説明

電磁弁

【目的】 過大な荷重を緩衝しつつ弁体を適度な力で弁座部に押し付けることができ、確実にロックし得る電磁弁を提供する。
【構成】ソレノイド4によって往復駆動される弁体3を強制的に弁座8に押し付けてロックするロック機構5を設け、ロック機構5に、ばね力によって弁体を弁座に押し付けてロック可能とする弾性部材15を設けてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえば電磁弁に関し、特に弁体の強制的なロック機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の電磁弁としては、たとえば図10に示すようなものがある。
【0003】すなわち、内部中空の弁本体100と、この弁本体100内部に移動自在に設けられる弁体101と、を備えている。この弁体101は弁本体100内部の弁座部102に当接可能となっており、ソレノイドを備えた電磁アクチュエータ103によって往復駆動されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来技術にあっては、ソレノイド0Nの開弁時、または閉弁時であっても弁体101下部から過大な負圧が印加された場合等において、緊急に弁体101をシールする必要が生じた場合に対し、シールが不可能であった。
【0005】特に、電磁力が作用していない閉弁時には、スプリング104によって弁体101が弁座部102に押さえられてはいるものの、押し付け力が弱いために、たとえば振動等により弁体101が弁座部102から離間してシール性が低下する場合もある。
【0006】このような問題を解決するためにはスプリング104の荷重を大きくすればよいが、スプリング104の荷重は電磁アクチュエータ103の駆動力とのバランスによって決定されるもので、電磁アクチュエータの性能から自ずと制限されてしまう。
【0007】そこで、弁本体外部から別途ロック部材を挿入して弁体101を強制的にロックすることが考えられるが、単にロック部材でロックしただけでは、ロック部材に過大な外力が作用した場合、外力が直接弁体101に伝えられ、弁体101と弁座102のシール面に過大な負荷が加わり、耐久性が低下してしまうという問題があった。
【0008】また、ロックに必要な押付力を得るには、ロック部材の長さ,弁体の高さ等の正確な寸法管理が必要となり製作が面倒であった。
【0009】本発明は上記した従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、過大な荷重を緩衝しつつ弁体を適度な力で弁座部に押し付けることができ、確実にロックし得る電磁弁を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明にあっては、内部中空の弁本体と、該弁本体に内に設けられる弁座部と、該弁座部に対して接離自在に設けられる弁体と、該弁体を駆動する電磁アクチュエータと、を備えた電磁弁において、前記弁体を強制的に弁座に押し付けてロックするロック機構を設け、該ロック機構に、ばね力によって弁体を弁座に押し付けてロック可能とする弾性部材を設けてなることを特徴とする。
【0011】ロック機構は、弁体に当接するロッドと、弁本体外部に突出するロック棒とから構成されていて、前記弾性部材は、前記ロッドとロック棒の間に介在されていることを特徴とする。
【0012】ロック機構は、弁体に対して接離する方向に移動可能の第1のロック部材と、該第1のロック部材を介して前記弁体を前記弁座部に対して押圧付勢する第1の付勢手段と、 前記第1のロック部材の弁体と反対側に設けられ、第1のロック部材に対して相対移動自在に組み付けられる第2のロック部材と、該第2のロック部材を第1のロック部材から離れる方向に付勢する第2の付勢手段と、を備え、前記第1のロック部材と第2のロック部材の間に、前記第2のロック部材が前記弁体から遠ざかる方向に移動する際には互いに係合して前記第1のロック部材と第2のロック部材を一体に移動させ、第2のロック部材が前記弁体に対して近づく方向に移動する際には第1のロック部材と第2のロック部材を独立に移動可能とする係合部を設けたことを特徴とする。
【0013】ロック機構は、弁本体外部から内部に出没可能に挿入され挿入端部が前記弁体に当接可能なロック部材と、該ロック部材を弁座に対して押圧付勢する付勢手段と、該付勢手段の付勢力に抗してロック部材の挿入端部を弁体から所定距離だけ離間させた状態に押し戻すばね力を有する支持部材と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
【作用】本発明にあっては、ロック機構の弾性部材のばね力によって弁体を弁座部に押し付けてロックする。弁体に過大な外部荷重が作用しても、弾性部材の伸縮によって緩衝されて、過大な荷重が弁座部には作用しない。
【0015】また、請求項3に記載のロック機構の場合には、第2のロック部材に外部より荷重が加えられると、第2の付勢手段の付勢力に抗して第2のロック部材が弁体側に移動する。第1のロック部材は第1の付勢手段の付勢力により弁体側に付勢されているので、第1のロック部材と同じく弁体側に移動する。そして、あるストローク以上になると第1のロック部材が弁体に当接し、弁体を弁座部に押し付けてシールすることになる。この押付力は第1の付勢手段の付勢力により決定されるので、第2のロック部材を押す外力には無関係に設定可能となる。
【0016】また、第2のロック部材を押す外力のストローク量が過大であっても第1のロック部材がスペーサに当接すれば、それ以降は第2のロック部材がストロークしたとしても第1のロック部材は不動であり、第2スプリングの荷重によってのみ弁体を押すこととなる。
【0017】以上により第1,第2のロック部材を設置することにより、必要時に弁体を弁座部に押圧固定してシールすることが可能となり、特に第1のロック部材と第2のロック部材を分離して、弁体を第2の付勢手段によって押し付けることにしたので弁体の押付力の緩和および外部からの第2のロック部材ストローク公差の吸収が可能となる。
【0018】また、請求項4に記載のロック機構の場合には、支持部材に外力を加え、支持部材のばね力に抗して押し込むと、支持部材によって押し戻されていたロック部材が付勢手段によって弁本体内側に押し込まれ、ロック部材の挿入端部によって弁体が弁座に押圧される。この押圧力は外力とは無関係に付勢手段の付勢力によってのみ決定され、弁体と弁座の当接部間に過大な負荷は加わらない。
【0019】外力を取り除くと、支持部材のばね力によって、付勢手段の付勢力に抗してロック部材が押し戻され、ロック部材の挿入端部は弁体から所定距離だけ離間する。
【0020】
【実施例】以下に本発明を図示の実施例に基づいて説明する。
【0021】本発明の第1実施例に係る電磁弁を示す図1R>1において、1は電磁弁としてのソレノイドバルブ全体を示しており、概略、弁本体としての中空のボデイ2と、ボデイ2内に設けられる弁座部8と、この弁座部8に対して接離自在に設けられる弁体3としてのプランジャ3と、ボデイ2に組み付けられプランジャ3を駆動するための電磁アクチュエータとしてのソレノイド部4と、プランジャ3を弁座部8に押し付けてロックするロック棒5と、から構成されている。
【0022】ボデイ2内部には第1,第2流路6,7が設けられ、一方の第1流路6のボデイ2内側の開口部に前記した弁座部8が設けられている。
【0023】ソレノイド部4はボデイ2に一体的に組み付けられるもので、弁座部8と対向配置される固定鉄心としてのセンタポスト11と、このセンタポスト11を取り囲むように配置されるコイル12とを有し、コイル12を励磁することによってプランジャ3をセンタポスト11端面に電磁吸引するようになっている。またセンタポスト11の外部端面側にはアッパプレート41が設けられ、このアッパプレート41に対してコイル12を隔てて対向する位置にはロアプレート42が設けられている。これらアッパプレート41とロアプレート42は図示しない継鉄部によって接続され磁路を構成するようになっている。
【0024】プランジャ3とセンタポスト11の間にはプランジャ3を弁座部8に対して付勢するプランジャスプリング13が介装され、このプランジャスプリング13のばね力によって常時閉弁されている。
【0025】一方、開弁時には、図1(b)に示すように、このプランジャスプリング13のばね力に抗してプランジャ3を電磁吸引し弁座部8から離間させるようになっている。
【0026】ロック棒5は、センタポスト11の中心軸を貫通する貫通孔14を通してセンタポスト11の外部端面から挿入されるもので、ロック棒5の先端が弾性部材としての緩衝用スプリング15を介してプランジャ3に当接している。 緩衝用スプリング15はプランジャ3に設けられた凹部16に挿入され、シム17を介してロック棒5の先端に当接している。このロック棒5,シム17および緩衝用スプリング15によってロック機構が構成される。このシム17は、磁束が無限大になるのを防止する目的で設けられている。
【0027】また、貫通穴14の外側開口部は拡径されて大径孔部18となっており、ロック棒5には、大径孔部18内周に摺接するピストン部19が設けられている。ピストン部19外周にはXリング等のシール部材20が設けられてシールを確実にしている。また、ピストン部19は抜け止めストッパとしても機能するもので、上記大径孔部18を閉塞するアッパプレート41に係合して抜け止めが図られている。一方、ロック棒5の一端はアッパプレート41の端面から外部に所定寸法だけ突出している。
【0028】また、ピストン部19の内側端面と大径孔部18の段差部21との間には、ロック棒戻しスプリング22が介装され、ピストン部19をアッパプレート41に対して押圧付勢している。
【0029】このようにプランジャ3とシム17の間に緩衝用スプリング15を配置し、緩衝用スプリング15及びシム17によりプランジャ3とロック棒5とが直接接触しないようにしている。これにより、ロック時、ロック棒5のバルブ押付力が減衰される。
【0030】上記構成の電磁弁においては、図1(b)に示すような開弁時、または図1(a)に示すような閉弁時であってもプランジャ3下部から過大な負圧が印加された場合や振動が大きいような場合等、緊急にプランジャ3をシールする必要が生じた場合、図2に示すように、ロック棒5の突出端部を押し込むことによってプランジャ3を弁座部8に押し付けてロックする。
【0031】本実施例にあっては、プランジャ3とシム17の間に緩衝用スプリング15を配置し、緩衝用スプリング15及びシム17によりプランジャ3とロック棒5とが直接接触しないようにしているので、ロック棒5に過大な外部荷重が作用しても、緩衝用スプリング15の伸縮によって緩衝され、プランジャ3に過大なロック荷重は作用しない。
【0032】さらに、緩衝用スプリング15は部品の寸法公差範囲において荷重変位が小さいと考えられることから、ロック棒5の長さ,プランジャ3の高さおよびシム17の厚さの寸法公差を充分に吸収することができ、強いては部品の寸法公差を拡大して製作を容易にできる。
【0033】押し込み量としては、最大限、ピストン部19下端面が段差部21に当接するまでのストロークであるが、最大ストローク分押し込んでもよいし、段差部21に当接しない途中位置まで押し込むようにしてもよい。
【0034】また、ロック位置におけるシム17とプランジャ3の位置関係は、シム17がプランジャ3に当接しない位置関係となるように設定してもよいし、当接する位置関係となっていてもよい。最終的にシム17がプランジャ3に当接したとしても、その途中で緩衝用スプリング15によって外部荷重が緩衝されているので、プランジャ3に対して過大な荷重は作用しない。
【0035】図3にはシムの形状のバリエーションを示している。
【0036】同図(a)は平板状のシム17の例である。
【0037】同図(b),(c)のシム171,172は断面ハット形状で、それを互いに逆向きに配置した例である。
【0038】図4(a),(b)は、緩衝用スプリング15を省略し、弾性部材として若干厚みを有する弾性材のシム173、あるいは薄肉の弾性材のシム174を用い、シム173,174自体の弾力性によって外力を緩衝するようにした例である。
【0039】(第2実施例)図5には、本発明の第2実施例が示されている。以下、上記第1実施例と同一の構成部分については同一の符号を付して本実施例を説明する。
【0040】本実施例は、緩衝用スプリング15を省略したもので、シム17Aをプランジャ3に凹部16の開口端部が閉塞するように当接して保持している。
【0041】また、ロック機構50は、センタポスト11Aに形成された段差部21を有しない大径孔部18Aの内周に摺接するピストン部19Aを有するロック棒51と、そのピストン部19Aにて弾性部材であるスプリング23を介して連結されるプランジャ3にシム17Aを介して当接するロッド52とから構成されている。
【0042】ピストン部19Aには、中心軸線上にプランジャ3側を開口するピストン凹部19Bを有している。一方、ロッド52の奥端には、半径方向外向きのフランジ部52Aを有しており、そのフランジ部52Aが、ピストン凹部19B内に挿入され、その開口端部に設けられた係止部19Cに係止することによってロッド52がロック棒51に保持されている。
【0043】そして、ピストン凹部19B内にスプリング23が挿入されており、その一端がロッド52の奥端面に当接し、他端がピストン凹部19Bの底面に当接して、ロッド52のフランジ部52Aが係止部19Cに当接するように押圧付勢している。
【0044】上記のように、本実施例はロッド52がシム17Aに当接するようにし、弁座部8への荷重をスプリング23のみが受ける構成としている。また、スプリング23のばね定数を小さくすることにより、ロック棒51のストロークが大きくなっても弁座部8への荷重を極力抑えることができる。これにより、ロック時、ロック部材50のバルブ押付力が減衰される。
【0045】さらに、スプリング23は、部品の寸法公差範囲において荷重変位が小さいと考えられることから、ロック棒51の長さ,プランジャ3の高さ,シム17Aの厚さ等の寸法公差およびソレノイド部4の取付部の寸法公差から生ずるロック棒51のストロークのばらつきを吸収することができ、強いては部品の寸法公差を拡大して製作を容易にできる。
【0046】その他の構成および作用については第1実施例と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0047】(第3実施例)次に本発明の第3実施例について説明する。
【0048】本発明の第3実施例に係る電磁弁 を示す図1において、301は電磁弁としてのソレノイドバルブ全体を示しており、概略、中空のボデイ302と、このボデイ302内に移動自在に設けられる弁体としてのプランジャ303と、ボデイ302に組み付けられアクチュエータとしてのソレノイド部304と、ボデイ302の外部、この実施例ではソレノイド部304を通じてボデイ302内部に挿入されてプランジャ303をロックするロック機構305と、から構成されている。上記ボデイ302とソレノイド部304とが本願発明の弁本体を構成するものである。
【0049】ボデイ302内部には第1,第2流路306,307が設けられ、一方の第1流路306のボデイ302内側の開口部には、プランジャ303が当接する弁座部308が設けられている。
【0050】ソレノイド部304はボデイ302に一体的に組み付けられるもので、弁座部308と対向配置される固定鉄心としてのセンタポスト311と、このセンタポスト311を取り囲むように配置されるコイル312とを有し、コイル312を励磁することによってプランジャ303をセンタポスト311端面に電磁吸引するようになっている。またセンタポスト311の外部端面側にはアッパプレート341が設けられ、このアッパプレート341に対してコイル312を隔てて対向する位置にはロアプレート342が設けられている。これらアッパプレート341とロアプレート342は図示しない継鉄部によって接続され磁路を構成するようになっている。
【0051】プランジャ303とセンタポスト311の間にはプランジャ303を弁座部308に対して付勢するプランジャスプリング313が介装され、このプランジャスプリング313のばね力によって閉弁されている。一方、開弁時には、このプランジャスプリング313のばね力に抗してプランジャ303を電磁吸引し弁座部308から離間させるようになっている。プランジャスプリング313の一端は、電磁吸引時にセンタポスト311とプランジャ303の間に所定の間隔を明けるためのスペーサ314を介してプランジャ303に当接するようになっている。また、プランジャ303の反弁座部側の端面には凹部316が形成されている。
【0052】ロック機構305は、プランジャ303に対して接離する方向に移動可能の第1のロック部材としてのリテーナ317と、このリテーナ317を介してプランジャ303を弁座部308に対して押圧付勢する第1の付勢手段としての第1のスプリング318と、このリテーナ317の反プランジャ側に設けられ、リテーナ317に対して相対移動自在に組み付けられる第2のロック部材としてのロック棒319と、このロック棒319をリテーナ317から離れる方向に付勢する第2の付勢手段としての第2のスプリング320と、を備えている。
【0053】また、リテーナ317とロック棒319の間には、ロック棒319が前記プランジャ303から遠ざかる方向に移動する際に互いに係合して前記リテーナ317とロック棒319を一体に移動させ、ロック棒319が前記プランジャ303に対して近づく方向に移動する際にはリテーナ317とロック棒319を相互に独立に移動可能とする係合部321が設けられている。
【0054】センタポスト311には、その中心軸に沿って外部から内部まで貫通する貫通孔322が形成されている。この貫通孔322はセンタポスト311の外側端面側から3段階に拡大される段付き構成で、センタポスト311の外側端面に開口するロック棒319が案内されるロック棒ガイド部323と、リテーナ317を案内する中央のリテーナガイド部324と、プランジャ303側に開口し上記したプランジャスプリング313および第1のスプリング318が挿入されるスプリングガイド部325と、から構成されている。
【0055】上記リテーナ317は内部に中空穴326が設けられた円筒状部材で、そのプランジャ側開口端部外周には第1のスプリング318の一端が係合する環状のスプリング座327が突出形成されている。このスプリング座327がセンタポスト311に形成されたスプリングガイド部325奥端の環状の段差部328と所定距離だけ離間して対向しており、上記した第1のスプリング318がスプリング座327と段差部328との間に圧縮状態にて介装されている。この第1のスプリング318は前記プランジャスプリング313よりも小径で、プランジャスプリング313内周とリテーナ317外周との環状の空間に挿入されている。
【0056】また、リテーナ317のプランジャ303と反対側の開口端部にはロック棒319のプランジャ側端部が摺動自在に挿入され、その開口端部内周にロック棒319との係合部321を構成する内向き環状凸部329が形成されており、ロック棒319下端にはこの内向き環状凸部329のプランジャ側端面に係合する外向き環状凸部330が形成されている。
【0057】ロック棒319はセンタポスト311のロック棒ガイド部323に外部から挿入されるもので、その外側端部に円盤状のスプリング押え331が設けられ、このスプリング押え331とアッパプレート341の間に第2のスプリング320が圧縮状態にて介装されている。そして、自由状態ではこの第2のスプリング320のばね力によってロック棒319が弁本体から抜け出る方向に付勢され、係合部321を介してリテーナ317の反プランジャ側端部をリテーナガイド部324奥端の段部332に突き当てて位置決め保持するようになっている。
【0058】また、ロック棒319とロック棒ガイド部323との摺動面間はXリング等のシール部材333によってシールされている。
【0059】ロック棒319に外部より荷重が加えられると、第2のスプリング320に抗してロック棒319がプランジャ303側に向けて下方に移動する。リテーナ317は第1のスプリング318によりロック棒319下端に押し付けられているので、ロック棒319と同じく下方へ移動する。そして、あるストローク以上になるとリテーナ317の下端がスペーサ314を介してプランジャ303を押し、プランジャ303を弁座部308に圧接してシールすることになる。
【0060】この押付力は第1のスプリング318のセット荷重およびばね定数により決定されるので、ロック棒319を押す外力には無関係に設定可能となる。
【0061】また、ロック棒319を押す外力のストローク量が過大であってもリテーナ317下端がスペーサ314に当たれば、それ以降はロック棒319がストロークしたとしてもリテーナ317は不動であり、第1のスプリング318の荷重によってのみプランジャ303を押すこととなる。
【0062】(第4実施例)図7乃至図9には、本発明の第4実施例を示している。
【0063】図7および図8において、1は電磁弁全体を示しており、概略、中空のボデイ402と、このボデイ402内に移動自在に設けられる弁体としてのプランジャ403と、ボデイ402に組み付けられアクチュエータとしてのソレノイド404と、ボデイ402の外部、この実施例ではソレノイド404を通じてボデイ402内部に挿入されてプランジャ403をロックするロック棒405と、から構成されている。上記ボデイ402とソレノイド404とが本願発明の弁本体を構成するものである。
【0064】ボデイ402内部には第1,第2流路406,407が設けられ、一方の第1流路406のボデイ402内側の開口部には、プランジャ403が当接する弁座408が設けられている。プランジャ403と弁座408当接部にはゴム等のシール材434が焼き付けられている。
【0065】ソレノイド404はボデイ402に一体的に組み付けられるもので、弁座408と対向配置される固定鉄心としてのセンタポスト411と、このセンタポスト411を取り囲むように配置されるコイル412とを有し、コイル412を励磁することによってプランジャ403をセンタポスト411端面に電磁吸引するようになっている。またセンタポスト411の外部端面側にはアッパプレート441が設けられ、このアッパプレート441に対してコイル412を隔てて対向する位置にはロアプレート442が設けられている。これらアッパプレート441とロアプレート442は図示しない継鉄部によって接続され磁路を構成するようになっている。
【0066】プランジャ403とセンタポスト411の間にはプランジャ403を弁座408に対して付勢するプランジャスプリング413が介装され、このプランジャスプリング413のばね力によって閉弁されている。一方、開弁時には、このプランジャスプリング413のばね力に抗してプランジャ403を電磁吸引し弁座408から離間させるようになっている。
【0067】ロック棒405はセンタポスト411の中心軸を貫通するガイド孔414を通してセンタポスト411の外部端面から挿入されている。ガイド孔414は、その外側開口部および内側開口部が共に拡径されて第1,第2大径孔部415,416となっている段付き構成となっている。一方、ロック棒405は、中途部に大径のピストン部417が設けられた棒状部材で、ピストン部417が外側開口部に位置する第1大径孔部415内周に軸方向に摺動自在に挿入されている。このロック棒405のピストン部417外周にはXリング等の弾性シール部材418が設けられて気密性を確保している。ロック棒405の挿入方向端部419は小径で、ガイド孔414を通してセンタポスト411内側端面に開口する第2大径孔部416に、プランジャ403に対向するように突出している。一方、ロック棒405の反対側の突出端部421も挿入方向端部419と同じく小径でアッパプレート441に形成された中央孔422から外部に突出している。
【0068】この第1大径孔部415に挿入されるピストン部417とアッパプレート441の間には、ロック棒405を弁座408に対して押圧付勢する付勢手段としての押圧スプリング423が圧縮状態で介装されている。
【0069】そして、本願発明では、この押圧スプリング423の付勢ばね力に抗してロック棒405の挿入端部419をプランジャ403から所定距離だけ離間させた状態に押し戻す支持手段を構成するコイルスプリング424およびスプリング押え425が設けられている。また、ロック棒405の上端にはスプリング押え425の内周をガイドとし、軸方向に摺動自在のピン426が設けられている。ピン426とロック棒405は、ネジ等により固定一体化されている。
【0070】スプリング押え425とアッパプレート441の設定距離によりピン426の移動が決められる。
【0071】そして、プランジャ403をロックする場合には、図9(a)に示すように、スプリング押え425の上面端部に外力を加え、コイルスプリング425のばね力に抗して押し込むと、コイルスプリング425のばね力によって押し戻されていたロック棒405の挿入端部419によってプランジャ403が弁座408に対して押圧される。
【0072】この押圧力は外力とは無関係に押圧スプリング423のばね力によってのみ決定され、プランジャ403と弁座408の当接部間に過大な負荷は加わらない。外力を取り除くと、コイルスプリング424のばね力によって、押圧スプリング423のばね力に抗してロック棒405が押し戻され、ロック棒405の挿入端部419はプランジャ403から所定距離だけ離間する。
【0073】このように、ロック棒405の摺動部に弾性シール部材418を装着し、この装着部段差とアッパプレート441間に押圧スプリング423を装着し、さらにソレノイドより外部に突出したロック棒突出端部421およびピン426と、コイルスプリング424およびスプリング押え425を設置した。
【0074】このことにより、ソレノイド内部の気密性は確保し、また、プランジャ403に過大な外力は加わらず、耐久性向上を図ることができる。さらに、外力が除去された際には、ロック棒405が所定の位置に戻ることが可能となる。
【0075】また、ロック棒405の戻りストッパとしてスリーブ427をセンターポスト411に内蔵することにより、コイルスプリング424と押圧スプリング423のバランスした場所に限らず、初期のロック棒405の設定位置を決めることが可能となる。
【0076】
【発明の効果】本発明は以上の構成および作用を有するもので、弁体を押さえる荷重が過大になった場合には緩衝手段によって緩衝することができるので、弁座部が摩耗してシール不良を招来するおそれはなく耐久性向上を図ることができる。
【0077】また、ロック部材や弁体の寸法誤差等を吸収することができ、製作が容易にできる。
【0078】また、第1,第2のロック部材を設置することにより、必要時に弁体を弁座部に押圧固定してシールすることが可能となった。
【0079】特に、第1のロック部材と第2のロック部材を分離して弁体を第2の付勢手段によって押し付ける構成としたので、弁体の押付力の緩和および外部からの第2のロック部材のストローク公差の吸収が可能となった。
【0080】また、付勢手段の付勢力に抗してロック部材の挿入端部を弁体から所定距離だけ離間させた状態に押し戻すばね力を有する支持部材を設けることにより、弁体の押付力は外力とは無関係に付勢手段の付勢力のみによって決まるので、弁体と弁座間に過大な荷重が加わることを防止することができ、耐久性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の第1実施例に係る電磁弁の閉弁状態の全体縦断面図、同図(b)は開弁状態の部分断面図である。
【図2】図2は図1の電磁弁のロック状態の全体縦断面図である。
【図3】図3(a),(b),(c)はシム形状の各種バリエーションを示す要部断面図である。
【図4】図4(a)はシム自体にばね弾性を持たせた例を示す電磁弁の断面図、同図(b)はシムを薄板状にした例のロック状態の要部断面図である。
【図5】図5(a)は本発明の第2実施例に係る電磁弁の全体縦断面図、同図(b)はロック状態の要部断面図である。
【図6】図6(a)は本発明の第3実施例に係る電磁弁の全体縦断面図、同図(b)はロック状態の要部断面図である。
【図7】図7(a)は本発明の第4実施例に係る電磁弁のロック状態の全体縦断面図、同図(b)は同図(a)の上面図である。
【図8】図8は図7(a)の要部拡大図である。
【図9】図9(a)は図7(a)のロック状態を示す図、同図(b)は図7(a)の電磁弁にロック棒戻りストッパとしてスリーブを装着した場合の縦断面図である。
【図10】図10は従来の電磁弁の全体縦断面図である。
【符号の説明】
1 ソレノイドバルブ
2 ボデイ(弁本体)
3 プランジャ(弁体)
4 ソレノイド部
41 アッパプレート
42 ロアプレート
5 ロック棒(ロック部材)
6 第1流路
7 第2流路
8 弁座部
11,11A センタポスト
12 コイル
13 第1スプリング
14 貫通孔
15 緩衝用スプリング(弾性部材)
16 凹部
17,171,172,173,174 シム
18,18A 大径孔部
19,19A ピストン部
19B ピストン凹部
19C 係止部
20 シール部材
21 段差部
22 ロック棒戻しスプリング
23 スプリング(弾性部材)
50 ロック部材
51 ロック棒
52 ロッド
52A フランジ部
301 ソレノイドバルブ
302 ボデイ(弁本体)
303 プランジャ(弁体)
304 ソレノイド
341 アッパプレート
342 ロアプレート
305 ロック棒(ロック部材)
306 第1流路
307 第2流路
308 弁座部
311 センタポスト
312 コイル
313 プランジャスプリング
314 スペーサ
315 リテーナ
316 凹部
317 リテーナ(第1のロック部材)
318 第1のスプリング
319 ロック棒(第2のロック部材)
320 第2のスプリング
321 係合部
322 貫通孔
323 ロック棒ガイド部
324 リテーナガイド部
325 スプリングガイド部
326 中空穴
327 スプリング座
328 段差部
329 内向き環状凸部
330 外向き環状凸部
331 スプリング押え
332 段部
333 シール部材
401 ソレノイドバルブ
402 ボデイ(弁本体)
403 プランジャ(弁体)
404 ソレノイド
441 アッパプレート
442 ロアプレート
405 ロック棒(ロック部材)
406 第1流路
407 第2流路
408 弁座
411 センタポスト
412 コイル
413 プランジャスプリング
414 ガイド孔
415 第1大径孔部
416 第2大径孔部
417 ピストン部
418 シール部材
419 挿入端部
421 突出端部
422 中央孔
423 押圧スプリング(付勢手段)
424 コイルスプリング
425 スプリング押え
426 ピン
427 スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部中空の弁本体と、該弁本体に内に設けられる弁座部と、該弁座部に対して接離自在に設けられる弁体と、該弁体を駆動する電磁アクチュエータと、を備えた電磁弁において、前記弁体を強制的に弁座に押し付けてロックするロック機構を設け、該ロック機構に、ばね力によって弁体を弁座に押し付けてロック可能とする弾性部材を設けてなることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】 ロック機構は、弁体に当接するロッドと、弁本体外部に突出するロック棒とから構成されていて、前記弾性部材は、前記ロッドとロック棒の間に介在されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】ロック機構は、弁体に対して接離する方向に移動可能の第1のロック部材と、該第1のロック部材を介して前記弁体を前記弁座部に対して押圧付勢する第1の付勢手段と、前記第1のロック部材の弁体と反対側に設けられ、第1のロック部材に対して相対移動自在に組み付けられる第2のロック部材と、該第2のロック部材を第1のロック部材から離れる方向に付勢する第2の付勢手段と、を備え、前記第1のロック部材と第2のロック部材の間に、前記第2のロック部材が前記弁体から遠ざかる方向に移動する際には互いに係合して前記第1のロック部材と第2のロック部材を一体に移動させ、第2のロック部材が前記弁体に対して近づく方向に移動する際には第1のロック部材と第2のロック部材を独立に移動可能とする係合部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項4】ロック機構は、弁本体外部から内部に出没可能に挿入され挿入端部が前記弁体に当接可能なロック部材と、該ロック部材を弁座に対して押圧付勢する付勢手段と、該付勢手段の付勢力に抗してロック部材の挿入端部を弁体から所定距離だけ離間させた状態に押し戻すばね力を有する支持部材と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開平8−128555
【公開日】平成8年(1996)5月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−290658
【出願日】平成6年(1994)10月31日
【出願人】(000004385)エヌオーケー株式会社 (1,527)