説明

電線装着具

【課題】本発明は、電線に大量に取り付けることなく、滴下させる雨水などを小さな滴にすることができる電線装着具を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄塔や電柱などに架設される電線Dの支持箇所の間に1つまたは2つ以上取り付けることにより、その電線Dに付着する雨水等をその取付箇所で滴下させることのできる電線装着具10であって、電線Dの外面側から法線方向の外方側に向って放射状に延在する複数の放射溝12が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線装着具に関し、詳しくは、電線に付着する雨水を任意の箇所で滴下させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔や電柱に架設される電線は、支持箇所の間では自重により湾曲した状態で張られており、その電線に付着する雨水などの水分は、最下の位置まで伝って滴下することになる。このため、図13(a)に示すように、電線Dから滴下する雨水などは、ほぼ一定の箇所に集合して落ちることになって、被害をもたらす場合がある。
【0003】
例えば、その滴下箇所が民家である場合には、雨粒よりも大きな滴になっていることから、雨音よりも大きな衝撃音が発生して、特に、トタン屋根などの場合には、相当の衝撃音になって騒音になるとともに、その衝撃音が繰り返されることから苦情になる。また、その雨水の集合した滴は、同じ場所に滴下することから、一定の場所に衝撃が加えられることになって、地面に孔を穿ったり、作物やビニールハウスなどの建造物に損傷を与えてしまう虞がある。
【0004】
このことから、図13(b)に示すように、電線Dを伝う雨水が最下の位置に集合する前に強制的に滴下させることにより、上記のような被害を小さくすることができるように、電線Dに取付可能に設計されているリングRが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−147721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この文献1に記載されているリングRにあっては、単に電線Dの外周面を大径に変化させるだけであることから、そのリングR間の雨水などが最下の外面箇所に集合して滴下してしまうことになる。このため、この課題を解消しようとすると、文献1に記載のリングRを短い間隔で電線に取り付ける必要があり、大量に電線Dに取り付けると、重量が問題になってしまう。
【0006】
また、このリングRは、ヒンジにより開閉可能にして、その開閉する端部間を係合爪により係合させて閉止状態を維持するように設計されていることから、その内面に突畝を形成して締め付けることができるように考慮されている。しかるに、そのリングRの内径は固定されていることから、電線Dの外径のバラツキなどによっては、緩くなって滑ってしまいそのリング自体が最下の位置に集合してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、電線に大量に取り付けることなく、滴下させる雨水などを小さな滴にすることができ、また、電線径のバラツキなどに関係なく信頼性高く取り付けることのできる電線装着具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する電線装着具の第1の発明は、架設される電線の支持箇所間に1つまたは2つ以上取り付けることにより、前記電線に付着して移動する水分等の付着物を当該取付箇所で落下させる電線装着具であって、前記電線の外面側から外方側に向って放射状に延在する複数の溝形状またはリブ形状あるいは畝形状が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この発明では、電線の外面を伝わる雨水などは、放射状に延在する複数の溝形状内やリブ形状・畝形状の外面を伝って滴下する。したがって、電線を伝ってきた雨水などは、不必要に大量に取り付けなくても、その電線装着具の表面を伝って最下の位置に集合させることなく、溝形状やリブ形状や畝形状毎に伝うように案内することができ、複数箇所に分散させて小さな滴のまま滴下させることができる。
【0010】
上記課題を解決する電線装着具の第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記電線の外面に内面を接触させている状態で取り付けられる内部材と、該内部材が内部に位置するように取り付けられる外部材とを備えて、前記溝形状またはリブ形状あるいは畝形状は、前記内部材または前記外部材の前記電線の延在する一方向に略対面する端面に形成されており、前記内部材における前記内面の背面側の外面には、前記電線の延在方向に対する両側よりも内側に傾斜する斜面を有する谷形状が形成される一方、前記外部材の前記内部材の前記外面に当接する内面は、当該内部材の外面の断面形状よりも小さな断面形状の空間を形成する斜面に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
この発明では、外部材の間に挟みこむ状態にして内部材を電線に取り付けることができ、その外部材は、内部材の谷形状に斜面を対面接触させて取り付けることができる。この外部材は、内部材の谷形状の斜面の断面形状よりも小さな断面空間を形成するように斜面が設定されていることから、その斜面を内部材の谷形状に圧接させることができ、電線の外面に対して内部材をクサビ状に嵌め込んで押し付ける状態にして取り付けることができる。したがって、電線の延在方向にずれないように取り付けることができる。
【0012】
上記課題を解決する電線装着具の第3の発明は、上記第1または第2の発明の特定事項に加え、前記電線の延在する一方向または両方向に略対面して前記溝形状またはリブ形状あるいは畝形状の形成される端面として、該電線を中心位置または偏心位置に取り付ける円形または楕円形あるいは三角以上の多角形を含む異形に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
この発明では、溝形状やリブ形状や畝形状の形成されている端面が上方に向く姿勢にして電線に取り付けることにより、その放射状に延在する溝形状などに雨水などを伝わせて円形や楕円形や異形の外縁から滴下させることができる。その外縁は、電線が偏心位置にある円形や楕円形である場合には、電線の下方で大きく拡開する状態に取り付けることにより、また、三角形などの異形に形成されている場合にも、電線の下方に長い底辺などを位置させて大きく拡開する状態に取り付けることができ、滴下させる雨水などを溝形状などに伝わせて大きく拡開させた後に滴下させることができる。したがって、電線を伝ってきた雨水などは、より大きく分散させて滴下させることができる。
【0014】
上記課題を解決する電線装着具の第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明の特定事項に加え、前記電線の延在する一方向または両方向に略対面する端面に、該電線の延在方向に突出するとともに当該突出先端部から滑らかに連続して徐々に後退する案内面が形成されていることを特徴とする特徴とするものである。
【0015】
この発明では、案内面の形成されている端面が上側に位置して上方に向く姿勢で電線に取り付けることにより、液状でない雪などが電線の外面を滑ってきた場合でも、突出する先端部で切り分けるようにして落下させることができる。したがって、電線に付着した雪により取付位置が降下してしまうことを回避することができる。
【0016】
上記課題を解決する電線装着具の第5の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明の特定事項に加え、前記電線の延在する両方向に略対面する端面が、該電線の外面から滑らかに連続する緩斜面に形成されていることを特徴とする特徴とするものである。
【0017】
この発明では、電線の外面に吹き付ける風などは、その外面から滑らかに連続する緩斜面にスムーズに案内されて行き過ぎる。したがって、電線の延在方向に対面する端面に吹き付けられる強風を衝止することにより、取付位置がずれてしまうことを回避することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によれば、放射状に延在する複数の溝形状内やリブ形状・畝形状の外面に電線の外面を伝わる雨水などを案内させて滴下させることができるので、取付箇所でも電線を伝ってきた雨水を分散させて滴下させることができる。したがって、大量に取り付けるために電線に過重を掛けてしまうことなく、雨水などを小さな滴にして滴下させることができ、電線を伝わる雨水などが集合して滴下することによる騒音や損傷などの被害を少なくすることができる。また、外部材と内部材の2部品にして電線にクサビ状に嵌め込んで押し付ける状態にして取り付ける構造にすることにより、電線の延在方向にずれないように取り付けることができ、電線径のバラツキなどに関係なく信頼性高く取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5は本発明に係る電線装着具の第1実施形態を示す図である。
【0020】
図1において、電線装着具10は、概略円盤形状に形成されるとともに複数本の放射溝12が外面に刻設されて電線Dに直接装着される直付け部材(内部材)11と、この直付け部材11を締め付けて電線Dに位置決め固定する締付部材(外部材)21と、を備えており、鉄塔や電柱の間に架設されている電線Dの1箇所または複数箇所に取り付けて、その取付箇所で雨水などの液状付着物を強制的に滴下させる。ここで、滴下する液状付着物としては電線Dの外面に付着して下方に流れて滴下する雨水や融雪水などの水分がほとんどであることから、以下ではその水分を滴下させるために電線装着具10を電線Dに取り付けるものとして説明する。
【0021】
直付け部材11は、図2に示すように、電線Dの外径よりも細めの内径に設定されている概略円筒形状に形成されている本体部13と、この本体部13の一端側端部に連設されて半径の半分程度の高さの概略円錐形状(傘形状)に形成されている円錐形状部14と、が同軸になるようにある程度の弾性を有する樹脂材料により一体に成形されている。この直付け部材11は、本体部13と円錐形状部14の軸方向と平行に延在してその外面から内面まで連続するスリット15が形成されている。
【0022】
これにより、直付け部材11は、スリット15を拡開させるように弾性変形させて電線Dを本体部13や円錐形状部14の内部に内装させた後に弾性復帰させることによって、細めに形成されている内筒面13cをその弾性力により電線Dの外面に直付けして密接(対面接触)させることができ、その電線Dの外径に多少の製造上のバラツキなどがある場合でも確実にその外面を締め付けるように密接させて取り付けることができる。
【0023】
この直付け部材11は、円錐形状部14の外側に対面する端面の円錐形状の外面14aに、その中心から法線方向に延在するように複数本の放射溝12が形成されており、この外面14aの背面側に位置する本体部13側の内面14bは、平板形状に形成されている。また、直付け部材11の本体部13の外筒面は、中間部を大きめの外径にすることにより、内側の内側外筒面13aが円錐形状部14の内面14b側に向かって徐々に小径になって対面する谷形状に形成される一方、外側の外側外筒面13bは外側に向かって徐々に小径になる、所謂、算盤玉に近似する形状に形成されている。ここで、本実施形態では、概略円筒形状に形成することから、互いの背面側に位置する内筒面と外筒面は、それぞれ断面円形に形成されているが、これに限るものではなく、例えば、角筒形状に形成してもよく、この場合には、谷形状は傾斜する平面状の斜面により形成されることになる。
【0024】
締付部材21は、図3に示すように、外縁が直付け部材11よりも外側に位置しないように、円錐形状部14よりも小径の相似形状に形成されており、放射溝12のない外面21aと平板形状の内面21bを有する円錐形状に同様の樹脂材料を成形することにより作製されている。この締付部材21は、その内筒面21cが直付け部材11の本体部13の内側外筒面13aよりも小さめの内径(小さめの断面形状の空間を形成する円筒形状の斜面)を有する相似形状に形成されている。また、この締付部材21は、直付け部材11と同様に、軸方向と平行に延在して外面から内面まで連続するスリット25を備えており、このスリット25は、対面する対向面25aが円錐形状の外周縁側が直付け部材11の本体部13の内側外筒面13aの外径よりも大きく拡開するように形成されている。
【0025】
これにより、締付部材21は、電線Dに取り付けた直付け部材11の本体部13の内側外筒面13aにスリット25の対向面25aを押し付けることにより、そのスリット25を拡開させるように弾性変形させてその本体部13の内側外筒面13aを容易に内装させることができ、この後に弾性復帰した細めに形成されている内筒面21cがその弾性力により内側外筒面13aを締め付けることによって、直付け部材11をより大きな力で電線Dの外面に密接させてその内筒面13cのエッジを食い込ませることができる。
【0026】
このとき、締付部材21は、直付け部材11の本体部13の内側外筒面13aを締め付ける内筒面21cがその小径側に滑ろうとするが、互いの平板形状の内面14b、21bが当接して衝止されるので、内筒面21cを確実に内側外筒面13aに圧接させることにより本体部13をクサビのように締め付けることができ、直付け部材11の内筒面13cのエッジを電線Dの外面に食い込ませて延在方向にずれてしまうことを制限することができる。ここで、この電線Dの延在方向へのズレを防止する手段として、直付け部材11の内筒面13cに1つまたは複数の突起を所望の大きさで形成して、より確実にズレを防止することができるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0027】
そして、この電線装着具10は、図4に示すように、直付け部材11の円錐形状の外面14aが上側に向く姿勢になるように、鉄塔や電柱の間に架設されている電線Dに取り付けることにより、その電線Dの外面に連続する直付け部材11の円錐形状の外面14aに伝って流れてくる雨水などの水分を図示する矢印の方向に案内して滴下させることができ、その直付け部材11の円錐形状の外面14aには複数本の放射溝12が刻設されていることから、図5(b)に示す従来のリングRのように、円錐形状の外面rに案内した水分を図示する矢印の方向に案内して最下の外周縁に集めて滴下させてしまうようなことはなく、図5(a)に示すように、その直付け部材11の円錐形状の外面14aに案内した水分を放射溝12毎に伝わせることにより、図示する矢印の方向に分散させて滴下させることができる。
【0028】
このように本実施形態においては、電線装着具10を位置がずれないように電線Dにある程度の間隔で取り付ける場合でも、その間の電線Dの外面に付着した水分を直付け部材11の円錐形状の外面14aの放射溝12毎に分散させることにより小さな滴にして滴下させることができる。したがって、電線Dに大量に取り付けるために過大な荷重を掛けてしまうことなく、滴下させる雨水などの滴の水分量を放射溝12毎に小さくすることができ、電線Dを伝わる雨水などの水分が集合して滴下することにより発生する騒音や損傷などの被害を少なくすることができる。
【0029】
次に、図6は本発明に係る電線装着具の第2実施形態を示す図である。ここで、本実施形態は、上述第1実施形態と同様に構成されていることから、同様の構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する(以下で説明する他の実施形態においても同様)。
【0030】
図6において、締付部材31は、上述第1実施形態における締付部材21に代わって、直付け部材11と共に電線装着具10を構成しており、その締付部材21と同様に、直付け部材11の円錐形状部14よりも小径の相似形状で放射溝12のない外面21aと平板形状の内面21bを有する円錐形状に形成されるとともに、直付け部材11の本体部13の内側外筒面13aよりも小さめの内径の相似形状の断面空間を形成する内筒面21cを備えるように、同様の樹脂材料を成形することにより作製されている。
【0031】
この締付部材31は、内筒面21cに隣接する位置を直線状に切断して切り欠かれた形状に形成されているとともに、その切欠面31cに直交して軸心を通過する面でも直線状に切断して分割した形状に形成されており、その分割面31dと切欠面31cの交差する角部には分割された状態の2部材が互いの分割面31dを対面接触可能な姿勢で相対的に回動させることができるようにヒンジ部33が形成されている。
【0032】
また、この締付部材31は、ヒンジ部33により接離方向に回動可能な分割面31dに、互いに係合する係合爪34と係合溝35がそれぞれ一体形成されている。その係合爪34は、一方の分割面31dから突出して平板形状の内面31bの一部を構成するとともにその先端側が鍵形状に形成されており、係合溝35は、他方の分割面31dから平板形状の内面31b内に埋没してその係合爪34と同一形状の内部空間を形成するように刻設されている。
【0033】
さらに、この締付部材31は、内筒面21cに沿う長穴形状で表裏に貫通する変形穴37が形成されており、この変形穴37は、内筒面21cとの間が内部に内装する電線Dの外径などに応じて変形することを許容することを可能にする。
【0034】
これにより、締付部材31は、ヒンジ部33により分割面31d同士を離隔させて開放状態の内筒面21c内に直付け部材11の本体部13の内側外筒面13aを容易に内装させることができ、その分割面31d同士を対面接触させる方向に相対回動させることにより、係合爪34を係合溝35内に嵌め込んで外れないように係合させるとともに、その本体部13の内側外筒面13aを細めに形成されて変形穴37により変形可能な内筒面21c内で締め付け状態に取り付けることができ、直付け部材11をより大きな力で電線Dの外面に密接させて内筒面13cのエッジを食い込ませることができる。
【0035】
このとき、この締付部材31では、係合溝35内に嵌め込まれて係合する係合爪34が直付け部材11の平板形状の内面14bに密接することにより、その係合爪34が係合溝35内から離脱してしまうことを制限することができる。
【0036】
このように本実施形態においては、上述第1実施形態と同様に電線Dに取り付けることができ、同様の作用効果を得ることができるとともに、ヒンジ部33で回動させて係合爪34を係合溝35に係合させる構造であることから電線Dが太い場合でも、上述第1実施形態よりも部材自体の変形量を少なく取り付けることができ、取付作業を容易化することができる。
【0037】
次に、図7は本発明に係る電線装着具の第3実施形態を示す図である。
図7において、締付部材41は、上述第2実施形態における締付部材31に代わって、直付け部材11と共に電線装着具10を構成しており、その締付部材31と同様に、直付け部材11の円錐形状部14よりも小径の相似形状で放射溝12のない外面21aと平板形状の内面21b(図7には不図示)を有する円錐形状に形成されるとともに、直付け部材11の本体部13の内側外筒面13aよりも小さめの内径の相似形状の断面空間を形成する内筒面21cを備えるように、同様の樹脂材料を成形することにより作製されている。
【0038】
この締付部材41は、内筒面21cに隣接する両側を平行な直線状に切断して切り欠かれた形状に形成されているとともに、その切欠面31cに直交して軸心を通過する面でも直線状に切断して分割した形状に形成されており、その分割面31dと切欠面31cの交差する両端部に係合爪44と係合溝45が形成されている。この係合爪44は、分割面31dの一端側から突出して円錐形状の外面21a、平板形状の内面21bおよび切欠面31cの一部を構成するとともにその先端側が内方に屈曲する鍵爪形状に形成されており、係合溝45は、分割面31dの他端側から切欠面31cを埋没させてその係合爪44と同一形状の内部空間を形成するように刻設されている。
【0039】
これにより、締付部材41は、分割面31d同士を離隔させて開放状態の内筒面21c内に直付け部材11の本体部13の内側外筒面13aを内装させることができ、その分割面31d同士を対面接触させる方向に接近させることにより、その分割面31dのそれぞれの一端側に配設されている係合爪44をそれぞれの他端側に配設されている係合溝45内に嵌め込んで外れないように係合させるとともに、その本体部13の内側外筒面13aを細めに形成されて変形穴37により変形可能な内筒面21c内で締め付け状態に取り付けることができ、直付け部材11をより大きな力で電線Dの外面に密接させて内筒面13cのエッジを食い込ませることができる。
【0040】
このように本実施形態においては、上述第2実施形態と同様に電線Dに取り付けることができ、同様の作用効果を得ることができるとともに、締付部材41を同一形状の2部品に設計していることから容易に作製することができ、また、ヒンジ部33を設けていないことからその近傍部分が離隔・損傷してしまうことなく、繰り返し強固に取り付けることができる。
【0041】
ここで、上述実施形態においては、図8(a)に示すように、直付け部材11の円錐形状部14の外面14aに細い溝形状の放射溝12を刻設する場合を一例に説明するが、これに限るものではなく、例えば、図8(b)に示すように、その円錐形状部14の外面14aに法線方向に延在して突出するリブ形状52を形成してもよく、また、図8(c)に示すように、円錐形状部14の外面14aに一定幅を有する畝形状53(幅広の溝形状としてもよい)を法線方向に延在するように突出させてもよい。このリブ形状52の場合にも、上述実施形態と同様に、電線Dから直付け部材11の外面14aに案内した水分をリブ形状52毎にその外面で伝わせることにより分散させて滴下させることができ、また、畝形状53の場合にも、その直付け部材11の外面14aに案内した水分を畝形状53間やその外面に伝わせることにより分散させて滴下させることができる。
【0042】
また、この直付け部材11の円錐形状部14の外面14aの放射溝12は、その外面14aの外縁14cを滑らかに連続する形状にする必要はなく、例えば、図9(a)に示すように、円錐形状部14の外面14aの外縁14cが内方に後退するようにその放射溝12の端部に切欠部12aを形成してもよい。同様に、図9(b)に示すように、図8(b)に示すリブ形状52でも、円錐形状部14の外面14aの外縁14cよりも外方に延長した突出部52aを形成してもよく、また、図9(c)に示すように、図8(c)に示す畝形状53でも、リブ形状52と同様に円錐形状部14の外面14aの外縁14cよりも外方に延長した突出辺53aを形成してもよい。これらの放射溝12の切欠部12aやリブ形状52の突出部52aや畝形状53の突出辺53aの場合には、円錐形状部14の外面14aの外縁14cを対面方向外方に突出あるいは埋没させるだけでなく法線方向にも変化させることにより、隣接する外縁14cに水分が伝わることをより確実に制限することができ、その放射溝12毎やリブ形状52毎や畝形状53毎に案内する水分を信頼性高く分散させて滴下させることができる。
【0043】
さらに、この直付け部材11は、電線Dを円錐形状部14の中心に内装させるように設計しているが、これに限るものではなく、例えば、図10(a)に示すように、電線Dを内装する内筒面13cを円錐形状部14の中心から偏心させてもよい。この場合には、最外方の円錐形状部14の外面14aの外縁14cをその内筒面13cよりも下方に位置させて直径幅を有効に利用することができ、その外縁14cの直径箇所に位置して降下する放射溝12に電線Dから直付け部材11の外面14aに案内した水分を伝わせて分散・滴下させることができる。また、この直付け部材11は、円形に限るものではなく、例えば、図10(b)に示すように、楕円形状部64の外面64aに放射溝12を刻設してもよく、図10(c)に示すように、三角形状部65の外面65aに放射溝12を刻設してもよい。この楕円形状部64に形成する場合には、放射溝12の端部を長径側の円弧形状の外縁64cまで拡開させて広く取ることができ、また、三角形状部65に形成する場合には、放射溝12の端部を底辺の外縁65cで拡開させて広く取ることができ、これらの放射溝12に雨水を伝わせて分散させる水分を広く滴下させることができる。
【0044】
また、この直付け部材11や締付部材21は、その外面14a、21aと電線Dの外面との挟角が直角に近い角度に設計されているが、これに限るものではなく、例えば、図11に示すように、その外面74a、71aが電線Dに滑らかに連続する緩斜面になるように形成してもよい。この場合には、その外面74a、71aに吹き付ける強風を後方にスムーズに案内して通過させることができ、その強風を衝止するように機能してしまって電線Dの延長方向にずれてしまうことを効果的に回避することができる。
【0045】
また、この直付け部材11の円錐形状部14は、その外面14aをただの円錐面に形成するが、これに限るものではなく、例えば、図12に示すように、その外面14aから外方(電線Dの延長方向)に突出させるとともに、その突出させた先端部84aから滑らかに後退してその外面14aに連続する案内面84bを有する案内部84を形成してもよい。この場合には、その案内部84が電線Dの上側に位置するように取り付けることにより、降り積もった雪が解けて降下してきたときに、その積雪を案内部84の先端部84aで切り分けて案内面84bにより案内して滑り落とさせることができ、電線Dに付着した雪による荷重を軽減することができるとともに、電線装着具10の取付位置が降下してしまうことを回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。例えば、放射溝12などを電線Dに直付けする直付け部材11側に形成する場合を一例に説明するがこれに限るものではなく、締付部材21側に形成してもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る電線装着具の第1実施形態を示す図であり、その全体構成を示す取付状態での正面図である。
【図2】その要部部品を示す図であり、(a)はその軸に対して直交方向から見た平面図、(b)はその軸方向から見た平面図である。
【図3】その図2と異なる要部部品を示す図であり、(a)はその軸に対して直交方向から見た平面図、(b)はその軸方向から見た平面図である。
【図4】その電線への取付状態での機能を説明する正面図である。
【図5】その電線への取付状態での機能を説明する図であり、(a)はその電線の延長方向から見たときの状態を示す立面図、(b)はその従来例での比較例を示す電線の延長方向から見たときの状態を示す立面図である。
【図6】本発明に係る電線装着具の第2実施形態の要部部品を示す図であり、(a)はその軸に対して直交方向から見た平面図、(b)はその軸方向から見た平面図、(c)はその使用を説明する平面図である。
【図7】本発明に係る電線装着具の第3実施形態の要部部品を示す図であり、その軸方向から見た平面図である。
【図8】その他の態様を示す図であり、(a)は第1〜第3実施形態における要部部品の溝形状を示す一部拡大縦断面図、(b)はその第1の他の態様を示す要部部品の一部拡大縦断面図、(c)はその第2の他の態様を示す要部部品の一部拡大縦断面図である。
【図9】その他の態様を示す図であり、(a)はその第3の他の態様を示す要部部品の一部拡大平面図、(b)はその第4の他の態様を示す要部部品の一部拡大平面図、(c)はその第5の他の態様を示す要部部品の一部拡大平面図である。
【図10】その他の態様を示す図であり、(a)はその第6の他の態様を示す要部部品の平面図、(b)はその第7の他の態様を示す要部部品の平面図、(c)はその第8の他の態様を示す要部部品の平面図である。
【図11】その第9の他の態様を示す図であり、その全体構成を示す取付状態での正面図である。
【図12】その第10の他の態様を示す図であり、その全体構成を示す取付状態での上面図である。
【図13】その従来技術を説明する図であり、(a)はその課題を説明する概念立面図、(b)はその従来技術の概略を説明する概念立面図である。
【符号の説明】
【0048】
10……電線装着具 11……直付け部材 12……放射溝 12a……切欠部 13……本体部 13a……内側外筒面 13b……外側外筒面 13c、21c……内筒面 14……円錐形状部 14a、21a、64a、65a、74a……外面 14b、21b、31b……内面 14c、64c、65c……外縁 15、25……スリット 21、31、41……締付部材 25a……対向面 31c……切欠面 31d……分割面 33……ヒンジ部 34、44……係合爪 35、45……係合溝 37……変形穴 52……リブ形状 52a……突出部 53……畝形状 53a……突出辺 64……楕円形状部 65……三角形状部 84……案内部 84b……案内面 84a……先端部 D……電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架設される電線の支持箇所間に1つまたは2つ以上取り付けることにより、前記電線に付着して移動する水分等の付着物を当該取付箇所で落下させる電線装着具であって、
前記電線の外面側から外方側に向って放射状に延在する複数の溝形状またはリブ形状あるいは畝形状が形成されていることを特徴とする電線装着具。
【請求項2】
前記電線の外面に内面を接触させている状態で取り付けられる内部材と、該内部材が内部に位置するように取り付けられる外部材とを備えて、前記溝形状またはリブ形状あるいは畝形状は、前記内部材または前記外部材の前記電線の延在する一方向に略対面する端面に形成されており、
前記内部材における前記内面の背面側の外面には、前記電線の延在方向に対する両側よりも内側に傾斜する斜面を有する谷形状が形成される一方、
前記外部材の前記内部材の前記外面に当接する内面は、当該内部材の外面の断面形状よりも小さな断面形状の空間を形成する斜面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電線装着具。
【請求項3】
前記電線の延在する一方向または両方向に略対面して前記溝形状またはリブ形状あるいは畝形状の形成される端面として、該電線を中心位置または偏心位置に取り付ける円形または楕円形あるいは三角以上の多角形を含む異形に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電線装着具。
【請求項4】
前記電線の延在する一方向または両方向に略対面する端面に、該電線の延在方向に突出するとともに当該突出先端部から滑らかに連続して徐々に後退する案内面が形成されていることを特徴とする特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電線装着具。
【請求項5】
前記電線の延在する両方向に略対面する端面が、該電線の外面から滑らかに連続する緩斜面に形成されていることを特徴とする特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電線装着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−207220(P2009−207220A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44248(P2008−44248)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】