説明

電線測長機の電線たるみ取り装置

【目的】 電線測長機の自重による電線の垂れ下がりによる測長精度不良を最小限に抑える電線たるみ取り装置を提供する。
【構成】 電線測長機の電線引出経路にたるみ取り装置14を設け、グリッパ26で電線11の初端部を把持してキャリア2の移動で電線の引出す際、引出しが終了する直前にたるみ取り装置の把持爪を閉じ、把持爪の摺動抵抗に抗して電線を引き出すか、又はたるみ取り装置を反電線引出方向に付勢するダンバの負荷力により電線のたるみを取ったのち、カッタ15で切断する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電線をドラム又はリールより指定量引出して切断する電線測長機の電線のたるみを取る装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電線測長機は図4に示すようにグリッパ101で電線102の初端部を把持し、指定の長さキャリア103を走行させ電線をドラム104又はリールより引出し、カッタ105で電線を切断して測長するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術で述べた電線測長機は単にグリッパで初端部を把持して電線をドラム又はリールから引出し、キャリアの走行量で測長するだけなので、キャリアは指定の長さ走行していても電線の中央部が自重で垂れ下がり、測長誤差が生じるという問題を有していた。本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは自重による電線の垂れ下がりを最小限にして測定誤差を小さくする電線たるみ取り装置を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明における電線測長機の電線たるみ取り装置は、電線引出経路と平行に移動位置決め可能なキャリアに開閉自在なグリッパを設け、該グリッパにより把持した電線を指定の長さ引出してカッタにより切断する電線測長機において、前記電線引出経路の前記カッタの近くに摺動抵抗を有して引出し可能に電線を把持する開閉自在な第1電線把持部材を設け、該第1電線把持部材を電線引出し終了直前に閉じる作動手段を設けて電線のたるみを取るものである。
【0005】また電線引出経路と平行に移動位置決め可能なキャリアに開閉自在なグリッパを設け、該グリッパにより把持した電線を指定の長さ引出してカッタにより切断する電線測長機において、前記電線引出経路の前記カッタの近くに開閉自在に電線を把持する第2電線把持部材を電線引出経路と平行に移動可能に設け、該第2電線把持部材をばね又は圧縮空気等により常時反電線引出し方向に付勢する手段を設け、電線の引出し終了直前に前記第2電線把持部材を閉じる作動手段を設けて電線のたるみを取るものである。
【0006】
【作用】請求項1は、グリッパにより電線の初端部を把持してキャリアの移動で所定の長さ引出しを行う際、キャリアが指令位置に位置決めされる僅か手前に第1電線把持部材の把持爪を閉じて電線を把持し、把持面に貼付された例えば電線を傷つけることなく電線との間に適当な摩擦抵抗を有する部材による負荷力を利用して電線のたるみを取ったのち切断を行う。
【0007】請求項2は第2電線把持部材の電線引出経路と平行に移動可能な移動台に設けられた把持爪を、キャリアが指令位置に位置決めされる僅か手前に閉じて電線を把持し、移動台を反電線引出し方向に付勢する手段による負荷力を利用して電線のたるみを取ったのち切断を行う。
【0008】
【実施例】以下本実施例について図面にもとづいて説明する。水平に設けられた直進ガイド1に沿ってキャリア2が移動可能に設けられ、直進ガイド1の両端近くの上方に回転軸3,4がそれぞれ回転可能に支持されており、この回転軸3,4にスプロケットホイール5,6が嵌着されている。そしてスプロケットホイール5,6間にチエン7が張設されており、チエン7は両端がキャリア2に固着され、一方の回転軸4にNC装置9により回転制御されるサーボモータ8が同心に連結されている。
【0009】キャリア2には電線11を把持する開閉可能なグリッパ16が下向きに取付けられており、グリッパ16は通常キャリア2右行直前に閉じて電線11を把持し、左行時には開いて把持が解除されているよう作動制御され、グリッパ16の把持爪中心は電線引出経路上を移動するようになっている。この電線引出経路上の右端近くに電線11が巻き付けられているドラム12又はリールが図示しないスタンドの回転軸13に支持されている。
【0010】電線引出経路上のグリッパ16の左側移動端の前側(右側)位置に電線切断用カッタ15が取り付けられている。このカッタ15による切断位置より所定量左側の電線初端部をグリッパ16で把持して、NC装置9に入力された指定長さだけキャリア2が右行して電線をドラム12又はリールから引出すようになっている。以上は従来の電線測長機と異なるところはなく、本発明の電線たるみ取り装置は電線引出経路のグリッパ16の左側移動端の後側に取り付けられている。
【0011】次いでこの電線たるみ取り装置14の実施例1について説明する。
実施例1図2に示すように電線測長機のフレーム21に固着の垂直方向のガイド22に、一対の把持爪23A,23Bが開閉可能に設けられており、把持爪23A,23BはNC装置9の指令により開閉され、両把持面に電線11の被覆面を傷つけることなく適度の摩擦抵抗を有する合成樹脂材等の軟質部材が貼り付けられている。
【0012】把持爪23A,23Bが電線11を把持するタイミングは、キャリア2が指令位置に位置決めされる僅か手前即ち電線11の引出しが終わる直前とされており、把持爪23A,23Bによる摩擦抵抗力に抗して位置決め直前の僅かな距離電線が引出されることによりたるみを取り除いたのち、カッタ15により電線11を切断する。
【0013】実施例2図3に示すように電線測長機のフレーム21に固着の直進ガイド1と平行な水平方向のガイド25に、垂直方向のガイド26aを有する移動台26が移動可能に設けられており、移動台26に把持爪27A,27Bが開閉可能に設けられている。把持爪27A,27BはNC装置9の指令により開閉されるようになっており、移動台26はフレーム21に一端が固着されているダンバ28により常時ドラム12側に付勢されている。
【0014】ダンバ28はシリンダ30内蔵の図示しないばね又は図示しないエア供給装置によりシリンダ30に送られる比較的低圧の圧縮空気により連結軸29を介して移動台26をドラム12側に付勢するようになっており、把持爪27A,27Bが開いている間、移動台26はガイド25の左端位置にある。
【0015】把持爪27A,27Bが電線11を把持するタイミングは、実施例1と同様電線の引出しが終了する直前とされており、把持爪が閉じて電線11を把持したのち、キャリア2が指令位置に位置決めされるまでの間、ダンバ28の力に抗して移動台26が右に移動し、電線11がダンパ28の力で引っ張られてたるみが取り除かれる。
【0016】次いで電線たるみ取り装置14とカッタ15の中間に位置する図示しないホルダにより電線11が保持されたのち、たるみ装置14の把持爪27A,27Bの把持が解除されて、移動台26がダンバ28の力で左端位置に戻り、同時にカッタ15により電線11が切断される。また図4に示すように引張りばね31により移動台26をガイド25上に固着のストッパ32側へ付勢するようにしてもよい。
【0017】
【発明の効果】本発明は上述のとおり構成されているので、次に記載する効果を奏する。電線測長機に電線たるみ取り装置を設けて、自重による電線中央部の垂れ下がりを最小限に抑えるようにしたので、電線の測長精度を上げることができる。又たるみ取り装置を電線引出し終了直前に作動するようにしたので、電線に必要以上の張力がかからず、電線の皮覆の伸びによる芯線の引っ込み現象を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の電線たるみ取り装置を有する電線測長機の構造図である。
【図2】実施例1の電線たるみ取り装置の図で、(a)は正面図、(b)は縦面図である。
【図3】実施例2の電線たるみ取り装置の図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】実施例2の他の電線たるみ取り装置の正面図である。
【図5】従来技術の電線測長機の構造図である。
【符号の説明】
1 直進ガイド 2 キャリア
8 サーボモータ 9 NC装置
11 電線 12 ドラム
14 電線たるみ取り装置 15 カッタ
16 グリッパ
23A,23B,27A,27B 把持爪
26 移動体 28 ダンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電線引出経路と平行に移動位置決め可能なキャリアに開閉自在なグリッパを設け、該グリッパにより把持した電線を指定の長さ引出してカッタにより切断する電線測長機において、前記電線引出経路の前記カッタの近くに摺動抵抗を有して引出し可能に電線を把持する開閉自在な第1電線把持部材を設け、該第1電線把持部材を電線引出し終了直前に閉じる作動手段を設けて電線のたるみを取ることを特徴とする電線測長機の電線たるみ取り装置。
【請求項2】 電線引出経路と平行に移動位置決め可能なキャリアに開閉自在なグリッパを設け、該グリッパにより把持した電線を指定の長さ引出してカッタにより切断する電線測長機において、前記電線引出経路の前記カッタの近くに開閉自在に電線を把持する第2電線把持部材を電線引出経路と平行に移動可能に設け、該第2電線把持部材をばね又は圧縮空気等により常時反電線引出し方向に付勢する手段を設け、電線の引出し終了直前に前記第2電線把持部材を閉じる作動手段を設けて電線のたるみを取ることを特徴とする電線測長機の電線たるみ取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平7−206262
【公開日】平成7年(1995)8月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−19888
【出願日】平成6年(1994)1月19日
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)