説明

電線挿入作業補助治具

【課題】本発明の目的は、極小径のコンタクトピンへの細物電線の挿入に適した電線挿入作業補助治具及び電線挿入方法を提供することである。
【解決手段】電線挿入作業補助治具1は、電線挿入ガイド溝12が形成された電線挿入ガイド溝形成面11を有する分割体10と、電線挿入ガイド溝22が形成された電線挿入ガイド溝形成面21を有する分割体20と、分割体位置決めガイド30とを具備する。電線挿入ガイド溝形成面11及び21が合わされて分割体10及び20が結合体2を形成したときに電線挿入ガイド溝12及び22は結合体2を一方側から他方側へ貫通する電線挿入ガイド孔5を形成する。分割体位置決めガイド30は、電線挿入ガイド溝形成面11及び21が接近又は離隔するように分割体10及び20の一方を他方に対して直線的に案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトピンに電線を挿入する作業を補助する治具及びコンタクトピンに電線を挿入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状の物体に電線を挿入するための技術の例を以下に説明する。
【0003】
特許文献1は、架空送配電線の新規架設工事又は改修工事に用いられるスリーブ電線挿入ガイド具を開示している。架空送配電線の新規架設工事又は改修工事において切断電線の端末処理が行われる。すなわち、電線を工事箇所で切断することで形成される両電線端末部を、スリーブに挿入して突き合せ、圧縮器を用いてスリーブと圧着させて接続する作業が行われる。そのスリーブ電線挿入ガイド具は、軸線方向に分割された一対の分割体と、両分割体を相互対向方向に付勢する幅広のばね体とを備える。両分割体は、円錐状の開口部と、スリーブと略同一の内径及び外径を有し開口部に連通する円筒状の挿入部とを形成する。ばね体は挿入部に固着されている。両分割体間をばね体の付勢力に抗して手で広げて挿入部の端部をスリーブの端部に当接させる。その後、手を離してばね体でスリーブを挟んで挿入部とスリーブとを連接して一体化する。このようにして、スリーブの両端のそれぞれにスリーブ電線挿入ガイド具を取り付ける。両端にスリーブ電線挿入ガイド具が取り付けられたスリーブを接続しようとする両電線端末部の間に配置し、両電線端末部を対向的に前進させてスリーブに挿入する。このとき、電線端末部はスリーブ電線挿入ガイド具の円錐状開口部の内壁に沿ってスリーブへ挿入されるため、電線端末部とスリーブとの間の芯ずれが矯正される形で電線端末部がスリーブに挿入される。その後、スリーブの両端からスリーブ電線挿入ガイド具を取り外し、圧縮器により両電線端末部とスリーブとを圧着する。
【0004】
特許文献2は、電線が挿入されるべきスリーブの両端に組みつけられて電線の挿入を容易にする挿入補助具を開示している。挿入補助具は、補助具本体と、蝶番とを備える。補助具本体は、二つの縦割り部分から成る。各縦割り部分は、半円錐形部と、半円錐形部に一体に設けられた半円筒形部とを備える。蝶番は二つの縦割り部分を開閉自在に連結する。二つの縦割り部分の半円錐形部は電線の挿入を容易にするラッパ状の開口部を形成する。二つの縦割り部分の半円筒形部がスリーブの端部外周面に係合するように二つの縦割り部分を閉じ、粘着テープで半円筒形部をスリーブに固定する。スリーブに電線を挿入した後は、粘着テープを切り開いて挿入補助具をスリーブから取り外す。
【0005】
本発明者は、下記のように認識している。特許文献1に開示されたスリーブ電線挿入ガイド具においては、繰り返し使用によりばね体が変形して両分割体が形成する構造が所期の形状からずれる可能性がある。特許文献2に開示された挿入補助具においては、蝶番の遊びのために二つの縦割り部分が形成する構造の形状の精度が低い。したがって、極小径のコンタクトピンへ細物電線を挿入する作業に特許文献1のスリーブ電線挿入ガイド具や特許文献2の挿入補助治具を適用することは困難である。更に、特許文献1のスリーブ電線挿入ガイド具や特許文献2の挿入補助治具だけでは電線挿入作業を行うことはできず、電線挿入作業を行うために他の器材や工具と組み合わせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2511820号公報
【特許文献2】特開平8−250257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、極小径のコンタクトピンへの細物電線の挿入に適した電線挿入作業補助治具及び電線挿入方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明による電線挿入作業補助治具(1)は、第1電線挿入ガイド溝(12)が形成された第1電線挿入ガイド溝形成面(11)を有する第1分割体(10)と、第2電線挿入ガイド溝(22)が形成された第2電線挿入ガイド溝形成面(21)を有する第2分割体(20)と、分割体位置決めガイド(30)とを具備する。前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされて前記第1分割体及び前記第2分割体が結合体(2)を形成したときに前記第1電線挿入ガイド溝及び前記第2電線挿入ガイド溝は前記結合体を一方側(3)から他方側(4)へ貫通する電線挿入ガイド孔(5)を形成する。前記分割体位置決めガイドは、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが接近又は離隔するように前記第1分割体及び前記第2分割体の一方を他方に対して直線的に案内する。
【0010】
前記分割体位置決めガイドは、前記第1分割体及び前記第2分割体の一方に固定された2本の位置決めピン(30)である。前記2本の位置決めピンは、前記第1分割体及び前記第2分割体の他方に形成された位置決めピン配置孔(25)にそれぞれ配置される。
【0011】
前記第1電線挿入ガイド溝とは別の第1電線引き抜き溝(13)が前記第1電線挿入ガイド溝形成面に形成される。前記第2電線挿入ガイド溝とは別の第2電線引き抜き溝(23)が前記第2電線挿入ガイド溝形成面に形成される。前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされて前記第1分割体及び前記第2分割体が前記結合体を形成したときに前記第1電線引き抜き溝及び前記第2電線引き抜き溝は前記結合体を前記一方側から前記他方側へ貫通する電線引き抜き孔(6)を形成する。
【0012】
前記電線挿入作業補助治具は、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが離隔するように前記第1分割体及び前記第2分割体を付勢するばね体40を更に具備する。
【0013】
前記電線挿入作業補助治具は、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされた状態で前記第1分割体及び前記第2分割体を保持するカムクランプ(50)を更に具備する。
【0014】
本発明による電線挿入方法は、電線挿入作業補助治具(1)を用いた電線挿入方法である。前記電線挿入作業補助治具は、第1電線挿入ガイド溝(12)が形成された第1電線挿入ガイド溝形成面(11)を有する第1分割体(10)と、第2電線挿入ガイド溝(22)が形成された第2電線挿入ガイド溝形成面(21)を有する第2分割体(20)と、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが接近又は離隔するように前記第1分割体及び前記第2分割体の一方を他方に対して直線的に案内する分割体位置決めガイド(30)とを具備する。前記電線挿入方法は、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされるように前記第1分割体及び前記第2分割体で結合体(2)を形成するステップと、前記結合体を形成する前記ステップにおいて前記第1電線挿入ガイド溝及び前記第2電線挿入ガイド溝により前記結合体を一方側(3)から他方側(4)へ貫通するように形成された電線挿入ガイド孔(5)に前記一方側からコンタクトピンを挿入するステップと、前記他方側から前記電線挿入ガイド孔を介して前記コンタクトピンに電線を挿入するステップと、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面との間に隙間が形成されるように前記第1分割体及び前記第2分割体を分離するステップと、前記第1分割体及び前記第2分割体の間から前記コンタクトピンと一緒に前記電線を引き抜くステップとを具備する。
【0015】
前記第1電線挿入ガイド溝とは別の第1電線引き抜き溝(13)が前記第1電線挿入ガイド溝形成面に形成される。前記第2電線挿入ガイド溝とは別の第2電線引き抜き溝(23)が前記第2電線挿入ガイド溝形成面に形成される。前記結合体を形成する前記ステップにおいて、前記第1電線引き抜き溝及び前記第2電線引き抜き溝は前記結合体を前記一方側から前記他方側へ貫通する電線引き抜き孔(6)を形成する。前記電線挿入方法は、前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する前記ステップと前記電線を引き抜く前記ステップとの間に、前記第1分割体と前記第2分割体の間において前記電線を前記コンタクトピンと一緒に前記第1電線挿入ガイド溝及び前記第2電線挿入ガイド溝に対応する位置から前記第1電線引き抜き溝及び前記第2電線引き抜き溝に対応する位置へと移動するステップを更に具備する。
【0016】
前記電線挿入作業補助治具は、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが離隔するように前記第1分割体及び前記第2分割体を付勢するばね体(40)を更に具備する。前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する前記ステップにおいて、前記ばね体が前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する。
【0017】
前記電線挿入作業補助治具は、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされた状態で前記第1分割体及び前記第2分割体を保持するカムクランプ(50)を更に具備する。前記結合体を形成する前記ステップにおいて、前記カムクランプを操作して前記結合体を形成する。前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する前記ステップにおいて、前記カムクランプを操作して前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する。
【0018】
前記結合体を形成する前記ステップにおいて、作業者が前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされるように前記第1分割体及び前記第2分割体を互いに押し付ける。前記コンタクトピンを挿入する前記ステップ及び前記電線を挿入する前記ステップにおいて、前記作業者は前記第1分割体及び前記第2分割体を前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされた状態に保持する。前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する前記ステップにおいて、前記作業者は前記第1分割体及び前記第2分割体を前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされた状態に保持していた力を緩める。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、極小径のコンタクトピンへの細物電線の挿入に適した電線挿入作業補助治具及び電線挿入方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る電線挿入補助治具の正面図である。
【図1B】図1Bは、第1の実施形態に係る電線挿入補助治具の側面図である。
【図1C】図1Cは、図1Bの部分拡大図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る電線挿入方法のフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る電線挿入補助治具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本発明による電線挿入補助治具及び電線挿入方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1Aを参照して、本発明の第1の実施形態に係る電線挿入補助治具1は、上側分割体10と、下側分割体20と、2つの位置決めガイド30と、2つのばね体40と、カムクランプ50とを備える。
【0023】
上側分割体10は、ブロック状に形成されている。上側分割体10は、平面に形成された電線挿入ガイド溝形成面11を備える。電線挿入ガイド溝形成面11には、電線挿入ガイド溝12と、電線引き抜き溝13とが形成されている。電線挿入ガイド溝12及び電線引き抜き溝13は互いに離れている。上側分割体10に位置決めガイド30が固定されている。位置決めガイド30は電線挿入ガイド溝形成面11から垂直に突き出している。位置決めガイド30は、例えば、位置決めピンである。上側分割体10を貫通するカムクランプ軸部配置孔15が形成されている。カムクランプ軸部配置孔15の軸方向は電線挿入ガイド溝形成面11に垂直である。カムクランプ軸部配置孔15の一端は電線挿入ガイド溝形成面11に開口している。
【0024】
下側分割体20は、ブロック状に形成されている。下側分割体20は、平面に形成された電線挿入ガイド溝形成面21を備える。電線挿入ガイド溝形成面21には、電線挿入ガイド溝22と、電線引き抜き溝23とが形成されている。電線挿入ガイド溝22及び電線引き抜き溝23は互いに離れている。下側分割体20に2つの位置決めガイド配置孔25が形成されている。位置決めガイド配置孔25の軸方向は電線挿入ガイド溝形成面21に垂直である。位置決めガイド配置孔25の一端は電線挿入ガイド溝形成面21に開口している。位置決めガイド配置孔25は、下側分割体20を貫通しても貫通しなくてもよい。
【0025】
2つの位置決めガイド配置孔25に2つの位置決めガイド30がそれぞれ配置される。位置決めガイド30は、電線挿入ガイド溝形成面11と第2電線挿入ガイド溝形成面12とが向かい合った状態で接近又は離隔するように下側分割体20を上側分割体10に対して直線的に案内する。すなわち、位置決めガイド30は、上側分割体10及び下側分割体20の電線挿入ガイド溝形成面11及び21に平行な平面内の相対移動を制限することで上側分割体10及び下側分割体20の相対位置を規定する。尚、位置決めガイド30は、上側分割体10を下側分割体20に対して直線的に案内するように設けられてもよい。ばね体40は、電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが離隔するように上側分割体10及び下側分割体を付勢するように設けられる。ばね体40は、例えば、位置決めガイド30の周囲に配置されるコイルばねである。尚、位置決めガイド30、位置決めガイド配置孔25、及びばね体40の数は3以上であってもよい。
【0026】
カムクランプ50は、電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされた状態(面接触した状態)で上側分割体10及び下側分割体20を保持することができるように構成されている。カムクランプ50は、軸部51と、原動節53と、従動節54とを備える。軸部51は、軸部51の両端部がそれぞれ上側分割体10の両側に突き出すようにカムクランプ軸部配置孔15に配置される。軸部51の両端部の一方が下側分割体20に固定され、軸部51の両端部の他方に回転軸52が設けられる。原動節53は、回転軸52まわりに回転するカム部分53aと、カム部分53aに固定されたレバー部分53bとを備える。従動節54は、軸部51に沿って移動可能なようにカム部分53aと上側分割体10との間に設けられ、カム部分53a及び上側分割体10と係合する。
【0027】
電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされて上側分割体10及び下側分割体20が結合体2を形成したとき、電線挿入ガイド溝12及び電線挿入ガイド溝22は電線挿入ガイド孔5を形成し、電線引き抜き溝13及び電線引き抜き溝23は電線引き抜き孔6を形成する。
【0028】
尚、電線挿入ガイド孔5及び電線引き抜き孔6は2つの位置決めガイド30の間に配置されても良く、また、2つの位置決めガイド30の外側に配置されても良い。
【0029】
図1Bを参照して、電線挿入ガイド孔5は結合体2の一方側3から他方側4へ貫通する。電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされた状態では、電線挿入ガイド溝形成面11、電線挿入ガイド溝形成面12、及び電線挿入ガイド孔5の中心線は同一平面上に配置される。電線挿入ガイド孔5は、一方側3に開口した円筒部分5aと、他方側4から円筒部分5aに向かって先細りとなるように形成されたテーパ部分5bとを備える。図1Bに示されていないが、電線引き抜き孔6も結合体2の一方側3から他方側4へ貫通する。尚、電線引き抜き孔6は円筒部分5aよりも十分に広く形成されている。
【0030】
図1Cを参照して、円筒部分5aの内径がD1で示され、テーパ部分5bの最も狭い部分の内径がD2で示されている。
【0031】
図2を参照して、本実施形態に係る電線挿入補助治具1を用いた電線挿入方法を説明する。電線挿入方法は、ステップS1〜ステップS6を備える。
【0032】
ステップS1において、作業者はレバー部分53bを手で持ってカムクランプ50を操作することで上側分割体10を下側分割体20に押し付けて、電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされるように上側分割体10と下側分割体20とを結合する。詳細には、原動節53の回転により従動節54及び上側分割体10が下側分割体20の方へ移動し、上側分割体10が下側分割体20へ押し付けられる。これにより、結合体2が形成される。電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされることで、電線挿入ガイド溝12及び電線挿入ガイド溝22が電線挿入ガイド孔5を形成し、電線引き抜き溝13及び電線引き抜き溝23が電線引き抜き孔6を形成する。
【0033】
ステップS4において上側分割体10及び下側分割体20を分離するまで、上側分割体10及び下側分割体20は、カムクランプ50によって電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされた状態で保持される。したがって、作業者はステップS2及びステップS3において両手を自由に使うことができる。
【0034】
ステップS2において、作業者は結合体2の一方側3から電線挿入ガイド孔5の円筒部分5aにコンタクトピン(不図示)を挿入する。
【0035】
ステップS3において、作業者は結合体2の他方側4から電線挿入ガイド孔5のテーパ部分5bを介してコンタクトピンに電線(不図示)を挿入して、電線にコンタクトピンを装着する。このとき、電線がテーパ部分5bを囲む電線挿入ガイド溝12及び22の表面によって案内されるため、電線を素早く且つ確実にコンタクトピンに挿入することができる。尚、テーパ部分5bの最も狭い部分の内径D2がコンタクトピンの内径より小さいと、電線の先端がコンタクトピンの端面に引っかかることが防がれる。したがって、テーパ部分5bの最も狭い部分の内径D2は円筒部分5aの内径D1より小さいことが好ましい。
【0036】
ステップS4において、作業者はレバー部分53bを手で持ってカムクランプ50を操作することで上側分割体10及び下側分割体20を分離する。詳細には、原動節93の回転により、従動節94及び上側分割体10の可動範囲が下側分割体20から遠ざかる方向に延長されることで、上側分割体10及び下側分割体20の電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされた状態での保持が解除されろ。その結果、電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21との間に隙間が形成されるように、ばね体40が上側分割体10及び下側分割体20を分離する。ばね体40によって上側分割体10と下側分割体20とが分離されるため、作業性が優れている。
【0037】
ステップS5において、作業者は、上側分割体10と下側分割体20の間において、電線をコンタクトピンと一緒に電線挿入ガイド溝12及び電線挿入ガイド溝22に対応する位置から電線引き抜き溝13及び電線引き抜き溝23に対応する位置へと移動する。
【0038】
ステップS6において、作業者は、電線をコンタクトピンと一緒に上側分割体10及び下側分割体20の間から引き抜く。電線引き抜き溝13及び電線引き抜き溝23に対応する位置から電線を引き抜くことで、電線挿入ガイド溝12及び電線挿入ガイド溝22に対応する位置から電線を引き抜く場合に比べて、コンタクトピンと上側分割体10及び下側分割体20との間に十分な距離が確保される。したがって、電線を引き抜くときにコンタクトピンが上側分割体10又は下側分割体20に接触してコンタクトピンが電線から外れることが防がれる。上側分割体10及び下側分割体20にそれぞれ電線引き抜き溝13及び電線引き抜き溝23を設けることで、電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21との間の隙間が小さい場合であっても、電線を上側分割体10及び下側分割体20の間から引き抜く作業が容易になる。電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21との間の隙間が小さくてもよいと、電線挿入補助治具1の小型化が容易である。
【0039】
電線を引き抜いた後、作業者は、電線とコンタクトピンとを圧着する。
【0040】
本実施形態によれば、位置決めガイド30が上側分割体10及び下側分割体20の一方を他方に対して直線的に案内するため、ステップS1で形成される電線挿入ガイド孔5の形状の精度が高い。つまり、電線挿入ガイド孔5の円筒部5aに挿入されたコンタクトピンと電線挿入ガイド孔5のテーパ部5bとの間に芯ずれが生じることが防止される。したがって、本実施形態に係る電線挿入補助治具1及び電線挿入方法によれば、極小径のコンタクトピンへ細物電線を挿入する場合であっても作業品質及び作業性が優れている。
【0041】
更に、カムクランプ50の簡単な操作で上側分割体10と下側分割体20との結合及び分離を行うことができるため、本実施形態に係る電線挿入補助治具1は作業性が優れている。
【0042】
(第2の実施形態)
図3を参照して、本発明の第2の実施形態に係る電線挿入補助治具1を説明する。本実施形態に係る電線挿入補助治具1は、第1の実施形態に係る電線挿入補助治具1と同様に、上側分割体10と、下側分割体20と、位置決めガイド30と、ばね体40とを備えるが、カムクランプ50を備えない。本実施形態に係る電線挿入補助治具1は、更に、取っ手60と、ストッパ70とを備える。取っ手60は、例えばピックドノブであり、上側分割体10に固定される。ストッパ70は、上側分割体10と下側分割体20とが所定の距離を越えて離れることを制限する。ストッパ70は、例えば、上側分割体10が下側分割体20から所定の距離だけ離れたときに上側分割体10を停止するように下側分割体20に固定されたショルダーボルトである。
【0043】
本実施形態に係る電線挿入補助治具1を用いた電線挿入方法は、第1の実施形態に係る電線挿入補助治具1を用いた電線挿入方法と同様にステップS1〜ステップS6を備えるが、ステップS1〜ステップS4の細部が第1の実施形態と異なる。
【0044】
ステップS1において、作業者は取っ手60を手で持って上側分割体10を下側分割体20に押し付けて、電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされるように上側分割体10と下側分割体20とを結合する。これにより、結合体2が形成される。電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされることで、電線挿入ガイド溝12及び電線挿入ガイド溝22が電線挿入ガイド孔5を形成し、電線引き抜き溝13及び電線引き抜き溝23が電線引き抜き孔6を形成する。
【0045】
ステップS4において上側分割体10及び下側分割体20を分離するまで、作業者は上側分割体10及び下側分割体20を電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされた状態で保持する。
【0046】
ステップS2において、作業者は、上側分割体10及び下側分割体20を電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされた状態で保持しながら、結合体2の一方側3から電線挿入ガイド孔5の円筒部分5aにコンタクトピン(不図示)を挿入する。
【0047】
ステップS3において、作業者は、上側分割体10及び下側分割体20を電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされた状態で保持しながら、作業者は結合体2の他方側4から電線挿入ガイド孔5のテーパ部分5bを介してコンタクトピンに電線(不図示)を挿入して、電線にコンタクトピンを装着する。
【0048】
ステップS4において、作業者は、上側分割体10及び下側分割体20を電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21とが合わされた状態で保持していた力を緩めることで上側分割体10及び下側分割体20を分離する。ここで、力を緩めることは、作業者が取って60から手を離す場合と話さない場合とを含む。詳細には、力が緩められることで、ばね体40は上側分割体10がストッパ70によって停止されるまで上側分割体10を下側分割体20から遠ざける。その結果、電線挿入ガイド溝形成面11と電線挿入ガイド溝形成面21との間に隙間が形成されるように上側分割体10及び下側分割体20が分離される。
【0049】
ステップS5及びS6は第1の実施形態の場合と同じである。
【0050】
本実施形態に係る電線挿入補助治具1は操作に慣れるまでに時間を要するが、慣れた作業者が本実施形態に係る電線挿入補助治具1を用いると第1の実施形態に係る電線挿入補助治具1を用いた場合に比べて作業速度が速くなる。
【0051】
以上、実施形態を参照して本発明による電線挿入補助治具及び電線挿入方法を説明したが、本発明による電線挿入補助治具及び電線挿入方法は、上記実施形態に限定されない。例えば、電線引き抜き溝12及び22は設けられなくてもよく、ステップS5を実行せずにステップS6において電線挿入ガイド溝12及び電線挿入ガイド溝22に対応する位置から電線を引き抜いてもよい。また、ばね体40を設けずに作業者が手で上側分割体10と下側分割体20を分離してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…電線挿入補助治具
2…結合体
3…一方側
4…他方側
5…電線挿入ガイド孔
5a…円筒部分
5b…テーパ部分
6…電線引き抜き孔
10…上側分割体
20…下側分割体
11、21…電線挿入ガイド溝形成面
12、22…電線挿入ガイド溝
13、23…電線引き抜き溝
15…カムクランプ軸部配置孔
25…位置決めガイド配置孔
30…位置決めガイド
40…ばね体
50…カムクランプ
51…軸部
52…回転軸
53…原動節
53a…カム部分
53b…レバー部分
54…従動節
60…取っ手
70…ストッパ
D1、D2…内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電線挿入ガイド溝が形成された第1電線挿入ガイド溝形成面を有する第1分割体と、
第2電線挿入ガイド溝が形成された第2電線挿入ガイド溝形成面を有する第2分割体と、
分割体位置決めガイドと
を具備し、
前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされて前記第1分割体及び前記第2分割体が結合体を形成したときに前記第1電線挿入ガイド溝及び前記第2電線挿入ガイド溝は前記結合体を一方側から他方側へ貫通する電線挿入ガイド孔を形成し、
前記分割体位置決めガイドは、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが接近又は離隔するように前記第1分割体及び前記第2分割体の一方を他方に対して直線的に案内する
電線挿入作業補助治具。
【請求項2】
前記分割体位置決めガイドは、前記第1分割体及び前記第2分割体の一方に固定された2本の位置決めピンであり、
前記2本の位置決めピンは、前記第1分割体及び前記第2分割体の他方に形成された位置決めピン配置孔にそれぞれ配置される
請求項1の電線挿入作業補助治具。
【請求項3】
前記第1電線挿入ガイド溝とは別の第1電線引き抜き溝が前記第1電線挿入ガイド溝形成面に形成され、
前記第2電線挿入ガイド溝とは別の第2電線引き抜き溝が前記第2電線挿入ガイド溝形成面に形成され、
前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされて前記第1分割体及び前記第2分割体が前記結合体を形成したときに前記第1電線引き抜き溝及び前記第2電線引き抜き溝は前記結合体を前記一方側から前記他方側へ貫通する電線引き抜き孔を形成する
請求項1又は2の電線挿入作業補助治具。
【請求項4】
前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが離隔するように前記第1分割体及び前記第2分割体を付勢するばね体を更に具備する
請求項1乃至3のいずれかに記載の電線挿入作業補助治具。
【請求項5】
前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされた状態で前記第1分割体及び前記第2分割体を保持するカムクランプを更に具備する
請求項1乃至4のいずれかに記載の電線挿入作業補助治具。
【請求項6】
電線挿入作業補助治具を用いた電線挿入方法であって、
前記電線挿入作業補助治具は、
第1電線挿入ガイド溝が形成された第1電線挿入ガイド溝形成面を有する第1分割体と、
第2電線挿入ガイド溝が形成された第2電線挿入ガイド溝形成面を有する第2分割体と、
前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが接近又は離隔するように前記第1分割体及び前記第2分割体の一方を他方に対して直線的に案内する分割体位置決めガイドと
を具備し、
前記電線挿入方法は、
前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされるように前記第1分割体及び前記第2分割体で結合体を形成するステップと、
前記結合体を形成する前記ステップにおいて前記第1電線挿入ガイド溝及び前記第2電線挿入ガイド溝により前記結合体を一方側から他方側へ貫通するように形成された電線挿入ガイド孔に前記一方側からコンタクトピンを挿入するステップと、
前記他方側から前記電線挿入ガイド孔を介して前記コンタクトピンに電線を挿入するステップと、
前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面との間に隙間が形成されるように前記第1分割体及び前記第2分割体を分離するステップと、
前記第1分割体及び前記第2分割体の間から前記コンタクトピンと一緒に前記電線を引き抜くステップと
を具備する
電線挿入方法。
【請求項7】
前記第1電線挿入ガイド溝とは別の第1電線引き抜き溝が前記第1電線挿入ガイド溝形成面に形成され、
前記第2電線挿入ガイド溝とは別の第2電線引き抜き溝が前記第2電線挿入ガイド溝形成面に形成され、
前記結合体を形成する前記ステップにおいて、前記第1電線引き抜き溝及び前記第2電線引き抜き溝は前記結合体を前記一方側から前記他方側へ貫通する電線引き抜き孔を形成し、
前記電線挿入方法は、
前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する前記ステップと前記電線を引き抜く前記ステップとの間に、前記第1分割体と前記第2分割体の間において前記電線を前記コンタクトピンと一緒に前記第1電線挿入ガイド溝及び前記第2電線挿入ガイド溝に対応する位置から前記第1電線引き抜き溝及び前記第2電線引き抜き溝に対応する位置へと移動するステップを更に具備する
請求項6の電線挿入方法。
【請求項8】
前記電線挿入作業補助治具は、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが離隔するように前記第1分割体及び前記第2分割体を付勢するばね体を更に具備し、
前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する前記ステップにおいて、前記ばね体が前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する
請求項6又は7の電線挿入方法。
【請求項9】
前記電線挿入作業補助治具は、前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされた状態で前記第1分割体及び前記第2分割体を保持するカムクランプを更に具備し、
前記結合体を形成する前記ステップにおいて、前記カムクランプを操作して前記結合体を形成し、
前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する前記ステップにおいて、前記カムクランプを操作して前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する
請求項8の電線挿入方法。
【請求項10】
前記結合体を形成する前記ステップにおいて、作業者が前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされるように前記第1分割体及び前記第2分割体を互いに押し付け、
前記コンタクトピンを挿入する前記ステップ及び前記電線を挿入する前記ステップにおいて、前記作業者は前記第1分割体及び前記第2分割体を前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされた状態に保持し、
前記第1分割体及び前記第2分割体を分離する前記ステップにおいて、前記作業者は前記第1分割体及び前記第2分割体を前記第1電線挿入ガイド溝形成面と前記第2電線挿入ガイド溝形成面とが合わされた状態に保持していた力を緩める
請求項8の電線挿入方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−221647(P2012−221647A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84307(P2011−84307)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)