説明

電磁波吸収布およびその二次製品

【課題】電化製品等から放射される有害電磁波を効果的に吸収減衰すると共に、洗濯耐久性に優れた電磁波吸収布およびその二次製品を提供する。
【解決手段】布材1に金属線によりサイン波形状または三角波形状の波形素子6aを形成すると共に、この波形素子6aに対して逆位相に交差する状態のもとに金属線によりサイン波形状または三角波形状の波形素子6bを形成し、かつ両波形素子6a,6bの交点上を結ぶように金属線により直線形素子6cを形成し、これら両形波素子6a,6bおよび直線形素子6cによる電磁波吸収素子群6の形成により電磁波を吸収減衰させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波吸収布および電磁波吸収布を使用した二次製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の普及に伴ない、800MHz〜950MHz帯の周波数の電磁波を吸収し、人体への悪影響を防止する手段の重要性が高まっており、また電子レンジ,テレビ,パソコンのモニター用ブラウン管,電気毛布,電子カーペット等の種々の電化製品から放射される電磁波についても人体への悪影響が懸念されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の電磁波遮断または吸収手段としては、導電性被膜をコーティングした繊維による電磁波遮断ネットまたは織布を使用した型式、あるいは織布に金属をコーティングした型式、あるいはシートに特殊パターンの金属薄膜を印刷した型式等、種々の手段が開発されている。しかし柔軟性が求められる衣類においては、洗濯耐久性に乏しく、使用に伴ない電磁波防止機能が著しく低下する欠点がある。
【0004】
そこで本発明の目的は、携帯電話の送信周波数帯域から電子レンジの放射周波数帯域に至る比較的広帯域に適用可能で、装着性,装着感に優れ、かつ耐久性並びに通気性があり、特に洗濯耐久性に優れた電磁波吸収布およびその二次製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、布材に金属線によりサイン波形状または三角波形状の波形素子を形成すると共に、この波形素子に対して逆位相に交差する状態のもとに金属線によりサイン波形状または三角波形状の波形素子を形成し、かつ両波状素子の交点上を結ぶように金属線により直線形素子を形成し、これら両波形素子および直線形素子による電磁波吸収素子群の形成により電磁波を吸収減衰させるようにしたことを主要特徴とするものである。
【0006】
請求項1の発明は、高周波誘電体特性を有する合成樹脂製のテープ状の支持体に金属線を縫い込んだテープを用意し、布材に前記テープにより電磁波吸収素子群を形成してなる電磁波吸収布であり、また請求項2の発明は、高周波誘電体特性を有する布状の支持体に、金属線を直接縫い込んで電磁波吸収素子群を形成してなる電磁波吸収布である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の電磁波吸収布において、その布材に対して、電磁波吸収素子群の外側からカバ−用布材を被せ掛けて電磁波吸収素子群を布材およびカバ−用布材により挟持する状態のもとに縫い付け一体化してなる電磁波吸収布であり、また請求項4の発明は、電磁波吸収素子群を形成した布状の支持体の両面にカバー用布材を被せ掛けて縫い付け一体化してなる請求項2に記載の電磁波吸収布である。
【0008】
請求項5の発明は、布材およびカバー用布材が柔軟性並びに伸縮性を有する布材である請求項3に記載の電磁波吸収布であり、また請求項6の発明は、布状の支持体およびカバー用布材が柔軟性並びに伸縮性を有する布材である請求項4に記載の電磁波吸収布である。
【0009】
請求項7の発明は、電磁波の波長に対応して、両波形素子の波長並びに波高値の寸法を電磁波の波長の1/4とした請求項1ないし請求項6のいずれか1に記載の電磁波吸収布であり、請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれか1に記載の電磁波吸収布を使用した二次製品であり、また請求項9の発明は請求項1ないし請求項7のいずれか1に記載の電磁波吸収布を使用した妊婦用腹帯である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成により、携帯電話の送信周波数帯域ないし電子レンジから放射されるマイクロ波に至る比較的広帯域の電磁波吸収に適応し、電磁波を効果的に吸収減衰させることができ、実施の結果によれば、吸収減衰率は1/11〜1/10であり、電磁波吸収布により電磁波の電圧は−20dB以下になることが認められた。また、表面に導電膜を形成した型式の繊維を使用した電磁波遮断ネットまたは織布に比較して耐久性に優れ、洗濯による電磁波吸収効果の劣化は皆無に近い。
【0011】
電磁波吸収布の構成素材即ち布材1,カバー用布材2,布状の支持体3として、柔軟性並びに伸縮性を有するほか、通気性に富むものを選択することにより、装着性,装着感に優れ、衣類用に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の電磁波吸収布およびその二次製品について図1ないし図6に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態における本発明の電磁波吸収布を例示するものであって、適宜大きさで適宜形状の布材1とカバー用布材2とを用意する。これら布材1およびカバー用布材2は、柔軟性並びに伸縮性を有するほか、通気性に富む織成あるいは編成による布材を採択する。かつ別に、図2に詳示するように、高周波誘電体特性を有する合成樹脂製のテープ状の支持体3に金属線4を1列または均等間隔の複数列のもとに縫い込んだテープ5を用意し、このテープ5を布材1にサイン波形状に縫い付けて波形素子6aを形成すると共に、他のテープ5を波形素子6aに対して逆位相に交差する状態のもとにサイン波形状に縫い付けて波形素子6bを形成し、かつ両波形素子6a,6bの交点上を結ぶようにテープ5を直線状に縫い付けて直線形素子6cを形成し、これ等の波形素子6a,6bおよび直線形素子6cにより電磁波吸収素子群6を形成して電磁波を効果的に吸収減衰させる電磁波吸収布を構成する。更に必要に応じ、布材1に対しカバー用布材2を各素子6a,6b,6cによる電磁波吸収素子群6が挟持される状態のもとに被せ掛けて縫い付け一体化する。
【0014】
図3は、他の実施形態の電磁波吸収布を例示するものであって、高周波誘電体特性を有する布状の支持体3に、金属線4を1列または均等間隔の複数列のもとにサイン波形状に縫い込んで波形素子6aを形成すると共に、この波形素子6aに対して逆位相に交差するように金属線4を1列または均等間隔の複数列のもとにサイン波形状に縫い込んで波形素子6bを形成し、かつ両波形素子6a,6bの交点上を結ぶように金属線4を1列または均等間隔の複数列のもとに直線状に縫い込んで直線形素子6cを形成して電磁波吸収素子群6を形成し、これにより電磁波を効果的に吸収減衰させる電磁波吸収布を構成する。更に必要に応じ、布状の支持体3の両面にカバー用布材2を被せ掛けて布状の支持体3をカバー用布材2により挟持する状態のもとに縫い付け一体化する。布状の支持体3およびカバー用布材2としては、柔軟性並びに伸縮性を有するほか、通気性に富む織成あるいは編成による布材を採択する。
【0015】
前記波形素子6a,6bのサイン波形状の寸法については、サイン波形状の1サイクルの長さ並びに波高値即ち直線状素子6cからサイン波形状の頂点までの距離を、防御しようとする電磁波の周波数帯域における中間周波数の波長の1/4とする。携帯電話による電磁波を防御することを主目的にする場合には、800MHz〜950MHzの中間周波数875MHzの波長の1/4とするのがよい。これにより携帯電話の送信周波数帯域の電磁波を効果的に吸収減衰させることができる。また、防御しようとする電磁波の周波数が950MHzを超え、あるいはマイクロ波の場合には、その波長に対応して波形素子6a,6bの寸法を選定すればよい。
【0016】
電磁波吸収素子群6における波形素子6a,6bの形状については、サイン波形状以外に三角波形状でもよく、三角波形状の場合はテープ5の縫い付けが容易であり、電磁波吸収機能についてもサイン波形状に比較して大差はない。広面積の電磁波吸収布を必要とする場合は、電磁波吸収素子群6を複数列設ければよく、またサイン波形状あるいは三角波形状の波幅が狭くなる場合があっても支障がないばかりでなく、波幅が狭くなると電磁波の減衰度が良好になる傾向がある。なお、サイン波形状あるいは三角波形状が少し歪んだ形状になっても支障はなく、本発明の技術的範囲である。い。
【0017】
図4は、本発明の電磁波吸収布についての電磁波吸収減衰測定図であって、図5に吸収減衰特性値を示している。即ち、信号周波数発信器7および高周波電圧測定器8を設けると共に、これら信号周波数発信器7および高周波電圧測定器8に、800MHz〜950MHzの各周波数の1/4波長の送信アンテナ7aおよび受信アンテナ8aを接続し、送信アンテナ7aから50cmの間隔の位置に受信アンテナ8aを配置する。そして送信アンテナ7aと受信アンテナ8aとの間に介在物がない場合の受信電圧と、送信アンテナ7aと受信アンテナ8aとの間に被測定体Aとしての電磁波吸収布を受信アンテナ8aに近い前方の3cm隔てた位置に介在させた場合の受信電圧とを比較し、各周波数の吸収減衰特性を測定した結果、図5に示す測定値が得られた。電磁波吸収布による吸収減衰率は1/11〜1/10であり、電磁波吸収布により電磁波の電圧は−20dB以下になることが判った。従って、布材1または高周波誘電体特性を有する支持体3上に金属線4で形成される電磁波吸収パターンにより比較的広い周波数帯域の電磁波を効率的に吸収減衰させる作用のあることが明らかとなった。
【0018】
本発明の電磁波吸収布を使用して種々の二次製品が得られるが、例えば、シャツ,肌着類,ねまき類,コルセット,妊婦用腹帯,エプロン,衣服等の衣類、頭部に着用する帽子,頭巾,ヘルメット等、ふとん,ふとんカバー,毛布,敷布等の寝具、カーテンを挙げることができる。なお例示した二次製品以外のものにも適用することができることは当然である。
【0019】
本発明の電磁波吸収布の適用対象としては、胎児に有害な電磁波を吸収遮断する妊婦用腹帯が好適であり、図6のように、図1に記載の電磁波吸収布を両端部が比較的小幅でかつ妊婦の腹部への巻き付けに充分な長さを有する横長に裁断し、かつ小幅の両端部付近には、電磁波吸収布による巻き付け太さが調節可能な型式の一対の止具9a,9bを設けて妊婦の腹部に巻き付けたまま、止具9a,9bにより止着して装着するようにする。止具9a,9bとしてはマジックテープ(登録商標)等の面ファスナーが望ましく、その他鉤ホック,スナップ金具,釦等を採択することができる。
【0020】
前記布材1およびカバ−用布材2は柔軟性および伸縮性を有するものを採択するのが装着性,装着感に優れ実用上望ましく、電磁波吸収布を二次製品に適用するには、電磁波吸収布を二次製品に縫い付けてもよく、あるいは二次製品の所定部位に波形素子6a,6bおよび直線状素子6cによる電磁波吸収素子群6を直接形成した後、必要に応じカバー用布材2を縫い付けてもよいのである。心臓ペースメーカー装着患者用の衣服に適用するには、衣服の胸部に対応する部位に装着して使用すればよい。
【0021】
電磁波吸収布を適用する二次製品が帽子,ヘルメット等のように頻繁に洗濯をする必要のないものの場合は、布材1,カバー用布材2,布状の支持体3は、布織布,フエルトを採用してもよいこと当然である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】 本発明の一実施形態における電磁波吸収布の平面図である。
【図2】 図1の電磁波吸収布に使用するテープの平面図である。
【図3】 他の実施形態における電磁波吸収布の平面図である。
【図4】 電磁波減衰特性を測定する測定図である。
【図5】 電磁波減衰特性図である。
【図6】 妊婦用腹帯の部分的破断平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 布材
2 カバー用布材
3 支持体
4 金属線
5 テープ
6 電磁波吸収素子群
6a 波形素子
6b 波形素子
6c 直線形素子
7 信号周波数発信器
7a 送信アンテナ
8 高周波電圧測定器
8a 受信アンテナ8a
A 被測定体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波誘電体特性を有する合成樹脂製のテープ状の支持体(3)に金属線(4)を縫い込んだテープ(5)を用意し、テープ(5)を布材(1)の片面にサイン波形状または三角波形状に縫い付けて波形素子(6a)を形成すると共に、他のテープ(5)を波形素子(6a)に対して逆位相に交差する状態のもとにサイン波形状または三角波形状に縫い付けて波形素子(6b)を形成し、かつ両波形素子(6a),(6b)の交点上を結ぶようにテープ(5)を直線状に縫い付けて直線形素子(6c)を形成し、これ等の波形素子(6a),(6b)および直線形状素子(6c)により電磁波吸収素子群(6)を形成してなる電磁波吸収布。
【請求項2】
高周波誘電体特性を有する布状の支持体(3)に、金属線(4)をサイン波形状または三角波形状に縫い込んで波形素子(6a)を形成すると共に、この波形素子(6a)に対して逆位相に交差する状態のもとに金属線(4)をサイン波形状または三角波形状に縫い込んで波形素子(6b)を形成し、かつ両波形素子(6a),(6b)の交点付近を結ぶように金属線(4)を1列または均等間隔の複数列のもとに直線状に縫い込んで直線形素子(6c)を形成し、これ等の波形素子(6a),(6b)および直線形素子(6c)により電磁波吸収素子群(6)を形成してなる電磁波吸収布。
【請求項3】
テープ(5)による電磁波吸収素子群(6)を形成した布材(1)に対して、その電磁波吸収素子群(6)の外側からカバ−用布材(2)を被せ掛けてテープ(5)による電磁波吸収素子群(6)を布材(1)およびカバ−用布材(2)により挟持する状態のもとに縫い付け一体化してなる請求項1に記載の電磁波吸収布。
【請求項4】
布状の支持体(3)の両面にカバー用布材(2)を被せ掛けて布状の支持体(3)をカバー用布材(2)により挟持する状態のもとに縫い付け一体化してなる請求項2に記載の電磁波吸収布。
【請求項5】
布材(1)およびカバー用布材(2)が柔軟性並びに伸縮性を有する布材である請求項3に記載の電磁波吸収布。
【請求項6】
布状の支持体(3)およびカバー用布材(2)が柔軟性並びに伸縮性を有する布材である請求項4に記載の電磁波吸収布。
【請求項7】
電磁波の波長に対応して、両波形素子(6a),(6b)の波長並びに波高値の寸法を電磁波の波長の1/4とした請求項1ないし請求項6のいずれか1に記載の電磁波吸収布。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1に記載の電磁波吸収布を使用した二次製品。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか1に記載の電磁波吸収布を使用した妊婦用腹帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−235075(P2007−235075A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89326(P2006−89326)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(591233986)
【Fターム(参考)】