説明

電磁超音波探触子および電磁超音波探傷装置

【課題】被検体中における超音波の広がりを抑制した電磁超音波探触子および電磁超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】コイル1は、磁石2と被検体3との間に配置された、少なくとも2以上の複数のコイル1a,1b,1c,1d,1e,1fを並列に接続した並列コイルであり、該並列コイルを構成する各コイル1a,1b,1c,1d,1e,1fが被検体3に発生させる渦電流4の電流量がそれぞれ異なるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触で検査対象中の欠陥部を検索するために用いられる電磁超音波探触子、およびこの電磁超音波探触子を用いた電磁超音波探傷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の板や管等の被検体に被接触で超音波の発生や検出を行う方法として、電磁超音波探触子(Electromagnetic Acoustic Transducer : EMAT、以下EMATと記す)を利用した方法が知られている。一般にEMATは、高周波電流を流すコイルと、静磁界を与える磁石等の磁界発生部とから構成されている。EMATは、コイルを流れる電流の高周波振動により、被検体表面近傍に生じる渦電流と、磁界発生部によって被検体中に作られる静磁界との相互作用によりローレンツ力を発生させ、このローレンツ力で被検体を振動させることにより、被検体中に超音波を発生させるものである。また、逆の物理現象により被検体中の超音波を検出することができる。このため、接触媒質を必要とせず、非接触で超音波の送受信を行うことができる。また、磁石やコイルの構成により種々のモードの超音波を発生・検出することができる。
【0003】
特許文献1には、このEMATの技術を用いたボルトの軸力測定方法が開示され、短いバースト波で印加した超音波とその反射波の二つの受信信号の位相差を測定することにより、短時間で正確に軸力測定を行う構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−277336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のEMATでは、磁界発生部により被検体中に作られる静磁界の強度は、磁界発生部からの距離により変化してしまう。一方、コイルにより被検体に生じる渦電流はコイル直下では場所によらずほぼ一定となる。このため、被検体表面近傍に生じる渦電流と静磁界の相互作用であるローレンツ力の大きさは、磁界発生部からの距離に応じて変化する。ローレンツ力が生じる領域は超音波の励振源となるが、この領域で、ローレンツ力の大きさが分布を持つことに対応して、被検体での振動の大きさが分布を持つ。よって、励振源は、実効的に小さくなってしまい、指向性が広くなってしまうため、超音波は被検体中に拡がって伝搬していくこととなる。したがって、従来のEMATによる測定方法で、金属片等の探傷を行うと、上述した指向性の広さにより、所望の欠陥部とは異なる位置に存在する欠陥部を誤検出してしまうという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、被検体中における超音波の広がりを抑制した電磁超音波探触子および電磁超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電磁超音波探触子は、磁界発生手段と被検体との間に配置された、少なくとも2以上の複数のコイルを並列に接続した並列コイルを備え、該並列コイルを構成する各コイルが被検体に発生させる渦電流の電流量がそれぞれ異なるように構成する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、励振する超音波の指向性の尖鋭化が可能となり、被検体中の欠陥部の誤検出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1による電磁超音波探触子の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1による電磁超音波探触子による超音波の発生原理を示す説明図である。
【図3】実施の形態1による電磁超音波探触子により発生する渦電流のシミュレーション結果を示す図である。
【図4】図4で示したシミュレーションに用いた電磁超音波探触子の構成を示す図である。
【図5】実施の形態1による電磁超音波探触子により発生するローレンツ力のシミュレーション結果を示す図である。
【図6】実施の形態2による電磁超音波探触子の構成を示す図である。
【図7】実施の形態3による電磁超音波探触子の構成を示す図である。
【図8】実施の形態4による電磁超音波探触子の構成を示す図である。
【図9】実施の形態1の電磁超音波探触子を用いた電磁超音波探傷装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による電磁超音波探触子の構成を示す図であり、図1(a)は電磁超音波探触子を上方から見た図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。
電磁超音波探触子(以下、EMATと記す)10は、コイル1および磁石2で構成されている。コイル1は、少なくとも2個以上の複数のコイルが並列接続されて構成されている。図1(b)に示した例では、コイル1の中心から外側に向けてコイル1a,1b,1c,1d,1e,1fが同心状に接続されている。なお、磁石2の中心は、コイル1の同心状の中心と一致している。各コイル1a,1b,1c,1d,1e,1fは銅などの導線を中心部から渦巻状に巻いたものであり、各コイル1a,1b,1c,1d,1e,1fはそれぞれ線径の異なる導線で構成されている。図1(b)に示した例では、コイル1の中心から外側に向かって導線の線径が大きく(線径:1a<1b<1c<1d<1e<1f)なるように構成している。磁石2は、永久磁石や電磁石あるいは電磁石などの静磁界を発生させる手段である。
【0011】
次に、EMAT10による超音波の送受信原理について説明する。図2は、実施の形態1による電磁超音波探触子の超音波の発生原理を説明する図である。なお図2では、コイル1を構成する複数のコイルの各符号の記載を省略している。また、図2では、EMAT10による超音波の駆動力としてローレンツ力を用いる構成を示す。
図2に示すように、コイル1に交流電流が流れると、導電性材料からなる被検体3の表層部には、コイル1に流れる電流量に対応した逆極性の渦電流4が生じる。また、磁石2により静磁界5が形成される。これらの渦電流4と静磁界5との相互作用により、被検体3にはローレンツ力6が発生する。ここで、コイル1には交流電流が流れているため、当該コイル1に流れる電流の極性に合せて渦電流4の極性が周期的に変化し、ローレンツ力6の極性も変化する。ローレンツ力6の極性の変化により被検体3が振動し、この振動により超音波が励振され、被検体3中に超音波が伝搬する。
【0012】
EMAT10を被検体3の近傍に配置した場合、磁石2により生じる静磁界5は、磁石2の近傍に集中して生じるため、磁石2の近傍の静磁界5の強度は大きいが、磁石2から離れるに従って静磁界5の強度は徐々に小さくなる。よって、磁石2により生じる静磁界5の強度は、磁石2の中心部が最も大きく、磁石2の外側に向けて徐々に小さくなる。
一方、コイル1に交流電流を印加することにより被検体3に生じる渦電流4の電流量は、被検体3の場所によりそれぞれ異なる。これは、図1(b)で示したように各コイル1a,1b,1c,1d,1e,1fの導線の線径に変化を設けているためである。コイル1の中心から外側に向かって導線の線径が大きくなるように構成することにより、コイル1の導線の線径に対応して渦電流4の電流量が被検体3の中心から外側に向けて大きくなる。
【0013】
このように、磁石2により生じる静磁界5の強度は、磁石2の中心部から外側に向かって小さくなるが、コイル1により生じる渦電流4の電流量は、磁石2の中心から外側に向かって大きくなる。よって、静磁界5と渦電流4の積が一定となるように、各コイル1a,1b,1c,1d,1e,1fの導線の線径を設定することにより、静磁界5と渦電流4との相互作用により発生するローレンツ力6の大きさは、磁石2の中心部である磁界発生部からの距離によらず一定の値をとる。
【0014】
ローレンツ力6が発生する領域が超音波の励振源となるため、この励振源におけるローレンツ力6を一定に保つことにより被検体3の振動の大きさも一定となり、励振源における超音波は場所による分布を持たない。これにより、実効的に励振源が広くなり、結果として超音波の指向性が尖鋭化される。
【0015】
続いて、上述したEMAT10を用いたシミュレーション結果を示す。図3は、実施の形態1の電磁超音波探触子を用いた場合に被検体に発生する渦電流の分布のシミュレーション結果を示す図である。なお、シミュレーションは図4に示す2次元平面モデルに対して行った。
図3(a)は、図4で示した被検体3のコイル1側の表層面で発生した渦電流の分布を示し、図3(b)は図3(a)における被検体3の中心部から右側部分の渦電流の分布を拡大して示している。図3(a),(b)において、横軸は被検体3の位置を示し、被検体3の中心部を原点としている。一方縦軸は、渦電流密度を示している。なお、図3(a),(b)では比較のため、従来のEMAT、すなわちコイルの導線の線径を同一とした構造を有するEMATを用いた場合のシミュレーション結果も合せて示している。実施の形態1のEMAT10によるシミュレーション結果は実線で示し、従来のEMATによるシミュレーション結果は点線で示している。
【0016】
図3(a)および図3(b)に示すように、従来のEMATを用いた場合には、被検体3に発生する渦電流4がコイル1の直下においてほぼ一定になっているのに対して、実施の形態1のEMAT10を用いた場合には、被検体3に発生する渦電流4がコイル1の直下においてコイル1の中心から外側に向けて大きくなっていることが確認できる。
【0017】
図5は、実施の形態1の電磁超音波探触子を用いた場合に被検体に発生するローレンツ力の分布のシミュレーション結果を示す図である。シミュレーションは図4に示すモデルに対して行った。
図5(a)は被検体3全体のローレンツ力6の分布を示し、図5(b)は図5(a)における被検体3の中心部から右側部分のローレンツ力6の分布を拡大して示している。図5(a),(b)において、横軸は被検体3の位置を示し、被検体3の中心部を原点としている。一方縦軸は、ローレンツ力の大きさを示している。なお、図5(a),(b)においても、比較のため従来のEMATを用いた場合のシミュレーション結果も合せて示している。実施の形態1のEMAT10によるシミュレーション結果は実線で示し、従来のEMATによるシミュレーション結果は点線で示している。
【0018】
図5(a)および図5(b)に示すように、従来のEMATの場合には、被検体3に発生するローレンツ力6がコイル1の直下においてコイル1の中心から外側に向けて小さくなっているのに対して、実施の形態1のEMAT10を用いた場合には、被検体3に発生するローレンツ力6がコイル1の直下においてほぼ一定となっていることが確認できる。このように、実施の形態1のEMAT10を用いた場合、被検体3に発生するローレンツ力6がコイル1の直下においてほぼ一定となることから、被検体3に生じる振動の大きさが一定となり、超音波の励振源が場所による分布を持たないことから、励振源が実効的に広くなり、結果として超音波の指向性が尖鋭化される。
【0019】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、コイル1を構成する複数のコイルの導線の線径が、コイルの中心から外側に向けて大きくなるように構成したので、被検体に発生する渦電流がコイル直下においてコイルの中心から外側に向けて大きくなり、これにより被検体に発生するローレンツ力をコイル直下においてほぼ一定とすることができる。その結果、超音波の励振源が場所による分布を持たず、実効的に励振源が広くなり、超音波の指向性を尖鋭化することができる。
【0020】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2による電磁超音波探触子の構成を示す図であり、図6(a)は電磁超音波探触子を上方から見た図、図6(b)は図6(a)のB−B線断面図である。
実施の形態2のEMAT20は、コイル1および磁石2から構成されている。コイル1は、銅などの導線からなる複数のコイルが並列されて構成され、磁石2は永久磁石あるいは電磁石などの静磁界を発生させる手段である点は実施の形態1のEMAT10と同様であるが、コイル1の中心から外側に向けて並列に接続されたコイル1g,1h,1i,1j,1kの導線の線径を同一とし、導線の抵抗率をそれぞれ異なる値に設定した点で実施の形態1と異なっている。
【0021】
実施の形態2のEMAT20の基本的動作は、実施の形態1で示したEMAT20の基本的動作と同様であるため、異なる部分についてのみ説明を行う。
EMAT20のコイル1は、抵抗率rの異なるコイル1g,1h,1i,1j,1kが並列に接続されている。コイル1g,1h,1i,1j,1kの抵抗率rはrg>rh>ri>rj>rkとの条件を満たすように設定されている。被検体3に発生する渦電流4の電流量は、コイル1の導線の抵抗率rに対応してコイル1の中央から外側に向けて大きくなる。
一方、磁石2により発生する静磁界5は実施の形態1と同様に、磁石2の外側に向かって小さくなっていく。よって、静磁界5と渦電流4との積が一定となるように各コイル1g,1h,1i,1j,1kを構成する導線の抵抗率rを決定することにより、静磁界5と渦電流4の相互作用であるローレンツ力6の大きさが磁石2の中心部である磁界発生部からの距離によらず一定の値をとる。
【0022】
ローレンツ力6が発生する領域が超音波の励振源となるため、この励振源におけるローレンツ力6を一定に保つことにより被検体3の振動の大きさも一定となり、励振源における超音波は場所による分布を持たない。これにより、実効的に励振源が広くなり、結果として超音波の指向性が尖鋭化される。
【0023】
以上のように、この実施の形態2によれば、コイル1g,1h,1i,1j,1kを構成する導線の抵抗率rをコイル1の中心から外側に向けて小さくなるように構成したので、被検体に発生する渦電流がコイル直下においてコイルの中心から外側に向けて大きくなり、これにより被検体に発生するローレンツ力をコイル直下においてほぼ一定とすることができる。その結果、超音波の励振源が場所による分布を持たず、実効的に励振源が広くなり、超音波の指向性を尖鋭化することができる。
【0024】
実施の形態3.
図7は、この発明の実施の形態3による電磁超音波探触子の構成を示す図であり、図7(a)は電磁超音波探触子を上方から見た図、図7(b)は図7(a)のC−C線断面図である。
実施の形態3のEMAT30は、コイル1および磁石2から構成されている。コイル1は、銅などの導線からなる複数のコイルが並列されて構成され、磁石2は永久磁石あるいは電磁石などの静磁界を発生させる手段である点は実施の形態1のEMAT10と同様であるが、コイル1の中心から外側に向けて並列に接続されたコイル1l,1m,1n,1o,1pの導線の線径は同一を同一とし、導線の巻き数をそれぞれ異なる値に設定した点で実施の形態1と異なっている。
【0025】
実施の形態3のEMAT30の基本的動作は、実施の形態1で示したEMAT10の基本的動作と同様であるため、異なる部分についてのみ説明を行う。
EMAT30のコイル1は、導線の巻き数が異なるコイル1l,1m,1n,1o,1pが並列に接続されている。導線の巻き数は、1l<1m<1n<1o<1pとの条件を満たすように設定されている。被検体3に発生する渦電流4の電流量は、コイル1の導線の巻き数に対応してコイル1の中心から外側に向けて大きくなる。
一方、磁石2により発生する静磁界5は実施の形態1と同様に、磁石2の外側に向かって小さい。よって、静磁界5と渦電流4との積が一定となるように各コイル1l,1m,1n,1o,1pを構成する導線の巻き数を決定することにより、静磁界5と渦電流4の相互作用であるローレンツ力6の大きさが磁石2の中心部である磁界発生部からの距離によらず一定の値をとる。
【0026】
ローレンツ力6が発生する領域が超音波の励振源となるため、この励振源におけるローレンツ力6を一定に保つことにより被検体3の振動の大きさも一定となり、励振源における超音波は場所による分布を持たない。これにより、実効的に励振源が広くなり、結果として超音波の指向性が尖鋭化される。
【0027】
以上のように、この実施の形態3によれば、コイル1l,1m,1n,1o,1pを構成する導線の巻き数をコイル1の中心から外側に向けて大きくするように構成したので、被検体3に生じる渦電流がコイル直下においてコイルの中心から外側に向けて大きくなり、これにより被検体に発生するローレンツ力をコイル直下においてほぼ一定とすることができる。その結果、超音波の励振源が場所による分布を持たず、実効的に励振源が広くなり、超音波の指向性を尖鋭化することができる。
【0028】
実施の形態4.
図8は、この発明の実施の形態4による電磁超音波探触子の構成を示す図であり、図8(a)は電磁超音波探触子を上方から見た図、図8(b)は図8(a)のD−D線断面図である。
実施の形態4のEMAT40は、コイル1および磁石2から構成されている。コイル1は、銅などの導線からなる複数のコイルが並列されて構成され、磁石2は永久磁石あるいは電磁石などの静磁界を発生させる手段である点は実施の形態1のEMAT10と同様であるが、コイル1の中心から外側に向けて並列に接続されたコイル1q,1r,1s,1t,1uにそれぞれ異なる抵抗値の抵抗7a,7b,7c,7d,7e(以下、総称する場合、抵抗7と記す)が接続されている点で異なっている。
【0029】
実施の形態4のEMAT40の基本的動作は、実施の形態1で示したEMAT10の基本的動作と同様であるため、異なる部分についてのみ説明を行う。
EMAT40のコイル1は、抵抗値が異なる抵抗7a,7b,7c,7d,7eが接続されたコイル1q,1r,1s,1t,1uが並列に接続されている。抵抗値は、7a>7b>7c>7d>7eとの条件を満たすように設定されている。被検体3に発生する渦電流4の電流量は、コイル1に接続された抵抗7の抵抗値に対応してコイル1の中心から外側に向けて大きくなる。
一方、磁石2により発生する静磁界5は実施の形態1と同様に、磁石2の外側に向かって小さい。よって、静磁界5と渦電流4の積が一定となるように、抵抗7a,7b,7c,7d,7eの各抵抗値を決定することにより、静磁界5と渦電流4の相互作用であるローレンツ力6の大きさが磁石2の中心部である次回発生部からの距離によらず一定の値をとる。
【0030】
ローレンツ力6が発生する領域が超音波の励振源となるため、この励振源におけるローレンツ力6を一定に保つことにより被検体3の振動の大きさも一定となり、励振源における超音波は場所による分布を持たない。これにより、実効的に励振源が広くなり、結果として超音波の指向性が尖鋭化される。
【0031】
以上のように、この実施の形態4によれば、コイル1q,1r,1s,1t,1uそれぞれに接続された抵抗7の抵抗値をコイル1の中心から外側に向けて小さくするように構成したので、被検体3に生じる渦電流がコイル直下においてコイルの中心から外側に向けて大きくなり、これにより被検体3に生じるローレンツ力をコイル直下においてほぼ一定とすることができる。その結果、超音波の励振源が場所による分布を持たず、実効的に励振源が広くなり、超音波の指向性を尖鋭化することができる。
【0032】
なお、実施の形態1から実施の形態4で示したコイル1の接続数は一例であり、適宜変更可能である。
【0033】
次に、上述した実施の形態1から実施の形態4で示した電磁超音波探触子を用いて構成した電磁超音波探傷装置について示す。図9は、実施の形態1で示した電磁超音波探触子を備えた電磁超音波探傷装置の構成を示すブロック図である。なお、図9では、実施の形態1で示したEMAT10を用いて構成する例を示すが、実施の形態2から実施の形態4で示したEMAT20、EMAT30またはEMAT40に置き換えて構成可能である。
【0034】
電磁超音波探傷装置100は、EMAT10、駆動信号送信部50および位置情報検出部60で構成されている。ここで、EMAT10は、上述した実施の形態1のEMAT10と同様の構成を有している。送信および受信動作を行うEMAT10は、被検体3に対して近接配置され、被検体3中の欠陥部3aの探傷を行う。EMAT10を駆動するための任意の駆動信号が、駆動信号送信部50からEMAT10に入力される。駆動信号がEMAT10に入力されると、EMAT10が有するコイルにより、被検体3に渦電流4が発生する。また、EMAT10が有する磁石2により静磁界5が発生する。
【0035】
この渦電流4と静磁界5の相互作用により、被検体3にはローレンツ力6が発生し、このローレンツ力6により被検体3が振動する。この振動が超音波へと変換され、被検体3中へ伝搬していく。被検体3中を伝搬した超音波は、被検体3の欠陥部3aにより散乱され、散乱波の一部は再びEMAT10に向けて伝搬してEMAT10に受信される。EMAT10で受信された超音波は、位置情報検出部60において信号処理され、欠陥部3aの位置情報が検出される。
【0036】
上述のように、実施の形態1から実施の形態4で示したEMAT、すなわち超音波の指向性が尖鋭化されたEMATを用いて被検体3の欠陥部3aを探傷する電磁超音波探傷装置100を構成することにより、探傷したい欠陥部とは異なる位置に存在する傷などの誤検出を抑制した電磁超音波探傷装置を提供することができる。
【0037】
なお、位置情報検出部60を設ける構成を示したが、受信した超音波から被検体3の欠陥部3aを特定可能な構成であれば、適宜変更して構成可能である。
【0038】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 コイル、2 磁石、3 被検体、3a 欠陥部、4 渦電流、5 静磁界、10,20,30,40 電磁超音波探触子(EMAT)、50 駆動信号送信部、60 位置情報検出部、100 電磁超音波探傷装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁界を形成する磁力発生手段と、被検体に渦電流を発生させるコイルとを備え、前記静磁界および前記渦電流の相互作用で発生するローレンツ力による超音波の送受信を行う超音波探触子において、
前記コイルは、前記磁界発生手段と前記被検体との間に配置された、少なくとも2以上の複数のコイルを並列に接続した並列コイルであり、該並列コイルを構成する各コイルが被検体に発生させる渦電流の電流量がそれぞれ異なることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項2】
前記並列コイルを構成する各コイルは、前記磁界発生手段の中央部を中心として同心状に接続され、前記各コイルが前記被検体に発生させる渦電流の電流量は、同心状の中心から最外周に向けて大きくなることを特徴とする請求項1記載の電磁超音波探触子。
【請求項3】
前記同心状に接続された各コイルは、それぞれ異なる線径の導線で構成され、該導線の線径は同心状の中心から最外周に向けて大きくなることを特徴とする請求項2記載の電磁超音波探触子。
【請求項4】
前記同心状に接続された各コイルは、それぞれ異なる抵抗率の導線で構成され、該導線の抵抗は同心状の中心から最外周に向けて小さくなることを特徴とする請求項2記載の電磁超音波探触子。
【請求項5】
前記同心状に接続された各コイルは、それぞれ異なる巻き数の導線で構成され、該導線の単位面積あたりの巻き数は同心状の中心から最外周に向けて大きくなることを特徴とする請求項2記載の電磁超音波探触子。
【請求項6】
前記同心状に接続された各コイルにはそれぞれ異なる抵抗値を有する抵抗素子が接続され、当該抵抗素子の抵抗値は同心状の中心から最外周に向けて小さくなることを特徴とする請求項2記載の電磁超音波探触子。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の電磁超音波探触子を用いて前記被検体に超音波を発生させ、発生した超音波のうち前記被検体の欠陥部において散乱された超音波を受信して前記被検体の探傷を行う電磁超音波探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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