説明

電線のシールド構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シールド線を用いることなく、シールド線を用いた場合と同様のシールド効果を得るように構成した電線のシールド構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から電線のシールド構造に関しては種々なものが知られている。例えば、図7に示す実開昭62−152629号公報に開示されたもの、および図8R>8に示したようなものが知られている。図7に示すように電線のシールド構造51は、内部に金属箔52を挟持した軟質合成樹脂材等の絶縁材53からなるシールドテープ54によってワイヤーハーネス等の電線4が捲回被覆されると共に、この捲回被覆部分から引き出されたシールドテープ54の引き出し部55の穴に、鳩目金具56によって先端にアース端子57を有するアース線58を止めるラグ端子59が共加締されている。従って、シールドテープ54内の金属箔52は鳩目金具56、ラグ端子59、アース線58を介してアース端子57に電気的に接続されている。
【0003】上記構成のシールド構造においては、アース端子57が接地板5の係止穴60にボルト等によって接続されると、電線4はシールドテープ54によって外部からの電磁波ノイズから防御されると共に、発生ドレーンは確実に接地板5に短絡させることができる。
【0004】次に、図8に示した電線のシールド構造71は、表面に金属をメッキした合成樹脂材または導電性合成樹脂材からなり、かつ軸方向にスリット2が切られたコルゲートチューブ3内に挿通されたワイヤーハーネス等の電線4の発生ドレーンを接地板5に短絡させるものである。即ち、前記コルゲートチューブ3の一部が、内側に接触リブ6と外側に係止アンカー7とを具備したクランプ72によって外周より押圧されるようになっている。なお、クランプ72は表面に金属をメッキした合成樹脂材または導電性合成樹脂材からなっている。
【0005】さらに詳しくは、クランプ72は可撓性のヒンジ13によって2つに割れて開閉可能なようになっており、2つの嵌合面9a,9にはそれぞれ鉤状のロック片14と、このロック片14を係止する係止突起15が設けられている。また、接地板5には前記係止アンカー7を係止するための係止穴16が設けられている。
【0006】上述した構成のシールド構造においては、先ずコルゲートチューブ3のスリット2が開かれてワイヤーハーネス等の電線4が挿通される。そして、上記係止穴16付近のコルゲートチューブ3にクランプ72が装着される。即ち、ヒンジ13で開放されたクランプ72がコルゲートチューブ3に当接されてからヒンジ13で回動されて閉じられると、ロック片14が係止突起15に係止される。そして、係止アンカー7が係止穴16に装着されると、発生ドレーンは接地板5に電気的に接続される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の電線シールド構造においては、先ず図7に示した従来例の場合には、電線4にシールドテープ54を捲回被覆したり、引き出し部55とラグ端子59を鳩目金具56で加締たりする作業が必要である。また、アース端子57を接地板5の係止穴60にボルト締めしたりする作業も必要であり、工数が多く作業性が悪いという問題がある。さらに、部品点数が多いのでコストアップにつながるという問題がある。
【0008】次に、図8に示した従来例の場合には、コルゲートチューブ3の外壁が接触リブ6に当接されているので係止アンカー7を介して接地板5に電気的に接続されているが、内壁との接続は不十分である。即ち、外側から押さえるだけなので、ガタ付き等があり、確実な接触力が得られにくい。よって、電線4の発生ドレーンは接地板5へ殆ど短絡できないという問題がある。
【0009】本発明の目的は上記課題に鑑みてなされたものであり、部品点数が少なく、作業性が良く、かつ発生ドレーンが確実に接地板へ短絡できる電線のシールド構造を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、表面に金属層が形成された合成樹脂材または導電性合成樹脂材からなり、かつ軸方向にスリットが切られたコルゲートチューブ内に挿通された電線の発生ドレーンを接地板に短絡させるために、前記コルゲートチューブの一部外周が内側に接触リブと外側に係止部とを具備したクランプで押圧されてなる電線のシールド構造において、前記クランプの内側に支持部を介して内壁へ向けたリブを有する内側押さえ板が設けられていることを特徴とする電線のシールド構造によって達成することができる。
【0011】上記構成の電線のシールド構造によれば、コルゲートチューブの内壁は内側押さえ板とリブに当接押圧されると共に、外壁は接触リブに当接押圧されるので、コルゲートチューブの内壁はクランプの支持部、係止部を介して接地板に電気的に確実に接続される。従って、電線は外部からの電磁波ノイズから防御されると共に、発生ドレーンを接地板へ確実に短絡させることができるので信頼性の高いシールド構造を得ることができる。また、前記内側押さえ板が、嵌合面の近傍に設けられているので、クランプの嵌合面の内側と外側からコルゲートチューブを確実に挟み込むことができる。また、コルゲートチューブ以外の主要部品はクランプに一体的に設けられているので、従来より部品点数を削減することができる。よって、作業効率の向上と共に、製造コストの低減を図ることができる。
【0012】また、前記クランプが、接地の確定された金属ボックスに接続されるコネクタを前端に設けた前記電線と、該電線が挿通された前記コルゲートチューブとの一部分を覆うコネクタ嵌合クランプであって、該コネクタ嵌合クランプの前端部に前記金属ボックスに接続される係止部を備えていることによって達成することができる。
【0013】上記構成によると、コネクタの他に係止部が接地の確定された金属ボックスに接続されるので、コルゲートチューブの内壁は金属ボックスに電気的に一層確実に接続される。よって、電線の発生ドレーンは一層確実に金属ボックスに短絡されるのでシールド構造の信頼性が一層向上される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の電線のシールド構造の一実施の形態例を図1乃至図6に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の電線のシールド構造の第1実施の形態例を示す分解斜視図、図2は図1におけるクランプの開放状態の断面図、図3は図1における断面図、図4R>4は図1における斜視図、図5は本発明の電線のシールド構造の第2実施の形態例を示す分解斜視図、図6は図5R>5における組立斜視図である。
【0015】図1乃至図4に示すように電線のシールド構造1は、表面に金属をメッキした合成樹脂材または導電性合成樹脂材からなり、かつ軸方向にスリット2が切られたコルゲートチューブ3内に挿通されたワイヤーハーネス等の電線4の発生ドレーンを接地板5に短絡させるためのものである。詳しくは、コルゲートチューブ3の一部が、内側に接触リブ6と外側に係止アンカー7とが具備されたクランプ8で外周より押圧されているシールド構造である。
【0016】そして、本実施の形態の特徴は、このクランプ8の嵌合面9付近の内側に支持部11を介して内壁へ向けたリブ12を有する内側押さえ板10が設けられていることである。なお、クランプ8は表面に金属をメッキした合成樹脂材または導電性合成樹脂材からなっている。
【0017】さらに詳しくは、クランプ8は可撓性のヒンジ13によって2つに割れて開閉可能に設けられており、2つの嵌合面9,9aにはそれぞれ鉤状のロック片14と、このロック片14を係止する係止突起15が設けられている。また、接地板5には係止アンカー7を係止するための係止穴16が設けられている。
【0018】上述した構成の第1実施の形態のシールド構造においては、先ずコルゲートチューブ3のスリット2を開いてワイヤーハーネス等の電線4が挿通される。そして、係止穴16付近のコルゲートチューブ3にクランプ8が装着される。詳しくは、ヒンジ13で開放されたクランプ8の内側押さえ板10がこじ開けられたスリット2からコルゲートチューブ3の内壁部に押し込まれると、支持部11はスリット2に挟持される。そして、クランプ8がヒンジ13で回動されて閉じられると、ロック片14は係止突起15に係止される。そして、係止アンカー7が係止穴16に装着されると、リブ12および接触リブ6はそれぞれコルゲートチューブ3の内壁および外壁に当接して押圧するので、電線4およびコルゲートチューブ3の内壁は接地板5に電気的に接続される。
【0019】上述の説明から明らかなように、電線4は内側押さえ板10とコルゲートチューブ3の内壁に接触すると共に、コルゲートチューブ3の内壁は押さえ板10とリブ12とに押圧され、コルゲートチューブ3の外壁は接触リブ6に押圧されている。従って、コルゲートチューブ3は支持部11と係止アンカー7を介して接地板5に確実に導通されている。よって、電線4の発生ドレーンは確実に接地板に短絡されるので信頼性の高いシールド構造を得ることができる。また、コルゲートチューブ3以外の主要部品はクランプ8に一体的に設けられているので、従来のシールド構造より部品点数が削減され、作業効率の向上と共に、製造コストの低減を図ることができる。
【0020】次に、本発明の電線のシールド構造の第2実施の形態例を図5および図6を参照しながら説明する。本実施の形態の電線のシールド構造21は、上記クランプが、接地の確定された金属ボックス22に接続されるコネクタ23を前端に設けた電線4と、この電線4が挿通された上記コルゲートチューブ3の一部分とを覆うコネクタ嵌合クランプ24によって行われる。また、このコネクタ嵌合クランプ24の前端部には金属ボックス22に接続されるスルーロック25と前記係止アンカー26とが設けられている。
【0021】さらに詳しくは、コネクタ嵌合クランプ24の嵌合面9,9a側には、それぞれロック穴28を有する複数のロック片27および複数のロック突起29が設けられている。さらに、上記スルーロック25の直後のコネクタ嵌合クランプ24上には係止穴30が設けられており、コネクタ23上に設けられた係止突起31に係止されるようになっている。また、接続相手の金属ボックス22にはコネクタ23と接続する相手コネクタ32と、上記係止アンカー26に係合する係止穴33と、上記スルーロック25をロックするロック片34が設けられている。その他の部品は第1実施の形態例におけるシールド構造1と同様なので、同一部品には図5及び図6R>6に同一符号を付けることにより説明を省略する。
【0022】上述した構成のシールド構造においては、先ずコルゲートチューブ3のスリット2を開いて前端にコネクタ23が接続されたワイヤーハーネス等の電線4が挿通される。そして、コネクタ23およびコルゲートチューブ3前端部にコネクタ嵌合クランプ24が装着される。詳しくは、ヒンジ13で開放されたコネクタ嵌合クランプ24の内側押さえ板10がこじ開けられたスリット2からコルゲートチューブ3の内壁部に押し込まれると、支持部11がスリット2に挟持される。
【0023】さらに、コネクタ嵌合クランプ24がヒンジ13で回動されて閉じられると、複数のロック穴28は複数のロック突起29に係止され、コネクタ23は係止突起31によりコネクタ嵌合クランプ24の係止穴30に係止される。そして、コネクタ23が金属ボックス22の相手コネクタ32に押圧接続されると係止アンカー26が係止穴33に挿着されると共に、スルーロック25もロック片34に係止される。このとき、リブ12および接触リブ6はそれぞれコルゲートチューブ3の内壁および外壁に当接して押圧されるので、電線4およびコルゲートチューブ3の内壁は接地が確定された金属ボックス22に電気的に接続される。
【0024】上述の説明によると、コネクタ23の他にスルーロック25と係止アンカー26が、接地の確定された金属ボックス22に接続されるので、コルゲートチューブ3の内壁は金属ボックス22に電気的に一層確実に接続される。よって、電線4の発生ドレーンは一層確実に金属ボックス22に短絡されるので信頼性の一層高いシールド構造を得ることができる。
【0025】なお、本発明は上述した実施の形態例に限定されるものでなく、適宜な変更を行うことにより他の態様でも実施することができる。例えば、クランプ8は本第1実施の形態例においてはヒンジ13によって2つに割れるようになっていたが、2つ以上の数に割れる構成であっても差し支えない。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明の電線のシールド構造によれば、クランプの嵌合面付近の内側に支持部を介して内壁へ向けたリブを有する内側押さえ板が嵌合面の近傍に設けられている。従って、コルゲートチューブの内壁は内側押さえ板とリブに当接して押圧されると共に、外壁は接触リブに当接して押圧されるので、コルゲートチューブの内壁はクランプの支持部と係止部を介して接地板に電気的に確実に接続される。よって、電線は外部からの電磁波ノイズから防御されると共に、発生ドレーンを接地板へ確実に短絡させることができるので信頼性の高いシールド構造を得ることができる。また、コルゲートチューブ以外の主要部品はクランプに一体的に設けられているので、シールド構造の部品点数を削減することができ、作業効率の向上と共に、製造コストの低減を図ることができる。
【0027】さらに、電線の前端にコネクタが設けられた電線のシールド構造においては、コネクタの他に、係止部が接地の確定された金属ボックスに接続されるので、コルゲートチューブの内壁は金属ボックスに電気的に一層確実に接続される。よって、電線の発生ドレーンは一層確実に金属ボックスに短絡されるので一層信頼性の高いシールド構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電線のシールド構造の第1実施の形態例を示す分解斜視図である。
【図2】図1におけるクランプの開放状態の断面図である。
【図3】図1における組立て状態の断面図である。
【図4】図1における組立て状態の斜視図である。
【図5】本発明の電線のシールド構造の第2実施の形態例を示す分解斜視図である。
【図6】図5における組立て状態の斜視図である。
【図7】従来の電線のシールド構造の一例を示す斜視図である。
【図8】従来の電線のシールド構造の他の一例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1,21 電線のシールド構造
2 スリット
3 コルゲートチューブ
4 電線
5 接地板
6 接触リブ
7,26 係止アンカー(係止部)
8 クランプ
9 嵌合面
10 内側押さえ板
11 支持部
12 リブ
22 金属ボックス
23 コネクタ
24 コネクタ嵌合クランプ
25 スルーロック(係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に金属層が形成された合成樹脂材または導電性合成樹脂材からなり、かつ軸方向にスリットが切られたコルゲートチューブ内に挿通された電線の発生ドレーンを接地板に短絡させるために、前記コルゲートチューブの一部外周が内側に接触リブと外側に係止部とを具備したクランプで押圧されてなる電線のシールド構造において、前記クランプの内側に支持部を介して内壁へ向けたリブを有する内側押さえ板が設けられていることを特徴とする電線のシールド構造。
【請求項2】 前記内側押さえ板が、嵌合面の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電線のシールド構造。
【請求項3】 前記クランプが、接地の確定された金属ボックスに接続されるコネクタを前端に設けた前記電線と、該電線が挿通された前記コルゲートチューブとの一部分を覆うコネクタ嵌合クランプであって、該コネクタ嵌合クランプの前端部に前記金属ボックスに接続される係止部を備えていることを特徴とする請求項1および2記載の電線のシールド構造。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate


【図7】
image rotate


【特許番号】特許第3032954号(P3032954)
【登録日】平成12年2月18日(2000.2.18)
【発行日】平成12年4月17日(2000.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−286217
【出願日】平成7年11月2日(1995.11.2)
【公開番号】特開平9−130940
【公開日】平成9年5月16日(1997.5.16)
【審査請求日】平成10年10月28日(1998.10.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【参考文献】
【文献】実開 昭62−152629(JP,U)