説明

電線

【課題】損耗発生の有無および損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる電線を提供すること。
【解決手段】導電性を有する材料によって形成され線状をなす芯線110と、芯線110の外周側に設けられた外側被覆120と、外側被覆120の内周側に設けられ、芯線110を当該芯線110の外周側から被覆するとともに照射された外光を反射する材料を用いて形成された内側被覆130と、を備えた電線100を構成した。これによって、内側被覆130が照射された外光を反射することによって、損耗した箇所と損耗していない箇所とを容易に区別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送配電設備を構成する電線に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所から変電所および変電所から変電所へ電気を送る送電や、最終の変電所である配電用変電所から電柱などによって各需要家に電気を送る配電をおこなう送配電設備は、送電線や配電線などの電線を備えている。この電線は、たとえば、強風による倒木や飛来物等の接触により、被覆が損傷することがある。電線被覆が著しく損傷すると金属部分が露出した状態(電線が損耗した状態)となるおそれがある。
【0003】
このように金属部分が露出するなどして損耗した状態の電線は、電力の供給が停止する、いわゆる、停電が発生する原因の一つとなる。具体的には、電線の損耗による停電は、たとえば、他物が損耗箇所に接触した場合に発生する。具体的には、損耗した状態の電線が、カラスや蛇等の鳥獣などの非絶縁物に接触した場合に発生するおそれがある。
【0004】
従来、停電状況を管理しているシステムは、損耗した状態の電線における金属部分に非絶縁物が接触している間のみ、異常を感知する構成とされている。このようなシステムにおいては、損耗した電線が接触していた配電設備から離れたり、損耗した電線に接触していた鳥獣が地面に落ちたりして、損耗した状態の電線と非絶縁物とが非接触状態になると、異常箇所を特定することが難しい。このため、損耗した状態の電線が、配電設備の一部やカラスや蛇等の鳥獣などの非絶縁物に接触することによって発生する停電は、同じ原因によって何度も発生する場合もある。
【0005】
損耗した状態の電線における金属部分に非絶縁物が接触することによって発生する停電を解消する方法の一つとして、電柱などに架線されている電線を地上から巡視することによって、電線の損耗状態を確かめる方法が挙げられる。停電の発生時間によっては夜間の巡視になった場合は、たとえば、巡視対象となる電線を地上から照明しながら巡視をおこなっていた。具体的な電線としては、従来、たとえば、絶縁体材料に架橋ポリエチレンを、シース材料にビニルを用いた電力ケーブルがあった(たとえば、下記非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社フジクラ社製 600V 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(600V CV)(単心、2心)、[平成22年3月30日検索]、インターネット<URL:http://www.fujikura.co.jp/products/cable/industrial/cd1301.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術は、巡視対象となる電線が高所に設置されているため、地上から損耗部分を確認することが難しいという問題があった。特に、上述した従来の技術は、停電の発生時間によって夜間に巡視をおこなう場合は、十分な確認をおこなうことが一層難しいという問題があった。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、損耗発生の有無および損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる電線は、導電性を有する材料によって形成され線状をなす導体と、前記導体の外周側に設けられた外側被覆と、前記外側被覆の内周側に設けられ、前記導体を当該導体の外周側から被覆する内側被覆と、を備え、前記内側被覆が、照射された外光を反射する材料を用いて形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる電線は、上記の発明において、前記内側被覆が、外周面に凹凸加工が施されていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる電線は、上記の発明において、前記内側被覆が、複数の層をなし、それぞれが異なる色に着色されていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる電線は、上記の発明において、前記内側被覆が、外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を含むことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる電線は、上記の発明において、前記内側被覆が、蛍光または蓄光材料を用いて形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる電線は、上記の発明において、前記外側被覆が、暗色に着色されており、前記内側被覆が、明色に発光することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる電線は、導電性を有する材料によって形成され線状をなす導体と、前記導体の外周側に設けられた外側被覆と、前記外側被覆の内周側に設けられ、前記導体を当該導体の外周側から被覆する内側被覆と、を備え、前記内側被覆が、外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明にかかる電線によれば、電線における損耗発生の有無および電線における損耗箇所を容易かつ確実に発見することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明にかかる実施の形態1の電線の構成を示す説明図である。
【図2】この発明にかかる実施の形態2の電線の構成を示す説明図である。
【図3】この発明にかかる実施の形態3の電線の構成を示す説明図である。
【図4】この発明にかかる実施の形態4の電線の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる電線の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
まず、この発明にかかる実施の形態1の電線の構成について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態1の電線の構成を示す説明図である。
【0020】
図1において、この発明にかかる実施の形態の電線(高圧配電線)100は、線状の外観をなしており、電柱に架線される。電線100は、電線100は、芯線(導体)110を備えている。芯線110は、導電性を有する材料によって形成されており、線状をなしている。
【0021】
この実施の形態において、発電所は、たとえば、多相交流の一種である三相交流発電機によって三相交流を発電する。ここで、3つ(三相)の異なった交流電気を時間差を設けて発電した場合、1つ(一相)の交流電気を送るためには1つ(一相)あたり往復で2本ずつ、3つ(三相)の合計で6本の電線100を必要とする。帰路の電線100を1本に束ねた場合にも、3つ(三相)分および帰路の分の合計4本が必要になる。
【0022】
三相交流発電においては、3つ(三相)の異なった交流電気を発電する時間差を調整することにより、帰路分に用いる電線100に電気を流さず、帰路分の電線100を不用とすることができる。これによって、三相交流発電をおこなう送配電設備においては、3つ(三相)の異なった電気を、3本の電線で送電することができる。このため、この発明にかかる実施の形態1の送配電設備においては、各相の電気を流すために、送電路中に3本(三相分)の電線100が架線(架空)されている。
【0023】
電線100は、1本の芯線110を備えて構成されている。芯線110は、たとえば、導電性を有する材料によって形成された複数の素線(導線)を撚りあわせることによって構成されている。芯線110は、チューブ形状をなす外側被覆120の内周側に設けられており、外周側が当該外側被覆120によって被覆されている。
【0024】
外側被覆120は、絶縁性を有する材料によって形成されている。外側被覆120は、たとえば、架橋ポリエチレン、ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、ビニルなどの材料によって形成されている。外側被覆120は、たとえば、黒色などの暗色に着色されている。
【0025】
電線100の半径方向に沿って芯線110と外側被覆120との間には、内側被覆130が設けられている。すなわち、上記の芯線110は、内側被覆130の内周側に設けられており、内側被覆130と外側被覆120とによって二重に被覆されている。内側被覆130は、照射された外光を反射する材料を用いて形成されている。照射された外光を反射する材料は、たとえば、金属材料によって実現することができる。あるいは、照射された外光を反射する材料は、たとえば、鏡のように、表面の平滑性が高い高分子材料によって実現されるものであってもよい。
【0026】
あるいは、照射された外光を反射する材料は、たとえば、非金属材料によって形成されたチューブ形状をなす部材の外周面に塗装を施すメタリック塗料やマイカ塗料などによって実現されるものであってもよい。メタリック塗料は、粉砕されてペースト状にされたアルミ箔を含んでいるため、外光が照射された際には当該外光をアルミ片によって反射することにより細かい光沢を放つ。
【0027】
メタリック塗料を用いて内側被覆130を形成する場合、メタリック塗料に含まれるアルミの腐食を避けるため、内側被覆130の外表面にクリア塗装を施してもよい。マイカ塗料は、メタリック塗料におけるアルミ片に代えて合成雲母片を含んでおり、外光が照射された際には当該外光を合成雲母片によって反射することにより細かい光沢を放つ。
【0028】
あるいは、照射された外光を反射する材料は、たとえば、非金属材料によって形成されたチューブ形状をなす部材の外周面に塗装を施すパール塗料(パール顔料を含む塗料)によって実現されるものであってもよい。パール塗料に含まれるパール顔料は、コア(基材)と称される半透明の粒子(天然の雲母など)を、酸化チタンや酸化鉄などの金属酸化物によってコーティングした構造をなしている。干渉パール、着色パール、複合パールなど公知の各種のパール顔料を含むパール塗料を用いることができる。
【0029】
内側被覆130は、外周面に凹凸加工が施されている。凹凸加工は、たとえば、照射された外光を反射する材料によって形成された内側被覆の表面にエンボス加工を施すことによって実現することができる。また、凹凸加工は、たとえば、内側被覆130の表面に、照射された外光を反射する材料を用いて形成された突起を、複数設けることによって実現してもよい。
【0030】
電線100は、空中に架け渡された(架空された状態)で、電柱や鉄塔によって支持される。電線100は、たとえば、当該電線100が道路上にある場合は、横断歩道橋の上にある場合を除き、路面から5メートル以上の高さ位置に架空される。また、電線100は、たとえば、当該電線100が横断歩道橋の上にある場合、横断歩道橋の路面から3メートル以上の高さ位置に架空される。また、電線100は、たとえば、当該電線100が鉄道または軌道を横断する場合、軌条面から6メートル以上の高さ位置に架空される。
【0031】
電線100においては、黒色などの暗色をなす外側被覆120が破れると、照射された外光を反射する材料を用いて形成された内側被覆130が露出する。内側被覆130は照射された外光を反射するため、電柱などに架線されている電線100を地上から巡視した場合に、内側被覆130が露出した部分を目立たせることができる。これによって、電線100における損耗発生の有無および電線100の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0032】
また、外側被覆120が黒色などの暗色の材料によって形成されているため、内側被覆130が照射された外光を反射することによって、損耗した箇所と損耗していない箇所とを容易に区別することができる。これによって、電柱などに架線されている電線100を地上から巡視した場合も電線100の損耗箇所を発見することができるので、電線100における損耗発生の有無および電線100の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0033】
また、内側被覆130の表面に施された凹凸加工によって照明光が乱反射するため、内側被覆130が露出した部分を目立たせることができる。これによって、地上からの巡視によっても、電線100における損耗発生の有無および電線100の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0034】
また、夜間の巡視に際して電線100を地上から照明した場合は、内側被覆130が露出した部分が照明光を反射するため、地上からの巡視によっても内側被覆130が露出した部分を目立たせることができる。これによって、夜間の巡視など、電線100の周囲が暗い場合であっても、内側被覆130が露出した部分を地上からの巡視によって発見することができるので、電線100における損耗発生の有無および電線100の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0035】
さらに、内側被覆130の表面に施された凹凸加工によって照明光が乱反射するため、夜間の巡視など、電線100の周囲が暗い場合であっても、内側被覆130が露出した部分を目立たせ、内側被覆130が露出した部分を地上からの巡視によって発見することができる。これによって、電線100における損耗発生の有無および電線100の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0036】
また、内側被覆130の表面に施された凹凸加工によって照明光が乱反射するため、内側被覆130が露出した部分にカラスなどの動物が留まることを防ぐ「動物避け」としての効果を期待することができる。これによって、内側被覆130が露出した部分にカラスなどの動物が留まることによる停電の発生を防止する効果を期待することができる。
【0037】
このように、この発明にかかる実施の形態1の電線100を用いることにより、停電原因の早期発見および停電時間の短縮を図ることができる。また、この発明にかかる実施の形態1の電線100を用いることにより、停電が発生した際に作業員がおこなう巡視作業における当該作業員の負担軽減を図ることができる。また、この発明にかかる実施の形態1の電線100を用いることにより、定例巡視に際しての作業効率の向上を図ることができる。
【0038】
また、この発明にかかる実施の形態1の電線100を用いることにより、万一、電線100の損耗が発生した場合における、鳥獣による停電の防止効果を期待することができる。また、この発明にかかる実施の形態1の電線100を用いることにより、停電の発生を抑制することができるので、たとえば、電力供給会社がおこなう停電割引作業の発生を低減し、当該停電割引作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
【0039】
また、この発明にかかる実施の形態1の電線100を用いることにより、停電原因を早期に発見することができ、これによって停電時間の短縮を図ることができるので、上記の停電割引にかかる割引額などの費用の削減を図ることができる。これによって、停電が発生することによる電力供給会社の負担軽減を図ることができる。
【0040】
(実施の形態2)
つぎに、この発明にかかる実施の形態2の電線の構成について説明する。この発明にかかる実施の形態2においては、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
【0041】
図2は、この発明にかかる実施の形態2の電線の構成を示す説明図である。図2において、この発明にかかる実施の形態2の電線200は、芯線110と、外側被覆120と、内側被覆210と、を備えている。
【0042】
内側被覆210は、照射された外光を反射する材料に加えて、外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を含む材料を用いて形成されている。外部から供給されたエネルギーによって発光する材料は、たとえば蛍光塗料(蛍光材料、蛍光顔料)によって実現することができる。蛍光塗料(蛍光材料、蛍光顔料)は、ルミネセンス(luminescence)による発光現象を生じる。
【0043】
ルミネセンスは、蛍光塗料(顔料)が電磁波や熱、摩擦などによりエネルギーを受け取って励起され、その受け取ったエネルギーを特定波長の光として放出する発光現象であり、この発明にかかる実施の形態2の電線において、ルミネセンスは、励起源からのエネルギーの供給を絶つと直ちに発光が止まる蛍光および励起源からのエネルギーの供給を絶っても残光を発する燐光や蓄光を含むものとする。また、この発明にかかる実施の形態2の電線において、外部から供給されたエネルギーによって発光する材料は、電圧が加えられることによって発光する無機EL(electro−luminescence)材料を含む。
【0044】
内側被覆210は、蛍光塗料を含むため、太陽光や巡視に際しての照明光などの外光が照射された場合に、当該外光における短波長成分を吸収し、吸収した外光のエネルギーを放出することによって不安定な状態から安定な状態へ戻る際に、長波長の可視光を放出する。このように、内側被覆210は、太陽光や巡視に際しての照明光などの外光が照射された際に、照射された外光のエネルギーによって発光する。
【0045】
電線200においては、黒色などの暗色をなす外側被覆120が破れると、照射された外光を反射する材料および外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を用いて形成された内側被覆210が露出する。内側被覆210は照射された外光を反射するため、電柱などに架線されている電線200を地上から巡視した場合、内側被覆210が露出した部分を目立たせることができる。
【0046】
また、内側被覆210は照射された外光のエネルギーによって発光するため、電柱などに架線されている電線200を地上から巡視した場合、内側被覆210が露出した部分を目立たせることができる。内側被覆210は、内側被覆210自体が発光するため、夜間、薄暮時、悪天候時の巡視などの視認が低下しがちな環境下における内側被覆210の視認性を確保し、内側被覆210が露出した部分を目立たせることができる。
【0047】
このように、この発明にかかる実施の形態2の電線200によれば、外側被覆120が破れて内側被覆210が露出した場合に、夜間、薄暮時、悪天候時の巡視などの視認が低下しがちな環境下における内側被覆210の視認性を確保し、内側被覆210が露出した部分を目立たせることができるので、電線100における損耗発生の有無および電線200の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0048】
この発明にかかる実施の形態2の電線200においては、内側被覆210の表面に、凹凸加工が施されていてもよい。内側被覆210の表面に凹凸加工が施されている場合、太陽光や巡視に際しての照明光などの外光が、凹凸加工部分によって乱反射される。これによって、夜間、薄暮時、悪天候時の巡視などの視認が低下しがちな環境下における内側被覆210の視認性を確保し、電線200の周囲が暗い場合であっても内側被覆210が露出した部分を目立たせることができる。これによって、電線200における損耗発生の有無および電線200の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0049】
また、内側被覆210の表面に施された凹凸加工によって照明光が乱反射するため、内側被覆210が露出した部分にカラスなどの動物が留まることを防ぐ「動物避け」としての効果を期待することができる。これによって、内側被覆210が露出した部分にカラスなどの動物が留まることによる停電の発生を防止する効果を期待することができる。
【0050】
電線200における内側被覆210は、照射された外光を反射する材料を含まず、外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を含む材料のみを含んで形成されていてもよい。これによっても、夜間、薄暮時、悪天候時の巡視などの視認が低下しがちな環境下における内側被覆210の視認性を確保し、電線200の周囲が暗い場合であっても内側被覆210が露出した部分を目立たせることができる。そして、これによって、電線200における損耗発生の有無および電線200の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0051】
(実施の形態3)
つぎに、この発明にかかる実施の形態3の電線の構成について説明する。この発明にかかる実施の形態3においては、上述した実施の形態1、2と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
【0052】
図3は、この発明にかかる実施の形態3の電線の構成を示す説明図である。図3において、この発明にかかる実施の形態3の電線300は、芯線110と、外側被覆120と、内側被覆130(あるいは、内側被覆210でもよい)と、を備えている。電線300の半径方向に沿って外側被覆120と内側被覆130(内側被覆210)との間には、空間310が設けられている。
【0053】
電線300においては、外側被覆120と内側被覆130(内側被覆210)との間に空間310が設けられているため、外側被覆120が破れた場合にも、外側被覆120に引っ張られて内側被覆130(内側被覆210)が破れることを防止することができる。これによって、電柱などに架線されている電線300を地上から巡視した場合、内側被覆130(内側被覆210)が露出した部分を目立たせることができ、電線300における損耗発生の有無および電線300の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0054】
また、電線300においては、外側被覆120と内側被覆130(内側被覆210)との間に空間310が設けられているため、外側被覆120が破れた場合には、破れたことによる開口部分を介して、太陽光や巡視に際しての照明光などの外光が空間310の内側にも入り込む。
【0055】
これによって、電線300が、照射された外光を反射する材料を用いて形成されている内側被覆130(あるいは内側被覆210)を備えている場合は、内側被覆130(あるいは内側被覆210)によって反射する光量を増やすことができる。一方、電線300が、外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を含む材料を用いて形成されている内側被覆210を備えている場合は、内側被覆210における発光量を増やすことができる。
【0056】
これによって、電柱などに架線されている電線300を地上から巡視した場合、内側被覆210が露出した部分を目立たせることができるので、電線300における損耗発生の有無および電線300の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。特に、夜間、薄暮時、悪天候時の巡視などの視認が低下しがちな環境下における内側被覆210の視認性を確保することができ、電線300の周囲の環境に左右されることなく、電線300における損耗発生の有無および電線300の損耗箇所を容易かつ確実に発見することができる。
【0057】
(実施の形態4)
つぎに、この発明にかかる実施の形態4の電線の構成について説明する。この発明にかかる実施の形態4においては、上述した実施の形態1、2、3と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
【0058】
図4は、この発明にかかる実施の形態4の電線の構成を示す説明図である。図4において、この発明にかかる実施の形態4の電線400は、芯線110と、外側被覆120と、内側被覆410と、を備えている。内側被覆410は、電線400の半径方向に沿って複数設けられている。この発明にかかる実施の形態4の電線400において、内側被覆410は、内側被覆410aと内側被覆410bとの2層によって構成されている。
【0059】
内側被覆410aと内側被覆410bとは、それぞれ、異なる材料を用いて形成されている。具体的には、たとえば、内側被覆410aは照射された外光を反射する材料を用いて形成され、内側被覆410bは外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を用いて形成されている。
【0060】
あるいは、内側被覆410を、照射された外光を反射する材料を用いて形成する場合、内側被覆410aと内側被覆410bとは、それぞれ、異なる色で反射するように、異なる着色材料を用いて形成されていてもよい。具体的には、たとえば、内側被覆410aは緑色に反射する材料を用いて形成され、内側被覆410bは赤色に反射する材料を用いて形成することができる。
【0061】
あるいは、内側被覆410を、外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を用いて形成する場合、内側被覆410aと内側被覆410bとは、それぞれ、異なる色で発光するように、異なる着色材料を用いて形成されていてもよい。具体的には、たとえば、内側被覆410aは黄色に発光する材料を用いて形成され、内側被覆410bは赤色に発光する材料を用いて形成することができる。
【0062】
電線400においては、内側被覆410aと内側被覆410bとの2層によって構成された内側被覆410を備えているため、外側被覆120が破れた場合は、視認される内側被覆410の色によって、電線400の損耗具合(損耗の進行具合)を確認することができる。これによって、たとえば、電線400の損耗が発見された場合に、「赤色であれば緑色(黄色)である場合よりも早急に修復する対応をとる」などのように、内側被覆410の色によって適切な対応をとることができる。
【0063】
また、電線400においては、内側被覆410aと内側被覆410bとの2層によって構成された内側被覆410を備えているため、外側被覆120が破れた場合にも、外側被覆120に引っ張られて内側被覆410(410a、410b)が破れることを防止することができ、電線400の強度を高めることができる。
【0064】
このように、この発明にかかる実施の形態1〜4の電線100、200、300、400によれば、絶縁、ケーブルの防護・防食など、シースあるいは電線自体の損傷を防止することを目的とした従来の電線とは異なり、シースの損傷を積極的に目立たせることによって、電線100、200、300、400の損傷を早期に発見させ、電線100、200、300、400が損傷することによって発生する停電に対する対策を早期におこなうことができる。これによって、電線100、200、300、400の損傷に起因する電気事故の発生を防止することができるので、送電停止という最悪の状況が発生することを防止し、安全性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、この発明にかかる電線は、送配電設備を構成する電線に有用であり、特に、電柱や鉄塔などに架線される電線(架空電線)に適している。
【符号の説明】
【0066】
100 電線
110 芯線
120 外側被覆
130 内側被覆
200 電線
210 内側被覆
300 電線
310 空間
400 電線
410 内側被覆
410a 内側被覆
410b 内側被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する材料によって形成され線状をなす導体と、
前記導体の外周側に設けられた外側被覆と、
前記外側被覆の内周側に設けられ、前記導体を当該導体の外周側から被覆する内側被覆と、
を備え、
前記内側被覆は、照射された外光を反射する材料を用いて形成されていることを特徴とする電線。
【請求項2】
前記内側被覆は、外周面に凹凸加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の電線。
【請求項3】
前記内側被覆は、複数の層をなし、それぞれが異なる色に着色されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電線。
【請求項4】
前記内側被覆は、外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の電線。
【請求項5】
前記内側被覆は、蛍光または蓄光材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電線。
【請求項6】
前記外側被覆は、暗色に着色されており、
前記内側被覆は、明色に発光することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の電線。
【請求項7】
導電性を有する材料によって形成され線状をなす導体と、
前記導体の外周側に設けられた外側被覆と、
前記外側被覆の内周側に設けられ、前記導体を当該導体の外周側から被覆する内側被覆と、
を備え、
前記内側被覆は、外部から供給されたエネルギーによって発光する材料を含むことを特徴とする電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−222364(P2011−222364A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91716(P2010−91716)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】