電線支持具及び活線切分工具
【課題】電線の支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができる電線支持具を提供する。
【解決手段】U字状又はC字状で上部又は一側部に開口3を有し、下端部に支持棒に対する取付部5を有する保持枠4と、保持枠4の開口3の一側部に一端が回動自在に支持されるとともに開口3の外方に向けて回動付勢された抜止金具10と、抜止金具10の他端に係合する係合位置と開口3の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能な係止片15を有して抜止金具10が開口3を閉じた姿勢から外方へ回動するのを解除操作可能に阻止する係止手段14とを備えている。
【解決手段】U字状又はC字状で上部又は一側部に開口3を有し、下端部に支持棒に対する取付部5を有する保持枠4と、保持枠4の開口3の一側部に一端が回動自在に支持されるとともに開口3の外方に向けて回動付勢された抜止金具10と、抜止金具10の他端に係合する係合位置と開口3の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能な係止片15を有して抜止金具10が開口3を閉じた姿勢から外方へ回動するのを解除操作可能に阻止する係止手段14とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱間に架設された通電状態の高圧線等の電線(通電状態の電線を活線と称する)を切断する活線切分工法などにおいて、切断した電線の端部が不用意に動かないように支持する電線支持具及びそれを用いた活線切分工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱と電柱の間に架設された活線を切断する活線切分工法として、切断箇所の両側に間隔をあけた位置を一対の掴線具にて掴持し、その後これらの掴線具を引張具に接続して引張具にて両掴線具を引き寄せることで活線の切断箇所を弛ませ、弛ませた状態で切断具で切断する活線切分工法が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、上記従来の活線切分工法では作業の難しい工程が多くて作業効率が悪いという問題があったため、図11に示すように、伸縮操作可能な伸縮棒42の両端に一対の掴線器43、44を取付けるとともに、一端の掴線器43は伸縮棒42に対して回動可能に連結した活線切分工具41を用い、一方の掴線器43を活線Wの切断箇所の一側部に引っ掛けた後、伸縮棒42を活線に沿わせて他方の掴線器44を切断箇所の他側部に引っ掛け、次に遠隔操作棒45にて伸縮棒42を操作して収縮させることで、両掴線器43、44にて活線Wを強く掴持するとともに両掴線器43、44を互いに接近移動させてそれらの間の活線Wを弛ませ、この弛んだ部分を切断具46にて切断する活線切分工法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
この特許文献2では、切断した活線Wの端部が不用意に移動しないように支持する電線支持具についての開示はないが、上記特許文献1において、図12に示すように、下端部に引張具若しくは伸縮棒に対する取付部53を有する略C字状の保持枠52と、この保持枠52の一側の開口54を開閉可能に閉じる閉止片55と、閉止片55を遠隔操作具にて開閉操作するための係合環56とを備えた電線支持具51が開示されている。詳細には、開口54の一側部に、閉止片55をスライド自在に支持するスライド機構57が設けられるとともに、開口54の他側部に、閉止片55の先端が嵌入する嵌入凹部58と係合固定するクリック手段59が設けられている。
【特許文献1】特開平8−331723号公報
【特許文献2】特開2000−83309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献2に記載の工法にて作業能率よく活線の切分を行うことができても、切断した電線Wの端部を支持するために、特許文献1に記載された図12に示すような電線支持具51を伸縮棒42に設けた場合に、電線Wを支持するためには、係合環56に遠隔操作具を係合させて閉止片55を開口位置にスライドさせて保持し、その状態で電線Wを保持枠52内に挿入し、その後遠隔操作具を係合環56に係合させて移動操作し、閉止片55の先端を嵌入凹部58に嵌合させてクリック手段59にて係合固定されるようにする必要があり、また電線Wの支持を解除する場合にも、遠隔操作具を係合環56に係合させて移動操作し、閉止片55を開口位置にスライドさせて保持し、その状態で電線Wを抜き出す必要があり、作業が面倒で、作業能率が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、電線の支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができる電線支持具及び活線切分工法を作業性良く実施することができる活線切分工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電線支持具は、U字状又はC字状で上部又は一側部に開口を有し、下端部に支持棒に対する取付部を有する保持枠と、保持枠の開口の一側部に一端が回動自在に支持されるとともに開口の外方に向けて回動付勢された抜止金具と、抜止金具が開口部を閉じた姿勢から外方へ回動するのを阻止するように抜止金具の他端に係合する係合位置と係合解除位置との間で移動操作可能な係止手段とを備えたものである。
【0008】
この構成によれば、抜止金具を係止手段に係合させて保持枠の開口を閉じた状態にしておくことで、単純に電線を開口の外側から抜止金具を押して保持枠内に押し込むようにすることで、抜止金具が保持枠の内側に回動して電線が保持枠内に入った後抜止金具が直ちに復帰して開口が閉じられるので電線が不用意に動かないように支持することができ、また電線の支持状態を開放する際には、係止手段を係合解除位置に移動操作することで、抜止金具が開口の外側に回動して開口が開いた状態になるため、任意に電線を抜き出すことができ、電線の支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができる。
【0009】
また、係止手段を、抜止金具の他端に係合する係合位置と開口の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能な係止片と、係止片を係合位置に向けて回動付勢するばねと、係止片から延出された係合解除操作部とを備えた構成とすると、係止片が常時係合位置に位置するとともに係合解除位置との間で回動可能であるため、操作性の良い回動操作によって係止片を係合解除状態にすることができ、電線の支持及び開放をより簡単な操作にて行うことができる。
【0010】
また、本発明の活線切分工具は、伸縮操作可能な伸縮棒の両端部に電線把持部を備えた活線切分工具であって、伸縮棒の一端から適当間隔の位置に上記U字状の保持枠を有する第1の電線支持具を取り付け、伸縮棒の他端から適当間隔の位置に上記C字状の保持枠を有する第2の電線支持具を取り付けたものである。
【0011】
この構成によれば、伸縮棒の一端部の電線把持部を切断箇所の一側部に引っ掛けた後、伸縮棒を電線(活線)に沿わせるとともに、第1の電線支持具の上方からその保持枠内に電線を挿入して支持状態とし、さらに第2の電線支持具の一側方から保持枠内に電線を挿入して支持状態とするとともに、伸縮棒の他端部の電線把持部を切断箇所の他側部に引っ掛け、その後遠隔操作棒にて伸縮棒を操作して収縮させることで、両電線把持部にて活線を強く把持するとともに両電線把持部が互いに接近移動してそれらの間の電線が弛むので、その弛んだ部分を切断具にて切断することで、電線を切断できるとともにその切断した電線の端部がそれぞれ電線支持具にて支持されて不用意に移動することがなく、作業性良く活線切分工法を実施することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電線支持具によれば、抜止金具が係止手段に係合して保持枠の開口を閉じている状態で開口の外側から保持枠内に電線を単純に押し込むと抜止金具が保持枠の内側に回動して電線が保持枠内に入るとともに抜止金具が直ちに復帰して開口が閉じられるので電線が不用意に動かないように支持することができ、また電線の支持状態を開放する際には、係止手段を係合解除位置に移動操作すると抜止金具が開口の外側に回動して開口が開いた状態になるため、任意に電線を抜き出すことができ、電線の支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る電線支持具とそれを備えた活線切分工具の一実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
【0014】
本実施形態における電線支持具は、図1に示すように、電線Wを挿脱する開口3が上方に配置された第1の電線支持具1と、図2に示すように、開口3が一側方に配置された第2の電線支持具2の2種類のものがある。まず、第1の電線支持具1を、図1、図3、図4を参照して説明する。第1の電線支持具1は、上部に開口3を有する略U字状の保持枠4を備えており、その保持枠4の下端部には、後述の活線切分工具31の伸縮棒32など、電線支持具1を取付ける支持棒に対する取付部5が設けられている。図示例の取付部5は、下端に形成された円弧凹部6に伸縮棒32に外嵌する取付リング7の一部を嵌合させて取付ねじ8にて締結固定されている。取付リング7には、一対の固定ねじ9が放射状に貫通して螺合され、伸縮棒32などの支持棒に締め付け固定するように構成されている。9aは、回転操作用に固定ねじ9に設けられた係合環である。
【0015】
保持枠4の開口3は抜止金具10にて開放可能に閉じられる。抜止金具10は、開口3の一側に位置する保持枠4の一端部4aに設けられた支軸ボルト11にてその一端が回動自在に支持され、かつねじりばね12にて開口3の外方に向けて回動付勢されている。ねじりばね12は、支軸ボルト11の回りに巻回されるとともその一端が支軸ボルト11から適当に離れた位置に配置されたばね掛けピン13に掛けられ、他端が抜止金具10の一端から突出されたストッパ片10aに掛けられている。抜止金具10の外方への回動限はストッパ片10aがばね掛けピン13に係合することで規制される。
【0016】
開口3の他側に位置する保持枠4の他端部4bには、抜止金具10が開口3を閉じた姿勢から外方へ回動するのを解除可能に阻止する係止手段14が配設されている。本実施形態の係止手段14は、開口3を閉じた状態の抜止金具10の他端に係合する係合位置と開口の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能に支軸ボルト16にて支持された係止片15にて構成され、かつ係止片15が上記係合位置から外方に回動するのを阻止するストッパピン17と係止片15を係合位置に向けて回動付勢するねじりばね18とが設けられている。ねじりばね18は、支軸ボルト16の回りに巻回されるとともその一端が支軸ボルト16から適当に離れた位置に配置されたばね掛けピン19に掛けられ、他端が係止片15から斜め上方に延出された延長腕20の上縁に掛けられている。延長腕20の先端部には、係止片15を係合解除位置に向けて回動操作する係合解除操作軸21が固定されている。
【0017】
以上の構成の第1の電線支持具1の使用に際しては、その取付部5を伸縮棒32などの支持棒に取り付けるとともに、図3(a)に示すように、抜止金具10が開口3の外方に回動した姿勢から、抜止金具10を矢印の如く開口3を閉じた位置を経てさらに保持枠4内に入り込んだ位置まで押し込むことにより、抜止金具10の先端部にて係止片15がその係合位置から保持枠4内に入り込んだ係合解除位置まで回動され、抜止金具10の先端が係止片15の先端を通過すると、係止片15が係合位置に復帰し、その後抜止金具10の押し込みを解除することで、図3(b)に示すように、抜止金具10の先端部が係合位置の係止片15に係合し、保持枠4の開口3が抜止金具10にて閉じられた状態にセットされる。
【0018】
この電線支持具1によって電線Wを支持する場合には、図4(a)に示すように、電線Wを開口3の上方から保持枠4内に向けて抜止金具10を保持枠4内に回動させつつ押し入れることにより、図4(b)に示すように、電線Wが抜止金具10の先端を乗り越えた時点で、抜止金具10が保持枠4の開口3を閉じた位置まで回動して係止片15に係合し、開口3が抜止金具10にて閉じられて電線Wが保持枠4内で支持された状態となる。次に、電線支持具1による電線Wの支持状態を解除する際には、図4(c)に示すように、係合解除操作軸20を矢印の如く回動操作して係止片15を保持枠4の内側に向けて回動させることで、係止片15の先端部によって抜止金具10が保持枠4の内側に回動されるとともにその回動によって抜止金具10の先端が係止片15の先端を乗り越えた時点で、図4(d)に示すように、抜止金具10が保持枠4の開口3の外方に回動して開口3が開かれ、電線Wを自在に抜き出すことができる状態となって電線Wの支持が解除される。
【0019】
次に、第2の電線支持具2について、図2、図5、図6を参照して説明する。なお、第1の電線支持具1と実質的に同一構成要素については同じ参照符号を付して説明を省略し、主として相違点について説明する。
【0020】
第2の電線支持具2は、一側部に開口3を有する略C字状の保持枠24を備えており、その保持枠24の下端部に取付部5が設けられている。開口3の下側に位置する保持枠24の一端部24aに配設された支軸ボルト11にて抜止金具10の一端が回動自在に支持されている。また、開口3の上側に位置する保持枠24の他端部24bに配設された支軸ボルト16にて係止片25が回動自在に支持されている。係止片25からは上方に延長腕26が延出され、その先端部に両側に突出する係合解除操作軸22が固定されている。また、係止片25を抜止金具10に対する係合位置から開口3の外側に回動するのを阻止するため、図5に示すように、保持枠24の他端部24bにストッパ面27が形成されている。
【0021】
この第2の電線支持具2の使用に際しても、その取付部5を伸縮棒32などの支持棒に取り付けるとともに、図5(a)に示すように、抜止金具10が開口3の外方に回動した姿勢から、抜止金具10を矢印の如く開口3を閉じた位置を経てさらに保持枠24内に入り込んだ位置まで押し込むことにより、抜止金具10の先端部にて係止片25がその係合位置から保持枠24内に入り込んだ係合解除位置まで回動され、抜止金具10の先端が係止片25の先端を通過すると、係止片25が係合位置に復帰し、その後抜止金具10の押し込みを解除することで、図5(b)に示すように、抜止金具10の先端部が係合位置の係止片25に係合し、保持枠24の開口3が抜止金具10にて閉じられた状態にセットされる。
【0022】
この電線支持具2によって電線Wを支持する場合には、図6(a)に示すように、電線Wを開口3の外側から保持枠24内に向けて押し入れると、抜止金具10が保持枠24内に回動して電線Wが保持枠24内に入るので、電線Wをそのまま保持枠24内の上部に位置させると、図6(b)に示すように、電線Wが抜止金具10の先端を乗り越えた時点で、抜止金具10が保持枠24の開口3を閉じた位置まで回動して係止片25に係合し、開口3が抜止金具10にて閉じられて電線Wが保持枠24内で支持された状態となる。また、電線支持具2による電線Wの支持状態を解除する際には、図6(c)に示すように、係合解除操作軸22を矢印の如く回動操作して係止片25を保持枠24の内側に向けて回動させることで、係止片25の先端部によって抜止金具10が保持枠24の内側に回動されるとともにその回動によって抜止金具10の先端が係止片25の先端を乗り越えた時点で、図6(d)に示すように、抜止金具10が保持枠24の開口3の外方に回動して開口3が開かれ、電線Wを自在に抜き出すことができる状態となって電線Wの支持が解除される。
【0023】
次に、以上の第1の電線支持具1と第2の電線支持具2を設けた活線切分工具31について、図7〜図10を参照して説明する。
【0024】
本実施形態の活線切分工具31は、伸縮操作可能な伸縮棒32の一端に第1の電線把持部33が、伸縮棒32の他端に第2の電線把持部34が装着され、かつ伸縮棒32の一端から適当間隔の位置に第1の電線支持具1が、伸縮棒32の他端から適当間隔の位置に第2の電線支持具2が取り付けられている。第1の電線把持部33は伸縮棒32の軸心方向に伸びた姿勢と90°屈曲した姿勢との間で首振り可能に装着され、第2の電線把持部34は伸縮棒32の軸心方向に伸びた姿勢で装着されている。伸縮棒32は、その他端側の本体部35と本体部35に対して一端側に出退可能に装着された伸縮部36とを備え、本体部35の他端部に配設された回転操作部37に遠隔操作棒38の先端を係合させて回転操作することで、本体部35に内蔵された送りねじ機構(図示せず)にて伸縮部36が出退するように構成されている。
【0025】
次に、この活線切分工具31を用いて活線切分工法を実施する工程を説明する。まず、図7に示すように、伸縮棒32の一端の第1の電線把持部33が伸縮棒32に対して略直角に屈曲した状態で、伸縮棒32の他端側を支持して伸縮棒32の一端の第1の電線把持部33を電線Wに近寄せ、第1の電線把持部33を電線Wに引っ掛けて装着する。次に、図8に示すように、伸縮棒32の他端の回転操作部37に遠隔操作棒38の先端を係合させて、伸縮棒32を電線Wに沿わせるように伸縮棒32の他端側を持ち上げるとともに、その過程で第1の電線支持具1の上部の開口3から保持枠4内に電線Wを押し込んで第1の電線支持具1にて電線Wが支持される状態にする。次に、図9に示すように、電線Wが第2の電線支持具2の一側の開口3に対向するように伸縮棒32を位置させた後伸縮棒32を横移動させて一側の開口3から保持枠4内に電線Wを押し込んで第2の電線支持具2にて電線Wが支持される状態にする。次に、図10に示すように、第2の電線把持部34を電線Wに引っ掛けて装着する。その後、遠隔操作棒38にて回転操作部37を回転操作して伸縮棒32を収縮させることで、第1及び第2の電線把持部33、34にてそれぞれ電線Wが強固に把持された後、両電線把持部33、34が互いに引き寄せられることで、それらの間の電線Wが弛ませられるので、その弛んだ部分で電線Wを遠隔切断具にて切断することで、電線Wが切分けられる。また、その切断端部はそれぞれ第1と第2の電線支持具1、2にて支持されて不用意に移動することがないので、作業性良く活線切分工法を実施することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態の電線支持具1、2によれば、抜止金具10を係止手段14に係合させて保持枠4の開口3を閉じた状態にしておくことで、単純に電線Wを開口3の外側から抜止金具10を押して保持枠4内に押し込むようにすることで、抜止金具10が保持枠4の内側に回動して電線Wが保持枠4内に入った後抜止金具10が直ちに復帰して開口3が閉じられるので、単純な作業によって電線Wが不用意に動かないように支持することができる。また、その後電線Wての支持状態を開放する際には、係止手段14を係合解除位置に移動操作することで、抜止金具10が開口3の外側に回動して開口3が開いた状態になるため、任意に電線Wを抜き出すことができ、電線Wの支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができる。
【0027】
また、本実施形態の係止手段14は、抜止金具10の他端に係合する係合位置と開口3の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能な係止片15と、係止片15を係合位置に向けて回動付勢するねじりばね18と、係止片15から延出された延長腕20先端に設けた係合解除操作軸21とからなる係合解除操作部とを備えた構成としているので、係止片15が常時係合位置に位置するとともに係合解除位置との間で回動可能であるため、操作性の良い回動操作によって係止片15を係合解除状態にすることができ、電線Wの支持及び開放をより簡単な操作にて行うことができる。
【0028】
また、これら電線支持具1、2を設けた活線切分工具31によれば、上述のように伸縮棒32の一端部の第1の電線把持部33を切断箇所の一側部に引っ掛けた後、伸縮棒32を電線Wに沿わせるとともに、第1の電線支持具1の保持枠4内に電線Wを挿入して支持状態とし、さらに第2の電線支持具2の一側方から保持枠4内に電線Wを挿入して支持状態とするとともに、伸縮棒32の他端部の第2の電線把持部34を切断箇所の他側部に引っ掛け、その後遠隔操作棒38にて伸縮棒32を操作して収縮させることで、両電線把持部33、34にて電線Wが強く把持されるとともに両電線把持部33、34が互いに接近移動してそれらの間の電線Wが弛むので、その弛んだ部分を切断具にて切断することで、電線Wを切断できるとともにその切断した電線Wの端部がそれぞれ電線支持具1、2にて支持されて不用意に移動することがないので、作業性良く活線切分工法を実施することができる。
【0029】
なお、上記実施形態においては、係止手段14を回動可能な係止片15にて構成した例を示したが、係止手段14を、係合位置と係合解除位置との間で出退移動自在な係止片と、この係止片を係合位置に向けて移動付勢する圧縮ばねと、係止片を係合解除位置に移動操作するための係合環を設けた構成としても良い。さらに、その場合に係止片の係合部位の外側に抜止金具10の他端が係合する傾斜カム面を設けると、抜止金具10を単純に保持枠4の開口3の内側に向けて押し込むことで係止片が傾斜カム面にて一旦係合解除位置に移動した後係合位置に復帰することで開口3を閉じた状態にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の電線支持具は、抜止金具が係止手段に係合して保持枠の開口を閉じている状態で開口の外側から保持枠内に電線を単純に押し込むと抜止金具が保持枠の内側に回動して電線が保持枠内に入るとともに抜止金具が直ちに復帰して開口が閉じられるので電線が不用意に動かないように支持することができ、また電線の支持状態を開放する際には、係止手段を係合解除位置に移動操作すると抜止金具が開口の外側に回動して開口が開いた状態になるため、任意に電線を抜き出すことができ、電線の支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができるので、活線切分工法での切断した電線端部の支持やその他工法での電線に支持に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態における第1の電線支持具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図。
【図2】同実施形態における第2の電線支持具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図。
【図3】(a)、(b)は第1の電線支持具を初期セットする工程を示す正面図。
【図4】(a)〜(d)は第1の電線支持具による電線の支持及び支持解除を行う工程を示す正面図。
【図5】(a)、(b)は第2の電線支持具を初期セットする工程を示す正面図。
【図6】(a)〜(d)は第2の電線支持具による電線の支持及び支持解除を行う工程を示す正面図。
【図7】本発明の一実施形態における活線切分工具の第1の電線把持部を電線に取り付ける工程を示す正面図。
【図8】同活線切分工具の第1の電線支持具に電線を挿入する工程を示す正面図。
【図9】同活線切分工具の第2の電線支持具に電線を挿入する工程を示す正面図。
【図10】同活線切分工具の第2の電線把持部を電線に取り付ける工程を示す正面図。
【図11】従来例の活線切分工具による活線切分工程を示す正面図。
【図12】従来例の電線支持具の構成を示す正面図。
【符号の説明】
【0032】
1 第1の電線支持具
2 第2の電線支持具
3 開口
4、24 保持枠
5 取付部
10 抜止金具
11 支軸ボルト
12 ねじりばね
14 係止手段
15、25 係止片
16 支軸ボルト
17 ストッパピン
18 ねじりばね
21、22 係合解除操作軸
27 ストッパ面
31 活線切分工具
32 伸縮棒
33、34 電線把持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱間に架設された通電状態の高圧線等の電線(通電状態の電線を活線と称する)を切断する活線切分工法などにおいて、切断した電線の端部が不用意に動かないように支持する電線支持具及びそれを用いた活線切分工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱と電柱の間に架設された活線を切断する活線切分工法として、切断箇所の両側に間隔をあけた位置を一対の掴線具にて掴持し、その後これらの掴線具を引張具に接続して引張具にて両掴線具を引き寄せることで活線の切断箇所を弛ませ、弛ませた状態で切断具で切断する活線切分工法が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、上記従来の活線切分工法では作業の難しい工程が多くて作業効率が悪いという問題があったため、図11に示すように、伸縮操作可能な伸縮棒42の両端に一対の掴線器43、44を取付けるとともに、一端の掴線器43は伸縮棒42に対して回動可能に連結した活線切分工具41を用い、一方の掴線器43を活線Wの切断箇所の一側部に引っ掛けた後、伸縮棒42を活線に沿わせて他方の掴線器44を切断箇所の他側部に引っ掛け、次に遠隔操作棒45にて伸縮棒42を操作して収縮させることで、両掴線器43、44にて活線Wを強く掴持するとともに両掴線器43、44を互いに接近移動させてそれらの間の活線Wを弛ませ、この弛んだ部分を切断具46にて切断する活線切分工法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
この特許文献2では、切断した活線Wの端部が不用意に移動しないように支持する電線支持具についての開示はないが、上記特許文献1において、図12に示すように、下端部に引張具若しくは伸縮棒に対する取付部53を有する略C字状の保持枠52と、この保持枠52の一側の開口54を開閉可能に閉じる閉止片55と、閉止片55を遠隔操作具にて開閉操作するための係合環56とを備えた電線支持具51が開示されている。詳細には、開口54の一側部に、閉止片55をスライド自在に支持するスライド機構57が設けられるとともに、開口54の他側部に、閉止片55の先端が嵌入する嵌入凹部58と係合固定するクリック手段59が設けられている。
【特許文献1】特開平8−331723号公報
【特許文献2】特開2000−83309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献2に記載の工法にて作業能率よく活線の切分を行うことができても、切断した電線Wの端部を支持するために、特許文献1に記載された図12に示すような電線支持具51を伸縮棒42に設けた場合に、電線Wを支持するためには、係合環56に遠隔操作具を係合させて閉止片55を開口位置にスライドさせて保持し、その状態で電線Wを保持枠52内に挿入し、その後遠隔操作具を係合環56に係合させて移動操作し、閉止片55の先端を嵌入凹部58に嵌合させてクリック手段59にて係合固定されるようにする必要があり、また電線Wの支持を解除する場合にも、遠隔操作具を係合環56に係合させて移動操作し、閉止片55を開口位置にスライドさせて保持し、その状態で電線Wを抜き出す必要があり、作業が面倒で、作業能率が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、電線の支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができる電線支持具及び活線切分工法を作業性良く実施することができる活線切分工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電線支持具は、U字状又はC字状で上部又は一側部に開口を有し、下端部に支持棒に対する取付部を有する保持枠と、保持枠の開口の一側部に一端が回動自在に支持されるとともに開口の外方に向けて回動付勢された抜止金具と、抜止金具が開口部を閉じた姿勢から外方へ回動するのを阻止するように抜止金具の他端に係合する係合位置と係合解除位置との間で移動操作可能な係止手段とを備えたものである。
【0008】
この構成によれば、抜止金具を係止手段に係合させて保持枠の開口を閉じた状態にしておくことで、単純に電線を開口の外側から抜止金具を押して保持枠内に押し込むようにすることで、抜止金具が保持枠の内側に回動して電線が保持枠内に入った後抜止金具が直ちに復帰して開口が閉じられるので電線が不用意に動かないように支持することができ、また電線の支持状態を開放する際には、係止手段を係合解除位置に移動操作することで、抜止金具が開口の外側に回動して開口が開いた状態になるため、任意に電線を抜き出すことができ、電線の支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができる。
【0009】
また、係止手段を、抜止金具の他端に係合する係合位置と開口の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能な係止片と、係止片を係合位置に向けて回動付勢するばねと、係止片から延出された係合解除操作部とを備えた構成とすると、係止片が常時係合位置に位置するとともに係合解除位置との間で回動可能であるため、操作性の良い回動操作によって係止片を係合解除状態にすることができ、電線の支持及び開放をより簡単な操作にて行うことができる。
【0010】
また、本発明の活線切分工具は、伸縮操作可能な伸縮棒の両端部に電線把持部を備えた活線切分工具であって、伸縮棒の一端から適当間隔の位置に上記U字状の保持枠を有する第1の電線支持具を取り付け、伸縮棒の他端から適当間隔の位置に上記C字状の保持枠を有する第2の電線支持具を取り付けたものである。
【0011】
この構成によれば、伸縮棒の一端部の電線把持部を切断箇所の一側部に引っ掛けた後、伸縮棒を電線(活線)に沿わせるとともに、第1の電線支持具の上方からその保持枠内に電線を挿入して支持状態とし、さらに第2の電線支持具の一側方から保持枠内に電線を挿入して支持状態とするとともに、伸縮棒の他端部の電線把持部を切断箇所の他側部に引っ掛け、その後遠隔操作棒にて伸縮棒を操作して収縮させることで、両電線把持部にて活線を強く把持するとともに両電線把持部が互いに接近移動してそれらの間の電線が弛むので、その弛んだ部分を切断具にて切断することで、電線を切断できるとともにその切断した電線の端部がそれぞれ電線支持具にて支持されて不用意に移動することがなく、作業性良く活線切分工法を実施することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電線支持具によれば、抜止金具が係止手段に係合して保持枠の開口を閉じている状態で開口の外側から保持枠内に電線を単純に押し込むと抜止金具が保持枠の内側に回動して電線が保持枠内に入るとともに抜止金具が直ちに復帰して開口が閉じられるので電線が不用意に動かないように支持することができ、また電線の支持状態を開放する際には、係止手段を係合解除位置に移動操作すると抜止金具が開口の外側に回動して開口が開いた状態になるため、任意に電線を抜き出すことができ、電線の支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る電線支持具とそれを備えた活線切分工具の一実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
【0014】
本実施形態における電線支持具は、図1に示すように、電線Wを挿脱する開口3が上方に配置された第1の電線支持具1と、図2に示すように、開口3が一側方に配置された第2の電線支持具2の2種類のものがある。まず、第1の電線支持具1を、図1、図3、図4を参照して説明する。第1の電線支持具1は、上部に開口3を有する略U字状の保持枠4を備えており、その保持枠4の下端部には、後述の活線切分工具31の伸縮棒32など、電線支持具1を取付ける支持棒に対する取付部5が設けられている。図示例の取付部5は、下端に形成された円弧凹部6に伸縮棒32に外嵌する取付リング7の一部を嵌合させて取付ねじ8にて締結固定されている。取付リング7には、一対の固定ねじ9が放射状に貫通して螺合され、伸縮棒32などの支持棒に締め付け固定するように構成されている。9aは、回転操作用に固定ねじ9に設けられた係合環である。
【0015】
保持枠4の開口3は抜止金具10にて開放可能に閉じられる。抜止金具10は、開口3の一側に位置する保持枠4の一端部4aに設けられた支軸ボルト11にてその一端が回動自在に支持され、かつねじりばね12にて開口3の外方に向けて回動付勢されている。ねじりばね12は、支軸ボルト11の回りに巻回されるとともその一端が支軸ボルト11から適当に離れた位置に配置されたばね掛けピン13に掛けられ、他端が抜止金具10の一端から突出されたストッパ片10aに掛けられている。抜止金具10の外方への回動限はストッパ片10aがばね掛けピン13に係合することで規制される。
【0016】
開口3の他側に位置する保持枠4の他端部4bには、抜止金具10が開口3を閉じた姿勢から外方へ回動するのを解除可能に阻止する係止手段14が配設されている。本実施形態の係止手段14は、開口3を閉じた状態の抜止金具10の他端に係合する係合位置と開口の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能に支軸ボルト16にて支持された係止片15にて構成され、かつ係止片15が上記係合位置から外方に回動するのを阻止するストッパピン17と係止片15を係合位置に向けて回動付勢するねじりばね18とが設けられている。ねじりばね18は、支軸ボルト16の回りに巻回されるとともその一端が支軸ボルト16から適当に離れた位置に配置されたばね掛けピン19に掛けられ、他端が係止片15から斜め上方に延出された延長腕20の上縁に掛けられている。延長腕20の先端部には、係止片15を係合解除位置に向けて回動操作する係合解除操作軸21が固定されている。
【0017】
以上の構成の第1の電線支持具1の使用に際しては、その取付部5を伸縮棒32などの支持棒に取り付けるとともに、図3(a)に示すように、抜止金具10が開口3の外方に回動した姿勢から、抜止金具10を矢印の如く開口3を閉じた位置を経てさらに保持枠4内に入り込んだ位置まで押し込むことにより、抜止金具10の先端部にて係止片15がその係合位置から保持枠4内に入り込んだ係合解除位置まで回動され、抜止金具10の先端が係止片15の先端を通過すると、係止片15が係合位置に復帰し、その後抜止金具10の押し込みを解除することで、図3(b)に示すように、抜止金具10の先端部が係合位置の係止片15に係合し、保持枠4の開口3が抜止金具10にて閉じられた状態にセットされる。
【0018】
この電線支持具1によって電線Wを支持する場合には、図4(a)に示すように、電線Wを開口3の上方から保持枠4内に向けて抜止金具10を保持枠4内に回動させつつ押し入れることにより、図4(b)に示すように、電線Wが抜止金具10の先端を乗り越えた時点で、抜止金具10が保持枠4の開口3を閉じた位置まで回動して係止片15に係合し、開口3が抜止金具10にて閉じられて電線Wが保持枠4内で支持された状態となる。次に、電線支持具1による電線Wの支持状態を解除する際には、図4(c)に示すように、係合解除操作軸20を矢印の如く回動操作して係止片15を保持枠4の内側に向けて回動させることで、係止片15の先端部によって抜止金具10が保持枠4の内側に回動されるとともにその回動によって抜止金具10の先端が係止片15の先端を乗り越えた時点で、図4(d)に示すように、抜止金具10が保持枠4の開口3の外方に回動して開口3が開かれ、電線Wを自在に抜き出すことができる状態となって電線Wの支持が解除される。
【0019】
次に、第2の電線支持具2について、図2、図5、図6を参照して説明する。なお、第1の電線支持具1と実質的に同一構成要素については同じ参照符号を付して説明を省略し、主として相違点について説明する。
【0020】
第2の電線支持具2は、一側部に開口3を有する略C字状の保持枠24を備えており、その保持枠24の下端部に取付部5が設けられている。開口3の下側に位置する保持枠24の一端部24aに配設された支軸ボルト11にて抜止金具10の一端が回動自在に支持されている。また、開口3の上側に位置する保持枠24の他端部24bに配設された支軸ボルト16にて係止片25が回動自在に支持されている。係止片25からは上方に延長腕26が延出され、その先端部に両側に突出する係合解除操作軸22が固定されている。また、係止片25を抜止金具10に対する係合位置から開口3の外側に回動するのを阻止するため、図5に示すように、保持枠24の他端部24bにストッパ面27が形成されている。
【0021】
この第2の電線支持具2の使用に際しても、その取付部5を伸縮棒32などの支持棒に取り付けるとともに、図5(a)に示すように、抜止金具10が開口3の外方に回動した姿勢から、抜止金具10を矢印の如く開口3を閉じた位置を経てさらに保持枠24内に入り込んだ位置まで押し込むことにより、抜止金具10の先端部にて係止片25がその係合位置から保持枠24内に入り込んだ係合解除位置まで回動され、抜止金具10の先端が係止片25の先端を通過すると、係止片25が係合位置に復帰し、その後抜止金具10の押し込みを解除することで、図5(b)に示すように、抜止金具10の先端部が係合位置の係止片25に係合し、保持枠24の開口3が抜止金具10にて閉じられた状態にセットされる。
【0022】
この電線支持具2によって電線Wを支持する場合には、図6(a)に示すように、電線Wを開口3の外側から保持枠24内に向けて押し入れると、抜止金具10が保持枠24内に回動して電線Wが保持枠24内に入るので、電線Wをそのまま保持枠24内の上部に位置させると、図6(b)に示すように、電線Wが抜止金具10の先端を乗り越えた時点で、抜止金具10が保持枠24の開口3を閉じた位置まで回動して係止片25に係合し、開口3が抜止金具10にて閉じられて電線Wが保持枠24内で支持された状態となる。また、電線支持具2による電線Wの支持状態を解除する際には、図6(c)に示すように、係合解除操作軸22を矢印の如く回動操作して係止片25を保持枠24の内側に向けて回動させることで、係止片25の先端部によって抜止金具10が保持枠24の内側に回動されるとともにその回動によって抜止金具10の先端が係止片25の先端を乗り越えた時点で、図6(d)に示すように、抜止金具10が保持枠24の開口3の外方に回動して開口3が開かれ、電線Wを自在に抜き出すことができる状態となって電線Wの支持が解除される。
【0023】
次に、以上の第1の電線支持具1と第2の電線支持具2を設けた活線切分工具31について、図7〜図10を参照して説明する。
【0024】
本実施形態の活線切分工具31は、伸縮操作可能な伸縮棒32の一端に第1の電線把持部33が、伸縮棒32の他端に第2の電線把持部34が装着され、かつ伸縮棒32の一端から適当間隔の位置に第1の電線支持具1が、伸縮棒32の他端から適当間隔の位置に第2の電線支持具2が取り付けられている。第1の電線把持部33は伸縮棒32の軸心方向に伸びた姿勢と90°屈曲した姿勢との間で首振り可能に装着され、第2の電線把持部34は伸縮棒32の軸心方向に伸びた姿勢で装着されている。伸縮棒32は、その他端側の本体部35と本体部35に対して一端側に出退可能に装着された伸縮部36とを備え、本体部35の他端部に配設された回転操作部37に遠隔操作棒38の先端を係合させて回転操作することで、本体部35に内蔵された送りねじ機構(図示せず)にて伸縮部36が出退するように構成されている。
【0025】
次に、この活線切分工具31を用いて活線切分工法を実施する工程を説明する。まず、図7に示すように、伸縮棒32の一端の第1の電線把持部33が伸縮棒32に対して略直角に屈曲した状態で、伸縮棒32の他端側を支持して伸縮棒32の一端の第1の電線把持部33を電線Wに近寄せ、第1の電線把持部33を電線Wに引っ掛けて装着する。次に、図8に示すように、伸縮棒32の他端の回転操作部37に遠隔操作棒38の先端を係合させて、伸縮棒32を電線Wに沿わせるように伸縮棒32の他端側を持ち上げるとともに、その過程で第1の電線支持具1の上部の開口3から保持枠4内に電線Wを押し込んで第1の電線支持具1にて電線Wが支持される状態にする。次に、図9に示すように、電線Wが第2の電線支持具2の一側の開口3に対向するように伸縮棒32を位置させた後伸縮棒32を横移動させて一側の開口3から保持枠4内に電線Wを押し込んで第2の電線支持具2にて電線Wが支持される状態にする。次に、図10に示すように、第2の電線把持部34を電線Wに引っ掛けて装着する。その後、遠隔操作棒38にて回転操作部37を回転操作して伸縮棒32を収縮させることで、第1及び第2の電線把持部33、34にてそれぞれ電線Wが強固に把持された後、両電線把持部33、34が互いに引き寄せられることで、それらの間の電線Wが弛ませられるので、その弛んだ部分で電線Wを遠隔切断具にて切断することで、電線Wが切分けられる。また、その切断端部はそれぞれ第1と第2の電線支持具1、2にて支持されて不用意に移動することがないので、作業性良く活線切分工法を実施することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態の電線支持具1、2によれば、抜止金具10を係止手段14に係合させて保持枠4の開口3を閉じた状態にしておくことで、単純に電線Wを開口3の外側から抜止金具10を押して保持枠4内に押し込むようにすることで、抜止金具10が保持枠4の内側に回動して電線Wが保持枠4内に入った後抜止金具10が直ちに復帰して開口3が閉じられるので、単純な作業によって電線Wが不用意に動かないように支持することができる。また、その後電線Wての支持状態を開放する際には、係止手段14を係合解除位置に移動操作することで、抜止金具10が開口3の外側に回動して開口3が開いた状態になるため、任意に電線Wを抜き出すことができ、電線Wの支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができる。
【0027】
また、本実施形態の係止手段14は、抜止金具10の他端に係合する係合位置と開口3の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能な係止片15と、係止片15を係合位置に向けて回動付勢するねじりばね18と、係止片15から延出された延長腕20先端に設けた係合解除操作軸21とからなる係合解除操作部とを備えた構成としているので、係止片15が常時係合位置に位置するとともに係合解除位置との間で回動可能であるため、操作性の良い回動操作によって係止片15を係合解除状態にすることができ、電線Wの支持及び開放をより簡単な操作にて行うことができる。
【0028】
また、これら電線支持具1、2を設けた活線切分工具31によれば、上述のように伸縮棒32の一端部の第1の電線把持部33を切断箇所の一側部に引っ掛けた後、伸縮棒32を電線Wに沿わせるとともに、第1の電線支持具1の保持枠4内に電線Wを挿入して支持状態とし、さらに第2の電線支持具2の一側方から保持枠4内に電線Wを挿入して支持状態とするとともに、伸縮棒32の他端部の第2の電線把持部34を切断箇所の他側部に引っ掛け、その後遠隔操作棒38にて伸縮棒32を操作して収縮させることで、両電線把持部33、34にて電線Wが強く把持されるとともに両電線把持部33、34が互いに接近移動してそれらの間の電線Wが弛むので、その弛んだ部分を切断具にて切断することで、電線Wを切断できるとともにその切断した電線Wの端部がそれぞれ電線支持具1、2にて支持されて不用意に移動することがないので、作業性良く活線切分工法を実施することができる。
【0029】
なお、上記実施形態においては、係止手段14を回動可能な係止片15にて構成した例を示したが、係止手段14を、係合位置と係合解除位置との間で出退移動自在な係止片と、この係止片を係合位置に向けて移動付勢する圧縮ばねと、係止片を係合解除位置に移動操作するための係合環を設けた構成としても良い。さらに、その場合に係止片の係合部位の外側に抜止金具10の他端が係合する傾斜カム面を設けると、抜止金具10を単純に保持枠4の開口3の内側に向けて押し込むことで係止片が傾斜カム面にて一旦係合解除位置に移動した後係合位置に復帰することで開口3を閉じた状態にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の電線支持具は、抜止金具が係止手段に係合して保持枠の開口を閉じている状態で開口の外側から保持枠内に電線を単純に押し込むと抜止金具が保持枠の内側に回動して電線が保持枠内に入るとともに抜止金具が直ちに復帰して開口が閉じられるので電線が不用意に動かないように支持することができ、また電線の支持状態を開放する際には、係止手段を係合解除位置に移動操作すると抜止金具が開口の外側に回動して開口が開いた状態になるため、任意に電線を抜き出すことができ、電線の支持及び開放を簡単な操作にて作業能率良く行うことができるので、活線切分工法での切断した電線端部の支持やその他工法での電線に支持に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態における第1の電線支持具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図。
【図2】同実施形態における第2の電線支持具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図。
【図3】(a)、(b)は第1の電線支持具を初期セットする工程を示す正面図。
【図4】(a)〜(d)は第1の電線支持具による電線の支持及び支持解除を行う工程を示す正面図。
【図5】(a)、(b)は第2の電線支持具を初期セットする工程を示す正面図。
【図6】(a)〜(d)は第2の電線支持具による電線の支持及び支持解除を行う工程を示す正面図。
【図7】本発明の一実施形態における活線切分工具の第1の電線把持部を電線に取り付ける工程を示す正面図。
【図8】同活線切分工具の第1の電線支持具に電線を挿入する工程を示す正面図。
【図9】同活線切分工具の第2の電線支持具に電線を挿入する工程を示す正面図。
【図10】同活線切分工具の第2の電線把持部を電線に取り付ける工程を示す正面図。
【図11】従来例の活線切分工具による活線切分工程を示す正面図。
【図12】従来例の電線支持具の構成を示す正面図。
【符号の説明】
【0032】
1 第1の電線支持具
2 第2の電線支持具
3 開口
4、24 保持枠
5 取付部
10 抜止金具
11 支軸ボルト
12 ねじりばね
14 係止手段
15、25 係止片
16 支軸ボルト
17 ストッパピン
18 ねじりばね
21、22 係合解除操作軸
27 ストッパ面
31 活線切分工具
32 伸縮棒
33、34 電線把持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状又はC字状で上部又は一側部に開口を有し、下端部に支持棒に対する取付部を有する保持枠と、保持枠の開口の一側部に一端が回動自在に支持されるとともに開口の外方に向けて回動付勢された抜止金具と、抜止金具が開口部を閉じた姿勢から外方へ回動するのを阻止するように抜止金具の他端に係合する係合位置と係合解除位置との間で移動操作可能な係止手段とを備えたことを特徴とする電線支持具。
【請求項2】
係止手段は、抜止金具の他端に係合する係合位置と開口の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能な係止片と、係止片を係合位置に向けて回動付勢するばねと、係止片から延出された係合解除操作部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の電線支持具。
【請求項3】
伸縮操作可能な伸縮棒の両端部に電線把持部を備えた活線切分工具であって、伸縮棒の一端から適当間隔の位置に請求項1記載のU字状の保持枠を有する第1の電線支持具を取り付け、伸縮棒の他端から適当間隔の位置に請求項1記載のC字状の保持枠を有する第2の電線支持具を取り付けたことを特徴とする活線切分工具。
【請求項1】
U字状又はC字状で上部又は一側部に開口を有し、下端部に支持棒に対する取付部を有する保持枠と、保持枠の開口の一側部に一端が回動自在に支持されるとともに開口の外方に向けて回動付勢された抜止金具と、抜止金具が開口部を閉じた姿勢から外方へ回動するのを阻止するように抜止金具の他端に係合する係合位置と係合解除位置との間で移動操作可能な係止手段とを備えたことを特徴とする電線支持具。
【請求項2】
係止手段は、抜止金具の他端に係合する係合位置と開口の内側に回動して係合を解除する係合解除位置との間で回動可能な係止片と、係止片を係合位置に向けて回動付勢するばねと、係止片から延出された係合解除操作部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の電線支持具。
【請求項3】
伸縮操作可能な伸縮棒の両端部に電線把持部を備えた活線切分工具であって、伸縮棒の一端から適当間隔の位置に請求項1記載のU字状の保持枠を有する第1の電線支持具を取り付け、伸縮棒の他端から適当間隔の位置に請求項1記載のC字状の保持枠を有する第2の電線支持具を取り付けたことを特徴とする活線切分工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−88255(P2010−88255A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256996(P2008−256996)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
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