説明

電解セル、電気化学合成方法、電気化学分析方法

【課題】電解セルにおける合成あるいは分析の精度や効率を高める。
【解決手段】横断面が略矩形状の有底筒状体で透明性を有する光透過性容器2(少なくとも対向する一対の側面が透明な光透過性容器)に、被合成対象、被分析対象などを含んだ電解液10を保持する。光透過性容器2に作用電極3を固定した作用電極固定枠体4を装入して、光透過性容器2に作用電極3を設ける。作用電極固定枠体4の底部には、光透過性容器2に保持された電解液10を攪拌する攪拌子13の回転をガイドする回転ガイド4aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化還元反応を利用する電解技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分光電気化学法は、分光法と電気化学法を組み合わせた手法であり、作用電極に電位を印加して電解しながら、電解前後の分光特性を測定することができる。通常、電極反応活性物質を全電解するには時間を要するため、薄層型のセルに電極を挿入して電極近傍部分の電極反応活性物質のみを電解する方法により分光電気化学測定を行っている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
分光法は、Lambert−Beerの法則に基づいて吸光度が定義される。すなわち、吸光度は、モル吸光係数と試料濃度と光路長との積となる。モル吸光係数は試料固有の係数である。薄層型のセルの光路長は0.1mm〜1.0mm程度と短いため、高い吸光度を得るためには試料濃度を高くしなくてはならない。さらに、光路長が短いためモル吸光係数が小さい試料には適さないとされている。また、電解中に試料を攪拌できないため、電解生成物をセルの光路上に集約しなければならない。そのため、作用電極をセルの光路上に設置する必要があり、光路を妨げない網状や光透過性電極を用いるなど、電極の構造にも制約を受ける。
【0004】
電気化学分野において、酸化還元反応を利用するバルク電解技術は、平衡論・反応機構論といった物理化学的な観点や、高精度絶対定量といった分析化学的な観点だけでなく、有機・無機合成化学的な観点においても極めて有用である。
【0005】
バルク電解を行う際、陽極反応生成物の陰極での再還元反応(あるいは、陰極反応生成物の陽極での再酸化反応)を防ぐため、陽極側と陰極側とを隔膜(または、液絡)を隔てて行わなければならないとされている。このような隔膜を電解セルの構成に加えると、電解セルの寸法上の制約により装置に設置できない場合や、適用できたとしてもオンラインで生成物を同時に測定する装置(例えば、各種分光分析法)との併用が困難となる場合がある。そのため、対電極の電極反応を主に溶媒の酸化還元反応に帰することで隔膜を必要としない無隔膜バルク電解法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献2)。
【0006】
無隔膜バルク電解法は、電位制御装置(ポテンショスタット)動作下、対電極に対する作用電極の面積を相対的に大きくすることで、作用電極で生成する電極反応活性物質の再酸化(あるいは、再還元)を無視できるほど小さくするものである。この時、対電極では、溶媒(支持電解質)の酸化あるいは還元が進行し、目的物質の再酸化(あるいは、再還元)は著しく抑制される。そして、電解反応の進行とともに、作用電極における電流が減少するため、対電極の電位が作用電極の電位に近づく。無隔膜バルク電解法は、例えば以下に示すように広く利用されつつある。
【0007】
[電気化学合成]
バルク電解技術を適用した有機電解合成は、従来の有機合成のように有機溶剤を必要としない(すなわち、有機溶剤などの廃棄物が生じない)ことから、穏和でクリーンな反応を利用する技術とされている。また、電解条件を適宜設定することにより、その電解条件に応じた特定の酸化還元反応を起こすことができる(高選択性)ことから、優れた合成方法となる可能性がある点で注目されている(例えば、非特許文献3,4)。
【0008】
[電気化学分析方法]
標準酸化還元電位(E0)は、標準状態(25℃,1atm)での酸化還元反応(電解セルの電極表面で起こる酸化還元反応)時における電極の平衡電位を示すものであり、電気化学分析において極めて重要な熱力学的パラメータとして取り扱われ、一般的には標準水素電極(SHE)を基準として表現されている(例えば、非特許文献5)。
【0009】
例えば、電解液中の酸化体をO、還元体をRとすると、それら酸化体Oと還元体Rとの間で電子授受平衡「O+ne-=R」が成り立つ際の電極電位(E)は、標準酸化還元電位(E0)を用いて下記(1)式に示すネルンストの式で表現することができる。
【0010】
なお、(1)式の記号において、Rは気体定数(8.314J・mol-1・K-1)、Fはファラデー定数(96500C・mol-1)、Tは絶対温度(25℃のとき、298.15K)、[O]は酸化体濃度、[R]は還元体濃度を示すものとする。
【0011】
E=E0+(RT/nF)ln([O]/[R]) …(1)
(1)式から、酸化体Oと還元体Rとの活量の比(溶液の場合はモル濃度の比;以下、[O]/[R]と称する)が1の場合、理論的に「E=E0」が成り立つ。
【0012】
ここで、実測で得られる電極電位EはE0ではなく、そのE0に近似した式量電位(E0’)であることが知られている。この式量電位E0’は、例えば種々の電極電位で[O]/[R]を測定し、「[O]/[R]=1」になる時の電位を読み取ることにより求めることが可能である。
【0013】
前記の[O]/[R]は、単にバルク電解セルを用いた構成(in situ)では測定することが困難であるが、被分析対象(酸化還元種)が光吸収するものである場合(酸化還元反応時に吸収スペクトルが変化する場合)には分光法によって比較的容易に求められる。そこで、バルク電解技術と分光法とを一体化した分光電気化学法が適用されている。この分光電気化学法としては、光透過性薄層セル(OTTLE)法や鏡面反射法によるものが知られている。(例えば、特許文献1、非特許文献4,6,7)。
【0014】
図21(A),(B)は、それぞれ光透過性薄層セル法に用いられる電解セルの正面図、電解セルの側面図の一例を示す概略説明図である。図21(A),(B)において、薄層セル80の作用電極81は、略平板状の一対のガラス部材(石英ガラスなどから成る部材)82a,82b間に対し、透明電極83を介在させるとともに、スペーサ(図示点線部)84を介して隙間81aを形成して構成される。透明電極83には、金や白金などから成るミニグリッド(網)、石英ガラス基板に金属が蒸着された薄膜、In23やSnO2などから成る導電性酸化薄膜が用いられる。
【0015】
電解液が保持される電解液容器85には測定対象となる電解液が保持される。そして、この電解液容器85に保持された電解液には、作用電極81の一部が浸漬されるとともに、対電極86,参照電極87が浸漬される。電解液中に浸漬された作用電極81の隙間81aには、その浸漬された箇所を介して電解液が浸入(毛細管現象により浸入)する。
【0016】
図21(A),(B)のように、バルク電解技術を適用した光透過性薄層セル法によれば、光吸収する酸化還元種を含んだ電解液について、分光法により、種々の電極電位で[O]/[R]を測定し、「[O]/[R]=1」になる時の電位、すなわち式量電位E0’を求めることが可能となる。
【0017】
[生体物質に関する電気化学分析方法]
酸化還元電位E0’は、生体物質の機能などを分析する上でも重要なパラメータの一つとして取り扱われているが、信頼できるデータを得ることは必ずしも容易ではなかった。
【0018】
一般的な電解セルを用いてタンパク質(P)を分析する場合、そのタンパク質と電解セルの電極との間における電子の授受は起こり難く、直接電解による平衡化は実際上不可能とされていた。このため、電解セルの作用電極及びタンパク質(P;Pox,Pred)における反応性がそれぞれ高い低分子物質(以下、メディエータ(M;Mox,Mred)と称する)を電解液中に介在させ、適当な還元剤あるいは酸化剤によってメディエータを滴定する方法が採られていた。
【0019】
このような滴定する方法においては、下記(2)式に示す反応によりメディエータとタンパク質とが平衡状態となるため、メディエータの平衡電位(E)はポテンショメトリーにより測定することができる。なお、(2)式において、「Mox」は酸化性のメディエータ濃度、「Mred」は還元性のメディエータ濃度、[Pox]は酸化性のタンパク質濃度、[Pred]は還元性のタンパク質濃度を示すものとする。
【0020】
【数1】

【0021】
また、前記のようにメディエータの平衡電位(E)を測定すると同時に、前記タンパク質における酸化還元体の濃度比(以下、[Pox]/[Pred]と称する)を分光法により検出する。
【0022】
そして、下記(3)式に基づいて、間接的にタンパク質の式量電位E0’を求めることが可能となる。なお、(3)式におけるnM,nPは、それぞれ、メディエータ若しくはタンパク質1分子が反応した時に変化したメディエータの電子数、タンパク質の電子数を示すものである。
E=E0’(RT/nMF)ln([O]/[R])
=E0P+(RT/nPF)ln([Pox]/[Pred]) …(3)
前記のような滴定する方法を適用した場合、滴定試薬と目的物質との副反応、滴定による体積補正、還元剤と酸素との反応抑制などに留意する必要がある。また、滴定する系が平衡に達するのに長時間を要するだけでなく、その電位が何の平衡を検出しているかなどについて考慮する必要がある。
【0023】
これに対して、滴定試薬を用いる替わりにバルク電解技術を適用した場合には、原理上は電極にてメディエータをバルク電解することが可能とされ、[Pox]/[Pred]を測定することも容易となり、滴定試薬を用いた場合の問題点を解決できるとされている(例えば、非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2005−76116号公報
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】“分光電気化学測定システム”、[online]、ビー・エー・エス株式会社、[平成23年6月1日検索]、インターネット〈URL:http://www.basj.com/1459.html〉
【非特許文献2】栗山淳,外5名、「無隔膜全電解法の提案とその分光電気化学的応用」、Electrochemistry、2004、第72巻、第7号、p.484
【非特許文献3】「第5版 電気化学便覧」、丸善、p.405
【非特許文献4】大堺利行,外2名、「ベーシック電気化学」、化学同人、128、p.129
【非特許文献5】電気化学会編「電気化学測定マニュアル 基礎編」、丸善、p.13
【非特許文献6】日本化学会編「電子移動の化学−電気化学入門」、朝倉書店、p.69
【非特許文献7】電気化学会編「電気化学測定マニュアル 実践編」、丸善、p.46
【非特許文献8】電気化学会関西支部「第28回電気化学講習会」、1998、丸善、p.57
【非特許文献9】化学工学便覧(改訂六版)、丸善、p.424、p.443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
上述のように電解効率を向上させるために薄層セルを用いると、光路長が短いため吸光度が小さくなり、モル吸光係数の小さな物質の測定が困難となる。また、薄層セルでは、電解液を攪拌することができないので、全電解できずクーロメトリーとしての分析精度が低下することが懸念される。
【0027】
一方、電解液の攪拌を可能とするために光路長の長いセルを用いると、吸光度の値を大きくでき、モル吸光係数の小さな物質の測定精度を高められると期待できるものの、電解液量が多くなるため電解に要する時間が長くなることで、温度変動をはじめとする測定条件の変動の影響により測定精度が低下する懸念がある。
【0028】
上記事情に鑑み、本発明は、合成または分析の精度や効率の向上に寄与する電解セル、電気化学合成方法及び、電気化学分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成する本発明の電解セルは、少なくとも対向する一対の側面が光透過性を有する電解液容器と、前記電解液容器内の該電解液中に浸漬される作用電極が固定され、前記電解液容器に挿設される枠体と、前記電解液を攪拌する攪拌手段と、前記電解液中に浸漬される対電極、及び参照電極と、を有することを特徴としている。
【0030】
また、上記目的を達成する本発明の電気化学合成方法は、酸化還元種を含んだ電解液が保持された電解液容器に対して、少なくとも作用電極、対電極、参照電極を浸漬し、前記電解液を、攪拌手段を介して1000rpm以上の攪拌速度、または、攪拌レイノルズ数950以上にて攪拌するとともに、前記作用電極に電位を印加して前記の酸化還元種を合成することを特徴としている。
【0031】
また、上記目的を達成する本発明の電気化学分析方法は、被分析対象を含んだ電解液が保持された光透過性の電解液容器に対して、少なくとも作用電極、対電極、参照電極を浸漬し、前記電解液を、攪拌手段を介して1000rpm以上の攪拌速度、または、攪拌レイノルズ数950以上にて攪拌するとともに、前記作用電極に電位を印加し該作用電極の電流変化を検出し、分光法により前記電解液の吸光度変化を算出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0032】
以上の発明によれば、合成または分析の精度や効率の向上に寄与する電解セルを提供することができる。また、電気化学合成方法や電気化学分析方法において、精度あるいは効率の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態1に係る電解セルの一例を示す概略説明図であり、(A)電解セル正面図、(B)電解セルA−A矢視図、(C)電解セルが設けられるシステム構成図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る電解セルの一例を示す概略説明図であり、(A)セル構造の説明図、(B)作用電極が設けられる作用電極固定枠体の説明図である。
【図3】実施例1の作用電極における電流の対数の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図4】実施例1の作用電極における電流の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図5】実施例1の電解セルにおける吸光度の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図6】実施例2の作用電極における電流の対数の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図7】実施例2の作用電極における電流の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図8】攪拌Re数と反応速度定数pとの関係を示す特性図である。
【図9】実施例2の電解セルにおける吸光度の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図10】実施例3の作用電極における電流の対数の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図11】実施例3の作用電極における電流の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図12】実施例3の電解セルにおける吸光度の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図13】実施例4の作用電極における電流の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図14】実施例4の電解セルにおける吸光度の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図15】実施例5の電解セルにおける吸収スペクトル特性図である。
【図16】実施例5におけるネルンストプロット図である。
【図17】本発明の実施形態2に係る電解セルの一例を示す概略説明図である。
【図18】実施例6の作用電極における電流の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図19】実施例6の電解セルにおける吸光度の反応時間に対する変化を示す特性図である。
【図20】実施例7の電解セルにおける吸収スペクトル特性図である。
【図21】薄層型分光電気化学セルの一例を示す概略説明図であり、(A)セル正面図、(B)セル側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態における電解セル、電気化学合成方法、電気化学分析方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
(実施形態1)
図1(A),(B)は、それぞれ本発明の実施形態における電解セルの光線が透過する側面側の図、当該電解セルのA−A矢視図を示す概略説明図である。
【0036】
図1(A)に示すように、電解セル1は、光透過性容器2、攪拌子13、作用電極3、作用電極固定枠体4、対電極5、封止部材9を備える。以下、電解セル1の各構成要素について説明する。
【0037】
[光透過性容器2]
光透過性容器2は、横断面が略矩形状の有底筒状の容器であり、この光透過性容器2の少なくとも対向する一対の側面は、測定に用いる光が透過可能な材質であるガラスや石英などの透明な材質からなる。この光透過性容器2内には被合成対象や被分析対象などを含んだ電解液10が保持される。電解液10の液量は、各種電極類が浸漬する程度は必要であり、液面が変動する攪拌状態にあっても同様である。
【0038】
[攪拌子13]
攪拌子13は、光透過性容器2に保持される電解液10を攪拌する。撹拌子13は、マグネチックスターラー(図示省略)により回転させられる。攪拌子13は、例えば、棒磁石をフッ素樹脂などで封止したもので、形状は細長い繭状であり棒状のもの、八角棒状のもの、風車の羽根状のものなどがあり、攪拌効率・負荷量などの用途によって使い分けられる。本発明の実施形態の説明では、汎用性に優れている棒状の攪拌子を使用したが、他形状の攪拌子も適用が可能である。
【0039】
[作用電極3]
作用電極3は、白金や金、カーボンなど被合成対象や被分析対象や電解液10に応じて適宜選択される。作用電極3は、後述の作用電極固定枠体4に固定され、電解液10に浸漬される。図1(A),(B)に示すように、作用電極3が白金や金の金網状である場合、作用電極3は、作用電極固定枠体4に巻きつけることによって固定される。なお、作用電極3には必要に応じてリード線3aなどの配線が接続される。
【0040】
[作用電極固定枠体4]
作用電極固定枠体4は、略直方格子状の枠体であり、機械加工が可能であって耐薬品性の材料(例えば、ピーク樹脂、フッ素樹脂)より構成される。図2(A)に示すように、作用電極固定枠体4の底面には、攪拌子13の回転ガイド4aが形成され、この回転ガイド4a内で攪拌子13が回転して電解液10が撹拌される。
【0041】
なお、作用電極固定枠体4を光透過性容器2内に装入することで電気化学合成や電気化学分析に使用する電解液量を低減できる。さらに、作用電極固定枠体4の外形を、光透過性容器2の内形と略等しくすることで、攪拌の影響を受けない光透過性容器2内のデッドスペ−スを少なくすることができ、合成または分析の精度や効率の向上に寄与する。また、図2(B)に示すように、作用電極固定枠体4の側面に作用電極3を固定する固定部4bを形成すると、作用電極固定枠体4に設けられる作用電極3が、光透過性容器2への作用電極固定枠体4の装入を妨げず好ましい。なお、作用電極固定枠体4の形態は、作用電極3を固定することができるものであればよく、作用電極固定枠体4の上部と底部の双方に四角形の枠形状のある図2に示す形態に限定されるものではない。
【0042】
また、作用電極3を固定する固定部4bは、図2(b)に示す形態に限定されるものではなく、作用電極3を係止する形態や作用電極3を作用電極固定枠体4間に嵌合させる形態であってもよい。さらに、作用電極3を固定する固定部4bの位置は、測定のための光路を妨げなければよく、図に示す形態に限定されるものではない。
【0043】
[対電極5]
対電極5は、図1(A)に示すように、電解液10が保持された光透過性容器2を封止する封止部材9に設けられる。対電極5は、封止部材9が光透過性容器2に設けられた際、対電極5の下端部が電解液10に浸漬するように設けられる。対電極5は、通常の電気化学測定で用いられる電極(白金線やカーボン電極)を用いる。対電極5の浸漬面積は作用電極3の浸漬面積よりも小さくなるように設定する。
【0044】
[封止部材9]
封止部材9は、光透過性容器2の開口部を封止する部材であり、機械加工が可能であって耐薬品性の材料(例えば、ピーク樹脂、フッ素樹脂)より構成される。封止部材9には、対電極5の他に、参照電極6、光透過性容器2内にガス(アルゴンガス、窒素ガスなど、以下、導入ガスと称する)を導入するための導入管7、導入管7より導入された導入ガスを排出する排出管8が設けられる。参照電極6の先端部には、電解液10による汚染を防ぐためにセラミックスなどの薄膜6aが設けられる。
【0045】
導入管7の先端部(導入口)は、導入ガスを電解液10の溶存酸素除去(以下、脱気処理と称する)に用いる際には電解液10中に浸漬し、導入ガスを光透過性容器2内の気相と置換する場合には電解液10から取り出す(電解液10の水面より上方に位置させる)ことが好ましい。
【0046】
[分析システム構成]
図1(A),(B)に示す電解セル1を用いて、図1(C)に示すシステムを構成し、電気化学測定及び分光法による測定を行う。なお、後述の実施例1〜7において、定電位電解による分析を行う場合も同様のシステム構成のものを用いた。
【0047】
分析システム構成は、図1(C)に示すように、電解セル1を分光光度計15の計測領域(試料室)15a内にセットし、ポテンショスタット16a(及び、ファンクションジェネレータ16b)により、参照電極6に対して所定の電位を作用電極3に印加した。この状態で、発光部15bからの光線15cを電解セル1の光透過性容器2の光透過性を有する側面に対して垂直に照射し、その透過した光線15cを受光部15dで受光して吸光度を算出した。
【0048】
なお、実施例1〜5の電解セル1において、特に断りがない場合、光透過性容器2にはジーエルサイエンス社製の石英セル(二面石英製コード6210−11006、光路長10mm)、作用電極3にはニラコ社製の白金網(φ0.07mm、100メッシュ)を10mm×40mm、厚さ:0.07mm、表面積:14.8cm2の形状に切断し、この白金網を折り曲げて5mm×40mm、厚さ:0.14mm、表面積:14.8cm2としたもの、作用電極固定枠体4にはピーク樹脂から成るもの、対電極5には直径1mmの白金線を被覆し、先端1mmのみ露出させたもの、参照電極6には飽和塩化カリウム溶液に銀線を浸漬させたAg/AgCl電極、導入管7及び排出管8には直径1mmのガラス管、封止部材9にはピーク樹脂から成るものを用いた。また、対電極5の浸漬面積は0.039cm2に設定し、脱気処理には窒素ガスを用い、電解液10の撹拌は撹拌子13とマグネチックスターラーを用いて行った。
【0049】
[電解液の攪拌レイノルズ数の算出]
定電位電解試験では、反応進行に伴って電解セル1中の電解液10に濃度分布が生じないよう電解液濃度が均一な完全混合状態とすることが理想的である。しかし、高い攪拌効果を得るために、攪拌子13を高速回転で使用すると攪拌子13の回転軸がズレやすくなり、攪拌子13の脱調(飛び跳ね)の原因となるなど安定した回転が得られにくくなる。そのため、実用上は、回転数を抑え安定した混合状態を維持することが重要となる。そして、現実的には完全混合状態を形成することは極めて困難であるので、分析の精度や効率の向上させた定電位電解を行うために、攪拌状態を定量化することで、適切な攪拌条件を設定し試験を行う必要がある。
【0050】
攪拌状態を数値化する指標として、下記の撹拌レイノルズ数(以下、攪拌Re数とする)が知られている。攪拌レイノルズ数は、攪拌装置の設計や攪拌装置のスケ−ルアップなどに利用されている。
攪拌Re数=ρ・n・d2/μ
(ρ:電解液の密度[kg/m3]、n:攪拌子13の回転数[rps]、d:翼スパン(攪拌子13の長さ)[m]、μ:電解液の粘度[Pa・s])
一般に、流体の流れは、レイノルズ数が小さい内は層流であるが、レイノルズ数が大きくなると、乱流に転ずる。数値としては、大体4000以上で乱流域、2100以下を層流域、その間を遷移域として流れの状態をおおよそ大別することができる。
【0051】
なお、本発明の実施例の説明において、攪拌Re数の算出にあたり、電解液10の温度は20℃とした。
【0052】
[実施例1]攪拌条件と電解速度の関係
長さの異なる2つの攪拌子を用いて、攪拌状態が電解速度に与える影響を評価した。実施例1及び比較例1の攪拌子の形状はともに細長い繭状で棒状のものであり、下記のものを使用した。
実施例1:ジーエルサイエンス MC−7 φ2mm×7mm
比較例1:(株)アズワン マイクロ回転子D φ2mm×5mm
攪拌子13は、電解液10の攪拌を目的とするものであり、攪拌子13の長さ及び回転速度により電解液10の攪拌状況が変化する。よって、実施例1では、棒状の攪拌子13において、攪拌子13の直径及び回転速度を同一とし、攪拌子13の長さの違いによる電解速度の変化を評価した。
【0053】
実施例1では、0.25mmol/lのヘキサシアノ鉄(II)酸イオン(Fe(CN)64-)を含んだ0.1mol/lのリン酸緩衝液(pH7.0)を試料S1(電解液10)として光透過性容器2内に1.0ml保持した。なお、試料S1の液量は、光透過性容器2にて攪拌中も各種電極類が大気中に露出せず十分浸漬するような水位レベルとなる液量とした。
【0054】
そして、窒素ガスにより試料S1の脱気処理を行った後、光透過性容器2に攪拌子13(実施例1)を入れ、1200rpm(rpm=1分間の回転数)で回転させて電解液10を攪拌した。そして、導入管7を介して試料S1内に窒素ガスをフローさせながら、作用電極3に対して0.5Vの電位(参照電極6を基準にした電位)を印加することにより定電位電解を行うとともに、作用電極3における電流の電解反応時間に対する変化を測定した。定電位電解により、Fe(CN)64-は酸化されてFe(CN)63-となった。さらに、定電位電解中に、Fe(CN)63-を選択的に特定可能な吸収ピ−ク波長である波長420nmを用いて電解液10の吸光度の時間変化を測定した。
【0055】
また、実施例1の比較例として、上記比較例1に係る攪拌子を用い、その他の条件は実施例1と同じ条件で定電位電解及び吸光光度測定を行った。表1に実施例1及び比較例1の測定条件及び測定結果(反応速度定数p、平衡吸光度とその到達時間、全電解時間)を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1(及び比較例1)では、電解によって、電解液10中のFe(CN)64-が、一次反応による酸化反応によりFe(CN)63-を生じる。この時、電解反応時間t(s)における電流値i(t)は、(4)式となる。なお、(4)式において、i(0)は、t=0の時に作用電極3に流れる電流値であり、pは、反応速度定数(1/s)である。
i(t)=i(0)exp(−pt) …(4)
また、反応速度定数pは、(5)式によって求めることができる。なお、(5)式において、mは、物質移動定数であり、Awは、作用電極の表面積(実施例1,比較例1ともに同一)、Vは、試料体積である。
p=mAw/V …(5)
(4)式より、反応速度定数pは、(6)式で求めることができる。
p=ln[i(0)/i(t)]/t …(6)
なお、i(0)は、t=0の時に作用電極3に流れる電流値ではあるが、実際には、電解開始後、瞬時にして作用電極3の近傍に電極反応活性物質の濃度の分布が生じ、この初期状態の電流値をi(0)と測定することとなる。そのため、攪拌状態が高いほど、電解開始瞬時での作用電極3の近傍の拡散層を薄くできるため、結果として、攪拌状態が高いほどi(0)も高い値が測定される。
【0058】
実施例1(及び比較例1)における反応速度定数pの算出においては、図3に示すように作用電極3における電流値の対数プロットを行い、t=50sにおける直線の傾きから反応速度定数pを求めた。
【0059】
図4に、実施例1、比較例1の条件で定電位電解を行った時の電流−時間曲線を示す。作用電極3を流れる電流は、定電位電解開始時には、試料S1中のFe(CN)64-濃度が高いので、このFe(CN)64-濃度に応じた酸化電流が大きく流れる。一方、酸化反応が進行すると、試料S1中のFe(CN)64-濃度が低くなるため、作用電極3を流れる酸化電流が小さくなる。そして、Fe(CN)64-がほぼFe(CN)63-に酸化されると、作用電極3を流れる電流は、残余電流と呼ばれ電流値0mAとはならないが、時間によらず一定値となる。この残余電流が測定される状態に至ると、全電解状態に到達したと判断される。
【0060】
図4に示すように、電解時間に対する電流値変化から全電解時間は、実施例1でt=140s、比較例1でt=190sであった。
【0061】
図5に、実施例1、比較例1の条件で定電位電解を行った時の吸光度の反応時間に対する変化を示す。全電解が完了すると、この吸光度が一定値となる平衡吸光度に達することから、電解液10中のFe(CN)63-を選択的に特定可能な吸収波長である420nmの吸光度の反応時間に対する変化によっても、全電解状態に到達したかを判断できる。
【0062】
図5に示すように、平衡吸光度は、実施例1、比較例1ともに0.22と測定され、また、吸光度の時間変化から全電解時間は、実施例1でt=140s、比較例1でt=200sとなり、比較例1は、実施例1に対して、全電解までに約1.5倍の時間を要した。
【0063】
以上のように、攪拌子13の長さのみを変えることにより攪拌Re数を変化させて電解速度を比較したところ、攪拌Re数が高い方が、反応速度定数pが大きく、全電解時間と平衡濃度到達時間ともに短くなり、電解速度が大きくなることが分かった。
【0064】
なお、攪拌Re数の算出式から、攪拌子13の長さは、攪拌Re数に影響するが、攪拌子13は光透過性容器2の中で回転させるため、光透過性容器2の寸法の制約を受ける。そのため、攪拌子13の長さは、光透過性容器2の光路長(光透過性容器2の横断面が正方形である場合)よりも短いものを選択することとなる。
【0065】
[実施例2]攪拌速度、攪拌Re数と電解速度の関係
実施例1の攪拌子13(φ2mm×7mm)の回転速度(以後、攪拌速度とする)、攪拌Re数が電解速度へ与える影響を評価した。実施例2では、攪拌子13の攪拌速度を、800rpm、1000rpm、1200rpm、1400rpmと変化させて定電位電解及び吸光光度測定を行った。なお、攪拌子13の攪拌速度と攪拌Re数以外の条件は、実施例1と同じ条件とした。
【0066】
表2に、各攪拌速度における測定条件及び測定結果(反応速度定数p、平衡吸光度とその到達時間、全電解時間)を示す。
【0067】
【表2】

【0068】
表2に示すように、攪拌速度、攪拌Re数の上昇とともに、i(0)、反応速度定数pも上昇した。なお、実施例2における反応速度定数pの算出においては、図6に示すように作用電極3における電流値の対数プロットを行い、t=50sにおける直線の傾きから反応速度定数pを求めた。
【0069】
図7に、攪拌子13の攪拌速度が異なる条件(攪拌Re数が異なる条件)で定電位電解を行った時の電流−時間曲線を示す。作用電極3を流れる電流が電解反応時間によらず一定値となる状態である全電解状態までに到達する時間(すなわち、全電解時間)は、攪拌Re数が950以下では、攪拌Re数の上昇とともに短くなるが、攪拌Re数が950以上(攪拌速度で約1000rpm相当以上)では、ほぼ一定となる結果が得られた。
【0070】
また、図8に攪拌Re数と反応速度定数pとの関係を整理した図を示す。図8から、攪拌Re数が950以上(攪拌速度で約1000rpm相当以上)であれば、反応速度定数pがほぼ0.270で一定となり、安定した電解反応が行えることが分かる。
【0071】
図9に、電解液10の吸光度の電解反応時間に対する変化である吸光度−時間曲線を示す。図9に示すように、全電解が完了し吸光度が一定となる平衡吸光度到達時間は、攪拌Re数が950以上では同等の結果が得られたが、攪拌Re数が950以下では、攪拌Re数の低下とともに長くなった。
【0072】
以上より、攪拌Re数が950より小さい(攪拌速度で約1000rpmより遅い)の場合、攪拌によるFe(CN)64-の作用電極3近傍への供給に律速され電解速度が遅くなると考えられる。一方、攪拌Re数が950以上(攪拌速度で約1000rpm以上)では、作用電極3の電解反応にのみに律速され、攪拌速度の違いによる変化がないものと考えられる。
【0073】
[実施例3]電解液の液量と電解速度との関係
実施例3では、光透過性容器2に保持する電解液10の量(以後、電解液量とする)の違いによる電解速度の違いを評価した。実施例3では、電解液量を、1ml,1.2ml,1.5mlと変化させて定電位電解及び吸光光度測定を行った。なお、電解液量以外の条件は、攪拌子13(φ2mm×7mm)の攪拌速度を1400rpmとし、その他の条件を実施例1と同じ条件とした。表3に、各電解液量における測定条件及び測定結果(反応速度定数p、平衡吸光度とその到達時間、全電解時間)を示す。
【0074】
なお、化学工学的には、攪拌条件の評価において電解液量を変化させることは、装置のスケ−ルアップまたはスケールダウンすることに相当する。そのため、実施例3での電解液量を変えた条件比較では、攪拌Re数を算出する際に、Re数の相似則にしたがって、攪拌子13の長さを計算上補正した上で、補正後の攪拌Re数(補正攪拌Re数)を求める必要がある。補正攪拌Re数は、次のようにして計算できる。
【0075】
例えば、電解液量1(ml)の条件を基準として、電解液量1.2(ml)の補正攪拌Re数を求める。電解液量の比率をもとにスケ−ルアップの係数は、1.2/1.0=1.2となる。すなわち、電解液量1.2(ml)の攪拌条件において、電解液量1ml基準で攪拌子13の長さは、1/1.2倍に相当するので、7mm×(1/1.2)=5.8mmとして攪拌Re数の計算に使用すればよい。電解液量が1.5(ml)の場合も同様の方法で補正攪拌Re数を求めることができる。
【0076】
【表3】

【0077】
表3に示すように、電解液量の減少とともに反応速度定数pの値が上昇している。なお、実施例における反応速度定数pの算出においては、図10に示すように作用電極3における電流値の対数プロットを行い、t=50sにおける直線の傾きから反応速度定数pを求めた。
【0078】
図11に、電解液量が異なる条件で定電位電解を行った時の電流−時間曲線を示す。図11に示すように、電解液量が増加すると、作用電極3を流れる電流値の減少速度が低下する。
【0079】
図12に、電解液10の吸光度の電解反応時間に対する変化である吸光度−時間曲線を示す。図12に示すように、吸光度が一定となる時間(すなわち、全電解が完了する時間)は、電解液量1ml,1.2ml,1.5mlの順に長くなった。
【0080】
以上のことは、表3の補正攪拌Re数を比較することにより説明される。すなわち、攪拌子13の長さと攪拌速度とを同じとした場合、電解液量の増加にしたがい、補正攪拌Re数が低下することから、反応速度定数、平衡吸光度到達時間、全電解時間などの数値は、攪拌Re数が低下することに対応した値となっている。
【0081】
上記の考え方は、図8で示した攪拌Re数と反応速度定数pの関係と同様に、表3の補正攪拌Re数に対する反応速度定数pとの関係は、おおよそ近似曲線上にプロットできる。このことから、補正攪拌Re数によって、電解液量を最適化することが可能である。
【0082】
以上のことから、電解液10の液量変化は、攪拌状態に影響を及ぼすため注意する必要がある。そして、光透過性容器2に保持する電解液10の液量を増減したとしても、補正攪拌Re数を基づいて、十分な攪拌となるように測定条件を修正することで分析の精度や効率を維持した測定が可能となる。
【0083】
なお、光透過性容器2に保持される電解液10の液量は、電解セル1における吸光度測定に支障がなく、且つ封止部材9に設けられる対電極5などの電極類が電解液10に浸漬される量が少なくとも必要である。
【0084】
[実施例4]対電極面積とバルク電解速度の関係
対電極5の表面積(対電極5のうち電解液10に浸漬され、電極反応が起こりうる部分の表面積(浸漬面積))の違いによる電解速度の違いを評価した。実施例4では、対電極5として白金線(φ1mm×1mm、表面積:0.039cm2)と白金網(10mm×40mm、厚さ:0.07mm、表面積:14.8cm2)とを用い、電解液量を1ml、攪拌子13の攪拌速度を1400rpm(攪拌Re数は1140)に設定した。その他の条件は、実施例1と同じ条件で定電位電解及び吸光光度測定を行った。実施例4では、対電極面積の影響が明らかとなるように対電極5の表面積を380倍とした。作用電極3は、対電極に白金線を用いた場合も白金網を用いた場合も、同一寸法の白金網(5mm×40mm、厚さ:0.14mm、表面積:14.8cm2)を用いた。よって、対電極5の表面積(浸漬面積)に対する作用電極3の表面積(浸漬面積)の比(作用電極面積/対電極面積)は、それぞれ、380,1となった。表4に実施例4における試験条件を示す。
【0085】
【表4】

【0086】
図13に、各条件で定電位電解を行った時の電流−時間曲線を示す。図13に示すように、対電極5の表面積が大きくなると、作用電極3を流れる電流値の減少速度が低下する。
【0087】
電解反応時間t=100sにおいて、実施例4の条件で得られた作用電極3を流れる電流値を1とした場合、比較例2の条件で得られた作用電極3を流れる電流値の相対値は3となり、対電極5の表面積の増加に伴い全電解にかかる時間が長くなることを示している。
【0088】
図14に、電解液10の吸光度の電解反応時間に対する変化である吸光度−時間曲線を示す。図14に示すように、t=100sにおいて、対電極5の表面積が0.039cm2の場合の条件で電解した場合の吸光度を1とすると、対電極5の表面積が14.8cm2の場合の条件で電解した場合の吸光度は0.87となり、対電極5の面積の増加に伴い全電解する時間が長くなることを示している。
【0089】
これは、対電極5面積が小さい場合(白金線を用いた場合)、対電極5では、水素イオンが主に還元されているのに対して、対電極5の面積が大きい場合(白金網を用いた場合)、作用電極3で生成した電極反応活性物質Fe(CN)63-が再還元されFe(CN)64-となり、再度、作用電極3で酸化されているものと考えられる。なお、いずれの条件においても、定電位電解及び吸光光度測定が支障なく行うことができた。
【0090】
以上より、対電極5の表面積は、作用電極3の表面積と比較して小さいほど、作用電極3の電極反応への影響を低減できる。一方、対電極5の表面積を小さくしすぎると、溶液の電解などの理由により対電極5表面で気泡が多量発生し、対電極5表面が気泡で覆われてしまい、対電極5と電解液10との接触が断たれる可能性が生じる。よって、作用電極面積/対電極面積は、380以下、より好ましくは、380以下1以上とすると作用電極3と対電極5との間に隔膜などを用いなくても電解セルの電解反応を測定することができる。なお、後述の実施形態2のように、作用電極3と対電極5との間に隔膜などを設けた場合には、対電極5の表面積を大きくした場合でも、作用電極3に影響が及びにくい。よって、作用電極3と対電極5との間に隔膜を設けた場合には、対電極5の表面積は、発生する気泡の影響を受けない程度の大きさとするとよい。
【0091】
[実施例5]酸化還元電位と反応電子数の測定
実施例5では、還元体として知られているFe(CN)64-に関して、標準酸化還元電位(式量電位E0’)と酸化還元反応に関与する反応電子数nを求めた。
【0092】
まず、0.25mmol/lのFe(CN)64-を含んだ0.1mol/lのリン酸緩衝液(pH7.0)を試料S2として光透過性容器2内に1.0ml保持した。
【0093】
そして、窒素ガスにより試料S2の脱気処理を行った後、導入管7を介して試料S2内に窒素ガスをフローさせながら、作用電極3に対して140mV,180mV,220mV,260mVの電位(参照電極6を基準にした電位)を印加して定電位電解を行うとともに、紫外可視ダイオードアレイ分光光度計により波長250nm〜500nmにおける吸収スペクトルを測定した。
【0094】
図15の特性図に示すように、Fe(CN)64-とFe(CN)63-の酸化還元対のうち、酸化体であるFe(CN)63-を特定するピーク波長である波長420nmにおける吸光度から、設定した印加電圧に応じて吸収ピ−クが変化することが読み取れる。
【0095】
次に、各電位で測定された波長420nmの吸収スペクトル変化から、Lambert−Beerの法則に基づいて、[Fe(CN)63-]と[Fe(CN)64-]との濃度比([O]/[R])を算出し、(1)式に基づいて[O]/[R]と作用電極3の電極電位とのネルンストプロットを求めた。図16にネルンストプロットを示す。
【0096】
図16に示した結果においてネルンスト解析を行い、その回帰式の切片からFe(CN)64-の式量電位E0’は210mV(SHE基準で換算(Ag/AgCl基準の電位に約197mVを足して換算)すると約407mV)であり、回帰式の傾きから反応電子数nは1であった。これら各数値は文献(例えば、非特許文献4)値と略一致した。
【0097】
ゆえに、本実施形態に係る電解セル1によれば、酸化還元種のどちらかを選択的に特定可能な吸収ピ−ク波長が存在する場合、分光電気化学法を適用して標準酸化還元電位(すなわち、式量電位E0’)、反応電子数nを測定でき、その測定値は十分な測定精度を有することが確認できた。
【0098】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る電解セル11の概略側面図を図17に示す。本発明の実施形態2に係る電解セル11は、実施形態1に係る電解セル1の対電極5をガラスフィルタ12aを介して電解液10と電気的に連結してなる対極室12に設けたこと以外は、実施形態1に係る電解セル1と同様である。よって、実施形態1に係る電解セル1と同様の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0099】
図17に示すように、実施形態2に係る電解セル11は、光透過性容器2、攪拌子13、作用電極3、作用電極固定枠体4、対電極5、対極室12、封止部材9を備える。
【0100】
対極室12は、円筒状のガラス管の一端にガラスフィルタ12aを設けて構成される。この対極室12には電解液(例えば、電極反応活性物質を含まないこと以外は電解液10と同じ組成の電解液)が保持され、この電解液に対電極5を浸漬した状態で、対極室12が電解液10に浸漬される。つまり、対極室12は、ガラスフィルタ12aを介して電解液10と電気的に連結される。
【0101】
次に、電解セル11を用いて、実施例6、7に示すように種々の試料に関して定電位電解による分析を行った。なお、実施例6、7の電解セル11において、光透過性容器2にはジーエルサイエンス社製の石英セル(二面石英製コード6210−11006、光路長10mm)、作用電極3にはニラコ社製の白金網(φ0.07mm、100メッシュ)を10mm×40mm、厚さ:0.07mm、表面積:14.8cm2の形状に切断し、この白金網を折り曲げて5mm×40mm、厚さ:0.14mm、表面積:14.8cm2としたもの、作用電極固定枠体4にはピーク樹脂から成るもの、対電極5には直径1mmの白金線を被覆し、先端10mmのみ露出させたもの、対極室12には、直径3mmのガラス管内にテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェイト(TBAHFP)を0.1mol/l含む1,2−ジクロロエタン溶液を保持したもの、参照電極6にはTBAHFPを0.1mol/l含む1,2−ジクロロエタン溶液に銀線を浸漬させたAg電極、導入管7、排出管8には直径1mmのガラス管、封止部材9にはピーク樹脂から成るものを用いた。電解液10の撹拌はジーエルサイエンス社製の撹拌子13(MC−7 φ2mm×7mm)とマグネチックスターラーを用いて行った。
【0102】
[実施例6]非水溶媒での分光電気化学測定
実施例6では、0.02mmol/lのテトラシアノキノジメタン(TCNQ)と0.1mol/lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェイト(TBAHFP)を含む1,2−ジクロロエタン溶液を試料S3として光透過性容器2内に1.0ml保持した。
【0103】
そして、窒素ガスにより試料S3の脱気処理を行った後、光透過性容器2に攪拌子13(φ2mm×7mm)を入れ、1400rpmで回転させて電解液10を攪拌した。なお、この時の攪拌Re数は1554であり、十分な攪拌状態であった。そして、導入管7を介して試料S3内に窒素ガスをフローさせながら、作用電極3に対して0.1Vの電位(参照電極6(Ag/Ag+)を基準にした電位)を印加することにより定電位電解を行うとともに、その電解時の作用電極3における電流変化を測定した。定電位電解により、TCNQは還元されてTCNQ-・となった。さらに、定電位電解中に、試料S3に対して波長300〜1000nmの吸光度を測定した。
【0104】
また、実施例6の比較例として、対極室12を設けず、直接電解液10に対電極5(直径1mmの白金線を被覆し、先端10mmのみ露出させたもの)を浸漬して、実施例6と同じ条件で定電位電解及び吸光光度測定を行い比較例2とした。
【0105】
図18に、実施例6、比較例2の条件で定電位電解を行った時の電流−時間曲線を示す。図18に示すように、実施例6の条件(対極室12あり)と比較して、比較例2の条件(対極室12なし)で電解を行うと、電流値の減少速度が遅くなった。電解反応時間t=100sにおいて、対極室12がある場合に作用電極3を流れる電流を1とすると、対極室12がない場合に作用電極3を流れる電流の相対値は9となった。すなわち、対極室12を設けることで、全電解に必要とされる時間が短くなった。
【0106】
図19に、実施例6、比較例2の条件で定電位電解を行った時の吸光度の反応時間に対する変化を示す。電解液10中の酸化還元種であるTCNQとTCNQ-・のうち、TCNQ-・だけが、850nmに吸収ピークを有する。TCNQを含む電解液10を定電位電解すると、電解時間の経過とともに電解液10のTCNQ-・の濃度が上昇するので、電解液10に対する波長850nmの吸光度は時間とともに上昇し、全電解が完了すると一定値となる。図19に示すように、実施例6、比較例2の条件で定電位電解を行った場合の吸光度の時間変化はほぼ同じ挙動を示した。
【0107】
以上のように、対極室12がある場合(実施例6)と対極室12がない場合(比較例2)とを比較すると、分光法による測定値には変化がなかったが、電流値の減少速度は、対極室12を設けることで顕著に減少した。これは、試料S3の定電位電解反応において、対電極5で1,2−ジクロロエタンまたはTBAHFPの電解によって生成した物質が、作用電極3でTCNQが電解されて生成したTCNQ-・と反応することに起因するものと考えられる。すなわち、実施例6の場合には、対電極5の反応で生成した生成物は、試料中に拡散することなく対極室12にとどまるが、比較例2の場合には、対極室12がないので生成物が拡散してTCNQ-・と反応したためと考えられる。
【0108】
ゆえに、対電極5での反応生成物が作用電極3の反応に影響を及ぼす場合には、対電極5を対極室12内に設けることで、対電極5の反応生成物が作用電極3での反応に及ぼす影響を防止することができる。
【0109】
[実施例7]実施形態2に係る電解セルと薄層型分光電気化学セルとの比較
実施例7では、実施形態2に係る電解セル11と、図21(A),(B)を参照して説明した従来技術に係る薄層型分光電気化学セル80(比較例3)との比較を行った。
【0110】
実施例7において、定電位電解の条件は、実施例6と同様の条件で行った。また、比較例3の薄層型分光電気化学セル80において、薄層型分光電気化学セルに1.0mmol/lのテトラシアノキノジメタン(TCNQ)と0.1mol/lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェイト(TBAHFP)を含む1,2−ジクロロエタン溶液を試料S4として用意し、この試料S4の定電位電解を行った。
【0111】
実施形態2に係る電解セル11の光路長が10mmに対して、薄層型分光電気化学セル80の光路長が0.2mmであるので、同じ吸光度を得るためには、理論上50倍高い濃度が必要となる。よって、実施例7のTCNQ濃度と比較して、比較例3のTCNQの濃度を50倍とした。
【0112】
図20に、実施例7及び比較例3の条件でバルク電解反応を行った場合の分光測定の測定結果を示す。バルク全電解反応が完了したことは、定電位電解反応において、作用電極3に流れる電流の時間変化がほぼ0となった場合をTCNQのほぼ全量がTCNQ-・に還元されたものと判断した。
【0113】
図20に示すように、TCNQ-・を特定する選択波長である850nmの吸光度を比較すると、実施例7では、吸光度が1.2であるのに対して、比較例3では、0.4となっている。これは、比較例4では、薄層型分光電気化学セル80に保持される電解液が攪拌されていないため、作用電極近傍の酸化還元種のみしか電解されていないことを示している。つまり、薄層型分光電気化学セル80においては、全酸化還元種のおよそ30%程度しか電解されていないと考えられる。
【0114】
以上、具体的な実施例を挙げて説明したように、本発明の電解セルによれば、精度の高い電気化学測定と、分光測定を行うことができる。
【0115】
そして、分光測定用のセル(例えば、横断面形状10mm角)を用いることにより、光路長が長く、モル吸光係数の小さい試料でも低濃度で測定することができる。なお、分光測定用のセルの形状は、測定対象物質のモル吸光係数と試料濃度とを考慮し、測定誤差が少なくなり、かつ、電解液の十分な攪拌が可能であることを条件に適宜選択可能であり、分光測定用のセルの光路長を10mmに限定するものではない。
【0116】
また、セル寸法や攪拌子の長さ、電解液の種類や量を変更する場合には、攪拌レイノルズ数を基に、実施例3で行ったような化学工学の手法によって、スケールアップあるいはスケールダウンによって電解セルの諸条件を算出できる。
【0117】
そして、電解反応中に、電解セルに保持される電解液を攪拌する攪拌手段を備えることにより、迅速なバルク全電解を行うことができる。その場合、攪拌Re数950以上の攪拌条件にて電解反応を行うと、迅速に電解反応を行うことができる。また、電解液を攪拌することにより、電解液中の電解生成物(電解反応物)が均一に分布するため、光路上に電極を配置する必要がなくなる。その結果、試料に応じた電極(例えば、白金、金、カーボンなど)や電極構造を選択することが可能となる。この撹拌により、物質(酸化還元種)移動を促進させることができるとともに、攪拌速度を一定とすることで、作用電極への物質(酸化還元種)移動を一定にすることができる。その結果、電極近傍において拡散の影響を抑制し、精度良く式量電位EO’を測定することができる。
【0118】
すなわち、光路長を長くすることで、吸光特性の小さい物質の測定を可能とし、且つ、電解液を攪拌することで、電解反応時間を短縮することができる。
【0119】
また、本発明の電解セルは、作用電極を固定する作用電極固定枠体を、光透過性容器に装入する構成であるので、作用電極を光透過性容器の所定の箇所に容易に設けることができる。さらに、作用電極固定枠体により、光透過性容器の角部を閉塞し、光透過容器の中央部(すなわち、分光測定を行う部位)に電解液を保持することができる。よって、光透過性容器に保持される電解液量を減らした場合にも、精度よく分光測定を行うことができる。なお、光透過性容器に保持する電解液量を低減することにより、全電解反応に必要とされる時間を短縮することができる。
【0120】
また、作用電極固定枠体の下部に、電解液を攪拌する攪拌子のガイドを形成することにより、長い攪拌子を用いた場合や攪拌子の回転速度を上昇させた場合においても、攪拌子を良好に回転させることができる。すなわち、攪拌子の攪拌速度を上昇させた場合、ガイドによって攪拌子が良好に回転するので、電解反応を迅速に行うことができる。さらに、攪拌子が設けられる場所は、光透過性を必要としない部分であるため、分光測定を行うことに支障は生じない。よって、作用電極固定枠体の下部に攪拌子のガイドを形成することで、光透過性容器に余分な電解液を保持することを抑制して、より少ない電解液で分光測定を行うことができる。
【0121】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0122】
例えば、本実施形態の電解セルの電解反応において、ネルンスト解析を行って反応電子数(電気量)を求めることにより、電解反応に関与する物質の全モル数を算出することが可能となり、その電解セル(光透過性容器)が十分小さい構成(例えば、従来の電解セルと比較して十分小さい構成)であれば絶対微量定量を行うことも可能である。
【0123】
また、酸化還元測定対象となる酸化還元種(電極反応活性物質)は、実施例に限定されるものではなく、任意の酸化還元種において、酸化還元反応を検出することができる。また、酸化還元種において、酸化体のみ(若しくは、還元体のみ)に特有の吸収ピークを有するものであれば、その吸収ピークの波長の吸光度を測定することで、酸化体(若しくは、還元体)の濃度などを光学的測定により求めることができる。そして、攪拌レイノルズ数が950以上の攪拌条件で電解反応を行うことにより、任意の酸化還元種において、迅速に電解反応を行うことができる。
【0124】
また、電気化学分析では分析用途に応じて電解液の種類が変わるが、基本となる溶媒物性(粘度、密度)が明らかであれば、攪拌レイノルズ数の算出は可能であり、非水溶媒であっても攪拌Re数による攪拌状態の管理が可能である。
【0125】
また、作用電極の表面積に対して、対電極の表面積を十分小さくすることで、隔膜などを用いることなく、各種分光法を適用し、電解セルの分光電気化学測定を行うことができる。よって、その電解反応機構の解明、電解反応の制御などが容易(例えば、従来の電解セルと比較して容易)になる。
【0126】
作用電極の酸化還元反応が、対電極での反応生成物の影響を受ける場合には、支持電解液が水や非水溶媒にかかわらず、対極室を設けることにより、電解液の攪拌を妨げることなく、対電極での反応生成物の影響を低減させることができる。すなわち、対極室を設けることで、陽極反応生成物の陰極側への移動、陰極反応生成物の陽極側への移動を防止することができる。
【0127】
そして、本発明の電解セル、電気化学合成方法、電気化学分析方法は、標準酸化還元電位の測定法、絶対微量定量法、ファインケミストリーを目指した新規電解合成法、作用電極に酸化還元酵素を固定したバイオ電極を用いて、生体反応特異性を付与したマイクロデバイス型電解セル、酸化還元酵素活性測定法に用いることができる。
【0128】
例えば、酸化還元酵素が固定化されたバイオ電極を作用電極として適用しマイクロデバイス型の電解セル(例えば、図1と同様の構成で、生体反応特異性を有する変換系ユニット)を構成することにより、前記の酵素に対する特異的な反応を起こす生体物質に関して、絶対微量定量を行うことが可能となる。さらにまた、酸化還元反応を起こし得る酵素であれば、その酵素の活性に関して分析することが可能となる。加えて、単一あるいは複数細胞の呼吸活性においても、微小な構成の電解セルを用いて酸素濃度を測定することにより分析が可能となる。
【符号の説明】
【0129】
1,11…電解セル
2…光透過性容器(電解液容器)
3…作用電極
4…作用電極固定枠体(枠体)
4a…ガイド
5…対電極
6…参照電極
7…導入管
8…排出管
9…封止部材
10…電解液
12…対極室
13…攪拌子(攪拌手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも対向する一対の側面が光透過性を有する電解液容器と、
前記電解液容器内の該電解液中に浸漬される作用電極が設けられ、前記電解液容器に挿設される枠体と、
前記電解液を攪拌する攪拌手段と、
前記電解液中に浸漬される対電極、及び参照電極と、
を有する
ことを特徴とする電解セル。
【請求項2】
前記枠体の端部に、前記攪拌手段のガイドを形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の電解セル。
【請求項3】
前記枠体に、前記作用電極を固定する固定溝を形成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解セル。
【請求項4】
前記対電極の浸漬面積に対する前記作用電極の浸漬面積の割合は、380以下である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電解セル。
【請求項5】
前記対電極の浸漬面積に対する前記作用電極の浸漬面積の割合は、1以上である
ことを特徴とする請求項4に記載の電解セル。
【請求項6】
前記電解液容器内の電解液と隔膜を介して電気的に連結してなる対極室に前記対電極を設ける
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電解セル。
【請求項7】
前記攪拌手段の攪拌速度は、1000rpm以上である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電解セル。
【請求項8】
前記電解液の攪拌レイノルズ数が950以上となるように、前記攪拌手段が前記電解液を攪拌する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電解セル。
【請求項9】
酸化還元種を含んだ電解液が保持された電解液容器に対して、少なくとも作用電極、対電極、参照電極を浸漬し、
前記電解液を、攪拌手段により1000rpm以上の攪拌速度で攪拌するとともに、前記作用電極に電位を印加して前記酸化還元種を合成する
ことを特徴とする電気化学合成方法。
【請求項10】
酸化還元種を含んだ電解液が保持された電解液容器に対して、少なくとも作用電極、対電極、参照電極を浸漬し、
前記電解液の攪拌レイノルズ数が950以上となるように、前記電解液を攪拌するとともに、前記作用電極に電位を印加して前記酸化還元種を合成する
ことを特徴とする電気化学合成方法。
【請求項11】
被分析対象を含んだ電解液が保持された光透過性の電解液容器に対して、少なくとも作用電極、対電極、参照電極を浸漬し、
前記電解液を、攪拌手段により1000rpm以上の攪拌速度で攪拌するとともに、前記作用電極に電位を印加し該作用電極の電流変化を検出し、分光法により前記電解液の吸光度変化を算出する
ことを特徴とする電気化学分析方法。
【請求項12】
被分析対象を含んだ電解液が保持された光透過性の電解液容器に対して、少なくとも作用電極、対電極、参照電極を浸漬し、
前記電解液の攪拌レイノルズ数が950以上となるように、前記電解液を攪拌するとともに、前記作用電極に電位を印加し該作用電極の電流変化を検出し、分光法により前記電解液の吸光度変化を算出する
ことを特徴とする電気化学分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−10999(P2013−10999A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145355(P2011−145355)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591031212)北斗電工株式会社 (20)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】