説明

電線の防水性検査方法、電線の防水性検査装置及び電線の製造方法

【課題】非破壊で電線内に防水剤が均一に浸透していることが確認できる、電線の防水性検査方法及び電線の防水性検査装置、並びに、優れた防水性を有する電線の製造方法を提供する。
【解決手段】電線の一方の端部における電線の素線露出部に防水剤を供給し、電線の他方の端部から電線内エアの吸引を行って電線の内部への防水処理を行い、吸引の処理を停止し、その後の電線内エアの圧力変化を測定する電線の防水性検査方法。電線の一方の端部における電線の素線露出部に防水剤を供給し、電線の他方の端部から電線内エアの吸引を行って電線の内部への防水処理を行い、吸引の処理を停止し、その後の電線内エアの圧力変化を測定し、圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認する防水性を有する電線の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の芯線間に防水剤を充填して防水処理を行う電線の防水性検査方法及び電線の防水性検査装置、並びに、防水剤を充填する防水性に優れた電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の芯線間に防水剤を充填して、芯線間を伝わる水を防ぐ方法が、特願平4−262937号及び特開2004−355851号公報に開示されている。これらの特許文献には、電線の一方の端部から防水剤を供給し、他方の端部から負圧を用いて吸引して、芯線間に防水剤を充填し、止水構造を得ることが開示されている。
【0003】
更に、このように防水剤を充填したときに、防水剤の浸透によるシール性を確認する方法が、特開2004−158444号公報に開示されている。この公報には、防水剤を充填する際に負圧を付加したときの真空度を確認する方法の他、従来技術として水没試験と呼ばれる方法で、止水部分を水中に沈め、防水部の逆端(他方の端部)より圧力を加え気泡の発生を目視確認する方法が開示されている。
【0004】
また、この公報では、上述したように、防水処理を施したい部分に防水剤を滴下または塗布を行い、他方の端末から負圧を用いて防水剤を吸引し、所定の真空度に達した後、若しくは所定の時間吸引した後、吸引を停止し、直ちに製品を取り出す方法が行われている。
【0005】
また、防水剤を電線に充填するときの密閉方法としては、特開2004−355851ではゴム栓を用いて、ゴム栓に挿入された電線の表面とゴム栓とを圧接した状態にすることで、電線を接続した状態での密閉性を確保している。また、特開2006−202708では、2つのO型のゴムパッキンに電線を挟み込むことで、電線を接続した状態での密閉性を確保している。
【特許文献1】特願平4−262937号
【特許文献2】特開2004−355851号公報
【特許文献3】特開2004−158444号公報
【特許文献4】特開2006−202708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2004−158444号公報に開示された方法によると、真空引き時の真空度を検出しているが、真空引き時の真空度は容易に変化するので、信頼性が低いという問題点がある。
【0007】
例えば、一方の端部から防水剤を供給しない状態で、他方の端部からAVSS0.5電線の芯線間に−70kPaの負圧をかけた場合に、他方の端部で圧力を測定すると、吸引する容積や真空ポンプの能力にもよるが、防水剤を供給しなくても数秒後には−70kPaに達している。
【0008】
これは、電線の芯線間が非常に狭く、撚り線であるために吸引抵抗が高く、容易に−70kPa程度の負圧が発生するためである。このように防水剤を供給しない状態でも所望の真空度が容易に発生するため、所望の真空度に達したことだけで浸透性の確認をすることはできない。このように防水剤の浸透を真空時の真空度に基づいて行う方法は、防水剤の浸透性の判定に関して信頼性が低下する。防水処理の信頼性の低い電線を用いると、電線内に水が浸入し、芯線が錆びつく等の問題が生じる。
【0009】
また、水没試験に至っては、防水剤が浸透しているか否かは確実に確認できるものの、電線内に既に浸透した防水剤を浸透部から排除する力が働く破壊試験であり、製品の検査に採用することはできない。
【0010】
また、特開2004−355851号公報に開示された方法によると、密閉性を確保するには、電線を挿入するゴム栓の穴径は電線外径よりも小さくしなければならない。更に、電線の他方の端末に端子を接続するまえに当該防水処理をしなければならない。その為、電線の外径毎にゴム栓の穴径を変更する必要が生じるとともに、毎回ゴム栓の小さな穴に電線を挿入する作業が必要となり、作業効率が低下してしまうという問題点がある。
【0011】
また、特開2006−202708号公報に開示された方法によると、丸い電線形状にはパッキンが追従しにくいので、密閉性を確保するためには、通常は柔らかいゴムパッキンを使用して、かつ、ゴムパッキンに強い圧縮力を加える作業が必要となる。そのため、作業効率が低下してしまうという問題点がある。
【0012】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、防水剤の浸透促進として、電線を挟んだ状態で、容器内を吸引若しくは加圧して、非破壊で電線内に防水剤が均一に浸透していることが確認できる、電線の防水性検査方法及び電線の防水性検査装置、並びに、優れた防水性を有する電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかる電線の防水性検査方法は、電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給し、前記電線の他方の端部から電線内エアの吸引を行って前記電線の内部への防水処理を行い、該吸引の処理を停止し、その後の前記電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様にかかる電線の防水性検査方法は、電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給し、前記電線の一方の端部から電線内エアの加圧を行って前記電線の内部への防水処理を行い、該加圧の処理を停止し、その後の前記電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の態様にかかる電線の防水性検査方法は、本発明の第1または2の態様にかかる電線の防水性検査方法において、前記防水剤の供給を継続しながら、前記圧力変化を測定することを特徴とする。
【0016】
本発明の第1の態様にかかる防水性を有する電線の製造方法は、電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給し、前記電線の他方の端部から電線内エアの吸引を行って前記電線の内部への防水処理を行い、該吸引の処理を停止し、その後の前記電線内エアの圧力変化を測定し、前記圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認することを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の態様にかかる防水性を有する電線の製造方法は、電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給し、前記電線の一方の端部から電線内エアの加圧を行って前記電線の内部への防水処理を行い、該加圧の処理を停止し、その後の前記電線内エアの圧力変化を測定し、前記圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認することを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の態様にかかる防水性を有する電線の製造方法は、本発明の第1または2の態様にかかる防水性を有する電線の製造方法において、前記防水剤の供給を継続しながら、前記圧力変化を測定することを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の態様にかかる防水性を有する電線の製造方法は、本発明の第1から3のいずれか1つの態様にかかる防水性を有する電線の製造方法において、前記圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていないとき、前記防水処理を前記電線内エアの吸引により実施の場合は前記電線内エアの吸引を、前記防水処理を前記電線内エアの加圧により実施の場合は前記電線内エアの加圧を再度実施することを特徴とする。
【0020】
本発明の第1の態様にかかる電線の防水性検査装置は、電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給する防止剤供給装置と、前記電線の他方の端部から電線内エアの吸引を行う吸引装置と、前記電線内エアの圧力変化を測定する圧力計と、を備え、前記防止剤供給装置より供給された前記防水材を、前記吸引装置により前記電線の内部へ吸引し、吸引停止後に前記圧力計により前記電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の態様にかかる電線の防水性検査装置は、電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給する防止剤供給装置と、前記電線の一方の端部から電線内エアの加圧を行う加圧装置と、前記電線内エアの圧力変化を測定する圧力計と、を備え、前記防止剤供給装置より供給された前記防水材を、前記加圧装置により前記電線の内部へ浸透させ、加圧停止後に前記圧力計により前記電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の態様にかかる電線の防水性検査装置は、本発明の第1または2の態様にかかる電線の防水性検査装置において、前記防止剤供給装置より前記防水剤の供給を継続しながら、前記圧力計により前記圧力変化を測定することを特徴とする。
【0023】
本発明の第4の態様にかかる電線の防水性検査装置は、本発明の第1または3の態様にかかる電線の防水性検査装置において、前記吸引装置は、前記電線の他方の端部を収納する電線収納部と、前記電線収納部のエアを吸引する真空圧発生装置と、を有し、前記電線収納部は、前記電線の他方の端部を収納する凹部を有する密閉容器本体部と、前記密閉容器本体部の前記凹部の開口を閉鎖する密閉容器蓋部と、前記密閉容器本体部の前記凹部の開口を取り囲むように設けられた第1のシール部材と、前記第1のシール部材の開口に嵌合する凸部を有する、前記密閉容器蓋部に設けられた第2のシール部材と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明の第5の態様にかかる電線の防水性検査装置は、本発明の第2または3の態様にかかる電線の防水性検査装置において、前記加圧装置は、前記電線の他方の端部を収納する電線収納部と、前記電線収納部のエアを加圧する正圧発生装置と、を有し、前記電線収納部は、前記電線の他方の端部を収納する凹部を有する密閉容器本体部と、前記密閉容器本体部の前記凹部の開口を閉鎖する密閉容器蓋部と、前記密閉容器本体部の前記凹部の開口を取り囲むように設けられた第1のシール部材と、前記第1のシール部材の開口に嵌合する凸部を有する、前記密閉容器蓋部に設けられた第2のシール部材と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明の第6の態様にかかる電線の防水性検査装置は、本発明の第4または5の態様にかかる電線の防水性検査装置において、前記第1のシール部材及び前記第2のシール部材の硬度はHs10〜Hs50であることを特徴とする。
【0026】
本発明の第7の態様にかかる電線の防水性検査装置は、本発明の第4から6のいずれか1つの態様にかかる電線の防水性検査装置において、前記第1のシール部材は、前記第2のシール部材よりも硬度が高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の電線の防水性検査方法によると、非破壊で電線内に防水剤が均一に浸透していることが確認できる。防水剤の浸透が不十分な場合には、防水剤の供給、電線内エアの吸引、吸引の停止、圧力変化の測定を再度行い、電線内に防水剤が均一に浸透していることが確認できるまで検査を行うことができる。従って、電線の防水処理の検査の信頼性が極めて高い。
【0028】
本発明の防水性を有する電線の製造方法によると、防水剤の供給、吸引、吸引の停止、圧力変化の測定によって、所定時間内の圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認し、許容範囲内に収まっている場合は、防水処理が優れていると判断できる。許容範囲内に収まらない場合は、防水剤の浸透が不均一、不十分と判断して、防水剤の供給、吸引、吸引の停止、圧力変化の測定を繰り返し、許容範囲内に収まるまで、防水処理を続け、防水性に優れた電線を製造することができる。従って、防水性に優れた電線を確実に製造することができる。
【0029】
本発明の電線の防水性検査装置によると、電線の他方の端末に端子を接続したあとでも当該防水処理できる。また、電線やその先端に取付けた端子に比べ大きな密閉容器にセットすることにより密閉できる。即ち、従来技術のように毎回ゴム栓の小さな穴に電線を挿入する必要がない。また、電線の外径に関係なく同じシール部材(以下、パッキンと呼ぶ)や密閉容器を使用することができる。即ち、従来技術のように電線の外径毎にゴム栓の穴径を変更する必要が無い。その為、電線の防水処理の検査のための作業効率が向上する。
【0030】
また、本発明の電線の防水性検査装置によると、一方のパッキンをO型のものとし、他方のパッキンをこのO型のパッキンの内径に合った外径の凸部を持つパッキンとし、この二つのパッキンを嵌め合わせて使用することにより、パッキンの変形を抑制することができ、より確実に密閉することが可能である。また、二つのパッキンを嵌め合わせて使用することで、密閉容器蓋部と密閉容器本体部の密着面を二面持つことができ、より密閉性を確保できる。
【0031】
また、本発明の電線の防水性検査装置によると、電線の先端に取付けた端子とパッキンとが接触する機会がないため、パッキンに傷がつくことがなく、耐久性の優れた装置を提供することができる。
【0032】
また、本発明の電線の防水性検査装置によると、非破壊で電線内に防水剤が均一に浸透していることが確認できる。防水剤の浸透が不十分な場合には、防水剤の供給、電線内エアの吸引、吸引の停止、圧力変化の測定を再度行い、電線内に防水剤が均一に浸透していることが確認できるまで検査を行うことができる。従って、電線の防水処理の検査の信頼性が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。尚、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと同等なもので置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0034】
まず、本発明の一実施形態である、電線の防水性検査方法及び防水性を有する電線の製造方法の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0035】
本発明の第1実施形態である電線の防水性検査方法は、電線の一方の端部における電線の素線露出部に防水剤を供給し、電線の他方の端部から電線内エアの吸引を行って電線の内部への防水処理を行い、吸引の処理を停止し、その後の電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする電線の防水性検査方法である。尚、電線内エアとは、電線内に存在する気体であって、水や水蒸気を含むものである。
【0036】
図1は、本発明の第1実施形態である電線の防水性検査方法を説明する摸式図である。即ち、電線の防水性検査のために、次のような検査システムを形成する。例えば、撚り線からなる芯線と芯線を被覆する絶縁被覆との間に電線21の一方の端部(例えば、芯線に接続された端子22近傍の素線露出部21a)から、防水剤供給機24によって防水剤23を供給する。電線21の他方の端部から吸引装置25によって、上述した一方の端部から供給された防水剤23を吸引する。
【0037】
吸引装置25にはバルブ27を介して真空ポンプ26が接続されている。吸引装置25には更に真空計28及びタイマー29が接続されている。真空計28によって電線内の真空度が計測される。真空度の計測に連動して、タイマー29によって時間が計測される。吸引装置25と真空ポンプ26との間に設けられたバルブ27を閉じることによって吸引装置25を停止し、バルブを開くことによって吸引装置25による電線21内エアの吸引を行う。
【0038】
例えば上述した検査システムによって、電線の防水検査を非破壊で行う。即ち、電線の端子22が接続された端部から防水剤23を供給し、電線21の他方端部において、吸引を行い、電線21内の芯線間に防水剤23を浸透させ、電線21の内部の圧力が所定の値に到達したときに、吸引を停止する。次いで、吸引を停止したときの状態を維持しつつ、所定時間、電線21の内部の圧力変化を測定し、所定時間経過後の圧力変化に基づいて、防水剤23の浸透状態を検査する。
【0039】
以下、具体例を説明する。まず、電線21の他方の端部からの吸引によって、芯線間の隙間に防水剤が浸透して、電線21内部の圧力が減少し(真空度が高まり)、所定の圧力例えば−70kPaに達したときにバルブを閉じて吸引を停止する。
【0040】
次いで、吸引を停止したときの状態を維持しつつ、所定時間、例えば約20秒間圧力の変化(真空度の変化)を測定する。そのとき、電線21内に防水剤23が全く浸透していない場合は、電線21内部の圧力が一気に上昇して(真空度が低下して)数秒後には大気圧(0kPa)へと移行する。電線21内に防水剤23が均等に浸透していない場合にも、同様に、真空度が低下して、やがて大気圧に戻る傾向が顕著に現れる。これに対して、電線21内に防水剤23が十分に浸透している場合には、電線21内部の圧力の変化がほとんど現われない。
【0041】
すなわち、圧力変化の測定開始後の所定時間経過後の圧力変化が所定の許容範囲内であるとき、電線21内に防水剤23が十分に浸透したものと判断する。上述した所定の許容範囲は、例えば、1分以内の時間で圧力変化が10kPa以内である。
【0042】
以上の具体例に示したように、本実施形態では、電線21内の芯線間に防水剤23が浸透して、電線21の内部の圧力が所定の値に到達したときに直ちに防水剤23が浸透したものとして処理するのではなく、電線21の内部の圧力が所定の値に到達したときに吸引を停止し、その状態で所定時間、電線21の内部の圧力変化を測定することによって、電線21内部に防水剤23が浸透したことを確認する。
【0043】
尚、上述したように電線21の内部の圧力が所定の値に到達したときに吸引を停止する際に、電線21の一方の端部(例えば、芯線に接続された端子)では、引き続き防水剤23の供給を継続してもよい。このように、吸引を停止した後も防水剤23を供給することによって、電線21の内部の圧力変化を測定している間にも防水剤23が電線21内部に浸透を続けることができる。即ち、電線21内部への防水剤23の浸透性を向上させることができる。
【0044】
また、上述した所定時間経過後の圧力変化が急激で大きい場合、及び、圧力変化が所定の許容範囲を超えている場合は、それぞれ浸透が行われていない、浸透が不十分であると判断し、上述した方法によって、再度防水剤23の供給、吸引、吸引の停止、圧力変化の測定を行い、所定時間経過後の圧力変化が所定の許容範囲内になるように、電線21の防水性検査を継続する。
【0045】
以上の電線21の検査方法によると、非破壊で電線21内に防水剤23が均一に浸透していることが確認できる。防水剤23の浸透が不十分な場合には、防水剤23の供給、電線21内エアの吸引、吸引の停止、圧力変化の測定を再度行い、電線21内に防水剤23が均一に浸透していることが確認できるまで検査を行うことができる。従って、電線21の防水処理の検査の信頼性が極めて高い。
【0046】
次に、当検査システムを用いた防水性を有する電線の製造方法について説明する。電線の製造方法は、次のステップで行う。
【0047】
即ち、電線21の一方の端部における電線21の素線露出部に防水剤23を供給し、電線21の他方の端部から電線21内エアの吸引を行って電線21の内部への防水処理を行い、吸引の処理を停止し、その後の電線内エアの圧力変化を測定し、圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認する。
【0048】
以上の防水性を有する電線21の製造方法によると、防水剤23の供給、吸引、吸引の停止、圧力変化の測定によって、所定時間内の圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認し、許容範囲内に収まっている場合は、防水剤23の浸透が十分で、防水処理が達成されたと判断できる。許容範囲内に収まらない場合は、防水剤23の浸透が不均一、不十分と判断して、防水剤23の供給、吸引、吸引の停止、圧力変化の測定を繰り返し、許容範囲内に収まるまで、防水処理を続け、防水性に優れた電線を製造することができる。従って、防水性に優れた電線21を確実に製造することができる。
【0049】
尚、防水剤23の供給は、電線21の一方の端部(例えば、芯線に接続された端子)から行われることに限定されない。例えば、電線21の中間部において被覆を除去し芯線の露出した部分から防水剤23を供給してもよい。
【0050】
次に、上述した当検査システムの吸引装置25において、密閉容器を利用した方法、即ち、防水剤の浸透促進として、電線を挟んだ状態で、容器内を吸引する際の密閉方法について説明する。
【0051】
図4は、本発明の第1実施形態である電線の防水性検査方法において説明した図1の検査システムの変形例である。図4に示すように、検査システム40は、防水剤供給機47、密閉容器57、真空ポンプ49、真空計51、及び、制御装置48から構成されている。
【0052】
密閉容器57は、端部に端子45を接続した電線44を収納するための凹部を有した密閉容器本体部53と、密閉容器本体部53の凹部の開口を取り囲むように設けられたO型パッキン56と、密閉容器本体部53の凹部の開口を閉鎖することができる密閉容器蓋部54と、O型パッキン56の開口に嵌合する凸部を有する密閉容器蓋部54に設けられた凸型パッキン55とにより構成されている。
【0053】
ここで、圧力変化による変形が起き易いO型パッキン56の硬度を若干高くし変形を抑え、凸型で電線形状へ追従がどちらかといえばし辛い凸型パッキン55は柔らかいものを使用する。また、凸型パッキン55は密閉容器蓋部54と、O型パッキン56は密閉容器本体部53の縁の部分と、それぞれ硬化後も柔軟性を持つ接着剤にて接着されている。また、密閉容器57は加工が容易で、圧力変化による変形等が起こらない材質、例えばアルミ等で作製することが好ましい。
【0054】
また、密閉容器蓋部54は、図示していない横押し型トグルクランプ等にて密閉容器本体部53に固定されている。従って、密閉容器57は、密閉容器蓋部54を矢印58の方向に摺動することで開閉され、端部に端子45を接続した状態の電線44を密閉容器57内に出し入れすることができ、O型パッキン56と凸型パッキン55とを嵌め合わせて使用することにより、密閉状態を可能にする。ここで、密閉容器蓋部54を閉じることにより、O型パッキン56と凸型パッキン55とは約40%圧縮して使用される。
【0055】
密閉容器57にはエア配管52を介して真空計51及びバルブ50が更に接続されており、真空計51によって密閉容器57内の真空度が計測される。
【0056】
まず、端部に端子45を接続した状態の電線44を密閉容器57内に入れて、密閉容器蓋部54を閉め、密閉容器57を密閉状態にした後、真空ポンプ49により密閉容器57内のエアを吸引する。真空計51によって密閉容器57内の真空度に達した後に、真空ポンプ49及び防水剤供給機47に接続されている制御装置48により、防水剤供給機47による防水剤46の供給及び真空ポンプ49による電線44内エアの吸引を制御し、電線44の防水処理及び防水検査を実行する。
【0057】
電線44の防水処理は、芯線42と芯線42を被覆する絶縁被覆との間に電線44の一方の端部(ここでは、芯線42とアース端子41とを圧着した芯線42が露出した圧着部43)から、防水剤供給機47によって防水剤46が供給され、電線44の他方の端部から、エア配管52を介して真空ポンプ49に接続されている密閉容器57によって、上述した電線44の一方の端部から供給された防水剤46を吸引することにより実行される。
【0058】
電線44の防水処理が終了した後バルブ50を開けることにより、密閉容器57内を大気圧に戻し、電線44の防水検査を終了する。
【0059】
上述したように密閉容器57を利用した検査システム40を利用することにより、端部に端子45を接続した状態の電線44を密閉容器57内に入れて、O型パッキン56と凸型パッキン55とを嵌め合わせて使用することができるため、電線44の外径の大きさに関係なく全ての電線44に使用することが可能である。また、電線44の端部に端子45を接続したあとに当該防水処理できる。その為、電線44の防水処理の検査のための作業効率を向上させることができる。
【0060】
また、O型パッキン56と凸型パッキン55とを嵌め合わせて使用することにより、パッキンの変形を抑制することができ、より確実に密閉容器57を密閉することが可能である。また、O型パッキン56と凸型パッキン55とを嵌め合わせて使用することで、密閉容器蓋部54と密閉容器本体部53の密着面を二面持つことができ、より密閉性を確保できる。
【0061】
また、電線44の端部に接続した端子45と、O型パッキン56や凸型パッキン55とが接触しないため、O型パッキン56や凸型パッキン55に傷がつくことがなく、耐久性の優れた検査システム40を提供することができる。
【0062】
上述した第1実施形態では、電線21の一方の端部から防水剤を供給し、電線21の他方の端部において電線内エアを吸引している(即ち、電線の内部に負圧を負荷している)。他の形態においては、電線21の一方の端部から防水剤23を供給し、且つ、電線内エアの加圧を行う。
【0063】
即ち、本発明の第2実施形態である電線の防水性検査方法は、電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給し、前記電線の一方の端部から電線内エアの加圧を行って前記電線の内部への防水処理を行い、該加圧の処理を停止し、その後の前記電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする電線の防水性検査方法である。
【0064】
図2は、本発明の第2実施形態である電線の防水性検査方法を説明する摸式図である。即ち、電線21の防水性検査のために、次のような検査システムを形成する。例えば、撚り線からなる芯線と芯線を被覆する絶縁被覆との間に電線21の一方の端部(例えば、芯線に接続された端子22近傍の素線露出部21a)から、防水剤供給機24によって防水剤23を供給する。電線21の一方の端部及び防水剤供給機24は加圧装置20内に配置され、防水剤23が浸透する方向、即ち、電線21の他端側の方向に加圧される。
【0065】
加圧装置20には図示しないバルブを介して加圧ポンプが接続されている。加圧装置20には更に圧力計30及びタイマー29が接続されている。圧力計30によって電線内の圧力が計測される。圧力の計測に連動して、タイマー29によって時間が計測される。加圧装置20と加圧ポンプとの間に設けられたバルブを閉じることによって加圧装置20を停止し、バルブを開くことによって加圧装置20によって電線23内部のエアの加圧を行う。
【0066】
例えば上述した検査システムによって、電線の防水検査を非破壊で行う。即ち、加圧装置20の内部で、電線21の一方の端部における電線21の素線露出部に防水剤23を供給しつつ、電線21の一方の端部から電線内エアの加圧を行い、電線21の素線間に防水剤23が浸透して、電線21の内部の圧力が所定の値に到達したときに、加圧を停止する。次いで、加圧を停止したときの状態を維持しつつ、所定時間、電線21の内部の圧力変化を測定し、所定時間経過後の圧力変化に基づいて、防水剤23の浸透状態を検査する。
【0067】
以下、具体例を説明する。まず電線21の防水剤23を供給する一方の端部からの加圧によって、芯線間の隙間に防水剤23が浸透して、電線21内部の圧力が増加し、所定の圧力例えば70kPaに達したときにバルブを閉じて加圧を停止する。
【0068】
次いで、加圧を停止したときの状態を維持しつつ、所定時間、例えば約20秒間圧力の変化を測定する。そのとき、電線21内に防水剤23が全く浸透していない場合は、電線21内部の圧力が一気に低下して(真空度が低下して)数秒後には大気圧(0kPa)へと移行する。電線21内に防水剤23が均等に浸透していない場合にも、同様に、圧力が低下して、やがて大気圧に戻る傾向が顕著に現れる。これに対して、電線21内に防水剤23が十分に浸透している場合には、電線21内部の圧力の変化がほとんど現われない。
【0069】
すなわち、圧力変化の測定開始後の所定時間経過後の圧力変化が所定の許容範囲内であるとき、電線21内に防水剤23が十分に浸透したものと判断する。上述した所定の許容範囲は、例えば、1分以内の時間で圧力変化が10kPa以内である。
【0070】
尚、上述したように電線21の内部の圧力が所定の値に到達したときに加圧を停止する際に、電線21の一方の端部(例えば、芯線に接続された端子)では、引き続き防水剤23の供給を継続してもよい。このように、加圧を停止した後も防水剤23を供給することによって、電線21の内部の圧力変化を測定している間にも防水剤23が電線21内部に浸透を続けることができる。即ち、電線21内部への防水剤23の浸透性を向上させることができる。
【0071】
本実施形態においても、上述した所定時間経過後の圧力変化が急激で大きい場合、及び、圧力変化が所定の許容範囲を超えている場合は、それぞれ浸透が行われていない、浸透が不十分であると判断し、上述した方法によって、再度防水剤23の供給、加圧、加圧の停止、圧力変化の測定を行い、所定時間経過後の圧力変化が所定の許容範囲内になるように、電線21の防水性検査を継続する。
【0072】
以上の電線21の検査方法によると、非破壊で電線21内に防水剤が均一に浸透していることが確認できる。防水剤23の浸透が不十分な場合には、防水剤23の供給、電線内エアの加圧、加圧の停止、圧力変化の測定を再度行い、電線21内に防水剤23が均一に浸透していることが確認できるまで検査を行うことができる。従って、電線21の防水処理の検査の信頼性が極めて高い。
【0073】
次に当検査システムを用いた防水性を有する電線の製造方法について説明する。電線の製造方法は、次のステップで行う。
【0074】
即ち、電線21の一方の端部における電線21の素線露出部に防水剤23を供給し、電線21の一方の端部から電線内エアの加圧を行って電線21の内部への防水処理を行い、加圧の処理を停止し、その後の電線内エアの圧力変化を測定し、圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認する。
【0075】
以上の防水性を有する電線21の製造方法によると、防水剤23の供給、加圧、加圧の停止、圧力変化の測定によって、所定時間内の圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認し、許容範囲内に収まっている場合は、防水剤23の浸透が十分であり、防水処理が達成されたと判断できる。許容範囲内に収まらない場合は、防水剤23の浸透が不均一、不十分と判断して、防水剤の供給、加圧、加圧の停止、圧力変化の測定を繰り返し、許容範囲内に収まるまで、防水処理を続け、防水性に優れた電線を製造することができる。従って、防水性に優れた電線を確実に製造することができる。
【0076】
次に、上述した当検査システムの加圧装置20において、密閉容器を利用した方法、即ち、防水剤の浸透促進として、電線を挟んだ状態で、容器内を加圧する際の密閉方法について説明する。
【0077】
図5は、本発明の第2実施形態である電線の防水性検査方法において説明した図2の検査システムの変形例である。図5に示すように、検査システム60は、防水剤供給機67、密閉容器77、加圧ポンプ69、圧力計71、及び、制御装置68から構成されている。
【0078】
密閉容器77は、芯線62とアース端子61とを圧着した芯線62が露出した圧着部63を端部に有した電線64を収納するための凹部を有した密閉容器本体部73と、密閉容器本体部73の凹部の開口を取り囲むように設けられたO型パッキン76と、密閉容器本体部73の凹部の開口を閉鎖することができる密閉容器蓋部74と、O型パッキン76の開口に嵌合する凸部を有する密閉容器蓋部74に設けられた凸型パッキン75により構成されている。
【0079】
ここで、圧力変化による変形が起き易いO型パッキン76の硬度を負圧での使用時よりも高くし、電線形状への追従は主に凸型パッキン75の柔らかさで対応する。また、凸型パッキン75は密閉容器蓋部74と、O型パッキン76は密閉容器本体部73の縁の部分と、それぞれ硬化後も柔軟性を持つ接着剤にて接着されている。また、密閉容器77は加工が容易で、圧力変化による変形等が起こらない材質、例えばアルミ等で作製することが好ましい。
【0080】
また、密閉容器蓋部74は、図示していない横押し型トグルクランプ等にて密閉容器本体部73に固定されている。従って、密閉容器77は、密閉容器蓋部74を矢印78の方向に摺動することで開閉され、圧着部63を端部に有した電線64を密閉容器77内に出し入れすることができ、O型パッキン76と凸型パッキン75とを嵌め合わせて使用することにより、密閉状態を可能にする。ここで、密閉容器蓋部74を閉じることにより、O型パッキン76と凸型パッキン75とは約40%圧縮して使用される。
【0081】
密閉容器77にはエア配管72を介して圧力計71及びバルブ70が更に接続されている。圧力計71によって密閉容器77内の圧力が計測される。
【0082】
まず、圧着部63を端部に有した電線64を密閉容器77内に入れて、密閉容器蓋部74を閉め、密閉容器77を密閉状態にした後、加圧ポンプ69により密閉容器77内を加圧する。圧力計71によって密閉容器77内の圧力に達した後に、加圧ポンプ69及び防水剤供給機67に接続されている制御装置68により、防水剤供給機67による防水剤66の供給及び加圧ポンプ69による電線64内エアの加圧を制御し、電線64の防水処理及び防水検査を実行する。
【0083】
電線64の防水処理は、芯線62と芯線62を被覆する絶縁被覆との間に電線64の一方の端部である圧着部63から、防水剤供給機67によって防水剤66が供給されるとともに、エア配管72を介して加圧ポンプ69に接続されている密閉容器77によって、電線64の当該端部から供給された防水剤66を浸透させることにより実行される。
【0084】
電線64の防水処理が終了した後、バルブ70を閉めて加圧を停止させるとともに、エア配管79を介して接続されているバルブ80を開けて、密閉容器77内を大気圧に戻し、電線64の防水検査を終了する。
【0085】
上述したように密閉容器77を利用した検査システム60を利用することにより、圧着部63を端部に有した電線64を密閉容器77内に入れて、O型パッキン76と凸型パッキン75とを嵌め合わせて使用することができるため、電線64の外径の大きさに関係なく全ての電線64に使用することが可能である。その為、電線64の防水処理の検査のための作業効率を向上させることができる。
【0086】
また、O型パッキン76と凸型パッキン75とを嵌め合わせて使用することにより、パッキンの変形を抑制することができ、より確実に密閉容器77を密閉することが可能である。また、O型パッキン76と凸型パッキン75とを嵌め合わせて使用することで、密閉容器蓋部74と密閉容器本体部73の密着面を二面持つことができ、より密閉性を確保できる。
【0087】
また、電線64の端部に接続したアース端子61と、O型パッキン76や凸型パッキン75とが接触しないため、O型パッキン76や凸型パッキン75に傷がつくことがなく、耐久性の優れた検査システム60を提供することができる。
【0088】
次に、防水剤の浸透状態と上述した密閉容器の密閉性を検証した結果について、実施例に記載する。
【実施例】
【0089】
(防水剤の浸透状態の検証)
以下は、本発明の電線の防水性検査方法の効果を第1実施形態のケースで検証した結果である。
【0090】
図1に示した装置を使用して、芯線に接続された端子22に防水剤を供給しながら、他方の端部から吸引装置25によって電線内エアを吸引した。真空度が−70kPaに達したときに吸引を停止した。複数のサンプル電線を使用して、同様に防水剤23の供給、吸引、吸引の停止を行った。
【0091】
その結果のうち典型的な例を図3に示す。図3に示すように、20秒経過後もほとんど真空度が低下しない、即ち防水剤23が均一に浸透している電線21(浸透○)、10秒経過までに大気圧に戻った、即ち防水剤23が全く浸透していない電線21(浸透×)、15秒経過後にほとんど大気圧に戻った、即ち防水剤23が浸透しているが、均一でない電線21(浸透△)が現われた。
【0092】
浸透△及び浸透×の電線21は、引き続き、芯線に接続された端子22に防水剤23を供給しながら、他方の端部から吸引装置25によって電線内エアを吸引し、真空度が−70kPaに達したときに吸引を停止し、防水剤23の供給を続けた。その結果、これらの浸透△及び浸透×の電線21も、20秒経過後もほとんど真空度が低下しない、即ち防水剤が均一に浸透している電線21(浸透○)と同じ結果を現した。
【0093】
上述したように、従来所定の真空度に達すると、防水剤が浸透したとして検査されていた浸透△及び浸透×の電線21は、本発明の電線の防水性の検査方法によって、浸透が不十分であると判定され、再度防水剤が均一に浸透している電線21(浸透○)になるまで、確実に防水剤の浸透が行われる。
【0094】
上述したように、本発明によると、圧力変動による検査のため、防水剤が均一に浸透していることを確実に検出することができる。吸引、加圧によって検査を行うので、防水剤が浸透した部分を破壊するような力が加わることはない。吸引、加圧状態を保つ時間が長いので、防水剤の浸透性が向上する。更に、製品の製造後直ちに検査を行うことができ、生産効率が高く、工数の削減が可能である。よって、非破壊で電線内に防水剤が均一に浸透していることが確認できる電線の防水性検査方法、及び、優れた防水性を有する電線を確実に製造することができる電線の製造方法を提供することができる。
【0095】
(密閉容器57の密閉性の検証)
以下は、図4に示した検査システム40の使用した密閉容器57の密閉性を検証した結果である。即ち、アース端子41が圧着された電線44の圧着部43に防水剤46を供給しながら若しくは供給した後、端子45を接続した状態の電線44のもう一方の端部を負圧にすることで、防水剤46を電線44の芯線42間に吸引する際に使用する端子45を接続した状態の電線44の端部を収納する密閉容器57についての密閉性の検証結果である。
【0096】
図4に示した装置を使用して、密閉容器57に電線44の端部を入れた状態で、即ち、O型パッキン56と凸型パッキン55とで電線44を挟んだ状態で、密閉容器57内のエアを、真空度が−70kPaに達するまで吸引した。ここで、使用した電線44は、AVSS2.0F電線である。
【0097】
表1は、上述の操作を繰り返し実施したときの、密閉容器57に使用したO型パッキン56と凸型パッキン55の硬度の違いによる密閉容器57の密閉性を調べた結果である。
【0098】
【表1】

表1に示したように、パッキンの硬度がHs15、Hs20、Hs30のとき、密閉容器57の密閉性は良好であった(◎)。また、パッキンの硬度がHs50のとき、O型パッキン56と凸型パッキン55とを強く圧縮することにより、密閉容器57の密閉性を保つことができた(○)。一方、パッキンの硬度がHs5のときは、パッキンが軟らかい為、繰り返し使用することによりパッキンがへたってしまい、密閉容器57の密閉性を保つことができなくなった(△)。また、パッキンの硬度がHs80のときは、パッキンが硬い為、電線44を挟んだときに、電線44の形状に追従できず、密閉容器57の密閉性を確保することができなくなった(×)。
【0099】
また、最適な実施例は、硬度Hs15のシリコーンスポンジであり、外径φ70mm×厚さ15mmのシリコーンスポンジに外径φ38mm×厚さ10mmのシリコーンスポンジをRTVシリコーン接着剤にて貼り合わせた凸型のパッキンである凸型パッキン55と、硬度Hs20のシリコーンスポンジであり、外径φ70mm×内径φ38mm×厚さ15mmのO型のパッキンであるO型パッキン56を使用したときであった。
【0100】
以上のことから、密閉容器57に使用するパッキンの硬度は、Hs10〜Hs50であることが判った。また、圧力変化による変形が起き易い下側パッキン(図4では、O型パッキン56)の硬度を若干高くして変形を抑え、凸型で電線形状へ追従がどちらかといえばし辛い上側パッキン(図4では、凸型パッキン55)は柔らかいものを使用したほうが良いことが判った。
【0101】
(密閉容器77の密閉性の検証)
以下は、図5に示した検査システム60の使用した密閉容器77の密閉性を検証した結果である。即ち、アース端子61が圧着された電線64の圧着部63に防水剤66を供給しながら若しくは供給した後、電線64内エアを加圧することで防水剤46を電線44の芯線42間に浸透させる際に使用する、圧着部63を端部に有した電線64を収納する密閉容器77についての密閉性の検証結果である。
【0102】
図5に示した装置を使用して、密閉容器77に電線64の端部を入れた状態で、即ち、O型パッキン56と凸型パッキン55とで電線64を挟んだ状態で、密閉容器77内のエアを、圧力が100kPaに達するまで加圧した。ここで、使用した電線64は、AVSS2.0F電線である。
【0103】
表2は、上述の操作を繰り返し実施したときの、密閉容器77に使用したO型パッキン76と凸型パッキン75の硬度の違いによる密閉容器77の密閉性を調べた結果である。
【0104】
【表2】

表2に示したように、パッキンの硬度がHs15、Hs20、Hs30のとき、密閉容器77の密閉性は良好であった(◎)。また、パッキンの硬度がHs50のとき、O型パッキン76と凸型パッキン75とを強く圧縮することにより、密閉容器77の密閉性を保つことができた(○)。一方、パッキンの硬度がHs5のときは、パッキンが軟らかい為、電線64を挟んだ部分が変形しエア漏れが発生し、密閉容器77の密閉性を確保することができなくなった(×)。また、パッキンの硬度がHs80のときは、パッキンが硬い為、電線64を挟んだときに、電線64の形状に追従できず、密閉容器77の密閉性を確保することができなくなった(×)。
【0105】
また、最適な実施例は、硬度Hs15のシリコーンスポンジであり、外径φ70mm×厚さ15mmのシリコーンスポンジに外径φ38mm×厚さ10mmのシリコーンスポンジをRTVシリコーン接着剤にて貼り合わせた凸型のパッキンである凸型パッキン75と、硬度Hs30のシリコーンスポンジであり、外径φ70mm×内径φ38mm×厚さ15mmのO型のパッキンであるO型パッキン76を使用したときであった。
【0106】
以上のことから、密閉容器77に使用するパッキンの硬度は、Hs10〜Hs50であることが判った。また、圧力変化による変形が起き易い下側パッキン(図5では、O型パッキン76)の硬度を若干高くして変形を抑え、凸型で電線形状へ追従がどちらかといえばし辛い上側パッキン(図5では、凸型パッキン75)は柔らかいものを使用したほうが良いことが判った。
【0107】
上述した密閉容器の密閉性の実施例により判明したことから、密閉容器に使用するパッキンは弾性体が好ましく、材質はシリコーンスポンジが好ましく、硬度はHs=10〜50のものが良い。尚、パッキンの硬度は上下で異なるものを使用しても何ら問題はなく、凸型のパッキン(例えば、Hs=20)に対して、O型のパッキンにより硬度を高いもの(例えば、Hs=25)を使用した方が、O型パッキンの変形が抑制され、密閉性が上がるので好ましい。
【0108】
また、密閉容器のパッキン取付け部に、パッキンの変形を抑制できるよう壁を設けることで、密閉性を上げることができる。
【0109】
また、パッキンの形状をO型とそれに嵌る凸形状としているが、パッキンは密閉容器に合せれば良く、三角形や台形のパッキンとそれに嵌る凸形状のパッキンでも良い。凸形状についても、90度の角度を持つ段付形状でなくてもよい。すなわち、もう一方のパッキンと嵌め合わすことができる形状であれば、かまわない。
【0110】
図6は、パッキン形状の例を示した上面図であり、図7は、パッキン形状の例を示した側面図である。図6では、O型のパッキンの外側の上面から形状(外形状)と凸形状のパッキンが嵌る内側の上面から形状(内形状)とが、共に丸型の場合(a)、共に三角形の場合(b)、共に台形の場合(c)、共に六角形の場合(d)、及び、外形状が四角形で内形状が丸である場合(e)を例に挙げている。また、図7では、凸形状のパッキンの側面形状が、嵌めこみ方向である矢印方向に平坦な場合(a)、曲率を有してしている場合(b)、及び、90度の角度を持つ段付形状の場合(c)を例に挙げている。
【0111】
更に、上述した密閉容器はパッキンと蓋部、パッキンと容器本体部は別のものとなっているが、それぞれが独立している必要はなく、パッキンと蓋部が同じ材料で一体化していてもよく、また、パッキンと容器本体部が同じ材料で一体化していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である電線の防水性検査方法を説明する摸式図である。
【図2】図2は、本発明の第2実施形態である電線の防水性検査方法を説明する摸式図である。
【図3】図3は、吸引によって所定の真空度に到達した後の時間経過と圧力の変化の関係を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態である電線の防水性検査方法において説明した図1の検査システムの変形例である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態である電線の防水性検査方法において説明した図2の検査システムの変形例である。
【図6】図6は、パッキン形状の例を示した上面図である。
【図7】図7は、パッキン形状の例を示した側面図である。
【符号の説明】
【0113】
20 加圧装置
21 電線
22 端子
23 防水剤
24 防水剤供給装置
25 吸引装置
26 真空ポンプ
27 バルブ
28 真空計
29 タイマー
30 圧力計
40、60 検査システム
53、73 密閉容器本体部
54、74 密閉容器蓋部
55、75 凸型パッキン
56、76 O型パッキン
57、77 密閉容器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給し、
前記電線の他方の端部から電線内エアの吸引を行って前記電線の内部への防水処理を行い、
該吸引の処理を停止し、
その後の前記電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする電線の防水性検査方法。
【請求項2】
電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給し、
前記電線の一方の端部から電線内エアの加圧を行って前記電線の内部への防水処理を行い、
該加圧の処理を停止し、
その後の前記電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする電線の防水性検査方法。
【請求項3】
前記防水剤の供給を継続しながら、前記圧力変化を測定することを特徴とする請求項1または2に記載の電線の防水性検査方法。
【請求項4】
電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給し、
前記電線の他方の端部から電線内エアの吸引を行って前記電線の内部への防水処理を行い、
該吸引の処理を停止し、
その後の前記電線内エアの圧力変化を測定し、
前記圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認することを特徴とする防水性を有する電線の製造方法。
【請求項5】
電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給し、
前記電線の一方の端部から電線内エアの加圧を行って前記電線の内部への防水処理を行い、
該加圧の処理を停止し、
その後の前記電線内エアの圧力変化を測定し、前記圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていることを確認することを特徴とする防水性を有する電線の製造方法。
【請求項6】
前記防水剤の供給を継続しながら、前記圧力変化を測定することを特徴とする請求項4または5に記載の防水性を有する電線の製造方法。
【請求項7】
前記圧力変化が所定の許容範囲内に収まっていないとき、前記防水処理を前記電線内エアの吸引により実施の場合は前記電線内エアの吸引を、前記防水処理を前記電線内エアの加圧により実施の場合は前記電線内エアの加圧を再度実施することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の防水性を有する電線の製造方法。
【請求項8】
電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給する防止剤供給装置と、
前記電線の他方の端部から電線内エアの吸引を行う吸引装置と、
前記電線内エアの圧力変化を測定する圧力計と、
を備え、
前記防止剤供給装置より供給された前記防水材を、前記吸引装置により前記電線の内部へ吸引し、吸引停止後に前記圧力計により前記電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする電線の防水性検査装置。
【請求項9】
電線の一方の端部における前記電線の素線露出部に防水剤を供給する防止剤供給装置と、
前記電線の一方の端部から電線内エアの加圧を行う加圧装置と、
前記電線内エアの圧力変化を測定する圧力計と、
を備え、
前記防止剤供給装置より供給された前記防水材を、前記加圧装置により前記電線の内部へ浸透させ、加圧停止後に前記圧力計により前記電線内エアの圧力変化を測定することを特徴とする電線の防水性検査装置。
【請求項10】
前記防止剤供給装置より前記防水剤の供給を継続しながら、前記圧力計により前記圧力変化を測定することを特徴とする請求項8または9に記載の電線の防水性検査装置。
【請求項11】
前記吸引装置は、
前記電線の他方の端部を収納する電線収納部と、
前記電線収納部のエアを吸引する真空圧発生装置と、
を有し、
前記電線収納部は、
前記電線の他方の端部を収納する凹部を有する密閉容器本体部と、
前記密閉容器本体部の前記凹部の開口を閉鎖する密閉容器蓋部と、
前記密閉容器本体部の前記凹部の開口を取り囲むように設けられた第1のシール部材と、
前記第1のシール部材の開口に嵌合する凸部を有する、前記密閉容器蓋部に設けられた第2のシール部材と、
を備えていることを特徴とする請求項8または10に記載の電線の防水性検査装置。
【請求項12】
前記加圧装置は、
前記電線の他方の端部を収納する電線収納部と、
前記電線収納部のエアを加圧する正圧発生装置と、
を有し、
前記電線収納部は、
前記電線の他方の端部を収納する凹部を有する密閉容器本体部と、
前記密閉容器本体部の前記凹部の開口を閉鎖する密閉容器蓋部と、
前記密閉容器本体部の前記凹部の開口を取り囲むように設けられた第1のシール部材と、
前記第1のシール部材の開口に嵌合する凸部を有する、前記密閉容器蓋部に設けられた第2のシール部材と、
を備えていることを特徴とする請求項9または10に記載の電線の防水性検査装置。
【請求項13】
前記第1のシール部材及び前記第2のシール部材の硬度はHs10〜Hs50であることを特徴とする請求項11または12に記載の電線の防水性検査装置。
【請求項14】
前記第1のシール部材は、前記第2のシール部材よりも硬度が高いことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の電線の防水性検査装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−159575(P2008−159575A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297491(P2007−297491)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】