電磁誘導機器
【課題】本発明の目的は、電磁誘導機器において、鉄心角部との間の絶縁信頼性を向上させ、かつ鉄心の明確な接地を少ない部品構成で実現できる電界緩和を図るシールドを提供することにある。
【解決手段】表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚と鉄心ヨークの接続角部に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、前記シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接地し、積層された金属板から成る電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端に電界緩和及び近傍に対向する高圧課電部との電界緩和と接地を同時に一枚のシールドで実現することである。
【解決手段】表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚と鉄心ヨークの接続角部に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、前記シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接地し、積層された金属板から成る電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端に電界緩和及び近傍に対向する高圧課電部との電界緩和と接地を同時に一枚のシールドで実現することである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導機器内の鉄心角部に装着する電界緩和を図るシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電力用の変圧器またはリアクトル等の電磁誘導機器は、鉄心脚、巻線及び鉄心脚同士を磁気的につなぐ鉄心ヨークが主要素として構成されている。変圧器に使用される鉄心脚や鉄心ヨークは、表面に電気絶縁被膜が施された薄い金属板を複数枚積層された構成となっているものが多い。
【0003】
このため鉄心の断面形状は図9のaに示したように、方形に積み上げた場合は4箇所の角部31aができ、また円形状に積み上げた場合は、図9のbのように階段状に角部31bが形成され、何れも角部を含んだ形状となる。さらに図8に示した様に、鉄心脚2cと鉄心ヨーク1cとの接合部にも角部31cが形成される。
【0004】
つまりこれらの31a、31b、と近傍の巻線4、または31cに近傍の高圧リード線6が配置された場合、それぞれの角部と課電部間で、大きな電位差が発生し、コロナ放電や絶縁破壊が発生する危険性がある。
【0005】
よって従来は、その様な箇所には電界緩和を図るシールドを挟んで電界緩和したり、リード線の被覆を厚くしたりして絶縁耐圧を向上させ、それらの問題に対する対策がとられていた。特にこれらの電界集中を緩和するために、鉄心脚の外周部に電界緩和を図るシールドを備えることがある(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
また一方では巻線4が課電された際、電磁誘導機器鉄心には巻線4との間に存在する静電容量を通して、一時的に電流が接地点に向かって流れる。この電流は鉄心内では、積層された金属板の積層方向に流れるため、絶縁被膜が施された金属板の相互間には、大きな電位差が発生することになる。更に金属板が切断された部分には絶縁被膜が存在しないため、そこでは絶縁耐圧が低くなり、コロナ放電や絶縁破壊が発生する恐れがある。
【0007】
その対策として、金属板間の電位差が高くならないように接地導体を電磁誘導機器鉄心の積層された金属板の間に数ヶ所挿入したり、積層された金属板の切断面で絶縁被膜が無い部分に抵抗体を接続したりして、電圧を降下させる対策が取られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-67557号公報
【特許文献2】特開平9-74029号公報
【特許文献3】特開昭61-27613号公報
【特許文献4】特開昭58-165308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、シールド、抵抗体、接地線、接続端子等の多くの部材が必要となり多大な費用がかかるため、部品点数の削減が求められるようになってきている。また、部品点数が増える事により機器も大型化しており、同時に小型化も求められている。
【0010】
本発明の目的は、上記した課電部と鉄心角部の電界緩和、また積層された金属板間の接地を同時に行う一つの部品で構成された電界緩和を図るシールドとその配置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚と鉄心ヨークの接続角部に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接続したことを特徴とする。
【0012】
また請求項2に記載の本発明は上記目的を達成するために、表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心脚角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接地したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
これにより一枚のシールドで、鉄心の接合角部に集中する電界が緩和でき、また高電位の巻線やリード線との絶縁耐圧が確保され、コロナ放電や絶縁破壊を防ぐことが可能となる。さらに電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端面に接地線を接続することで、鉄心の明確な接地をとることができ、積層間の大きな電位差も軽減でき、金属板端面間で発生するコロナ放電や絶縁破壊も防ぐことが可能となる。
【0014】
つまり本発明の電界緩和を図るシールドを一枚配置することで、多くの部品で実現していた電界緩和と接地を同時に実現でき、結果として部材点数の削減、機器の小型化も実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1を示す三相三脚鉄心の側面図である。
【図2】図1のA-Aの断面図である。
【図3】図1のB部分の斜視図である。
【図4】図1の発明品の展開図である。
【図5】本発明の実施例2を示す三相五脚鉄心の側面図である。
【図6】図5のD−D断面の断面図である。
【図7】図5の発明品の展開図である。
【図8】三相三脚鉄心変圧器の概略図である。
【図9】鉄心の積層構造概略図である。
【図10】図2のE部詳細図である。
【図11】シールド効果対比図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
まず本発明の電界緩和を図るシールド7aの構成を示す。図4に示したように、本シールド7aは、絶縁物33(例えばプレスボード)を複数枚重ねて貼り合わせてあり、内部に導電物を組み込み、または貼り付け、または導電性塗料を塗布して導電物8a部を設けてある。図4では、内部に導電物を組み込んだ例を示した。更に、接地を確実に取るための接地線をこの導電物8aの両端部に接地線10aとして電気的に接続して取り付けた構造としている。なお導電物8aは、絶縁物33に接着するのが好ましいが、絶縁物33で挟み込んで構成しても構わない。また導電物8aは、その他の金属箔、導電性テープ等の他の導電材料を用いても構わない。そして導電物8aのサイズは、絶縁耐圧を低下させないために、絶縁物33より小さく構成する。
【0018】
図1、図2、図3に本発明の実施例1の適用例を示した。実施例1は、本発明のシールド7aを三相三脚鉄心の鉄心脚2と鉄心ヨーク1の接合角部31cに適用した場合である。図1のように三相三脚鉄心は、3つの鉄心脚2a、2b、2cにそれぞれ巻線4が装着され、三脚の上下端を鉄心ヨーク1a、1b、1c、1dにより磁気的に接続された構造になっている。また鉄心と巻線は、鉄心締付金具5と締め付けロッド12で鉄心の積層方向を締め付け、また上下の締め付け部材19で巻線の鉛直方向を押さえ、締め付けロッド12で鉄心と巻線がずれない様に締め付けている。
【0019】
次に本発明の電界緩和を図るシールド7aの配置を説明する。電界緩和を図るシールド7aは、図1のように高圧リード線6と対向させて鉄心角部に滑らかに湾曲させて配置する。このシールドの構成部材は、前記した様に絶縁物33を数枚重ねた構成であり、容易に屈曲可能で、かつ絶縁物33の貫通絶縁耐力があるため課電部との絶縁耐圧を確保できる。シールド7aの厚みは、絶縁物の貫通絶縁耐力を考慮して、使用電圧相応の厚みを持たせることが望ましい。勿論、湾曲が可能であれば、重ね合わせた部材ではなく成型した絶縁物を用いても構わない。
【0020】
次に、図1、図2を使って電界緩和を図るシールド7aの鉄心への取り付けを説明する。まず絶縁支持部材9aの取付を説明する。図2は、図1のA−A部における断面図である。図2に示した様に、鉄心と電界緩和を図るシールド7aとの間に絶縁支持部材9a(例えば絶縁木)が挿入されており、これを電界緩和を図るシールド7aに穿った絶縁支持部材取付穴21と紐16aを使って縛り固定し、冷媒の流路を確保しつつ鉄心に取り付ける。なお絶縁支持部材9aは、鉄心の発熱が問題とならない場合、電界緩和を図るシールド7aの支持目的のみで挿入しても良い。
【0021】
次に接地線と鉄心との接続を説明する。図2のE部の詳細が図10である。図10には、金属板の積層方向両端において絶縁被膜を剥がし、本発明の電界緩和を図るシールドの接地線10aを金属板間に挟んで電気的に接続する方法を示した。接地線10aは例えばこの場合、短冊状の薄いプレスボードに導電性塗料を塗布したものであって、金属板間の一部の絶縁被膜32をはがしてそこに挟み込む様にして接続する。これにより、電界緩和を図るシールド7aの導電物8aと電気的に接続することが可能となる。接続の際は、一般的な導電性の接着剤等を使用するが、電気的に接続が可能であれば他の方法をとっても構わない。
【0022】
最後に電界緩和を図るシールド7aの鉄心への固定方法を説明する。複数箇所でシールド取付穴20と締付ロッド12及び巻線押さえ部材19間を、紐16bで縛って固定するのであるが、図1に示したように鉄心接合角部を湾曲させて滑らかに覆うように形状を決定してから、紐16bで固定する。
【0023】
以上の様な構成にすると、シールドの導電物に接続されている接地線は前記のように金属板端部に接続されているため、導電物はゼロ電位となる。もちろん鉄心は、アースに接続されていることが前提である。よって、動作時に金属板間で発生する電位は下がり、金属板端部で絶縁破壊やコロナ放電が発生しにくくなる。
【0024】
また電界緩和を図るシールド7aを鉄心接合角部31cに配置すると、電界中ではシールド効果により誘電率の高い部材が高圧リード線6との間に介在するので、鉄心角部31c近辺の電界強度が弱くなる。シールドに隣接する鉄心角部31cでの電界強度を図11に示した。図11から分かるように、シールドがない場合に比べてはるかに電界が緩和される。本発明の場合、電界強度を計算してみると、シールドの曲率半径を大きくすれば、最大で40%以上の電界緩和が実現できることが分かった。すなわち、シールドを鉄心角部31cに滑らかに覆うように配置することにより、鋭利な角部があたかも大きな曲率半径を有する曲面になったような効果が生じる。
【0025】
つまり、従来技術で鉄心の接地と鉄心角部31cの電界を解決しようとすると、金属板に組み付ける複数の抵抗体や電界緩和を図るシールドが別個に必要である。またそれらの部材の取り付け位置も、機器内で新たに必要となる。これにより、機器が必然的に大型化することになる。本発明では、上記の様に一枚のシールドで電界緩和と接地を同時に実現できるため、部品点数が最小限ですみ、更に部品点数が少ないので、取り付けスペースも最小限ですみ、機器全体の小型化にも貢献できる。
【実施例2】
【0026】
実施例2に係る電界緩和を図るシールド7bを図7に示す。電界緩和を図るシールド7bの基本構造は、電界緩和を図るシールド7aと同じなので、重複する部分は記載しない。図7に示したように、本シールド7bは、鉄心に巻きつける構造なので、接地線の取り付け場所が電界緩和を図るシールド7aとは異なる。また巻きつけるために、特に取付穴などは必要ない。電界緩和を図るシールド7bの全長は、少なくとも巻線を一周巻きまわせるだけの長さが必要である。その他の構成要素は、電界緩和を図るシールド7aと同じである。
【0027】
図5、図6、図7に本発明の第2の実施例を示す。実施例2は三相五脚鉄心の側脚3に適用する場合を示す。三相五脚鉄心は容量の大きい変圧器に用いられることが多く、五脚のうち、内側の三脚は巻線4が装着される鉄心脚、両端外側の二脚は巻線4が装着されない側脚3である。
【0028】
第2の実施例の場合、変圧器容量が大きいため鉄心締付金具5も大きくなり、図5のように側脚3と鉄心ヨーク1cとの接合角部が鉄心締付金具5で隠れることがあるが、鉄心角部31cの突起が問題となる場合、実施例1のような電界緩和を図るシールドを適用可能なことは勿論である。しかし上記のように大型の変圧器では、鉄心脚の金属板積層角部の電界を緩和する対策も必要である。
【0029】
図6に図5のD−D面での断面図を示した。側脚3の円周方向に本発明の電界緩和を図るシールド7bを一周させ、積層角部31bを覆うようにして配置してある。さらに鉄心両端部に接地線10bで電界緩和を図るシールド7bが有する導電物8bと電気的に接続する。この際、電気的に閉ループを形成しないように、導電物8は重ね合わさる部分では接触しないようにする。最後に鉄心から落下しないように、電界緩和を図るシールド7bの周りをバインドテープ11で数回巻きつけて電界緩和を図るシールド7bを固定する。
【0030】
その際、絶縁部材9bを積層金属板の積層された平坦部を起点にして、90度間隔で配置し、冷却媒体の流路を確保することは、第1の実施例と同様である。ここで使用する絶縁部材9bは一般的な木製の柱のような角材で、角材辺は図6より電界緩和を図るシールド7bを巻きまわした際、鉄心に接触しない程度の辺高さが確保できればよい。縦方向の長さは、巻きまわされた電界緩和を図るシールド7bと同等程度の長さを有していればよい。また冷媒の流路を確保して鉄心の冷却効果ももたせる。なお絶縁支持部材9bは、鉄心の発熱が問題とならない場合は電界緩和を図るシールドの支持目的のみで挿入しても良い。
【0031】
最後に電界緩和を図るシールド7bと鉄心との接続方法であるが、これは第一の実施例と同様の方法で接続するので、詳細な説明は記載しない。必要とあらば、本発明の電界緩和を図るシールドを側脚3に対してだけでなく、他の鉄心脚の周り(巻線4の内側)に配置しても良い。
【0032】
このようにシールド7bを鉄心接合角部31bに配置すると、電界中ではシールド効果により誘電率の高い部材が高圧巻線4との間に介在するので、鉄心角部31b近辺の電界強度が弱くなる。つまり実施例1と同様に、鋭利な角部があたかも大きな曲率半径を有する曲面になったような効果が生じる。
【0033】
つまり、従来技術で鉄心脚と課電部の電界を緩和しようとすると、金属板に組み付ける複数の抵抗体や電界緩和を図るシールドが別個に必要である。またそれらの部材の取り付け位置も、機器内で新たに必要となる。これにより、機器が必然的に大型化することになる。本発明では、上記の様に一枚のシールドで電界緩和と接地を同時に実現できるため、部品点数が最小限ですみ、更に部品点数が少ないので、取り付けスペースも最小限ですみ、機器全体の小型化にも貢献できる。
【符号の説明】
【0034】
1a、1b、1c、1d 鉄心ヨーク
2a、2b、2c 鉄心脚
3 側脚
4 巻線
5 鉄心締付金具
6 高圧リード線
7a、7b シールド
8a、8b 導電物
9a、9b 絶縁支持部材
10a、10b 接地線
11 バインドテープ
12 締付ロッド
14 金属板
16a、16b 紐
19 巻線押さえ部材
20 シールド取付穴
21 絶縁支持部材取付穴
31a、31b,31c 角部
32 絶縁被膜
33 絶縁物
a 方形状の積層断面図
b 円形状の積層断面図
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導機器内の鉄心角部に装着する電界緩和を図るシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電力用の変圧器またはリアクトル等の電磁誘導機器は、鉄心脚、巻線及び鉄心脚同士を磁気的につなぐ鉄心ヨークが主要素として構成されている。変圧器に使用される鉄心脚や鉄心ヨークは、表面に電気絶縁被膜が施された薄い金属板を複数枚積層された構成となっているものが多い。
【0003】
このため鉄心の断面形状は図9のaに示したように、方形に積み上げた場合は4箇所の角部31aができ、また円形状に積み上げた場合は、図9のbのように階段状に角部31bが形成され、何れも角部を含んだ形状となる。さらに図8に示した様に、鉄心脚2cと鉄心ヨーク1cとの接合部にも角部31cが形成される。
【0004】
つまりこれらの31a、31b、と近傍の巻線4、または31cに近傍の高圧リード線6が配置された場合、それぞれの角部と課電部間で、大きな電位差が発生し、コロナ放電や絶縁破壊が発生する危険性がある。
【0005】
よって従来は、その様な箇所には電界緩和を図るシールドを挟んで電界緩和したり、リード線の被覆を厚くしたりして絶縁耐圧を向上させ、それらの問題に対する対策がとられていた。特にこれらの電界集中を緩和するために、鉄心脚の外周部に電界緩和を図るシールドを備えることがある(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
また一方では巻線4が課電された際、電磁誘導機器鉄心には巻線4との間に存在する静電容量を通して、一時的に電流が接地点に向かって流れる。この電流は鉄心内では、積層された金属板の積層方向に流れるため、絶縁被膜が施された金属板の相互間には、大きな電位差が発生することになる。更に金属板が切断された部分には絶縁被膜が存在しないため、そこでは絶縁耐圧が低くなり、コロナ放電や絶縁破壊が発生する恐れがある。
【0007】
その対策として、金属板間の電位差が高くならないように接地導体を電磁誘導機器鉄心の積層された金属板の間に数ヶ所挿入したり、積層された金属板の切断面で絶縁被膜が無い部分に抵抗体を接続したりして、電圧を降下させる対策が取られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-67557号公報
【特許文献2】特開平9-74029号公報
【特許文献3】特開昭61-27613号公報
【特許文献4】特開昭58-165308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、シールド、抵抗体、接地線、接続端子等の多くの部材が必要となり多大な費用がかかるため、部品点数の削減が求められるようになってきている。また、部品点数が増える事により機器も大型化しており、同時に小型化も求められている。
【0010】
本発明の目的は、上記した課電部と鉄心角部の電界緩和、また積層された金属板間の接地を同時に行う一つの部品で構成された電界緩和を図るシールドとその配置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚と鉄心ヨークの接続角部に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接続したことを特徴とする。
【0012】
また請求項2に記載の本発明は上記目的を達成するために、表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心脚角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接地したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
これにより一枚のシールドで、鉄心の接合角部に集中する電界が緩和でき、また高電位の巻線やリード線との絶縁耐圧が確保され、コロナ放電や絶縁破壊を防ぐことが可能となる。さらに電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端面に接地線を接続することで、鉄心の明確な接地をとることができ、積層間の大きな電位差も軽減でき、金属板端面間で発生するコロナ放電や絶縁破壊も防ぐことが可能となる。
【0014】
つまり本発明の電界緩和を図るシールドを一枚配置することで、多くの部品で実現していた電界緩和と接地を同時に実現でき、結果として部材点数の削減、機器の小型化も実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1を示す三相三脚鉄心の側面図である。
【図2】図1のA-Aの断面図である。
【図3】図1のB部分の斜視図である。
【図4】図1の発明品の展開図である。
【図5】本発明の実施例2を示す三相五脚鉄心の側面図である。
【図6】図5のD−D断面の断面図である。
【図7】図5の発明品の展開図である。
【図8】三相三脚鉄心変圧器の概略図である。
【図9】鉄心の積層構造概略図である。
【図10】図2のE部詳細図である。
【図11】シールド効果対比図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
まず本発明の電界緩和を図るシールド7aの構成を示す。図4に示したように、本シールド7aは、絶縁物33(例えばプレスボード)を複数枚重ねて貼り合わせてあり、内部に導電物を組み込み、または貼り付け、または導電性塗料を塗布して導電物8a部を設けてある。図4では、内部に導電物を組み込んだ例を示した。更に、接地を確実に取るための接地線をこの導電物8aの両端部に接地線10aとして電気的に接続して取り付けた構造としている。なお導電物8aは、絶縁物33に接着するのが好ましいが、絶縁物33で挟み込んで構成しても構わない。また導電物8aは、その他の金属箔、導電性テープ等の他の導電材料を用いても構わない。そして導電物8aのサイズは、絶縁耐圧を低下させないために、絶縁物33より小さく構成する。
【0018】
図1、図2、図3に本発明の実施例1の適用例を示した。実施例1は、本発明のシールド7aを三相三脚鉄心の鉄心脚2と鉄心ヨーク1の接合角部31cに適用した場合である。図1のように三相三脚鉄心は、3つの鉄心脚2a、2b、2cにそれぞれ巻線4が装着され、三脚の上下端を鉄心ヨーク1a、1b、1c、1dにより磁気的に接続された構造になっている。また鉄心と巻線は、鉄心締付金具5と締め付けロッド12で鉄心の積層方向を締め付け、また上下の締め付け部材19で巻線の鉛直方向を押さえ、締め付けロッド12で鉄心と巻線がずれない様に締め付けている。
【0019】
次に本発明の電界緩和を図るシールド7aの配置を説明する。電界緩和を図るシールド7aは、図1のように高圧リード線6と対向させて鉄心角部に滑らかに湾曲させて配置する。このシールドの構成部材は、前記した様に絶縁物33を数枚重ねた構成であり、容易に屈曲可能で、かつ絶縁物33の貫通絶縁耐力があるため課電部との絶縁耐圧を確保できる。シールド7aの厚みは、絶縁物の貫通絶縁耐力を考慮して、使用電圧相応の厚みを持たせることが望ましい。勿論、湾曲が可能であれば、重ね合わせた部材ではなく成型した絶縁物を用いても構わない。
【0020】
次に、図1、図2を使って電界緩和を図るシールド7aの鉄心への取り付けを説明する。まず絶縁支持部材9aの取付を説明する。図2は、図1のA−A部における断面図である。図2に示した様に、鉄心と電界緩和を図るシールド7aとの間に絶縁支持部材9a(例えば絶縁木)が挿入されており、これを電界緩和を図るシールド7aに穿った絶縁支持部材取付穴21と紐16aを使って縛り固定し、冷媒の流路を確保しつつ鉄心に取り付ける。なお絶縁支持部材9aは、鉄心の発熱が問題とならない場合、電界緩和を図るシールド7aの支持目的のみで挿入しても良い。
【0021】
次に接地線と鉄心との接続を説明する。図2のE部の詳細が図10である。図10には、金属板の積層方向両端において絶縁被膜を剥がし、本発明の電界緩和を図るシールドの接地線10aを金属板間に挟んで電気的に接続する方法を示した。接地線10aは例えばこの場合、短冊状の薄いプレスボードに導電性塗料を塗布したものであって、金属板間の一部の絶縁被膜32をはがしてそこに挟み込む様にして接続する。これにより、電界緩和を図るシールド7aの導電物8aと電気的に接続することが可能となる。接続の際は、一般的な導電性の接着剤等を使用するが、電気的に接続が可能であれば他の方法をとっても構わない。
【0022】
最後に電界緩和を図るシールド7aの鉄心への固定方法を説明する。複数箇所でシールド取付穴20と締付ロッド12及び巻線押さえ部材19間を、紐16bで縛って固定するのであるが、図1に示したように鉄心接合角部を湾曲させて滑らかに覆うように形状を決定してから、紐16bで固定する。
【0023】
以上の様な構成にすると、シールドの導電物に接続されている接地線は前記のように金属板端部に接続されているため、導電物はゼロ電位となる。もちろん鉄心は、アースに接続されていることが前提である。よって、動作時に金属板間で発生する電位は下がり、金属板端部で絶縁破壊やコロナ放電が発生しにくくなる。
【0024】
また電界緩和を図るシールド7aを鉄心接合角部31cに配置すると、電界中ではシールド効果により誘電率の高い部材が高圧リード線6との間に介在するので、鉄心角部31c近辺の電界強度が弱くなる。シールドに隣接する鉄心角部31cでの電界強度を図11に示した。図11から分かるように、シールドがない場合に比べてはるかに電界が緩和される。本発明の場合、電界強度を計算してみると、シールドの曲率半径を大きくすれば、最大で40%以上の電界緩和が実現できることが分かった。すなわち、シールドを鉄心角部31cに滑らかに覆うように配置することにより、鋭利な角部があたかも大きな曲率半径を有する曲面になったような効果が生じる。
【0025】
つまり、従来技術で鉄心の接地と鉄心角部31cの電界を解決しようとすると、金属板に組み付ける複数の抵抗体や電界緩和を図るシールドが別個に必要である。またそれらの部材の取り付け位置も、機器内で新たに必要となる。これにより、機器が必然的に大型化することになる。本発明では、上記の様に一枚のシールドで電界緩和と接地を同時に実現できるため、部品点数が最小限ですみ、更に部品点数が少ないので、取り付けスペースも最小限ですみ、機器全体の小型化にも貢献できる。
【実施例2】
【0026】
実施例2に係る電界緩和を図るシールド7bを図7に示す。電界緩和を図るシールド7bの基本構造は、電界緩和を図るシールド7aと同じなので、重複する部分は記載しない。図7に示したように、本シールド7bは、鉄心に巻きつける構造なので、接地線の取り付け場所が電界緩和を図るシールド7aとは異なる。また巻きつけるために、特に取付穴などは必要ない。電界緩和を図るシールド7bの全長は、少なくとも巻線を一周巻きまわせるだけの長さが必要である。その他の構成要素は、電界緩和を図るシールド7aと同じである。
【0027】
図5、図6、図7に本発明の第2の実施例を示す。実施例2は三相五脚鉄心の側脚3に適用する場合を示す。三相五脚鉄心は容量の大きい変圧器に用いられることが多く、五脚のうち、内側の三脚は巻線4が装着される鉄心脚、両端外側の二脚は巻線4が装着されない側脚3である。
【0028】
第2の実施例の場合、変圧器容量が大きいため鉄心締付金具5も大きくなり、図5のように側脚3と鉄心ヨーク1cとの接合角部が鉄心締付金具5で隠れることがあるが、鉄心角部31cの突起が問題となる場合、実施例1のような電界緩和を図るシールドを適用可能なことは勿論である。しかし上記のように大型の変圧器では、鉄心脚の金属板積層角部の電界を緩和する対策も必要である。
【0029】
図6に図5のD−D面での断面図を示した。側脚3の円周方向に本発明の電界緩和を図るシールド7bを一周させ、積層角部31bを覆うようにして配置してある。さらに鉄心両端部に接地線10bで電界緩和を図るシールド7bが有する導電物8bと電気的に接続する。この際、電気的に閉ループを形成しないように、導電物8は重ね合わさる部分では接触しないようにする。最後に鉄心から落下しないように、電界緩和を図るシールド7bの周りをバインドテープ11で数回巻きつけて電界緩和を図るシールド7bを固定する。
【0030】
その際、絶縁部材9bを積層金属板の積層された平坦部を起点にして、90度間隔で配置し、冷却媒体の流路を確保することは、第1の実施例と同様である。ここで使用する絶縁部材9bは一般的な木製の柱のような角材で、角材辺は図6より電界緩和を図るシールド7bを巻きまわした際、鉄心に接触しない程度の辺高さが確保できればよい。縦方向の長さは、巻きまわされた電界緩和を図るシールド7bと同等程度の長さを有していればよい。また冷媒の流路を確保して鉄心の冷却効果ももたせる。なお絶縁支持部材9bは、鉄心の発熱が問題とならない場合は電界緩和を図るシールドの支持目的のみで挿入しても良い。
【0031】
最後に電界緩和を図るシールド7bと鉄心との接続方法であるが、これは第一の実施例と同様の方法で接続するので、詳細な説明は記載しない。必要とあらば、本発明の電界緩和を図るシールドを側脚3に対してだけでなく、他の鉄心脚の周り(巻線4の内側)に配置しても良い。
【0032】
このようにシールド7bを鉄心接合角部31bに配置すると、電界中ではシールド効果により誘電率の高い部材が高圧巻線4との間に介在するので、鉄心角部31b近辺の電界強度が弱くなる。つまり実施例1と同様に、鋭利な角部があたかも大きな曲率半径を有する曲面になったような効果が生じる。
【0033】
つまり、従来技術で鉄心脚と課電部の電界を緩和しようとすると、金属板に組み付ける複数の抵抗体や電界緩和を図るシールドが別個に必要である。またそれらの部材の取り付け位置も、機器内で新たに必要となる。これにより、機器が必然的に大型化することになる。本発明では、上記の様に一枚のシールドで電界緩和と接地を同時に実現できるため、部品点数が最小限ですみ、更に部品点数が少ないので、取り付けスペースも最小限ですみ、機器全体の小型化にも貢献できる。
【符号の説明】
【0034】
1a、1b、1c、1d 鉄心ヨーク
2a、2b、2c 鉄心脚
3 側脚
4 巻線
5 鉄心締付金具
6 高圧リード線
7a、7b シールド
8a、8b 導電物
9a、9b 絶縁支持部材
10a、10b 接地線
11 バインドテープ
12 締付ロッド
14 金属板
16a、16b 紐
19 巻線押さえ部材
20 シールド取付穴
21 絶縁支持部材取付穴
31a、31b,31c 角部
32 絶縁被膜
33 絶縁物
a 方形状の積層断面図
b 円形状の積層断面図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚と鉄心ヨークの接続角部に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接続したことを特徴とする電磁誘導機器の電界緩和を図るシールド。
【請求項2】
表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心脚角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接地したことを特徴とする電磁誘導機器の電界緩和を図るシールド。
【請求項1】
表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚と鉄心ヨークの接続角部に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接続したことを特徴とする電磁誘導機器の電界緩和を図るシールド。
【請求項2】
表面に電気絶縁被膜が施された複数枚の金属板を積層して構成された電磁誘導機器鉄心において、前記電磁誘導機器鉄心脚に装着される電界緩和を図るシールドであって、前記電界緩和を図るシールドは湾曲可能な絶縁物と前記絶縁物の内部または片面に配置される導電物と、導電物に電気的に接続される接地線から構成され、シールドを前記鉄心脚角部に沿って滑らかに湾曲した形状で覆って配置し、シールドの導電物と電磁誘導機器鉄心の積層方向の両端を接地線で接地したことを特徴とする電磁誘導機器の電界緩和を図るシールド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−66266(P2011−66266A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216545(P2009−216545)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】
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