説明

電線防護シート

【課題】間接活線作業を行う際に、防護すべき電線を適切に防護できる電線防護シートを提供すること。
【解決手段】シート状部材12は、2つ折りの折り線11の伸長方向に折り込まれて蛇腹状とされた折り込み部12aを有し、挟み式クリップ14は、シート状部材12の両側端部にそれぞれ配置され、これらの挟み式クリップ14の挟み部17a、17bの先端は、シート状部材12の外表面でかつ2つ折りの解放端寄り位置の近傍にそれぞれ固着することで取り付けられる。挟み部17a、17bのアーム長は、折り線11から固着した部分までの長さよりも長い。挟み式クリップ14の挟み部17a、17bを開状態とするとシート状部材12の2つ折りの解放端が開口して電線に取り付け可能となり、この状態で、一対の挟み式クリップ14、14により折り込み部12aの長さを調整して、シート状部材12を防護すべき電線の長さに合わせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線作業を行う際に、電線の充電部分を防護する電線防護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線路の間接活線工事を行う際に、充電されている電線を防護シートで覆い防護する必要がある。図5は、この電線防護シートにより電線を防護している様子を示した説明図である。電線が電柱(図示していない)の高圧引き留めガイシ80で引き留められてジャンパ線64を形成している部分に、電線防護シート60を取り付けた様子を示している。なお、ジャンパ線64は、途中で高圧ピンガイシ84に留められており、高圧引き留めガイシ80及び高圧ピンガイシ84は電柱の腕金82に取り付けられている。
【0003】
電線防護シート60は、絶縁性のシート状部材62と挟み式クリップ50とを有する。シート状部材62は2つ折りにされ、その内部にジャンパ線64が納められ、シート状部材62の外側から挟み式クリップ50によりジャンパ線64に留められている。また、シート状部材62の外側であって、シート状部材62の2つ折りの折り線に略平行でかつ、2つ折りの解放端寄り位置近傍に棒状体68が配置されている。この棒状体68は、挟み式クリップ50の挟み部54aの先端に形成された穴部55aに挿通されている。
【0004】
この構成により、挟み式クリップ50は、棒状体68に沿って動き、電線防護シート60をジャンパ線64に取り付ける際に、挟み式クリップ50のクリップする場所を適切に選ぶことができる。
【0005】
この挟み式クリップ50のジャンパ線64への取り付けは、挟着具(ヤットコ等、図示していない)により挟み式クリップ50の掴み部52a、52bを挟持して挟み部54a、54bを開き、これによりシート状部材62の解放端を開いて行われる。図示したように、ジャンパ線64はシート状部材62の長さ分だけ防護されており、シート状部材62からはみ出したジャンパ線64aは防護されないこととなる。
【0006】
なお、特許文献1には、図5に示した電線防護シートに類似した構成が開示されている。この特許文献1に開示されている電線防護シートのクリップ装置は、構成及び動作等が図5に示した電線防護シートと基本的に略同一である。すなわち、クリップ装置の操作部(掴み部)を閉動作させると、把持部(挟み部)が開く構成になっており、この把持部の間に電線を防護する電線防護シートが2つ折りにされ、補強シートと共に配置されている。また、把持部の先端には棒状体が挿通される挿通孔が形成され、電線防護シートに沿って棒状体が配される構成になっている。この棒状体により電線防護シートの電線への取り付けを確実なものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−207280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
背景技術で示した電線防護シートにおいて、電線(ジャンパ線)64は、電線を防護するシート状部材62の長さ分しか防護できない。すなわち、防護すべき電線(ジャンパ線)64の長さがシート状部材62の長さよりも長い場合には、防護されない電線部分64aが発生し、その部分が露出することとなる。この場合には、複数台の電線防護シート60を取り付けることが必要となる。また、シート状部材62の長さが電線(ジャンパ線)64の長さよりも長い場合には、余ったシート状部材62が電線以外の部分にはみ出し、作業の邪魔になる場合がある。更に、棒状体68が取り付けられているので、防護すべき電線64が曲がっている場合には、シート状部材62の2つ折りの解放端が開口し、作業に支障をきたす恐れや挟み式クリップ50が外れ易いといった問題があった。なお、特許文献1で開示されている構成においても、前述したように構成が類似しているので、上記と同様の課題を有している。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、間接活線作業を行う際に、防護すべき電線を適切に防護できる電線防護シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の電線防護装置は、
間接活線作業中に充電中の電線を2つ折りにした絶縁性のシート状部材内に納め外側から挟み式クリップで留めて防護する電線防護シートにおいて、前記シート状部材は、前記2つ折りの折り線伸長方向に折り込まれて蛇腹状とされた折り込み部を1又は2以上有し、前記挟み式クリップは、前記シート状部材の両側端部にそれぞれ配置され、これらの挟み式クリップの挟み部の先端は、前記シート状部材の外表面でかつ前記2つ折りの解放端寄り位置の近傍にそれぞれ固着することで取り付けられ、前記挟み部のアーム長が前記折り線から前記固着した部分までの長さよりも長いことを特徴とする。
【0011】
この構成により、電線防護シートを防護すべき電線へ取り付ける際に、シート状部材の両側端部に取り付けられた挟み式クリップをそれぞれ反対方向に移動させ、折り込み部の長さを変えることで、シート状部材の全体の長さを防護すべき電線の長さに合わせることができる。すなわち、防護すべき電線の長さに応じてシート状部材の長さを種々調整することが可能である。したがって、電線が防護されない部分をなくすことができ、またシート状部材が有り余ってガイシ等の部分にはみ出すこともない。更に、防護すべき電線が曲がっていてもシート状部材が電線の曲がりに沿って配されるので、シート状部材の2つ折りの解放端が開口し、作業に支障をきたす恐れを防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の電線防護装置は、請求項1に記載の電線防護装置において、
前記挟み式クリップは、前記挟み部がそれぞれ二股に形成されたことを特徴とする。したがって、挟み式クリップとシート状部材の固着が、両側端部のそれぞれ4か所で行われることから、シート状部材の長さ調整の際にシート状部材に印加される引っ張り力を分散させることができる。したがって、シート状部材の長さ調整を容易に行うことができ、かつ繰り返し使用にも耐えることとなる。
【0013】
請求項3に記載の電線防護装置は、請求項1又は2の何れか1項に記載の電線防護装置において、
前記挟み式クリップは、前記アームの中間がそれぞれ外側に湾曲していることを特徴とする。したがって、挟み部は電線を挟持しないので、シート状部材を電線に取り付けた後で、挟み式クリップを回転させ、シート状部材の取り付け姿態を容易に変えることができる。また、防護すべき電線が曲がっていてもその曲りを吸収することができる。したがって、電線防護シートの電線への取り付けを一層適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電線防護シートによれば、取り付けの際に、シート状部材に形成した蛇腹状の折り込み部の長さを変えることで、シート状部材の全体の長さを防護すべき電線に合わせることができるので、未防護の電線部分は発生せず、その未防護電線部分が露出することはない。また、余ったシート状部材が電線以外の部分にはみ出すこともない。したがって、防護すべき電線を適切に防護することができ、その後の間接活線作業を安心して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電線防護シートの概略斜視図である。ただし、シート状部材は閉じている状態を示す。
【図2】図1の電線防護シートの概略側面図である。ただし、シート状部材は開いている状態を示す。
【図3】図1の電線防護シートの概略側面図である。ただし、シート状部材は閉じている状態を示す。
【図4】図1の電線防護シートを電線に取り付けた状態の概略斜視図である。
【図5】従来の電線防護シートを電線に取り付けた状態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の電線防護シートの実施の形態を、図面を参照しつつ詳述する。図1は、電線防護シートの概略斜視図、図2は、図1の電線防護シートの概略側面図、図3は、図1の電線防護シートの挟み式クリップを開いた状態の概略側面図を示す。ここで、側面とは、電線に電線防護シートを取り付けた時に電線を横方向に切断する面を意味する。
【0017】
本実施の形態の電線防護シート10は、シート状部材12と挟み式クリップ14を有する。シート状部材12は、絶縁性のシート状部材を2つ折りにし、折り線11の伸長方向に折り込んで蛇腹状とされた折り込み部12aを有している。折り込み部12aを形成することで、シート状部材12の折り線11方向の全体の長さが短縮された状態になっており、電線を防護する際に、この折り込み部12aの長さを調整して、全体の長さを防護すべき電線の長さに合わせることが可能である。シート状部材12は、樹脂性、ゴム製等、絶縁性のものであれば何れでも構わないが、上記のように折り込んだ場合に、その折り込んだ形状が保たれることが必要である。なお、図1の実施の形態では折り込み部12aは1つだけ形成しているが、必要に応じて2以上形成しても良い。
【0018】
挟み式クリップ14は、一対の挟み部17a、17bと一対の掴み部16a、16bとがヒンジピン19により軸支され、リングばね18により挟み部17a、17bが常態で閉状態となるように付勢されている。一対の挟み部17a、17bは、それぞれが二股に形成され、挟み部17a-1、17a−2、17b−1、17b−2を構成している。挟み式クリップ14は、シート状部材12の両側端部にそれぞれ配置される。そして、挟み式クリップ14の挟み部の先端は、シート状部材12の外表面でかつ2つ折りの解放端寄り位置の近傍にそれぞれ固着されている。挟み部17a、17bのアームの長さは、シート状部材12の折り線11から上記の固着した部分までの長さよりも、長くなるように構成されている。
【0019】
一対の掴み部16a、16bを、リングばね18の付勢力に抗して閉じた状態にすると、一対の挟み部17a、17bが開状態となり、シート状部材12の2つ折りの解放端が開口する。図2は、シート状部材が開状態になっている電線防護シート10の概略側面図であり、図3は、シート状部材が閉状態となっている電線防護シートの概略側面図である。シート状部材12は、挟み部17a、17bのアームの長さが、シート状部材12の折り線11から固着した部分までの長さよりも長いので、シート状部材12を挟み部17a、17bの間に適切に収容することができる。シート状部材12が開状態となっている場合、シート状部材12の折り角が略90度になるので、防護すべき電線64にシート状部材12を容易に被せることが可能である。
【0020】
また、図3に示すように、一対の挟み部17a、17bが閉じた状態で電線防護シート10を側方から見ると、一対の挟み部17a、17bのアームの中間部22a、22bが外方向に湾曲しており、側面視で、挟み部17a、17bの先端固定部20a、20bと軸支部分20との間に略楕円形状の矢印Bで示す空間が形成される。この空間B内に電線64が位置する。したがって、挟み部17a、17bは電線64を挟んでいないので、電線64に電線防護シート10を取り付けた後に、シート状部材12の取り付け姿態を変え、一対の掴み部16a、16bを作業の邪魔にならない位置に変更することができる。また、電線64が曲がっていた場合に、その曲りに沿ってシート状部材12を沿わせることができることに加え、電線64を掴み部17a、17bが挟んでいないことから、シート状部材12の2つ折り解放端が開口する恐れもない。したがって、電線64を適切に防護することが可能であり、その後の間接活線作業を安心して行うことが可能である。
【0021】
更に、挟み式クリップ14は、前述したように、一対の挟み部17a、17bはそれぞれが二股に形成され、その先端部がシート状部材12の両側端部でかつ2つ折りの解放端寄り位置近傍にそれぞれ固定されるが、一対の挟み部17a、17bはそれぞれが二股に形成されているので、シート状部材12と挟み式クリップ14は、1つのクリップ14に対して4つの先端固定部20a−1、20a−2、20b−1、20b−2により固着されることとなる。したがって、挟み式クリップ14とシート状部材12の固着がより確実になると共に、シート状部材12の長さ調整の際にシート状部材12に印加される引っ張り力を分散させることができる。したがって、シート状部材12の長さ調整を容易に行うことができ、かつ繰り返し使用にも耐えることとなる。
【0022】
図4は、図1の電線防護シート10を電線(ジャンパ線)64に取り付けた様子を示す概略斜視図である。電線防護シート10の電線(ジャンパ線)64への取り付けは、ヤットコ等によりシート状部材12の両側端部に位置する挟み式クリップ14をそれぞれ挟持して挟み部17a、17bを開状態としてシート状部材12の2つ折り解放端を開口させる。開口されたシート状部材12を防護すべき電線64に被せ、一対の挟み式クリップ14、14を電線64の延在方向でそれぞれ反対方向に移動させ、シート状部材12の折り込み部12aの長さを調整し、全体の長さを電線64の長さに一致させる。その後、挟み式クリップ14の一対の掴み部16a、16bを閉じることで取り付けが完了する。
【0023】
図4に示したように、シート状部材12の長さと防護すべき電線(ジャンパ線)64の長さはちょうど一致している。更に、電線(ジャンパ線)64が曲がっていても、シート状部材12に棒状体等が装着されていないので、その電線64の曲りに沿って取り付けられるので、電線64を確実に防護することができる。また、挟み式クリップ14は電線64を挟まず、挟み部17a、17bの先端部と軸支部分20との間に略楕円形状の空間が形成されるので、電線防護シート10を電線64に取り付けた後に取り付け姿勢を変えて、挟み式クリップ14が作業の邪魔にならないように位置を変更することができる。なお、一対の挟み式クリップ14、14の間で、シート状部材12の中間を電線64に更に抑える必要がある場合には、同種の挟み式クリップを用いることができる。この作業は、電線防護シート10を電線64に取り付けた後に、ヤットコ等により容易に行うことが可能である。
【0024】
本発明の実施の形態の電線防護シート10によれば、電線を防護する絶縁性のシート状部材12は、2つ折りの折り線伸長方向に折り込まれて蛇腹状とされた折り込み部を有するので、シート状部材12の長さを防護すべき電線64の長さに調整することができる。したがって、未防護の電線64部分が露出することがなく、電線64を適切に防護することが可能であり、その後の間接活線作業を安全に行うことができる。
【0025】
なお、本発明は、上述の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、電線防護シート12の蛇腹状の折り込み部12aは1つの場合について示したが、2つ以上であっても良い。また、挟み式クリップの付勢手段としてリングばねを例示したが、その他の構成であっても良い。
【符号の説明】
【0026】
10 電線防護シート
11 折り線
12 シート状部材
12a 折り込み部
14 挟み式クリップ
16a、16b 掴み部
17a、17b 挟み部
18 リングばね
19 ヒンジピン
50 電線防護シート
60 クリップ
62 絶縁シート
64 電線(ジャンパ線)
80 引き留めガイシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間接活線作業中に充電中の電線を2つ折りにした絶縁性のシート状部材内に納め外側から挟み式クリップで留めて防護する電線防護シートにおいて、
前記シート状部材は、前記2つ折りの折り線伸長方向に折り込まれて蛇腹状とされた折り込み部を1又は2以上有し、
前記挟み式クリップは、前記シート状部材の両側端部にそれぞれ配置され、これらの挟み式クリップの挟み部の先端は、前記シート状部材の外表面でかつ前記2つ折りの解放端寄り位置の近傍にそれぞれ固着することで取り付けられ、前記挟み部のアーム長が前記折り線から前記固着した部分までの長さよりも長いことを特徴とする電線防護シート。
【請求項2】
前記挟み式クリップは、前記挟み部がそれぞれ二股に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の電線防護シート。
【請求項3】
前記挟み式クリップの挟み部は、前記アームの中間がそれぞれ外側に湾曲していることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の電線防護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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