説明

電磁ノイズ発生パターン推定装置、電磁ノイズ発生パターン推定方法及び電磁ノイズ発生パターン推定プログラム

【課題】電磁ノイズの知識を有した専門家や高価な測定器を用いずに、電磁ノイズの発生パターンを推定する。
【解決手段】パラメータ導出部13が記録部12に記録されたCRCエラーのパターンから統計処理時間以上のCRCエラーが発生しない箇所でデータを区切り、区切られた区間それぞれにおいて、連続してCRCエラーが検出される時間幅を継続時間、連続してCRCエラーが検出されない時間幅を休止時間、電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出し、統計処理部14が各区間のパラメータを統計処理して電磁ノイズの発生パターンを推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに影響する電磁ノイズの発生パターンを推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワークの普及に伴い、ネットワークの品質が重要視されるサービスが増加している。これらのサービスは、課金により高品質を提供している場合が多く、品質が劣化した際には早急な対処が求められる。現状では、サービスの品質劣化が発生した場合、ネットワークの知識を有した技術者を現場に派遣し、ネットワークを流れるデータを分析することで原因を追及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−008205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネットワークの品質劣化の原因の一つとして電磁ノイズ(不要電磁妨害波)がある。電子機器内部のスイッチングなどにより、バースト状の電磁ノイズが頻繁に発生することが知られている。バースト状の電磁ノイズは電圧レベルが高く、周波数も広帯域成分を持つため、周囲の通信装置に影響を与える可能性が高い。
【0005】
しかしながら、電磁ノイズが品質劣化の原因である場合は、ネットワークを流れるデータを分析するだけでは判断がつかず、改めて電磁ノイズの知識を有した専門家と測定器を派遣する必要があるため、問題解決までに時間がかかった。また、電磁ノイズの発生パターンを把握するためには、専用の測定器が不可欠であり、測定器の検出部分(電圧プローブなど)をどこに配置するか、測定器の測定条件をどのように設定するか、といったノウハウも必要であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、電磁ノイズの知識を有した専門家や高価な測定器を用いずに、電磁ノイズの発生パターンを推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明に係る電磁ノイズ発生パターン推定方法は、ネットワークを流れるフレームを監視してフレームの異常を検出し、時系列にデータを記録手段に記録するステップと、前記記録手段に記録されたデータを前記フレームの異常が所定の時間以上発生していない箇所で区切り、区切られた区間毎に、フレームの異常が発生している時間幅を電磁ノイズが発生している時間幅とし、フレームの異常が発生していない時間幅を電磁ノイズが発生していない時間幅として電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出するステップと、前記区間毎に導出した前記パラメータを統計処理して電磁ノイズの発生パターンを推定するステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
上記電磁ノイズ発生パターン推定方法において、電磁ノイズが発生している時間幅を継続時間、電磁ノイズが発生していない時間幅を休止時間、前記継続時間と前記休止時間を合わせて繰り返し周期、前記区間の最初から最後までを全継続時間を前記電磁ノイズの発生パターンのパラメータとして導出することを特徴とする。
【0009】
上記電磁ノイズ発生パターン推定方法において、前記統計処理は、各パラメータの平均値、中央値、あるいは最頻値を求めることである。
【0010】
上記電磁ノイズ発生パターン推定方法において、前記統計処理は、各パラメータをクラスター分析にかけることである。
【0011】
第2の本発明に係る電磁ノイズ発生パターン推定装置は、ネットワークを流れるフレームを監視してフレームの異常を検出し、時系列にデータを記録手段に記録する検出手段と、前記記録手段に記録されたデータを前記フレームの異常が所定の時間以上発生していない箇所で区切り、区切られた区間毎に、フレームの異常が発生している時間幅を電磁ノイズが発生している時間幅とし、フレームの異常が発生していない時間幅を電磁ノイズが発生していない時間幅として電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出する導出手段と、前記区間毎に導出した前記パラメータを統計処理して電磁ノイズの発生パターンを推定する推定手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
第3の本発明に係る電磁ノイズ発生パターン推定プログラムは、上記電磁ノイズ発生パターン推定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電磁ノイズの知識を有した専門家や高価な測定器を用いずに、電磁ノイズの発生パターンを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態における電磁ノイズ発生パターン推定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】電磁ノイズの発生パターンの例を示す図である。
【図3】電磁ノイズとイーサネットフレーム異常との関係を示す図である。
【図4】電磁ノイズの全継続時間と統計処理時間との関係を示す図である。
【図5】電磁ノイズの発生パターンを推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態における電磁ノイズ発生パターン推定装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示す電磁ノイズ発生パターン推定装置1は、ネットワークを流れるイーサネット(登録商標)フレームを監視してイーサネットフレームの異常を検出し、検出したイーサネットフレームの異常に基づいて電磁ノイズの発生パターンを推定する装置である。図1に示す電磁ノイズ発生パターン推定装置1は、検出部11、記録部12、パラメータ導出部13、統計処理部14、条件指定部15、入力部16、および表示部17を有する。電磁ノイズ発生パターン推定装置1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは電磁ノイズ発生パターン推定装置1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。以下、各部の詳細について説明する。
【0017】
検出部11は、ネットワークに接続され、接続されたネットワークを流れるイーサネットフレームのCRCエラーを時系列で検出して記録部12に記録する。記録部12に記録されるデータは、正常なイーサネットフレームが検出された時間、CRCエラーが発生したイーサネットフレームが検出された時間などである。
【0018】
パラメータ導出部13は、記録部12に記録されたデータから複数の電磁ノイズの発生パターンを抽出し、各電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出する。パラメータ導出部13は、記録部12に時系列で記録されたデータを後述する統計処理時間に基づいて分割して一連の電磁ノイズの発生箇所を抽出し、抽出した電磁ノイズの発生箇所毎に電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出する。具体的には、記録部12のデータを統計処理時間以上の間CRCエラーが発生していない箇所で区切り、区切られた区間ごと、つまり各一連の電磁ノイズ毎にその電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出する。導出する電磁ノイズの発生パターンのパラメータについては後述する。
【0019】
統計処理部14は、指定された統計処理手法を用いて、パラメータ導出部13が導出した各パラメータの統計処理を行う。なお、統計処理手法については後述する。
【0020】
条件指定部15は、入力部16により入力された統計処理時間、統計処理手法を統計処理部14へ指定する。
【0021】
表示部17は、電磁ノイズの推定結果を表示する。
【0022】
ここで、電磁ノイズの発生パターンについて説明する。
【0023】
図2は、宅内の電源線や通信線に重畳する電磁ノイズの発生パターンの例を示す図である。縦軸が電磁ノイズの電圧レベル、横軸が時間を示している。図2に示すように、電子機器からの電磁ノイズは、一定のパターンで発生する場合が多い。そこで、本実施の形態では、電磁ノイズ200がバースト状に発生している箇所の時間幅を継続時間、電磁ノイズ200が発生していない箇所の時間幅を休止時間、電磁ノイズ200が繰り返される周期を繰り返し周期、および一連の電磁ノイズ200が発生している時間を全継続時間(図2では第1波の開始時から第n波の終了時まで)として、電磁ノイズの発生パターンのパラメータを定義し、電磁ノイズの発生パターンを推定する。
【0024】
図3は、電磁ノイズとイーサネットフレーム異常との関係を示す図である。電源線や通信線にバースト状の電磁ノイズが重畳すると、その電磁ノイズが通信機器に侵入し、イーサネットフレームにCRCエラーが生じる。つまり、CRCエラーが生じている箇所においてバースト状の電磁ノイズが発生したと考えることができる。本発明は、これを利用したもので、CRCエラーが生じた異常イーサネットフレーム111が発生している時間幅を電磁ノイズが発生している時間幅、正常イーサネットフレーム110が伝送されている時間幅を電磁ノイズが発生していない時間幅として、CRCエラーを検出することでバースト状の電磁ノイズの発生パターンを推定する。具体的には、連続して異常イーサネットフレーム111が検出される時間幅を継続時間、連続して正常イーサネットフレーム110が検出される時間幅を休止時間、継続時間と休止時間を合わせて繰り返し周期、異常イーサネットフレーム111が検出されてから検出されなくなるまでの期間を全継続時間とする。なお、本発明では、CRCエラーはすべて電磁ノイズによって発生し、電磁ノイズの発生パターンはCRCエラーの発生パターンに等しいものと仮定している。
【0025】
続いて、統計処理時間と統計処理手法について説明する。
【0026】
統計処理時間は、一連の電磁ノイズの消滅を判定する基準であり、統計処理時間以上の間CRCエラーが発生しない場合に一連の電磁ノイズが消滅したと判断する。つまり、図4に示すように、統計処理時間以上の休止時間が存在する箇所でデータを区切り、区切られた区間で最初にCRCエラーが検出された時間から最後にCRCエラーが検出された時間までを一連の電磁ノイズの発生箇所とする。そして、区切られたそれぞれの区間において電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出する。
【0027】
統計処理部14は、各区間において導出したパラメータを指定された統計処理手法により統計処理し、電磁ノイズの発生パターンを統計的に推定する。具体的な統計処理手法としては、パラメータ導出部13が導出した継続時間、休止時間、繰り返し周期、全継続時間の4つのパラメータそれぞれの単なる平均値、中央値、あるいは最頻値などを求めて出力する方法、あるいは、継続時間、休止時間、繰り返し周期、全継続時間の4つのパラメータをクラスター分析(階層型クラスタリングなど)にかけ、どのような発生パターンの電磁ノイズが多く発生しているかを出力する方法がある。
【0028】
統計処理時間、統計処理手法は、入力部16により入力される。統計処理の元になったデータは記録部12に記録されているため、統計処理時間、統計処理手法を変えて再度計算し、結果を表示させることができる。
【0029】
次に、本実施の形態における電磁ノイズ発生パターン推定装置の処理の流れについて説明する。
【0030】
図5は、本実施の形態における電磁ノイズ発生パターン推定装置1が電磁ノイズの発生パターンを推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0031】
検出部11は、ネットワークを流れるイーサネットフレームを常時観測し、時系列でCRCエラーの発生パターンを時系列に記録部12に記録している。
【0032】
まず、ユーザが入力部16から統計処理時間、統計処理手法などの統計処理条件を入力する(ステップS11)。
【0033】
パラメータ導出部13は、記録部12に記録されたデータからCRCエラーが生じた異常イーサネットフレーム111が発生している時間幅、正常イーサネットフレーム110が伝送されている時間幅を取得し、正常イーサネットフレーム110が伝送されている時間幅が統計処理時間以上の箇所でデータを区切り、区切られた区間それぞれにおいて継続時間、休止時間、繰り返し周期、全継続時間の4つのパラメータを導出する(ステップS12)。
【0034】
続いて、統計処理部14が条件指定部15から指定された統計処理手法を用いてパラメータ導出部13が導出した4つのパラメータの統計処理を行う(ステップS13)。
【0035】
要求があれば、統計処理の結果を表示部17に出力する(ステップS14)。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によれば、パラメータ導出部13が記録部12に記録されたCRCエラーのパターンから統計処理時間以上のCRCエラーが発生しない箇所でデータを区切り、区切られた区間それぞれにおいて、連続してCRCエラーが検出される時間幅を継続時間、連続してCRCエラーが検出されない時間幅を休止時間、電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出し、統計処理部14が各区間のパラメータを統計処理して電磁ノイズの発生パターンを推定することにより、電磁ノイズの知識を有した専門家や高価な測定器を用いず、電磁ノイズの発生パターンを推定することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…電磁ノイズ発生パターン推定装置
11…検出部
12…記録部
13…パラメータ導出部
14…統計処理部
15…条件指定部
16…入力部
17…表示部
110…正常イーサネットフレーム
111…異常イーサネットフレーム
200…電磁ノイズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを流れるフレームを監視してフレームの異常を検出し、時系列にデータを記録手段に記録するステップと、
前記記録手段に記録されたデータを前記フレームの異常が所定の時間以上発生していない箇所で区切り、区切られた区間毎に、フレームの異常が発生している時間幅を電磁ノイズが発生している時間幅とし、フレームの異常が発生していない時間幅を電磁ノイズが発生していない時間幅として電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出するステップと、
前記区間毎に導出した前記パラメータを統計処理して電磁ノイズの発生パターンを推定するステップと、
を有することを特徴とする電磁ノイズ発生パターン推定方法。
【請求項2】
電磁ノイズが発生している時間幅を継続時間、電磁ノイズが発生していない時間幅を休止時間、前記継続時間と前記休止時間を合わせて繰り返し周期、前記区間の最初から最後までを全継続時間を前記電磁ノイズの発生パターンのパラメータとして導出することを特徴とする請求項1記載の電磁ノイズ発生パターン推定方法。
【請求項3】
前記統計処理は、各パラメータの平均値、中央値、あるいは最頻値を求めることである請求項1又は2記載の電磁ノイズ発生パターン推定方法。
【請求項4】
前記統計処理は、各パラメータをクラスター分析にかけることである請求項1又は2記載の電磁ノイズ発生パターン推定方法。
【請求項5】
ネットワークを流れるフレームを監視してフレームの異常を検出し、時系列にデータを記録手段に記録する検出手段と、
前記記録手段に記録されたデータを前記フレームの異常が所定の時間以上発生していない箇所で区切り、区切られた区間毎に、フレームの異常が発生している時間幅を電磁ノイズが発生している時間幅とし、フレームの異常が発生していない時間幅を電磁ノイズが発生していない時間幅として電磁ノイズの発生パターンのパラメータを導出する導出手段と、
前記区間毎に導出した前記パラメータを統計処理して電磁ノイズの発生パターンを推定する推定手段と、
を有することを特徴とする電磁ノイズ発生パターン推定装置。
【請求項6】
電磁ノイズが発生している時間幅を継続時間、電磁ノイズが発生していない時間幅を休止時間、前記継続時間と前記休止時間を合わせて繰り返し周期、前記区間の最初から最後までを全継続時間を前記電磁ノイズの発生パターンのパラメータとして導出することを特徴とする請求項5記載の電磁ノイズ発生パターン推定装置。
【請求項7】
前記統計処理は、各パラメータの平均値、中央値、あるいは最頻値を求めることである請求項5又は6記載の電磁ノイズ発生パターン推定装置。
【請求項8】
前記統計処理は、各パラメータをクラスター分析にかけることである請求項5又は6記載の電磁ノイズ発生パターン推定装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁ノイズ発生パターン推定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする電磁ノイズ発生パターン推定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−122914(P2012−122914A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275273(P2010−275273)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)