説明

電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ

【課題】ドラムに設けられた軸穴を塞ぐための取り付け・取り外しが容易であり、加えて生物の軸穴への侵入を防止する電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップを提供する。
【解決手段】電線・ケーブルを巻くために用いられるドラム1の鍔の平面側中央に、対抗する鍔の平面側中央に貫通するように設けられた軸穴2を塞ぐための軸穴キャップであって、該軸穴キャップは、軸穴2とは形状の異なるキャップ挿入部を有することを特徴とする電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線・ケーブルの一般的な荷姿として使用される電線・ケーブル用ドラム1に関し、特に長期の屋外等での保管時に該電線・ケーブル用ドラム1の鍔の平面側中央に設けられている軸穴2へ生物が侵入してくることを防止するのに適した電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップである。
【背景技術】
【0002】
図1及び2に示している電線・ケーブル用ドラム1には、両鍔の平面側中央に対抗するように軸穴2が設けられており、該軸穴2は電線・ケーブルの敷設・延線の際の、ドラムの回転や、荷卸の際にドラムを吊るすために用いられるため、通常塞いだりはしない。ただし、長期間保管する場合、生物が侵入してくることを防止するために、紙をテープまたはタッカ等で貼り付けるか、もしくは鉄板を打ち付けることで該軸穴2を塞ぎ保管している。
【0003】
また、特許文献1では、両端部に第1及び第2のネジ部をそれぞれ有するドラムジャッキ心棒と、内周面にドラムジャッキ心棒の両端に形成されたネジ部に対応するネジ溝が形成された円筒状の第1及び第2の本体部、かつ第1及び第2本体部の外周に取付けられた第1及び第2の網部を備えた第1及び第2の蓋によって構成される小動物侵入防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−137580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電線・ケーブル用ドラムを保管する際、従来は軸穴を塞がないため、軸穴に生物(蛇、蜂等)が侵入し、電線・ケーブル用ドラムの運搬のために従業員が軸穴に心棒を通す作業時に、軸穴に侵入していた蜂に刺されるといったケースが発生している。また、軸穴を塞がないまま長期間保管した場合、軸穴に侵入した生物が営巣する危険性がある。そのため、紙もしくは鉄板で軸穴を塞ぐことになるが、紙の場合、保管または取り外し時に破れることがあり、また、再保管時のテープ等の再使用が必要となる。鉄板の場合も、軸穴への打ち付けや取り外しを行う必要があり、再取り付けが煩雑である。
【0006】
このような問題に対応するために、上記特許文献1の手法が存在するが、取り付け時の煩雑さが解消されておらず、また、多くの部品を必要とするため装置一つにかかる費用が大きくなる。加えて、軸穴から心棒の両端部が剥き出しており、また、風雨による心棒、または第1及び第2の蓋の腐食が考えられ、大量のドラムの保管もしくは屋外での長期保管に適さないといった問題がある。
【0007】
以上の状況を鑑み、本発明は、前記軸穴2を塞ぐための取り付け・取り外しが容易であり、加えて生物の軸穴への侵入を防止する電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ3を提供するところにある。
また、該軸穴キャップ3取り付け時、該軸穴キャップ3が電線・ケーブル用ドラム1の内側に落ち込まないように、もしくは、長時間の屋外保管時に、風雨に曝されることでキャップが抜け落ちないようにすることも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、電線・ケーブルを巻くために用いられるドラムの鍔の平面側中央に、対抗する鍔の平面側中央に貫通するように設けられた軸穴を塞ぐための軸穴キャップであって、該軸穴キャップは、軸穴とは形状の異なるキャップ挿入部を有することを特徴とする電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップである。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記軸穴が円形状を有し、前記キャップ挿入部が多角形状であることを特徴とする請求項1に記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップである。
【0010】
また、請求項3の発明は、前記キャップ挿入部が四角形状を有し、対角の長さが軸穴の直径+5mm〜15mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップである。
【0011】
また、請求項4の発明は、前記軸穴の内側への落ち込みを防止するための、キャップ落ち込み防止止め部を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップである。
【0012】
また、請求項5の発明は、前記軸穴キャップが、弾性のある高分子材料であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップである。
【0013】
また、請求項6の発明は、前記キャップ挿入部またはキャップ落ち込み防止止め部に忌避剤を使用することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、電線・ケーブル用ドラム1保管時の軸穴2への生物の侵入を防止することができ、それによって、ドラム取扱時の安全性の向上を提供することができる。また、従来の紙、もしくは鉄板よりも、容易に取り付け・取り外しが可能であり、作業性の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例を適用する電線・ケーブル用ドラム1の構造を示す側面図である。
【図2】本発明の実施例を適用する電線・ケーブル用ドラム1の構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例による電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ3の側面図である。
【図4】本発明の実施例の図3を下方向から見た図である。
【図5】本発明の実施例を適用する電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ3の構造の他の例(キャップ挿入部に絞りを入れる)を示すものである。
【図6】本発明の実施例を適用する電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ3の構造の他の例(他の材質を用いたキャップ挿入部に弾性のある高分子材料を被覆させる)を示すものである。
【図7】本発明の実施例を適用する電線・ケーブル用ドラム1に本発明の実施例による電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ3を装着している状態を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例による電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ3の構造の他の例(キャップ挿入部の挿入側平面に返しを設ける)を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図3及び4に示す本発明である電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ3は、電線・ケーブル用ドラム1の保管時に、前記キャップ挿入部4を、電線・ケーブル用ドラム1の両鍔の平面側中央にある軸穴2に挿入することにより、該軸穴2を塞ぎ、該軸穴2への生物の侵入、または生物の営巣を防ぐことを目的としているところに特徴がある。
【0017】
前記キャップ挿入部4は、多角形状であり、その対角の長さを軸穴直径よりもやや長くし、前記軸穴キャップ3を抜けにくくすることにより外部への脱落を防ぐ。また、該キャップ挿入部4の対角よりも長い対角もしくは直径をもった角形または円形状のキャップ落ち込み防止止め部5を付けることで、該軸穴キャップ3を挿入した際に、キャップが該軸穴2内部へ落ち込むことを防ぐ。
【0018】
前記軸穴キャップ3は、万一、前記軸穴2と該軸穴キャップ3との間に隙間が発生した場合、隙間から該軸穴2への生物の侵入を防止するために、忌避剤を含む。
【0019】
前記軸穴キャップは、前記キャップ挿入部4の対角の長さを該軸穴2の直径よりも長くし、該キャップ挿入部4は弾性のある高分子材料を使用することで、挿入時に容易に変形し、該軸穴2への容易な取り付けが可能となり、加えて軸穴内でのキャップ挿入部4の軸穴内面への拡張力による圧がかかることで、該軸穴キャップ3の外側への安易な脱落を防ぐことができる。また、該キャップ挿入部4は多角形状であることから、各頂点で軸穴内面と接することにより、余分な摩擦力が生じないため、該軸穴キャップ3の取り外しも容易に行うことができる。
【0020】
前記キャップ挿入部4の対角の長さは、軸穴直径+5mm〜15mmが望ましい。
【0021】
前記キャップ挿入部4の形状は四角形状に限らず、六角形、八角形等の対角をつくる多角形もしくは、星型等の軸穴内面と点で接する形状であれば、安易な外側へのキャップの脱落を防ぐことができる。また、前記キャップ落ち込み防止止め部5は、軸穴キャップ3の軸穴内部への落ち込みを防ぐ効果を得られれば、その形状は四角形に限らず、他の多角形もしくは円形でも可能である。
【0022】
前記軸穴キャップ3に使用される弾性のある高分子材料は、ポリエチレン、ゴム、ビニル、ウレタン等を用いることができる。
【0023】
前記忌避剤の使用形式は、前記軸穴キャップ3に練り込む場合に限らず、該軸穴キャップ3全体に塗布する、または前記キャップ落ち込み防止止め部5に固形忌避剤をはめ込む等、忌避効果が期待できる形式であればよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ3の実施例について説明する。該軸穴キャップ3は、JCS8077(電線包装用木製ドラム。JCSは日本電線工業会規格を指す)で規定しているドラム1(軸穴寸法は、50mmΦ、75mmΦ、110mmΦ)を対象とする。これら該ドラム1の軸穴2に対し、軸穴直径+5mm〜15mmの対角を有する四角形状のウレタン製キャップ挿入部4を直接該軸穴2に挿入することによって軸穴を塞ぎ、生物の該軸穴2への侵入を防ぐ。例えば、軸穴寸法が75mmΦのドラムであれば、対角の長さが80mm〜90mmである該キャップ挿入部4を有する該軸穴キャップ3を該軸穴2に直接挿入することとなる。また、弾性のある高分子材料であるウレタンを用いることにより、挿入したキャップ挿入部4が容易に変形し、それによって、該キャップ挿入部4の対角と軸穴直径の長さが異なっても容易に挿入が可能となるとともに、挿入時の該キャップ挿入部4の変形による拡張力によって、軸穴内面に該キャップ挿入部4からの圧がかかり、その結果、安易な外側への脱落を防げる。
【0025】
該キャップ挿入部4の挿入側平面の対抗平面に、該キャップ挿入部4と同様のウレタン製であり、かつ該キャップ挿入部4の対角よりもやや長い四角形状のキャップ落ち込み防止止め部5を取付けることでキャップの軸穴内部への落ち込みを防げる。加えて、図7が示すように、該キャップ落ち込み防止止め部5はドラム1の鍔の外部に露出しており、該軸穴キャップ3に含有している忌避剤によって、外側からの生物の侵入を防止することができる。
該軸穴キャップ3挿入時には、キャップ落ち込む防止止め部5とドラム1の鍔の平面とが接するまで挿入する。
以上によって、容易な取り付け・取り外しによる作業効率の改善と、生物の軸穴への侵入を絶ち、それによる生物の軸穴内での営巣を防ぐという目的を実現した。
【他の実施の形態】
【0026】
使用頻度の増加によって、前記キャップ挿入部4の各対角が磨耗し、該キャップ挿入部4の軸穴内面への圧が減少することで、該キャップ挿入部4が外側にずれ、該軸穴キャップ3と該軸穴2を有する電線・ケーブル用ドラム1の鍔の平面側との間に隙間が生じる場合があるが、該キャップ挿入部4及び前記キャップ落ち込み防止止め部5に忌避剤を含有させていることにより、生物の侵入防止効果を損なうことはない。
【0027】
図5に示すように、前記キャップ挿入部4に、絞りを入れてもよい。このとき、より脱落防止効果の向上が見込める。
【0028】
前記キャップ挿入部4が弾性のある高分子材料を使用すればよく、キャップ落ち込み防止止め部5は、該キャップ挿入部4と異なった材料を使用してもよい。
【0029】
図6が示すように、前記軸穴キャップ3と同様の形状であって、金属等の他の材質を用いた円形状のキャップ挿入部4が多角形状となるように弾性のある高分子材料6を被覆させた該キャップ挿入部4を直接軸穴に挿入してもよい。このとき、金属等の他の材質を用いたキャップ挿入部4の円形部直径はドラム軸穴直径よりやや短いものがよく、また、被覆する該高分子材料6の対角の長さはキャップ挿入部直径+5mm〜15mmが望ましい。
【0030】
図8が示すように、前記キャップ挿入部4に、スポンジ等の弾性の高い高分子材料を使用することで、該キャップ挿入部4挿入側平面に「返し」7を設けることにより、外側への脱落防止効果を高めることができる。このとき、上記弾性の高い高分子材料の使用によって、「返し」7による軸穴キャップ3の取り外しの容易性が損なわれることはない。
【符号の説明】
【0031】
1.ドラム
2.軸穴
3.軸穴キャップ
4.キャップ挿入部
5.キャップ落ち込み防止止め部
6.高分子材料
7.返し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線・ケーブルを巻くために用いられるドラムの鍔の平面側中央に、対抗する鍔の平面側中央に貫通するように設けられた軸穴を塞ぐための軸穴キャップであって、該軸穴キャップは、軸穴とは形状の異なるキャップ挿入部を有することを特徴とする電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ。
【請求項2】
前記軸穴が円形状を有し、前記キャップ挿入部が多角形状であることを特徴とする請求項1に記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ。
【請求項3】
前記キャップ挿入部が四角形状を有し、対角の長さが軸穴の直径+5mm〜15mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ。
【請求項4】
前記軸穴の内側への落ち込みを防止するための、キャップ落ち込み防止止め部を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ
【請求項5】
前記軸穴キャップが、弾性のある高分子材料であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ。
【請求項6】
前記キャップ挿入部またはキャップ落ち込み防止止め部に忌避剤を使用することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の電線・ケーブル用ドラム軸穴キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−32084(P2011−32084A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182814(P2009−182814)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】