説明

電線の着色方法及び電線の着色装置

【課題】電線の移動速度が変化しても、該電線に一定のマーキングを施すことができる電線の着色方法及び電線の着色装置を提供する。
【解決手段】電線の着色装置は電線の外表面に向かって液状の着色材を一定量ずつ滴射して該電線を着色する。着色材の粘度は0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の芯線と、この芯線を被覆する絶縁性の被覆部とを備えた電線を着色する電線の着色方法及び電線の着色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車などには、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車などは、前記電子機器に電源などからの電力やコンピュータなどからの制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、該電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを備えている。
【0003】
電線は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。電線は、所謂被覆電線である。コネクタは、端子金具と、この端子金具を収容するコネクタハウジングとを備えている。端子金具は、導電性の板金などからなり電線の端部に取り付けられてこの電線の芯線と電気的に接続する。コネクタハウジングは、絶縁性の合成樹脂からなり箱状に形成されている。ワイヤハーネスは、コネクタハウジングが前述した電子機器などと結合することにより、端子金具を介して各電線が前述した電子機器と電気的に接続して、前述した電子機器に所望の電力や信号を伝える。
【0004】
前記ワイヤハーネスを組み立てる際には、まず電線を所定の長さに切断した後、該電線の端部などの被覆部を除去(皮むき)して端子金具を取り付ける。必要に応じて電線同士を接続する。その後、端子金具をコネクタハウジング内に挿入する。こうして、前述したワイヤハーネスを組み立てる。
【0005】
前述したワイヤハーネスの電線は、芯線の大きさと、被覆部の材質(耐熱性の有無などによる材質の変更)と、使用目的などを識別する必要がある。なお、使用目的とは、例えば、エアバック、ABS(Antilock Brake System)や車速情報などの制御信号や、動力伝達系統などの電線が用いられる自動車の系統(システム)である。
【0006】
そこで、ワイヤハーネスに用いられる電線は、前述した被覆部を構成する合成樹脂を芯線の周りに押し出し被覆する際に、被覆部を構成する合成樹脂に所望の色の着色剤を混入して、該被覆部を所望の色に着色してきた(例えば、特許文献1ないし3参照)。この場合、電線の外表面の色を変更する際に、前述した押し出し被覆を行う押し出し被覆装置を停止する必要がある。この場合、電線の色替えの度に、押し出し被覆装置を停止する必要があり、電線の製造にかかる所要時間と手間が増加して、電線の生産効率が低下する傾向であった。
【0007】
または、押し出し被覆装置が押し出し被覆を行っている状態で合成樹脂に混入する着色剤の色を変更してきた。この場合、着色剤の色を変更した直後では、被覆部を構成する合成樹脂の色が、被覆部の変更前の着色剤の色と変更後の着色剤の色とが混ざり合った色になる。このため、電線の材料歩留まりが低下する傾向であった。
【0008】
前述した電線の生産性の低下と電線の材料歩留まりの低下を防止するために、本発明の出願人は、例えば、単色の電線を製造しておき、必要に応じて電線の外表面を所望の色に着色してワイヤハーネスを組み立てることを提案している(特許文献4参照)。また、本発明の出願人は、製造後の単色の電線を着色する際に、液状の着色材を電線の外表面に向かって一定量ずつ滴射して、該着色材の液滴を電線の外表面に付着させることで電線を所望の色に着色する電線の着色装置を提案している(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平5−111947号公報
【特許文献2】特開平6−119833号公報
【特許文献3】特開平9−92056号公報
【特許文献4】国際公開第03/019580号パンフレット
【特許文献5】特願2003−193904号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した電線の外表面に向かって一定量ずつ滴射される着色材は、色材(工業用有機物質)が水またはその他の溶媒に溶解、分散した液状物質である。有機物質としては、染料、顔料(大部分は有機物であり、合成品)があり、時には染料が顔料として、顔料が染料として用いられることがある。
【0010】
また、前述した着色装置は、例えば、電線を所定の長さに切断して該電線の端末に端子金具を取り付ける切断装置などの各種の電線加工装置に取り付けられるのが望ましい。各種の電線加工装置は、電線の長手方向に間欠的に移動しながら各種の加工を該電線に施す。このため、前述した着色装置は、電線の移動速度が急激に変化しても(移動速度が速くなっても遅くなっても)、常に一定の印を形成できることが望まれている。則ち、着色材を滴射する間隔が短くなっても、着色材を滴射する間隔が長くなっても、常に一定のマーキングを施すことが望まれている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、電線の移動速度が変化しても、該電線に一定のマーキングを施すことができる電線の着色方法及び電線の着色装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の電線の着色方法は、電線の外表面に向かって液状の着色材を一定量ずつ滴射して、前記着色材の液滴を前記電線の外表面に付着させて該電線を着色する電線の着色方法において、前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下であることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の本発明の電線の着色方法は、請求項1記載の電線の着色方法において、前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ3.25mPa・s以下であることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の本発明の電線の着色方法は、請求項1記載の電線の着色方法において、前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ1.75mPa・s以下であることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の本発明の電線の着色装置は、電線の外表面に向かって液状の着色材を一定量ずつ滴射して、前記着色材の液滴を前記電線の外表面に付着させて該電線を着色する電線の着色装置において、前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下であることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の本発明の電線の着色装置は、請求項4記載の電線の着色装置において、前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ3.25mPa・s以下であることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の本発明の電線の着色装置は、請求項4記載の電線の着色装置において、前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ1.75mPa・s以下であることを特徴としている。
【0018】
請求項1に記載された本発明によれば、着色材の粘度が0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下であるので、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)着色材一滴の質量のばらつきを抑制できる。
【0019】
なお、本明細書でいう着色材とは、色材(工業用有機物質)が水またはその他の溶媒に溶解、分散した液状物質である。有機物質としては、染料、顔料(大部分は有機物であり、合成品)があり、時には染料が顔料として、顔料が染料として用いられることがある。より具体的な例として、本明細書でいう着色材とは、着色液と塗料との双方を示している。着色液とは、溶媒中に染料が溶けているもの又は分散しているものを示しており、塗料とは、分散液中に顔料が分散しているものを示している。このため、着色液で被覆部の外表面を着色すると、染料が被覆部内にしみ込み、塗料で被覆部の外表面を着色すると、顔料が被覆部内にしみ込むことなく外表面に接着する。即ち、本明細書でいう電線の外表面を着色するとは、電線の外表面の一部を染料で染めることと、電線の外表面の一部に顔料を塗ることとを示している。
【0020】
また、前記溶媒と分散液は、被覆部を構成する合成樹脂と親和性のあるものが望ましい。この場合、染料が被覆部内に確実にしみ込んだり、顔料が被覆部の外表面に確実に接着することとなる。
【0021】
さらに、本明細書に記した滴射とは、着色ノズルから液状の着色材が、液滴の状態即ち滴の状態で、電線の外表面に向かって付勢されて打ち出されることを示している。
【0022】
請求項2に記載された本発明によれば、着色材の粘度が0.3mPa・s以上でかつ3.25mPa・s以下であるので、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)着色材一滴の質量のばらつきをより抑制できる。
【0023】
請求項3に記載された本発明によれば、着色材の粘度が0.3mPa・s以上でかつ1.75mPa・s以下であるので、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)着色材一滴の質量のばらつきをより一層抑制できる。
【0024】
請求項4に記載された本発明によれば、着色材の粘度が0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下であるので、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)着色材一滴の質量のばらつきを抑制できる。
【0025】
請求項5に記載された本発明によれば、着色材の粘度が0.3mPa・s以上でかつ3.25mPa・s以下であるので、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)着色材一滴の質量のばらつきをより抑制できる。
【0026】
請求項6に記載された本発明によれば、着色材の粘度が0.3mPa・s以上でかつ1.75mPa・s以下であるので、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)着色材一滴の質量のばらつきをより一層抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように請求項1に記載の本発明は、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきを抑制できるので、着色した箇所を所望の面積(大きさ)に保つことができる。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線の移動速度が変化しても、常に一定のマーキングを電線に施すことができる。
【0028】
請求項2に記載の本発明は、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきをより抑制できるので、着色した箇所を所望の面積(大きさ)に保つことが確実にできる。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線の移動速度が変化しても、常に一定のマーキングを電線に確実に施すことができる。
【0029】
請求項3に記載の本発明は、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきをより一層抑制できるので、着色した箇所を所望の面積(大きさ)に保つことがより確実にできる。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線の移動速度が変化しても、常に一定のマーキングを電線により確実に施すことができる。
【0030】
請求項4に記載の本発明は、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきを抑制できるので、着色した箇所を所望の面積(大きさ)に保つことができる。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線の移動速度が変化しても、常に一定のマーキングを電線に施すことができる。
【0031】
請求項5に記載の本発明は、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきをより抑制できるので、着色した箇所を所望の面積(大きさ)に保つことが確実にできる。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線の移動速度が変化しても、常に一定のマーキングを電線に確実に施すことができる。
【0032】
請求項6に記載の本発明は、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきをより一層抑制できるので、着色した箇所を所望の面積(大きさ)に保つことがより確実にできる。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線の移動速度が変化しても、常に一定のマーキングを電線により確実に施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態にかかる電線の着色装置(以下、単に着色装置と呼ぶ)1を図1ないし図6に基づいて説明する。着色装置1は、電線3を所定の長さに切断する切断装置18に取り付けられて、この電線3の外表面3aの一部に印6を形成する装置である。即ち、着色装置1は、電線3の外表面3aを着色する即ちマーキング(Marking)する。
【0034】
電線3は、移動体としての自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成する。電線3は、図4(a)に示すように、導電性の芯線4と、絶縁性の被覆部5とを備えている。芯線4は、複数の素線が撚られて形成されている。芯線4を構成する素線は、導電性の金属からなる。また、芯線4は、一本の素線から構成されても良い。被覆部5は、例えば、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)などの合成樹脂からなる。被覆部5は、芯線4を被覆している。このため、電線3の外表面3aとは、被覆部5の外表面をなしている。
【0035】
また、被覆部5は、単色Pである。なお、被覆部5を構成する合成樹脂に所望の着色剤を混入して、電線3の外表面3aを単色Pにしても良く、被覆部5を構成する合成樹脂に着色剤を混入することなく、単色Pを合成樹脂自体の色として良い。被覆部5を構成する合成樹脂に着色剤を混入せずに、単色Pが合成樹脂自体の色の場合、被覆部5即ち電線3の外表面3aは、無着色であるという。このように、無着色とは、被覆部5を構成する合成樹脂に着色剤を混入せずに、電線3の外表面3aが合成樹脂自体の色であることを示している。電線3の外表面3aは、前述した無着色であっても良く、例えば白色などの単色であっても良い。
【0036】
電線3の外表面3aには、複数の点7からなる印6が形成されている。点7は、色B(図4中に平行斜線で示す)である。色Bは、単色Pと異なる。点7の平面形状は、図4(b)に示すように、丸形である。点7は、複数設けられており、予め定められるパターンにしたがって、電線3の長手方向に沿って並べられている。図示例では、電線3の長手方向に沿って、点7が等間隔に並べられている。また、互いに隣り合う点7の中心間の距離は、予め定められている。
【0037】
前述した構成の電線3は、複数束ねられるとともに端部などにコネクタなどが取り付けられて前述したワイヤハーネスを構成する。コネクタが自動車などの各種の電子機器のコネクタにコネクタ結合して、ワイヤハーネス即ち電線3は、各電子機器に各種の信号や電力を伝える。
【0038】
また、前述した印6の各点7の色Bが種々の色に変更されることにより、電線3同士を識別可能としている。図示例では、全ての点7の色Bを同じにしているが、必要に応じて点7毎に色Bを変更して、点7同士の色Bを異ならせても良い。印6の各点7の色Bは、ワイヤハーネスの電線3の線種、系統(システム)の識別などを行うために用いられる。即ち、前述した印6の各点7の色Bは、ワイヤハーネスの各電線3の線種及び使用目的を識別するために用いられる。
【0039】
着色装置1には、図1に示すように、電線加工装置としての切断装置18が取り付けられている。則ち、着色装置1は、切断装置18に取り付けられている。
【0040】
切断装置18は、後述のエンコーダ17の一対の回転子47より電線3の移動方向Kの下流側に配されている。切断装置18は、一対の切断刃48,49を備えている。一対の切断刃48,49は、鉛直方向に沿って並べられている。一対の切断刃48,49は、鉛直方向に沿って互いに接離自在に後述のフレーム10などに支持されている。なお、接離とは、互いに近づいたり離れることである。一対の切断刃48,49は、互いに近づくと、一対の送り出しロール12によって送り出された電線3を互いの間に挟んで、切断する。一対の切断刃48,49は、互いに離れると、勿論、前記電線3から離れる。
【0041】
着色装置1は、図1に示すように、装置本体としてのフレーム10と、ガイドロール11と、移動手段としての送り出しロール12と、電線矯正手段としての矯正ユニット13と、弛み吸収手段としての弛み吸収ユニット14と、着色ユニット15と、ダクト16と、測定手段としてのエンコーダ17と、制御手段としての制御装置19とを備えている。
【0042】
フレーム10は、工場などのフロア上などに設置される。フレーム10は、水平方向に伸びている。ガイドロール11は、フレーム10の一端部に回転自在に取り付けられている。ガイドロール11は、長尺でかつ印6が形成されていない電線3を巻いている。ガイドロール11は、矯正ユニット13と弛み吸収ユニット14と着色ユニット15とダクト16とエンコーダ17と切断装置18とに順に、電線3を送り出す。
【0043】
送り出しロール12は、フレーム10の他端部に一対設けられている。これら一対の送り出しロール12は、フレーム10に回転自在に支持されかつ鉛直方向に沿って並べられている。送り出しロール12は、図示しないモータなどにより、互いに逆方向に同回転数で回転される。一対の送り出しロール12は、互いの間に電線3を挟み、かつこの電線3の長手方向に沿ってガイドロール11から引っ張る。
【0044】
送り出しロール12は、電線3の長手方向に沿って該電線3を引っ張って移動させる引っ張り手段をなしている。このように、送り出しロール12は、電線3の長手方向に沿って該電線3を移動させることで、電線3の長手方向に沿って着色ユニット15の後述する着色ノズル31と、電線3とを相対的に移動させる。このため、電線3は、ガイドロール11から送り出しロール12に向かって図1中の矢印Kに沿って移動する。矢印Kは、電線3の移動方向をなしている。
【0045】
矯正ユニット13は、ガイドロール11の送り出しロール12側に設けられており、ガイドロール11と送り出しロール12との間に設けられている。即ち、矯正ユニット13は、ガイドロール11より電線3の移動方向Kの下流側に設けられ、送り出しロール12より電線3の移動方向Kの上流側に設けられている。矯正ユニット13は、板状のユニット本体20と、複数の第1ローラ21と、複数の第2ローラ22とを備えている。ユニット本体20は、フレーム10に固定されている。
【0046】
第1及び第2ローラ21,22は、それぞれ、ユニット本体20に回転自在に支持されている。複数の第1ローラ21は、水平方向(前述した移動方向K)に沿って並べられ、電線3の上方に配されている。複数の第2ローラ22は、水平方向(前述した移動方向K)に沿って並べられ、電線3の下方に配されている。第1ローラ21と第2ローラ22とは、図1に示すように、千鳥状に配されている。
【0047】
矯正ユニット13は、送り出しロール12によりガイドロール11から送り出される電線3を、第1ローラ21と第2ローラ22との間に挟む。そして、矯正ユニット13は、電線3を直線状にする。また、矯正ユニット13は、第1ローラ21と第2ローラ22との間に挟むことにより、電線3に摩擦力を付与する。即ち、矯正ユニット13は、送り出しロール12が電線3を引っ張る方向(前述した移動方向K)の逆向きの第1の付勢力H1を電線3に付与する。この第1の付勢力H1は、送り出しロール12が電線3を引っ張る力よりも弱い。このため、矯正ユニット13は、長手方向に沿った張力を電線3に付与する。
【0048】
弛み吸収ユニット14は、矯正ユニット13の送り出しロール12側に設けられており、矯正ユニット13と送り出しロール12との間に設けられている。即ち、弛み吸収ユニット14は、矯正ユニット13より電線3の移動方向Kの下流側に設けられ、送り出しロール12より電線3の移動方向Kの上流側に設けられている。弛み吸収ユニット14は、矯正ユニット13と着色ユニット15の後述する着色ノズル31との間に設けられている。
【0049】
弛み吸収ユニット14は、図1に示すように、一対の案内ローラ支持フレーム23と、一対の案内ローラ24と、移動ローラ支持フレーム25と、移動ローラ26と、付勢手段としてのエアシリンダ27とを備えている。案内ローラ支持フレーム23は、フレーム10に固定されている。案内ローラ支持フレーム23は、フレーム10から上方に立設している。一対の案内ローラ支持フレーム23は、電線3の移動方向Kに沿って、互いに間隔をあけて並べられている。
【0050】
一対の案内ローラ24は、案内ローラ支持フレーム23に回転自在に支持されている。案内ローラ24は、電線3の下方に配され、外周面に電線3と接触することにより、移動方向Kから電線3が脱落しないように、電線3を案内する。このため、案内ローラ24は、電線3の移動方向Kを案内する。
【0051】
移動ローラ支持フレーム25は、フレーム10に固定されている。移動ローラ支持フレーム25は、フレーム10から上方に立設している。移動ローラ支持フレーム25は、一対の案内ローラ支持フレーム23間に設けられている。
【0052】
移動ローラ26は、移動ローラ支持フレーム25に回転自在に支持されているとともに、鉛直方向に沿って移動自在に支持されている。移動ローラ26は、電線3の上方に配されている。移動ローラ26は、鉛直方向に沿って移動自在に支持されることで、電線3の移動方向Kに直交(交差)する方向に沿って、移動自在に支持されている。また、移動ローラ26は、案内ローラ24間の中央に設けられている。
【0053】
エアシリンダ27は、シリンダ本体28と、このシリンダ本体28から伸縮自在な伸縮ロッド29とを備えている。シリンダ本体28は、移動ローラ支持フレーム25に固定されており、電線3の上方に配されている。伸縮ロッド29は、シリンダ本体28から下方に向かって伸長する。即ち、伸縮ロッド29は、シリンダ本体28から電線3に近づく方向に伸長する。
【0054】
伸縮ロッド29には、移動ローラ26が取り付けられている。エアシリンダ27は、シリンダ本体28内に加圧された気体が供給されることで、伸縮ロッド29即ち移動ローラ26を第2の付勢力H2(図1に示す)で移動方向Kに直交(交差)する方向に沿って、下方に付勢する。このため、エアシリンダ27は、移動ローラ26を、第2の付勢力H2で電線3に近づく方向に付勢する。第2の付勢力H2は、第1の付勢力H1より弱い。
【0055】
切断装置18の一対の切断刃48,49が互いに近づいて、電線3を切断するために一旦電線3が停止した際に、慣性により矢印Kに沿って電線3が進むと、該電線3が一対の案内ローラ24間で弛む。このとき、前述した構成の弛み吸収ユニット14は、エアシリンダ27が移動ローラ26を第2の付勢力H2で付勢しているため、エアシリンダ27の伸縮ロッド29が伸長して、移動ローラ26が例えば図1中に二点鎖線で示す位置まで変位する。そして、弛み吸収ユニット14は、前述した案内ローラ24間で弛んだ電線3を移動方向Kに直交(交差)する方向に沿って付勢して、弛みを吸収して、電線3を張った状態に保つ。
【0056】
着色ユニット15は、弛み吸収ユニット14の送り出しロール12側に設けられており、弛み吸収ユニット14と送り出しロール12との間に設けられている。即ち、着色ユニット15は、弛み吸収ユニット14より電線3の移動方向Kの下流側に設けられ、送り出しロール12より電線3の移動方向Kの上流側に設けられている。このため、着色ユニット15即ち後述の着色ノズル31は、送り出しロール12と、矯正ユニット13との間に配されている。
【0057】
着色ユニット15は、図2に示すように、ユニット本体30と、複数の着色ノズル31と、複数の着色材供給源32(図中には一つのみ図示し、他を省略している)と、加圧気体供給源33とを備えている。ユニット本体30は、フレーム10に固定される。ユニット本体30は、複数の着色ノズル31を支持する。
【0058】
着色ノズル31は、図3に示すように、ノズル部材50を備えている。ノズル部材50は、円筒状に形成されている。ノズル部材50は、ポリエーテルエーテルケトン(Polyetheretherketone:PEEK)又はポリエーテルイミド(Polyetherimide:PEI)からなる。着色ノズル31は、着色材供給源32からの着色材が供給される。
【0059】
着色ノズル31は、ノズル部材50から着色材を滴射する。着色ノズル31は、制御装置19からの命令に基づいて、一定量ずつ着色材を電線3の外表面3aに向かって滴射する。
【0060】
前述した構成の着色ノズル31は、後述の着色材供給源32からの液状の着色材を、電線3の外表面3aに向かって一定量ずつ滴射する。着色ノズル31は、滴射した着色材の液滴を電線3の外表面3aに付着させて、該電線3の外表面3aの少なくとも一部を着色する(マーキング)する。
【0061】
また、着色ノズル31は、ユニット本体30に取り付けられると、電線3の移動方向Kに沿って複数並べられるとともに、電線3を中心とした周方向に沿って複数並べられている。図示例では、ユニット本体30は、着色ノズル31を電線3の移動方向Kに沿って五つ並べている。ユニット本体30は、電線3を中心とした周方向に沿って着色ノズル31を三つ並べている。
【0062】
また、各着色ノズル31は、図3に示すように、ノズル部材50の軸芯R(図3中に一点鎖線で示す)の延長上に電線3の最上部3bが位置する状態で、ユニット本体30に支持される。なお、着色ノズル31は、軸芯Rに沿って着色材を滴射する。このため、着色ノズル31は、電線3の最上部3bに向かって着色材を一定量ずつ滴射する。また、前述した構成の着色ノズル31は、着色手段をなしている。
【0063】
着色材供給源32は、着色材を収容するとともに、着色ノズル31内に着色材を供給する。着色材供給源32は、各着色ノズル31に一つ対応している。着色材供給源32が、着色ノズル31に供給する着色材の色Bは、互いに異なっていても良く、互いに同じであっても良い。
【0064】
加圧気体供給源33は、加圧された気体を着色材供給源32内に供給する。加圧気体供給源33は、加圧された気体を着色材供給源32内に供給することで、着色材が速やかにノズル部材50から滴射するようにする。
【0065】
前述した構成の着色ユニット15は、制御装置19からの命令に基づいて、任意の着色ノズル31から着色材を一定量ずつ電線3に向かって滴射する。
【0066】
また、本明細書では、粘度が0.3mPa・s(ミリパスカル秒)以上でかつ4.5mPa・s(ミリパスカル秒)以下の着色材を用いる。則ち、着色材供給源32が収容しかつ着色ノズル31が滴射する着色材の粘度は、0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下である。
【0067】
前述した着色材とは、色材(工業用有機物質)が水またはその他の溶媒に溶解、分散した液状物質である。有機物質としては、染料、顔料(大部分は有機物であり、合成品)があり、時には染料が顔料として、顔料が染料として用いられることがある。より具体的な例として、着色材とは、着色液または塗料である。
【0068】
着色液とは、溶媒中に染料が溶けているもの又は分散しているものを示しており、塗料とは、分散液中に顔料が分散しているものを示している。このため、着色液が電線3の外表面3aに付着すると、染料が被覆部5内にしみ込み、塗料が電線3の外表面3aに付着すると、顔料が被覆部5内にしみ込むことなく外表面3aに接着する。即ち、着色ユニット15は、電線3の外表面3aの一部を染料で染める又は電線3の外表面3aに顔料を塗る。このため、電線3の外表面3aを着色するとは、電線3の外表面3aの一部を染料で染める(染色する)ことと、電線3の外表面3aの一部に顔料を塗ることとを示している。
【0069】
また、前記溶媒と分散液は、被覆部5を構成する合成樹脂と親和性のあるものが望ましい。この場合、染料が被覆部5内に確実にしみ込んだり、顔料が外表面3aに確実に接着することとなる。
【0070】
さらに、前述した滴射とは、着色ノズル31から液状の着色材が、液滴の状態即ち滴の状態で、電線3の外表面3aに向かって付勢されて打ち出されることを示している。
【0071】
ダクト16は、着色ユニット15の送り出しロール12側に設けられており、着色ユニット15と送り出しロール12との間に設けられている。即ち、ダクト16は、着色ユニット15より電線3の移動方向Kの下流側に設けられ、送り出しロール12より電線3の移動方向Kの上流側に設けられている。ダクト16は、筒状に形成されており、内側に電線3を通す。ダクト16には、真空ポンプなどの図示しない吸引手段が連結している。吸引手段は、ダクト16内の気体を吸引して、着色材中の溶媒と分散液などが着色装置1外に充満することを防止する。
【0072】
エンコーダ17は、送り出しロール12より電線3の移動方向Kの下流側に設けられている。エンコーダ17は、図1に示すように、回転子47を一対備えている。回転子47は、軸芯周りに回転可能に支持されている。回転子47の外周面は、一対の送り出しロール12間に挟まれた電線3の外表面3aと接触している。回転子47は、矢印Kに沿って、芯線4即ち電線3が走行(移動)すると、回転する。即ち、回転子47は、矢印Kに沿った芯線4即ち電線3の走行(移動)とともに、軸芯周りに回転する。勿論、矢印Kに沿った芯線4即ち電線3の走行(移動)量と、回転子47の回転数とは比例する。
【0073】
エンコーダ17は、制御装置19に接続している。エンコーダ17は、回転子47が所定角度ずつ回転すると、制御装置19に向かってパルス状の信号を出力する。即ち、エンコーダ17は、矢印Kに沿った電線3の移動量に応じた情報を、制御装置19に向かって出力する。このように、エンコーダ17は、電線3の移動量に応じた情報を測定して、電線3の移動量に応じた情報を制御装置19に向かって出力する。通常エンコーダ17では電線3と回転子47の摩擦で電線3の移動量に応じたパルス信号が出力される。しかし、電線3の外表面3aの状態により移動量とパルス数が必ずしも一致しない場合は、別の場所で速度情報を入手し、その情報をフィードバックし、比較演算しても良い。
【0074】
制御装置19は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えたコンピュータである。制御装置19は、送り出しロール12と、エンコーダ17と、切断装置18と、着色ノズル31などと接続しており、これらの動作を制御することにより、着色装置1と切断装置18の制御をつかさどる。
【0075】
制御装置19は、予め印6のパターンを記憶している。制御装置19は、エンコーダ17から所定のパルス状の信号即ち電線3の移動量に応じた情報が入力すると、予め定められた着色ノズル31から電線3に向かって着色材を一定量ずつ滴射させる。制御装置19は、予め記憶した印6のパターンにしたがって、電線3の移動速度が速くなると着色ノズル31から着色材を滴射する時間間隔を短くし、電線3の移動速度が遅くなると着色ノズル31から着色材を滴射する時間間隔を長くする。こうして、制御装置19は、予め記憶したパターンにしたがって、電線3を着色する。制御装置19は、エンコーダ17が測定した電線3の移動量に基づいて、着色ノズル31に着色材を一定量ずつ滴射させる。
【0076】
また、制御装置19は、エンコーダ17からの情報により、電線3が所定量移動したと判定すると、送り出しロール12を停止した後、一対の切断刃48,49を互いに近づけて電線3を切断する。
【0077】
前述した構成の着色装置1で、電線3の外表面3aに印6を形成する即ち電線3の外表面3aを着色する際には、まず、ガイドロール11をフレーム10に取り付ける。一対の切断刃48,49を互いに離しておき、ガイドロール11に巻かれた電線3を矯正ユニット13と弛み吸収ユニット14と着色ユニット15とダクト16とに順に通して、一対の送り出しロール12間に挟む。そして、着色ユニット15のユニット本体30の所定箇所に着色ノズル31を取り付け、各着色ノズル31に所望の粘度の着色材を収容した着色材供給源32を連結する。さらに、加圧気体供給源33を着色材供給源32に連結し、吸引手段でダクト16内の気体を吸引する。
【0078】
そして、送り出しロール12を回転駆動して、電線3をガイドロール11から引っ張って、該電線3の長手方向に沿って移動させるとともに、矯正ユニット13により電線3に第1の付勢力H1の摩擦力を付与して、該電線3を張っておく。そして、エアシリンダ27で移動ローラ26即ち電線3を第2の付勢力H2で付勢しておく。
【0079】
そして、エンコーダ17から所定の順番のパルス状の信号が制御装置19に入力すると、制御装置19は、予め定められた着色ノズル31から着色材を一定量ずつ電線3の外表面3aに向かって滴射する。
【0080】
そして、電線3の外表面3aに付着した着色材から前述した溶媒または分散液が蒸発して、電線3の外表面3aを染料で染める又は外表面3aに顔料を塗る。電線3の外表面3aに付着した着色材から蒸発した溶媒または分散液は、ダクト16内から吸引手段に吸引される。こうして、電線3の外表面3aが着色される。
【0081】
エンコーダ17などからの情報により、制御装置19が所定の長さの電線3を送り出したと判定すると、この制御装置19は、送り出しロール12を停止する。すると、特に、弛み吸収ユニット14の一対の案内ローラ24間で電線3が弛んで、第2の付勢力H2で付勢された移動ローラ26が図1中に二点鎖線で示す位置に変位する。すると、弛み吸収ユニット14のエアシリンダ27の伸縮ロッド29が伸長する。そして、弛み吸収ユニット14は、電線3の弛みを吸収する。
【0082】
そして、一対の切断刃48,49が互いに近づいて、これら切断刃48,49間に電線3を挟んで切断する。こうして、図4などに示された外表面3aに印6が形成された電線3が得られる。
【0083】
本実施形態によれば、着色材の粘度が0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下であるので、着色ノズル31から着色材を滴射する間隔(時間的な間隔)が変化しても(短くなっても長くなっても)着色材一滴の質量のばらつきを抑制できる。着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきを抑制できるので、着色した箇所(前述した点7)を所望の面積(大きさ)に保つことができる。したがって、着色材を滴射する時間間隔則ち電線3の移動速度が変化しても、常に一定のマーキングを電線3に施すことができる。
【0084】
電線3の長手方向に沿って、電線3と着色ノズル31とを相対的に移動させている間に、着色ノズル31が一定量ずつ着色材を電線3に向かって滴射する。このように、電線3と着色ノズル31との相対的な移動中に、電線3を着色する。このため、電線3を着色するために、電線3を停止する必要がないので、作業効率を低下させることがない。また、電線3と着色ノズル31との相対的な移動中に電線3に向かって一定量ずつ着色材を滴射するため、電線3の任意の位置を着色でき、勿論連続的に電線3を着色できる。
【0085】
エンコーダ17が電線3の移動量を測定して、制御装置19が着色ノズル31を電線3の移動量に応じて制御する。このため、電線3の移動速度が速くなると着色材を滴射する間隔を短くし、電線3の移動速度が遅くなると着色材を滴射する間隔を長くすることができる。このように、電線3の移動速度が変化しても、電線3の外表面3aに付着した着色材の間隔を一定に保つことができる。
【0086】
したがって、電線3の移動速度が変化しても、予め定められるパターンにしたがって電線3の外表面3aに着色材を付着させることができる。即ち、電線3の移動速度が変化しても、予め定められるパターンにしたがって、電線3を着色できる。
【0087】
次に、本発明の発明者らは、互いに粘度の異なる着色材を、前述した着色ノズル31から滴射した時の着色材一滴の質量のばらつきを測定した。結果を図5に示す。結果を図5に示す測定では、ノズル部材50の内径が100μm(マイクロメータ)の着色ノズル31から粘度が0.3mPa・s未満から5.0Pa・s以上の着色材を用いた。各粘度の着色材を500Hz(ヘルツ)から3000Hz(ヘルツ)の周波数で滴射した。則ち、1秒間内に500回滴射する時間間隔から1秒間内に3000回滴射する時間間隔まで、各粘度の着色材を滴射する時間間隔を変化させた。
【0088】
図5中の横軸は、着色材の粘度を示している。図5の縦軸は、各粘度の着色材を前述した周波数の範囲で滴射した時の着色材の質量のばらつきを示している。図5の縦軸は、各粘度の着色材において、500Hzで滴射したときの着色材一滴の質量を100%として、各周波数で滴射した時の着色材一滴の質量と、500Hzで滴射したときの着色材一滴の質量との割合を求め、前述した周波数の中で最も500Hzで滴射したときの着色材一滴の質量からの変化が大きなものを示している。例えば、図5の縦軸が20%ということは、ある周波数で滴射したときの着色材一滴の質量が、500Hzで滴射したときの着色材一滴の質量の80%又は120%であることを示している。
【0089】
図5によれば、着色材の粘度が0.3mPa・s未満であると、着色材一滴の質量のばらつきが非常に大きくなることが明らかとなった。これは、着色材の粘度が低すぎるため、滴射する時間間隔則ち周波数を変化させると、着色材一滴の質量の変化が非常に大きくなるためと考えられる。則ち、時間間隔を短くすると則ち周波数を高くするのにしたがって、着色材一滴の質量が増えやすくなるためと考えられる。
【0090】
また、図5によれば、着色材の粘度が0.3mPa・s以上でかつ1.75mPa・s以下の範囲では、着色材一滴の質量のばらつきが20%以下となり、非常に小さくなることが明らかとなった。則ち、滴射する時間間隔則ち周波数を変化しても、着色材一滴の質量の変化を抑制でき、常に一定の大きさの印6(前述した点7)を形成できることが明らかとなった。
【0091】
さらに、図5によれば、着色材の粘度が1.75mPa・sから大きくするのにしたがって、着色材一滴の質量のばらつきが徐々に大きくなることが明らとなった。着色材の粘度が4.5mPa・s以下の範囲では、着色材一滴の質量のばらつきが75%以下となり、小さくなることが明らかとなった。則ち、滴射する時間間隔則ち周波数を変化しても、着色材一滴の質量の変化を抑制でき、常に一定の大きさの印6(前述した点7)を形成できることが明らかとなった。
【0092】
なお、着色材が電線3の外表面3aに付着するため、着色材の質量と印6の点7の大きさとは比例すると、考えられる。則ち、質量の変化が75%以下の範囲では、点7の直径などの寸法を500Hzの時の寸法の半分から約1.3倍の範囲に収めることが可能となることが明らかとなった。こうして、着色材の粘度が4.5mPa・s以下の範囲では、滴射する時間間隔則ち周波数を変化しても、着色材一滴の質量の変化を抑制でき、常に一定の大きさの印6(前述した点7)を形成できることが明らかとなった。
【0093】
さらに、図5によれば、着色材の粘度が4.5mPa・sを越えると、着色材一滴の質量のばらつきが75%を越えて、非常に大きくなることが明らかとなった。これは、着色材の粘度が高すぎるため、滴射する時間間隔則ち周波数を変化させると、着色材一滴の質量の変化が非常に大きくなるためと考えられる。則ち、時間間隔を短くすると則ち周波数を高くするのにしたがって、着色材一滴の質量が減りやすくなるためと考えられる。
【0094】
このように、図5によれば、粘度を0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下の着色材で電線3の外表面3aを着色することで、滴射する時間間隔則ち電線3の移動速度が変化しても、着色材一滴の質量の変化を抑制でき、常に一定の大きさの印6(前述した点7)を形成でき、常に一定のマーキングを電線3に施すことができることが明らかとなった。
【0095】
図5によれば、粘度が0.3mPa・s以上でかつ3.25mPa・s以下の着色材を用いることで、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)、ばらつきを50%以下にすることができ、着色材一滴の質量のばらつきをより抑制できることが明らかとなった。このため、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきをより抑制できるので、着色した箇所(前述した点7)を所望の面積(大きさ)に保つことが確実にできることが明らかとなった。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線3の移動速度が変化しても、常に一定の大きさの印6(前述した点7)を形成でき、常に一定のマーキングを確実に電線3に施すことができることが明らかとなった。
【0096】
図5によれば、粘度が0.3mPa・s以上でかつ1.75mPa・s以下の着色材を用いることで、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)、ばらつきを20%以下にすることができ、着色材一滴の質量のばらつきをより一層抑制できることが明らかとなった。このため、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきをより抑制できるので、着色した箇所(前述した点7)を所望の面積(大きさ)に保つことがより確実にできることが明らかとなった。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線3の移動速度が変化しても、常に一定の大きさの印6(前述した点7)を形成でき、常に一定のマーキングをより確実に電線3に施すことができることが明らかとなった。
【0097】
また、本発明の発明者らは、粘度が0.3mPa・sの着色材(図6中に実線で示す本発明品A)と、粘度が1.5mPa・sの着色材(図6中に一点鎖線で示す本発明品B)と、粘度が4.5mPa・sの着色材(図6中に二点鎖線で示す本発明品C)を、それぞれ、前述した着色ノズル31から滴射した時の着色材一滴の質量のばらつきを測定した。結果を図6に示す。結果を図6に示す測定では、ノズル部材50の内径が100μm(マイクロメータ)の着色ノズル31を用いた。前述した本発明品AからCの着色材を、500Hz(ヘルツ)から3000Hz(ヘルツ)の周波数で滴射した。則ち、1秒間内に500回滴射する時間間隔から1秒間内に3000回滴射する時間間隔まで、各粘度の着色材を滴射する時間間隔を変化させた。
【0098】
図6中の横軸は、周波数則ち着色材を滴射する時間間隔を示している。図6の縦軸は、本発明品AからCの着色材を前述した周波数の範囲で滴射した時の着色材の質量のばらつきを示している。図6の縦軸は、本発明品AからCの着色材において、500Hzで滴射したときの着色材一滴の質量を100%として、各周波数で滴射した時の着色材一滴の質量の割合を示している。例えば、図6の縦軸が20%ということは、ある周波数で滴射したときの着色材一滴の質量が、500Hzで滴射したときの着色材一滴の質量の80%又は120%であることを示している。
【0099】
図6によれば、本発明品AからCのうちいずれにおいても、着色材を滴射する時間間隔が前述した500Hzから3000Hzの範囲内で、着色材一滴の質量のばらつきが−75%以上で+20%以下の範囲に収まることが明らかとなった。則ち、本発明品AからCのうちいずれにおいても、滴射する時間間隔則ち電線3の移動速度が変化しても、着色材一滴の質量の変化を抑制でき、常に一定の大きさの印6(前述した点7)を形成でき、常に一定のマーキングを電線3に施すことができることが明らかとなった。
【0100】
前述した実施形態では、着色材の粘度を0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下にしている。しかしながら、本発明では、着色材の粘度を0.3mPa・s以上でかつ3.25mPa・s以下にしても良い。この場合、図5からも明らかなように、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)着色材一滴の質量のばらつきをより抑制できる。このため、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきをより抑制できるので、着色した箇所(前述した点7)を所望の面積(大きさ)に保つことが確実にできる。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線3の移動速度が変化しても、常に一定のマーキングを電線3に確実に施すことができる。
【0101】
また、本発明では、着色材の粘度を0.3mPa・s以上でかつ1.75mPa・s以下にしても良い。この場合、図5からも明らかなように、着色材を滴射する間隔が変化しても(短くなっても長くなっても)着色材一滴の質量のばらつきをより一層抑制できる。このため、着色材を滴射する間隔が変化しても着色材一滴の質量のばらつきをより一層抑制できるので、着色した箇所(前述した点7)を所望の面積(大きさ)に保つことがより確実にできる。したがって、着色材を滴射する間隔則ち電線3の移動速度が変化しても、常に一定のマーキングを電線3により確実に施すことができる。
【0102】
さらに、本発明では、着色液及び塗料として、アクリル系塗料、インク(染料系、顔料系)、UVインクなどの種々のものを用いても良い。
【0103】
さらに、前述した実施形態では、自動車に配索されるワイヤハーネスを構成する電線3に関して記載している。しかしながら、本発明では、電線3を自動車に限らず、ポータブルコンピュータなどの各種の電子機器や各種の電気機械に用いても良いことは勿論である。
【0104】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電線の着色装置の構成を示す側面図である。
【図2】図1中のII−II線に沿う電線の着色装置の着色ユニットの断面図である。
【図3】図2に示された着色ユニットの各着色ノズルと電線との位置関係を示す説明図である。
【図4】(a)は図1に示された電線の着色装置で着色された電線の斜視図である。(b)は図4(a)に示された電線の平面図である。
【図5】図1に示された着色装置で互いに粘度の異なる着色材を滴射した時の着色材一滴の質量のばらつきを示す説明図である。
【図6】図1に示された着色装置で本発明品AからCの着色材を滴射した時の着色材一滴の質量のばらつきを示す説明図である。
【符号の説明】
【0106】
1 電線の着色装置
3 電線
3a 外表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の外表面に向かって液状の着色材を一定量ずつ滴射して、前記着色材の液滴を前記電線の外表面に付着させて該電線を着色する電線の着色方法において、
前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下であることを特徴とする電線の着色方法。
【請求項2】
前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ3.25mPa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の電線の着色方法。
【請求項3】
前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ1.75mPa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の電線の着色方法。
【請求項4】
電線の外表面に向かって液状の着色材を一定量ずつ滴射して、前記着色材の液滴を前記電線の外表面に付着させて該電線を着色する電線の着色装置において、
前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ4.5mPa・s以下であることを特徴とする電線の着色装置。
【請求項5】
前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ3.25mPa・s以下であることを特徴とする請求項4記載の電線の着色装置。
【請求項6】
前記着色材の粘度が、0.3mPa・s以上でかつ1.75mPa・s以下であることを特徴とする請求項4記載の電線の着色装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−12609(P2006−12609A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188260(P2004−188260)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)