるいは、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)を含む化合物からなる軟磁性体から構成されている。化合物としては、例えば、Ni80Fe20、Co85Nb12Zr3、CoZrOを例示することができる。
【0037】
基材4は、絶縁体、または半導体からなり、PETフィルム、ポリイミドシート、銅シート等、柔軟性があるものでも、ガラスエポキシ基板、ガラス基板等、銅板等、柔軟性がないものでもよい。また基材4は、シリコン、GaAs、SiC、GaN等の半導体でもよい。
【0038】
導体層1、および強磁性体層2は、スパッタ、蒸着、めっき、スプレー等の方法で成膜される。また、この磁界シールドシートは、導体層1を含むので、電界もシールドすることができ、磁界だけではなく電界もシールドする電磁シールドシートになる。
【0039】
次に、上記のように構成される電磁シールドシートの電磁ノイズのシールド効果をシミュレーションにより確認したので、その結果を説明する。
【0040】
シミュレーションモデルは電磁シールドシートの層構成を変え、4種類解析した。図15、図16、図17、および図18は解析したシミュレーションモデルの断面図である。図15、図16、図17、および図18のシミュレーションモデルは、シリコン4b内の配線10をノイズ源としており、電磁シールドシートで電磁界を遮断する。シリコン4b内の配線10の幅は0.033mmであり、エポキシ樹脂4aの厚さは0.1mm、シリコン4bの厚さは0.5mm、PETシート5の厚さは0.1mmである。磁界シールド効果は、磁界強度測定面Aでy方向の磁界強度を面積分した値の差分から算出した。磁界強度測定面Aは配線10から0.622um離れた直上に配置し、大きさは0.1mm角とした。
【0041】
図15は導体層1のみからなる電磁シールドシートで、他の電磁シールドシートと比較するために解析した。導体層1の厚さは2umである。
【0042】
図16はPETシート5上に導体層1、強磁性体層2、導体層1、強磁性体層2と順次積層された電磁シールドシートである。導体層1の厚さは0.8um、強磁性体層2の厚さは0.2mmであり、合計の厚さは2umである。
【0043】
図17はPETシート5上に強磁性体層2、導体層1、強磁性体層2、導体層1と順次積層された電磁シールドシートである。導体層1の厚さは0.8um、強磁性体層2の厚さは0.2mmであり、合計の厚さは2umである。
【0044】
図18はPETシート5上に強磁性体層2、導体層1、強磁性体層2と順次積層された電磁シールドシートである。導体層1の厚さは1.6um、強磁性体層2の厚さは0.2mmであり、合計の厚さは2umである。
【0045】
導体層1は導体層1の導電率は10uΩcmである。強磁性体層2はNi80Fe20とした。Ni80Fe20の比透磁率の周波数特性は図5に示すように入力した。
【0046】
これら4つの電磁シールドシートの磁界シールド効果のシミュレーション結果を図19に示す。図16、図17に示した電磁シールドシートでは、同じ2um厚の図15に示した導体のみの電磁シールドシートより10MHz〜5000MHzで磁界シールド効果が高い。
【0047】
また、図18に示した電磁シールドシートは、同じ2um厚の図15に示した導体のみの電磁シールドシートより10MHz〜900MHzで磁界シールド効果が高い。以上のことから、図16、図17、および図18に示した電磁シールドシートは、導体のみの電磁シールドシートよりも、磁界シールド効果が高い周波数の帯域があることがわかる。
【0048】
また、強磁性体層1を2層以上用いる場合、異なる層で2種類以上の軟磁性体を用いることにより、広帯域に高い磁界シールド効果が得られる。加えて、強磁性体層1を2層以上用いる場合、異なる層で磁気異方性を2方向に誘導し、直交する2方向に磁界シールド効果を上昇させることもできる。
【0049】
またシールドの最上層に、酸化、吸湿を防止する目的で、Tiやポリミド等の保護膜を形成することもある。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、2種類以上の導電性の強磁性体層とそれらを挟むように非磁性体からなる導体層が積層された積層膜を構成することにより、広帯域な磁界シールド効果を有する電磁シールドシートを提供することができる。
【0051】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1‥導体層、2,3‥強磁性体層、4‥基材、4a‥エポキシ樹脂、4b‥シリコン、5‥PETシート、6a,6b‥完全導体、10‥配線、A‥磁界強度測定面。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電磁ノイズをシールドする電磁シールドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートブック型パーソナルコンピュータなどといったモバイル機器では、高い周波数で動作する電子部品から発生される電磁ノイズをシールドするために、電子部品を覆うように成形された金属板からなる板金シールドが用いられている。
【0003】
しかしながら、板金シールドは、シールドケースの高さが高くなるので、モバイル機器の薄型化の障害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−348916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モバイル機器の薄型化を実現するために、板金シールドの代わりに、銅(Cu)や銀(Ag)などからなる薄型の導電シートで電子部品を覆うことにより、電磁ノイズをシールドすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、薄い導電シートを用いた場合、磁界シールド効果が小さくなるため、導電シートの厚さをある程度厚くする必要がある。その結果、柔軟性に劣り、電子部品を完全に密閉することが困難になるので、大きなシールド効果を得ることができないという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、薄型化しても磁界シールド特性に優れた電磁シールドシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態に係る電磁シールドシートは、2層以上の強磁性体層の各々を挟むように導体層が積層された積層膜からなり、前記2層以上の強磁性体層は、互いに異なる2種類以上の強磁性体からなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係る電磁シールドシートの構成を示す断面図である。
【図2】実施形態1に係る電磁シールドシートの構成を示す断面図である。
【図3】実施形態1に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す斜視図である。
【図4】実施形態1に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図5】実施形態1、2に係るNi80Fe20の比透磁率の周波数特性を示す図である。
【図6】実施形態1に係るCo85Nb12Zr3の比透磁率の周波数特性を示す図である。
【図7】実施形態1に係る電磁シールドシートの断面図である。
【図8】導体のみの電磁シールドシートの断面図である。
【図9】Ni80Fe20を1層用いた電磁シールドシートの断面図である。
【図10】Co85Nb12Zr3を1層用いた電磁シールドシートの断面図である。
【図11】実施形態1に係る電磁シールドシートの磁界シールド効果の周波数特性を示す図である。
【図12】実施形態2に係る電磁シールドシートの斜視図である。
【図13】実施形態2に係る電磁シールドシートの断面図である。
【図14】実施形態2に係る電磁シールドシートの断面図である。
【図15】実施形態2に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図16】実施形態2に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図17】実施形態2に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図18】実施形態2に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す断面図である。
【図19】実施形態2に係る電磁シールドシートの磁界シールド効果の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電磁シールドシートの構成を示す断面図である。この電磁シールドシートは、基材4、導体層1、強磁性体層2、導体層1、強磁性体層3および導体層1が順次に積層された5層からなる積層膜によって構成されている。強磁性体層2、強磁性体層3は、導電性を有する強磁性体で構成するのが好ましい。強磁性体層2、強磁性体層3は、互いに異なる2種類の強磁性体からなる。
【0012】
導体層と強磁性体層を積層した電磁シールドシートは、強磁性体の強磁性共鳴周波数で磁界シールド効果が高くなる。従って、図2に示すような、強磁性体を一種類のみ用いた電磁シールドシートでは、その強磁性共鳴周波数において、特に高い磁界シールド効果が得られるが、広帯域に高い磁界シールド効果を得ることができなかった。
【0013】
実施形態1に係る図1に示す電磁シールドシートによれば、強磁性体層2と強磁性体層3との強磁性体を2種類用いているので、異なる強磁性共鳴周波数及び異なる強磁性共鳴周波数の間の周波数帯域で、高い磁界シールド効果を得ることができる。
【0014】
なお、図1に示す例では、強磁性体層2、強磁性体層3とこれらを挟むように形成された3層の導体層1とから構成されているが、強磁性体層を導体層で挟む構造であれば、導体層1および強磁性体層2、強磁性体層3の層数は上記に限定されない。強磁性体層2、および強磁性体層3の層数を増やすことにより磁界シールド効果を高めることができる。
【0015】
導体層1は、例えば銀(Ag)、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)などといった非磁性体(導体)から構成されている。また、高周波では比透磁率が10以下になるようなニッケル(Ni)またはコバルト(Co)の単体、またはその化合物からなる強磁性体も導体層1の構成物として考えられる。
【0016】
強磁性体層2、および強磁性体層3は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)の単体、あるいは、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)を含む化合物からなる軟磁性体から構成されている。化合物としては、例えば、Ni80Fe20、Co85Nb12Zr3、Co67Zr8O25を例示することができる。
【0017】
基材4は、絶縁体、導体、または半導体からなり、PETフィルム、ポリイミドシート等、柔軟性があるものでも、ガラスエポキシ基板、ガラス基板等、柔軟性がないものでもよい。また基材4は、シリコン、GaAs、SiC、GaN等の半導体でもよい。
【0018】
導体層1、および強磁性体層2、強磁性体層3は、スパッタ、蒸着、めっき、スプレー等の方法で成膜される。
【0019】
また、この磁界シールドシートは、導体層1を含むので、電界もシールドすることができ、磁界だけではなく電界もシールドする電磁シールドシートになる。
【0020】
次に、上記のように構成される電磁シールドシートの電磁ノイズのシールド効果をシミュレーションにより確認したので、その結果を説明する。
【0021】
図3は、実施形態1に係る電磁シールドシートのシミュレーションモデルの構成を示す斜視図であり、図4は、その断面図である。このシミュレーションモデルは、シリコン4b内の配線10をノイズ源としており、電磁シールドシートで電磁界を遮断する。シリコン4b内の配線10の幅は0.033mmであり、エポキシ樹脂4aの厚さは0.1mm、シリコン4bの厚さは0.5mm、PETシート5の厚さは0.1mmである。磁界シールド効果は磁界強度測定面Aでy方向の磁界強度を面積分した値の差分から算出した。磁界強度測定面Aは配線10から0.622um離れた直上に配置し、大きさは0.1mm角とした。
【0022】
電磁シールドシートは、導体層1、強磁性体層2、導体層1、強磁性体層3および導体層1が順次に積層された5層の積層膜からなり、導体層1の厚さは0.66um、強磁性体層2、および強磁性体層3の厚さは0.2umであり、電磁シールドシートの合計の膜厚は2.0umである。
【0023】
導体層1の導電率は10uΩcmである。強磁性体層2はNi80Fe20であり、図5に示す比透磁率の周波数特性とした。強磁性体層3はCo85Nb12Zr3あり、図6に示す比透磁率の周波数特性とした。強磁性共鳴周波数は890MHzである。この電磁シールドシートの断面図を図7に示す。
【0024】
比較のために、強磁性体を2種類用いた電磁シールドシートのシミュレーションモデルの他に、図8に示す導体のみの電磁シールドシート、および図9に示すNi80Fe20を1層用いた電磁シールドシート、図10に示すようなCo85Nb12Zr3を1層用いた電磁シールドシートのシミュレーションも行った。電磁シールドシートの合計の膜厚は全て2umとした。
【0025】
これら4つの電磁シールドシートの磁界シールド効果のシミュレーション結果を図11に示す。図9、図10に示した電磁シールドシートでは、それぞれNi80Fe20の強磁性共鳴周波数は500MHzであり、Co85Nb12Zr3の強磁性共鳴周波数は890MHzで磁界シールド効果が最大値をとる。これらは、図8で示した導体のみの電磁シールドシートよりも10〜8000MHzで高い磁界シールド効果を有している。
【0026】
これらと比較して、図7に示した電磁シールドシートでは、Ni80Fe20の強磁性共鳴周波数は500MHz以上で、Co85Nb12Zr3の強磁性共鳴周波数は890MHz以下で60dB以上の磁界シールド効果を有しており、広帯域に高い磁界シールド効果が得られている。
【0027】
以上のことから、図7のように異なる強磁性共鳴周波数を有する2種類の軟磁性体を用いた電磁シールドシートでは、それらの強磁性共鳴周波数、およびその間の帯域で高い磁界シールド効果が得られる。
【0028】
また、異なる層で磁気異方性を2方向に誘導し、直交する2方向に磁界シールド効果を上昇させることもできる。図12は磁気異方性の容易軸方向を異なる層で、直交させた例である。磁気異方性は磁界を印加しながら成膜する等の方法で誘導する。
【0029】
またシールドの最上層に、酸化、吸湿を防止する目的で、Tiやポリミド等の保護膜を形成することもある。
【0030】
なお、3点の周波数で磁界シールド効果の極大値を持ち、より広帯域な磁界シールド効果を有する電磁シールドシートを実現するためには、3種類の強磁性体を用いれば良い。3種類の強磁性体は、NiFe、CoNbZrに加え、2.6GHzに強磁性共鳴周波数を持つCo67Zr8O25等を用いれば良い。
【0031】
(実施形態2)
図13(a)に示す電磁シールドシートは、基材4の上に、強磁性体層2、導体層1、強磁性体層2および導体層1が順次に積層された4層からなる積層膜によって構成されている。図13(b)に示す電磁シールドシートは、基材4の上に、導体層1、強磁性体層2、導体層1および強磁性体層2が順次に積層された4層からなる積層膜によって構成されている。
【0032】
また、図14に示す電磁シールドシートは、基材4の上に、強磁性体層2、導体層1、および強磁性体層2が順次に積層された3層からなる積層膜によって構成されている。図13、および図14に示す電磁シールドシートは導体のみからなる電磁シールドシートよりも高い磁界シールド効果を得ることができる。
【0033】
なお、図13に示す例では、強磁性体層2と導体層1が2層ずつ、順次積層されているが、基材4に隣接する層が強磁性体層2で最上層が導体層1、もしくは基材4に隣接する層が導体層1で最上層が強磁性体層2であれば、導体層1および強磁性体層2の層数は上記に限定されない。
【0034】
また、図14に示す例では、導体層1とこれらを挟むように形成された2層の強磁性体層2から構成されているが、導体層1を強磁性体層2で挟む構造であれば、強磁性体層2、および導体層1の層数は上記に限定されない。
【0035】
導体層1は、例えば銀(Ag)、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)などといった非磁性体(導体)から構成されている。また、高周波では比透磁率が10以下になるようなニッケル(Ni)またはコバルト(Co)の単体、またはその化合物からなる強磁性体も導体層1の構成物として考えられる。
【0036】
強磁性体層2は、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)の単体、あるいは、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)を含む化合物からなる軟磁性体から構成されている。化合物としては、例えば、Ni80Fe20、Co85Nb12Zr3、CoZrOを例示することができる。
【0037】
基材4は、絶縁体、または半導体からなり、PETフィルム、ポリイミドシート、銅シート等、柔軟性があるものでも、ガラスエポキシ基板、ガラス基板等、銅板等、柔軟性がないものでもよい。また基材4は、シリコン、GaAs、SiC、GaN等の半導体でもよい。
【0038】
導体層1、および強磁性体層2は、スパッタ、蒸着、めっき、スプレー等の方法で成膜される。また、この磁界シールドシートは、導体層1を含むので、電界もシールドすることができ、磁界だけではなく電界もシールドする電磁シールドシートになる。
【0039】
次に、上記のように構成される電磁シールドシートの電磁ノイズのシールド効果をシミュレーションにより確認したので、その結果を説明する。
【0040】
シミュレーションモデルは電磁シールドシートの層構成を変え、4種類解析した。図15、図16、図17、および図18は解析したシミュレーションモデルの断面図である。図15、図16、図17、および図18のシミュレーションモデルは、シリコン4b内の配線10をノイズ源としており、電磁シールドシートで電磁界を遮断する。シリコン4b内の配線10の幅は0.033mmであり、エポキシ樹脂4aの厚さは0.1mm、シリコン4bの厚さは0.5mm、PETシート5の厚さは0.1mmである。磁界シールド効果は、磁界強度測定面Aでy方向の磁界強度を面積分した値の差分から算出した。磁界強度測定面Aは配線10から0.622um離れた直上に配置し、大きさは0.1mm角とした。
【0041】
図15は導体層1のみからなる電磁シールドシートで、他の電磁シールドシートと比較するために解析した。導体層1の厚さは2umである。
【0042】
図16はPETシート5上に導体層1、強磁性体層2、導体層1、強磁性体層2と順次積層された電磁シールドシートである。導体層1の厚さは0.8um、強磁性体層2の厚さは0.2mmであり、合計の厚さは2umである。
【0043】
図17はPETシート5上に強磁性体層2、導体層1、強磁性体層2、導体層1と順次積層された電磁シールドシートである。導体層1の厚さは0.8um、強磁性体層2の厚さは0.2mmであり、合計の厚さは2umである。
【0044】
図18はPETシート5上に強磁性体層2、導体層1、強磁性体層2と順次積層された電磁シールドシートである。導体層1の厚さは1.6um、強磁性体層2の厚さは0.2mmであり、合計の厚さは2umである。
【0045】
導体層1は導体層1の導電率は10uΩcmである。強磁性体層2はNi80Fe20とした。Ni80Fe20の比透磁率の周波数特性は図5に示すように入力した。
【0046】
これら4つの電磁シールドシートの磁界シールド効果のシミュレーション結果を図19に示す。図16、図17に示した電磁シールドシートでは、同じ2um厚の図15に示した導体のみの電磁シールドシートより10MHz〜5000MHzで磁界シールド効果が高い。
【0047】
また、図18に示した電磁シールドシートは、同じ2um厚の図15に示した導体のみの電磁シールドシートより10MHz〜900MHzで磁界シールド効果が高い。以上のことから、図16、図17、および図18に示した電磁シールドシートは、導体のみの電磁シールドシートよりも、磁界シールド効果が高い周波数の帯域があることがわかる。
【0048】
また、強磁性体層1を2層以上用いる場合、異なる層で2種類以上の軟磁性体を用いることにより、広帯域に高い磁界シールド効果が得られる。加えて、強磁性体層1を2層以上用いる場合、異なる層で磁気異方性を2方向に誘導し、直交する2方向に磁界シールド効果を上昇させることもできる。
【0049】
またシールドの最上層に、酸化、吸湿を防止する目的で、Tiやポリミド等の保護膜を形成することもある。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、2種類以上の導電性の強磁性体層とそれらを挟むように非磁性体からなる導体層が積層された積層膜を構成することにより、広帯域な磁界シールド効果を有する電磁シールドシートを提供することができる。
【0051】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1‥導体層、2,3‥強磁性体層、4‥基材、4a‥エポキシ樹脂、4b‥シリコン、5‥PETシート、6a,6b‥完全導体、10‥配線、A‥磁界強度測定面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の強磁性体層の各々を挟むように導体層が積層された積層膜からなり、前記2層以上の強磁性体層は、互いに異なる2種類以上の強磁性体からなることを特徴とする電磁シールドシート。
【請求項2】
前記2種類以上の強磁性体層の各々は、異なる強磁性共鳴周波数を有し、異なる強磁性共鳴周波数及び異なる強磁性共鳴周波数の間の帯域で高い磁界シールド効果を有することを特徴とする請求項1記載の電磁シールドシート。
【請求項3】
1層以上の強磁性体層と1層以上の導体層が交互に積層され、前記1層以上の強磁性体層と前記1層以上の導体層の層数が等しい積層膜からなり、前記強磁性体層に基材が接触して配置されることを特徴とする電磁シールドシート。
【請求項4】
1層以上の強磁性体層と1層以上導体層が交互に積層され、前記1層以上の強磁性体層と前記1層以上の導体層の層数が等しい積層膜からなり、前記導体層に基材が接触して配置されることを特徴とする電磁シールドシート。
【請求項5】
1層以上の強磁性体層と1層以上導体層が交互に積層され、1層以上の導体層を挟むように強磁性体層が積層された積層膜からなる電磁シールドシート。
【請求項6】
前記強磁性体層は、導電性の軟磁性体からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の電磁シールドシート。
【請求項1】
2層以上の強磁性体層の各々を挟むように導体層が積層された積層膜からなり、前記2層以上の強磁性体層は、互いに異なる2種類以上の強磁性体からなることを特徴とする電磁シールドシート。
【請求項2】
前記2種類以上の強磁性体層の各々は、異なる強磁性共鳴周波数を有し、異なる強磁性共鳴周波数及び異なる強磁性共鳴周波数の間の帯域で高い磁界シールド効果を有することを特徴とする請求項1記載の電磁シールドシート。
【請求項3】
1層以上の強磁性体層と1層以上の導体層が交互に積層され、前記1層以上の強磁性体層と前記1層以上の導体層の層数が等しい積層膜からなり、前記強磁性体層に基材が接触して配置されることを特徴とする電磁シールドシート。
【請求項4】
1層以上の強磁性体層と1層以上導体層が交互に積層され、前記1層以上の強磁性体層と前記1層以上の導体層の層数が等しい積層膜からなり、前記導体層に基材が接触して配置されることを特徴とする電磁シールドシート。
【請求項5】
1層以上の強磁性体層と1層以上導体層が交互に積層され、1層以上の導体層を挟むように強磁性体層が積層された積層膜からなる電磁シールドシート。
【請求項6】
前記強磁性体層は、導電性の軟磁性体からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の電磁シールドシート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−38807(P2012−38807A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175449(P2010−175449)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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