説明

電磁界測定器支持装置

【課題】電磁界計測器を空間中の所望の位置に正確かつ容易に保持可能とすることにより、精度よく再現性の高い電磁界測定を実施可能とする。
【解決手段】電力設備から外部に放射される磁界を測定するための略直方体状の電磁界測定器90を支持する電磁界測定器支持装置1であって、電磁界測定器の上面を除いた他の面を包囲する容器本体10と、容器本体の上面側開口部12の少なくとも一つの端縁14に沿って折り曲げ自在に連接されて上面側開口部を閉止した閉止状態と上面側開口部を開放した開放状態との間を開閉自在に構成された板状の蓋部材20と、を備え、蓋部材は、上面側開口部の端縁と平行な山折り線(30、32)を少なくとも二本備え、開放状態において各山折り線を夫々山折りにして先端部を容器本体に係止することにより、容器本体の側面にスペーサブロック50を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁界測定器を用いて変電所や送電線等の電力設備から放射される電磁界を測定するに際し、電磁界測定器を空間中の所望の位置に保持可能にする電磁界測定器支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線や変電所、家庭用電気機器などの電力設備から発生する電界、磁界及び電磁界(以下まとめて「電磁界」という。)のばく露量に関しては、ICNIRPガイドラインにおいてその制限値が定められている。
電力設備周辺において上記制限値を順守するためには、精度よく再現性のある測定を実施する必要があり、電磁界の測定方法が国際規格IEC62110にて定められている。具体的には、(1)一様な電磁界が想定される場合(例えば、架空送電線の下方や配電線の下方)には、地面から1mの高さにおいて測定する、(2)非一様な磁界が想定される場合(例えば、変電所の敷地境界や電気機器の直近など)には、敷地境界等から水平方向に0.2m離間し、且つ地面から0.5m、1.0m、1.5mの高さにおいて測定する、(3)床下に電力設備がある場合には、地面から0.2mの高さにおいて測定することが定められている。
電磁界を測定するためには、例えば特許文献1に示すような携帯用測定器を用いることができる。測定器を上記(1)乃至(3)に示した空間位置とするために、従来は作業員が測定器を手に持った状態で、測定器の高さや電力設備からの距離をスケールにて計測していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−343178公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測定器を手に持った状態では測定器を正しい位置に正しい姿勢で保持し続けることが困難である。また、電磁界測定の都度、スケールを利用して測定器の高さや電力設備からの距離を調整する作業は繁雑である。また、作業員がスケールを持参していない場合には、規格に準拠した測定を行うことができない。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、電磁界計測器を空間中の所望の位置に正確かつ容易に保持可能とすることにより、精度よく再現性の高い電磁界測定を実施可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電力設備から外部に放射される磁界を測定するための略直方体状の電磁界測定器を支持する電磁界測定器支持装置であって、前記電磁界測定器の上面を除いた他の面を包囲する容器本体と、該容器本体の上面側開口部の少なくとも一つの端縁に沿って折り曲げ自在に連接されて前記上面側開口部を閉止した閉止状態と該上面側開口部を開放した開放状態との間を開閉自在に構成された板状の蓋部材と、を備え、前記蓋部材は、前記上面側開口部の端縁と平行な山折り線を少なくとも二本備え、前記開放状態において前記各山折り線を夫々山折りにして先端部を前記容器本体に係止することにより、前記容器本体の側面にスペーサブロックを形成する電磁界測定器支持装置を特徴とする。
請求項1の発明では、容器本体が、電磁界測定器の表示部や操作部のある面(上面)を露出させた状態にて電磁界測定器を収容する。蓋部材の閉止時には、蓋部材が容器本体の上面側開口部を閉止し、電磁界測定器支持装置は電磁界測定器の保管用容器として機能する。そして、蓋部材を上面側開口部の端縁に沿って開放することで電磁界測定器の上面が露出し、電磁界測定器の操作及び電磁界の測定が可能な状態となる。さらに、蓋部材を山折り線にて山折りにして容器本体に係止すると、蓋部材がブロック状に変形してスペーサブロックとなる。
請求項2に記載の発明は、前記容器本体には、前記電磁界測定器を地面から任意の高さ位置に保持する伸縮自在な脚部が設けられている請求項1に記載の電磁界測定器支持装置を特徴とする。
請求項2の発明では、測定器支持台に支持された電磁界測定器の地面からの距離を脚部の長さによって決定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スペーサブロックにより電力設備の被測定部位と電磁界測定器との距離を一定に保持することができるので、電磁界計測器を空間中の所望の位置に正確かつ容易に保持可能となり、精度よく再現性の高い電磁界測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る電磁界測定器支持装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】電磁界測定器支持装置を示す斜視図であり、(a)は蓋部材の閉止状態を示し、(b)は蓋部材の開放状態を示し、(c)は蓋部材にてスペーサブロックを形成した状態を示す図である。
【図3】電磁界測定器支持装置を底面側から観察した部分斜視図である。
【図4】電磁界測定器支持装置の部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図1乃至図4に基づいて説明する。図1は、本発明に係る電磁界測定器支持装置の使用状態を示す斜視図である。図2は、電磁界測定器支持装置を示す斜視図であり、(a)は蓋部材の閉止状態を示し、(b)は蓋部材の開放状態を示し、(c)は蓋部材にてスペーサブロックを形成した状態を示す図である。図3は、電磁界測定器支持装置を底面側から観察した部分斜視図である。図4は、電磁界測定器支持装置の部分拡大側面図である。なお、図2、3においては、脚部を省略している。
【0009】
本発明に係る電磁界測定器支持装置は、容器本体の上面側開口部を閉止する蓋部材をスペーサブロックに変形させて、このスペーサブロックにより電磁界測定器を電力設備から水平方向に所定距離離間した位置に保持可能とした点に特徴がある。
電磁界測定器支持装置1(支持装置1)は、変電所100、送電線、配電線、配電機器又は家庭用電気器具等の電力設備から放射される電界や磁界、電磁界(以下、まとめて「電磁界」と表現する)を測定する電磁界測定器90(測定器90)を支持する装置である。
支持装置1は、測定器90の上面を除いた他の面を包囲する容器本体10と、容器本体10の上面側開口部12の端縁(第一の端縁14、第二の端縁18)に沿って夫々折り曲げ自在に連接されて上面側開口部12を閉止した閉止状態と上面側開口部12を開放した開放状態との間を開閉自在に構成された板状の蓋部材(第一の蓋部材20、第二の蓋部材40)を備えている。また容器本体10は、測定器90を地面から任意の高さ位置に保持する伸縮自在な脚部60を備えている。
【0010】
測定器90は略直方体状であり、その上面に測定器90の設定内容や電磁界の強度等を表示する表示部92と、測定器90に動作命令や設定を入力する操作部94とを備えている。また、測定器90には電磁界を測定するセンサ部96が内蔵されており、測定器90の上面にはセンサ部96の位置が記されている。
容器本体10は、上面に上面側開口部12を備え、測定器90の上面以外の5つの面を包囲した状態にて測定器90を収容する。即ち、容器本体10に収容された状態において測定器90の表示部92と操作部94が露出し、電磁界測定に必要な操作が可能である。
【0011】
本実施形態に係る支持装置1は、2つの蓋部材(第一の蓋部材20と第二の蓋部材40)を有している。第一の蓋部材20は上面側開口部12の第一の端縁14に連設されており第二の蓋部材40は上面側開口部12の第二の端縁18に連設されている。第一の端縁14と第二の端縁18とは、上面側開口部12の4端縁のうち隣接する2端縁である。第一の蓋部材20と第二の蓋部材40は変形して、容器本体10の側面に夫々第一のスペーサブロック50と第二のスペーサブロック80を形成する。以下においては、第一の蓋部材20についてのみ説明するが、第二の蓋部材40も同様であるためその説明を省略する。なお、本明細書においては、蓋部材の折り方向に関し、閉止時の折り状態を谷折りと表現し、スペーサブロック形成時の折り状態を山折りと表現する。
【0012】
蓋部材20は、端縁14と平行であって、閉止時に谷折りとなる谷折り線22(第一の谷折り線24、第二の谷折り線26)と、スペーサブロック50形成時に山折りとなる山折り線28(第一の山折り線30、第二の山折り線32)と、を備えている。なお、第一の谷折り線24と第二の山折り線32のように、谷折り線と山折り線を兼用し、折り線部分が山形と谷形の双方の形状に変形するようにしてもよい。
蓋部材20の谷折り線22を谷折りすることによって、図2(a)に示すように、上面側開口部12が閉止され、測定器90の全面が包囲された状態となり、支持装置1は測定器90の保管用容器として機能する。また、上面側開口部12の開放時に山折り線28を山折りすることによって、図2(c)に示すように、容器本体10の側面にブロック状のスペーサブロック50を形成することが可能である。スペーサブロック50は、測定器90を変電所100等の電力設備から所定距離離間した位置に保持することができる。
【0013】
容器本体10と蓋部材20とが連設される端縁14は、蓋部材20による容器本体の閉止時には谷折りとなり、開放時とスペーサブロック50形成時には山折りとなるように変化する。山折り線28は、閉止時に蓋部材20を平板状態にし、スペーサブロック50形成時に山折りとなるように変化する。また、谷折り線22は、閉止時に谷折りとなり、スペーサブロック50形成時に蓋部材20が平板状態となるように変化する。言い換えれば、端縁14、山折り線28及び谷折り線22は夫々ヒンジ部として機能する。
蓋部材20の材質や折り曲げ動作機構は特に限定されない。即ち、端縁14、山折り線28及び谷折り線22において夫々山折り又は谷折りに変形し、これら変形箇所以外の部分において蓋部材20を平板状に維持することができればよい。
例えば、合成皮革や布等、それ自体が自在に変形しうる材料を用い、変形箇所以外の部分に芯やスペーサブロック50の骨組みとなる枠状の構造フレームを用いる構成としても良い。また、硬質プラスチック等、それ自体では容易に変形しない材料を用い、変形箇所にヒンジや自在に変形可能な材料を用いる構成としても良い。
【0014】
図2(c)に示すように、スペーサブロック50は、上面側開口部12と同一面内に位置するブロック上面52と、変電所100等の壁面に対向させるブロック側面54と、容器本体の容器底面16と略同一面内に位置するブロック底面56(図3参照)とを有している。
ブロック上面52は端縁14と第一の山折り線30との間の面から構成され、ブロック側面54は第一の山折り線30及び第二の山折り線32との間の面から構成され、ブロック底面56は、第二の山折り線32と先端部34との間の面から構成される。
ブロック側面54とセンサ部96との距離は、測定時に従うべき規格に合わせた長さとなるように予め設定されている。例えば、図2においては20cmと設定されている。なお、スペーサブロック50の形成時に、少なくとも第一の山折り線30又は第二の山折り線32のうちの一方とセンサ部96との距離が、測定時に従うべき規格に合わせた長さとなっていればよい。この場合、後述する水準器58を利用することで、被測定部位とセンサ部96との水平距離を一定に保つことができる。
【0015】
また、図3に示すように、蓋部材20の先端部34には、容器底面16の被係止部17に係止可能な係止部36が設けられている。係止部36を被係止部17に係止することによって、変形後の蓋部材20をブロック状に、すなわちスペーサブロック50の形状に維持する。なお、係止部36及び被係止部17の係止機構は特に限定されない。図3には係止機構の一例としてホックを示している。
ブロック上面52の適所には、容器本体10の水平状態を確認する水準器58を備えていてもよい。例えば、ブロック側面54を変電所100の壁面に密着させることができないような場合であっても、第一の山折り線30又は第二の山折り線32のうちの少なくとも一方を変電所100等の壁面に密着させ、水準器58の表示を確認しながら容器本体10が水平となるように調整すれば、センサ部96が変電所100の被測定部位から所望の距離だけ離間した状態を維持することができる。
【0016】
脚部60について、図1及び図4に基づいて説明する。脚部60は、水平状態にした容器本体10の容器底面16から地面に向けて鉛直方向に突出するように取り付けられている。脚部60は、複数本の異径のパイプを入れ子式に連結した多段式の構成を有し、軸方向(高さ方向)に振り出し竿式に伸縮自在となっている。パイプを順次引き出して全体を伸長又は収縮させることにより、容器本体10を地面から任意の高さ位置に保持することができる。
容器本体10に対して脚部60は取り外し可能であり、脚部60の一端部60aは、容器本体10の接続部19と螺合して、容器本体10の高さを微調整する調整手段61となっている。すなわち、脚部60を中心に容器本体10を回転させることにより、容器本体10の地上高を微調整することができる。
【0017】
また、脚部60は、所定の高さ(伸長長さ)毎に色分けが施された高さ表示手段70を備えている。測定時に従うべき規格に合わせた長さ毎に、例えば50cm毎に色分けをすることによって、規格に準拠した高さに容易に調整することができる。また、高さ表示手段70として、より詳細に高さを表示できる目盛りを備えてもよい。特に調整手段61の部位に目盛りを備えた場合には、容易かつ正確に脚部60の高さを微調整することができる。
また、脚部60の他端部60b側には、支持装置1を自立させる補助脚62が取り付けられている。補助脚62は、少なくとも支持装置1が転倒しない程度に自立させることができればよい。補助脚62は、例えば三脚とすることができる。
【0018】
以上のように構成された支持装置1の使用法について、電力設備が変電所100である場合の例により説明する。
図2(a)の閉止状態にある支持装置1の蓋部材20を、端縁14周りに回転させつつ開放し(図2(b))、第一の山折り線30と第二の山折り線32を夫々山折りにするとともに、係止部36を被係止部17に係止し(図3)、容器本体10の側面にスペーサブロック50を形成する(図2(c))。同様にスペーサブロック80も形成する。
測定器90が所望の高さ位置となるように脚部60を伸長させる(図1)。このとき、高さ表示手段70の表示を参考にする。また、測定器90のセンサ部96の高さ位置がわかっている場合には、センサ部96が地面から所望の高さ位置となるように、調整手段61(図4)を用いて調整する。変電所100の壁面にブロック側面54を密着させ、測定器90の示す値を読み取る。
【0019】
以上のように、電磁界の測定時には、スペーサブロック50が測定器90と電力設備の被測定部位との距離を固定的に保持する。そして、センサ部96が被測定部位から測定時に従うべき規格に準拠した距離だけ離間した状態を保持することができる。従って、精度よく再現性の高い電磁界測定を行うことができる。なお、スペーサブロック80を用いても同様に再現性の高い電磁界測定を行うことができる。いずれのスペーサブロックを使用するかは、測定場所の広さや測定しやすさ等を考慮して決定すればよい。
また、異なる高さ位置における測定を行う場合は、センサ部96が所望の高さ位置となるように脚部60を伸長させて同様に測定を行う。測定終了時には、脚部60を容器本体10から取り外し収縮させて、また、蓋部材を閉止することによって、コンパクトに収納できる。
【0020】
以上のように本実施形態によれば、容器本体の上面側開口部を閉止する蓋部材をスペーサブロックに変形させて、電磁界測定器のセンサ部を電力設備の被測定部位から所定距離離間した位置に保持することができる。また、脚部が自在に伸縮して容器本体が所望の高さ位置となるので、センサ部を規格に合わせた高さ位置に保持することができる。また、高さ表示手段により脚部が所定の高さ毎に色分けされているので、測定器支持台の地上高を容易に確認することができる。また、調整手段により測定器支持台の地上高を微調整することができるので、センサ部の高さ位置が異なる電磁界測定器を使用する場合であっても、センサ部の地上高を正確に設定することができる。
このように、測定器を空間の所望の位置に保持することができるので、精度よく再現性の高い電磁界測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0021】
1…電磁界測定器支持装置(支持装置)、10…容器本体、12…上面側開口部、14…端縁(第一の端縁)、16…容器底面、17…被係止部、18…第二の端縁、19…接続部、20…蓋部材(第一の蓋部材)、22…谷折り線、24…第一の谷折り線、26…第二の谷折り線、28…山折り線、30…第一の山折り線、32…第二の山折り線、34…先端部、36…係止部、40…第二の蓋部材、50…スペーサブロック(第一のスペーサブロック)、52…ブロック上面、54…ブロック側面、56…ブロック底面、58…水準器、60…脚部、61…調整手段、62…補助脚、70…表示手段、80…スペーサブロック(第二のスペーサブロック)、90…電磁界測定器(測定器)、92…表示部、94…操作部、96…センサ部、100…変電所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力設備から外部に放射される磁界を測定するための略直方体状の電磁界測定器を支持する電磁界測定器支持装置であって、
前記電磁界測定器の上面を除いた他の面を包囲する容器本体と、該容器本体の上面側開口部の少なくとも一つの端縁に沿って折り曲げ自在に連接されて前記上面側開口部を閉止した閉止状態と該上面側開口部を開放した開放状態との間を開閉自在に構成された板状の蓋部材と、を備え、
前記蓋部材は、前記上面側開口部の端縁と平行な山折り線を少なくとも二本備え、前記開放状態において前記各山折り線を夫々山折りにして先端部を前記容器本体に係止することにより、前記容器本体の側面にスペーサブロックを形成することを特徴とする電磁界測定器支持装置。
【請求項2】
前記容器本体には、前記電磁界測定器を地面から任意の高さ位置に保持する伸縮自在な脚部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁界測定器支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−13500(P2012−13500A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149174(P2010−149174)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)