説明

電空レギュレータ

【課題】 初期段階の圧力制御の精度を維持できる電空レギュレータを提供すること。
【解決手段】 圧力測定手段109が測定した出力圧力を所定の設定圧力に一致させるように給気弁107及び排気弁108の操作量を決定し、操作量をバイアス電圧に照合してDuty比を設定することにより、給気弁107と排気弁108の弁開閉動作を制御する電空レギュレータ1において、排気ポート104から排気される気体の排気量を測定する流量測定手段2を有すること、制御手段10は、排気ポート104から排気される排気量を規定する規定排気量を記憶する規定値記憶手段11mと、流量測定手段2が測定した排気量を規定値記憶手段11mに記憶されている規定排気量に一致させるように、バイアス電圧を調整するバイアス電圧調整手段11lと、を有しており、バイアス電圧調整手段11lにより調整された調整後バイアス電圧を用いてDuty比を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御手段が設定圧力信号に基づいて給気用電磁比例弁及び排気用電磁比例弁により排気ポートから排気する気体の排気量を制御することにより、入力ポートに入力される気体を圧力調整して出力ポートから出力するようにした電空レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造装置には、圧縮空気を制御するために、電空レギュレータが備えられている。従来の電空レギュレータ101の一例を図12に示す。電空レギュレータ101は、圧縮空気が入力される入力ポート102と、圧縮空気を出力する出力ポート103と、入力ポート102から出力ポート103へ流れる圧縮空気を排気する排気ポート104を備える。電空レギュレータ101は、入力ポート102と出力ポート103を接続する給気流路105と、給気流路105から分岐して排気ポート104に接続する排気流路106を備える。
【0003】
給気用電磁比例弁(以下「給気弁」という。)107は、入力ポート102に入力された圧縮空気の給気量を制御する。排気用電磁比例弁(以下「排気弁」という。)108は、排気ポート104から排気される圧縮空気の排気量を制御する。圧力センサ109は、排気弁108の一次側に配設され、出力ポート103から出力される圧縮空気の出力圧力を測定する。給気弁107と排気弁108と圧力センサ109は、制御手段110に接続されている。制御手段110は、比較演算回路部110bが、圧力センサ109から受信した圧力センサ信号と入力信号処理部110aが受信した設定圧力信号との偏差を求める。そして、制御手段110は、制御回路部110cが、比較演算回路部110bから受信した偏差に基づいて、出力圧力が所定の設定圧力に一致するように給気弁107及び排気弁108の開閉を制御する電気信号を生成して給気弁107と排気弁108へ送信する。
【0004】
このような電空レギュレータ101は、給気弁107と排気弁108の開閉動作によって排気ポート104から排気する圧縮空気の排気量を制御することにより、入力ポート102に入力される圧縮空気を圧力調整して出力ポート103から出力する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−295403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電空レギュレータ101は、時間が経つと、圧力制御の精度が初期段階から悪化してしまっていた。圧力制御の精度は、製品の歩留まりに影響する。そのため、電空レギュレータ101は、従来より、定期的なメンテナンスや劣化した電空レギュレータ101の交換が行われている。この場合、半導体製造ラインを停止しなければならないため、電空レギュレータ101のメンテナンスや交換が頻繁に行われると、製品製造効率が低下する。また、省エネの観点から、できるだけ1個の電空レギュレータ101を長く使用することが好ましい。よって、電空レギュレータ101には、初期段階の圧力制御の精度を長期間維持し、メンテナンスや交換の頻度を少なくするニーズが、現場から寄せられている。ところが、電空レギュレータ101が圧力制御の精度を経時的に悪化させる原因が分かっておらず、そのニーズに応えることができなかった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、初期段階の圧力制御の精度を維持できる電空レギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電空レギュレータは、次のような構成を有している。
(1)気体が入力される入力ポートと、前記気体を出力する出力ポートと、前記入力ポートから前記出力ポートへ流れる前記気体を排気する排気ポートと、前記入力ポートに入力された気体の給気量を制御する給気用電磁比例弁と、前記排気ポートから排気される前記気体の排気量を制御する排気用電磁比例弁と、前記出力ポートから出力される前記気体の出力圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段が測定した前記出力圧力を所定の設定圧力に一致させるように前記給気用電磁比例弁及び前記排気用電磁比例弁の操作量を決定し、前記操作量をバイアス電圧に照合してDuty比を設定することにより、前記給気用電磁比例弁と前記排気用電磁比例弁の弁開閉動作を制御する制御手段とを有する電空レギュレータにおいて、前記排気ポートから排気される前記気体の排気量を測定する流量測定手段を有すること、前記制御手段は、前記排気ポートから排気される排気量を規定する規定排気量を記憶する規定値記憶手段と、前記流量測定手段が測定した前記排気量を前記規定値記憶手段に記憶されている前記規定排気量に一致させるように、前記バイアス電圧を調整するバイアス電圧調整手段と、を有しており、前記バイアス電圧調整手段により調整された調整後バイアス電圧を用いて前記Duty比を設定することを特徴とする。
【0009】
(2)(1)に記載の発明において、前記バイアス電圧を変更するバイアス変更手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の電空レギュレータは、例えば、出力ポートから出力される気体の出力圧力が所定の設定圧力に安定している場合に、給気用電磁比例弁と排気用電磁比例弁に作動ポイント(「作動ポイント」とは、(電磁比例弁のDuty−流量特性で微少な流量が発生するポイントをいう。)で動作するようにDuty比を設定する。そのため、電空レギュレータは、圧力安定時には、排気ポートから微少な漏れを発生しながら、出力圧力の圧力調整を行う。
【0011】
例えば、排気用電磁比例弁が劣化すると、排気用電磁比例弁の作動ポイントが初期段階からずれる。この場合、排気用電磁比例弁のDuty比を、作動ポイントに対応するDuty比に設定したとしても、排気用電磁比例弁が開かないことがある。排気用電磁比例弁が開かないと、排気ポートから排気される気体の排気量が規定された排気量(以下「規定排気量」という。)より少なくなる。排気量を正常に制御できないと、出力圧力の圧力制御を精度良く行えない。
【0012】
そこで、上記電空レギュレータは、排気ポートから排気される気体の排気量を規定する規定排気量を、制御手段の規定値記憶手段に記憶している。そして、制御手段は、流量測定手段により測定される排気量が規定値記憶手段に記憶されている規定排気量に一致するように、バイアス電圧を調整する。これにより、劣化した排気用電磁弁に出力される信号は、排気量を増加させるようにDuty比が変更される。そのため、電空レギュレータは、初期段階の排気用電磁比例弁を使用する場合と同様に排気量を規定排気量に制御し、出力圧力を所定の設定圧力に制御することができる。
【0013】
このように、上記電空レギュレータは、排気用電磁比例弁が劣化した場合に、排気量を規定排気量に一致させるようにバイアス電圧を調整することにより、圧力制御のズレを防ぐので、初期段階の圧力制御の精度を維持できる。
【0014】
尚、電空レギュレータは、給気用電磁比例弁が劣化した場合も、排気量が減少するので、上記のように排気用電磁比例弁が劣化した場合と同様に、初期段階の圧力制御の精度を維持できる。
【0015】
また、上記構成の電空レギュレータは、バイアス電圧記憶手段に記憶されたバイアス電圧をバイアス変更手段により変更できるので、仕様によってバイアス電圧を自由に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る電空レギュレータの構成を示す図である。
【図2】図1に示す電空レギュレータの内部動作を示すタイミングチャートである。
【図3】初期段階における圧力偏差と電磁比例弁Duty比の関係を示すグラフである。
【図4】初期段階の給気弁と排気弁の動作と流量特性との関係を示す図である。
【図5】排気弁劣化後における圧力偏差と電磁比例弁Duty比の関係を示すグラフである。
【図6】排気弁劣化後の給気弁と排気弁の動作と流量特性との関係を示す図である。
【図7】初期段階の排気弁動作原理を示す図である。
【図8】初期段階の排気弁側Duty比と流量特性の関係を示す図である。
【図9】排気弁劣化後の排気弁側Duty比と流量特性の関係を示す図である。
【図10】バイアス調整後における排気弁動作原理を示す図である。
【図11】バイアス調整後の排気弁側Duty比と流量特性の関係を示す図である。
【図12】従来の電空レギュレータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る好ましい実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明することにする。
【0018】
<電空レギュレータの構成>
図1は、本発明の実施形態に係る電空レギュレータ1の構成を示す図である。
電空レギュレータ1は、従来技術と同様に半導体製造ラインに組み付けられ、圧縮空気の圧力を制御する。
【0019】
図1に示す電空レギュレータ1は、図12に示す従来の電空レギュレータ101と同様、圧縮空気が入力される入力ポート102と、圧縮空気を出力する出力ポート103が、給気流路105を介して接続されている。排気流路106は、給気流路105から分岐して排気ポート104に接続されている。排気ポート104は、入力ポート102から出力ポート103へ流れる圧縮空気を排気する。給気流路105には、入力ポート102に入力された圧縮空気の給気量を制御する給気弁107が配設されている。排気流路106には、排気ポート104から排気される圧縮空気の排気量を制御する排気弁108が配設されている。また、排気流路106は、排気弁108の一次側に、出力ポート103から出力される圧縮空気の出力圧力を測定する圧力センサ109(圧力測定手段の一例)が配設されている。
【0020】
本実施形態の電空レギュレータ1は、排気ポート104から排気される圧縮空気の排気量を測定する流量センサ2(流量測定手段の一例)が、排気弁108の二次側に配設されている点が、図12に示す従来の電空レギュレータ101と相違する。流量センサ2は、給気弁107と排気弁108と圧力センサ109と同様、制御手段10に電気的に接続されている。
【0021】
制御手段10は、圧力センサ109が測定する圧縮空気の出力圧力だけでなく、流量センサ2が測定する圧縮空気の排気量も監視しながら、給気弁107と排気弁108をPWM制御する。制御手段10は、排気量に応じて調整したバイアス電圧を基準にDuty比を設定し、給気弁107と排気弁108の制御を行う点に特徴を有する。
【0022】
制御手段10は、制御基板11とセンサ基板12を備える。
センサ基板12には、圧力センサ109とセンサアンプ12aが実装されている。センサアンプ12aは、圧力センサ109が測定した出力圧力を電気信号の圧力センサ信号Bに変換するものである。
【0023】
制御基板11は、電源回路部11aが電源3から作動電圧を供給されると、入力信号処理部11bが圧力設定手段4から設定圧力信号Aを受信する。
【0024】
設定圧力信号Aは、出力ポート103から出力する圧縮空気の圧力を設定するものである(以下、この圧力を「設定圧力」という。)。圧力設定手段4は、電空レギュレータ1の外部に設けられた上位装置であってもよいし、電空レギュレータ1に設けられた操作手段により構成してもよい。
【0025】
第1比較演算回路11cは、入力信号処理部11bから設定圧力信号Aを受信する。また、第1比較演算回路11cは、センサアンプ12aから圧力センサ信号Bを受信する。第1比較演算回路11cは、設定圧力信号Aから圧力センサ信号Bを減算することにより設定圧力と出力圧力の偏差(以下「圧力偏差」という。)を求め、PID補償回路部11dへ送信する。
【0026】
PID補償回路部11dは、圧力偏差の比例、積分、微分の線形結合によって電磁比例弁の弁開度(操作量)を決定するものである。PID補償回路部11dは、決定した電磁比例弁の操作量を、第2比較演算回路11eと反転回路11fへ送信する。第2比較演算回路11eと反転回路11fは、発振回路部11hから同一のクロックパルスを受信する。
【0027】
第2比較演算回路11eは、PID補償回路部11dから受信した操作量をクロックパルスに同期させ、圧力センサ109が測定した出力圧力(圧力センサ信号B)が所定の設定圧力(設定圧力信号A)に一致するように給気弁107が制御する制御流量(給気量)を決定する差動増幅後給気側制御信号Cを生成する。
反転回路11fは、PID補償回路部11dから受信した操作量を反転させてクロックパルスに同期させ、圧力センサ109が測定した出力圧力(圧力センサ信号B)が所定の設定圧力(設定圧力信号A)に一致するように排気弁108が制御する制御流量(排気量)を決定する差動増幅後排気側制御信号Eを生成する。
【0028】
第2比較演算回路11eと反転回路11fが同一のクロックパルスを入力するため、差動増幅後給気側制御信号Cと差動増幅後排気側制御信号Eは、同じタイミングで制御流量を増減させる信号となる。
また、反転回路11fが操作量を反転させているため、差動増幅後給気側制御信号Cと差動増幅後排気側制御信号Eは、中点電位を基準に対称な信号になる。
【0029】
給気弁制御部11iは、第2比較演算回路11eから差動増幅後給気側制御信号Cを受信する。一方、排気弁制御部11jは、反転回路11fから差動増幅後排気側制御信号Eを受信する。給気弁制御部11iと排気弁制御部11jは、バイアス調整回路11k(バイアス電圧調整手段の一例)から同一のバイアス信号Gを受信する。
【0030】
バイアス調整回路11kは、流量センサ2が測定した排気量を規定値記憶手段11mに記憶されている規定排気量に一致させるようにバイアス電圧を調整するものである。ここで、規定排気量とは、排気ポート104から排気される圧縮空気の排気量を規定するものである。規定排気量は、電空レギュレータ1の出荷時に予め設定するようにしても良いし、仕様に応じて外部装置や電空レギュレータ上の操作手段を用いて設定・変更できるようにしてもよい。
【0031】
バイアス調整回路11kは、第3比較演算回路11lに接続されている。第3比較演算回路11lは、流量センサ2と規定値記憶手段11mに接続されている。第3比較演算回路11lは、流量センサ2から排気量を受信すると共に、規定値記憶手段11mから規定排気量を受信する。
【0032】
第3比較演算回路11lは、規定排気量から排気量を減算することにより規定排気量と排気量の偏差(以下「流量偏差」という。)を求め、バイアス調整回路11kへ送信する。つまり、制御手段10は、第3比較演算回路11lにより圧縮空気が正常に排気されているかを監視している。
【0033】
バイアス調整回路11kは、バイアス電圧を記憶するバイアス電圧記憶手段11qに接続されている。バイアス電圧は、出荷時に予めバイアス電圧記憶手段11qに記憶されるが、バイアス変更手段5により仕様等に応じて適宜変更できるようになっている。
【0034】
バイアス調整回路11kは、第3比較演算回路11lから受信した流量偏差に応じてバイアス電圧を調整し、バイアス信号Gを生成する。バイアス調整回路11kは、排気量が規定排気量に一致している場合には、バイアス電圧と等しく調整したバイアス信号Gを給気弁制御部11iと排気弁制御部11jへ送信する。また、バイアス調整回路11kは、排気量が規定排気量より小さい場合には、流量偏差に応じてバイアス電圧を低く調整したバイアス信号Gを生成し、給気弁制御部11iと排気弁制御部11jへ送信する。更に、バイアス調整回路11kは、排気量が規定排気量より大きい場合には、流量偏差に応じてバイアス電圧を高く調整したバイアス信号Gを生成し、給気弁制御部11iと排気弁制御部11jへ送信する。
【0035】
給気弁制御部11iは、差動増幅後給気側制御信号Cがバイアス信号G以上となる範囲で給気弁107を開弁させるON信号を生成し、差動増幅後給気側制御信号Cがバイアス信号G以下となる範囲で給気弁107を閉弁させるOFF信号を生成することにより、給気弁107を制御するためのDuty比を設定し、それに従って生成した給気弁側制御信号Dを給気弁107へ送信する。
【0036】
排気弁制御部11jは、差動増幅後排気側制御信号Eがバイアス信号G以上となる範囲で排気弁108を開弁させるON信号を生成し、差動増幅後排気側制御信号Eがバイアス信号G以下となる範囲で排気弁108を閉弁させるOFF信号を生成することにより、排気弁108を制御するためのDuty比を設定し、それに従って生成した排気弁側制御信号Fを排気弁108へ送信する。
【0037】
表示回路11gは、PID補償回路部11dから受信した操作量に応じて電空レギュレータ1の動作状態(例えば、正常、不安定、異常)を判定し、その判定結果に応じてLED6の表示色を変えるようにLED6を制御するものである。
更に、モニタ回路11nは、センサアンプ12aから圧力センサ信号Bを受信する。モニタ回路11nは、出力圧力を表示するようにモニタ7を制御するものである。
【0038】
<電空レギュレータの一般動作説明>
次に、電空レギュレータ1の動作について説明する。図2は、図1に示す電空レギュレータ1の内部動作を示すタイミングチャートである。
電空レギュレータ1は、作動電圧を供給されるまで、給気弁107と排気弁108をOFF状態にしている。
【0039】
図2に示すように、電空レギュレータ1は、作動電圧が供給されると、設定圧力信号Aを受信するまで、待機状態となる。この待機状態のとき、電空レギュレータ1は、応答性を高めるために、給気弁107と排気弁108を作動ポイントで同期させて制御する。ここで、「作動ポイント」とは、電磁比例弁のDuty−流量特性で微少な流量(例えば10cc)が発生するポイントをいう。よって、待機状態の電空レギュレータ1は、給気弁107と排気弁108のDuty比を微少な流量が発生するように小さく設定し、給気弁107と排気弁108を同期してON−OFF状態にする。この場合、給気弁107から給気された圧縮空気が排気弁108から排気されるため、電空レギュレータ1は、設定圧力信号Aを受信するまでの待機状態のとき、出力圧力が0Paで安定する。
【0040】
図2のT1に示すように、電空レギュレータ1は、設定圧力信号Aを受信すると、出力圧力を設定圧力に一致させるように給気弁107と排気弁108のON−OFF状態を切り替えて圧力制御を行う。
【0041】
すなわち、電空レギュレータ1は、100%の設定圧力信号Aが入力されると、出力ポート103の圧力がまだ0Paであるため、圧力センサ109は0%のままである。よって、設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bの圧力偏差が大きくなる。
設定圧力信号Aより圧力センサ信号Bが低くなるため、差動増幅後給気側制御信号Cが上昇し、バイアス信号Gより高くなる。よって、給気弁側制御信号DがONとなる。
設定圧力信号Aより圧力センサ信号Bが低くなるため、差動増幅後排気側制御信号Eが降下し、バイアス信号Gより低くなる。よって、排気弁側制御信号FがOFFとなる。
【0042】
図2のT2に示すように、設定圧力信号Aは、100%の状態を維持する。
給気弁側制御信号DがON状態のため、出力ポート103の圧力が上昇し、圧力センサ信号Bは上昇し、設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が小さくなる。
設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が小さくなるため、差動増幅後給気側制御信号Cは降下し始める。しかし、差動増幅後給気側制御信号Cはバイアス信号Gより高いため、給気弁側制御信号DはONのままとなる。
設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が小さくなるため、差動増幅後排気側制御信号Eは上昇し始める。しかし、差動増幅後排気側制御信号Eはバイアス信号Gより低いため、排気弁側制御信号FはOFFのままとなる。
【0043】
このように、電空レギュレータ1は、給気弁107をON状態、排気弁108をOFF状態にすると、給気ポート102に入力した圧縮空気が、給気流路105のみを流れる。そのため、出力ポート103から出力される圧縮空気の出力圧力が上昇する。
【0044】
図2のT3に示すように、電空レギュレータ1は、出力圧力が設定圧力に一致して(圧力偏差が0になって)安定すると、上述した待機状態となる。
【0045】
すなわち、出力圧力安定後も、設定圧力信号Aは、100%の状態を維持する。
圧力センサ信号Bは上昇し、設定圧力信号Aとの圧力偏差が0になる。
設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が0になるため、差動増幅後給気側制御信号Cは降下する。給気弁側制御信号Dは、差動増幅後給気側制御信号Cがバイアス信号G以上の場合、ON、以下の場合OFFの信号を出力する。
設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が0になるため、差動増幅後排気側制御信号Eは上昇する。排気弁側制御信号Fは、差動増幅後排気側制御信号Eがバイアス信号G以上の場合、ON、以下の場合OFFの信号を出力する。
【0046】
よって、電空レギュレータ1は、出力圧力安定時に、給気弁107と排気弁108へ送信する電気信号のDuty比を小さく設定し、給気弁107と排気弁108を同期して開閉させる。これにより、電空レギュレータ1は、出力圧力安定時に出力圧力が僅かに変動した場合に、給気弁107と排気弁108のDuty比を素早く変更し、出力圧力を設定圧力に応答性良く一致させることが可能である。
【0047】
図2のT4に示すように、電空レギュレータ1は、設定圧力信号Aを受信しなくなると、給気弁107をOFF状態、排気弁108をON状態にすることにより、出力圧力を低下させて0Paにする。
【0048】
すなわち、図2のT4に示すように、0%の設定圧力信号Aが入力されると、圧力は最大制御圧力であるため、圧力センサ信号Bは100%のままで、設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が大きくなる。
設定圧力信号Aより圧力センサ信号Bが高くなるため、差動増幅後給気側制御信号Cが降下しバイアス信号Gより低くなる。よって、給気弁側制御信号DがOFFとなる。
設定圧力信号Aより圧力センサ信号Bが高くなるため、差動増幅後排気側制御信号Eが上昇しバイアス信号Gより高くなる。よって、排気弁側制御信号FがONとなる。
【0049】
図2のT5に示すように、圧縮空気が排気流路106を介して排気ポート104から排気され、出力圧力が低下し始めた後も、設定圧力信号Aは、0%の状態を維持する。
排気弁側制御信号FがON状態のため、圧力が降下し、圧力センサ信号Bは降下し、設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が小さくなる。
設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が小さくなるため、差動増幅後給気側制御信号Cは上昇し始める。しかし、差動増幅後給気側制御信号Cはバイアス信号Gより低いため、給気弁側制御信号DはOFFのままとなる。
設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が小さくなるため、差動増幅後排気側制御信号Eは降下し始める。しかし、差動増幅後排気側制御信号Eはバイアス信号Gより高いため、排気弁側制御信号FはONのままとなる。
【0050】
図2のT6に示すように、電空レギュレータ1は、出力圧力が0Paに安定すると、上述した待機状態となる。
【0051】
すなわち、出力圧力が0Paに安定した後も、設定圧力信号Aは、0%の状態を維持する。
圧力センサ信号Bは降下し、設定圧力信号Aとの圧力偏差が0になる。
設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が0になるため、差動増幅後給気側制御信号Cは上昇する。給気弁側制御信号Dは、差動増幅後給気側制御信号Cがバイアス信号G以上の場合、ON、以下の場合OFFの信号を出力する。
設定圧力信号Aと圧力センサ信号Bとの圧力偏差が0になるため、差動増幅後排気側制御信号Eは降下する。排気弁側制御信号Fは、差動増幅後排気側制御信号Eがバイアス信号G以上の場合、ON、以下の場合OFFの信号を出力する。
【0052】
このように、電空レギュレータ1は、出力圧力が0Paに安定した後に待機状態にされることにより、次に100%の設定圧力信号Aを受信したときに、直ぐに出力圧力を上昇させ始めることが可能である。
【0053】
尚、電空レギュレータ1は、出力圧力が設定圧力を超えると、給気弁107をOFF状態、排気弁108をON状態にする。これにより、給気流路105の圧縮空気が排気流路106を介して排気ポート104から排気され、出力圧力が低下する。
【0054】
<電空レギュレータの圧力制御の精度悪化原因について>
ところで、出願人は、従来不明とされていた、電空レギュレータの圧力制御の精度が悪化する原因を、試行錯誤の末に究明した。その原因について、図3〜図5を参照して説明する。図3は、初期段階におけるの圧力偏差と電磁比例弁Duty比の関係を示すグラフである。図4は、初期段階の給気弁107と排気弁108の動作と流量特性との関係を示す図である。図6は、排気弁劣化後の給気弁と排気弁の動作と流量特性との関係を示す図である。図5は、排気弁劣化後における圧力偏差と電磁比例弁Duty比の関係を示すグラフである。
以下の説明では、排気弁108が劣化した場合を例に挙げて説明する。
【0055】
図3に示すように、電空レギュレータ1は、圧力偏差に対応して、給気弁107と排気弁108のDuty比が設定されている。給気弁107のDuty比と排気弁108のDuty比は、圧力偏差に対してリニアに変化する。給気弁107は、圧力偏差がプラス側へ増加するのに比例して、Duty比が大きく設定される。一方、排気弁108は、圧力偏差がマイナス側へ減少するのに比例して、Duty比が大きく設定される。給気弁107と排気弁108のDuty比を作動ポイントK1、K2に対応するDuty比以下に設定することにより、排気ポート104から排気する圧縮空気の排気量を微少制御し、出力圧力を微調整することができる(以下、この領域を「圧力微少制御域P」という。)。
【0056】
図4に示すように、初期段階の給気弁107は、Duty比が0%以上作動ポイントK1に対応するDuty比(ここでは12%とする)未満の範囲では、圧縮空気の給気量が0である。そして、給気弁107は、Duty比が12%以上になると、Duty比に比例して、圧縮空気の給気量が増加する。
一方、初期段階の排気弁108は、Duty比が0%以上、作動ポイントK2に対応するDuty比(ここでは12%とする。)未満の範囲では、圧縮空気の排気量が0である。そして、排気弁108は、Duty比が12%以上になると、Duty比に比例して圧縮空気の排気量が増加する。
【0057】
給気弁107の流量特性(図中実線)と排気弁108の流量特性(図中太線)がクロスする微少流量制御領域X(図4の斜線部参照)では、給気弁107と排気弁108は、作動ポイントに対応する微少な流量以下で圧縮空気を制御するため、排気ポート104から圧縮空気を微少量でスロー排気することが可能になる。よって、微少流量制御領域Xが増えるほど、より細かく排気量を制御でき、図3に示す圧力微少制御域Pが広くなる。圧力微少制御域Pが広くなると、出力圧力安定時に出力圧力の微少な変動を応答性よく設定圧力に一致させることができるようになる。よって、電空レギュレータ1が圧力制御を精度よく行うためには、給気弁107と排気弁108の作動ポイントが初期段階からずれないことが前提となる。
【0058】
ところが、給気弁107と排気弁108は、電磁比例弁の可動鉄心がボビンに擦れて摩耗し、ヒステリシス特性が低下したり、弁開閉動作を繰り返す間に弁体や弁座が変形するなどして、劣化する。この場合、給気弁107と排気弁108の作動ポイントが初期段階からずれてしまう。例えば、排気弁108が経年劣化すると、図5のK22に示すように、排気弁108の作動ポイントに遅れが生じる。この場合、図5の実線に示す給気弁107の流量特性と、図5の太線に示す排気弁108の流量特性とがクロスする微少流量制御領域Xが狭くなる。
【0059】
微少流量制御領域Xが狭くなると、図6に示すように、圧力微少制御域Pが狭くなる。すると、電空レギュレータ1は、出力圧力安定時に圧力調整に関する状態を検出しない時間帯域(不感帯)が増えてしまう。不感帯が増えると、給気弁107と排気弁108が不感帯内で弁開閉動作を繰り返してばたつき、出力圧力が安定しなくなる。
【0060】
以上のことより、発明者は、給気弁107と排気弁108が劣化して作動ポイントを初期段階からずらされると、排気ポート104からの排気量が規定排気量に一致しなくなり、それが圧制御の精度を悪化させる原因であることを突き止めた。
【0061】
<電空レギュレータの動作改善(効果)>
上記原因を究明したことにより、発明者は、排気弁108が排気する排気量に応じてバイアス電圧を調整し、給気弁107と排気弁108をPWM制御すれば、給気弁107と排気弁108の劣化にかかわらず、電空レギュレータ1の圧力制御の精度を維持できることに、気がついた。以下、具体例を挙げてその制御方法を図7〜図11を参照して説明する。図7は、初期段階の排気弁動作原理を示す図である。図8は、初期段階の排気弁側Duty比と流量特性の関係を示す図である。図9は、排気弁劣化後の排気弁側Duty比と流量特性の関係を示す図である。図10は、バイアス調整後における排気弁動作原理を示す図である。図11は、バイアス調整後の排気弁側Duty比と流量特性の関係を示す図である。
【0062】
例えば、図7に示すように、初期段階の排気弁108は、Duty比が作動ポイントに対応する12%に設定された場合、排気弁側制御信号Fは、差動増幅後排気側制御信号Eがバイアス電圧記憶手段11qに設定されたバイアス電圧(以下「設定バイアス電圧」という。)以上となる領域でON、差動増幅後排気側制御信号Eが設定バイアス電圧以下となる領域でOFFされる。
【0063】
図8に示すように、初期段階の排気弁108は、例えば、Duty比が12%に設定された場合、流量(排気量)を50cm3/minに制御するものとする。この場合、電空レギュレータ1の制御手段10は、規定排気量として50cm3/minが規定値記憶手段11mに記憶されている。
【0064】
図9に示すように、劣化した排気弁108は、Duty比が12%に設定された場合、流量が例えば30cm3/minになる。この場合、制御手段10は、流量センサ2が測定する排気量(30cm3/min)が規定値記憶手段11mに記憶されている規定排気量より20cm3/min少ないことを検出する。
【0065】
そこで、図10に示すように、制御手段10は、排気量が規定排気量より20cm3/min減少したことに応じて、図中太い点線に示すように、設定バイアス電圧(図中細い点線)を下げて調整する(以下、調整後のバイアス電圧を「調整後バイアス電圧」という。)。これにより、差動増幅後排気側制御信号Eが調整後バイアス電圧(図中太い点線)を超える領域が、差動増幅後排気側制御信号Eが設定バイアス電圧(図中細い点線)を超える領域より広くなり、Duty比が12%から13%に大きくされる。
【0066】
図11に示すように、Duty比が12%から13%に大きくされたことにより、排気弁108の流量が50cm3/minになる。つまり、制御手段10は、排気弁108が劣化しても、排気量の減少に応じてDuty比を大きく調整することにより、初期段階と同じように排気弁108に排気量を制御させ、圧力制御を行うことができる。よって、本実施形態の電空レギュレータ1は、排気弁108が劣化した場合でも、初期段階の圧力制御の精度を維持できる。
【0067】
尚、給気弁107が劣化した場合も、上記排気弁108が劣化した場合と同様に、流量センサ2により排気量を監視することにより、初期段階の圧力精度を維持することができる。その理由を簡単に説明すると、電空レギュレータ1は、圧力センサ信号Bと設定圧力信号Aの圧力偏差により給気弁107と排気弁108を動作させて、出力ポート103から出力する圧縮空気の調圧を行う。給気弁107の作動ポイントが遅れると、出力ポート103に圧力が供給されないため、排気弁108から排気もされない。この場合、バイアス調整回路11kは、バイアス電圧を下げる動作を行なう。バイアス電圧が下がることにより、給気弁107のDuty比も大きくなり、給気弁107より流量が供給されて、出力ポート103から出力される圧縮空気の出力圧力が上昇する。出力圧力が上昇し、圧力センサ信号Bと設定圧力信号Aの圧力偏差が大きくなると、排気弁108より圧縮空気が排気され、調圧が行われる。よって、給気弁107の作動ポイントがズレても、流量センサ2が測定する排気量で、規定のバイアス電圧を調整し、初期段階の圧力制御の精度を維持できる。
【0068】
ところで、圧縮空気が高温になると、給気弁107と排気弁108は小さいDuty比より流量が流れ始める。一方、圧縮空気が低温になると、給気弁107と排気弁108は、高いDuty比より流量が流れ始める。つまり、給気弁107と排気弁108は、圧縮空気の温度によって、Duty比と流量特性との関係が異なる。そのため、出力圧力のみに基づいて給気弁107と排気弁108をPWM制御すると、排気ポート104から排気する圧縮空気の排気量が圧縮空気の温度によって変化してしまい、電空レギュレータ1の調圧性能が劣化する。
【0069】
しかし、本実施形態の電空レギュレータ1は、流量センサ2が測定した排気量に従ってバイアス電圧を調整し、給気弁107と排気弁108をDuty制御するので、圧縮空気の温度が変わっても、流量センサ2が測定した排気量を規定排気量に一致させることが可能である。そのため、本実施形態の電空レギュレータ1は、圧縮空気の温度により調圧性能が劣化しない。
【0070】
ここで、電空レギュレータ1は、一般的に、出荷先でラインに組み付けられる。そのため、バイアス電圧を出荷先で設定したい場合がある。この場合には、バイアス変更手段5により、バイアス電圧記憶手段11qに記憶されたバイアス電圧を変更すればよい。よって、本実施形態の電空レギュレータ1は、仕様によってバイアス電圧を自由に変更することができる。
【0071】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、上記実施形態では、電空レギュレータ1は圧縮空気の圧力制御に使用した。これに対して、窒素やアルゴンなどの各種気体の圧力制御に電空レギュレータ1を用いても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 電空レギュレータ
2 流量センサ(流量測定手段の一例)
5 バイアス変更手段
10 制御手段
11k バイアス調整回路(バイアス電圧調整手段)
11m 規定値記憶手段
11q バイアス電圧記憶手段
107 給気弁(給気側電磁比例弁)
108 排気弁(排気側電磁比例弁)
109 圧力センサ(圧力測定手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が入力される入力ポートと、前記気体を出力する出力ポートと、前記入力ポートから前記出力ポートへ流れる前記気体を排気する排気ポートと、前記入力ポートに入力された気体の給気量を制御する給気用電磁比例弁と、前記排気ポートから排気される前記気体の排気量を制御する排気用電磁比例弁と、前記出力ポートから出力される前記気体の出力圧力を測定する圧力測定手段と、前記圧力測定手段が測定した前記出力圧力を所定の設定圧力に一致させるように前記給気用電磁比例弁及び前記排気用電磁比例弁の操作量を決定し、前記操作量をバイアス電圧に照合してDuty比を設定することにより、前記給気用電磁比例弁と前記排気用電磁比例弁の弁開閉動作を制御する制御手段とを有する電空レギュレータにおいて、
前記排気ポートから排気される前記気体の排気量を測定する流量測定手段を有すること、
前記制御手段は、
前記排気ポートから排気される排気量を規定する規定排気量を記憶する規定値記憶手段と、
前記流量測定手段が測定した前記排気量を前記規定値記憶手段に記憶されている前記規定排気量に一致させるように、前記バイアス電圧を調整するバイアス電圧調整手段と、を有しており、
前記バイアス電圧調整手段により調整された調整後バイアス電圧を用いて前記Duty比を設定すること
を特徴とする電空レギュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載する電空レギュレータにおいて、
前記バイアス電圧を変更するバイアス変更手段を有する
ことを特徴とする電空レギュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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