電解槽、気体製造装置および気体製造方法
【課題】電解液を電気分解し発生させた気泡を効率よく回収することができる電解槽を提供する。
【解決手段】電解槽は、少なくとも1つの電解用電極7と側壁部17とを有する電解槽であって、前記電解用電極7は、前記電解槽の第1内側面を構成し、前記側壁部7は、第1内側面に対向する、前記電解槽の第2内側面を構成し、前記側壁部7は、前記電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部45を有し、第1段差部45は、前記電解槽に電解液を収容して電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする。
【解決手段】電解槽は、少なくとも1つの電解用電極7と側壁部17とを有する電解槽であって、前記電解用電極7は、前記電解槽の第1内側面を構成し、前記側壁部7は、第1内側面に対向する、前記電解槽の第2内側面を構成し、前記側壁部7は、前記電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部45を有し、第1段差部45は、前記電解槽に電解液を収容して電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽、気体製造装置および気体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
これまでに、光電変換と、その光起電力を利用し電解液を電気分解することにより水素を発生させる水素製造装置が開示されている(例えば、特許文献1)。このような水素製造装置を用いることにより、太陽光エネルギーを効率よく水素として貯蔵することができる。
【0006】
また、電解液を電気分解し水素を発生させる装置では、電解槽で気泡として発生させた水素を電解液と共に気泡分離装置に移動させ、水素を回収した後、電解液を再び電解槽に導入することにより水素を回収している(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4594438号公報
【特許文献2】特開2007−84914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の電解液を電気分解し気泡を発生させる装置では、気泡分離装置が必要であり装置を大型化する必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電解液を電気分解し発生させた気泡を効率よく回収することができる電解槽を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも1つの電解用電極と側壁部とを有する電解槽であって、前記電解用電極は、前記電解槽の第1内側面を構成し、前記側壁部は、第1内側面に対向する、前記電解槽の第2内側面を構成し、前記側壁部は、前記電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部を有し、第1段差部は、前記電解槽に電解液を収容して電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面と第1段差部との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする電解槽を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電解用電極が電解槽の第1内側面を構成するため、電解液を電気分解し電解用電極の表面から気泡を発生させたとき、発生した気泡を第1内側面に沿って、又は第1内側面から離脱して電解液中を浮上させることができ、電解液の液面から気泡中の気体を気相中に放出させることができ、発生気体を回収することができる。
本発明によれば、第1内側面に対向する、電解槽の第2内側面を構成する側壁部が、電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部を有するため、電解用電極の表面から発生し第1内側面に沿って浮上した気泡のうち液面から気相中に放出されない小さい気泡(泡の直径が小さく、表面張力が大きい気泡)を第1段差部と電解液の液面との間の電解液中で対流させることができる。このことにより、小さい気泡がぶつかり大きな気泡(泡の直径が大きく、表面張力が小さい気泡)になる確率を高くすることができ、気泡中の気体が気相中に放出できるようになり、電解用電極の表面で気泡として発生させた気体を効率よく回収することができる。その結果、気泡分離装置を設けなくても、効率よく発生気体を回収することができるようになり、装置を小型化することができる。
また、第1段差部を設けることにより、小さい気泡が第1段差部よりも深い電解槽中に流れることを抑制することができ、小さい気泡が電解液中に広く拡散することおよび電解槽の内壁全体に吸着することを抑制することができる。その結果、電解液を電気分解し発生させた気泡を効率よく回収することができる。また、電解用電極表面に吸着する気泡を少なくすることができ、電気分解反応が生じる電解用電極の表面積を広くすることができる。さらに、小さい気泡が電解液中に広く拡散することにより生じる電解液の液面の上昇を抑制することができ、電解液が発生気体を回収するための配管などに侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の電解槽の概略断面図である。
【図2】図1の点線A−Aにおける電解槽の概略断面図である。
【図3】(a)は図1の一点鎖線B−Bにおける電解槽の概略断面図であり、(b)は図1の一点鎖線C−Cにおける電解槽の概略断面図である。
【図4】図3の一点鎖線で囲んだ範囲Eにおける電解槽の概略断面図である。
【図5】(a)〜(f)は、それぞれ本発明の一実施形態の電解槽の一部の概略断面図である。
【図6】(a)および(b)は、それぞれ本発明の一実施形態の電解槽の概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略上面図である。
【図8】図7の点線F−Fにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略裏面図である。
【図10】図7の一点鎖線G−Gにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図11】図7の一点鎖線H−Hにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図12】図10の点線で囲んだ範囲Jにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図18】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図19】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図20】従来の電解槽の一部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電解槽は、少なくとも1つの電解用電極と側壁部とを有する電解槽であって、前記電解用電極は、前記電解槽の第1内側面を構成し、前記側壁部は、第1内側面に対向する、前記電解槽の第2内側面を構成し、前記側壁部は、前記電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部を有し、第1段差部は、前記電解槽に電解液を収容して電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面と第1段差部との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする。
本発明において、電解用電極とは、印加される電圧により電解液を電気分解する電極である。
本発明において、側壁部とは、電解槽の側壁を構成する部分である。この電解槽の側壁とは、電解槽内の電解液を溜めるための側壁であってもよく、電解槽内の電解液を仕切るための側壁であってもよい。
本発明において、電解槽の内側面とは、電解槽の内面のうち、底面と、底面に対向する上面以外の面である。
本発明において、段差部とは、段状となった部分で、表面に高低差が生じている部分である。
【0013】
本発明の電解槽において、第1段差部は、電解液を電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、電解液の液面近傍の気泡が第1段差部より深い前記電解槽内へ流れることを抑制するように設けられことが好ましい。
このような構成によれば、電解用電極から発生させた気泡が電解液中に広く拡散することおよび電解槽の内壁全体に吸着することを抑制することができる。
本発明の電解槽において、第1段差部は、複数の段差を含むことが好ましい。
このような構成によれば、複数の段差で気泡を浮上させることができ、電解用電極から発生させた気泡が電解液中に広く拡散することをより抑制することができる。
【0014】
本発明の電解槽において、第2内側面は、第1面と、第1面の、前記電解槽の底側に設けられ、かつ、第1面と第1内側面との間隔よりも、第1内側面との間隔が狭い第2面とを有し、第1段差部は、第1面と第2面との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1内側面と、第1面と、第1段差部と、電解液の液面とで囲まれた範囲で気泡を対流させることができる。
本発明の電解槽において、第1面は、親水性を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1面上での気泡の流れをスムーズにすることができる。
【0015】
本発明の電解槽において、前記側壁部は、第1段差部の、前記電解槽の底側に第2段差部を有し、第2内側面は、第2面の、前記電解槽の底側に設けられ、かつ、第2面と第1内側面との間隔よりも、第1内側面との間隔が広い第3面を有し、第2段差部は、第2面と第3面との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、電解槽内の電解液の量を減少させずに第1段差を設けることができる。また、第1内側面と第1面との間隔を小さくすることができ、電解液の液面と第1段差との間の気泡が対流する電解液の量を少なくすることができ、気泡が合体し気泡中の気体が気相中に放出しやすくすることができる。このことにより、電解液中を対流する気泡中の気体をより早く気相中に放出することができる。
本発明の電解槽において、前記電解槽は、前記電解用電極として第1電解用電極と第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極は、電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、電解液を電気分解し第1気体および第2気体を製造することができる。
【0016】
本発明の電解槽において、第1および第2電解用電極は、並列に設けられ、第1電解用電極と第2電解用電極との間に設けられた隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、電解槽を扁平な形状とすることができ、太陽電池の裏面側に設置することが可能となり、隔壁により第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
本発明の電解槽において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡を容易に解消することができる。
本発明の電解槽において、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり他方は酸素であることが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。
【0017】
また、本発明は、本発明の電解槽と、受光面およびその裏面を有する光電変換部とを備え、第1および第2電解用電極は、前記裏面の上に並列に設けられ、かつ、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられた気体製造装置も提供する。
本発明の気体製造装置によれば、第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。
また、本発明の気体製造装置によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
さらに、本発明の気体製造装置によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0018】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続するように設けられ、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に積層構造のものを利用することができる。
本発明の気体製造装置において、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第2電解用電極と光電変換部の裏面との間にリーク電流が発生するのを防止することができる。
【0019】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0020】
本発明の気体製造装置において、第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができ、内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1導電部を少ない工程で設けることができ、製造コストを低減することができる。
【0021】
本発明の気体製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、第1導電部を設けることなく、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に光を入射させることにより起電力を生じさせることができる。
【0022】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の第1区域と第2区域との間に生じた起電力を第1電解用電極と第2電解用電極とに出力することができる。
本発明の気体製造装置において、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1区域と第2区域との間に、光電変換部が受光することにより生じる起電力を効率よく発生させることができる。
【0023】
本発明の気体製造装置において、第1区域は、第3導電部を介して第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2導電部を介して第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極と第2電解用電極とに出力するときのオーミックロスを低減することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより、光電変換部の裏面の第1および第2区域間に起電力を生じさせることができる。
【0024】
本発明の気体製造装置において、透光性を有する第1基板をさらに備え、前記光電変換部は、第1基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部を第1基板の上に形成することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、容易に高電圧の起電力を第1および第2電解用電極に出力することができる。
【0025】
本発明の気体製造装置において、各光電変換層は、第4導電部により直列接続されたことが好ましい。
このような構成によれば、各光電変換層を並べて設けることができる。
本発明の気体製造装置において、第4導電部は、前記光電変換層の受光面側に設けられた透光性電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた裏面電極とを含むことが好ましい。
このような構成によれば、各光電変換層を並べて設けることができる。
【0026】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、水素または酸素が発生する反応の触媒面積を広くすることができる。
【0027】
本発明の気体製造装置において、前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から水素を効率よく発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から酸素を効率よく発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極の上に第2基板をさらに備え、第2基板は、前記側壁部を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極がそれぞれ第1内側面を構成し、第2基板が第2内側面を構成する電解槽を気体製造装置が備えることができる。
【0028】
また、本発明は、本発明の気体製造装置を前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、前記気体製造装置の下部から前記気体製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記気体製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する気体製造方法も提供する。
本発明の気体製造方法によれば、光電変換部の受光面に光を入射させることにより、第1気体および第2気体を製造することができる。
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0030】
電解槽の構成
図1は、本実施形態の電解槽の概略断面図であり、図2は図1の点線A−Aにおける電解槽の概略断面図である。また、図3(a)は図1の一点鎖線B−Bにおける電解槽の概略断面図であり、図3(b)は図1の一点鎖線C−Cにおける電解槽の概略断面図である。さらに、図4は、図3の一点鎖線で囲んだ範囲Eにおける電解槽の概略断面図である。
【0031】
本実施形態の電解槽21は、少なくとも1つの電解用電極7、8と側壁部17とを有する電解槽21であって、電解用電極7、8は、電解槽21の第1内側面42を構成し、側壁部17は、第1内側面42に対向する、電解槽21の第2内側面43を構成し、側壁部17は、電解槽21の上部において第1内側面42と第2内側面43との間隔が底側より広くなるような第1段差部45を有し、第1段差部45は、電解槽21に電解液を収容して電気分解し第1内側面42から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする。
以下、本実施形態の電解槽21について説明する。
本実施形態の電解槽21は、例えば、図1〜3のように第1基板上に第1電解用電極8と第2電解用電極7とを隔壁13を挟んで並列に設置し、第2基板14を第1電解用電極8と第2電解用電極7の上部に設置し、第1基板1と第2基板14とをシール材16により接合することにより、電解槽21を形成することができる。また、給水口18、第1気体排出口20、第2気体排出口19を設けることができる。また、第1および第2電解用電極8、7に電圧を印加するために、配線52、端子部10を設けることができる。
なお、ここでは、第1基板1と第2基板14とを用いる電解槽21について例示したが、例えば、箱型の電解槽に第1および第2電解用電極8、7を設置した電解槽21でもよい。
【0032】
1.電解用電極
本実施形態の電解槽21は、少なくとも1つの電解用電極を有する。また、本実施形態の電解槽21は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の両方を有することができる。このことにより、第1電解用電極8と第2電解用電極との間に電圧を印加することにより、電解槽21内の電解液を電気分解することができる。また、電解槽21は、複数組の第1電解用電極8および第2電解用電極7を有することもできる。
また、本実施形態のうち1つの電解用電極を有する電解槽21としては、例えば、電解槽21に第1電解用電極8が設けられ、他の電解槽に第2電解用電極が設けられ、電解槽21内の電解液と他の電解槽内の電解液とが塩橋により電気的に連結されている電解槽である。
【0033】
第1および第2電解用電極8、7は、電解槽21に溜められた電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生するように設けることができる。例えば、第1電解用電極8と第2電解用電極7は、その間に電圧を印加できるように設けられる。また、第1および第2電解用電極8、7は、それぞれ配線52により端子部10に電気的に接続することができる。このことにより、端子部10に外部電源を接続することができ、外部電源により第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電圧を印加することができる。
また、電解液は水を含み、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素であってもよい。このことにより、電解液に含まれる水を電気分解し、水素および酸素を発生させることができる。
【0034】
第1または第2電解用電極8、7は、電解槽21の第1内側面を構成する。このことにより、第1または第2電解用電極8、7は、電解槽21に溜められた電解液と接触することができ、この電解液を電気分解し気泡を発生させることができる。
第1または第2電解用電極8、7は、第1基板1上に設けることができる。この場合、第1基板1と第1または第2電解用電極8、7とで電解槽21の側壁となる。第1基板1は、電解槽21の側壁となりうる強度を有すれば特に限定されない。また、第1または第2電解用電極8、7は、箱型の水槽の内側面上に設けることもできる。この場合、第1または第2電解用電極8、7に対向する、箱型の水槽の内側面を有する側壁が側壁部17となる。
【0035】
第1または第2電解用電極8、7は、並列に設けることができる。このことにより、電解槽21を扁平な形状にすることができ、例えば、太陽電池の裏面上に設置することが容易になり、太陽電池の光起電力を効率よく利用して電解液を電気分解することができる。例えば、図1、2のように第1および第2電解用電極8、7を隔壁13を挟んで並列に設けることができる。
【0036】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であり、かつ、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有し、かつ、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、安定して第1気体および第2気体を発生させることができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7に電解液に対する耐食性を有する金属板または金属膜を用いることができる。
【0037】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、第1または第2電解用電極8、7を流れる電流の電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、この場合、第1電解用電極8または第2電解用電極7を電解液に対する遮液性を有する部分と多孔質からなる部分の二層構造とすることもできる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素である。
【0038】
2.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方とすることができる。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。このような構成によれば、第1電解用電極7と第2電解用電極8との間に電圧を印加することにより、より速い反応速度で水素を発生させることができる。
【0039】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0040】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0041】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0042】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0043】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0044】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0045】
3.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方とすることができる。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒を含んでもよく、酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に印加される電圧により、より速い反応速度で酸素を発生させることができる。
【0046】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0047】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「2.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0048】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0049】
4.側壁部
本実施形態の電解槽21は、第1内側面に対向する、電解槽21の第2内側面を構成する側壁部17を有する。本実施形態の電解槽21が第1電解用電極8と第2電解用電極7の両方を有する場合、それぞれに対応する側壁部17を有することができる。
側壁部17は、電解槽21の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部45を有する。具体的に説明すると、電解槽21が図3のような断面を有する場合、側壁部17である第2基板14が第1段差部45を有することができる。また、段差部45より上の側壁部17と第1または第2電解用電極8、7との間隔a(第1面47と第1内側面42との間隔a)は、段差部45より下の側壁部17と第1または第2電解用電極8、7との間隔b(第2面48と第1内側面42との間隔b)よりも広い。このことにより、電解槽21に溜められた電解液を電気分解し第1内側面42から気泡を発生させたとき、気体の浮力により液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡12を対流させることができる。このことを図面を用いて説明する。
【0050】
図4は、図3の一点鎖線で囲んだ範囲Eにおける電解槽の概略断面図であり、電解槽21を電解液で満たし、電解用電極により電解液を電気分解し気泡を発生させたときの模式図である。第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電圧を印加したとき、電解槽21内の電解液が電気分解することにより、第1電解用電極8の第1内側面42において第1気体が気泡12として発生し、第2電解用電極7の第1内側面42において第2気体が気泡12として発生する。第1内側面42において発生した気泡12は、その浮力により第1内側面42に沿って電解液中を浮上し、電解液の液面41の近傍にまで浮上した気泡は、その内部の気体を気相中に放出する。放出された気体は、第1気体排出口20または第2気体排出口19から排出され第1気体または第2気体を回収することができる。このとき、比較的直径の大きい気泡12中の気体は、容易に電解液の液面から気相中に放出されるが、比較的直径の小さい気泡12中の気体は、容易に電解液の液面から気相中に放出されず、気泡が電解液中を漂うことがある。この理由は明らかではないが、比較的直径の大きい気泡の表面張力は比較的小さく、比較的直径の小さい気泡の表面張力は比較的大きいためと考えられる。
【0051】
第1内側面42から気泡12を発生させたとき、気泡12が第1内側面42に沿って浮上することにより、電解液が第1内側面42に沿って流れる上昇流が生じると考えられる。また、電解用電極が発熱することによってもこの上昇流が生じると考えられる。また、電解用電極の表面の気泡を効率よく回収するために攪拌機などによりこのような上昇流を生じさせてもよい。
この電解液の上昇流は、電解液の液面41の近傍において、第1内側面42側から第2内側面43側に向かう流れに変わると考えられる。さらにこの電解液の流れは、第2内側面43の第1面47の近傍において電解槽21の底に向かう流れに変わると考えられ、その後、第1段差部45の近傍を流れ、電解槽21の底に向かって流れ、電解槽21内で対流すると考えられる。
【0052】
第1内側面42から発生した気泡12で、電解液の液面近傍に浮上した気泡12のうち、直径が比較的小さく内部の気体が気相中に放出されない気泡は、電解液の流れに乗って電解槽21内を流れると考えられる。しかし、電解液が第1段差部45の近傍を流れるとき、電解液は第2内側面43の第1面47側から第1内側面42側に向かって流れるため、電解液中の気泡12はその浮力により浮上すると考えられる。従って、第1段差部45を設けることにより、気泡12が電解槽21の底に向かう電解液の流れに乗らずに気泡12を再び浮上させることができる。この気泡12は電解液の液面近傍に浮上し、再び第1内側面42側から第2内側面43側に向かう電解液の流れに乗ると考えられる。
従って、第1段差部45を設けることにより、液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡12を対流させることができる。このことにより、液面41と第1段差部45との間の電解液中で複数の気泡を合体させ比較的直径の大きい気泡とすることができる。比較的直径の大きい気泡は、その内部の気体を容易に気相中に放出することができ、放出された気体は、第1気体排出口20または第2気体排出口19から排出され第1気体または第2気体を回収することができる。
【0053】
これらのことにより、本実施形態の電解槽21では、第1気体または第2気体を効率よく回収することができる。また、電解液の液面41近傍の気泡が第1段差部45より深い電解槽21内へ流れることを抑制することができる。また、電解液中に気泡として存在する気体の量を少なくすることができ、気泡の発生による電解液の液面の上昇を小さくすることができる。このことにより、電解液が第1気体または第2気体を排出するための配管に侵入することを抑制することができる。さらに、電解液中の気泡量を少なくすることができるため、第1または第2電解用電極8、7に吸着する気泡の量も少なくすることができる。このことにより、第1または第2電解用電極8、7の表面において、第1気体または第2気体を効率よく発生させることができる。
【0054】
次に、第1段差部45を有さない電解槽を用いて、電解用電極の表面から気泡を発生させた場合について説明する。図20は、第1段差部を有さない電解槽に電解液を満たし、電解用電極により電解液を電気分解し気泡を発生させたときの模式図であり、図4に対応する。
電解用電極107の表面から気泡を発生させた場合、気泡は電解液の液面まで浮上し、比較的大きな気泡は内部の気体を気相中に放出し、比較的小さな気泡は、電解液の流れに乗って電解槽内を流れる。第1段差部45を有さない電解槽では、電解用電極107が構成する内側面に沿って上昇流が生じ、この内側面に対向する内側面に沿って下降流が生じる。比較的小さな気泡は、この下降流の乗って流れるため、電解槽全体に拡散することになる。このため、電解槽全体に拡散された気泡は、電解槽の内面に広く吸着する。このことにより、電解液中の気泡の量が多くなり電解用電極107から発生させた気体の回収効率が低下する。また、電解液中の気泡の量が多くなることにより、気泡の発生による電解液の液面の上昇が大きくなる。このことにより、電解液が第1気体または第2気体を排出するための配管に侵入する確率が高くなる。さらに電解用電極の表面に吸着する気泡の量が多くなり、電解用電極表面での気体発生効率が低下する。
従って、本実施形態の電解槽21のように側壁部17に第1段差部45を設けることにより、このような気体回収効率の低下を抑制することができ、電解液の液面の上昇を抑制することができ、電解用電極表面での気体発生効率の低下を抑制することができる。
【0055】
側壁部17は、第1内側面42に対向する、電解槽21の第2内側面43を構成し、第1段差部45を有するものであれば、特に限定されない。また、側壁部17は、1つの部材から構成されてもよく、複数の部材から構成されてもよい。側壁部17は、例えば、図2、3のように第1段差部45を有する第2基板14から構成されてもよい。
また、図5(a)〜(f)は、それぞれ本実施形態の電解槽21の一部の概略断面図であり、図4に対応する。
【0056】
第1段差部45は、電解槽21の上部において第1内側面42と第2内側面43との間隔が底側より広くなるような段差を含み、電解液を電気分解し第1内側面42から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたものであれば特に限定されないが、例えば、図3、図5(b)〜(d)のように側壁部17の実質的に平行な第1面47と第2面48との間に設けられた段差を含む部分であってもよい。
【0057】
第1段差部45は、例えば、図5(a)のように、上方ほど第1内側面42との間隔が広くなる第1面47と、第1内側面42に実質的に平行な第2面48との間に設けられた段差を含む部分であってもよい。このことにより、第1面47上で気泡を浮上しやすくすることができる。
【0058】
第1段差部45は、例えば、図5(b)のように、段差により形成される面が第1面47に近づくに従い電解槽21の底の方に近づくように傾斜した面となるような段差を含む部分であってもよい。このことにより、電解液の流れに乗って第1段差部45の近傍に流れてきた気泡がその浮力により浮上しやすくなり、気泡が電解液の液面41と第1段差部45との間の電解液中で対流しやすくすることができる。
【0059】
第1段差部45は、例えば、図5(c)のように、複数の段差を含む部分であってもよい。このことにより、電解液の流れに乗って第1段差部45の近傍に流れてきた気泡を複数の段差により浮上させることができ、気泡が電解液の液面と第1段差部45との間の電解液中で対流しやすくすることができる。
【0060】
側壁部17は、例えば、図5(d)のように、第2基板14と親水性部材50から構成されてもよく、第1段差部45は、親水性部材50から構成される第1面47と第2基板14から構成される第2面48との間に設けられた段差を含む部分であってもよい。このことにより、側壁部17の第1面47を親水性にすることができ、第1面上での気泡の流れをスムーズにすることができる。親水性部材50としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PEGなど)、ポリアクリルアミド、デキストラン、プルラン、フィコールなどの親水性ポリマーを第1面上にディップコート、スプレーコート、スピンコートなどの方法によりコーティングすることにより形成した部材が挙げられる。また、これらの親水性ポリマーからなるシートを第1面上に貼り付けたものでもよい。
また、第2基板14に親水性材料からなる部材を取り付け、第1段差部45および第1面47を形成してもよい。
また、第1面47が親水性部材で構成されていない場合でも、第1面47が親水性となるように表面処理した場合でも同様の効果が生じる。従って、本実施形態の電解槽21に含まれる側壁部17は、第1面47が親水化処理されたものであってもよい。第1面47を親水化処理する方法としては、プラズマ処理で第1面47上に親水基を生成する方法などが挙げられる。
なお、第1段差部45により形成される面は、親水性を有さないことが好ましい。このことにより、この面を気泡がスムーズに流れ電解槽21の底方向に流れるのを抑制することができる。
【0061】
第1段差部45は、例えば、図5(e)、(f)のように、曲面である第1面47と第2面48との間に設けられた段差を含む部分であってもよい。また、第1段差部45に含まれる段差により形成される面は、曲面であってもよい。このことにより、第1面近傍および第1段差部45近傍の電解液の流れをスムーズにすることができ、電解液の乱流が生じるのを抑制することができ、気泡が乱流により第1段差部45より深い電解槽21内に拡散するのを抑制することができる。
【0062】
また、図6(a)(b)は、それぞれ本実施形態の電解槽21の概略断面図である。
側壁部17は、第1段差45の、電解槽21の底側に第2段差部46を有してもよい。また、第2内側面は、第2面48の、電解槽21の底側に設けられ、かつ、第2面48と第1内側面42との間隔bよりも第1内側面42との間隔cが広い第3面49を有してもよい。そして、第2段差部46は、第2面48と第3面49との間に設けられてもよい。このことにより、電解槽21内の電解液の量を減少させずに第1段差45を設けることができる。また、第1内側面42と第1面47との間隔aを小さくすることができ、電解液の液面41と第1段差45との間の気泡12が対流する電解液の量を少なくすることができ、気泡12が合体し気泡中の気体が気相中に放出しやすくすることができる。このことにより、電解液中を対流する気泡中の気体をより早く気相中に放出することができる。
また、第1面47と第1内側面42との間隔aは、第3面49と第1内側面42との間隔cよりも狭くてもよい。このことにより、電解槽21内の電解液の量を減少させずに電解液の液面41と第1段差45との間の気泡12が対流する電解液の量を少なくすることができ、気泡12が合体し気泡中の気体がより気相中に放出しやすくすることができる。
【0063】
なお、側壁部17の第1段差45および第2段差46は、図6(a)のように1つの部材、例えば第2基板14を加工して形成されてもよく、図6(b)のように複数の部材、例えば、第2基板14と段差部材51とにより形成されてもよい。
【0064】
なお、第2基板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めることができる必要があり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な第2基板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0065】
5.隔壁
本実施形態の電解槽21が第1電解用電極8と第2電解用電極7を有し、これらが並列に設けられた場合、電解槽21は、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に隔壁13を有することができる。
また、隔壁13は、第1電解用電極8と第2基板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と第2基板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方を複数設ける場合、隔壁13は、並列に並ぶように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と第2基板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と第2基板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0066】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0067】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0068】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0069】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0070】
6.シール材
シール材16は、第1基板1と第2基板14を接着し、電解槽21内の電解液および第1および第2電解用電極8、7から発生させた第1気体および第2気体を密閉するための材料である。第2基板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と第1基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0071】
ここではシール材16と記しているが、第1基板1と第2基板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0072】
7.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と第2基板14との間の空間および第2電解用電極7と第2基板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
生成した第1気体及び第2気体の気泡が効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7から離れるように、電解液室15の内部で電解液を循環させるような例えばポンプやファン、熱による対流発生装置などの簡易装置を備え付けることも可能である。
【0073】
8.給水口、第1気体排出口、第2気体排出口、第1気体排出路および第2気体排出路
給水口18は、電解槽21に含まれるシール材16の一部、もしくは第2基板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく電解槽21へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0074】
また、第1気体排出口20は、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。
【0075】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出路と導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出路と導通することができる。また、第1気体排出路は、複数の第1気体排出口20と導通することができ、第2気体排出路は、複数の第2気体排出口19と導通することができる。このことにより、電解槽21で発生させた第1気体および第2気体を回収することができる。
【0076】
9.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素および酸素を製造することができる。
【0077】
気体製造装置の構成
図7は、本実施形態の気体製造装置23の概略平面図であり、図8は、図7の点線F−Fにおける気体製造装置23の概略断面図であり、図9は、本実施形態の気体製造装置23の概略裏面図である。なお、図9において第2基板は省略している。
図10は、図7の一点鎖線G−Gにおける気体製造装置23の概略断面図であり、図11は図7の一点鎖線H−Hにおける気体製造装置23の概略断面図である。なお、図10、図11は、光電変換部2に効率よく太陽光が入射するように気体製造装置23を傾けて設置し、電解槽21に電解液を入れたときの概略断面図である。また、図12は、図10の点線で囲んだ範囲Jにおける気体製造装置23の概略断面図である。
図13〜図19は、それぞれ本実施形態の気体製造装置23の概略断面図であり、図8の概略断面図に対応する。
【0078】
本実施形態の気体製造装置23は、本実施形態の電解槽21と、受光面およびその裏面を有する光電変換部2とを備え、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2の裏面の上に並列に設けられ、かつ、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられたことを特徴とする。
また、光電変換部2は、透光性を有する第1基板1上に設けることができる。
以下、本実施形態の気体製造装置23について説明する。
なお、本実施形態の気体製造装置23は、本実施形態の電解槽21を含むため、上述の電解槽21についての説明が、矛盾がない限り本実施形態の気体製造装置にも当てはまる。
【0079】
1.透光性を有する第1基板
透光性を有する第1基板1は、本実施形態の気体製造装置23が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が第1基板1側となるように第1基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、第1基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、第1基板1は省略することができる。
【0080】
また、第1基板1は、本気体製造装置を構成するための土台となる部材である。また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するためには、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
第1基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0081】
2.第1電極、第1導電部
第1電極4は、第1基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、第1基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図18、19のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図8、14、17のように第1導電部9を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図16のように第2電解用電極7と接触してもよい。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0082】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いている。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0083】
第1導電部9は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第1導電部9を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
また、第1導電部9は、図8、14のように光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1導電部9が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第1導電部9は、図17のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0084】
第1導電部9の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0085】
3.光電変換部
光電変換部2は、受光面およびその裏面を有し、光電変換部2の裏面の上に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた第1基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図8、13〜17のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図18、19のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図18、19のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0086】
第1気体および第2気体のうちどちらか一方が水素であり、他方が酸素の場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図17、19のように並べて設けられた光電変換層を第4導電部33により直列接続した構造を有することができる。
【0087】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0088】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0089】
3−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、第1基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0090】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
第1基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0091】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0092】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0093】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0094】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体部37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体部36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0095】
n型半導体部37およびp型半導体部36は、図18、19のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図19のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第4導電部33により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体部37およびp型半導体部36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0096】
3−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0097】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0098】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0099】
3−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0100】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0101】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0102】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0103】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0104】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0105】
3−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0106】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0107】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0108】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0109】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0110】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0111】
4.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間および光電変換部2の裏面と絶縁部11との間に設けることができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0112】
5.絶縁部
絶縁部11は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図8、14のように第1導電部9を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部11を設けることができる。
また、絶縁部11は、例えば、図8、13〜17のように第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。このことにより、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間でリーク電流が生じるのを防止することができる。また、光電変換部2が図18、19のように受光することにより光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に電位差を生じるものである場合、絶縁部11は、第1電解用電極8と光電変換部2の裏面との間、および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けられ、絶縁部11は、第1区域上および第2区域上に開口を有してもよい。このことにより、光電変換部2が受光することにより形成される電子およびホールを効率よく分離することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、絶縁部11は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、リーク電流の発生を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
【0113】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0114】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0115】
6.第2導電部、第3導電部
第2導電部24は、絶縁部11と第2電解用電極7との間に設けることができ、第3導電部25は、絶縁部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。第2導電部24または第3導電部25を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じた起電力を効率よく第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができ、オーミックロスを低減することができる。第2導電部24、第3導電部25は、例えば、図18、19に示すように設けることができる。
第2導電部24または第3導電部25は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、オーミック抵抗の上昇を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2導電部24または第3導電部25は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0116】
7.第1電解用電極、第2電解用電極、側壁部
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、上述した電解槽21の電解用電極の説明が矛盾しない限り当てはまるが、気体製造装置23において、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面上に並列に設けられる。また、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解し、それぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられる。
例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、図8、13〜17のように、第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図18、19のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することができる。
【0117】
また、第1電解用電極8は、切換部29を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、切換部29を介して光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。例えば、気体製造装置23が図13のような断面を有する場合、第2電解用電極7は切換部29を介して光電変換部2の受光面と電気的に接続することができ、気体製造装置23が図14のような断面を有する場合、第1電解用電極8は切換部29を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、気体製造装置23が図15のような断面を有する場合、第2電解用電極7は切換部29を介して光電変換部2の受光面と電気的に接続することができ、第1電解用電極8は切換部29を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
【0118】
また、気体発生装置23において、光電変換部2と第1または第2電解用電極8、7とが電解槽21の側壁を構成する。また、光電変換部2を第1基板1上に設けている場合、第1基板1も側壁を構成する。
例えば、気体製造装置23が図10および図11のような断面を有する場合、第1基板1、光電変換部2、第1又は第2電解用電極8、7などが電解槽21の1つの側壁となり、第2基板14が電解槽21の1つの側壁となる。そして図10では、第2電解用電極7が電解槽21の第1内側面42を構成し、この第1内側面に対向する部分の第2基板14が側壁部17となり、第2内側面43を構成する。また、図11では、第1電解用電極8が電解槽21の第1内側面42を構成し、この第1内側面に対向する部分の第2基板14が側壁部17となり、第2内側面43を構成する。気体製造装置23の側壁部17については、上述の電解槽21の側壁部17についての説明が矛盾しない限り当てはまり、側壁部17は、第1段差部45を有する。また、側壁部17は、第2段差部46を有することができる。
【0119】
ここでは、光電変換部2に効率よく太陽光が入射するように、気体製造装置23を傾けて設置し、電解槽21に電解液を満たし、第1および第2電解用電極8、7の表面から気泡を発生させた場合について説明する。
図12は、図10の点線で囲んだ範囲Jにおける気体製造装置23の概略断面図であり、第2電解用電極7の第1内側面42から気泡を発生させたときの模式図である。光電変換部2に太陽光を入射させ、光電変換部2の光起電力により第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電圧が印加されたとき、電解槽21内の電解液が電気分解することにより、第1電解用電極8の第1内側面42において第1気体が気泡12として発生し、第2電解用電極7の第1内側面42において第2気体が気泡12として発生する。第1内側面42において発生した気泡12は、その浮力により第1内側面42に沿って電解液中を浮上し、電解液の液面41の近傍にまで浮上した気泡は、その内部の気体を気相中に放出する。放出された気体は、第1気体排出口20または第2気体排出口19から排出され第1気体または第2気体を回収することができる。このとき、比較的直径の大きい気泡12中の気体は、容易に電解液の液面から気相中に放出されるが、比較的直径の小さい気泡12中の気体は、容易に電解液の液面から気相中に放出されず、気泡が電解液中を漂うことがある。
【0120】
第1内側面42から気泡12を発生させたとき、気泡12が第1内側面42に沿って浮上することにより、電解液が第1内側面42に沿って流れる上昇流が生じると考えられる。また、電解用電極が発熱することによってもこの上昇流が生じると考えられる。また、電解用電極の表面の気泡を効率よく回収するために攪拌機などによりこのような上昇流を生じさせてもよい。
この電解液の上昇流は、電解液の液面41の近傍において、シール部材16に沿って側壁部17の第1面47に向かう流れとなり、さらに第1面47の近傍、第1段差部45の近傍を流れ、その後、電解槽21の底に向かって流れ、電解槽21内で対流すると考えられる。
【0121】
第1内側面42から発生した気泡12で、電解液の液面近傍に浮上した気泡12のうち、直径が比較的小さく内部の気体が気相中に放出されない気泡は、電解液の流れに乗って電解槽21内を流れると考えられる。しかし、電解液が第1段差部45の近傍を流れるとき、電解液は第2内側面43の第1面47側から第1内側面42側に向かって流れるため、電解液中の気泡12はその浮力により浮上すると考えられる。従って、第1段差部45を設けることにより、気泡12が電解槽21の底に向かう電解液の流れに乗らずに気泡12を再び浮上させることができる。この気泡12は電解液の液面近傍に浮上し、再び第1内側面42側から第2内側面43側に向かう電解液の流れに乗ると考えられる。
従って、第1段差部45を設けることにより、液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡12を対流させることができる。このことにより、液面41と第1段差部45との間の電解液中で複数の気泡を合体させ比較的直径の大きい気泡とすることができる。比較的直径の大きい気泡は、その内部の気体を容易に気相中に放出することができ、放出された気体は、第1気体排出口20または第2気体排出口19から排出され第1気体または第2気体を回収することができる。
【0122】
8.切換部
切換部29は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路とを切り換えることができる。このことにより、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ電力として供給でき、また、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部29が第1外部回路と電気的に接続する方法は、特に限定されないが、例えば、切換部29が出力端子を備え、出力端子を介して第1外部回路と電気的に接続してもよい。
【0123】
また、切換部29は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる。このことにより、第2外部回路から入力される起電力を利用して、電解液から第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部29が第2外部回路と電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、切換部29が入力端子を備え、入力端子を介して第2外部回路と電気的に接続してもよい。
【0124】
気体製造方法
本実施形態の気体製造方法は、気体製造装置23を光電変換部2の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、電解液室15に電解液を導入し、太陽光を光電変換部2の受光面に入射させることにより第1電解用電極8および第2電解用電極7からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口20および第2気体排出口19からそれぞれ第1気体および第2気体を排出させることができる。
このことにより第1気体および第2気体を製造することができる。
【符号の説明】
【0125】
1:第1基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:端子部 11:絶縁部 12:気泡 13:隔壁 14:第2基板 15:電解液室 16:シール材 17:側壁部 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:電解槽 22:電解液 23:気体製造装置 24:第2導電部 25:第3導電部 28:光電変換層 29:切換部 30:透光性電極 31:裏面電極 33:第4導電部 35:半導体部 36:p型半導体部 37:n型半導体部 40:アイソレーション 41:液面 42:第1内側面 43:第2内側面 45:第1段差部 46:第2段差部 47:第1面 48:第2面 49:第3面 50:親水性部材 51:段差部材 52:配線 101:基板 107:電解用電極 114:第2基板 116:シール材 119:気体排出口
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽、気体製造装置および気体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇および地球温暖化ガス排出抑制などの観点から、再生可能エネルギーの利用が望まれている。再生可能エネルギー源としては太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスなど多岐にわたるが、その中でも、太陽光は利用可能なエネルギー量が大きいこと、他の再生可能エネルギーに対し地理的制約が比較的少ないことから、太陽光から効率よく利用可能なエネルギーを生み出す技術の早期な開発と普及が望まれている。
【0003】
太陽光から生み出される利用可能なエネルギーの形態としては、太陽電池や太陽光熱タービンを用いて製造される電気エネルギー、太陽光エネルギーを熱媒体に集めることによる熱エネルギー、その他にも太陽光を用いた物質還元による液体燃料や水素などの貯蔵可能な燃料エネルギー等が挙げられる。太陽電池技術および太陽熱利用技術については、すでに実用化されている技術が多いものの、エネルギー利用効率が未だ低いことと、電気および熱を作り出す際のコストが依然高いことから、これらの改善に向けた技術開発が行われている。さらに、これら電気や熱というエネルギー形態は、短期のエネルギー変動を補完するような使用法は実現できるものの、例えば季節変動などの長期での変動を補完することは極めて困難であることや、エネルギー量の増加により発電設備の稼働率低下を招く可能性があることが課題である。これに対し、液体燃料や水素など、エネルギーを物質として蓄えておくことは、長期変動を効率よく補完するとともに発電設備の稼働率を高める技術として極めて有力であり、今後エネルギー利用効率を最大限に高め、二酸化炭素の排出量を徹底的に削減するためには必要不可欠な技術である。
【0004】
貯蔵可能な燃料の形態としては、炭化水素などの液体燃料や、バイオガス、水素などの気体燃料、バイオマス由来の木材ペレットや太陽光で還元された金属などの固体燃料などに大別することができる。インフラ整備の容易性、エネルギー密度の観点では液体燃料、燃料電池などとのトータルの利用効率向上の観点では水素をはじめとする気体燃料、貯蔵可能性とエネルギー密度の観点では固体燃料というように、各形態において長所短所を有するが、原料として容易に入手可能な水を利用できる観点から、太陽光により水を分解することによる水素製造技術が特に注目されている。
【0005】
水を原料として太陽光エネルギーを利用し水素を製造する方法としては、酸化チタン等の光触媒に白金を担持させ、この物質を水中に入れ光照射することにより半導体中で電荷分離を行い、電解液中のプロトンを還元、水を酸化することによる光分解法や、高温ガス炉などの熱エネルギーを利用して水を高温で直接分解する、あるいは金属等の酸化還元と共役させて間接的に分解する熱分解法、藻類など光を利用する微生物の代謝を利用した生物法、太陽電池で発電した電気と水の電気分解水素製造装置を組み合わせた水電気分解法、太陽電池に使用される光電変換材料に水素発生触媒、酸素発生触媒を担持することにより、光電変換で得られる電子と正孔を水素生成触媒、酸素発生触媒で反応に利用する光起電力法等が挙げられる。この中で、光電変換部と水素生成部を一体化することにより、小型の水素製造装置を作製することの可能性を有するものは光分解法、生物法、光起電力法と考えられるが、太陽光エネルギーの変換効率の観点から、光起電力法は実用化に最も近い技術の一つと考えられる。
これまでに、光電変換と、その光起電力を利用し電解液を電気分解することにより水素を発生させる水素製造装置が開示されている(例えば、特許文献1)。このような水素製造装置を用いることにより、太陽光エネルギーを効率よく水素として貯蔵することができる。
【0006】
また、電解液を電気分解し水素を発生させる装置では、電解槽で気泡として発生させた水素を電解液と共に気泡分離装置に移動させ、水素を回収した後、電解液を再び電解槽に導入することにより水素を回収している(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4594438号公報
【特許文献2】特開2007−84914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の電解液を電気分解し気泡を発生させる装置では、気泡分離装置が必要であり装置を大型化する必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電解液を電気分解し発生させた気泡を効率よく回収することができる電解槽を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも1つの電解用電極と側壁部とを有する電解槽であって、前記電解用電極は、前記電解槽の第1内側面を構成し、前記側壁部は、第1内側面に対向する、前記電解槽の第2内側面を構成し、前記側壁部は、前記電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部を有し、第1段差部は、前記電解槽に電解液を収容して電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面と第1段差部との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする電解槽を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電解用電極が電解槽の第1内側面を構成するため、電解液を電気分解し電解用電極の表面から気泡を発生させたとき、発生した気泡を第1内側面に沿って、又は第1内側面から離脱して電解液中を浮上させることができ、電解液の液面から気泡中の気体を気相中に放出させることができ、発生気体を回収することができる。
本発明によれば、第1内側面に対向する、電解槽の第2内側面を構成する側壁部が、電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部を有するため、電解用電極の表面から発生し第1内側面に沿って浮上した気泡のうち液面から気相中に放出されない小さい気泡(泡の直径が小さく、表面張力が大きい気泡)を第1段差部と電解液の液面との間の電解液中で対流させることができる。このことにより、小さい気泡がぶつかり大きな気泡(泡の直径が大きく、表面張力が小さい気泡)になる確率を高くすることができ、気泡中の気体が気相中に放出できるようになり、電解用電極の表面で気泡として発生させた気体を効率よく回収することができる。その結果、気泡分離装置を設けなくても、効率よく発生気体を回収することができるようになり、装置を小型化することができる。
また、第1段差部を設けることにより、小さい気泡が第1段差部よりも深い電解槽中に流れることを抑制することができ、小さい気泡が電解液中に広く拡散することおよび電解槽の内壁全体に吸着することを抑制することができる。その結果、電解液を電気分解し発生させた気泡を効率よく回収することができる。また、電解用電極表面に吸着する気泡を少なくすることができ、電気分解反応が生じる電解用電極の表面積を広くすることができる。さらに、小さい気泡が電解液中に広く拡散することにより生じる電解液の液面の上昇を抑制することができ、電解液が発生気体を回収するための配管などに侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の電解槽の概略断面図である。
【図2】図1の点線A−Aにおける電解槽の概略断面図である。
【図3】(a)は図1の一点鎖線B−Bにおける電解槽の概略断面図であり、(b)は図1の一点鎖線C−Cにおける電解槽の概略断面図である。
【図4】図3の一点鎖線で囲んだ範囲Eにおける電解槽の概略断面図である。
【図5】(a)〜(f)は、それぞれ本発明の一実施形態の電解槽の一部の概略断面図である。
【図6】(a)および(b)は、それぞれ本発明の一実施形態の電解槽の概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略上面図である。
【図8】図7の点線F−Fにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略裏面図である。
【図10】図7の一点鎖線G−Gにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図11】図7の一点鎖線H−Hにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図12】図10の点線で囲んだ範囲Jにおける気体製造装置の概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図18】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図19】本発明の一実施形態の気体製造装置の概略断面図である。
【図20】従来の電解槽の一部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電解槽は、少なくとも1つの電解用電極と側壁部とを有する電解槽であって、前記電解用電極は、前記電解槽の第1内側面を構成し、前記側壁部は、第1内側面に対向する、前記電解槽の第2内側面を構成し、前記側壁部は、前記電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部を有し、第1段差部は、前記電解槽に電解液を収容して電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面と第1段差部との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする。
本発明において、電解用電極とは、印加される電圧により電解液を電気分解する電極である。
本発明において、側壁部とは、電解槽の側壁を構成する部分である。この電解槽の側壁とは、電解槽内の電解液を溜めるための側壁であってもよく、電解槽内の電解液を仕切るための側壁であってもよい。
本発明において、電解槽の内側面とは、電解槽の内面のうち、底面と、底面に対向する上面以外の面である。
本発明において、段差部とは、段状となった部分で、表面に高低差が生じている部分である。
【0013】
本発明の電解槽において、第1段差部は、電解液を電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、電解液の液面近傍の気泡が第1段差部より深い前記電解槽内へ流れることを抑制するように設けられことが好ましい。
このような構成によれば、電解用電極から発生させた気泡が電解液中に広く拡散することおよび電解槽の内壁全体に吸着することを抑制することができる。
本発明の電解槽において、第1段差部は、複数の段差を含むことが好ましい。
このような構成によれば、複数の段差で気泡を浮上させることができ、電解用電極から発生させた気泡が電解液中に広く拡散することをより抑制することができる。
【0014】
本発明の電解槽において、第2内側面は、第1面と、第1面の、前記電解槽の底側に設けられ、かつ、第1面と第1内側面との間隔よりも、第1内側面との間隔が狭い第2面とを有し、第1段差部は、第1面と第2面との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1内側面と、第1面と、第1段差部と、電解液の液面とで囲まれた範囲で気泡を対流させることができる。
本発明の電解槽において、第1面は、親水性を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1面上での気泡の流れをスムーズにすることができる。
【0015】
本発明の電解槽において、前記側壁部は、第1段差部の、前記電解槽の底側に第2段差部を有し、第2内側面は、第2面の、前記電解槽の底側に設けられ、かつ、第2面と第1内側面との間隔よりも、第1内側面との間隔が広い第3面を有し、第2段差部は、第2面と第3面との間に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、電解槽内の電解液の量を減少させずに第1段差を設けることができる。また、第1内側面と第1面との間隔を小さくすることができ、電解液の液面と第1段差との間の気泡が対流する電解液の量を少なくすることができ、気泡が合体し気泡中の気体が気相中に放出しやすくすることができる。このことにより、電解液中を対流する気泡中の気体をより早く気相中に放出することができる。
本発明の電解槽において、前記電解槽は、前記電解用電極として第1電解用電極と第2電解用電極とを備え、第1および第2電解用電極は、電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、電解液を電気分解し第1気体および第2気体を製造することができる。
【0016】
本発明の電解槽において、第1および第2電解用電極は、並列に設けられ、第1電解用電極と第2電解用電極との間に設けられた隔壁をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、電解槽を扁平な形状とすることができ、太陽電池の裏面側に設置することが可能となり、隔壁により第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
本発明の電解槽において、前記隔壁は、イオン交換体を含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡を容易に解消することができる。
本発明の電解槽において、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり他方は酸素であることが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。
【0017】
また、本発明は、本発明の電解槽と、受光面およびその裏面を有する光電変換部とを備え、第1および第2電解用電極は、前記裏面の上に並列に設けられ、かつ、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられた気体製造装置も提供する。
本発明の気体製造装置によれば、第1および第2電解用電極は、光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられているため、第1電解用電極の表面で第1気体を発生させることができ、第2電解用電極の表面で第2気体を発生させることができる。
また、本発明の気体製造装置によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、光電変換部の受光面に電解液を介さず光を入射させることができ、電解液による入射光の吸収や入射光の散乱を防止することができる。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
さらに、本発明の気体製造装置によれば、光電変換部の裏面上に第1電解用電極および第2電解用電極を設けるため、受光面に入射する光が、第1および第2電解用電極、ならびにそこからそれぞれ発生する第1気体及び第2気体により吸収や散乱されることはない。このことにより、光電変換部へ入射光の量を多くすることができ、光利用効率を高くすることができる。
【0018】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続するように設けられ、第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に積層構造のものを利用することができる。
本発明の気体製造装置において、第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第2電解用電極と光電変換部の裏面との間にリーク電流が発生するのを防止することができる。
【0019】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
【0020】
本発明の気体製造装置において、第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の受光面と第2電解用電極との間の配線距離を短くすることができ、内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の気体製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1導電部を少ない工程で設けることができ、製造コストを低減することができる。
【0021】
本発明の気体製造装置において、前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触することが好ましい。
このような構成によれば、第1導電部を設けることなく、第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有することが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部に光を入射させることにより起電力を生じさせることができる。
【0022】
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部の第1区域と第2区域との間に生じた起電力を第1電解用電極と第2電解用電極とに出力することができる。
本発明の気体製造装置において、第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1区域と第2区域との間に、光電変換部が受光することにより生じる起電力を効率よく発生させることができる。
【0023】
本発明の気体製造装置において、第1区域は、第3導電部を介して第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2導電部を介して第2電解用電極と電気的に接続するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極と第2電解用電極とに出力するときのオーミックロスを低減することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部であることが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部が受光することにより、光電変換部の裏面の第1および第2区域間に起電力を生じさせることができる。
【0024】
本発明の気体製造装置において、透光性を有する第1基板をさらに備え、前記光電変換部は、第1基板の上に設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、光電変換部を第1基板の上に形成することができる。
本発明の気体製造装置において、前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、容易に高電圧の起電力を第1および第2電解用電極に出力することができる。
【0025】
本発明の気体製造装置において、各光電変換層は、第4導電部により直列接続されたことが好ましい。
このような構成によれば、各光電変換層を並べて設けることができる。
本発明の気体製造装置において、第4導電部は、前記光電変換層の受光面側に設けられた透光性電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた裏面電極とを含むことが好ましい。
このような構成によれば、各光電変換層を並べて設けることができる。
【0026】
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含むことが好ましい。
このような構成によれば、燃料電池の燃料となる水素を製造することができる。
本発明の気体製造装置において、前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。
このような構成によれば、水素または酸素が発生する反応の触媒面積を広くすることができる。
【0027】
本発明の気体製造装置において、前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から水素を効率よく発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
このような構成によれば、電解液から酸素を効率よく発生させることができる。
本発明の気体製造装置において、第1電解用電極および第2電解用電極の上に第2基板をさらに備え、第2基板は、前記側壁部を含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2電解用電極がそれぞれ第1内側面を構成し、第2基板が第2内側面を構成する電解槽を気体製造装置が備えることができる。
【0028】
また、本発明は、本発明の気体製造装置を前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、前記気体製造装置の下部から前記気体製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記気体製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する気体製造方法も提供する。
本発明の気体製造方法によれば、光電変換部の受光面に光を入射させることにより、第1気体および第2気体を製造することができる。
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0030】
電解槽の構成
図1は、本実施形態の電解槽の概略断面図であり、図2は図1の点線A−Aにおける電解槽の概略断面図である。また、図3(a)は図1の一点鎖線B−Bにおける電解槽の概略断面図であり、図3(b)は図1の一点鎖線C−Cにおける電解槽の概略断面図である。さらに、図4は、図3の一点鎖線で囲んだ範囲Eにおける電解槽の概略断面図である。
【0031】
本実施形態の電解槽21は、少なくとも1つの電解用電極7、8と側壁部17とを有する電解槽21であって、電解用電極7、8は、電解槽21の第1内側面42を構成し、側壁部17は、第1内側面42に対向する、電解槽21の第2内側面43を構成し、側壁部17は、電解槽21の上部において第1内側面42と第2内側面43との間隔が底側より広くなるような第1段差部45を有し、第1段差部45は、電解槽21に電解液を収容して電気分解し第1内側面42から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする。
以下、本実施形態の電解槽21について説明する。
本実施形態の電解槽21は、例えば、図1〜3のように第1基板上に第1電解用電極8と第2電解用電極7とを隔壁13を挟んで並列に設置し、第2基板14を第1電解用電極8と第2電解用電極7の上部に設置し、第1基板1と第2基板14とをシール材16により接合することにより、電解槽21を形成することができる。また、給水口18、第1気体排出口20、第2気体排出口19を設けることができる。また、第1および第2電解用電極8、7に電圧を印加するために、配線52、端子部10を設けることができる。
なお、ここでは、第1基板1と第2基板14とを用いる電解槽21について例示したが、例えば、箱型の電解槽に第1および第2電解用電極8、7を設置した電解槽21でもよい。
【0032】
1.電解用電極
本実施形態の電解槽21は、少なくとも1つの電解用電極を有する。また、本実施形態の電解槽21は、第1電解用電極8および第2電解用電極7の両方を有することができる。このことにより、第1電解用電極8と第2電解用電極との間に電圧を印加することにより、電解槽21内の電解液を電気分解することができる。また、電解槽21は、複数組の第1電解用電極8および第2電解用電極7を有することもできる。
また、本実施形態のうち1つの電解用電極を有する電解槽21としては、例えば、電解槽21に第1電解用電極8が設けられ、他の電解槽に第2電解用電極が設けられ、電解槽21内の電解液と他の電解槽内の電解液とが塩橋により電気的に連結されている電解槽である。
【0033】
第1および第2電解用電極8、7は、電解槽21に溜められた電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体を発生するように設けることができる。例えば、第1電解用電極8と第2電解用電極7は、その間に電圧を印加できるように設けられる。また、第1および第2電解用電極8、7は、それぞれ配線52により端子部10に電気的に接続することができる。このことにより、端子部10に外部電源を接続することができ、外部電源により第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電圧を印加することができる。
また、電解液は水を含み、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素であってもよい。このことにより、電解液に含まれる水を電気分解し、水素および酸素を発生させることができる。
【0034】
第1または第2電解用電極8、7は、電解槽21の第1内側面を構成する。このことにより、第1または第2電解用電極8、7は、電解槽21に溜められた電解液と接触することができ、この電解液を電気分解し気泡を発生させることができる。
第1または第2電解用電極8、7は、第1基板1上に設けることができる。この場合、第1基板1と第1または第2電解用電極8、7とで電解槽21の側壁となる。第1基板1は、電解槽21の側壁となりうる強度を有すれば特に限定されない。また、第1または第2電解用電極8、7は、箱型の水槽の内側面上に設けることもできる。この場合、第1または第2電解用電極8、7に対向する、箱型の水槽の内側面を有する側壁が側壁部17となる。
【0035】
第1または第2電解用電極8、7は、並列に設けることができる。このことにより、電解槽21を扁平な形状にすることができ、例えば、太陽電池の裏面上に設置することが容易になり、太陽電池の光起電力を効率よく利用して電解液を電気分解することができる。例えば、図1、2のように第1および第2電解用電極8、7を隔壁13を挟んで並列に設けることができる。
【0036】
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、少なくとも一方が複数であり、かつ、それぞれ帯状の電解液に接触可能な面を有し、かつ、その面の長辺が隣接するように交互に設けられてもよい。このように、第1電解用電極8および第2電解用電極7を設けることにより、第1気体が発生する反応が生じる部分と、第2気体が発生する反応が生じる部分との間の距離を短くすることができ、電解液中で生じるイオン濃度の不均衡をより少なくすることができる。また、電解液に接触可能な面を帯状とすることにより、第1気体および第2気体を容易に回収することができる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、安定して第1気体および第2気体を発生させることができる。例えば、第1電解用電極8および第2電解用電極7に電解液に対する耐食性を有する金属板または金属膜を用いることができる。
【0037】
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体であることが好ましい。このような構成によれば、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方の触媒表面積を大きくすることができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、多孔質の導電体を用いることにより、第1または第2電解用電極8、7を流れる電流の電位の変化を抑制することができ、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。また、この場合、第1電解用電極8または第2電解用電極7を電解液に対する遮液性を有する部分と多孔質からなる部分の二層構造とすることもできる。
第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち、一方は水素発生部であってもよく、他方が酸素発生部であってもよい。この場合、第1気体および第2気体のうち一方は水素であり、他方は酸素である。
【0038】
2.水素発生部
水素発生部は、電解液からH2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方とすることができる。
また、水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)を含んでもよい。このことにより、電解液からH2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。水素発生部は、電解液からH2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、水素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。このような構成によれば、第1電解用電極7と第2電解用電極8との間に電圧を印加することにより、より速い反応速度で水素を発生させることができる。
【0039】
電解液からH2が発生する反応の触媒(水素発生触媒)は、2つのプロトンと2つの電子から1分子の水素への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、水素生成過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、水素に対して触媒活性を有するPt,Ir,Ru,Pd,Rh,Au等の白金族金属およびその合金あるいは化合物、水素生成酵素であるヒドロゲナーゼの活性中心を構成するFe,Ni,Seの合金あるいは化合物、およびこれらの組み合わせ等を好適に用いることが可能である。中でもPtおよびPtを含有するナノ構造体は水素発生過電圧が小さく好適に用いることが可能である。光照射により水素発生反応が確認されるCdS,CdSe,ZnS,ZrO2などの材料を用いることもできる。
【0040】
水素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。
金属材料としては、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する材料が好ましい。具体的には、Au、Pt、Pd等の貴金属、Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cr、Ag、Cu、Zn、Su、Si等の金属並びにこれらの金属の窒化物および炭化物、ステンレス鋼、Cu−Cr、Ni−Cr、Ti−Pt等の合金が挙げられる。金属材料には、Pt、Ti、Au、Ag、Cu、Ni、Wからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが、他の化学的な副反応が少ないという観点から、より好ましい。これら金属材料は、比較的電気抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下を抑制することができる。また、Cu、Ag、Zn等の酸性雰囲気下での耐腐食性に乏しい金属材料を用いる場合には、Au、Pt、Pd等の耐腐食性を有する貴金属および金属、カーボン、グラファイト、グラッシーカーボン、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等によって耐腐食性に乏しい金属の表面をコーティングしてもよい。
【0041】
炭素質材料としては、化学的に安定で導電性を有する材料が好ましい。例えば、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等の炭素粉末や炭素繊維が挙げられる。
【0042】
導電性を有する無機材料としては、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2、酸化アンチモンドープ酸化スズが挙げられる。
【0043】
なお、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられ、導電性窒化物としては、窒化炭素、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化ゲルマニウム、窒化チタニウム、窒化ジルコニウム、窒化タリウム等が挙げられ、導電性炭化物としては、炭化タンタル、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタニウム、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化鉄、炭化ニッケル、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、炭化クロム等が挙げられ、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
【0044】
水素発生触媒を担持する導電体の構造としては、板状、箔状、棒状、メッシュ状、ラス板状、多孔質板状、多孔質棒状、織布状、不織布状、繊維状、フェルト状が好適に使用できる。また、フェルト状電極の表面を溝状に圧着した溝付き導電体は、電気抵抗と電極液の流動抵抗を低減できるので好適である。
【0045】
3.酸素発生部
酸素発生部は、電解液からO2を発生させる部分であり、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうちどちらか一方とすることができる。
また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒を含んでもよい。このことにより、電解液からO2が発生する反応の反応速度を大きくすることができる。また、酸素発生部は、電解液からO2が発生する反応の触媒のみからなってもよく、この触媒が担持体に担持されたものであってもよい。また、酸素発生部は、触媒が担持された多孔質の導電体であってもよい。このことにより、触媒表面積を大きくすることができる。さらに、酸素発生部は、酸素発生触媒を含んでもよく、酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含んでもよい。このような構成によれば、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に印加される電圧により、より速い反応速度で酸素を発生させることができる。
【0046】
電解液からO2が発生する反応の触媒(酸素発生触媒)は、2つの水分子から1分子の酸素および4つのプロトンと4つの電子への変換を促進する触媒であり、化学的に安定であり、酸素発生過電圧が小さい材料を用いることができる。例えば、光を用い水から酸素発生を行う反応を触媒する酵素であるPhotosystem IIの活性中心を担うMn,Ca,Zn,Coを含む酸化物あるいは化合物や、Pt,RuO2,IrO2等の白金族金属を含む化合物や、Ti,Zr,Nb,Ta,W,Ce,Fe,Ni等の遷移金属を含む酸化物あるいは化合物、および上記材料の組み合わせ等を用いることが可能である。中でも酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、リン酸コバルトは、過電圧が小さく酸素発生効率が高いことから好適に用いることができる。
【0047】
酸素発生触媒を導電体に担持することができる。触媒を担持する導電体としては、金属材料、炭素質材料、導電性を有する無機材料等が挙げられる。これらの説明は、「2.水素発生部」に記載した水素発生触媒についての説明が矛盾がない限り当てはまる。
水素発生触媒および酸素発生触媒の単独の触媒活性が小さい場合、助触媒を用いることも可能である。例えば、Ni,Cr,Rh,Mo,Co,Seの酸化物あるいは化合物などが挙げられる。
【0048】
なお、水素発生触媒、酸素発生触媒の担持方法は、導電体もしくは半導体に直接塗布する方法や、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法等の乾式塗工法、電析法など、材料により適宜その手法を変え作製ことが可能である。光電変換部と触媒の間に適宜導電物質を担持することが可能である。また水素発生および酸素発生のための触媒活性が十分でない場合、金属やカーボン等の多孔質体や繊維状物質、ナノ粒子等に担持することにより反応表面積を大きくし、水素及び酸素発生速度を向上させることが可能である。
【0049】
4.側壁部
本実施形態の電解槽21は、第1内側面に対向する、電解槽21の第2内側面を構成する側壁部17を有する。本実施形態の電解槽21が第1電解用電極8と第2電解用電極7の両方を有する場合、それぞれに対応する側壁部17を有することができる。
側壁部17は、電解槽21の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部45を有する。具体的に説明すると、電解槽21が図3のような断面を有する場合、側壁部17である第2基板14が第1段差部45を有することができる。また、段差部45より上の側壁部17と第1または第2電解用電極8、7との間隔a(第1面47と第1内側面42との間隔a)は、段差部45より下の側壁部17と第1または第2電解用電極8、7との間隔b(第2面48と第1内側面42との間隔b)よりも広い。このことにより、電解槽21に溜められた電解液を電気分解し第1内側面42から気泡を発生させたとき、気体の浮力により液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡12を対流させることができる。このことを図面を用いて説明する。
【0050】
図4は、図3の一点鎖線で囲んだ範囲Eにおける電解槽の概略断面図であり、電解槽21を電解液で満たし、電解用電極により電解液を電気分解し気泡を発生させたときの模式図である。第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電圧を印加したとき、電解槽21内の電解液が電気分解することにより、第1電解用電極8の第1内側面42において第1気体が気泡12として発生し、第2電解用電極7の第1内側面42において第2気体が気泡12として発生する。第1内側面42において発生した気泡12は、その浮力により第1内側面42に沿って電解液中を浮上し、電解液の液面41の近傍にまで浮上した気泡は、その内部の気体を気相中に放出する。放出された気体は、第1気体排出口20または第2気体排出口19から排出され第1気体または第2気体を回収することができる。このとき、比較的直径の大きい気泡12中の気体は、容易に電解液の液面から気相中に放出されるが、比較的直径の小さい気泡12中の気体は、容易に電解液の液面から気相中に放出されず、気泡が電解液中を漂うことがある。この理由は明らかではないが、比較的直径の大きい気泡の表面張力は比較的小さく、比較的直径の小さい気泡の表面張力は比較的大きいためと考えられる。
【0051】
第1内側面42から気泡12を発生させたとき、気泡12が第1内側面42に沿って浮上することにより、電解液が第1内側面42に沿って流れる上昇流が生じると考えられる。また、電解用電極が発熱することによってもこの上昇流が生じると考えられる。また、電解用電極の表面の気泡を効率よく回収するために攪拌機などによりこのような上昇流を生じさせてもよい。
この電解液の上昇流は、電解液の液面41の近傍において、第1内側面42側から第2内側面43側に向かう流れに変わると考えられる。さらにこの電解液の流れは、第2内側面43の第1面47の近傍において電解槽21の底に向かう流れに変わると考えられ、その後、第1段差部45の近傍を流れ、電解槽21の底に向かって流れ、電解槽21内で対流すると考えられる。
【0052】
第1内側面42から発生した気泡12で、電解液の液面近傍に浮上した気泡12のうち、直径が比較的小さく内部の気体が気相中に放出されない気泡は、電解液の流れに乗って電解槽21内を流れると考えられる。しかし、電解液が第1段差部45の近傍を流れるとき、電解液は第2内側面43の第1面47側から第1内側面42側に向かって流れるため、電解液中の気泡12はその浮力により浮上すると考えられる。従って、第1段差部45を設けることにより、気泡12が電解槽21の底に向かう電解液の流れに乗らずに気泡12を再び浮上させることができる。この気泡12は電解液の液面近傍に浮上し、再び第1内側面42側から第2内側面43側に向かう電解液の流れに乗ると考えられる。
従って、第1段差部45を設けることにより、液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡12を対流させることができる。このことにより、液面41と第1段差部45との間の電解液中で複数の気泡を合体させ比較的直径の大きい気泡とすることができる。比較的直径の大きい気泡は、その内部の気体を容易に気相中に放出することができ、放出された気体は、第1気体排出口20または第2気体排出口19から排出され第1気体または第2気体を回収することができる。
【0053】
これらのことにより、本実施形態の電解槽21では、第1気体または第2気体を効率よく回収することができる。また、電解液の液面41近傍の気泡が第1段差部45より深い電解槽21内へ流れることを抑制することができる。また、電解液中に気泡として存在する気体の量を少なくすることができ、気泡の発生による電解液の液面の上昇を小さくすることができる。このことにより、電解液が第1気体または第2気体を排出するための配管に侵入することを抑制することができる。さらに、電解液中の気泡量を少なくすることができるため、第1または第2電解用電極8、7に吸着する気泡の量も少なくすることができる。このことにより、第1または第2電解用電極8、7の表面において、第1気体または第2気体を効率よく発生させることができる。
【0054】
次に、第1段差部45を有さない電解槽を用いて、電解用電極の表面から気泡を発生させた場合について説明する。図20は、第1段差部を有さない電解槽に電解液を満たし、電解用電極により電解液を電気分解し気泡を発生させたときの模式図であり、図4に対応する。
電解用電極107の表面から気泡を発生させた場合、気泡は電解液の液面まで浮上し、比較的大きな気泡は内部の気体を気相中に放出し、比較的小さな気泡は、電解液の流れに乗って電解槽内を流れる。第1段差部45を有さない電解槽では、電解用電極107が構成する内側面に沿って上昇流が生じ、この内側面に対向する内側面に沿って下降流が生じる。比較的小さな気泡は、この下降流の乗って流れるため、電解槽全体に拡散することになる。このため、電解槽全体に拡散された気泡は、電解槽の内面に広く吸着する。このことにより、電解液中の気泡の量が多くなり電解用電極107から発生させた気体の回収効率が低下する。また、電解液中の気泡の量が多くなることにより、気泡の発生による電解液の液面の上昇が大きくなる。このことにより、電解液が第1気体または第2気体を排出するための配管に侵入する確率が高くなる。さらに電解用電極の表面に吸着する気泡の量が多くなり、電解用電極表面での気体発生効率が低下する。
従って、本実施形態の電解槽21のように側壁部17に第1段差部45を設けることにより、このような気体回収効率の低下を抑制することができ、電解液の液面の上昇を抑制することができ、電解用電極表面での気体発生効率の低下を抑制することができる。
【0055】
側壁部17は、第1内側面42に対向する、電解槽21の第2内側面43を構成し、第1段差部45を有するものであれば、特に限定されない。また、側壁部17は、1つの部材から構成されてもよく、複数の部材から構成されてもよい。側壁部17は、例えば、図2、3のように第1段差部45を有する第2基板14から構成されてもよい。
また、図5(a)〜(f)は、それぞれ本実施形態の電解槽21の一部の概略断面図であり、図4に対応する。
【0056】
第1段差部45は、電解槽21の上部において第1内側面42と第2内側面43との間隔が底側より広くなるような段差を含み、電解液を電気分解し第1内側面42から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたものであれば特に限定されないが、例えば、図3、図5(b)〜(d)のように側壁部17の実質的に平行な第1面47と第2面48との間に設けられた段差を含む部分であってもよい。
【0057】
第1段差部45は、例えば、図5(a)のように、上方ほど第1内側面42との間隔が広くなる第1面47と、第1内側面42に実質的に平行な第2面48との間に設けられた段差を含む部分であってもよい。このことにより、第1面47上で気泡を浮上しやすくすることができる。
【0058】
第1段差部45は、例えば、図5(b)のように、段差により形成される面が第1面47に近づくに従い電解槽21の底の方に近づくように傾斜した面となるような段差を含む部分であってもよい。このことにより、電解液の流れに乗って第1段差部45の近傍に流れてきた気泡がその浮力により浮上しやすくなり、気泡が電解液の液面41と第1段差部45との間の電解液中で対流しやすくすることができる。
【0059】
第1段差部45は、例えば、図5(c)のように、複数の段差を含む部分であってもよい。このことにより、電解液の流れに乗って第1段差部45の近傍に流れてきた気泡を複数の段差により浮上させることができ、気泡が電解液の液面と第1段差部45との間の電解液中で対流しやすくすることができる。
【0060】
側壁部17は、例えば、図5(d)のように、第2基板14と親水性部材50から構成されてもよく、第1段差部45は、親水性部材50から構成される第1面47と第2基板14から構成される第2面48との間に設けられた段差を含む部分であってもよい。このことにより、側壁部17の第1面47を親水性にすることができ、第1面上での気泡の流れをスムーズにすることができる。親水性部材50としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PEGなど)、ポリアクリルアミド、デキストラン、プルラン、フィコールなどの親水性ポリマーを第1面上にディップコート、スプレーコート、スピンコートなどの方法によりコーティングすることにより形成した部材が挙げられる。また、これらの親水性ポリマーからなるシートを第1面上に貼り付けたものでもよい。
また、第2基板14に親水性材料からなる部材を取り付け、第1段差部45および第1面47を形成してもよい。
また、第1面47が親水性部材で構成されていない場合でも、第1面47が親水性となるように表面処理した場合でも同様の効果が生じる。従って、本実施形態の電解槽21に含まれる側壁部17は、第1面47が親水化処理されたものであってもよい。第1面47を親水化処理する方法としては、プラズマ処理で第1面47上に親水基を生成する方法などが挙げられる。
なお、第1段差部45により形成される面は、親水性を有さないことが好ましい。このことにより、この面を気泡がスムーズに流れ電解槽21の底方向に流れるのを抑制することができる。
【0061】
第1段差部45は、例えば、図5(e)、(f)のように、曲面である第1面47と第2面48との間に設けられた段差を含む部分であってもよい。また、第1段差部45に含まれる段差により形成される面は、曲面であってもよい。このことにより、第1面近傍および第1段差部45近傍の電解液の流れをスムーズにすることができ、電解液の乱流が生じるのを抑制することができ、気泡が乱流により第1段差部45より深い電解槽21内に拡散するのを抑制することができる。
【0062】
また、図6(a)(b)は、それぞれ本実施形態の電解槽21の概略断面図である。
側壁部17は、第1段差45の、電解槽21の底側に第2段差部46を有してもよい。また、第2内側面は、第2面48の、電解槽21の底側に設けられ、かつ、第2面48と第1内側面42との間隔bよりも第1内側面42との間隔cが広い第3面49を有してもよい。そして、第2段差部46は、第2面48と第3面49との間に設けられてもよい。このことにより、電解槽21内の電解液の量を減少させずに第1段差45を設けることができる。また、第1内側面42と第1面47との間隔aを小さくすることができ、電解液の液面41と第1段差45との間の気泡12が対流する電解液の量を少なくすることができ、気泡12が合体し気泡中の気体が気相中に放出しやすくすることができる。このことにより、電解液中を対流する気泡中の気体をより早く気相中に放出することができる。
また、第1面47と第1内側面42との間隔aは、第3面49と第1内側面42との間隔cよりも狭くてもよい。このことにより、電解槽21内の電解液の量を減少させずに電解液の液面41と第1段差45との間の気泡12が対流する電解液の量を少なくすることができ、気泡12が合体し気泡中の気体がより気相中に放出しやすくすることができる。
【0063】
なお、側壁部17の第1段差45および第2段差46は、図6(a)のように1つの部材、例えば第2基板14を加工して形成されてもよく、図6(b)のように複数の部材、例えば、第2基板14と段差部材51とにより形成されてもよい。
【0064】
なお、第2基板14は、電解液室15を構成し、生成した第1気体および第2気体を閉じ込めることができる必要があり、機密性が高い物質が求められる。透明なものであっても不透明なものであっても特に限定されるものではないが、第1気体および第2気体が発生していることを視認できる点においては透明な材料であることが好ましい。透明な第2基板としては特に限定されず、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板、透明樹脂フィルムなどを挙げることができる。中でも、ガスの透過性がなく、化学的物理的に安定な物質である点でガラス材を用いることが好ましい。
【0065】
5.隔壁
本実施形態の電解槽21が第1電解用電極8と第2電解用電極7を有し、これらが並列に設けられた場合、電解槽21は、第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に隔壁13を有することができる。
また、隔壁13は、第1電解用電極8と第2基板14との間の空間である電解液室15および第2電解用電極7と第2基板14との間の空間である電解液室15とを仕切るように設けることができる。また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方を複数設ける場合、隔壁13は、並列に並ぶように設けることができる。このことにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7で発生させた第1気体および第2気体が混合することを防止することができ、第1気体および第2気体を分離して回収することができる。
また、隔壁13は、イオン交換体を含んでもよい。このことにより、第1電解用電極8と第2基板14との間の空間の電解液と第2電解用電極7と第2基板14との間の空間の電解液でアンバランスとなったイオン濃度を一定に保つことができる。
【0066】
隔壁13は、例えば、多孔質ガラス、多孔質ジルコニア、多孔質アルミナ等の無機膜あるいはイオン交換体を用いることが可能である。
イオン交換体としては、当該分野で公知のイオン交換体をいずれも使用でき、プロトン伝導性膜、カチオン交換膜、アニオン交換膜等を使用できる。
プロトン伝導性膜の材質としては、プロトン伝導性を有しかつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜又はコンポジット膜を用いることができる。
【0067】
高分子膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、デュポン社製のナフィオン(登録商標)、旭化成社製のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(登録商標)等の膜や、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等の炭化水素系電解質膜等が挙げられる。
【0068】
無機膜としては、例えば、リン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウム等からなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、スルホン化ポリイミド系ポリマー、タングステン酸等の無機物とポリイミド等の有機物とのコンポジット等からなる膜が挙げられ、具体的にはゴア社製のゴアセレクト膜(登録商標)や細孔フィリング電解質膜等が挙げられる。さらに、高温環境下(例えば、100℃以上)で使用する場合には、スルホン化ポリイミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、硫酸水素セシウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0069】
カチオン交換膜としては、カチオンを移動させることができる固体高分子電解質であればよい。具体的には、パーフルオロカーボンスルフォン酸膜や、パーフルオロカーボンカルボン酸膜等のフッ素系イオン交換膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、ポリスチレンスルホン酸膜、スルホン酸化スチレン・ビニルベンゼン共重合体膜等が挙げられる。
支持電解質溶液のアニオン輸率が高い場合には、アニオン交換膜の使用が好ましい。アニオン交換膜としては、アニオンの移動可能な固体高分子電解質を使用できる。具体的には、ポリオルトフェニレンジアミン膜、アンモニウム塩誘導体基を有するフッ素系イオン交換膜、アンモニウム塩誘導体基を有するビニルベンゼンポリマー膜、クロロメチルスチレン・ビニルベンゼン共重合体をアミノ化した膜等が挙げられる。
【0070】
6.シール材
シール材16は、第1基板1と第2基板14を接着し、電解槽21内の電解液および第1および第2電解用電極8、7から発生させた第1気体および第2気体を密閉するための材料である。第2基板14に箱状のものを用いる場合、この箱体と第1基板1とを接着するためにシール材16が用いられる。シール材16は、例えば、紫外線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が好適に使用されるが、その種類は限定されるものではない。紫外線硬化性の接着剤としては、200〜400nmの波長を持つ光を照射することにより重合が起こり光照射後数秒で硬化反応が起こる樹脂であり、ラジカル重合型とカチオン重合型に分けられ、ラジカル重合型樹脂としてはアクリルレート、不飽和ポリエステル、カチオン重合型としては、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル等が挙げられる。また熱硬化性の高分子接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性ポリイミド等の有機樹脂が挙げられる。熱硬化性の高分子接着剤は、熱圧着時に圧力を掛けた状態で加熱重合し、その後、加圧したまま、室温まで冷却することにより、各部材を良好に接合させるため、締め付け部材等を要しない。また、有機樹脂に加えて、ガラス基板に対して密着性の高いハイブリッド材料を用いることが可能である。ハイブリッド材料を用いることによって、弾性率や硬度等の力学的特性が向上し、耐熱性や耐薬品性が飛躍的に向上する。ハイブリッド材料は、無機コロイド粒子と有機バインダ樹脂とから構成される。例えば、シリカなどの無機コロイド粒子と、エポキシ樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂などの有機バインダ樹脂とから構成されるものが挙げられる。
【0071】
ここではシール材16と記しているが、第1基板1と第2基板14を接着させる機能を有するものであれば限定されず、樹脂製あるいは金属製のガスケットを用い外部からネジ等の部材を用いて物理的に圧力を加え機密性を高める方法等を適宜用いることも可能である。
【0072】
7.電解液室
電解液室15は、第1電解用電極8と第2基板14との間の空間および第2電解用電極7と第2基板14との間の空間とすることができる。また、電解液室15は、隔壁13により仕切ることができる。
生成した第1気体及び第2気体の気泡が効率よく第1電解用電極8または第2電解用電極7から離れるように、電解液室15の内部で電解液を循環させるような例えばポンプやファン、熱による対流発生装置などの簡易装置を備え付けることも可能である。
【0073】
8.給水口、第1気体排出口、第2気体排出口、第1気体排出路および第2気体排出路
給水口18は、電解槽21に含まれるシール材16の一部、もしくは第2基板14の一部などに開口を作ることにより設けることができる。給水口18は、第1気体及び第2気体へと分解された電解液を補充するために配置され、その配置箇所および形状は、原料となる電解液が効率よく電解槽21へ供給されさえすれば、特に限定されるものではない。
【0074】
また、第1気体排出口20は、第1電解用電極8の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。また、第2気体排出口19は、第2電解用電極7の電解液に接触可能な面の上端に近接して設けることができる。
【0075】
また、第1気体排出口20は、第1気体排出路と導通することができ、第2気体排出口19は第2気体排出路と導通することができる。また、第1気体排出路は、複数の第1気体排出口20と導通することができ、第2気体排出路は、複数の第2気体排出口19と導通することができる。このことにより、電解槽21で発生させた第1気体および第2気体を回収することができる。
【0076】
9.電解液
電解液は、第1気体および第2気体の原料となるものであれば特に限定されないが、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、0.1MのH2SO4を含む電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液などである。この場合、電解液から第1気体および第2気体として水素および酸素を製造することができる。
【0077】
気体製造装置の構成
図7は、本実施形態の気体製造装置23の概略平面図であり、図8は、図7の点線F−Fにおける気体製造装置23の概略断面図であり、図9は、本実施形態の気体製造装置23の概略裏面図である。なお、図9において第2基板は省略している。
図10は、図7の一点鎖線G−Gにおける気体製造装置23の概略断面図であり、図11は図7の一点鎖線H−Hにおける気体製造装置23の概略断面図である。なお、図10、図11は、光電変換部2に効率よく太陽光が入射するように気体製造装置23を傾けて設置し、電解槽21に電解液を入れたときの概略断面図である。また、図12は、図10の点線で囲んだ範囲Jにおける気体製造装置23の概略断面図である。
図13〜図19は、それぞれ本実施形態の気体製造装置23の概略断面図であり、図8の概略断面図に対応する。
【0078】
本実施形態の気体製造装置23は、本実施形態の電解槽21と、受光面およびその裏面を有する光電変換部2とを備え、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2の裏面の上に並列に設けられ、かつ、光電変換部2が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられたことを特徴とする。
また、光電変換部2は、透光性を有する第1基板1上に設けることができる。
以下、本実施形態の気体製造装置23について説明する。
なお、本実施形態の気体製造装置23は、本実施形態の電解槽21を含むため、上述の電解槽21についての説明が、矛盾がない限り本実施形態の気体製造装置にも当てはまる。
【0079】
1.透光性を有する第1基板
透光性を有する第1基板1は、本実施形態の気体製造装置23が備えてもよい。また、光電変換部2は、受光面が第1基板1側となるように第1基板1の上に設けられてもよい。なお、光電変換部2が、半導体基板などからなり一定の強度を有する場合、第1基板1は省略することが可能である。また、光電変換部2が樹脂フィルムなど柔軟性を有する材料の上に形成可能な場合、第1基板1は省略することができる。
【0080】
また、第1基板1は、本気体製造装置を構成するための土台となる部材である。また、太陽光を光電変換部2の受光面で受光するためには、透明であり光透過率が高いことが好ましいが、光電変換部2へ効率的な光の入射が可能な構造であれば、光透過率に制限はない。
光透過率が高い基板材料として、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等の透明なリジッド材、あるいは透明樹脂板やフィルム材等が好適に用いられる。化学的および物理的安定性を備える点より、ガラス基板を用いることが好ましい。
第1基板1の光電変換部2側の表面には、入射した光が光電変換部2の表面で有効に乱反射されるように、微細な凹凸構造に形成することができる。この微細な凹凸構造は、例えば反応性イオンエッチング(RIE)処理もしくはブラスト処理等の公知の方法により形成することが可能である。
【0081】
2.第1電極、第1導電部
第1電極4は、第1基板1の上に設けることができ、光電変換部2の受光面と接触するように設けることができる。また、第1電極4は透光性を有してもよい。また、第1電極4は、第1基板1を省略可能の場合、光電変換部2の受光面に直接設けられてもよい。第1電極4は、第2電解用電極7と電気的に接続することができる。第1電極4を設けることにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間に流れる電流を大きくすることができる。また、光電変換部2が図18、19のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものである場合、第1電極4は不要である。
第1電極4は、図8、14、17のように第1導電部9を介して第2電解用電極7と電気的に接続してもよく、図16のように第2電解用電極7と接触してもよい。
第1電極4は、例えば、ITO、SnO2などの透明導電膜からなってもよく、Ag、Auなどの金属のフィンガー電極からなってもよい。
【0082】
以下に第1電極4を透明導電膜とした場合について説明する。
透明導電膜は、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7とのコンタクトを取りやすくするために用いている。
一般に透明電極として使用されているものを用いることが可能である。具体的にはIn−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等を挙げることができる。なお本透明導電膜は、太陽光の光線透過率が85%以上、中でも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。このことにより光電変換部2が光を効率的に吸収することができるためである。
透明導電膜の作成方法としては公知の方法を用いることができ、スパッタリング、真空蒸着、ゾルゲル法、クラスタービーム蒸着法、PLD(Pulse Laser Deposition)法などが挙げられる。
【0083】
第1導電部9は、第1電極4と第2電解用電極7とにそれぞれ接触するように設けることができる。第1導電部9を設けることにより、容易に光電変換部2の受光面に接触した第1電極4と第2電解用電極7とを電気的に接続することができる。
また、第1導電部9は、図8、14のように光電変換部2を貫通するコンタクトホールに設けられてもよい。このことにより、光電変換部2の受光面と第2電解用電極7との間の電流経路を短くすることができ、より効率的に第1気体および第2気体を発生させることができる。また、第1導電部9が設けられたコンタクトホールは、1つまたは複数でもよく、円形の断面を有してもよい。
また、第1導電部9は、図17のように光電変換部2の側面を覆うように設けられてもよい。
【0084】
第1導電部9の材料は、導電性を有しているものであれば特に制限されない。導電性粒子を含有するペースト、例えばカーボンペースト、Agペースト等をスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0085】
3.光電変換部
光電変換部2は、受光面およびその裏面を有し、光電変換部2の裏面の上に第1電解用電極8と第2電解用電極7が設けられる。なお、受光面とは、光電変換するための光を受光する面であり、裏面とは、受光面の裏の面である。また、光電変換部2は、第1電極4が設けられた第1基板1の上に受光面を下にして設けることができる。光電変換部2は、例えば、図8、13〜17のように受光面と裏面との間に起電力が生じるものであってもよく、図18、19のように光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じるものであってもよい。図18、19のような光電変換部2は、n型半導体領域37とp型半導体領域36を形成した半導体基板などにより形成することができる。
光電変換部2の形は、特に限定されないが、例えば、方形状とすることができる。
光電変換部2は、入射光により電荷分離することができ、起電力が生じるものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン系半導体を用いた光電変換部、化合物半導体を用いた光電変換部、色素増感剤を利用した光電変換部、有機薄膜を用いた光電変換部などである。
【0086】
第1気体および第2気体のうちどちらか一方が水素であり、他方が酸素の場合、光電変換部2は、光を受光することにより、第1電解用電極8および第2電解用電極7において水素と酸素が発生するために必要な起電力が生じる材料を使用する必要がある。第1電解用電極8と第2電解用電極7の電位差は、水分解のための理論電圧(1.23V)より大きくする必要があり、そのためには光電変換部2で十分大きな電位差を生み出す必要がある。そのため光電変換部2は、pn接合など起電力を生じさせる部分を二接合以上直列に接続することが好ましい。例えば、図17、19のように並べて設けられた光電変換層を第4導電部33により直列接続した構造を有することができる。
【0087】
光電変換を行う材料は、シリコン系半導体、化合物半導体、有機材料をベースとしたものなどが挙げられるが、いずれの光電変換材料も使用することが可能である。また、起電力を大きくするために、これらの光電変換材料を積層することが可能である。積層する場合には同一材料で多接合構造を形成することが可能であるが、光学的バンドギャップの異なる複数の光電変換層を積層し、各々の光電変換層の低感度波長領域を相互に補完することにより、広い波長領域にわたり入射光を効率よく吸収することが可能となる。これらの複数の光電変換層は、それぞれ異なるバンドギャップを有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力をより大きくすることができ、電解液をより効率的に電気分解することができる。
【0088】
また、光電変換層間の直列接続特性の改善や、光電変換部2で発生する光電流の整合のために、層間に透明導電膜等の導電体を介在させることが可能である。これにより光電変換部2の劣化を抑制することが可能となる。
光電変換部2の例を以下に具体的に説明する。また、光電変換部2は、これらを組み合わせたものでもよい。また、以下の光電変換部2の例は、矛盾しない限り光電変換層とすることもできる。
【0089】
3−1.シリコン系半導体を用いた光電変換部
シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、例えば、単結晶型、多結晶型、アモルファス型、球状シリコン型、及びこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。いずれもp型半導体とn型半導体が接合したpn接合を有することができる。また、p型半導体とn型半導体との間にi型半導体を設けたpin接合を有するものとすることもできる。また、pn接合を複数有するもの、pin接合を複数有するもの、pn接合とpin接合を有するものとすることもできる。
シリコン系半導体とは、シリコンを含む半導体であり、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウムなどである。また、シリコンなどにn型不純物またはp型不純物が添加されたものも含み、また、結晶質、非晶質、微結晶のものも含む。
また、シリコン系半導体を用いた光電変換部2は、第1基板1の上に形成された薄膜または厚膜の光電変換層であってもよく、また、シリコンウェハなどのウェハにpn接合またはpin接合を形成したものでもよく、また、pn接合またはpin接合を形成したウェハの上に薄膜の光電変換層を形成したものでもよい。
【0090】
シリコン系半導体を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
第1基板1上に積層した第1電極4上に、第1導電型半導体層をプラズマCVD法等の方法で形成する。この第1導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子濃度が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、p+型またはn+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第1導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0091】
このように形成された第1導電型半導体層上に、結晶質Si系光活性層として多結晶あるいは微結晶の結晶質Si薄膜をプラズマCVD法等の方法で形成する。なお、導電型は第1導電型半導体よりドーピング濃度が低い第1導電型とするか、あるいはi型とする。結晶質Si系光活性層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。
【0092】
次に、結晶質Si系光活性層上に半導体接合を形成するため、第1導電型半導体層とは反対導電型である第2導電型半導体層をプラズマCVD等の方法で形成する。この第2導電型半導体層としては、導電型決定不純物原子が1×1018〜5×1021/cm3程度ドープされた、n+型またはp+型の非晶質Si薄膜、または多結晶あるいは微結晶Si薄膜とする。第2導電型半導体層の材料としては、Siに限らず、SiCあるいはSiGe,SixO1-x等の化合物を用いることも可能である。また接合特性をより改善するために、結晶質Si系光活性層と第2導電型半導体層との間に、実質的にi型の非単結晶Si系薄膜を挿入することも可能である。このようにして、受光面に最も近い光電変換層を一層積層することができる。
【0093】
続けて第二層目の光電変換層を形成する。第二層目の光電変換層は、第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層からなり、それぞれの層は、第一層目の光電変換層中の対応する第1導電型半導体層、結晶質Si系光活性層、第2導電型半導体層と同様に形成する。二層のタンデムで水分解に十分な電位を得ることができない場合は、三層あるいはそれ以上の層状構造を取ることが好ましい。ただし第二層目の光電変換層の結晶質Si系光活性層の体積結晶化分率は、第一層目の結晶質Si系光活性層と比較すると高くすることが好ましい。三層以上積層する場合も同様に下層と比較すると体積結晶化分率を高くすることが好ましい。これは、長波長域での吸収が大きくなり、分光感度が長波長側にシフトし、同じSi材料を用いて光活性層を構成した場合においても、広い波長域で感度を向上させることが可能となるためである。すなわち、結晶化率の異なるSiでタンデム構造にすることにより、分光感度が広くなり、光の高効率利用が可能となる。このとき低結晶化率材料を受光面側にしないと高効率とならない。また結晶化率が40%以下に下がるとアモルファス成分が増え、劣化が生じてしまう。
【0094】
次に、シリコン基板を用いた光電変換部2の形成例を以下に示す。
シリコン基板としては、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板などを用いることができ、p型であっても、n型であっても、i型であってもよい。このシリコン基板の一部にPなどのn型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりn型半導体部37を形成し、シリコン基板のほかの一部にBなどのp型不純物を熱拡散またはイオン注入などによりドープすることによりp型半導体部36を形成することができる。このことにより、シリコン基板にpn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができ、光電変換部2を形成することができる。
【0095】
n型半導体部37およびp型半導体部36は、図18、19のようにシリコン基板にそれぞれ1つの領域を形成することができ、n型半導体領域37およびp型半導体領域36のうちどちらか一方を複数形成することもできる。また、図19のようにn型半導体領域37およびp型半導体領域36を形成したシリコン基板を並べて設置し、第4導電部33により直列接続することにより光電変換部2を形成することもできる。
なお、ここではシリコン基板を用いて説明したが、pn接合、pin接合、npp+接合またはpnn+接合などを形成することができる他の半導体基板を用いてもよい。また、n型半導体部37およびp型半導体部36を形成することができれば、半導体基板に限定されず、基板上に形成された半導体層であってもよい。
【0096】
3−2.化合物半導体を用いた光電変換部
化合物半導体を用いた光電変換部は、例えば、III−V族元素で構成されるGaP、GaAsやInP、InAs、II−VI族元素で構成されるCdTe/CdS、I−III−VI族で構成されるCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)などを用いpn接合を形成したものが挙げられる。
【0097】
化合物半導体を用いた光電変換部の製造方法の一例を以下に示すが、本製造方法では、製膜処理等はすべて有機金属気相成長法(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置を使って連続して行われる。III族元素の材料としては、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウムなどの有機金属が水素をキャリアガスとして成長装置に供給される。V族元素の材料としては、例えばアルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)、スチビン(SbH3)等のガスが使われる。p型不純物またはn型不純物のドーパントとしては、例えばp型化にはジエチルジンク、またはn型化には、モノシラン(SiH4)やジシラン(Si2H6)、セレン化水素(H2Se)等が利用される。これらの原料ガスを、例えば700℃に加熱された基板上に供給することにより熱分解させ、所望の化合物半導体材料膜をエピタキシャル成長させることが可能である。これら成長層の組成は導入するガス組成により、また膜厚はガスの導入時間によって制御することが可能である。これらの光電変換部を多接合積層する場合は、層間での格子定数を可能な限り合わせることにより、結晶性に優れた成長層を形成することができ、光電変換効率を向上することが可能となる。
【0098】
pn接合を形成した部分以外にも、例えば受光面側に公知の窓層や、非受光面側に公知の電界層等を設けることによりキャリア収集効率を高める工夫を有してもよい。また不純物の拡散を防止するためのバッファ層を有していてもよい。
【0099】
3−3.色素増感剤を利用した光電変換部
色素増感剤を利用した光電変換部は、例えば、主に多孔質半導体、色素増感剤、電解質、溶媒などにより構成される。
多孔質半導体を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等公知の半導体から1種類以上を選択することが可能である。多孔質半導体を基板上に形成する方法としては、半導体粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法、電気化学的な酸化還元反応を利用した方法等が挙げられる。
【0100】
多孔質半導体に吸着する色素増感剤としては、可視光領域および赤外光領域に吸収を持つ種々の色素を用いることが可能である。ここで、多孔質半導体に色素を強固に吸着させるには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が存在することが好ましい。これらの官能基は、励起状態の色素と多孔質半導体の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供する。
【0101】
これらの官能基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0102】
多孔質半導体への色素の吸着方法としては、例えば多孔質半導体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。色素吸着用溶液に用いられる溶媒としては、色素を溶解するものであれば特に制限されず、具体的には、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水等を挙げることができる。
【0103】
電解質は、酸化還元対とこれを保持する液体または高分子ゲル等固体の媒体からなる。
酸化還元対としては一般に、鉄系、コバルト系等の金属類や塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン物質が好適に用いられ、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせが好ましく用いられる。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入することもできる。
【0104】
また、溶媒としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール、メタノール等のアルコール、その他、水や非プロトン極性物質等が用いられるが、中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好適に用いられる。
【0105】
3−4.有機薄膜を用いた光電変換部
有機薄膜を用いた光電変換部2は、電子供与性および電子受容性を持つ有機半導体材料で構成される電子正孔輸送層、または電子受容性を有する電子輸送層と電子供与性を有する正孔輸送層とが積層されたものであってもよい。
電子供与性の有機半導体材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
【0106】
ここで導電性高分子とはπ共役高分子を示し、炭素−炭素またはヘテロ原子を含む二重結合または三重結合が、単結合と交互に連なったπ共役系からなり、半導体的性質を示すものをさす。
【0107】
電子供与性の導電性高分子材料としては、例えばポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリカルバゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはフタロシアニン含有ポリマー、カルバゾール含有ポリマー、有機金属ポリマー等が挙げられる。中でも、チオフェン−フルオレン共重合体、ポリアルキルチオフェン、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体、フルオレン−フェニレンビニレン共重合体、チオフェン−フェニレンビニレン共重合体等が好適に利用される。
【0108】
電子受容性の有機半導体材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されないが、塗布法により製膜できることが好ましく、中でも電子供与性の導電性高分子が好適に使用される。
電子受容性の導電性高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン、ポリフルオレン、およびこれらの誘導体、共重合体、あるいはカーボンナノチューブ、フラーレンおよびこれらの誘導体、CN基またはCF3基含有ポリマーおよびそれらの−CF3置換ポリマー等が挙げられる。
【0109】
また、電子供与性化合物がドープされた電子受容性の有機半導体材料や、電子受容性化合物がドープされた電子供与性の有機半導体材料等を用いることが可能である。電子供与性化合物がドープされる電子受容性の導電性高分子材料としては、上述の電子受容性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子供与性化合物としては、例えばLi、K、Ca、Cs等のアルカリ金属やアルカリ土類金属のようなルイス塩基を用いることができる。なお、ルイス塩基は電子供与体として作用する。また、電子受容性化合物がドープされる電子供与性の導電性高分子材料としては、上述した電子供与性の導電性高分子材料を挙げることができる。ドープされる電子受容性化合物としては、例えばFeCl3、AlCl3、AlBr3、AsF6やハロゲン化合物のようなルイス酸を用いることができる。なお、ルイス酸は電子受容体として作用する。
【0110】
上記にて示した光電変換部2においては、第一義的には太陽光を受光させ光電変換を行うことを想定しているが、用途により蛍光灯や白熱灯、LED、特定の熱源から発せられる光等の人工光を照射し光電変換を行うことも可能である。
【0111】
4.第2電極
第2電極5は、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間および光電変換部2の裏面と絶縁部11との間に設けることができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と電気的に接続することができる。第2電極5を設けることにより、光電変換部2の裏面と第1電解用電極8との間のオーミックロスを低減することができる。また、第2電極5は、第1電解用電極8と接触してもよい。また、第2電極5は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2電極5は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0112】
5.絶縁部
絶縁部11は、リーク電流の発生を防止するために設けることができる。例えば、図8、14のように第1導電部9を光電変換部2を貫通するコンタクトホール内に設ける場合、コンタクトホールの側壁に絶縁部11を設けることができる。
また、絶縁部11は、例えば、図8、13〜17のように第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けることができる。このことにより、第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間でリーク電流が生じるのを防止することができる。また、光電変換部2が図18、19のように受光することにより光電変換部2の裏面の第1区域と第2区域との間に電位差を生じるものである場合、絶縁部11は、第1電解用電極8と光電変換部2の裏面との間、および第2電解用電極7と光電変換部2の裏面との間に設けられ、絶縁部11は、第1区域上および第2区域上に開口を有してもよい。このことにより、光電変換部2が受光することにより形成される電子およびホールを効率よく分離することができ、光電変換効率をより高くすることができる。
また、絶縁部11は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、リーク電流の発生を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
【0113】
絶縁部11としては、有機材料、無機材料を問わず用いることが可能であり、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレン、芳香族ビニル化合物、フッ素系重合体、アクリル系重合体、ビニルアミド系重合体等の有機ポリマー、無機系材料としては、Al2O3等の金属酸化物、多孔質性シリカ膜等のSiO2や、フッ素添加シリコン酸化膜(FSG)、SiOC、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜、SiNx、シラノール(Si(OH)4)をアルコール等の溶媒に溶かし塗布・加熱することにより製膜する方法を用いることが可能である。
【0114】
絶縁部11を形成する方法としては、絶縁性材料を含有するペーストをスクリーン印刷法、インクジェット法、スピンコーティング法等で塗布し乾燥もしくは焼成する方法や、原料ガスを用いたCVD法等により製膜する方法、PVD法、蒸着法、スパッタ法、ゾルゲル法を利用した方法等が挙げられる。
【0115】
6.第2導電部、第3導電部
第2導電部24は、絶縁部11と第2電解用電極7との間に設けることができ、第3導電部25は、絶縁部11と第1電解用電極8との間に設けることができる。第2導電部24または第3導電部25を設けることにより、光電変換部2が受光することにより生じた起電力を効率よく第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力することができ、オーミックロスを低減することができる。第2導電部24、第3導電部25は、例えば、図18、19に示すように設けることができる。
第2導電部24または第3導電部25は、電解液に対する耐食性および電解液に対する遮液性を有することが好ましい。このことにより、オーミック抵抗の上昇を防止することができ、また、電解液による光電変換部2の腐食を防止することができる。
第2導電部24または第3導電部25は、導電性を有すれば特に限定されないが、例えば、金属薄膜であり、また、例えば、Al、Ag、Auなどの薄膜である。これらは、例えば、スパッタリングなどにより形成することができる。また、例えば、In−Zn−O(IZO)、In−Sn−O(ITO)、ZnO−Al、Zn−Sn−O、SnO2等の透明導電膜である。
【0116】
7.第1電解用電極、第2電解用電極、側壁部
第1電解用電極8および第2電解用電極7は、上述した電解槽21の電解用電極の説明が矛盾しない限り当てはまるが、気体製造装置23において、第1電解用電極8および第2電解用電極7は、光電変換部2の裏面上に並列に設けられる。また、第1および第2電解用電極8、7は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を利用して電解液を電気分解し、それぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられる。
例えば、光電変換部2が受光することにより受光面とその裏面との間に起電力が生じる場合、図8、13〜17のように、第1電解用電極8は、光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。また、光電変換部2が受光することによりその裏面の第1区域と第2区域との間に起電力が生じる場合、図18、19のように第1電解用電極8は第1区域と第2区域のうちどちらか一方と電気的に接続し、第2電解用電極7は第1区域と第2区域のうち他方と電気的に接続することができる。
【0117】
また、第1電解用電極8は、切換部29を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、第2電解用電極7は、切換部29を介して光電変換部2の受光面と電気的に接続することができる。例えば、気体製造装置23が図13のような断面を有する場合、第2電解用電極7は切換部29を介して光電変換部2の受光面と電気的に接続することができ、気体製造装置23が図14のような断面を有する場合、第1電解用電極8は切換部29を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができ、気体製造装置23が図15のような断面を有する場合、第2電解用電極7は切換部29を介して光電変換部2の受光面と電気的に接続することができ、第1電解用電極8は切換部29を介して光電変換部2の裏面と電気的に接続することができる。
また、第1電解用電極8および第2電解用電極7のうち少なくとも一方は、光電変換部2の受光面の面積より大きい触媒表面積を有することが好ましい。このような構成によれば、光電変換部2で生じる起電力により、より効率的に第1気体または第2気体を発生させることができる。
【0118】
また、気体発生装置23において、光電変換部2と第1または第2電解用電極8、7とが電解槽21の側壁を構成する。また、光電変換部2を第1基板1上に設けている場合、第1基板1も側壁を構成する。
例えば、気体製造装置23が図10および図11のような断面を有する場合、第1基板1、光電変換部2、第1又は第2電解用電極8、7などが電解槽21の1つの側壁となり、第2基板14が電解槽21の1つの側壁となる。そして図10では、第2電解用電極7が電解槽21の第1内側面42を構成し、この第1内側面に対向する部分の第2基板14が側壁部17となり、第2内側面43を構成する。また、図11では、第1電解用電極8が電解槽21の第1内側面42を構成し、この第1内側面に対向する部分の第2基板14が側壁部17となり、第2内側面43を構成する。気体製造装置23の側壁部17については、上述の電解槽21の側壁部17についての説明が矛盾しない限り当てはまり、側壁部17は、第1段差部45を有する。また、側壁部17は、第2段差部46を有することができる。
【0119】
ここでは、光電変換部2に効率よく太陽光が入射するように、気体製造装置23を傾けて設置し、電解槽21に電解液を満たし、第1および第2電解用電極8、7の表面から気泡を発生させた場合について説明する。
図12は、図10の点線で囲んだ範囲Jにおける気体製造装置23の概略断面図であり、第2電解用電極7の第1内側面42から気泡を発生させたときの模式図である。光電変換部2に太陽光を入射させ、光電変換部2の光起電力により第1電解用電極8と第2電解用電極7との間に電圧が印加されたとき、電解槽21内の電解液が電気分解することにより、第1電解用電極8の第1内側面42において第1気体が気泡12として発生し、第2電解用電極7の第1内側面42において第2気体が気泡12として発生する。第1内側面42において発生した気泡12は、その浮力により第1内側面42に沿って電解液中を浮上し、電解液の液面41の近傍にまで浮上した気泡は、その内部の気体を気相中に放出する。放出された気体は、第1気体排出口20または第2気体排出口19から排出され第1気体または第2気体を回収することができる。このとき、比較的直径の大きい気泡12中の気体は、容易に電解液の液面から気相中に放出されるが、比較的直径の小さい気泡12中の気体は、容易に電解液の液面から気相中に放出されず、気泡が電解液中を漂うことがある。
【0120】
第1内側面42から気泡12を発生させたとき、気泡12が第1内側面42に沿って浮上することにより、電解液が第1内側面42に沿って流れる上昇流が生じると考えられる。また、電解用電極が発熱することによってもこの上昇流が生じると考えられる。また、電解用電極の表面の気泡を効率よく回収するために攪拌機などによりこのような上昇流を生じさせてもよい。
この電解液の上昇流は、電解液の液面41の近傍において、シール部材16に沿って側壁部17の第1面47に向かう流れとなり、さらに第1面47の近傍、第1段差部45の近傍を流れ、その後、電解槽21の底に向かって流れ、電解槽21内で対流すると考えられる。
【0121】
第1内側面42から発生した気泡12で、電解液の液面近傍に浮上した気泡12のうち、直径が比較的小さく内部の気体が気相中に放出されない気泡は、電解液の流れに乗って電解槽21内を流れると考えられる。しかし、電解液が第1段差部45の近傍を流れるとき、電解液は第2内側面43の第1面47側から第1内側面42側に向かって流れるため、電解液中の気泡12はその浮力により浮上すると考えられる。従って、第1段差部45を設けることにより、気泡12が電解槽21の底に向かう電解液の流れに乗らずに気泡12を再び浮上させることができる。この気泡12は電解液の液面近傍に浮上し、再び第1内側面42側から第2内側面43側に向かう電解液の流れに乗ると考えられる。
従って、第1段差部45を設けることにより、液面41と第1段差部45との間の電解液中で気泡12を対流させることができる。このことにより、液面41と第1段差部45との間の電解液中で複数の気泡を合体させ比較的直径の大きい気泡とすることができる。比較的直径の大きい気泡は、その内部の気体を容易に気相中に放出することができ、放出された気体は、第1気体排出口20または第2気体排出口19から排出され第1気体または第2気体を回収することができる。
【0122】
8.切換部
切換部29は、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ出力させる回路と、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路とを切り換えることができる。このことにより、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を第1外部回路へ電力として供給でき、また、光電変換部2が受光することにより生じる起電力を用いて第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部29が第1外部回路と電気的に接続する方法は、特に限定されないが、例えば、切換部29が出力端子を備え、出力端子を介して第1外部回路と電気的に接続してもよい。
【0123】
また、切換部29は、第2外部回路と電気的に接続することができ、かつ、第2外部回路から入力される起電力を第1電解用電極8および第2電解用電極7に出力し電解液からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させる回路に切り換えることができる。このことにより、第2外部回路から入力される起電力を利用して、電解液から第1気体および第2気体を製造することができる。
切換部29が第2外部回路と電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、切換部29が入力端子を備え、入力端子を介して第2外部回路と電気的に接続してもよい。
【0124】
気体製造方法
本実施形態の気体製造方法は、気体製造装置23を光電変換部2の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、電解液室15に電解液を導入し、太陽光を光電変換部2の受光面に入射させることにより第1電解用電極8および第2電解用電極7からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、第1気体排出口20および第2気体排出口19からそれぞれ第1気体および第2気体を排出させることができる。
このことにより第1気体および第2気体を製造することができる。
【符号の説明】
【0125】
1:第1基板 2:光電変換部 4:第1電極 5:第2電極 7:第2電解用電極 8:第1電解用電極 9:第1導電部 10:端子部 11:絶縁部 12:気泡 13:隔壁 14:第2基板 15:電解液室 16:シール材 17:側壁部 18:給水口 19:第2気体排出口 20:第1気体排出口 21:電解槽 22:電解液 23:気体製造装置 24:第2導電部 25:第3導電部 28:光電変換層 29:切換部 30:透光性電極 31:裏面電極 33:第4導電部 35:半導体部 36:p型半導体部 37:n型半導体部 40:アイソレーション 41:液面 42:第1内側面 43:第2内側面 45:第1段差部 46:第2段差部 47:第1面 48:第2面 49:第3面 50:親水性部材 51:段差部材 52:配線 101:基板 107:電解用電極 114:第2基板 116:シール材 119:気体排出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電解用電極と側壁部とを有する電解槽であって、
前記電解用電極は、前記電解槽の第1内側面を構成し、
前記側壁部は、第1内側面に対向する、前記電解槽の第2内側面を構成し、
前記側壁部は、前記電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部を有し、
第1段差部は、前記電解槽に電解液を収容して電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面と第1段差部との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする電解槽。
【請求項2】
第1段差部は、電解液を電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、電解液の液面近傍の気泡が第1段差部より深い前記電解槽内へ流れることを抑制するように設けられた請求項1に記載の電解槽。
【請求項3】
第1段差部は、複数の段差を含む請求項1または2に記載の電解槽。
【請求項4】
第2内側面は、第1面と、第1面の、前記電解槽の底側に設けられ、かつ、第1面と第1内側面との間隔よりも、第1内側面との間隔が狭い第2面とを有し、
第1段差部は、第1面と第2面との間に設けられた請求項1〜3のいずれか1つに記載の電解槽。
【請求項5】
第1面は、親水性を有する請求項4に記載の電解槽。
【請求項6】
前記側壁部は、第1段差部の、前記電解槽の底側に第2段差部を有し、
第2内側面は、第2面の、前記電解槽の底側に設けられ、かつ、第2面と第1内側面との間隔よりも、第1内側面との間隔が広い第3面を有し、
第2段差部は、第2面と第3面との間に設けられた請求項4または5に記載の電解槽。
【請求項7】
前記電解槽は、前記電解用電極として第1電解用電極と第2電解用電極とを備え、
第1および第2電解用電極は、電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられた請求項1〜6のいずれか1つに記載の電解槽。
【請求項8】
第1および第2電解用電極は、並列に設けられ、
第1電解用電極と第2電解用電極との間に設けられた隔壁をさらに備える請求項7に記載の電解槽。
【請求項9】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項8に記載の電解槽。
【請求項10】
第1気体および第2気体のうち一方は水素であり他方は酸素である請求項7〜9のいずれか1つに記載の電解槽。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1つに記載の電解槽と、受光面およびその裏面を有する光電変換部とを備え、
第1および第2電解用電極は、前記裏面の上に並列に設けられ、かつ、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられた気体製造装置。
【請求項12】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続するように設けられ、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続するように設けられた請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備える請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備える請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備える請求項14に記載の装置。
【請求項16】
第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項11〜18のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項11に記載の装置。
【請求項21】
第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項22】
第1区域は、第3導電部を介して第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2導電部を介して第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項20〜22のいずれか1つに記載の装置。
【請求項24】
透光性を有する第1基板をさらに備え、
前記光電変換部は、第1基板の上に設けられた請求項11〜23のいずれか1つに記載の装置。
【請求項25】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられた請求項11〜24のいずれか1つに記載の装置。
【請求項26】
各光電変換層は、第4導電部により直列接続された請求項25に記載の装置。
【請求項27】
第4導電部は、前記光電変換層の受光面側に設けられた透光性電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた裏面電極とを含む請求項26に記載の装置。
【請求項28】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含む請求項11〜27のいずれか1つに記載の装置。
【請求項29】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項28または29に記載の装置。
【請求項31】
前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項28〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
第1電解用電極および第2電解用電極の上に第2基板をさらに備え、
第2基板は、前記側壁部を含む請求項11〜31のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
請求項11〜32のいずれか1つに記載の気体製造装置を前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、
前記気体製造装置の下部から前記気体製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記気体製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する気体製造方法。
【請求項1】
少なくとも1つの電解用電極と側壁部とを有する電解槽であって、
前記電解用電極は、前記電解槽の第1内側面を構成し、
前記側壁部は、第1内側面に対向する、前記電解槽の第2内側面を構成し、
前記側壁部は、前記電解槽の上部において第1内側面と第2内側面との間隔が底側より広くなるような第1段差部を有し、
第1段差部は、前記電解槽に電解液を収容して電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、気泡の浮力により液面と第1段差部との間の電解液中で気泡が対流するように設けられたことを特徴とする電解槽。
【請求項2】
第1段差部は、電解液を電気分解し第1内側面から気泡を発生させたとき、電解液の液面近傍の気泡が第1段差部より深い前記電解槽内へ流れることを抑制するように設けられた請求項1に記載の電解槽。
【請求項3】
第1段差部は、複数の段差を含む請求項1または2に記載の電解槽。
【請求項4】
第2内側面は、第1面と、第1面の、前記電解槽の底側に設けられ、かつ、第1面と第1内側面との間隔よりも、第1内側面との間隔が狭い第2面とを有し、
第1段差部は、第1面と第2面との間に設けられた請求項1〜3のいずれか1つに記載の電解槽。
【請求項5】
第1面は、親水性を有する請求項4に記載の電解槽。
【請求項6】
前記側壁部は、第1段差部の、前記電解槽の底側に第2段差部を有し、
第2内側面は、第2面の、前記電解槽の底側に設けられ、かつ、第2面と第1内側面との間隔よりも、第1内側面との間隔が広い第3面を有し、
第2段差部は、第2面と第3面との間に設けられた請求項4または5に記載の電解槽。
【請求項7】
前記電解槽は、前記電解用電極として第1電解用電極と第2電解用電極とを備え、
第1および第2電解用電極は、電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられた請求項1〜6のいずれか1つに記載の電解槽。
【請求項8】
第1および第2電解用電極は、並列に設けられ、
第1電解用電極と第2電解用電極との間に設けられた隔壁をさらに備える請求項7に記載の電解槽。
【請求項9】
前記隔壁は、イオン交換体を含む請求項8に記載の電解槽。
【請求項10】
第1気体および第2気体のうち一方は水素であり他方は酸素である請求項7〜9のいずれか1つに記載の電解槽。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1つに記載の電解槽と、受光面およびその裏面を有する光電変換部とを備え、
第1および第2電解用電極は、前記裏面の上に並列に設けられ、かつ、前記光電変換部が受光することより生じる起電力を利用して電解液を電気分解しそれぞれ第1気体および第2気体が発生するように設けられた気体製造装置。
【請求項12】
前記光電変換部は、受光することによりその受光面と裏面との間に起電力が生じ、
第1電解用電極は、前記光電変換部の裏面と電気的に接続するように設けられ、
第2電解用電極は、前記光電変換部の受光面と電気的に接続するように設けられた請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられた絶縁部をさらに備える請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記光電変換部の受光面に接触する第1電極をさらに備える請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
第1電極と第2電解用電極とを電気的に接続する第1導電部をさらに備える請求項14に記載の装置。
【請求項16】
第1導電部は、前記光電変換部を貫通するコンタクトホールに設けられた請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第1導電部は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられた請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記絶縁部は、前記光電変換部の側面を覆うように設けられ、
第2電解用電極は、前記絶縁部の一部であり前記光電変換部の側面を覆う部分の上に設けられ、かつ、第1電極と接触する請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記光電変換部は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層からなる光電変換層を有する請求項11〜18のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
前記光電変換部は、受光することにより前記光電変換部の裏面の第1および第2区域間に電位差が生じ、
第1区域は、第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項11に記載の装置。
【請求項21】
第1および第2電解用電極と前記光電変換部の裏面との間に設けられ、かつ、第1区域上および第2区域上に開口を有する絶縁部をさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項22】
第1区域は、第3導電部を介して第1電解用電極と電気的に接続するように設けられ、第2区域は、第2導電部を介して第2電解用電極と電気的に接続するように設けられた請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記光電変換部は、n型半導体部およびp型半導体部を有する少なくとも1つの半導体材料からなり、
第1および第2区域のうち、一方は前記n型半導体部の一部であり、他方は前記p型半導体部の一部である請求項20〜22のいずれか1つに記載の装置。
【請求項24】
透光性を有する第1基板をさらに備え、
前記光電変換部は、第1基板の上に設けられた請求項11〜23のいずれか1つに記載の装置。
【請求項25】
前記光電変換部は、直列接続した複数の光電変換層を含み、
前記複数の光電変換層は、受光することにより生じる起電力を第1電解用電極および第2電解用電極に供給するように設けられた請求項11〜24のいずれか1つに記載の装置。
【請求項26】
各光電変換層は、第4導電部により直列接続された請求項25に記載の装置。
【請求項27】
第4導電部は、前記光電変換層の受光面側に設けられた透光性電極と、前記光電変換層の裏面側に設けられた裏面電極とを含む請求項26に記載の装置。
【請求項28】
第1電解用電極および第2電解用電極のうち、一方は電解液からH2を発生させる水素発生部であり、他方は電解液からO2を発生させる酸素発生部であり、
前記水素発生部および前記酸素発生部は、それぞれ電解液からH2が発生する反応の触媒である水素発生触媒および電解液からO2が発生する反応の触媒である酸素発生触媒を含む請求項11〜27のいずれか1つに記載の装置。
【請求項29】
前記水素発生部および前記酸素発生部のうち少なくとも一方は、触媒が担持された多孔質の導電体である請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記水素発生触媒は、Pt、Ir、Ru、Pd、Rh、Au、Fe、NiおよびSeのうち少なくとも1つを含む請求項28または29に記載の装置。
【請求項31】
前記酸素発生触媒は、Mn、Ca、Zn、CoおよびIrのうち少なくとも1つを含む請求項28〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
第1電解用電極および第2電解用電極の上に第2基板をさらに備え、
第2基板は、前記側壁部を含む請求項11〜31のいずれか1つに記載の装置。
【請求項33】
請求項11〜32のいずれか1つに記載の気体製造装置を前記光電変換部の受光面が水平面に対し傾斜するように設置し、
前記気体製造装置の下部から前記気体製造装置に電解液を導入し、太陽光を前記光電変換部の受光面に入射させることにより第1電解用電極および第2電解用電極からそれぞれ第1気体および第2気体を発生させ、前記気体製造装置の上部から第1気体および第2気体を排出する気体製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−23728(P2013−23728A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159081(P2011−159081)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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