電解コンデンサ
【課題】内金属ケースと外金属ケースの位置合わせが容易な電解コンデンサを提供する。
【解決手段】本発明に係る電解コンデンサ１は、コンデンサ素子２と、コンデンサ素子２を収容した有底筒状の内金属ケース５と、内金属ケース５の開口部を封口する封口部材３と、内金属ケース５を同軸的に覆う有底筒状の外金属ケース６とを備え、外金属ケース６の内周壁に該外金属ケース６内における内金属ケース５の軸方向への移動を制限する制限突起９を形成したことを特徴としている。
【解決手段】本発明に係る電解コンデンサ１は、コンデンサ素子２と、コンデンサ素子２を収容した有底筒状の内金属ケース５と、内金属ケース５の開口部を封口する封口部材３と、内金属ケース５を同軸的に覆う有底筒状の外金属ケース６とを備え、外金属ケース６の内周壁に該外金属ケース６内における内金属ケース５の軸方向への移動を制限する制限突起９を形成したことを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、二重ケース構造を採用した電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【０００２】
一般に、電解コンデンサは、電解液を含浸させたコンデンサ素子と、該コンデンサ素子を収容した有底筒状の金属ケースと、該金属ケースの開口部を封口する封口部材とから構成されている。
かかる電解コンデンサは、定格電圧を超える過電圧、逆電圧または過リプル電流が印加されると、コンデンサ素子の発熱により電解液が気化するので、密閉状態となっている金属ケース内の圧力の上昇が避けられない。金属ケース内の圧力が高くなり過ぎると、金属ケースが破裂したり、弾け飛んだりするおそれがあるため、金属ケースに圧力弁が設けられ、一定圧力以上になると圧力弁が作動し、金属ケース内部の圧力を外部に逃がす構造となっている。
【０００３】
しかしながら、圧力弁が作動すると、気化した電解液（以下、蒸気化電解液という）が圧力弁を通って放出されるため、二重ケース構造を採用した電解コンデンサが従来から検討されている。
例えば、図３に示す特許文献１に記載の電解コンデンサ１０は、底板１１ａに圧力弁１１ｂが形成された内金属ケース１１と、内金属ケース１１を同軸的に覆う有底筒状の外金属ケース１２と、内金属ケース１１の底板１１ａと外金属ケース１２の底板１２ａとの間の空間に配置された吸収部材１３とを備えている。
【０００４】
この電解コンデンサ１０では、内金属ケース１１内の圧力がある程度高くなると、蒸気化電解液が圧力弁１１ｂを通って放出され、吸収部材１３によって速やかに冷却・吸収される。したがって、電解コンデンサ１０によれば、内金属ケース１１内および外金属ケース１２内の圧力上昇を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】実開平４−３６２２３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ところで、電解コンデンサ１０のような二重ケース構造を採用した電解コンデンサでは、内金属ケース１１を外金属ケース１２に収容した後に、外金属ケース１２の開口端近傍を締め付けてくびれ部１１ｃ、１２ｃを同時に形成し、封口部材１４を圧縮することにより、内部の気密性を高めるのが一般的である。
【０００７】
また、組み立てを容易にするために、内金属ケース１１の外周壁と外金属ケース１２の内周壁の間には、通常、クリアランスが設けられている。
言い換えると、内金属ケース１１の外形寸法は、外金属ケース１２の内径寸法よりも僅かに大きく、くびれ部１１ｃ、１２ｃが形成されていない段階においては、内金属ケース１１は外金属ケース１２内で軸方向に移動自在となっている。
【０００８】
このため、従来の電解コンデンサ１０においては、内金属ケース１１および外金属ケース１２の位置合わせをするのが非常に難しく、予め決められた位置にくびれ部１１ｃを形成することができなかったり、または形成中に位置ずれが起きてくびれ部１１ｃがうまく形成できなかったりする場合があった。
【０００９】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、内金属ケースと外金属ケースの位置合わせが容易な電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上記課題を解決するために、本発明に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子を収容した有底筒状の内金属ケースと、内金属ケースの開口部を封口する封口部材と、内金属ケースを同軸的に覆う有底筒状の外金属ケースとを備えた電解コンデンサにおいて、外金属ケースの内周壁に該外金属ケース内における内金属ケースの軸方向への移動を制限する制限突起を形成したことを特徴としている。
【００１１】
この構成によれば、外金属ケースの内周壁に内金属ケースの移動を制限する制限突起が形成されているので、内金属ケースの底板と制限突起とを互いに当接させるだけで、内金属ケースと外金属ケースの位置合わせを簡単に行うことができる。
【００１２】
また、この構成によれば、内金属ケースがより深く差し込まれる方向に内金属ケースおよび外金属ケースの少なくとも一方を付勢し続けるだけで、外金属ケース内において内金属ケースが軸方向へ移動することがなくなるので、くびれ部が誤った位置に形成されるのを確実かつ簡単に防ぐことができる。
【００１３】
ここで、上記制限突起はリング状としてもよいし、所定の間隔おきに全周にわたって形成された複数の突起であってもよい。
【００１４】
また、本発明は、例えば、内金属ケースの底板に形成された圧力弁と、内金属ケースの底板と外金属ケースの底板の間の空間に配置された吸収部材とを備えた、圧力機能を有する電解コンデンサに適用することができる。
【発明の効果】
【００１５】
本発明によれば、内金属ケースと外金属ケースの位置合わせが容易な電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明に係る電解コンデンサの一実施形態を示す部分縦断面図である。
【図２】図１に示す電解コンデンサのＸ−Ｘ線における横断面図であって、（Ａ）は制限突起がリング状の場合、（Ｂ）は制限突起が複数の突起からなる場合である。
【図３】従来の電解コンデンサの部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る電解コンデンサの好ましい実施形態について説明する。
【００１８】
図１に示すように、本実施形態に係る電解コンデンサ１は、電解液を含浸させたコンデンサ素子２と、コンデンサ素子２を収容した有底筒状の内金属ケース５と、内金属ケース５の開口部を封口する封口部材３と、コンデンサ素子２から陽極および陰極を引き出すための一対のリード４とを備えている。
【００１９】
また、圧力機能を持たせるために、電解コンデンサ１は、内金属ケース５を同軸的に覆う有底筒状の外金属ケース６と、内金属ケース５の底板５ａと外金属ケース６の底板６ａとの間の空間８に配置された吸収部材７とをさらに備えている。
内金属ケース５の底板５ａの中央には、他の部分よりも薄肉化して破れやすくした内圧力弁５ｂが形成されている。外金属ケース６の底板６ａの中央にも、他の部分よりも薄肉化して破れやすくした外圧力弁６ｂが形成されている。
【００２０】
コンデンサ素子２の発熱等により内金属ケース５内の圧力が所定圧力を超えると、内圧力弁５ｂが破れ（開弁し）、内金属ケース５の内部と吸収部材７が配置されている空間８とが繋がる。また、吸収部材７が配置されている空間８の圧力が所定圧力を超えると、外圧力弁６ｂが破れ（開弁し）、空間８と電解コンデンサ１の外部とが繋がる。
【００２１】
なお、コンデンサ素子２の温度が上昇し、内圧力弁５ｂを通じて蒸気化電解液が放出されたとしても、放出された蒸気化電解液の多くは吸収部材７によって直ちに冷却・吸収される。したがって、外圧力弁６ｂが開弁するのは、吸収部材７によって吸収しきれない程の大量の蒸気化電解液が内圧力弁５ｂから勢いよく放出された場合に限られる。
【００２２】
なお、吸収部材７としては、シリカゲル、活性炭、グラファイト、モレキュラーシーブ、珪藻土、ベントナイト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カーボン繊維、多孔質ガラス、ガラス繊維、多孔質高分子、濾紙、不織布、ゲル化剤等が挙げられ、上記ゲル化剤としては、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩からなるセルロース誘導体、アルギン酸のアルカリ金属塩、ゼラチン、寒天、コンニャク粉、デンプン、砂糖や多糖類、タンパク質のいずれか１種もしくはこれらの２種以上を混合したもの、または、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルエーテル誘導体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンのいずれか１種または２種以上を共重合もしくは混合したものが挙げられる。
【００２３】
外金属ケース６の内周壁には制限突起９が形成されている。図２に示すように、内金属ケース５の外形寸法をＲ５、外金属ケース６の制限突起９が形成された部分における内径寸法をＲ９、外金属ケース６のその他の部分における内径寸法をＲ６としたとき、これらの間には“Ｒ９＜Ｒ５＜Ｒ６”の関係が成立している。このため、外金属ケース６内における内金属ケース５の軸方向への移動は、制限突起９によって制限される。
【００２４】
図２（Ａ）に示すように、制限突起９は例えばリング状とすることができる。この場合、制限突起９は、外金属ケース６の内周壁から全周にわたって（Ｒ６−Ｒ９）／２だけ突出している。このような制限突起９は、後述する内くびれ部５ｃおよび外くびれ部６ｃと同様、円盤状の冶具を外金属ケース６の外周壁に押し付けて該外周壁を凹ませることにより形成することができる。
【００２５】
図２（Ｂ）に示すように、制限突起９は所定の間隔（同図の場合は６０°）おきに全周にわたって形成された複数の突起とすることもできる。この場合、各突起は、外金属ケース６の内周壁から（Ｒ６−Ｒ９）／２だけ突出している。このような制限突起９は、穴が開いてしまわないように注意しながら、ピン状の冶具の先端部を外金属ケース６の外周壁に押し付けて該外周壁を凹ませることにより形成することができる。
【００２６】
本実施形態に係る電解コンデンサ１によれば、内金属ケース５の底板５ａ側を外金属ケース６の開口部に差し込んで内金属ケース５を外金属ケース６に収容する際に、内金属ケース５の底板５ａと制限突起９が当接するので、その当接した位置において内金属ケース５を位置決めすることができる。つまり、内金属ケース５と外金属ケース６の位置合わせを容易に行うことができる。
【００２７】
再び図１を参照して、内金属ケース５および外金属ケース６には、それぞれ内くびれ部５ｃおよび外くびれ部６ｃが形成されている。くびれ部５ｃ、６ｃは、内金属ケース５を外金属ケース６に収容した後に、例えば、円盤状の冶具を外金属ケース６の開口端近傍に押し付けて外金属ケース６および内金属ケース５を同時に凹ませることにより形成される。くびれ部５ｃ、６ｃを形成することにより、封口部材３が締め付けられ、内金属ケース５内の気密性を高めることができる。
【００２８】
内くびれ部５ｃと外くびれ部６ｃの間に、不図示の弾性部材を挟み込むことが好ましい。弾性部材は、くびれ部５ｃ、６ｃが形成される際に圧縮されて変形し、内金属ケース５（内くびれ部５ｃ）の外周壁および外金属ケース６（外くびれ部６ｃ）の内周壁の両方に隙間なく密着した状態となる。したがって、弾性部材によれば、吸収部材７が配置されている空間８の気密性を高めることができる。
【００２９】
なお、このような弾性部材としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等の任意の合成ゴムを使用することができる。一方、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリスチレンのような樹脂は変形することなく割れてしまい、空間８の気密性を保つことができなくなる可能性があるので、好ましくない。
【００３０】
くびれ部５ｃ、６ｃを形成する際は、内金属ケース５がより深く差し込まれる方向に内金属ケース５および外金属ケース６の少なくとも一方を付勢し続けることが好ましい。こうすることにより、内金属ケース５の軸方向への移動（内金属ケース５の差し込み深さが深くなる方向への移動と浅くなる方向への移動とを含む）を防ぎ、内金属ケース５および外金属ケース６の位置ずれを防ぐことができる。つまり、予め決められた位置からずれた位置に内くびれ部５ｃが形成されるのを確実かつ簡単に防ぐことができる。
【００３１】
また、図１に示すように、外金属ケース６はその上端部（裾部）が折り返され、この折り返し部と制限突起９とにより内金属ケース５が上下から挟み込まれている。これにより、外金属ケース６の内部で内金属ケース５ががたつくのを防ぐことができる。すなわち、電解コンデンサ１の耐振性を高めることができる。
【００３２】
以上、本発明に係る電解コンデンサの好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。
【００３３】
例えば、制限突起は図２に例示したものに限定されず、外金属ケースの内周壁から突出した、内金属ケースの軸方向への移動を制限し得るものであればどのようなものであってもよい。具体例を挙げると、外金属ケースの内周壁に接着、溶接等により取り付けられた突起も、本発明の制限突起に含まれる。
【符号の説明】
【００３４】
１ 電解コンデンサ
２ コンデンサ素子
３ 封口部材
４ リード
５ 内金属ケース
５ａ 底板
５ｂ 内圧力弁
５ｃ 内くびれ部
６ 外金属ケース
６ａ 底板
６ｂ 外圧力弁
６ｃ 外くびれ部
７ 吸収部材
８ 空間
９ 制限突起
【技術分野】
【０００１】
本発明は、二重ケース構造を採用した電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【０００２】
一般に、電解コンデンサは、電解液を含浸させたコンデンサ素子と、該コンデンサ素子を収容した有底筒状の金属ケースと、該金属ケースの開口部を封口する封口部材とから構成されている。
かかる電解コンデンサは、定格電圧を超える過電圧、逆電圧または過リプル電流が印加されると、コンデンサ素子の発熱により電解液が気化するので、密閉状態となっている金属ケース内の圧力の上昇が避けられない。金属ケース内の圧力が高くなり過ぎると、金属ケースが破裂したり、弾け飛んだりするおそれがあるため、金属ケースに圧力弁が設けられ、一定圧力以上になると圧力弁が作動し、金属ケース内部の圧力を外部に逃がす構造となっている。
【０００３】
しかしながら、圧力弁が作動すると、気化した電解液（以下、蒸気化電解液という）が圧力弁を通って放出されるため、二重ケース構造を採用した電解コンデンサが従来から検討されている。
例えば、図３に示す特許文献１に記載の電解コンデンサ１０は、底板１１ａに圧力弁１１ｂが形成された内金属ケース１１と、内金属ケース１１を同軸的に覆う有底筒状の外金属ケース１２と、内金属ケース１１の底板１１ａと外金属ケース１２の底板１２ａとの間の空間に配置された吸収部材１３とを備えている。
【０００４】
この電解コンデンサ１０では、内金属ケース１１内の圧力がある程度高くなると、蒸気化電解液が圧力弁１１ｂを通って放出され、吸収部材１３によって速やかに冷却・吸収される。したがって、電解コンデンサ１０によれば、内金属ケース１１内および外金属ケース１２内の圧力上昇を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】実開平４−３６２２３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
ところで、電解コンデンサ１０のような二重ケース構造を採用した電解コンデンサでは、内金属ケース１１を外金属ケース１２に収容した後に、外金属ケース１２の開口端近傍を締め付けてくびれ部１１ｃ、１２ｃを同時に形成し、封口部材１４を圧縮することにより、内部の気密性を高めるのが一般的である。
【０００７】
また、組み立てを容易にするために、内金属ケース１１の外周壁と外金属ケース１２の内周壁の間には、通常、クリアランスが設けられている。
言い換えると、内金属ケース１１の外形寸法は、外金属ケース１２の内径寸法よりも僅かに大きく、くびれ部１１ｃ、１２ｃが形成されていない段階においては、内金属ケース１１は外金属ケース１２内で軸方向に移動自在となっている。
【０００８】
このため、従来の電解コンデンサ１０においては、内金属ケース１１および外金属ケース１２の位置合わせをするのが非常に難しく、予め決められた位置にくびれ部１１ｃを形成することができなかったり、または形成中に位置ずれが起きてくびれ部１１ｃがうまく形成できなかったりする場合があった。
【０００９】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、内金属ケースと外金属ケースの位置合わせが容易な電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上記課題を解決するために、本発明に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子を収容した有底筒状の内金属ケースと、内金属ケースの開口部を封口する封口部材と、内金属ケースを同軸的に覆う有底筒状の外金属ケースとを備えた電解コンデンサにおいて、外金属ケースの内周壁に該外金属ケース内における内金属ケースの軸方向への移動を制限する制限突起を形成したことを特徴としている。
【００１１】
この構成によれば、外金属ケースの内周壁に内金属ケースの移動を制限する制限突起が形成されているので、内金属ケースの底板と制限突起とを互いに当接させるだけで、内金属ケースと外金属ケースの位置合わせを簡単に行うことができる。
【００１２】
また、この構成によれば、内金属ケースがより深く差し込まれる方向に内金属ケースおよび外金属ケースの少なくとも一方を付勢し続けるだけで、外金属ケース内において内金属ケースが軸方向へ移動することがなくなるので、くびれ部が誤った位置に形成されるのを確実かつ簡単に防ぐことができる。
【００１３】
ここで、上記制限突起はリング状としてもよいし、所定の間隔おきに全周にわたって形成された複数の突起であってもよい。
【００１４】
また、本発明は、例えば、内金属ケースの底板に形成された圧力弁と、内金属ケースの底板と外金属ケースの底板の間の空間に配置された吸収部材とを備えた、圧力機能を有する電解コンデンサに適用することができる。
【発明の効果】
【００１５】
本発明によれば、内金属ケースと外金属ケースの位置合わせが容易な電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明に係る電解コンデンサの一実施形態を示す部分縦断面図である。
【図２】図１に示す電解コンデンサのＸ−Ｘ線における横断面図であって、（Ａ）は制限突起がリング状の場合、（Ｂ）は制限突起が複数の突起からなる場合である。
【図３】従来の電解コンデンサの部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る電解コンデンサの好ましい実施形態について説明する。
【００１８】
図１に示すように、本実施形態に係る電解コンデンサ１は、電解液を含浸させたコンデンサ素子２と、コンデンサ素子２を収容した有底筒状の内金属ケース５と、内金属ケース５の開口部を封口する封口部材３と、コンデンサ素子２から陽極および陰極を引き出すための一対のリード４とを備えている。
【００１９】
また、圧力機能を持たせるために、電解コンデンサ１は、内金属ケース５を同軸的に覆う有底筒状の外金属ケース６と、内金属ケース５の底板５ａと外金属ケース６の底板６ａとの間の空間８に配置された吸収部材７とをさらに備えている。
内金属ケース５の底板５ａの中央には、他の部分よりも薄肉化して破れやすくした内圧力弁５ｂが形成されている。外金属ケース６の底板６ａの中央にも、他の部分よりも薄肉化して破れやすくした外圧力弁６ｂが形成されている。
【００２０】
コンデンサ素子２の発熱等により内金属ケース５内の圧力が所定圧力を超えると、内圧力弁５ｂが破れ（開弁し）、内金属ケース５の内部と吸収部材７が配置されている空間８とが繋がる。また、吸収部材７が配置されている空間８の圧力が所定圧力を超えると、外圧力弁６ｂが破れ（開弁し）、空間８と電解コンデンサ１の外部とが繋がる。
【００２１】
なお、コンデンサ素子２の温度が上昇し、内圧力弁５ｂを通じて蒸気化電解液が放出されたとしても、放出された蒸気化電解液の多くは吸収部材７によって直ちに冷却・吸収される。したがって、外圧力弁６ｂが開弁するのは、吸収部材７によって吸収しきれない程の大量の蒸気化電解液が内圧力弁５ｂから勢いよく放出された場合に限られる。
【００２２】
なお、吸収部材７としては、シリカゲル、活性炭、グラファイト、モレキュラーシーブ、珪藻土、ベントナイト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カーボン繊維、多孔質ガラス、ガラス繊維、多孔質高分子、濾紙、不織布、ゲル化剤等が挙げられ、上記ゲル化剤としては、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩からなるセルロース誘導体、アルギン酸のアルカリ金属塩、ゼラチン、寒天、コンニャク粉、デンプン、砂糖や多糖類、タンパク質のいずれか１種もしくはこれらの２種以上を混合したもの、または、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルエーテル誘導体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンのいずれか１種または２種以上を共重合もしくは混合したものが挙げられる。
【００２３】
外金属ケース６の内周壁には制限突起９が形成されている。図２に示すように、内金属ケース５の外形寸法をＲ５、外金属ケース６の制限突起９が形成された部分における内径寸法をＲ９、外金属ケース６のその他の部分における内径寸法をＲ６としたとき、これらの間には“Ｒ９＜Ｒ５＜Ｒ６”の関係が成立している。このため、外金属ケース６内における内金属ケース５の軸方向への移動は、制限突起９によって制限される。
【００２４】
図２（Ａ）に示すように、制限突起９は例えばリング状とすることができる。この場合、制限突起９は、外金属ケース６の内周壁から全周にわたって（Ｒ６−Ｒ９）／２だけ突出している。このような制限突起９は、後述する内くびれ部５ｃおよび外くびれ部６ｃと同様、円盤状の冶具を外金属ケース６の外周壁に押し付けて該外周壁を凹ませることにより形成することができる。
【００２５】
図２（Ｂ）に示すように、制限突起９は所定の間隔（同図の場合は６０°）おきに全周にわたって形成された複数の突起とすることもできる。この場合、各突起は、外金属ケース６の内周壁から（Ｒ６−Ｒ９）／２だけ突出している。このような制限突起９は、穴が開いてしまわないように注意しながら、ピン状の冶具の先端部を外金属ケース６の外周壁に押し付けて該外周壁を凹ませることにより形成することができる。
【００２６】
本実施形態に係る電解コンデンサ１によれば、内金属ケース５の底板５ａ側を外金属ケース６の開口部に差し込んで内金属ケース５を外金属ケース６に収容する際に、内金属ケース５の底板５ａと制限突起９が当接するので、その当接した位置において内金属ケース５を位置決めすることができる。つまり、内金属ケース５と外金属ケース６の位置合わせを容易に行うことができる。
【００２７】
再び図１を参照して、内金属ケース５および外金属ケース６には、それぞれ内くびれ部５ｃおよび外くびれ部６ｃが形成されている。くびれ部５ｃ、６ｃは、内金属ケース５を外金属ケース６に収容した後に、例えば、円盤状の冶具を外金属ケース６の開口端近傍に押し付けて外金属ケース６および内金属ケース５を同時に凹ませることにより形成される。くびれ部５ｃ、６ｃを形成することにより、封口部材３が締め付けられ、内金属ケース５内の気密性を高めることができる。
【００２８】
内くびれ部５ｃと外くびれ部６ｃの間に、不図示の弾性部材を挟み込むことが好ましい。弾性部材は、くびれ部５ｃ、６ｃが形成される際に圧縮されて変形し、内金属ケース５（内くびれ部５ｃ）の外周壁および外金属ケース６（外くびれ部６ｃ）の内周壁の両方に隙間なく密着した状態となる。したがって、弾性部材によれば、吸収部材７が配置されている空間８の気密性を高めることができる。
【００２９】
なお、このような弾性部材としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等の任意の合成ゴムを使用することができる。一方、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリスチレンのような樹脂は変形することなく割れてしまい、空間８の気密性を保つことができなくなる可能性があるので、好ましくない。
【００３０】
くびれ部５ｃ、６ｃを形成する際は、内金属ケース５がより深く差し込まれる方向に内金属ケース５および外金属ケース６の少なくとも一方を付勢し続けることが好ましい。こうすることにより、内金属ケース５の軸方向への移動（内金属ケース５の差し込み深さが深くなる方向への移動と浅くなる方向への移動とを含む）を防ぎ、内金属ケース５および外金属ケース６の位置ずれを防ぐことができる。つまり、予め決められた位置からずれた位置に内くびれ部５ｃが形成されるのを確実かつ簡単に防ぐことができる。
【００３１】
また、図１に示すように、外金属ケース６はその上端部（裾部）が折り返され、この折り返し部と制限突起９とにより内金属ケース５が上下から挟み込まれている。これにより、外金属ケース６の内部で内金属ケース５ががたつくのを防ぐことができる。すなわち、電解コンデンサ１の耐振性を高めることができる。
【００３２】
以上、本発明に係る電解コンデンサの好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。
【００３３】
例えば、制限突起は図２に例示したものに限定されず、外金属ケースの内周壁から突出した、内金属ケースの軸方向への移動を制限し得るものであればどのようなものであってもよい。具体例を挙げると、外金属ケースの内周壁に接着、溶接等により取り付けられた突起も、本発明の制限突起に含まれる。
【符号の説明】
【００３４】
１ 電解コンデンサ
２ コンデンサ素子
３ 封口部材
４ リード
５ 内金属ケース
５ａ 底板
５ｂ 内圧力弁
５ｃ 内くびれ部
６ 外金属ケース
６ａ 底板
６ｂ 外圧力弁
６ｃ 外くびれ部
７ 吸収部材
８ 空間
９ 制限突起
【特許請求の範囲】
【請求項１】
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容した有底筒状の内金属ケースと、前記内金属ケースの開口部を封口する封口部材と、前記内金属ケースを同軸的に覆う有底筒状の外金属ケースとを備えた電解コンデンサにおいて、
前記外金属ケースの内周壁に、前記外金属ケース内における前記内金属ケースの軸方向への移動を制限する制限突起を形成したことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項２】
前記制限突起がリング状であることを特徴とする請求項１に記載の電解コンデンサ。
【請求項３】
前記制限突起が、所定の間隔おきに全周にわたって形成された複数の突起からなることを特徴とする請求項１に記載の電解コンデンサ。
【請求項４】
前記内金属ケースの底板に形成された圧力弁と、
前記内金属ケースの軸方向への移動を制限したことにより、前記内金属ケースの底板と前記外金属ケースの底板の間の空間に配置された吸収部材と、
を備えたことを特徴とする請求項１から３のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項１】
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容した有底筒状の内金属ケースと、前記内金属ケースの開口部を封口する封口部材と、前記内金属ケースを同軸的に覆う有底筒状の外金属ケースとを備えた電解コンデンサにおいて、
前記外金属ケースの内周壁に、前記外金属ケース内における前記内金属ケースの軸方向への移動を制限する制限突起を形成したことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項２】
前記制限突起がリング状であることを特徴とする請求項１に記載の電解コンデンサ。
【請求項３】
前記制限突起が、所定の間隔おきに全周にわたって形成された複数の突起からなることを特徴とする請求項１に記載の電解コンデンサ。
【請求項４】
前記内金属ケースの底板に形成された圧力弁と、
前記内金属ケースの軸方向への移動を制限したことにより、前記内金属ケースの底板と前記外金属ケースの底板の間の空間に配置された吸収部材と、
を備えたことを特徴とする請求項１から３のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１２−２４８７７３（Ｐ２０１２−２４８７７３Ａ）
【公開日】平成２４年１２月１３日（２０１２．１２．１３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−１２１１６５（Ｐ２０１１−１２１１６５）
【出願日】平成２３年５月３１日（２０１１．５．３１）
【出願人】（０００００４６０６）ニチコン株式会社 (656)
【公開日】平成２４年１２月１３日（２０１２．１２．１３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年５月３１日（２０１１．５．３１）
【出願人】（０００００４６０６）ニチコン株式会社 (656)
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