電線張力低減装置及び電線張力低減工法
【課題】4条の電線の張替に際して、張替電線とは反対側の電線を4条同時に緩線して2条断線相当まで張力を低減させる。
【解決手段】連結ヨーク金具14に台付けワイヤー2を介してアース側セミ滑車3を連結した後、アース側セミ滑車3とライン側セミ滑車3間に牽引ワイヤー4を巻回する一方、ライン側セミ滑車3に三角リンク5を連結するとともに、三角リンク5に天側及び地側バランサー金車6をそれぞれ連結する。さらに、4条の電線Wにそれぞれカムアロング7を取り付け、天地それぞれ一対のカムアロング7に各バランサー金車6に巻回された一対の台付けワイヤー2をそれぞれ対応して連結する。次いで、牽引ワイヤー4を巻き取り、4条の電線を一括して引き寄せて引留クランプ13と連結ヨーク金具14との連結を解除した後、その間に連結金具8を連結し、次いで、牽引ワイヤー4を繰り出して電線Wを径間に送り込み、連結金具8に張力を作用させる。
【解決手段】連結ヨーク金具14に台付けワイヤー2を介してアース側セミ滑車3を連結した後、アース側セミ滑車3とライン側セミ滑車3間に牽引ワイヤー4を巻回する一方、ライン側セミ滑車3に三角リンク5を連結するとともに、三角リンク5に天側及び地側バランサー金車6をそれぞれ連結する。さらに、4条の電線Wにそれぞれカムアロング7を取り付け、天地それぞれ一対のカムアロング7に各バランサー金車6に巻回された一対の台付けワイヤー2をそれぞれ対応して連結する。次いで、牽引ワイヤー4を巻き取り、4条の電線を一括して引き寄せて引留クランプ13と連結ヨーク金具14との連結を解除した後、その間に連結金具8を連結し、次いで、牽引ワイヤー4を繰り出して電線Wを径間に送り込み、連結金具8に張力を作用させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電線の張替に際して張替送電線とは反対側の送電線の張力を低減させる装置及び工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、4導体送電線は超高圧線路に用いられているが、自然等、条件の厳しい所等では電線の傷みも進み、線路によっては張替が必要となっている。電線張替工事における延線区間の選定に当たっては、建設当時の延線境に合わせることが理想であるが、建設後の宅地化進展等の用地事情の変化に伴い、建設当時のエンジン場やドラム場が使用できない場合は、電線引留を考慮していない鉄塔を延線境鉄塔としなければならない。
【0003】
このような電線引留を考慮していない鉄塔は、電気設備技術基準第124条第2項に規定するように、1相、例えば、4条の電線のうちの2条が断線した場合の不平均張力に耐える設計としている。
【0004】
具体的には、最も標準的な垂直配列2回線鉄塔の場合、図11に模式的に示すように、各回線における上、中、下の相のうちの1相において、鉄塔10の腕金11に耐張がいし装置12を介して作用する上流側の4条の電線Wによる張力をTa、下流側の4条の電線Wによる張力をTbとすると、平常時においては、Ta≒Tbである(図11(a)参照)が、4条の電線Wのうちの2条が切断し、下流側の張力Tb’=1/2・Tbとなった場合に、上流側の張力Tc=Ta−Tb’に鉄塔10が耐えるように設計されている(図11(b)参照)。
【0005】
したがって、電線引留を考慮していない鉄塔を延線境鉄塔として電線張替工事を施工する際には、4条の既設電線を同時に外すことができず、電線張替時の強度検討においては、このような条件を満足する工法で施工する必要がある。このような条件を満足する工法として、既設電線による腕金仮留工法や支線による引留工法が採用されている。
【0006】
既設電線による腕金仮留工法は、図12(a)に模式的に示すように、例えば、下流側の1相の4条の電線Wを張り替えることを想定すると、腕金11に引留金具100を固定するとともに、引留金具100に張替対象の2条の電線Wを移線し、下流側の張力Tb”≒1/2・Tbを分担させ、上流側の張力Tc≒Ta−Tb”を支持しようとするものである。
【0007】
一方、支線による引留工法は、図12(b)に模式的に示すように、腕金11に引留金具100を固定するとともに、張替電線側の地上に引き留めた支線101を引留金具100に連結し、2条分の張力Tb”≒1/2・Tbを支線101を介して分担させ、上流側の張力Tc≒Ta−Tb”を支持しようとするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前者の工法においては、2条分の常時張力(気温15〜20℃、風速0〜15m/sの緊線時の1条当たりの張力で、最大張力の60%程度を基準としている。すなわち、最大張力50kNの場合、その60%の2条分で約60kN程度)を支持する引留金具を製作するとともに、腕金に取り付けなければならず、金具取付作業及び電線引留作業に数日程度の充電停止日数が必要となる。また、吊金車工法の適用が必要な重要横断箇所において、既設電線を母線として利用できないため、母線となるケブラーロープ等を張替区間に延線する必要があり、充電停止日数がさらに増加する。
【0009】
一方、後者の工法は、工事面において、2条分の常時張力(約60kN程度)を支持する引留金具を製作するとともに、腕金に取り付けなければならず、金具取付作業及び電線引留作業に伴う数日程度の充電停止日数が必要となる。また、支線引留用コンクリートブロックを設置するために、多大な労力を必要とする。さらに、支線引留により鉄塔の腕金に作用する垂直荷重が増加し、腕金の強度不足を補う補強が必要となる。また、用地面においては、支線引留用コンクリートブロックを設置するために広範囲の工事用地を借用するとともに、森林の伐採が必要となる。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、鉄塔の設計条件を満足した状態で張替対象の4条の電線を同時に撤去して張替することができるように、電線張替に際して張替電線とは反対側の電線を4条同時に緩線して2条断線相当まで張力を低減させることのできる電線張力低減装置及び電線張力低減工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電線張力低減装置は、鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して4条の電線が架線され、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の張力を2条断線相当まで低減させる電線張力低減装置であって、連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーを介して連結されたアース側セミ滑車と、アース側セミ滑車との間に牽引ワイヤーが巻回されてその一端が止着されたライン側セミ滑車と、ライン側セミ滑車に三角リンクを介してそれぞれ連結された天側バランサー金車及び地側バランサー金車と、4条の電線にそれぞれ取り付けられて、天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤー及び地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーにそれぞれ対応して連結されたカムアロングと、各引留クランプ及び連結ヨーク金具間に連結された連結金具とから構成され、地上に設置した牽引ワイヤーのウインチを駆動して連結金具を径間に送り込んで電線の弛度を大きくすることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、4条の電線にそれぞれ取り付けられカムアロングと連結ヨーク金具との間を、一対の台付けワイヤーを介して連結されたアース側セミ滑車、アース側セミ滑車との間に牽引ワイヤーが巻回されてその一端が止着されたライン側セミ滑車、ライン側セミ滑車に三角リンクを介してそれぞれ連結された天側バランサー金車及び地側バランサー金車、天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤー及び地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーによって連結する。これにより、地上に設置したウインチを駆動し、牽引ワイヤーを腕金及び鉄塔を経由して巻き取ることで、カムアロングを介して4条の電線を一括して引き寄せ、カムアロング及び引留クランプ間の電線を弛ませて、引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除することができるとともに、その間に連結金具を連結することができる。次いで、ウインチを駆動して牽引ワイヤーを繰り出せば、4条の電線を一括して径間に送り込んで連結金具に電線張力を作用させることができる。
【0013】
これにより、径間に送り込まれた連結金具の長さ分電線の弛度が大きくなり、電線張力を低減させることができる。この場合、連結金具の長さは、2条の電線断線相当まで張力を低減させることができるように、電線の種類や径間等に基づいて予め設定されている。
【0014】
この結果、4条の電線を一括してバランスさせながら緩線して滑らかに張力を低減させることができることにより、従来工法に比較して、経済性及び工期短縮に優れたものとなる。すなわち、従来の既設電線による腕金仮留工法と比較して、準備作業に伴う充電停止日数が不要となり、工期を大幅に短縮することができるとともに、コストを大幅に削減することができる。また、支線による引留工法と比較して、支線が不要となることから、用地確保及び補償費が不要となり、コストを大幅に削減することができるとともに、森林伐採を可及的に小さくすることができる。
【0015】
本発明において、前記連結金具が、複数個のリンク及び各リンクの前後を挟み込むとともに、ピンを介して互いに回転自在に連結された複数対のリンクプレートから形成することが好ましい。これにより、4条の電線の張力が予め計算された2条断線相当まで低減するように、リンク及びリンクプレート対の数を調整して電線を必要な長さだけ容易に弛めることができる。
【0016】
本発明において、前記少なくとも1本の連結金具に張力計を設けることが好ましい。これにより、連結金具に電線張力が作用したこと、及び、その張力を把握することができる。
【0017】
本発明において、前記セミ滑車がそれぞれ複数個のシーブを回転自在に支持することが好ましい。これにより、ライン側セミ滑車及びアース側セミ滑車間に巻回された牽引ワイヤーの張力を小さくすることができ、小さな能力のウインチで作業することが可能となる。すなわち、延線境鉄塔が山岳地等にあって、ヘリコプターを利用してウインチを輸送しなければならない場合において、ヘリコプターの輸送能力に対応して重量の小さなウインチで作業することが可能となる。
【0018】
本発明の電線張力低減工法は、鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して架線された4条の電線を張り替える際、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の引留クランプと連結ヨーク金具間の張力を弛める工程と、予め計算された2条断線相当分の張力となる長さの弛みを保持する金具を引留クランプと連結ヨーク金具間に送り込む工程を備えることを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線を鉄塔側に引き寄せ、引留クランプと連結ヨーク金具間の電線の張力を弛める。次いで、引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除するとともに、各引留クランプと連結ヨーク金具との間に、予め計算された2条断線相当分の張力となる長さの弛みを保持する金具を連結し、4条の電線を径間に送り込み、金具に電線の張力を作用させる。
【0020】
これにより、径間に送り込まれた金具の長さ分4条の電線の弛度が大きくなり、電線張力を低減させることができる。
【0021】
この結果、4条の電線を緩線して滑らかに張力を低減させることができることにより、従来工法に比較して、経済性及び工期短縮に優れたものとなる。すなわち、従来の既設電線による腕金仮留工法と比較して、準備作業に伴う充電停止日数が不要となり、工期を大幅に短縮することができるとともに、コストを大きく削減することができる。また、支線による引留工法と比較して、支線が不要となることから、用地確保及び補償費が不要となり、コストを大幅に削減することができる他、森林伐採を可及的に小さくすることができる。
【0022】
本発明の電線張力低減工法は、鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して4条の電線が架線され、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の張力を2条断線相当まで低減させる電線張力低減工法であって、連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーの一端をそれぞれ連結し、各台付けワイヤーの他端をアース側セミ滑車に連結した後、アース側セミ滑車とライン側セミ滑車間に牽引ワイヤーを巻回するとともにその一端をライン側セミ滑車に止着し、次いで、ライン側セミ滑車に三角リンクを連結するとともに、三角リンクに天側バランサー金車及び地側バランサー金車をそれぞれ連結し、さらに、4条の電線にそれぞれカムアロングを取り付ける一方、天側の一対のカムアロングに天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーを連結するとともに、地側の一対のカムアロングに地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーを連結した後、牽引ワイヤーを腕金及び鉄塔を経て地上に設置したウインチを介して巻き取り、カムアロングと引留クランプとの間の4条の電線を一括して弛ませた後、引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除するとともに、各引留クランプと連結ヨーク金具との間に連結金具をそれぞれ連結し、次いで、ウインチを介して牽引ワイヤーを繰り出し、4条の電線を一括して径間に送り込んで連結金具に張力を作用させることを特徴とするものである。
【0023】
本発明によれば、電線の引留クランプと耐張がいし装置を連結する連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーの一端をそれぞれ連結し、一対の台付けワイヤーの他端をアース側セミ滑車に連結した後、アース側セミ滑車及びライン側セミ滑車間に牽引ワイヤーを巻き回し、一端をライン側セミ金車に止着する。次いで、ライン側のセミ滑車に三角リンクを連結するとともに、三角リンクにそれぞれ台付けワイヤーを巻回した天側バランサー金車及び地側バランサー金車を連結する。さらに、4条の電線にそれぞれカムアロングを取り付ける一方、天側の一対の電線に取り付けたカムアロングに天側バランサー金車に巻回した台付けワイヤーを連結するとともに、地側の一対の電線に取り付けたカムアロングに地側バランサー金車に巻回した台付けワイヤーを連結する。次いで、地上に設置したウインチを駆動して牽引ワイヤーを腕金及び鉄塔を経て巻き取り、ライン側セミ滑車、すなわち、カムアロングを介して4条の電線を一括して引き寄せ、カムアロングと引留クランプとの間の4条の電線を弛ませた後、各引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除するとともに、各引留クランプと連結ヨーク金具との間に連結金具を連結し、ウインチを駆動して牽引ワイヤーを繰り出し、ライン側セミ滑車、すなわち、カムアロングを介して4条の電線を一括して径間に送り込んで連結金具に張力を作用させる。
【0024】
これにより、径間に送り込まれた連結金具の長さ分電線の弛度が大きくなり、電線張力を低減させることができる。この場合、連結金具の長さは、2条の電線断線相当まで張力を低減させることができるように、電線の種類や径間等に基づいて予め設定されている。
【0025】
この結果、4条の電線を一括してバランスさせながら緩線して滑らかに張力を低減させることができることにより、従来工法に比較して、経済性及び工期短縮に優れたものとなる。すなわち、従来の既設電線による腕金仮留工法と比較して、準備作業に伴う充電停止日数が不要となり、工期を大幅に短縮することができるとともに、コストを大きく削減することができる。また、支線による引留工法と比較して、支線が不要となることから、用地確保及び補償費が不要となり、コストを大幅に削減することができる他、森林伐採を可及的に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電線張替に際して張替電線とは反対側の電線を4条同時に緩線して2条断線相当まで張力を低減させることができる。これにより、鉄塔の設計条件を満足した状態で張替対象の4条の電線を同時に撤去して張替することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の電線に架設した電線張力低減装置の一実施形態を一部省略して示す側面図である。
【図2】図1の電線張力低減装置を電線に架設する工程を説明する側面図である。
【図3】図1の電線張力低減装置を電線に架設する工程を図2に続いて示す平面図及び側面図である。
【図4】図1の電線張力低減装置を電線に架設する工程を図3に続いて示す側面図である。
【図5】図1の電線張力低減装置を電線に架設する工程を図4に続いて示す側面図である。
【図6】電線張力低減装置を構成するセミ滑車の正面図及び側面図である。
【図7】電線張力低減装置を構成するバランサー金車の正面図及び側面図である。
【図8】電線張力低減装置を構成する連結金具の斜視図である。
【図9】鉄塔の腕金に設けた耐張がいし装置、連結ヨーク金具、電線の引留クランプの関係を示す平面図である。
【図10】図9の耐張がいし装置、連結ヨーク金具、電線の引留クランプの関係を示す側面図である。
【図11】鉄塔の腕金に耐張がいし装置を介して架線された上流側の電線張力と下流側の電線張力との平常時の関係及び4条の電線のうちの2条切断時の関係を模式的に示す説明図である。
【図12】鉄塔の腕金に耐張がいし装置を介して架線された電線のうち下流側の電線を張り替える際に従来工法による張力低減要領を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1には、本発明の張力低減装置1の一実施形態が示されている。
【0030】
この張力低減装置1は、例えば、垂直配列2回線鉄塔において、鉄塔10の各腕金11に耐張がいし装置12を介して架線された各相4条の電線Wを張り替える場合において、張替対象の4条の電線Wとは腕金11を挟んで反対側の4条の電線Wに適用される。
【0031】
ここで、張力低減装置1を説明するのに先立って、まず各相4条の電線Wと鉄塔10の腕金11との関係を図9及び図10に基づいて説明する。
【0032】
各相4条の電線Wは、架線方向に適宜間隔をおいて配設されたスペーサ(図示せず)によって架線方向から見て正方形の頂点に位置して互いの間隔を保持するように把持されている。そして、各電線Wについては、架線方向から見て上下側を天側地側、左右側を内側外側にそれぞれ規定する。
【0033】
鉄塔10の腕金11には耐張がいし装置12が連結される一方、4条の電線Wにはそれぞれ引留クランプ13が固定されており、これらの各引留クランプ13と耐張がいし装置12が連結ヨーク金具14を介して連結されている。そして、連結ヨーク金具14は、天側の一対の電線Wをそれぞれ把握する一対の引留クランプ13にリンク及び直角クレビスCを介して連結された天側2連ヨーク141及び地側の一対の電線Wをそれぞれ把握する一対の引留クランプ13にリンク及び直角クレビスCを介して連結された地側2連ヨーク142と、これらの天地の2連ヨーク141,142に直角クレビスCを介して連結された垂直2連ヨーク143と、垂直2連ヨーク143に直角クレビスCを介して連結されたライン側2連ヨーク144とから構成され、ライン側2連ヨーク144が直角クレビスCを介して耐張がいし装置12に連結されている。
【0034】
一方、張力低減装置1は、図1及び図2に示すように、前述した連結ヨーク金具14のライン側2連ヨーク144に各一端がUクレビスC1(図3(a)参照)を介してそれぞれ連結された一対の台付けワイヤー2と、一対の台付けワイヤー2の他端にUクレビスC1を介して連結されたアース側セミ滑車3と、牽引ワイヤー4の一端が止着されてアース側セミ滑車3との間で牽引ワイヤー4が巻回されたライン側セミ滑車3と、ライン側セミ滑車3にUクレビスC1を介して頂角部が連結された三角リンク5と、三角リンク5の各底角部にそれぞれUクレビスC1を介して連結された天側バランサー金車6及び地側バランサー金車6と、天側バランサー金車6及び地側バランサー金車6にそれぞれ巻回された一対の台付けワイヤー2と、4条の電線Wにそれぞれ取り付けられたカムアロング7と、連結ヨーク金具14の天側2連ヨーク141と引留クランプ13との間にそれぞれ連結された連結金具8とから構成され、天側の一対の電線Wをそれぞれ把握する一対のカムアロング7にUクレビスC1を介して天側バランサー金車6に巻回された台付けワイヤー2の各端が連結されるとともに、地側の一対の電線Wをそれぞれ把握する一対のカムアロング7にUクレビスC1を介して地側バランサー金車6に巻回された台付けワイヤー2の各端が連結されている。
【0035】
ここで、セミ滑車3は、図6に示すように、それぞれ複数個のシーブ(実施例においては、4条の電線Wの合計張力160kNに対応して4個のシーブ)31を回転自在に支持するとともに、シャックル32を設けて形成されており、アース側セミ滑車3のシャックル32に一対の台付けワイヤー2の各端を連結するUクレビスC1が連結され、ライン側セミ滑車3のシャックル32に三角リンク5の頂角部に連結されたUクレビスC1が連結されている。そして、アース側セミ滑車3とライン側セミ滑車3との間に巻回された牽引ワイヤー4は、一端がライン側セミ滑車3に止着された後、順にアース側セミ滑車3のシーブ31、ライン側セミ滑車3のシーブ31の順に巻回され、腕金11及び鉄塔10を経て他端が地上側に設置されたウインチ(図示せず)に止着されている。
【0036】
また、バランサー金車6は、図7に示すように、台付けワイヤー2を巻回するシーブ61を回転自在に支持するとともに、三角リンク5とUクレビスC1を介して連結可能な連結部62を設けて形成されている。
【0037】
さらに、連結金具8は、図8に示すように、リンク81をその前後において一対のリンクプレート82で挟み込み、ピン83を介して順に連結してチェーン状に形成され、前後一対のリンクプレート82間にはリンク81に代えて張力計84が配設されている。この連結金具8の長さは、電線Wの張力を2条断線相当の大きさに低減させることができるように予め必要な長さに設定されている。すなわち、設定長さの連結金具8を配設することによって電線Wの弛度を大きくし、電線張力を必要な大きさに低減させる。
【0038】
次に、このように構成された張力低減装置1を利用して電線張替に際して、張替対象の電線と腕金11を挟んで反対側の電線Wの張力を低減させる要領について説明する。
【0039】
まず、引留クランプ13を基準としてライン側の電線Wに、4個のカムアロング7、それぞれ台付けワイヤー2を巻回した一対のバランサー金車6、三角リンク5、一対のセミ滑車3、一対の台付けワイヤー2を図示しない懸吊金具を介して配置する。
【0040】
次いで、連結ヨーク金具14のライン側2連ヨーク144にそれぞれUクレビスC1を介して一対の台付けワイヤー2の一端を連結する一方、これら一対の台付けワイヤー2の他端をUクレビスC1で連結するとともに、そのUクレビスC1をアース側セミ滑車3のシャックル32に連結し、一対の台付けワイヤー2を介して連結ヨーク金具14とアース側セミ滑車3を連結する。また、基端を地上に設置したウインチ(図示せず)に止着した牽引ワイヤー4を繰り出し、鉄塔10及び腕金11を経てライン側セミ滑車3のシーブ31及びアース側セミ滑車3のシーブ31の順に巻き回し、先端をライン側セミ滑車3に止着する(図2参照)。
【0041】
さらに、ライン側セミ滑車3のシャックル32にUクレビスC1を介して三角リンク5の頂角部を連結するとともに、三角リンク5の各底角部にそれぞれUクレビスC1を介してバランサー金車6の連結部62を連結する。その後、4条の電線Wにそれぞれカムアロング7を取り付ける一方、天側の一対の電線Wをそれぞれ把握するカムアロング7に、天側バランサー金車6に巻回した台付けワイヤー2の各端をUクレビスC1を介してそれぞれ連結するとともに、地側の一対の電線Wをそれぞれ把握するカムアロング7に、地側バランサー金車6に巻回した台付けワイヤー2の各端をUクレビスC1を介してそれぞれ連結する(図2参照)。
【0042】
このようにして、4条の電線Wが、カムアロング7、台付けワイヤー2、バランサー金車6、三角リンク5、ライン側セミ金車3、アース側セミ金車3、セミ滑車3間に巻回された牽引ワイヤー4、台付けワイヤー2を介して連結ヨーク金具14に連結されたならば、電線Wに対して懸吊金具によるセミ滑車3等の懸吊を解除した後、地上に設置したウインチを駆動し、ライン側セミ金車3及びアース側セミ金車3間に巻回された牽引ワイヤー4の巻き取りを開始する(図3参照)。
【0043】
牽引ワイヤー4を巻き取ることにより、アース側セミ滑車3に対してライン側セミ滑車3を徐々に接近させる。すなわち、ライン側セミ金車3に三角リンク5、バランサー金車6及び台付けワイヤー2を介してカムアロング7が連結されていることにより、各カムアロング7がそれぞれ把握する4条の電線Wを一括して鉄塔10の腕金11側に引き寄せ、引留クランプ13との間の電線Wを弛ませる(図4参照)。
【0044】
この際、一対のセミ滑車3により、電線Wを牽引する牽引ワイヤー4の張力は、電線張力の1/9に減少し、小さな能力のウインチで作業することができる。すなわち、延線境鉄塔が山岳地等にあって、ヘリコプターを利用してウインチを輸送しなければならない場合において、ヘリコプターの輸送能力に対応して重量の小さなウインチで作業することが可能となる。具体的には、ヘリコプターで輸送できる20kN(160kN/9≒18kN)の牽引能力のウインチを利用することができる。
【0045】
しかも、4条の電線Wのうち、天側の内外2条の電線Wを天側バランサー金車6及び台付けワイヤー2を介して支持するとともに、地側の内外2条の電線Wを地側バランサー金車6及び台付けワイヤー2を介して支持し、さらに、天側バランサー金車6及び地側バランサー金車6を三角リンク5を介して連結し、三角リンク5をライン側セミ滑車3を介して牽引することにより、4条の電線Wを一括して引き寄せても、4条の電線Wのバランスが崩れることはない。したがって、4条の電線Wを互いに間隔をおいて把持するスペーサが傾斜することを防止でき、スペーサの傾斜により把持部が電線Wを損傷させることはない。
【0046】
カムアロング7と引留クランプ13間の電線Wを弛ませたならば、各引留クランプ13のリンクと天地の2連ヨーク141,142の直角クレビスCとの連結を解除した後、各引留クランプ13のリンクに各連結金具8のリンクプレート82をそれぞれ連結するとともに、各連結金具8のリンク81を天地の2連ヨーク141,142の直角クレビスCにそれぞれ連結する(図5参照)。
【0047】
連結金具8を連結したならば、再びウインチを駆動して牽引ワイヤー4を繰り出し、アース側セミ滑車3に対してライン側セミ滑車3、すなわち、4条の電線Wを把握する4個のカムアロング7を一括して鉄塔10の腕金11から離隔させ、カムアロング7に把握された電線W及び引留クランプ13に連結された連結金具8の弛みを解消する方向に送り出す。
【0048】
ウインチを駆動して牽引ワイヤー4を繰り出すことにより、電線W及び連結金具8が緊張状態となれば、連結金具8に荷重が移り、電線Wの張力を支持することができる。この状態は、連結金具8に配設された張力計84によって把握することがきる。
【0049】
このように、径間に連結金具8を送り込むことにより、連結金具8の長さ分電線Wの弛度が大きくなり、電線Wの張力は小さくなる。すなわち、予め計算された長さの連結金具8を引留クランプ13と連結ヨーク金具14間に挿入することで、電線Wの弛度を大きくして電線張力を2条断線相当まで低減させ、低減させた張力を鉄塔10の腕金11に支持させることができる。
【0050】
この結果、4条の電線Wを一括してバランスさせながら緩線させて必要とする張力まで滑らかに低減させることができ、従来工法に比較して、経済性及び工期短縮に優れたものとなる。すなわち、従来の既設電線による腕金仮留工法と比較して、準備作業に伴う充電停止日数が不要となり、工期を大幅に短縮することができるとともに、コストを大幅に削減することができる。一方、支線による引留工法と比較して、支線が不要となることから、用地確保及び補償費が不要となり、コストを大幅に削減することができる他、森林伐採を可及的に小さくすることができる。
【0051】
また、一定期間にわたって仮設状態となるが、引留クランプ13と連結ヨーク金具14間に強度の大きな連結金具8を配設したことにより、電線Wの弛度を確保することができ、作業期間の信頼性を確保することができる。さらに、耐張がいし装置12に常に張力をかけた状態で作業することにより、耐張がいし装置12を地上に降ろすことなく作業することができる。
【0052】
このようにして、張替対象とは反対側の4条の電線の張力を設定した値まで低減させたならば、詳細には図示しないが、吊金車等を利用した従来公知の張替工法を利用して張替対象の4条の電線Wを同時に撤去した後、順次張り替えればよい。
【0053】
なお、前述した実施形態においては、4条の電線Wの合計張力が160kNであることに対応して4個のシーブ31を備えたセミ滑車3を用いる場合を例示したが、4条の電線Wの合計張力が120kNである場合には、3個のシーブを備えたセミ滑車3を利用することができる。この場合、同様にライン側セミ滑車3及びアース側セミ滑車3間に巻き回した牽引ワイヤー4に作用する張力は、1/7となる。
【符号の説明】
【0054】
1 電線張力低減装置
2 台付けワイヤー
3 セミ滑車
4 牽引ワイヤー
5 三角リンク
6 バランサー金車
7 カムアロング
8 連結金具
10 鉄塔
11 腕金
12 耐張がいし装置
13 引留クランプ
14 連結ヨーク金具
W 電線
【技術分野】
【0001】
この発明は、送電線の張替に際して張替送電線とは反対側の送電線の張力を低減させる装置及び工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、4導体送電線は超高圧線路に用いられているが、自然等、条件の厳しい所等では電線の傷みも進み、線路によっては張替が必要となっている。電線張替工事における延線区間の選定に当たっては、建設当時の延線境に合わせることが理想であるが、建設後の宅地化進展等の用地事情の変化に伴い、建設当時のエンジン場やドラム場が使用できない場合は、電線引留を考慮していない鉄塔を延線境鉄塔としなければならない。
【0003】
このような電線引留を考慮していない鉄塔は、電気設備技術基準第124条第2項に規定するように、1相、例えば、4条の電線のうちの2条が断線した場合の不平均張力に耐える設計としている。
【0004】
具体的には、最も標準的な垂直配列2回線鉄塔の場合、図11に模式的に示すように、各回線における上、中、下の相のうちの1相において、鉄塔10の腕金11に耐張がいし装置12を介して作用する上流側の4条の電線Wによる張力をTa、下流側の4条の電線Wによる張力をTbとすると、平常時においては、Ta≒Tbである(図11(a)参照)が、4条の電線Wのうちの2条が切断し、下流側の張力Tb’=1/2・Tbとなった場合に、上流側の張力Tc=Ta−Tb’に鉄塔10が耐えるように設計されている(図11(b)参照)。
【0005】
したがって、電線引留を考慮していない鉄塔を延線境鉄塔として電線張替工事を施工する際には、4条の既設電線を同時に外すことができず、電線張替時の強度検討においては、このような条件を満足する工法で施工する必要がある。このような条件を満足する工法として、既設電線による腕金仮留工法や支線による引留工法が採用されている。
【0006】
既設電線による腕金仮留工法は、図12(a)に模式的に示すように、例えば、下流側の1相の4条の電線Wを張り替えることを想定すると、腕金11に引留金具100を固定するとともに、引留金具100に張替対象の2条の電線Wを移線し、下流側の張力Tb”≒1/2・Tbを分担させ、上流側の張力Tc≒Ta−Tb”を支持しようとするものである。
【0007】
一方、支線による引留工法は、図12(b)に模式的に示すように、腕金11に引留金具100を固定するとともに、張替電線側の地上に引き留めた支線101を引留金具100に連結し、2条分の張力Tb”≒1/2・Tbを支線101を介して分担させ、上流側の張力Tc≒Ta−Tb”を支持しようとするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前者の工法においては、2条分の常時張力(気温15〜20℃、風速0〜15m/sの緊線時の1条当たりの張力で、最大張力の60%程度を基準としている。すなわち、最大張力50kNの場合、その60%の2条分で約60kN程度)を支持する引留金具を製作するとともに、腕金に取り付けなければならず、金具取付作業及び電線引留作業に数日程度の充電停止日数が必要となる。また、吊金車工法の適用が必要な重要横断箇所において、既設電線を母線として利用できないため、母線となるケブラーロープ等を張替区間に延線する必要があり、充電停止日数がさらに増加する。
【0009】
一方、後者の工法は、工事面において、2条分の常時張力(約60kN程度)を支持する引留金具を製作するとともに、腕金に取り付けなければならず、金具取付作業及び電線引留作業に伴う数日程度の充電停止日数が必要となる。また、支線引留用コンクリートブロックを設置するために、多大な労力を必要とする。さらに、支線引留により鉄塔の腕金に作用する垂直荷重が増加し、腕金の強度不足を補う補強が必要となる。また、用地面においては、支線引留用コンクリートブロックを設置するために広範囲の工事用地を借用するとともに、森林の伐採が必要となる。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、鉄塔の設計条件を満足した状態で張替対象の4条の電線を同時に撤去して張替することができるように、電線張替に際して張替電線とは反対側の電線を4条同時に緩線して2条断線相当まで張力を低減させることのできる電線張力低減装置及び電線張力低減工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電線張力低減装置は、鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して4条の電線が架線され、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の張力を2条断線相当まで低減させる電線張力低減装置であって、連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーを介して連結されたアース側セミ滑車と、アース側セミ滑車との間に牽引ワイヤーが巻回されてその一端が止着されたライン側セミ滑車と、ライン側セミ滑車に三角リンクを介してそれぞれ連結された天側バランサー金車及び地側バランサー金車と、4条の電線にそれぞれ取り付けられて、天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤー及び地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーにそれぞれ対応して連結されたカムアロングと、各引留クランプ及び連結ヨーク金具間に連結された連結金具とから構成され、地上に設置した牽引ワイヤーのウインチを駆動して連結金具を径間に送り込んで電線の弛度を大きくすることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、4条の電線にそれぞれ取り付けられカムアロングと連結ヨーク金具との間を、一対の台付けワイヤーを介して連結されたアース側セミ滑車、アース側セミ滑車との間に牽引ワイヤーが巻回されてその一端が止着されたライン側セミ滑車、ライン側セミ滑車に三角リンクを介してそれぞれ連結された天側バランサー金車及び地側バランサー金車、天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤー及び地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーによって連結する。これにより、地上に設置したウインチを駆動し、牽引ワイヤーを腕金及び鉄塔を経由して巻き取ることで、カムアロングを介して4条の電線を一括して引き寄せ、カムアロング及び引留クランプ間の電線を弛ませて、引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除することができるとともに、その間に連結金具を連結することができる。次いで、ウインチを駆動して牽引ワイヤーを繰り出せば、4条の電線を一括して径間に送り込んで連結金具に電線張力を作用させることができる。
【0013】
これにより、径間に送り込まれた連結金具の長さ分電線の弛度が大きくなり、電線張力を低減させることができる。この場合、連結金具の長さは、2条の電線断線相当まで張力を低減させることができるように、電線の種類や径間等に基づいて予め設定されている。
【0014】
この結果、4条の電線を一括してバランスさせながら緩線して滑らかに張力を低減させることができることにより、従来工法に比較して、経済性及び工期短縮に優れたものとなる。すなわち、従来の既設電線による腕金仮留工法と比較して、準備作業に伴う充電停止日数が不要となり、工期を大幅に短縮することができるとともに、コストを大幅に削減することができる。また、支線による引留工法と比較して、支線が不要となることから、用地確保及び補償費が不要となり、コストを大幅に削減することができるとともに、森林伐採を可及的に小さくすることができる。
【0015】
本発明において、前記連結金具が、複数個のリンク及び各リンクの前後を挟み込むとともに、ピンを介して互いに回転自在に連結された複数対のリンクプレートから形成することが好ましい。これにより、4条の電線の張力が予め計算された2条断線相当まで低減するように、リンク及びリンクプレート対の数を調整して電線を必要な長さだけ容易に弛めることができる。
【0016】
本発明において、前記少なくとも1本の連結金具に張力計を設けることが好ましい。これにより、連結金具に電線張力が作用したこと、及び、その張力を把握することができる。
【0017】
本発明において、前記セミ滑車がそれぞれ複数個のシーブを回転自在に支持することが好ましい。これにより、ライン側セミ滑車及びアース側セミ滑車間に巻回された牽引ワイヤーの張力を小さくすることができ、小さな能力のウインチで作業することが可能となる。すなわち、延線境鉄塔が山岳地等にあって、ヘリコプターを利用してウインチを輸送しなければならない場合において、ヘリコプターの輸送能力に対応して重量の小さなウインチで作業することが可能となる。
【0018】
本発明の電線張力低減工法は、鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して架線された4条の電線を張り替える際、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の引留クランプと連結ヨーク金具間の張力を弛める工程と、予め計算された2条断線相当分の張力となる長さの弛みを保持する金具を引留クランプと連結ヨーク金具間に送り込む工程を備えることを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線を鉄塔側に引き寄せ、引留クランプと連結ヨーク金具間の電線の張力を弛める。次いで、引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除するとともに、各引留クランプと連結ヨーク金具との間に、予め計算された2条断線相当分の張力となる長さの弛みを保持する金具を連結し、4条の電線を径間に送り込み、金具に電線の張力を作用させる。
【0020】
これにより、径間に送り込まれた金具の長さ分4条の電線の弛度が大きくなり、電線張力を低減させることができる。
【0021】
この結果、4条の電線を緩線して滑らかに張力を低減させることができることにより、従来工法に比較して、経済性及び工期短縮に優れたものとなる。すなわち、従来の既設電線による腕金仮留工法と比較して、準備作業に伴う充電停止日数が不要となり、工期を大幅に短縮することができるとともに、コストを大きく削減することができる。また、支線による引留工法と比較して、支線が不要となることから、用地確保及び補償費が不要となり、コストを大幅に削減することができる他、森林伐採を可及的に小さくすることができる。
【0022】
本発明の電線張力低減工法は、鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して4条の電線が架線され、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の張力を2条断線相当まで低減させる電線張力低減工法であって、連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーの一端をそれぞれ連結し、各台付けワイヤーの他端をアース側セミ滑車に連結した後、アース側セミ滑車とライン側セミ滑車間に牽引ワイヤーを巻回するとともにその一端をライン側セミ滑車に止着し、次いで、ライン側セミ滑車に三角リンクを連結するとともに、三角リンクに天側バランサー金車及び地側バランサー金車をそれぞれ連結し、さらに、4条の電線にそれぞれカムアロングを取り付ける一方、天側の一対のカムアロングに天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーを連結するとともに、地側の一対のカムアロングに地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーを連結した後、牽引ワイヤーを腕金及び鉄塔を経て地上に設置したウインチを介して巻き取り、カムアロングと引留クランプとの間の4条の電線を一括して弛ませた後、引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除するとともに、各引留クランプと連結ヨーク金具との間に連結金具をそれぞれ連結し、次いで、ウインチを介して牽引ワイヤーを繰り出し、4条の電線を一括して径間に送り込んで連結金具に張力を作用させることを特徴とするものである。
【0023】
本発明によれば、電線の引留クランプと耐張がいし装置を連結する連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーの一端をそれぞれ連結し、一対の台付けワイヤーの他端をアース側セミ滑車に連結した後、アース側セミ滑車及びライン側セミ滑車間に牽引ワイヤーを巻き回し、一端をライン側セミ金車に止着する。次いで、ライン側のセミ滑車に三角リンクを連結するとともに、三角リンクにそれぞれ台付けワイヤーを巻回した天側バランサー金車及び地側バランサー金車を連結する。さらに、4条の電線にそれぞれカムアロングを取り付ける一方、天側の一対の電線に取り付けたカムアロングに天側バランサー金車に巻回した台付けワイヤーを連結するとともに、地側の一対の電線に取り付けたカムアロングに地側バランサー金車に巻回した台付けワイヤーを連結する。次いで、地上に設置したウインチを駆動して牽引ワイヤーを腕金及び鉄塔を経て巻き取り、ライン側セミ滑車、すなわち、カムアロングを介して4条の電線を一括して引き寄せ、カムアロングと引留クランプとの間の4条の電線を弛ませた後、各引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除するとともに、各引留クランプと連結ヨーク金具との間に連結金具を連結し、ウインチを駆動して牽引ワイヤーを繰り出し、ライン側セミ滑車、すなわち、カムアロングを介して4条の電線を一括して径間に送り込んで連結金具に張力を作用させる。
【0024】
これにより、径間に送り込まれた連結金具の長さ分電線の弛度が大きくなり、電線張力を低減させることができる。この場合、連結金具の長さは、2条の電線断線相当まで張力を低減させることができるように、電線の種類や径間等に基づいて予め設定されている。
【0025】
この結果、4条の電線を一括してバランスさせながら緩線して滑らかに張力を低減させることができることにより、従来工法に比較して、経済性及び工期短縮に優れたものとなる。すなわち、従来の既設電線による腕金仮留工法と比較して、準備作業に伴う充電停止日数が不要となり、工期を大幅に短縮することができるとともに、コストを大きく削減することができる。また、支線による引留工法と比較して、支線が不要となることから、用地確保及び補償費が不要となり、コストを大幅に削減することができる他、森林伐採を可及的に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電線張替に際して張替電線とは反対側の電線を4条同時に緩線して2条断線相当まで張力を低減させることができる。これにより、鉄塔の設計条件を満足した状態で張替対象の4条の電線を同時に撤去して張替することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の電線に架設した電線張力低減装置の一実施形態を一部省略して示す側面図である。
【図2】図1の電線張力低減装置を電線に架設する工程を説明する側面図である。
【図3】図1の電線張力低減装置を電線に架設する工程を図2に続いて示す平面図及び側面図である。
【図4】図1の電線張力低減装置を電線に架設する工程を図3に続いて示す側面図である。
【図5】図1の電線張力低減装置を電線に架設する工程を図4に続いて示す側面図である。
【図6】電線張力低減装置を構成するセミ滑車の正面図及び側面図である。
【図7】電線張力低減装置を構成するバランサー金車の正面図及び側面図である。
【図8】電線張力低減装置を構成する連結金具の斜視図である。
【図9】鉄塔の腕金に設けた耐張がいし装置、連結ヨーク金具、電線の引留クランプの関係を示す平面図である。
【図10】図9の耐張がいし装置、連結ヨーク金具、電線の引留クランプの関係を示す側面図である。
【図11】鉄塔の腕金に耐張がいし装置を介して架線された上流側の電線張力と下流側の電線張力との平常時の関係及び4条の電線のうちの2条切断時の関係を模式的に示す説明図である。
【図12】鉄塔の腕金に耐張がいし装置を介して架線された電線のうち下流側の電線を張り替える際に従来工法による張力低減要領を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1には、本発明の張力低減装置1の一実施形態が示されている。
【0030】
この張力低減装置1は、例えば、垂直配列2回線鉄塔において、鉄塔10の各腕金11に耐張がいし装置12を介して架線された各相4条の電線Wを張り替える場合において、張替対象の4条の電線Wとは腕金11を挟んで反対側の4条の電線Wに適用される。
【0031】
ここで、張力低減装置1を説明するのに先立って、まず各相4条の電線Wと鉄塔10の腕金11との関係を図9及び図10に基づいて説明する。
【0032】
各相4条の電線Wは、架線方向に適宜間隔をおいて配設されたスペーサ(図示せず)によって架線方向から見て正方形の頂点に位置して互いの間隔を保持するように把持されている。そして、各電線Wについては、架線方向から見て上下側を天側地側、左右側を内側外側にそれぞれ規定する。
【0033】
鉄塔10の腕金11には耐張がいし装置12が連結される一方、4条の電線Wにはそれぞれ引留クランプ13が固定されており、これらの各引留クランプ13と耐張がいし装置12が連結ヨーク金具14を介して連結されている。そして、連結ヨーク金具14は、天側の一対の電線Wをそれぞれ把握する一対の引留クランプ13にリンク及び直角クレビスCを介して連結された天側2連ヨーク141及び地側の一対の電線Wをそれぞれ把握する一対の引留クランプ13にリンク及び直角クレビスCを介して連結された地側2連ヨーク142と、これらの天地の2連ヨーク141,142に直角クレビスCを介して連結された垂直2連ヨーク143と、垂直2連ヨーク143に直角クレビスCを介して連結されたライン側2連ヨーク144とから構成され、ライン側2連ヨーク144が直角クレビスCを介して耐張がいし装置12に連結されている。
【0034】
一方、張力低減装置1は、図1及び図2に示すように、前述した連結ヨーク金具14のライン側2連ヨーク144に各一端がUクレビスC1(図3(a)参照)を介してそれぞれ連結された一対の台付けワイヤー2と、一対の台付けワイヤー2の他端にUクレビスC1を介して連結されたアース側セミ滑車3と、牽引ワイヤー4の一端が止着されてアース側セミ滑車3との間で牽引ワイヤー4が巻回されたライン側セミ滑車3と、ライン側セミ滑車3にUクレビスC1を介して頂角部が連結された三角リンク5と、三角リンク5の各底角部にそれぞれUクレビスC1を介して連結された天側バランサー金車6及び地側バランサー金車6と、天側バランサー金車6及び地側バランサー金車6にそれぞれ巻回された一対の台付けワイヤー2と、4条の電線Wにそれぞれ取り付けられたカムアロング7と、連結ヨーク金具14の天側2連ヨーク141と引留クランプ13との間にそれぞれ連結された連結金具8とから構成され、天側の一対の電線Wをそれぞれ把握する一対のカムアロング7にUクレビスC1を介して天側バランサー金車6に巻回された台付けワイヤー2の各端が連結されるとともに、地側の一対の電線Wをそれぞれ把握する一対のカムアロング7にUクレビスC1を介して地側バランサー金車6に巻回された台付けワイヤー2の各端が連結されている。
【0035】
ここで、セミ滑車3は、図6に示すように、それぞれ複数個のシーブ(実施例においては、4条の電線Wの合計張力160kNに対応して4個のシーブ)31を回転自在に支持するとともに、シャックル32を設けて形成されており、アース側セミ滑車3のシャックル32に一対の台付けワイヤー2の各端を連結するUクレビスC1が連結され、ライン側セミ滑車3のシャックル32に三角リンク5の頂角部に連結されたUクレビスC1が連結されている。そして、アース側セミ滑車3とライン側セミ滑車3との間に巻回された牽引ワイヤー4は、一端がライン側セミ滑車3に止着された後、順にアース側セミ滑車3のシーブ31、ライン側セミ滑車3のシーブ31の順に巻回され、腕金11及び鉄塔10を経て他端が地上側に設置されたウインチ(図示せず)に止着されている。
【0036】
また、バランサー金車6は、図7に示すように、台付けワイヤー2を巻回するシーブ61を回転自在に支持するとともに、三角リンク5とUクレビスC1を介して連結可能な連結部62を設けて形成されている。
【0037】
さらに、連結金具8は、図8に示すように、リンク81をその前後において一対のリンクプレート82で挟み込み、ピン83を介して順に連結してチェーン状に形成され、前後一対のリンクプレート82間にはリンク81に代えて張力計84が配設されている。この連結金具8の長さは、電線Wの張力を2条断線相当の大きさに低減させることができるように予め必要な長さに設定されている。すなわち、設定長さの連結金具8を配設することによって電線Wの弛度を大きくし、電線張力を必要な大きさに低減させる。
【0038】
次に、このように構成された張力低減装置1を利用して電線張替に際して、張替対象の電線と腕金11を挟んで反対側の電線Wの張力を低減させる要領について説明する。
【0039】
まず、引留クランプ13を基準としてライン側の電線Wに、4個のカムアロング7、それぞれ台付けワイヤー2を巻回した一対のバランサー金車6、三角リンク5、一対のセミ滑車3、一対の台付けワイヤー2を図示しない懸吊金具を介して配置する。
【0040】
次いで、連結ヨーク金具14のライン側2連ヨーク144にそれぞれUクレビスC1を介して一対の台付けワイヤー2の一端を連結する一方、これら一対の台付けワイヤー2の他端をUクレビスC1で連結するとともに、そのUクレビスC1をアース側セミ滑車3のシャックル32に連結し、一対の台付けワイヤー2を介して連結ヨーク金具14とアース側セミ滑車3を連結する。また、基端を地上に設置したウインチ(図示せず)に止着した牽引ワイヤー4を繰り出し、鉄塔10及び腕金11を経てライン側セミ滑車3のシーブ31及びアース側セミ滑車3のシーブ31の順に巻き回し、先端をライン側セミ滑車3に止着する(図2参照)。
【0041】
さらに、ライン側セミ滑車3のシャックル32にUクレビスC1を介して三角リンク5の頂角部を連結するとともに、三角リンク5の各底角部にそれぞれUクレビスC1を介してバランサー金車6の連結部62を連結する。その後、4条の電線Wにそれぞれカムアロング7を取り付ける一方、天側の一対の電線Wをそれぞれ把握するカムアロング7に、天側バランサー金車6に巻回した台付けワイヤー2の各端をUクレビスC1を介してそれぞれ連結するとともに、地側の一対の電線Wをそれぞれ把握するカムアロング7に、地側バランサー金車6に巻回した台付けワイヤー2の各端をUクレビスC1を介してそれぞれ連結する(図2参照)。
【0042】
このようにして、4条の電線Wが、カムアロング7、台付けワイヤー2、バランサー金車6、三角リンク5、ライン側セミ金車3、アース側セミ金車3、セミ滑車3間に巻回された牽引ワイヤー4、台付けワイヤー2を介して連結ヨーク金具14に連結されたならば、電線Wに対して懸吊金具によるセミ滑車3等の懸吊を解除した後、地上に設置したウインチを駆動し、ライン側セミ金車3及びアース側セミ金車3間に巻回された牽引ワイヤー4の巻き取りを開始する(図3参照)。
【0043】
牽引ワイヤー4を巻き取ることにより、アース側セミ滑車3に対してライン側セミ滑車3を徐々に接近させる。すなわち、ライン側セミ金車3に三角リンク5、バランサー金車6及び台付けワイヤー2を介してカムアロング7が連結されていることにより、各カムアロング7がそれぞれ把握する4条の電線Wを一括して鉄塔10の腕金11側に引き寄せ、引留クランプ13との間の電線Wを弛ませる(図4参照)。
【0044】
この際、一対のセミ滑車3により、電線Wを牽引する牽引ワイヤー4の張力は、電線張力の1/9に減少し、小さな能力のウインチで作業することができる。すなわち、延線境鉄塔が山岳地等にあって、ヘリコプターを利用してウインチを輸送しなければならない場合において、ヘリコプターの輸送能力に対応して重量の小さなウインチで作業することが可能となる。具体的には、ヘリコプターで輸送できる20kN(160kN/9≒18kN)の牽引能力のウインチを利用することができる。
【0045】
しかも、4条の電線Wのうち、天側の内外2条の電線Wを天側バランサー金車6及び台付けワイヤー2を介して支持するとともに、地側の内外2条の電線Wを地側バランサー金車6及び台付けワイヤー2を介して支持し、さらに、天側バランサー金車6及び地側バランサー金車6を三角リンク5を介して連結し、三角リンク5をライン側セミ滑車3を介して牽引することにより、4条の電線Wを一括して引き寄せても、4条の電線Wのバランスが崩れることはない。したがって、4条の電線Wを互いに間隔をおいて把持するスペーサが傾斜することを防止でき、スペーサの傾斜により把持部が電線Wを損傷させることはない。
【0046】
カムアロング7と引留クランプ13間の電線Wを弛ませたならば、各引留クランプ13のリンクと天地の2連ヨーク141,142の直角クレビスCとの連結を解除した後、各引留クランプ13のリンクに各連結金具8のリンクプレート82をそれぞれ連結するとともに、各連結金具8のリンク81を天地の2連ヨーク141,142の直角クレビスCにそれぞれ連結する(図5参照)。
【0047】
連結金具8を連結したならば、再びウインチを駆動して牽引ワイヤー4を繰り出し、アース側セミ滑車3に対してライン側セミ滑車3、すなわち、4条の電線Wを把握する4個のカムアロング7を一括して鉄塔10の腕金11から離隔させ、カムアロング7に把握された電線W及び引留クランプ13に連結された連結金具8の弛みを解消する方向に送り出す。
【0048】
ウインチを駆動して牽引ワイヤー4を繰り出すことにより、電線W及び連結金具8が緊張状態となれば、連結金具8に荷重が移り、電線Wの張力を支持することができる。この状態は、連結金具8に配設された張力計84によって把握することがきる。
【0049】
このように、径間に連結金具8を送り込むことにより、連結金具8の長さ分電線Wの弛度が大きくなり、電線Wの張力は小さくなる。すなわち、予め計算された長さの連結金具8を引留クランプ13と連結ヨーク金具14間に挿入することで、電線Wの弛度を大きくして電線張力を2条断線相当まで低減させ、低減させた張力を鉄塔10の腕金11に支持させることができる。
【0050】
この結果、4条の電線Wを一括してバランスさせながら緩線させて必要とする張力まで滑らかに低減させることができ、従来工法に比較して、経済性及び工期短縮に優れたものとなる。すなわち、従来の既設電線による腕金仮留工法と比較して、準備作業に伴う充電停止日数が不要となり、工期を大幅に短縮することができるとともに、コストを大幅に削減することができる。一方、支線による引留工法と比較して、支線が不要となることから、用地確保及び補償費が不要となり、コストを大幅に削減することができる他、森林伐採を可及的に小さくすることができる。
【0051】
また、一定期間にわたって仮設状態となるが、引留クランプ13と連結ヨーク金具14間に強度の大きな連結金具8を配設したことにより、電線Wの弛度を確保することができ、作業期間の信頼性を確保することができる。さらに、耐張がいし装置12に常に張力をかけた状態で作業することにより、耐張がいし装置12を地上に降ろすことなく作業することができる。
【0052】
このようにして、張替対象とは反対側の4条の電線の張力を設定した値まで低減させたならば、詳細には図示しないが、吊金車等を利用した従来公知の張替工法を利用して張替対象の4条の電線Wを同時に撤去した後、順次張り替えればよい。
【0053】
なお、前述した実施形態においては、4条の電線Wの合計張力が160kNであることに対応して4個のシーブ31を備えたセミ滑車3を用いる場合を例示したが、4条の電線Wの合計張力が120kNである場合には、3個のシーブを備えたセミ滑車3を利用することができる。この場合、同様にライン側セミ滑車3及びアース側セミ滑車3間に巻き回した牽引ワイヤー4に作用する張力は、1/7となる。
【符号の説明】
【0054】
1 電線張力低減装置
2 台付けワイヤー
3 セミ滑車
4 牽引ワイヤー
5 三角リンク
6 バランサー金車
7 カムアロング
8 連結金具
10 鉄塔
11 腕金
12 耐張がいし装置
13 引留クランプ
14 連結ヨーク金具
W 電線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して4条の電線が架線され、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の張力を2条断線相当まで低減させる電線張力低減装置であって、連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーを介して連結されたアース側セミ滑車と、アース側セミ滑車との間に牽引ワイヤーが巻回されてその一端が止着されたライン側セミ滑車と、ライン側セミ滑車に三角リンクを介してそれぞれ連結された天側バランサー金車及び地側バランサー金車と、4条の電線にそれぞれ取り付けられて、天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤー及び地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーにそれぞれ対応して連結されたカムアロングと、各引留クランプ及び連結ヨーク金具間に連結された連結金具とから構成され、地上に設置した牽引ワイヤーのウインチを駆動して連結金具を径間に送り込んで電線の弛度を大きくすることを特徴とする電線張力低減装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電線張力低減装置において、前記連結金具が、複数個のリンク及び各リンクの前後を挟み込むとともに、ピンを介して互いに回転自在に連結された複数対のリンクプレートから形成することを特徴とする電線張力低減装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電線張力低減装置において、前記少なくとも1本の連結金具に張力計を設けることを特徴とする電線張力低減装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の電線張力低減装置において、前記セミ滑車がそれぞれ複数個のシーブを回転自在に支持することを特徴とする電線張力低減装置。
【請求項5】
鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して架線された4条の電線を張り替える際、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の引留クランプと連結ヨーク金具間の張力を弛める工程と、予め計算された2条断線相当分の張力となる長さの弛みを保持する金具を引留クランプと連結ヨーク金具間に送り込む工程を備えることを特徴とする電線張力低減工法。
【請求項6】
鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して4条の電線が架線され、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の張力を2条断線相当まで低減させる電線張力低減工法であって、連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーの一端をそれぞれ連結し、各台付けワイヤーの他端をアース側セミ滑車に連結した後、アース側セミ滑車とライン側セミ滑車間に牽引ワイヤーを巻回するとともにその一端をライン側セミ滑車に止着し、次いで、ライン側セミ滑車に三角リンクを連結するとともに、三角リンクに天側バランサー金車及び地側バランサー金車をそれぞれ連結し、さらに、4条の電線にそれぞれカムアロングを取り付ける一方、天側の一対のカムアロングに天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーを連結するとともに、地側の一対のカムアロングに地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーを連結した後、牽引ワイヤーを腕金及び鉄塔を経て地上に設置したウインチを介して巻き取り、カムアロングと引留クランプとの間の4条の電線を一括して弛ませた後、引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除するとともに、各引留クランプと連結ヨーク金具との間に連結金具をそれぞれ連結し、次いで、ウインチを介して牽引ワイヤーを繰り出し、4条の電線を一括して径間に送り込んで連結金具に張力を作用させることを特徴とする電線張力低減工法。
【請求項1】
鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して4条の電線が架線され、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の張力を2条断線相当まで低減させる電線張力低減装置であって、連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーを介して連結されたアース側セミ滑車と、アース側セミ滑車との間に牽引ワイヤーが巻回されてその一端が止着されたライン側セミ滑車と、ライン側セミ滑車に三角リンクを介してそれぞれ連結された天側バランサー金車及び地側バランサー金車と、4条の電線にそれぞれ取り付けられて、天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤー及び地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーにそれぞれ対応して連結されたカムアロングと、各引留クランプ及び連結ヨーク金具間に連結された連結金具とから構成され、地上に設置した牽引ワイヤーのウインチを駆動して連結金具を径間に送り込んで電線の弛度を大きくすることを特徴とする電線張力低減装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電線張力低減装置において、前記連結金具が、複数個のリンク及び各リンクの前後を挟み込むとともに、ピンを介して互いに回転自在に連結された複数対のリンクプレートから形成することを特徴とする電線張力低減装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電線張力低減装置において、前記少なくとも1本の連結金具に張力計を設けることを特徴とする電線張力低減装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の電線張力低減装置において、前記セミ滑車がそれぞれ複数個のシーブを回転自在に支持することを特徴とする電線張力低減装置。
【請求項5】
鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して架線された4条の電線を張り替える際、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の引留クランプと連結ヨーク金具間の張力を弛める工程と、予め計算された2条断線相当分の張力となる長さの弛みを保持する金具を引留クランプと連結ヨーク金具間に送り込む工程を備えることを特徴とする電線張力低減工法。
【請求項6】
鉄塔の各腕金に設けた耐張がいし装置に連結ヨーク金具及び引留クランプを介して4条の電線が架線され、張替対象の4条の電線と腕金を挟んで反対側の4条の電線の張力を2条断線相当まで低減させる電線張力低減工法であって、連結ヨーク金具に一対の台付けワイヤーの一端をそれぞれ連結し、各台付けワイヤーの他端をアース側セミ滑車に連結した後、アース側セミ滑車とライン側セミ滑車間に牽引ワイヤーを巻回するとともにその一端をライン側セミ滑車に止着し、次いで、ライン側セミ滑車に三角リンクを連結するとともに、三角リンクに天側バランサー金車及び地側バランサー金車をそれぞれ連結し、さらに、4条の電線にそれぞれカムアロングを取り付ける一方、天側の一対のカムアロングに天側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーを連結するとともに、地側の一対のカムアロングに地側バランサー金車に巻回された台付けワイヤーを連結した後、牽引ワイヤーを腕金及び鉄塔を経て地上に設置したウインチを介して巻き取り、カムアロングと引留クランプとの間の4条の電線を一括して弛ませた後、引留クランプと連結ヨーク金具との連結を解除するとともに、各引留クランプと連結ヨーク金具との間に連結金具をそれぞれ連結し、次いで、ウインチを介して牽引ワイヤーを繰り出し、4条の電線を一括して径間に送り込んで連結金具に張力を作用させることを特徴とする電線張力低減工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−244827(P2012−244827A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114341(P2011−114341)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(505268677)株式会社九建 (11)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(505268677)株式会社九建 (11)
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