説明

電荷輸送分子の勾配

【課題】製造中にコーティングするのが簡単である電荷輸送層というだけでなく、画像形成体の性能を顕著に向上させる(例えば、欠損への耐性が高まり、長期間の電気サイクル中の変化が無視できるほどであり、耐摩耗性および耐亀裂性が高まる)。
【解決手段】デジタル装置を含む電子写真式装置で使用するための画像形成装置の部材および要素に有用な層に関する。電荷輸送層を備え、この層の中にたった1種類の電荷輸送層溶液を用いたシングルコーティングパスによって電荷輸送分子(CTM)濃度勾配が作られる電子写真式画像形成体に関し、また、電荷輸送層の厚み方向に沿ってCTM勾配を測定する飛行時間型の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、一般的に、層状の画像形成体、感光体、光伝導体などに関する。より特定的には、本開示は、固定型またはドラム型の感光体に関し、また、多層可とう性ベルト画像形成体、または、基材のような任意要素の支持媒体と、光発生層と、電荷輸送層と、ポリマーコーティング層と、任意要素の接着層と、任意要素の正孔遮断層またはアンダーコート層とで構成されるデバイスに関する。本明細書に示した感光体は、いくつかの実施形態では、耐摩耗性に優れ、寿命が長く、画像形成体の1つ以上の表面層に対し望ましくない印刷欠陥が生じることがあるような(例えば、この引っかき傷が、作成した最終印刷物で見えてしまうような)引っかき傷を完全になくすか、または最低限にし、優れた電気特性を可能にし、長期間の電気サイクル(例えば、10,000回のシミュレーションサイクル)の後にサイクルアップが最低限であり、LCMとして知られる操作時の欠損への耐性が高まっており、機械的に丈夫である。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている画像形成体または光伝導体は、優れた、多くの場合に低いVr(残留電位)をもち、適切な場合に、Vrのサイクルアップを実質的に防ぎ、感度が高く、望ましいトナー洗浄性をもつ。
【0002】
ゼログラフィー用感光体の機能性能を高めることが、切磋琢磨しつつ集中的に行われている。例えば、横方向の電荷移動(LCM)を小さくし、機械強度を高めることが望ましい。また、長期間の電気サイクルの間にみられる電気特性の変化が最低限であることも望ましい。電荷輸送層(CTL)の表面にある電荷輸送分子の濃度は、輸送分子の酸化によって生じる横方向の電荷移動(LCM)の深刻さに関し、既知の因子である。また、CTL全体の電荷輸送分子の濃度は、PRデバイス中の応力による印刷されてしまうほどの亀裂生成に関し、既知の因子である。表面の輸送分子の濃度が小さいほど、LCMの深刻さは低い。また、全体的な輸送分子の濃度が小さいほど、そのデバイスに印刷されてしまうほどの亀裂を生じにくくなるだろう。ここで開示されている実施形態は、電荷輸送層を備え、その中に、電荷輸送分子(CTM)の濃度勾配があり、CTL表面でのCTMの濃度が、CTLの基材側の濃度よりも低い、画像形成体または光伝導体に関する。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に示されている態様によれば、導電性基材と;電荷発生層と;電荷輸送分子およびポリマーバインダーを含む電荷輸送層とを含み、ここで、層の厚みが約15〜約35ミクロンであり、さらに、飛行時間型測定によって、いくつかの実施形態では、電荷輸送層の基材側から表面側への輸送を、電荷輸送層の表面側から基材側への輸送と比較して測定する、10V/μmの電界強度を用いた飛行時間型測定によって測定した場合の過渡光電流は、電荷が電荷輸送層自体に直接発生する場合に測定すると、差δが−0.5V/s未満であり、または、電荷が電荷発生層近傍で発生する場合に測定すると、差δが−0.8V/s未満であり、この差は、
δ=α−β
に基づき、ここで、αは、基材側から表面側への過渡電流の平坦領域の傾きであり、βは、表面側から基材側への過渡電流の平坦領域の傾きである、画像形成体が提供される。別の実施形態は、電荷輸送層が、シングルコーティングパスで1種類の溶液を用い、電荷発生層の上部に塗布される画像形成体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1A】図1Aは、電荷がCTL内のCTL表面側で直接発生する、電荷輸送層に飛行時間型測定を行うために使用されるサンプルセルの断面図を示す。
【図1B】図1Bは、電荷がCTL内のCTL基材側で直接発生する、電荷輸送層に飛行時間型測定を行うために使用されるサンプルセルの断面図を示す。
【図2A】図2Aは、電荷が、CTLの基材側で、CTL近傍の別個の発生層に発生する、電荷輸送層に飛行時間型測定を行うために使用されるサンプルセルの断面図を示す。
【図2B】図2Bは、電荷が、CTLの表面側で、CTL近傍の別個の発生層に発生する、電荷輸送層に飛行時間型測定を行うために使用されるサンプルセルの断面図を示す。
【図3A】図3Aは、配合された電荷輸送層のCTLに電荷が直接発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、配合された別の電荷輸送層のCTLに電荷が直接発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図3C】図3Cは、配合された別の電荷輸送層のCTLに電荷が直接発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図3D】図3Dは、配合された別の電荷輸送層のCTLに電荷が直接発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図3E】図3Eは、別の電荷輸送層のCTLに電荷が直接発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図3F】図3Fは、別の電荷輸送層のCTLに電荷が直接発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図3G】図3Gは、別の電荷輸送層のCTLに電荷が直接発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図4】図4は、電荷輸送層について、基材側から表面側への飛行時間型の過渡光電流に対し、表面側から基材側への飛行時間型の過渡光電流を示し、さらに、それぞれの傾きを決定するときに使用されるそれぞれの過渡電流の線形領域の指定を示すグラフである。
【図5A】図5Aは、配合された電荷輸送層の近傍にあるCGL内に電荷が発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、別の電荷輸送層の近傍にあるCGL内に電荷が発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図5C】図5Cは、別の電荷輸送層の近傍にあるCGL内に電荷が発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図5D】図5Dは、別の電荷輸送層の近傍にあるCGL内に電荷が発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図5E】図5Eは、別の電荷輸送層の近傍にあるCGL内に電荷が発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図5F】図5Fは、配合された別の電荷輸送層の近傍にあるCGL内に電荷が発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図5G】図5Gは、配合された別の電荷輸送層の近傍にあるCGL内に電荷が発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図5H】図5Hは、比較例の電荷輸送層の近傍にあるCGL内に電荷が発生する場合に行われた飛行時間型測定の結果を示すグラフである。
【図6A】図6Aは、配合された電荷輸送層を備えるサンプルデバイスに対して行われた光放電曲線(PIDC)測定の結果を示すグラフである。
【図6B】図6Bは、配合された電荷輸送層を備えるサンプルデバイスに対して行われた光放電曲線(PIDC)測定の結果を示すグラフである。
【図6C】図6Cは、配合された電荷輸送層を備えるサンプルデバイスに対して行われた光放電曲線(PIDC)測定の結果を示すグラフである。
【図6D】図6Dは、本実施形態にしたがって配合された電荷輸送層を備えるサンプルデバイスに対して行われた光放電曲線(PIDC)測定の結果を示すグラフである。
【図6E】図6Eは、配合された電荷輸送層を備えるサンプルデバイスに対して行われた光放電曲線(PIDC)測定の結果を示すグラフである。
【図6F】図6Fは、配合された電荷輸送層を備えるサンプルデバイスに対して行われた光放電曲線(PIDC)測定の結果を示すグラフである。
【図6G】図6Gは、配合された電荷輸送層を備えるサンプルデバイスに対して行われた光放電曲線(PIDC)測定の結果を示すグラフである。
【図6H】図6Hは、配合された電荷輸送層を備えるサンプルデバイスに対して行われた光放電曲線(PIDC)測定の結果を示すグラフである。
【図7】図7は、比較例と、配合された電荷輸送層を備えるサンプルデバイスについて行われたスコロトロン欠損印刷試験の結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本実施形態では、電荷輸送層は、シングルパスで光発生層の上に配置される。より特定的には、本明細書には、1種類の溶液を用いるシングルパスコーティング方法によって作られる、支持基材と、正孔障壁層と、接着層と、光発生層と、電荷輸送層とで構成され、厚みが、例えば、約1〜約100ミクロン、約10〜約50ミクロン、または約5〜約30ミクロンである、感光体が開示されている。
【0006】
さらに、本実施形態では、電荷輸送層は、特定の電荷輸送材料(CTM)の濃度勾配をもつ。したがって、本実施形態は、特定の濃度勾配をもつ電荷輸送層、この層を特性決定する方法を提供する。輸送層の濃度勾配は、特定の溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF)およびジクロロメタン(DCM)溶媒)中、N,N’−ジフェニル−N,N’ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]− 4,4’ジアミン(TPD)輸送分子を用いて調製したシクロヘキシルポリカーボネート(PCZ)またはビスフェノールAポリカーボネート(PCA)を用いる、単一溶液のシングルパスコーティング法によって作られる。したがって、本実施形態は、電荷輸送層内にCTM濃度勾配をもつ画像形成体を製造する単純で効率的な方法を提供する。この電荷輸送層は、製造中にコーティングするのが簡単であるというだけでなく、画像形成体の性能を顕著に向上させる(例えば、欠損への耐性(LCM)が高まり、長期間の電気サイクル中の変化が無視できるほどであり、耐摩耗性および耐亀裂性が高まっている)。
【0007】
バインダー分子量を大きくし、溶媒の種類を増やすと、濃度勾配の傾きが大きくなり、基材表面での濃度が大きくなることが観察されている。勾配の証拠は、電荷輸送層コーティングで測定される移動の過渡電流によって得られる。本実施形態の電荷輸送層を用いて作られた画像形成体は、現行の製造デバイスと同様の光誘起放電特性を示した。表面でのCTM濃度が低い画像形成体は、表面でのCTM濃度が高いサンプルよりも欠損が少ない印刷物を与えた。
【0008】
いくつかの実施形態では、電荷輸送層は、電荷輸送層の底部で濃度が最も高く、電荷輸送層の上部に向かう方向に濃度が低下していくようなCTM勾配をもっており、そのため、濃度が最も低いのは、電荷輸送層の表面である。いくつかの実施形態では、CTLのCTM濃度勾配は、CTLの基材側から表面側への輸送を、CTLの表面側から基材側への輸送と比較して測定する飛行時間型過渡光電流の比較結果によって明らかになる。特定的には、CTM濃度勾配の大きさおよび方向は、基材側から表面側への飛行時間型過渡光電流に対し、表面側から基材側への飛行時間型過渡光電流のそれぞれの平坦領域の傾きの差δによって定義される。
【0009】
特定の実施形態では、電荷輸送分子は、以下の式を有するトリ−アリールアミンであってもよく、
【化1】

式中、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立して置換または非置換のアリール基をあらわすか、または、Arは、独立して、置換または非置換のアリーレン基をあらわし、kは、0または1をあらわす。Arは、さらに、例えば、置換フェニル環、置換/非置換のフェニレン、置換/非置換の一価の結合した芳香族環、例えば、ビフェニル、ターフェニルなど、または置換/非置換の融合芳香族環、例えば、ナフチル、アントラニル、フェナントリル、などであると定義されてもよい。さらなる実施形態では、トリ−アリールアミンは、以下のいずれかの基
【化2】

【化3】

およびこれらの混合物のいずれかから選択されてもよく、ここで、Rは、水素原子、アリール基または場合により置換基を含むアルキル基をあらわす。特定の実施形態では、電荷輸送層のバインダーは、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−A−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリデンジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−Z−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−3,3’−ジメチル−ジフェニル)カーボネート(ビスフェノール−C−ポリカーボネートとも呼ばれる)からなる群から選択されてもよく、特定の実施形態では、溶媒は、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、モノクロロベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0010】
電荷輸送層内の濃度勾配を評価するために、サンプルに対し、2種類の飛行時間型(TOF)測定を行う。1つめの測定は、正孔電荷が輸送層の表面に発生し、基材に向かって移動するときに行われ、2つめの測定は、正孔電荷が輸送層の基材側に発生し、表面に向かって移動するときに行われる。これらの測定は、正孔の光電流が電荷輸送層を通って電荷輸送される方向のみについて比較するために、それぞれ同一の条件で行われる。
【0011】
電荷輸送層を通るいずれかの方向で電荷輸送を測定する能力は、2種類の様式のどちらかで達成することができる。電荷輸送層が半透明の導電性基材に直接コーティングされており、半透明の導電性電極が、電荷輸送層の表面に塗布されている場合、電荷は、電荷輸送層自体に直接発生させることができる。これは、電荷輸送層の輸送分子の最大吸収に近い波長の光パルスを光らせることによって、電荷が発生するときにTOF測定を行うことによって達成される。基材側の電極または表面側の電極のいずれかを通る、波長を調整したパルスを光らせることによって、CTLの基材側または表面側のどちらかに電荷を発生させることができる。
【0012】
または、典型的な二層感光体のように、電荷輸送層が、電荷発生層でオーバーコーティングされている導電性基材の上にコーティングされている場合、電荷が発生層に発生し、輸送層の基材側から表面へと移動させることができる。これとは逆に、輸送層の表面側から基材への輸送を測定するために、電荷輸送層の表面が第2の発生層でオーバーコーティングされているサンプルを調製する。これにより、このオーバーコーティングされた発生層によって電荷を発生させ、CTLの表面側に注入し、基材へと輸送することができる。輸送層の材料の吸光ピークとは相補的な吸光ピークをもつ発生層材料を選ぶことによって、電荷を輸送層ではなく、発生層にのみ発生させることができる。したがって、輸送層には最低限しか吸収されないが、発生層の顔料または染料には最大限吸収されるような波長の光パルスを光らせることによって、飛行時間型測定中に、電荷は、光によって発生層にのみ発生する。
【0013】
この実施形態では、別個の電荷発生層に電荷を発生させる後者の方法が好ましい。別個の電荷発生層を使用することで、不透明支持材の上に調製されたデバイス(例えば、アルミニウムドラムの上にある感光体デバイスと一体化した電荷輸送層)を調べることができる。
【0014】
図1Aおよび図1Bは、飛行時間型測定に使用されるサンプルセルの断面を示し、電荷5は、電荷輸送層内に直接発生する。図1Aは、電荷がCTLの表面側25に発生する場合を示し、図1Bは、電荷がCTLの基材側22に発生する場合を示す。電荷輸送層のサンプルは、上述のように調製される。電荷輸送層サンプル20は、半透明の導電性支持材の上にコーティングされており、半透明の導電性支持材は、いくつかの実施形態では、約0.05〜0.5umのシラン層30でオーバーコートされており(支持基材10の上部に金属電極15を配置し、次いでシラン層30を配置する)、これを周囲条件下で12時間乾燥させ、次いで、強制換気オーブン中、120℃で30分間熱処理し、次いで、周囲温度まで冷却させた。飛行時間型サンプルセルは、上側の電極アセンブリと底部の電極アセンブリ(10、15、30を含む)との間にCTL20を挟むように、電荷輸送層サンプル20の表面25に対し加圧接触させ、上部の電極アセンブリ(10、15、30を含む)(例えば、半透明の金属化支持基材)を適用することによって組み立てられる。圧縮装置(飛行時間型測定のための光が、最低限の減衰でCTLに到達することができるように透明な窓を備える)を用い、1MPaの圧力を加え、上側の電極アセンブリ(10、15、30を含む)とCTLサンプル表面25との密な接点を作成する。次いで、電荷が、電荷輸送層20の表面側25に発生し、電荷輸送層20の基材側22に向かって動くとき、またはその逆に、電荷が、電荷輸送層20の基材側22に発生し、表面側25に向かって動くときに、飛行時間型測定を行ってもよい。N,N’−ジフェニル−N,N’ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’ジアミン(TPD)およびポリカーボネートで構成されるCTLの場合、波長337nmの光パルスを約10ns加え、CTLに電荷を直接発生させた。いくつかの実施形態では、電極15は、例えば、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、クロム、ニッケル、銀、金、インジウムスズオキシド、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)およびこれらの混合物を含む金属を含んでいてもよい。
【0015】
図2Aおよび図2Bは、飛行時間型測定に使用されるサンプルセルの断面を示し、電荷は、電荷輸送層20の近傍にある別個の発生層35内で発生する。電荷輸送層のサンプルは、上述のように調製される。いくつかの実施形態では、電荷輸送層20は、厚みが約20μm〜30μmである。電荷発生層を使用することで、不透明基材10の上にある感光体(例えば、ドラム感光体)の中の電荷輸送分子の勾配を評価することができる。したがって、これらの実施形態では、CTLの基材側22に電荷5を発生させるために、このデバイスは、例えば図2Aに示されるように、顔料含有層35が、CTLの基材側22に位置するような構成になっている。CTLの表面側25に電荷を発生させるために、このデバイスは、例えば図2Bに示されるように、顔料含有層35が、CTLの表面側25に位置するような構成になっている。これらの発生層を含むサンプルは、上述と同様の様式で調製される。図2Aのサンプルは、金属化された支持基材10を約0.1umのシラン層30でオーバーコーティングし、次いで、約0.5umの電荷発生層35でオーバーコーティングすることによって調製される。次いで、電荷輸送層サンプル20は、発生層35でコーティングされた導電性支持基材10の上にコーティングされ(支持基材10の上部に金属電極15を配置し、次いでシラン層30、次いで発生層35を配置する)、周囲条件下で12時間乾燥させ、次いで、強制換気オーブン中、120℃で30分間熱処理し、次いで、周囲温度まで冷却させた。図2Bのサンプルは、シラン30でオーバーコーティングされ、次いで、約0.5umの電荷発生層35でオーバーコートされた導電性支持材10の上に電荷輸送層サンプル20をコーティングすることによって調製される(支持基材10の上部に金属電極15を配置し、次いでシラン層30、次いで発生層35を配置する)。次いで、電荷輸送層20を周囲条件下で12時間乾燥させ、次いで、強制換気オーブン中、120℃で30分間熱処理し、次いで、周囲温度まで冷却した。その後、電荷輸送層サンプルは、約0.5umの電荷発生層35でオーバーコーティングされる。どちらの場合でも、飛行時間型サンプルセルは、その後に、上述したのと似た様式で組み立てられる。特に、飛行時間型サンプルセルは、上側の電極アセンブリと底部の電極アセンブリ(10、15、30を含む)との間にCTL20およびCGL35を挟むように加圧接触させ、上部の電極アセンブリ(10、15、30を含む)(例えば、半透明の金属化支持基材)を適用することによって組み立てられる。圧縮装置(飛行時間型測定のための光が、最低限の減衰でCTLに到達することができるように透明な窓を備える)を用い、1MPaの圧力を加え、上側の電極アセンブリ(10、15、30を含む)とCTLサンプル表面25との密な接点を作成する。N,N’−ジフェニル−N,N’ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’ジアミン(TPD)と、ポリカーボネートと、ヒドロキシガリウムフタロシアニンおよびポリカーボネートを含む電荷発生層とを含む電荷輸送層の場合、波長が650nmの光パルスを約10nm用い、発生層だけに電荷を発生させた。
【0016】
上述の方法を用い、表面側から基材側への電荷輸送を、基材側から表面側への従来の電荷輸送と比較することによって、CTL内のCTM濃度勾配を評価することができる。電荷をCTL内に直接発生させる方法の改変法を用い、数種類の異なる電荷輸送層配合物をこの様式で比較した。結果を図3A〜3Gに示す。
【0017】
図3Aは、50wt%のトリフェニルジアミン(TPD)および50wt%のPCZ−200(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約20,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が40%のジクロロメタン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、電荷は紫外(UV)光パルスによってCTL内に直接発生するサンプル1の飛行時間型測定を示す。電荷輸送層は、厚みが30μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0018】
図3Bは、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−400(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約40,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が28%のジクロロメタン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、電荷はUV光パルスによってCTL内に直接発生するサンプル2の飛行時間型測定を示す。電荷輸送層は、厚みが24μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0019】
図3Cは、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−800(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約80,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が17%のジクロロメタン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、電荷はUV光パルスによってCTL内に直接発生するサンプル3の飛行時間型測定を示す。電荷輸送層は、厚みが26μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0020】
図3Dは、50wt%のTPDおよび50wt%のMakrolon 5705(登録商標)(Farbenfabriken Bayer A.G.、分子量が約50,000〜約100,000のビスフェノールAポリカーボネート)を含む、固体含有量が17%のジクロロメタン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、電荷はUV光パルスによってCTL内に直接発生するサンプル4の飛行時間型測定を示す。電荷輸送層は、厚みが40μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0021】
図3Eは、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−200(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約20,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が44%のテトラヒドロフラン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、電荷はUV光パルスによってCTL内に直接発生するサンプル5の飛行時間型測定を示す。電荷輸送層は、厚みが27μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0022】
図3Fは、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−400(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約40,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が34%のテトラヒドロフラン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、電荷はUV光パルスによってCTL内に直接発生するサンプル6の飛行時間型測定を示す。電荷輸送層は、厚みが34μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0023】
図3Gは、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−800(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約80,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が24%のテトラヒドロフラン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、電荷はUV光パルスによってCTL内に直接発生するサンプル7の飛行時間型測定である。電荷輸送層は、厚みが30μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0024】
飛行時間法を用い、CTLを流れる光電流の流れを時間の関数としてプロットし、得られた曲線は、過渡電流と呼ばれる。CTMがCTL全体に均一に分布している場合、CTLの表面側から基材側への電荷輸送の過渡電流は、CTLの基材側から表面側への電荷輸送の過渡電流と同じはずである。これは、過渡光電流が図3Aに示されているサンプル1の場合であると考えられる。基材側から表面側へ移動するための全体的な光電流(上側の曲線)は、表面側から基材側へ移動するときの全体的な光電流(下側の曲線)よりもいくらか大きいという事実はあるものの、2つの過渡電流は、同じ形状をしている。最も重要なことは、この2つの過渡電流は、よく似た傾きの平坦部分を有しており、このことは、電荷を輸送する方向とは独立して、CTLを通る輸送が同じ速度で起こることを示している。
【0025】
CTLの厚み方向に沿ってCTMの分布に勾配がある場合、CTLの表面側から基材側への電荷輸送の過渡電流は、基材側から表面側への輸送の過渡電流とは異なっているだろう。例えば、それぞれ、図3B、図3C、図3D、図3E、図3Fおよび図3Gのサンプル2、3、4、5、6および7を参照。これらの過渡電流の形状の差によって暗示される勾配の方向および大きさは、その平坦な領域の相対的な傾きを調べることによって決定することができる。この方法によってCTMの絶対的な濃度勾配を算出することはできないが、基材側から表面側への飛行時間型の過渡光電流に対し、表面側から基材側への飛行時間型の過渡光電流のそれぞれの平坦な領域の勾配の差δを得ることによって、相対値を算出することができる。次いで、このパラメータδを用い、種々のサンプルのCTM勾配の方向および大きさを比較することができる。サンプル2の基材側から表面側への飛行時間型の過渡光電流に対し、表面側から基材側への飛行時間型の過渡光電流のそれぞれの平坦な領域の傾きを分析した結果を図4に示す。パラメータδは、式(1)によって算出される。
式(1):δ=α−β
式中、αは、基材側から表面側への過渡電流の平坦領域の傾きであり、βは、表面側から基材側への過渡電流の平坦領域の傾きである。完全に均質なCTM分布をもつCTLの場合、過渡電流の平坦な領域の傾きは、理想的には平らなはずである。しかし、CTLにCTMが均一に分布している場合であっても、実際の条件では、電荷を捕捉する固有の影響があり、いくらか負の傾きをもつ平坦部分を生じる。以上の観点から、平らな部分または正の傾きをもつ(上昇していく)平坦部分は、その輸送方向での電荷の流れが促進されていることの指標であり、一方、負の傾き(低下していく)は、その輸送方向の電荷の流れが減速していることの指標である。このように、CTM濃度が高くなる場合、電荷の流れは、その輸送方向において、CTLの厚み方向に増加していなければならない。逆に、CTM濃度を下げる電荷の流れは、その輸送方向においてCTLの厚み方向に低下していなければならない。
【0026】
しかし、濃度勾配は、電荷輸送層を通る全体的な輸送時間には影響を与えないことから、移動度にも影響を与えないということを留意しておくべきである。低濃度領域で移動度が小さいのは、高濃度領域で移動度が大きいことによって調節される。以下の表1は、図3A〜3Gに示した過渡電流の平坦領域にわたって測定した傾きと、これらの傾きから算出して得られたパラメータδを示す。基材側から表面側への平坦部分の傾きと、表面側から基材側への平坦部分の傾きの差δが大きくなるほど、CTLの厚み方向にわたるCTM勾配の大きさが大きくなる。基材側から表面側への平坦部分の傾きと、表面側から基材側への平坦部分の傾きの差δが負の値のとき、基材側から表面側に向かう方向で、CTLの厚み方向にCTMの濃度が低下している。基材側から表面側への平坦部分の傾きと、表面側から基材側への平坦部分の傾きの差δが正の値のとき、基材側から表面側に向かう方向で、CTLの厚み方向にCTMの濃度が増加している。平坦部分の傾きの差δがゼロに近づくにつれて、CTLの厚み方向にCTM濃度勾配はない。
【表1】

【0027】
上の実施形態に述べているように、CTL内のCTM勾配を測定する方法には、2つの改変法がある。1つめの改変法では、電荷は、CTL内に直接発生し、もう1つの改変法では、電荷は、近傍のCGLに発生する。後者の改変法を示すために、数種類の異なる電荷輸送層配合物を、電荷が近傍のCGLに発生する方法を用いて比較した。結果を図5A〜5Hに示す。
【0028】
図5Aは、サンプル8の飛行時間型測定を示し、この場合、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−200(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約20,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が40%のジクロロメタン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、650nmの光パルスによってCTLの近傍にあるCGLに電荷が発生する。電荷輸送層は、厚みが27μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0029】
図5Bは、サンプル9の飛行時間型測定を示し、この場合、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−400(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約40,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が28%のジクロロメタン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、650nmの光パルスによってCTLの近傍にあるCGLに電荷が発生する。電荷輸送層は、厚みが32μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0030】
図5Cは、サンプル10の飛行時間型測定を示し、この場合、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−800(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約80,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が17%のジクロロメタン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、650nmの光パルスによってCTLの近傍にあるCGLに電荷が発生する。電荷輸送層は、厚みが33μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0031】
図5Dは、サンプル11の飛行時間型測定を示し、この場合、50wt%のTPDおよび50wt%のMakrolon 5705(登録商標)(Farbenfabriken Bayer A.G.、分子量範囲が約50,000〜約100,000であるビスフェノールAポリカーボネート)を含む、固体含有量が17%のジクロロメタン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、650nmの光パルスによってCTLの近傍にあるCGLに電荷が発生する。電荷輸送層は、厚みが29μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0032】
図5Eは、サンプル12の飛行時間型測定を示し、この場合、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−200(登録商標)MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約20,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が44%のテトラヒドロフラン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、650nmの光パルスによってCTLの近傍にあるCGLに電荷が発生する。電荷輸送層は、厚みが34μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0033】
図5Fは、サンプル13の飛行時間型測定を示し、この場合、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−400(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約40,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が34%テトラヒドロフラン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、650nmの光パルスによってCTLの近傍にあるCGLに電荷が発生する。電荷輸送層は、厚みが35μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0034】
図5Gは、サンプル14の飛行時間型測定を示し、この場合、50wt%のTPDおよび50wt%のPCZ−800(登録商標)(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY INC.、分子量が約80,000のビスフェノールZポリカーボネート)を含む、固体含有量が40%のテトラヒドロフラン溶液からキャスト成型した電荷輸送層について、650nmの光パルスによってCTLの近傍にあるCGLに電荷が発生する。電荷輸送層は、厚みが29μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0035】
図5Hは、市販の感光体(XEROX(登録商標)Nuvera(登録商標)製品の感光体)の飛行時間型測定を示し、この場合、650nmの光パルスによってCTLの近傍にあるCGLに電荷が発生する。電荷輸送層は、厚みが約30μmであり、飛行時間型測定は、10V/μmの電場をかけて行われた。
【0036】
以下の表2は、図5A〜5Hに示した過渡電流の平坦領域にわたって測定した傾きと、これらの傾きから算出して得られたパラメータδを示す。
【表2】

【0037】
電荷輸送層は、いくつかの実施形態では、適切な添加剤、例えば、少なくとも1つのさらなるバインダーポリマー、例えば、1〜約5のポリマー、少なくとも1つのさらなる正孔輸送分子、例えば、1〜約7、1〜約4、または1〜約2の酸化防止剤(IRGANOX(登録商標)などのような)をそのほかに含んでいてもよい。感光体基材層の厚みは、経済的な考慮事項、電気的な特性などを含む多くの因子によって変わり、したがって、この層は、かなり大きな厚み(例えば、3,000ミクロンを超える厚み、例えば、約300〜約1,000ミクロン)をもっていてもよく、または最低限の厚みであってもよい。いくつかの実施形態では、この層の厚みは、約75ミクロン〜約300ミクロン、または約100ミクロン〜約150ミクロンである。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−200(登録商標)(分子量平均が約20,000、Mitsubishi Gas Chemical Incから市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物を塩化メチレンに溶解し、固体を27重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電極基材(感光体から電荷発生層と電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0039】
(実施例2)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−400(登録商標)(分子量平均が約40,000、Mitsubishi Gas Chemical Incから市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物を塩化メチレンに溶解し、固体を28重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電極基材(感光体から電荷発生層と電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0040】
(実施例3)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−800(登録商標)(分子量平均が約80,000、Mitsubishi Gas Chemical Incから市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物を塩化メチレンに溶解し、固体を17重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電極基材(感光体から電荷発生層と電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0041】
(実施例4)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、MAKROLON 5750(登録商標)(分子量平均が約50,000〜約100,000、Farbenfabriken Bary A.G.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物を塩化メチレンに溶解し、固体を17重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電極基材(感光体から電荷発生層と電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0042】
(実施例5)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−200(登録商標)(分子量平均が約20,000、Mitsubishi Gas Chemical Inc.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物をテトラヒドロフランに溶解し、固体を44重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電極基材(感光体から電荷発生層と電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0043】
(実施例6)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−400(登録商標)(分子量平均が約40,000、Mitsubishi Gas Chemical Inc.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物をテトラヒドロフランに溶解し、固体を34重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電極基材(感光体から電荷発生層と電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0044】
(実施例7)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−800(登録商標)(分子量平均が約80,000、Mitsubishi Gas Chemical Inc.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物をテトラヒドロフランに溶解し、固体を24重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電極基材(感光体から電荷発生層と電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0045】
(実施例8)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−200(登録商標)(分子量平均が約20,000、Mitsubishi Gas Chemical Inc.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物を塩化メチレンに溶解し、固体を27重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に電荷発生層、接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電荷発生層基材(感光体から電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0046】
(実施例9)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−400(登録商標)(分子量平均が約40,000、Mitsubishi Gas Chemical Inc.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物を塩化メチレンに溶解し、固体を28重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に電荷発生層、接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電荷発生層基材(感光体から電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0047】
(実施例10)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−800(登録商標)(分子量平均が約80,000、Mitsubishi Gas Chemical Inc.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物を塩化メチレンに溶解し、固体を17重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に電荷発生層、接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電荷発生層基材(感光体から電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0048】
(実施例11)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、MAKROLON 5750(登録商標)(分子量平均が約50,000〜100,000、Farbenfabriken Bary A.G.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物を塩化メチレンに溶解し、固体を17重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に電荷発生層、接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電荷発生層基材(感光体から電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0049】
(実施例12)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−200(登録商標)(分子量平均が約20,000、Mitsubishi Gas Chemical Inc.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物をテトラヒドロフランに溶解し、固体を44重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に電荷発生層、接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電荷発生層基材(感光体から電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0050】
(実施例13)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−400(登録商標)(分子量平均が約40,000、Mitsubishi Gas Chemical Inc.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物をテトラヒドロフランに溶解し、固体を34重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に電荷発生層、接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電荷発生層基材(感光体から電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0051】
(実施例14)
以下の手順にしたがってサンプルデバイスを製造した。30mLの褐色ガラス瓶に、高品質TPDを1部、PCZ−800(登録商標)(分子量平均が約80,000、Mitsubishi Gas Chemical Inc.から市販されている既知のポリカーボネート樹脂)を1部入れることによって電荷輸送層を調製した。次いで、得られた混合物をテトラヒドロフランに溶解し、固体を24重量%含有する溶液を作成した。次いで、この溶液を、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)基材の上に電荷発生層、接着層、正孔障壁層、金属接地電極層で構成されるNUVERA(登録商標)製品のベース電荷発生層基材(感光体から電荷輸送層を引いたもの)に手でブレードコーティングし、乾燥させて厚みが約30ミクロンの電荷輸送層を作成した。キャスト膜を室温、高湿度状態で約12時間乾燥させ、次いで、120℃で30分間熱処理した。
【0052】
(比較例1)
比較の目的で、市販されている感光体(XEROX(登録商標)Nuvera(登録商標)製品の感光体)をベンチマークリファレンスデバイスとして用いた。
【0053】
(試験結果)
(飛行時間型測定)
それぞれのサンプルの飛行時間型の過渡光電流測定を、実施例のデバイス1〜14および比較例1を用い、上述の条件で測定した。電荷輸送層の基材側から表面側への輸送と、表面側から基材側への輸送について、過渡光電流を測定した。実施例のデバイス8〜14および比較例1について、電荷が電荷輸送層近傍にある別個の電荷発生層内で発生する場合の表面側から基材側への輸送の飛行時間型測定について、図2Bに示されるように、電荷輸送層の上部にさらなる電荷発生層をコーティングした。このさらなる電荷発生層は、以下の手順にしたがって調製され、電荷輸送層の上に配置された。120mLの褐色ガラス瓶に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン2.4g、PCZ−200(登録商標)(Mitsubishi Gas Chemical,Inc.)0.45g、テトラヒドロフラン44.65g、60mLの1/8インチステンレスショットを入れることによって、電荷発生層の粉砕基剤を調製し、褐色瓶の中の混合物をロールミルで、125RPMで8時間粉砕する。30mLの褐色ガラス瓶に、PCZ−200(登録商標)(Mitsubishi Gas Chemical, Inc.)0.41g、テトラヒドロフラン6.43g、電荷発生層粉砕基材10mgを入れた。褐色瓶の中の混合物をロールミルで、125RPMで15分間粉砕する。次いで、この混合物を、実施例のデバイス8〜14および比較例1の電荷輸送層に手でブレードコーティングし、乾燥時の厚みは約0.5ミクロンであった。キャスト膜を室温、高湿度状態で1時間よりも長い時間乾燥させ、次いで、このシートを120℃で15分間熱処理した。
【0054】
上に述べたように飛行時間型測定のために飛行時間型のサンプルセルを組み立てた。つまり、図1および図2に示されるように、上部の電極(例えば、半透明の金属化支持基材)をサンプルの表面に加圧接触によって貼付した。上部の電極とサンプルとに、透明の窓がついた加圧装置を用いて圧力をかけ、1MPaの圧力をかけ、上部の電極とサンプル表面の密な接点を作成した。適用電場10V/μmで飛行時間測定を行った。実施例1〜7の場合、電荷は、波長が337nm波長の光パルスを10nsかけ、電荷輸送層内に直接発生し、実施例8〜14および比較例1では、波長650nmの光パルス10nsによって、電荷が電荷輸送層近傍の別個の電荷発生層内で発生した。
【0055】
実施例1〜14および比較例1のそれぞれの飛行時間型の過渡光電流を、図3A〜3G、図5A〜5Hに示している。各サンプルの基材側から表面側への輸送および表面側から基材側への輸送の両平坦領域の傾きを図4に示すように分析した。次いで、傾きの差δを等式(1)によって算出した。傾きの分析および「δ」の計算結果を表1および表2に示す。これらの結果から、CTLの厚み方向にCTMの勾配を作成してもよく、その結果、CTLの基材側のCTM濃度は、CTLの表面側と比べて大きく、CTM勾配の大きさは、実施例1〜14および比較例1の異なる配合物によってさまざまであることが明確にわかる。
【0056】
(PIDC特性の比較)
ゼログラフィー電気特性スキャン装置を用いて電気特性および光放電特性を評価し、光誘起放電サイクルを得た後、1回の放電−露光−消去サイクルを連続して行い、それぞれのサイクルで一連の光誘起放電曲線(PIDC)を作成した後、光の強度を段階的に上げていき、種々の露光強度での感光性および表面電位を測定した。このスキャン装置にスコロトロンセットを取り付け、種々の表面電位で一定の電圧を加えた。−500ボルトの表面電位光伝導体を試験し、一連の減光フィルタを制御することによって露光を段階的に上げていき、露光光源は、780nmのキセノンランプであった。種々の露光強度での放電電位は、露光から117ms後に測定した。相対湿度40%、22℃の環境を制御した密閉した光のある部屋でゼログラフィーのシミュレーションを行った。
【0057】
実施例のデバイス8〜14および比較例1について、PIDCの測定を行ない、測定結果を表3にまとめており、ここで、Voは、スコロトロンをチャージしてから336ms後の感光体表面の電圧であり、V1は、1 Erg/cmまで露光してから117ms後の電圧であり、V3は、3 Erg/cmまで露光してから117ms後の電圧であり、Vrは残留電圧であり、10 Ergs/cmより多く露光してから117ms後の平均放電量である。この結果は、本発明の実施例8〜14のデバイスおよび比較例1のデバイスには、かなりわずかな差が示されている。このことは、デバイスの電気特性が、電荷輸送層中に勾配があることによって顕著な影響を受けないことを示す。したがって、電気特性の観点から、これらの結果は、本発明のデバイスが、比較例1と似た電気放電特性を持っていることを示唆している。
【表3】

【0058】
(耐欠損性)
横方向の電荷移動(LCM)を行う印刷試験スキームによって、横方向の電荷移動(LCM)への耐性を評価した。上のようにして調製した手でコーティングした画像形成体の実施例8〜14および比較例1を6インチ×1インチの試験片に切断した。それぞれのデバイスから、各試験片の片方の端を溶媒を用いて洗浄し、基材の上に金属性導電性層を広げる。次いで、露出した金属Ti−Zr導電性層の導電性を測定し、洗浄中に金属が除去されていないことを確認する。露出した金属層の周囲で抵抗を測定するためにマルチメーターを用い、露出した金属Ti−Zr導電性層の導電性を測定した(約1KOhm)。次いで、60mm DC252 Xerox(登録商標)標準感光ドラムを調製し、ドラムの周囲で試験片を露光させ、操作するときには、手でコーティングされたデバイスを接地した。操作中に手でコーティングされたデバイスが除去されないように、このドラムの筺体からクリーニングブレードを除去した。次いで、導電性銅テープを用い、実施例の画像形成体を感光ドラムに取り付け、デバイスの露出した導電性末端をドラムの露出したアルミニウムに接続し、導電性経路を接地し終えた。デバイスを取り付けた後、標準的なマルチメーターを用い、抵抗モードでデバイスとドラムの導電性を測定した。それぞれのデバイスとドラムとの間の抵抗は、それぞれの手でコーティングされたデバイスの導電性コーティングの抵抗と同じであると予想される。次いで、デバイスの末端を3M Scotch(登録商標)テープを用いてドラムに固定し、すべての露出した導電性表面をScotch(登録商標)テープで覆った。次いで、ドラムをDocuColor 252 Xerox(登録商標)(DC252)機に入れ、1ビット、2ビット、3ビット、4ビットおよび5ビットの線を含むテンプレートを印刷した。この機械の設定(現像時のバイアス、レーザの出力、グリッドバイアス)を、上の5本それぞれの線が肉眼で解像されるように調節した。1ビットの線がわずかに見える状態になったら設定を保存し、この印刷をリファレンスとするか、露光前の印刷物とした。ドラムを取り外し、帯電−放電装置に入れ、操作中にコロナ放電を行った。欠損(LCM)を誘発させるために、帯電と放電(サイクル)を25,000サイクル繰り返した。次いで、ドラムをこの装置から取り外し、DC252機に入れ、再びテンプレートを印刷した。
【0059】
実施例8〜14および比較例1について、スコロトロン欠損印刷試験を行った。結果を図7に示し、この結果から、本発明の実施例10、13および14のデバイスは、比較例1よりもかなり欠損への耐性が大きいことが明らかにされたことがわかる。
【0060】
(耐摩耗性/耐亀裂性の向上)
電荷輸送層の表面層付近のTPD濃度が低いため、本発明の実施例10、13および14のデバイスの耐亀裂性および耐摩耗性が向上していると推定される。
【0061】
本実施形態の方法を、ドラムコーティングに十分に適用することができることをさらに注記しておく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材と;
電荷発生層と;
電荷輸送分子およびポリマーバインダーを含む電荷輸送層とを含み、ここで、層の厚みが約15〜約35ミクロンであり、さらに、電荷輸送層の基材側から表面側への輸送を、電荷輸送層の表面側から基材側への輸送と比較して測定する、10V/μmの電界強度を用いた飛行時間型測定によって測定した場合の過渡光電流は、電荷が電荷輸送層自体に直接発生する場合に測定すると、差δが−0.5V/s未満であり、または、電荷が電荷発生層近傍で発生する場合に測定すると、差δが−0.8V/s未満であり、この差は、
δ=α−β
に基づき、ここで、αは、基材側から表面側への過渡電流の平坦領域の傾きであり、βは、表面側から基材側への過渡電流の平坦領域の傾きである、画像形成体。
【請求項2】
前記差δが、電荷が電荷輸送層自体に直接発生する場合に測定すると−0.8V/s未満であり、または、電荷が電荷発生層近傍で発生する場合に測定すると−0.9V/s未満である、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項3】
前記電荷輸送層が、ポリマーバインダーの約45重量%〜約65重量%の濃度の電荷輸送分子を含む、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項4】
前記電荷輸送分子が、以下の一般式によってあらわされる三級アリールアミンを含み、
【化1】

式中、Ar、Ar、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立して、置換または非置換のアリール基をあらわすか、または、Arは、独立して、置換または非置換のアリーレン基をあらわし、kは、0または1をあらわす、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項5】
前記電荷輸送分子が、以下からなる群から選択されるトリ−アリールアミン
【化2】

【化3】

およびこれらの混合物を含み、ここで、Rが、水素原子、アリール基、またはアルキル基であり、場合により置換基を含む、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項6】
前記ポリマーバインダーが、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、エポキシ化合物、これらのランダムコポリマーまたは交互コポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項7】
前記電荷輸送層が、ポリマーバインダーであるビスフェノール−Aポリカーボネートまたはビスフェノール−Zポリカーボネートを含む、請求項6に記載の画像形成体。
【請求項8】
前記電荷輸送層が、そのほかに酸化防止材料を含む、請求項1に記載の画像形成体。
【請求項9】
前記酸化防止材料が、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン酸化防止剤、チオエーテル酸化防止剤、亜リン酸系酸化防止剤、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス−[2−メチル−4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル−アミノフェニル)]−フェニルメタン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の画像形成体。
【請求項10】
導電性基材と;
電荷発生層と;
電荷輸送分子およびポリマーバインダーを含む電荷輸送層とを含み、ここで、層の厚みが約15〜約35ミクロンであり、さらに、電荷輸送層の基材側から表面側への輸送を、電荷輸送層の表面側から基材側への輸送と比較して測定する、10V/μmの電界強度を用いた飛行時間型測定によって測定した場合の過渡光電流は、電荷が電荷輸送層自体に直接発生する場合に測定すると、差δが−0.5V/s未満であり、または、電荷が電荷発生層近傍で発生する場合に測定すると、差δが−0.8V/s未満であり、この差は、
δ=α−β
に基づき、ここで、αは、基材側から表面側への過渡電流の平坦領域の傾きであり、βは、表面側から基材側への過渡電流の平坦領域の傾きであり、さらに、電荷輸送層が、シングルコーティングパスで1種類の溶液を用い、電荷発生層の上部に塗布される、画像形成体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242825(P2012−242825A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97522(P2012−97522)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】