説明

電線接続部の密封方法および密封構造

【課題】 電線接続部が確実に密封され、電気絶縁性および防水性が確保されるとともに、作業能率に影響を来すことなく、さらには部品管理およびコスト面での向上を図ることができる電線接続部の密封方法および密封構造を提供する。
【解決手段】 電線接続部11の密封構造は、複数本の電線Wの各導体端末を互いに接続して形成した電線接続部11の外側を、内壁にホットメルト接着剤13が塗布され、かつ、一端がホットメルト接着剤13により封止された熱収縮チューブ12で被覆するとともに、その熱収縮チューブ12に熱処理を施して密着させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数本の電線の各導体端末を互いに接続した電線接続部を被覆して電気絶縁性および防水性を確保するための電線接続部の密封方法および密封構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電線の導体端末の接続部分、即ち電線接続部を密封して保護するための構造としては図3に示されるようなものが知られている。同図中において、電線接続部1は複数本の電線Wの各導体端末を互いに接続し、その先端部1aに熱圧着加工を施して形成されている。また、電線接続部1には防水処理として接着剤を浸透又は滴下するような接着剤処理(図示しない)が施されている。この電線接続部1にポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の一端が閉じた砲弾状のキャップ2を被覆するとともに、キャップ2の端部に形成された電線固定用の舌片2aと収束した電線Wとをテープ3で巻き付けることによって、電線接続部1の保護が成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術にあっては、電線接続部1を被覆したキャップ2の他端側の開口部2bと収束した電線Wとの間や各電線W間に僅かな間隙が生じており、図4に示される如く、キャップ2の先端側(上記閉じた一端を指す)が下向きに配置されるような取り付けが成された場合には、水、塩水、油等の異物4が上記間隙をつたってキャップ2内に溜まってしまい、電線接続部1に施された接着剤が腐食して防水機能が低下するといった問題点が生じている。
【0004】上記間隙を生じないようにするために、キャップ2と電線Wとの間にシーリング剤を充填することが考えられる。しかし、シーリング剤を用いる場合、そのシーリング剤をまんべんなく充填する必要があり、その充填作業によっては作業能率に影響を来してしまうとともに、鬆が生じていた場合には毛細管現象などによって上記異物4がキャップ2内に溜まってしまう可能性もある。
【0005】また、キャップ2は上述のような間隙の問題点があることから、様々な収束した電線Wの直径に対応できるように多種揃える必要があり、部品管理およびコストの面で支障を来している。
【0006】本発明は、上述した問題点を解消するため、電線接続部が確実に密封され、電気絶縁性および防水性が確保されるとともに、作業能率に影響を来すことなく、さらには部品管理およびコスト面での向上を図ることができる電線接続部の密封方法および密封構造を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するためなされた請求項1記載の本発明の電線接続部の密封方法は、複数本の電線の各導体端末を互いに接続して電線接続部を形成し、該電線接続部に、ホットメルト接着剤が内壁に塗布され、かつ、該ホットメルト接着剤により一端が封止された熱収縮チューブを被覆して、該熱収縮チューブを加熱、収縮させることにより、前記電線接続部を密封することを特徴としている。
【0008】上記構成において、電線接続部の密封方法は、複数本の電線の各導体端末を互いに接続して形成した電線接続部に、ホットメルト接着剤が内壁に塗布され、かつ、ホットメルト接着剤により一端が封止された熱収縮チューブを被覆した後、その熱収縮チューブを加熱して熱収縮チューブ自体を収縮させるとともに、内壁に塗布されて層を成したホットメルト接着剤を溶かして間隙を埋め、固化させることによって電線接続部を密封するようになっている。このような熱収縮チューブを電線接続部に対して用いることにより、電線接続部を確実に密封し、電気絶縁性および防水性を確保することができる。また、熱収縮チューブを被覆して加熱するだけで容易に電線接続部を密封することができる。さらにまた、熱収縮チューブを収縮させて密封するので、収束した電線の直径にあわせて多種の熱収縮チューブを揃える必要がなくなり、共通使用が可能となって品種の削減とコスト低減とを共に実現することができる。
【0009】尚、本発明の電線接続部の密封方法における上記ホットメルト接着剤は、一般に「EVA」と略称されているエチレン・酢酸ビニルの共重合体であって、エチレン含量が60〜80パーセント、酢酸ビニル含量が40〜20パーセントの組成のポリマーを用い、100度C以上で溶かして種々の材料に接着させるような接着剤を一例として挙げることができる(上記エチレンの相手成分として酢酸ビニルの他にアクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸を用いて重合した共重合体の場合等もあるので、これに限られるものではない)。
【0010】上記課題を解決するためなされた請求項2記載の本発明の電線接続部の密封構造は、複数本の電線の各導体端末を互いに接続して形成した電線接続部の外側を、内壁にホットメルト接着剤が塗布され、かつ、一端が該ホットメルト接着剤により封止された熱収縮チューブで被覆するとともに、該熱収縮チューブに熱処理を施して密着させることにより、前記電線接続部を密封することを特徴としている。
【0011】上記構成において、電線接続部の密封構造は、複数本の電線の各導体端末を互いに接続して形成した電線接続部の外側を、内壁にホットメルト接着剤が塗布され、かつ、一端がホットメルト接着剤により封止された熱収縮チューブで被覆するとともに、その熱収縮チューブに熱処理を施して密着させるようになっている。このように、熱収縮チューブに熱処理を施して熱収縮チューブ自体を収縮させるとともに、内壁に塗布されて層を成したホットメルト接着剤を溶かして間隙を埋め、固化させているので、電線接続部を確実に密封し、電気絶縁性および防水性を確保することができる。また、熱収縮チューブを被覆して加熱するだけで容易に電線接続部を密封する構造を得ることができる。さらにまた、熱収縮チューブを収縮させて密封する構造なので、収束した電線の直径にあわせて多種の熱収縮チューブを揃える必要がなくなり、共通使用が可能となって品種の削減とコスト低減とを共に実現することができる。
【0012】尚、本発明の電線接続部の密封構造における上記ホットメルト接着剤は、上述したホットメルト接着剤(EVA)を同様に挙げることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1は本発明の電線接続部の密封構造の一実施の形態を示す断面図である。また、図2は図1の電線接続部を密封する工程を説明するための断面図である。
【0014】図1において、電線接続部11は複数本の電線Wの各導体端末を互いに接続し、その先端部11aに熱圧着加工を施して形成されている。また、電線接続部11には防水処理として接着剤(例えばアロンアルファ、ビスカなどの瞬間接着剤(共に商品名))を浸透又は滴下するような接着剤処理(図示しない)が施されている。
【0015】電線接続部11は複数本の電線Wの各導体端末が露出しているので、熱圧着された先端部11aを含む電線接続部11の外側、及びその電線接続部11近傍の電線Wの絶縁被覆部分の外側を熱収縮チューブ12で被覆して密封し、電気絶縁性及び防水性を確保できるように成されている。
【0016】熱収縮チューブ12は、熱収縮性の合成樹脂材(例えば、放射線架橋ポリオレフィンなど)から成形され、内壁にホットメルト接着剤13が塗布されて層を成し、かつ、一端がホットメルト接着剤13によって封止されている(図2参照)。尚、上記ホットメルト接着剤13は、一般に「EVA」と略称されているエチレン・酢酸ビニルの共重合体であって、エチレン含量が60〜80パーセント、酢酸ビニル含量が40〜20パーセントの組成のポリマーを用い、100度C以上で溶かして用いるものを適用している(一例であって上記エチレンの相手成分として酢酸ビニルの他にアクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸を用いて重合した共重合体の場合等もあるので、これに限られるものではない)。
【0017】上記構成において、図2を参照しながら熱収縮チューブ12によって電線接続部11を密封する工程を説明する。まず、電線Wの束を収容し得る内径の熱収縮チューブ12を電線接続部11とその近傍の収束した電線Wとの長さに合わせて適宜寸法に切断し、その一端をホットメルト接着剤13によって封止するとともに、内壁にもホットメルト接着剤13を塗布してホットメルト接着剤13の層を形成しておく。
【0018】次に、この熱収縮チューブ12の中に電線接続部11を矢線方向から挿入した後、図示しないヒータ又は加熱装置によって熱収縮チューブ12に加熱処理を施す。
【0019】熱収縮チューブ12を加熱することにより、熱収縮チューブ12自体が電線接続部11に密着する方向に収縮を開始する。また、熱収縮チューブ12の内壁に層を成したホットメルト接着剤13が溶融して熱収縮チューブ12と電線接続部11及び各電線Wの絶縁被覆層との間隙を埋めつくす。
【0020】そして、熱収縮チューブ12の加熱処理が完了すると、収縮した熱収縮チューブ12と電線接続部11間にまんべんなく行き渡ったホットメルト接着剤13が冷却(自然、強制どちらでもよい)されて急速に固化し、図1に示されるような電線接続部11が強固に密封された状態になる。
【0021】このような熱収縮チューブ12を電線接続部11に対して用いれば、電線接続部11を確実に密封し、電気絶縁性および防水性を確保することができる。また、熱収縮チューブ12を被覆して加熱するだけで容易に電線接続部11を密封することができるので、作業能率もよい。さらにまた、熱収縮チューブ12は収束した電線Wの直径にあわせて多種揃える必要がなく、共通使用が可能であるので、品種の削減とコスト低減を共に実現することができる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に記載された本発明によれば、電線接続部の密封方法は、複数本の電線の各導体端末を互いに接続して形成した電線接続部に、ホットメルト接着剤が内壁に塗布され、かつ、ホットメルト接着剤により一端が封止された熱収縮チューブを被覆した後、その熱収縮チューブを加熱して熱収縮チューブ自体を収縮させるとともに、内壁に塗布されて層を成したホットメルト接着剤を溶かして間隙を埋め、固化させることによって電線接続部を密封するようになっている。このような熱収縮チューブを電線接続部に対して用いることにより、電線接続部を確実に密封し、電気絶縁性および防水性を確保することができるという効果を奏する。また、熱収縮チューブを被覆して加熱するだけで容易に電線接続部を密封することができるという効果を奏する。さらにまた、熱収縮チューブを収縮させて密封するので、収束した電線の直径にあわせて多種の熱収縮チューブを揃える必要がなくなり、共通使用が可能となって品種の削減とコスト低減とを共に実現することができるという効果を奏する。
【0023】請求項2に記載された本発明によれば、電線接続部の密封構造は、複数本の電線の各導体端末を互いに接続して形成した電線接続部の外側を、内壁にホットメルト接着剤が塗布され、かつ、一端がホットメルト接着剤により封止された熱収縮チューブで被覆するとともに、その熱収縮チューブに熱処理を施して密着させるようになっている。このように、熱収縮チューブに熱処理を施して熱収縮チューブ自体を収縮させるとともに、内壁に塗布されて層を成したホットメルト接着剤を溶かして間隙を埋め、固化させているので、電線接続部を確実に密封し、電気絶縁性および防水性を確保する構造を提供することができる。また、熱収縮チューブを被覆して加熱するだけで容易に電線接続部を密封する構造を得ることができる。さらにまた、熱収縮チューブを収縮させて密封する構造なので、収束した電線の直径にあわせて多種の熱収縮チューブを揃える必要がなくなり、共通使用が可能となって品種の削減とコスト低減とを共に実現する構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電線接続部の密封構造の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1の熱収縮チューブによって電線接続部を密封する工程を説明するための断面図である。
【図3】従来例の電線接続部の密封構造を示す断面図である。
【図4】図3の電線接続部を被覆しているキャップが下向きに配置されるように取り付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
W 電線
11 電線接続部
12 熱収縮チューブ
13 ホットメルト接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数本の電線の各導体端末を互いに接続して電線接続部を形成し、該電線接続部に、ホットメルト接着剤が内壁に塗布され、かつ、該ホットメルト接着剤により一端が封止された熱収縮チューブを被覆して、該熱収縮チューブを加熱、収縮させることにより、前記電線接続部を密封することを特徴とする電線接続部の密封方法。
【請求項2】 複数本の電線の各導体端末を互いに接続して形成した電線接続部の外側を、内壁にホットメルト接着剤が塗布され、かつ、一端が該ホットメルト接着剤により封止された熱収縮チューブで被覆するとともに、該熱収縮チューブに熱処理を施して密着させることにより、前記電線接続部を密封することを特徴とする電線接続部の密封構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平11−178142
【公開日】平成11年(1999)7月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−342969
【出願日】平成9年(1997)12月12日
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)