説明

電空ポジショナおよび電空変換器

【課題】固定絞りおよびノズル・フラッパ機構のうち何れに詰まりが生じたかを特定することができるようにする。
【解決手段】電空変換部動作型式記憶部6に電空変換部2の動作型式を事前に記憶させておく。演算部1に詰まり箇所判定機能1Bを設ける。演算部1は、詰まり箇所判定機能1Bによって、ノズル背圧Pnに対する制御出力Kのずれ量およびずれ方向を監視し、このノズル背圧Pnに対する制御出力Kのずれ量およびずれ方向と、電空変換部動作型式記憶部6に記憶されている電空変換部2の動作型式とに基づいて、固定絞り8およびノズル・フラッパ機構2Aの何れに詰まりが生じたかを判定する。なお、演算部1に電空変換部動作型式判定機能を設け、この機能によって電空変換部2の動作型式を判定し、その判定結果を電空変換部動作型式記憶部6に記憶させるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気信号を空気圧信号に変換して調節弁の弁開度を制御する電空ポジショナおよび電空変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、調節弁に対して電空ポジショナを設け、この電空ポジショナによって調節弁の弁開度を制御するようにしている。この電空ポジショナは、上位装置から送られてくる弁開度設定値と調節弁からフィードバックされてくる実開度値との偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御出力として生成する演算部と、この演算部が生成した制御出力を空気圧の供給源から固定絞りを介して供給される空気によって動作するノズル・フラッパ機構のノズル背圧に変換する電空変換部と、この電空変換部が変換したノズル背圧を増幅し出力空気圧として調節弁の操作器へ出力するパイロットリレーとを備えている。
【0003】
この電空ポジショナにおいて、空気圧の供給源からの空気は、固定絞りを経てノズルに導かれ、フラッパにあたって、排出される。この空気圧の供給源からの空気中に含まれる微小な塵埃(ダスト、ミスト)は、空気経路中の中で最も隙間の狭い固定絞りやノズルとフラッパとの間のギャップ(ノズルギャップ)に徐々に堆積して行き、稼働時間が長くなるにつれてその堆積量も多くなって行く。そして、堆積量が許容値を超えると、動作不良状態に陥る。
【0004】
上位装置からの設定開度信号と調節弁の操作器への出力空気圧の測定信号との偏差から制御出力を生成する電空変換器でも、固定絞りやノズル・フラッパ機構を用いており、上述した電空ポジショナと同様の問題が生じる。
【0005】
そこで、塵埃の堆積によって動作不良状態に陥る前に、電空ポジショナや電空変換器自身が塵埃の堆積量が多くなったことを検知して、現場もしくは遠隔地の保守員に報知し、メンテナンスを促すようにすることが考えられている。
【0006】
例えば、特許文献1では、帰還信号と偏差信号或いはこれに関連する信号との差を演算して差信号を求め、この差信号が予め設定された基準値を越えた場合に外部に警報を出力するようにしている。
【0007】
また、特許文献2では、電空変換部のノズル・フラッパ機構の汚れを代替え的に検知するために供給空気用配管にノズル・フラッパ機構と並列に汚れ検知用ノズル・フラッパを接続し、この汚れ検知用ノズル・フラッパのノズル背圧を測定し、この測定したノズル背圧から電空変換部における汚れ度合いを求め、その汚れ度合いを表示するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−294401号公報
【特許文献2】特開平11−311217号公報
【特許文献3】特開平9−287158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1,2に示された方法では、固定絞りやノズル・フラッパ機構のどこかに無視できない汚れ(詰まり)が生じたことを検出することは可能であるが、どちらに汚れ(詰まり)が生じているかは特定できない。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、固定絞りおよびノズル・フラッパ機構のうち何れに詰まりが生じたかを特定することができる電空ポジショナおよび電空変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明に係る電空ポジショナは、上位装置から送られてくる弁開度設定値と制御対象である調節弁からフィードバックされてくる実開度値との偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御出力として生成する制御出力生成手段と、この制御出力生成手段が生成した制御出力を空気圧の供給源から固定絞りを介して供給される空気によって動作するノズル・フラッパ機構のノズル背圧に変換する電空変換手段と、この電空変換手段が変換したノズル背圧を増幅し出力空気圧として調節弁の操作器へ出力するノズル背圧増幅手段とを備えた電空ポジショナにおいて、電空変換手段が変換するノズル背圧に対する制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量およびずれ方向に基づいて固定絞りおよびノズル・フラッパ機構の何れに詰まりが生じたかを判定する詰まり箇所判定手段を設けたものである。
【0012】
また、本発明に係る電空変換器は、上位装置から送られてくる設定開度信号と制御対象である調節弁の操作器への出力空気圧の測定信号との偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御出力として生成する制御出力生成手段と、この制御出力生成手段が生成した制御出力を空気圧の供給源から固定絞りを介して供給される空気によって動作するノズル・フラッパ機構のノズル背圧に変換する電空変換手段と、この電空変換手段が変換したノズル背圧を増幅し出力空気圧として調節弁の操作器へ出力するノズル背圧増幅手段とを備えた電空変換器において、電空変換手段が変換するノズル背圧に対する制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量およびずれ方向に基づいて固定絞りおよびノズル・フラッパ機構の何れに詰まりが生じたかを判定する詰まり箇所判定手段を設けたものである。
【0013】
この発明によれば、ノズル背圧に対する制御出力のずれ量およびずれ方向に基づいて、固定絞りおよびノズル・フラッパ機構の何れに詰まりが生じたかが判定される。
【0014】
例えば、本発明において、電空変換手段の動作型式が正動作型であるときには、ノズル背圧に対する制御出力のずれ量が所定値を上回った場合、そのずれ量が正方向であれば固定絞りに詰まりが生じたと判定し、そのずれ量が負方向であればノズル・フラッパ機構に詰まりが生じたと判定するようにする。
【0015】
例えば、本発明において、電空変換手段の動作型式が逆動作型であるときには、ノズル背圧に対する制御出力のずれ量が所定値を上回った場合、そのずれ量が正方向であればノズル・フラッパ機構に詰まりが生じたと判定し、そのずれ量が負方向であれば固定絞りに詰まりが生じたと判定するようにする。
【0016】
なお、電空変換手段の動作型式は、制御出力が大になるにつれノズル背圧が大となる動作型式を正動作型と呼び、制御出力が大になるにつれノズル背圧が小となる動作型式を逆動作型と呼ぶ。この電空変換手段の動作型式は予め記憶させておくようにしてもよいし、電空変換手段の動作型式を判別する電空変換判別手段を設け、その判別結果を電空変換手段の動作型式として記憶させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ノズル背圧に対する制御出力のずれ量およびずれ方向に基づいて固定絞りおよびノズル・フラッパ機構の何れに詰まりが生じたかが判定されるものとなり、固定絞りおよびノズル・フラッパ機構のうち何れに詰まりが生じたかを特定することができるようにして、メンテナンス性を向上させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電空ポジショナの第1の実施の形態(実施の形態1)を示すブロック図である。
【図2】この電空ポジショナにおける電空変換部内のノズルフラッパ機構の要部を示す図である。
【図3】電空変換部が正動作型である場合の詰まり箇所による制御出力とノズル背圧との関係を説明する図である。
【図4】電空変換部が逆動作型である場合の詰まり箇所による制御出力とノズル背圧との関係を説明する図である。
【図5】電空変換部の動作型式が正動作型である場合の詰まり箇所の判定ロジックを示す図である。
【図6】電空変換部の動作型式が逆動作型である場合の詰まり箇所の判定ロジックを示す図である。
【図7】本発明に係る電空ポジショナの第2の実施の形態(実施の形態2)を示すブロック図である。
【図8】この電空ポジショナにおける電空変換部の動作型式の判定ロジックを示す図である。
【図9】本発明に係る電空変換器の第1の実施の形態(実施の形態3)を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る電空変換器の第2の実施の形態(実施の形態4)を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
〔電空ポジショナの第1の実施の形態(実施の形態1):電空変換部の動作型式を事前に記憶させておく例〕
図1は本発明に係る電空ポジショナの第1の実施の形態(実施の形態1)を示すブロック図である。同図において、100は本発明に係る電空ポジショナ、200はこの電空ポジショナ100によってその弁開度が制御される調節弁である。調節弁200は、弁軸20を駆動する操作器21を有しており、弁軸20にはその上下方向への変位量をフィードバックするフィードバック機構22が設けられている。
【0021】
電空ポジショナ100は、上位装置(図示せず)から送られてくる弁開度設定値θspと調節弁200からフィードバックされてくる実開度値θpvとの偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御出力Kとして生成する演算部1と、この演算部1が生成した制御出力Kを空気圧の供給源300から固定絞り8を介して供給される空気Psによって動作するノズル・フラッパ機構2Aのノズル背圧Pnに変換する電空変換部2と、この電空変換部2が変換したノズル背圧Pnを増幅し出力空気圧Poutとして調節弁200の操作器21へ出力するパイロットリレー3と、弁開度センサ4と、圧力センサ5と、電空変換部動作型式記憶部6と、表示部7とを備えている。
【0022】
弁開度センサ4は、フィードバック機構22からフィードバックされてくる弁軸20の変位量から調節弁200の弁開度を検出し、その検出した弁開度を実開度値θpvとして演算部1へ送る。圧力センサ5は、電空変換部21からのノズル背圧Pnの圧力値を検出し、演算部1へ送る。
【0023】
電空変換部2において、ノズル・フラッパ機構2Aは、図2に示すように、固定絞り8を介して供給される空気Psを排出するノズル2A1と、支点O1を中心として揺動するフラッパ2A2とを備えている。電空変換部2では、演算部1より制御出力Kが入力されると、その制御出力Kに応じた電流が励磁コイル(図示せず)に流れ、その磁界の強さが変化する。これによって、フラッパ2A2が揺動してノズル2A1との隙間(ノズルギャップ)Xが変化し、ノズル背圧Pnが変化する。
【0024】
電空変換部動作型式記憶部6には電空変換部2の動作型式が事前に記憶されている。電空変換部2の動作型式としては、制御出力Kが大になるにつれノズル背圧Pnが大となる正動作型と、制御出力Kが大になるにつれノズル背圧Pnが小となる逆動作型とがあり、この動作型式を実際の電空変換部2の動作型式と対応させて電空変換部6に事前に記憶させている。
【0025】
演算部1は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、制御出力Kを生成する制御出力生成機能1Aに加えて、本実施の形態特有の機能として、詰まり箇所判定機能1Bを備えている。
【0026】
〔詰まり箇所判定機能〕
演算部1は、詰まり箇所判定機能1Bによって、ノズル背圧Pnに対する制御出力Kのずれ量およびずれ方向を監視し、このノズル背圧Pnに対する制御出力Kのずれ量およびずれ方向と、電空変換部動作型式記憶部6に記憶されている電空変換部2の動作型式とに基づいて、固定絞り8およびノズル・フラッパ機構2Aの何れに詰まりが生じたかを判定する。
【0027】
〔電空変換部の動作型式と詰まり箇所による制御出力とノズル背圧との関係〕
〔電空変換部が正動作型である場合〕
電空変換部2が正動作型である場合、制御出力Kが大のとき、ノズル・フラッパ機構2AにおけるノズルギャップXは小となり、その結果、ノズル背圧Pnが大となる。
【0028】
ここで、固定絞り8に詰まりが生じると(図3(a)参照)、その下流側のノズル背圧Pnが下がる。すると、制御出力Kに対してノズル背圧Pnが低くなり、このノズル背圧Pnを高くするべく、制御出力Kのデューティ(Duty)が正方向にずれる。
【0029】
これに対し、ノズル・フラッパ機構2A(ノズルとフラッパとの間)に詰まりが生じると(図3(b)参照)、その上流側のノズル背圧Pnが上がる。すると、制御出力Kに対してノズル背圧Pnが高くなり、このノズル背圧Pnを低くするべく、制御出力Kのデューティ(Duty)が負方向にずれる。
【0030】
〔電空変換部が逆動作型である場合〕
電空変換部2が逆動作型である場合、制御出力Kが大のとき、ノズル・フラッパ機構2AにおけるノズルギャップXは大となり、その結果、ノズル背圧Pnが小となる。
【0031】
ここで、固定絞り8に詰まりが生じると(図4(a)参照)、その下流側のノズル背圧Pnが下がる。すると、制御出力Kに対してノズル背圧Pnが低くなり、このノズル背圧Pnを高めるべく、制御出力Kのデューティ(Duty)が負方向にずれる。
【0032】
これに対し、ノズル・フラッパ機構2A(ノズルとフラッパとの間)に詰まりが生じると(図4(b)参照)、その上流側のノズル背圧Pnが上がる。すると、制御出力Kに対してノズル背圧Pnが高くなり、このノズル背圧Pnを低くするべく、制御出力Kのデューティ(Duty)が正方向にずれる。
【0033】
〔電空変換部の動作型式が正動作型である場合の詰まり箇所の判定〕
今、電空変換部2の動作型式が正動作型であり、電空変換部動作型式記憶部6にも電空変換部2の動作型式が正動作型であることが記憶されているものとする。
【0034】
この場合、演算部1は、詰まり箇所判定機能1Bによって、電空変換部動作型式記憶部6に記憶されている内容から電空変換部2の動作型式が正動作型であると判断し、ノズル背圧Pnに対する制御出力Kのずれ量が所定値を上回った場合に、そのずれ量が正方向であれば固定絞り8に詰まりが生じたと判定し、そのずれ量が負方向であればノズル・フラッパ機構2Aに詰まりが生じたと判定する(図5参照)。
【0035】
すなわち、電空変換部2の動作型式が正動作型である場合、固定絞り8に詰まりが生じると、図3(a)に示されるように、ノズル背圧Pnに対して制御出力Kが正方向へずれ、詰まりが大ききなるほどそのずれ量が大きくなる。そこで、この正方向への制御出力Kのずれ量が所定値を上回った場合に、固定絞り8に詰まりが生じたと判定する。この判定結果は表示部7の画面上に表示される。
【0036】
また、電空変換部2の動作型式が正動作型である場合、ノズル・フラッパ機構2Aに詰まりが生じると、図3(b)に示されるように、ノズル背圧Pnに対して制御出力Kが負方向へずれ、詰まりが大きくなるほどそのずれ量が大きくなる。そこで、この負方向への制御出力Kのずれ量が所定値を上回った場合に、ノズル・フラッパ機構2Aに詰まりが生じたと判定する。この判定結果は表示部7の画面上に表示される。
【0037】
〔電空変換部の動作型式が逆動作型である場合の詰まり箇所の判定〕
今、電空変換部2の動作型式が逆動作型であり、電空変換部動作型式記憶部6にも電空変換部2の動作型式が逆動作型であることが記憶されているものとする。
【0038】
この場合、演算部1は、詰まり箇所判定機能1Bによって、電空変換部動作型式記憶部6に記憶されている内容から電空変換部2の動作型式が逆動作型であると判断し、ノズル背圧Pnに対する制御出力Kのずれ量が所定値を上回った場合に、そのずれ量が正方向であればノズル・フラッパ機構2Aに詰まりが生じたと判定し、そのずれ量が負方向であれば固定絞り8に詰まりが生じたと判定する(図6参照)。
【0039】
すなわち、電空変換部2の動作型式が逆動作型である場合、固定絞り8に詰まりが生じると、図4(a)に示されるように、ノズル背圧Pnに対して制御出力Kが負方向へずれ、詰まりが大きくなるほどそのずれ量が大きくなる。そこで、この負方向への制御出力Kのずれ量が所定値を上回った場合に、固定絞り8に詰まりが生じたと判定する。この判定結果は表示部7の画面上に表示される。
【0040】
また、電空変換部2の動作型式が逆動作型である場合、ノズル・フラッパ機構2Aに詰まりが生じると、図4(b)に示されるように、ノズル背圧Pnに対して制御出力Kが正方向へずれ、詰まりが大きくなるほどそのずれ量が大きくなる。そこで、この正方向への制御出力Kのずれ量が所定値を上回った場合に、ノズル・フラッパ機構2Aに詰まりが生じたと判定する。この判定結果は表示部7の画面上に表示される。
【0041】
〔電空ポジショナの第2の実施の形態(実施の形態2):電空変換部の動作型式を判定して記憶させる例〕
図7は本発明に係る電空ポジショナの第2の実施の形態(実施の形態2)を示すブロック図である。図1に示した電空ポジショナ100では、電空変換部動作型記憶部6に電空変換部2の動作型式を事前に記憶させておくものとしている。
【0042】
これに対して、図7に示した電空ポジショナ101では、演算部1に電空変換部動作型式判定機能1Cを設け、この電空変換部動作型式判定機能1Cによって電空変換部2の動作型式を判定するようにし、その判定結果を電空変換部動作型記憶部6に記憶させるようにしている。
【0043】
この電空ポジショナ101において、演算部1は、電空変換部動作型式判定機能1Cによって、制御出力Kの変化に対応するノズル背圧Pnの変化を監視し、制御出力Kの変化方向とノズル背圧Pnの変化方向とが同方向の場合に電空変換部2の動作型式を正動作型と判別する一方、制御出力Kの変化方向とノズル背圧Pnの変化方向とが異なる方向の場合に電空変換部2の動作型式を逆動作型と判別する。そして、この判別した動作型式を電空変換部2の現在の動作型式として電空変換部動作型式記憶部6に記憶させる。
【0044】
図8に電空変換部動作型式判別機能1Cによる電空変換部の動作型式の判別ロジックを示す。この判別ロジックからも分かるように、演算部1は、電空変換部動作型式判別機能1Cによって、制御出力Kの変化方向が「+」でノズル背圧Pnの変化方向が「+」であった場合、また制御出力Kの変化方向が「−」でノズル背圧Pnの変化方向が「−」であった場合、電空変換部2の動作型式を正動作型と判別する。これに対し、制御出力Kの変化方向が「+」でノズル背圧Pnの変化方向が「−」であった場合、また制御出力Kの変化方向が「−」でノズル背圧Pnの変化方向が「+」であった場合、電空変換部2の動作型式を逆動作型と判別する。
【0045】
この実施の形態2では、電空ポジショナ101自身が内蔵されている電空変換部2の動作型式を判別することができ、その判別結果を電空変換部動作型式記憶部6に記憶させることで、常に正確な詰まり箇所判定が可能となる。例えば、電空変換部2として動作型式を変更可能な電空変換部を用いた場合(例えば、特許文献3参照)、途中で電空変換部2の動作型式を人為的に変更することが可能である。このような場合、電空変換部動作型式記憶部6に記憶されている動作型式を更新する必要があるが、このような更新を忘れたような場合でも電空ポジショナ101自身が電空変換部2の動作型式を自動的に判別し、電空変換部動作型式記憶部6に記憶されている動作型式を更新するので、人為的なミスを排除することができる。
【0046】
〔電空変換器の第1の実施の形態(実施の形態3):電空変換部の動作型式を事前に記憶させておく例〕
図9は本発明に係る電空変換器の第1の実施の形態(実施の形態3)を示すブロック図である。同図において、400は本発明に係る電空ポジショナ、201はこの電空変換器400によってその弁開度が制御される調節弁である。調節弁201は、弁軸20を駆動する操作器21を有しているが、図1に示されたようなフィードバック機構22は設けられていない。
【0047】
また、この電空変換器400には、パイロットリレー3からの調節弁201の操作器21への出力空気圧Poutの圧力値を検出する圧力センサ9が設けられており、この圧力センサ9が検出する圧力値を示す信号が出力空気圧Poutの測定信号Ipvとして演算部1へ送られるものとされている。
【0048】
この電空変換器400において、演算部1は、上位装置(図示せず)から送られてくる設定開度信号Ispと圧力センサ9より送られてくる出力空気圧Poutの測定信号Ipvとの偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御出力Kとして生成する。この制御出力Kは、電空変換部2へ送られ、ノズル背圧Pnに変換される。
【0049】
この電空変換器400においても、図1に示した電空ポジショナ100と同様に、演算部1に詰まり箇所判定機能1Bが設けられており、図1に示した電空ポジショナ100と同様にして、固定絞り8およびノズル・フラッパ機構2Aの何れに詰まりが生じたかが判定される。
【0050】
〔電空変換器の第2の実施の形態(実施の形態4):電空変換部の動作型式を判定して記憶させる例〕
図10は本発明に係る電空変換器の第2の実施の形態(実施の形態4)を示すブロック図である。図9に示した電空変換器400では、電空変換部動作型記憶部6に電空変換部2の動作型式を事前に記憶させておくものとしている。
【0051】
これに対して、図10に示した電空変換器401では、演算部1に電空変換部動作型式判定機能1Cを設け、この電空変換部動作型式判定機能1Cによって電空変換部2の動作型式を判定するようにし、その判定結果を電空変換部動作型記憶部6に記憶させるようにしている。
【0052】
この電空変換器401において、演算部1は、電空変換部動作型式判定機能1Cによって、制御出力Kの変化に対応するノズル背圧Pnの変化を監視し、制御出力Kの変化方向とノズル背圧Pnの変化方向とが同方向の場合に電空変換部2の動作型式を正動作型と判別する一方、制御出力Kの変化方向とノズル背圧Pnの変化方向とが異なる方向の場合に電空変換部2の動作型式を逆動作型と判別する。そして、この判別した動作型式を電空変換部2の現在の動作型式として電空変換部動作型式記憶部6に記憶させる。
【0053】
この電空変換器401においても、図9に示した電空変換器400と同様に、演算部1に詰まり箇所判定機能1Bが設けられており、図9に示した電空変換器400と同様にして、固定絞り8およびノズル・フラッパ機構2Aの何れに詰まりが生じたかが判定される。
【0054】
以上の説明から分かるように、本実施の形態の電空ポジショナ100,101、電空変換器400,401では、ノズル背圧Pnに対する制御出力Kのずれ量およびずれ方向に基づいて固定絞り8およびノズル・フラッパ機構2Aの何れに詰まりが生じたかが判定され、その判定結果が表示部7の画面上に表示さるものとなる。これにより、保守員は、表示部7の画面上で、固定絞り8およびノズル・フラッパ機構2Aのうち何れに詰まりが生じたかを特定することができ、メンテナンス性を向上させることができるようになる。
【0055】
また、本実施の形態において、電空変換部2が防爆容器内に収められ、固定絞り8が防爆ケース外から装着・取り出しが可能であるような場合、固定絞り8に詰まりが生じた場合の作業が簡単となる。すなわち、詰まり箇所が固定絞り8であることが特定されると、固定絞り8を取り出して、クリーニングして詰まりを解消した後、再び取り付けるようにすればよい。この場合、防爆容器を開ける必要がないので、簡単に作業を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の電空ポジショナおよび電空変換器は、電気信号を空気圧信号に変換して調節弁の弁開度を制御する電空ポジショナおよび電空変換器として、プロセス制御など様々な分野で利用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…演算部、1A…制御出力生成機能、1B…詰まり箇所判定機能、1C…電空変換部動作型式判定機能、2…電空変換部、2A…ノズルフラッパ機構、2A1…ノズル、2A2…フラッパ、3…パイロットリレー、4…弁開度センサ、5…圧力センサ、6…電空変換部動作型式記憶部、7…表示部、8…固定絞り、9…圧力センサ、20…弁軸、21…操作器、22…フィードバック機構、100,101…電空ポジショナ、200…調節弁、300…空気圧の供給源、400,401…電空変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から送られてくる弁開度設定値と制御対象である調節弁からフィードバックされてくる実開度値との偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御出力として生成する制御出力生成手段と、
この制御出力生成手段が生成した制御出力を空気圧の供給源から固定絞りを介して供給される空気によって動作するノズル・フラッパ機構のノズル背圧に変換する電空変換手段と、
この電空変換手段が変換したノズル背圧を増幅し出力空気圧として前記調節弁の操作器へ出力するノズル背圧増幅手段とを備えた電空ポジショナにおいて、
前記電空変換手段が変換するノズル背圧に対する前記制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量およびずれ方向に基づいて前記固定絞りおよび前記ノズル・フラッパ機構の何れに詰まりが生じたかを判定する詰まり箇所判定手段
を備えることを特徴とする電空ポジショナ。
【請求項2】
請求項1に記載された電空ポジショナにおいて、
前記電空変換手段の動作型式として、前記制御出力が大になるにつれ前記ノズル背圧が大となる正動作型であるのか、前記制御出力が大になるにつれ前記ノズル背圧が小となる逆動作型であるのかを記憶する電空変換手段動作型式記憶手段を備え、
前記詰まり箇所判定手段は、
前記電空変換手段が変換するノズル背圧に対する前記制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量およびずれ方向と、前記電空変換手段動作型式記憶手段に記憶されている前記電空変換手段の動作型式とに基づいて、前記固定絞りおよび前記ノズル・フラッパ機構の何れに詰まりが生じたかを判定する
ことを特徴とする電空ポジショナ。
【請求項3】
請求項1に記載された電空ポジショナにおいて、
前記電空変換手段の動作型式を判別する電空変換判別手段を備え、
前記電空変換手段動作型式記憶手段は、前記電空変換判別手段の判別結果を前記電空変換手段の動作型式として記憶する
ことを特徴とする電空ポジショナ。
【請求項4】
請求項1−3の何れか1項に記載された電空ポジショナにおいて、
前記詰まり箇所判定手段は、
前記電空変換手段の動作型式が正動作型であるとき、前記電空変換手段が変換するノズル背圧に対する前記制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量が所定値を上回った場合、そのずれ量が正方向であれば前記固定絞りに詰まりが生じたと判定する一方、そのずれ量が負方向であれば前記ノズル・フラッパ機構に詰まりが生じたと判定する
ことを特徴とする電空ポジショナ。
【請求項5】
請求項1−3の何れか1項に記載された電空ポジショナにおいて、
前記詰まり箇所判定手段は、
前記電空変換手段の動作型式が逆動作型であるとき、前記電空変換手段が変換するノズル背圧に対する前記制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量が所定値を上回った場合、そのずれ量が正方向であれば前記ノズル・フラッパ機構に詰まりが生じたと判定する一方、そのずれ量が負方向であれば前記固定絞りに詰まりが生じたと判定する
ことを特徴とする電空ポジショナ。
【請求項6】
上位装置から送られてくる設定開度信号と制御対象である調節弁の操作器への出力空気圧の測定信号との偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御出力として生成する制御出力生成手段と、
この制御出力生成手段が生成した制御出力を空気圧の供給源から固定絞りを介して供給される空気によって動作するノズル・フラッパ機構のノズル背圧に変換する電空変換手段と、
この電空変換手段が変換したノズル背圧を増幅し前記出力空気圧として前記調節弁の操作器へ出力するノズル背圧増幅手段とを備えた電空変換器において、
前記電空変換手段が変換するノズル背圧に対する前記制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量およびずれ方向に基づいて前記固定絞りおよび前記ノズル・フラッパ機構の何れに詰まりが生じたかを判定する詰まり箇所判定手段
を備えることを特徴とする電空変換器。
【請求項7】
請求項6に記載された電空変換器において、
前記電空変換手段の動作型式として、前記制御出力が大になるにつれ前記ノズル背圧が大となる正動作型であるのか、前記制御出力が大になるにつれ前記ノズル背圧が小となる逆動作型であるのかを記憶する電空変換手段動作型式記憶手段を備え、
前記詰まり箇所判定手段は、
前記電空変換手段が変換するノズル背圧に対する前記制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量およびずれ方向と、前記電空変換手段動作型式記憶手段に記憶されている前記電空変換手段の動作型式とに基づいて、前記固定絞りおよび前記ノズル・フラッパ機構の何れに詰まりが生じたかを判定する
ことを特徴とする電空変換器。
【請求項8】
請求項6に記載された電空変換器において、
前記電空変換手段の動作型式を判別する電空変換判別手段を備え、
前記電空変換手段動作型式記憶手段は、前記電空変換判別手段の判別結果を前記電空変換手段の動作型式として記憶する
ことを特徴とする電空変換器。
【請求項9】
請求項6−8の何れか1項に記載された電空変換器において、
前記詰まり箇所判定手段は、
前記電空変換手段の動作型式が正動作型であるとき、前記電空変換手段が変換するノズル背圧に対する前記制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量が所定値を上回った場合、そのずれ量が正方向であれば前記固定絞りに詰まりが生じたと判定する一方、そのずれ量が負方向であれば前記ノズル・フラッパ機構に詰まりが生じたと判定する
ことを特徴とする電空変換器。
【請求項10】
請求項6−8の何れか1項に記載された電空変換器において、
前記詰まり箇所判定手段は、
前記電空変換手段の動作型式が逆動作型であるとき、前記電空変換手段が変換するノズル背圧に対する前記制御出力生成手段が生成する制御出力のずれ量が所定値を上回った場合、そのずれ量が正方向であれば前記ノズル・フラッパ機構に詰まりが生じたと判定する一方、そのずれ量が負方向であれば前記固定絞りに詰まりが生じたと判定する
ことを特徴とする電空変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−214611(P2011−214611A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81150(P2010−81150)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】