説明

電線支持部への他物接近防止具

【課題】
被覆電線支持部付近の充電部に他物が接近することを防止する接近防止具を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明の飛来物の電線支持部接近防止具は、被覆線に接触した飛来物が前記被覆線に接触したまま前記被覆線に沿って移動することを防ぐための防止具であって、円筒を構成する円周の一点から円筒の長手方向に切り開いた形状の円筒部と、前記円筒部の外周に沿った鍔上の鍔部とを備え、可撓性のある素材からなることを特長とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線が支持物上で支持されている箇所付近で、充電部が外部との接触が可能となっている部位へ、飛来物等の異物が接触し短絡あるいは地絡事故となることを防ぐ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電線を保持し、絶縁を保持する碍子を直接被覆することにより、短絡あるいは地絡事故となることを防ぐ碍子被覆部材が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−216514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木の枝やビニール紐といった飛来物が風により飛来し電線に掛着することがある。電線が完全に被覆されている箇所では飛来物が接触しても被覆により電線は絶縁されている状態であるから、すぐに地絡あるいは短絡事故とはならない。ただし、一度掛着した飛来物は自然には落下せず、電線に掛着したまま移動し、電線が支持物上で支持された箇所で留まることが多い。電線が支持物上で支持されている箇所で、例えば柱上クランプの様に充電部がカバー等で被覆されており、カバーと充電部との間にすき間がある部位は、この飛来物によって地絡あるいは短絡事故となることがある。
【0005】
このような短絡あるいは地絡事故防ぐ方法として、電線を支持する箇所の充電部と支持部を直接覆うことにより外部との接触ができないようにする方法があるが、電力系統内で電線を支持する箇所の充電部の数(対策が必要な箇所)は極めて多数であり、対策を行う場合のコストも大きなものとなる。
【0006】
さらに、電線を支持する箇所の充電部を覆った場合、覆われた充電部は放熱が十分に行われないことから高温となり、充電部付近で被覆物が溶けてしまい、この溶けた被覆により短絡あるいは地絡事故となることもある。そのため、上記のような被覆物は、電線に流れる電流値が大きい箇所には取り付けられないという課題がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、充電部での放熱は十分に行うことができ、作業性がよく、コストが安い、充電部への飛来物の接近を防ぐ接近防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被覆線に接触した飛来物が前記被覆線に接触したまま前記被覆線に沿って移動することを防ぐための防止具であって、円筒を構成する円周の一点から円筒の長手方向に切り開いた形状の円筒部と、前記円筒部の外周に沿った鍔上の鍔部とを備え、可撓性のある素材からなることを特長とする飛来物の電線支持部への接近防止具である。
【0009】
本発明の接近防止具の円筒部は、円筒の一端の直径を他端より細くすることにより、この円筒部の細くなった端部を電線に取り付けた際の滑り止めとすることもできる。
【0010】
また、本発明の接近防止具の鍔部は、円筒部に対し傾いた形状とすることもできる。この傾きにより、本接近防止具を電線に取り付けるために、円筒部を広げる作業を容易に行うことができる。
【0011】
さらに、本発明の接近防止具の円筒部の内側面にゴムスポンジのような弾性部材を配し、電線に取り付けた際の滑り止めとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る接近防止具を用いることにより、作業性がよいため、作業時間を短縮でき、充電部での放熱は接近防止具の取り付け前と同様に行うことができ、かつ充電部を覆う場合に比べ防止具の製造に要する材料が少なくてすむことからコストの低減を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の接近防止具の斜傾図である。
【図2】本実施形態の接近防止具の斜傾図である。
【図3】本実施形態の接近防止具を被覆線に取り付けた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の充電部接近防止具は、円筒状の円周の一点から円筒の長手方向に垂直に切り開いた形状である円筒部10と、円筒部の外周に沿った鍔状の鍔部20とを組み合わせた形状から構成される。
【0016】
本充電部接近防止具は、可撓性のあるプラスチックまたはゴムにより形成される。
【0017】
本充電部接近防止具を電線に取り付ける際には、円筒部10の切り開かれた部分を一旦電線直径程度まで広げ、円筒部10の内周が被覆線と接触するように取り付ける。図3は、本実施形態の接近防止具を被覆線に取り付けた状態の図である。
【0018】
本発明の円筒部10は、図2に示すように円筒の一端を、円筒の他端より細い形状としてもよい。この場合、円筒部の直径を細くした端部11は、電線に取り付ける前の状態での直径を本接近防止具を取り付る電線より細くすることにより、電線への取り付けを行った後は滑り止めの役割を行う。
【0019】
鍔部20は、円筒部10に対して垂直であってもよいが、切り込み箇所を広げ電線に取り付ける際の作業性を考慮すると、円筒部10に対して傾いた形状とすることが望ましい。この場合、電線に引っかかった樹木などが鍔部を乗り越えることを防ぐために、傾きの方向は接近を防ぐ充電部と反対の側に向かうように取り付けを行う。
【0020】
円筒部の内側面には、例えばゴムスポンジのような弾性部材を配してもよい。この弾性部材は本接近防止部を電線に取り付けた際の滑り止めとなる。
【符号の説明】
【0021】
10 円筒部
11 円筒部の一端の直径を他端より細くした端部
20 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆線に接触した飛来物が前記被覆線に接触したまま前記被覆線に沿って移動することを防ぐための防止具であって、
円筒を構成する円周の一点から円筒の長手方向に切り開いた形状の円筒部と、
前記円筒部の外周に沿った鍔上の鍔部を備え、
可撓性のある素材からなることを特長とする飛来物の電線支持部接近防止具
【請求項2】
円筒部の一端の直径を他端より細くしたことを特徴とする、請求項1に記載の飛来物の電線支持部接近防止具


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−50128(P2011−50128A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194430(P2009−194430)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】