説明

電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工装置及びその加工方法

【課題】環境問題に負荷を与えず、工具の異常摩耗が発生せず、適切な加工面を得ることができ、工作機械(フライス盤)が錆びることなく、電解水を利用したニッケル合金のエンドミル切削加工装置及びその加工方法を提供することにある。
【解決手段】図1に示すエンドミル切削加工装置による切削加工において、電解水を入れた容器中に、ニッケル合金1を浸漬し、固定した後、ミスト用ノズル5から霧状になった極微量の油剤をエンドミル切削工具4に噴霧し、冷給電解水用ノズル6から電解水を前述のエンドミル切削工具4に噴射させ、電解水中に浸漬した圧縮空気用ノズル7から、切削加工を行う方向に気泡の大きさが20mm〜30mmの範囲で圧縮空気を送り込み、電解水中の浸漬した噴流電解水用ノズルから電解水を圧縮空気(気泡)と同時に電解水中のエンドミル切削工具4に噴射させながら、ニッケル合金のエンドミル切削加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ニッケル合金のエンドミル切削加工技術に係り、ニッケル合金のエンドミル切削加工の欠点として、ニッケル合金は、熱伝導が小さく、化学的に活性のため、工具刃先の異常な摩耗、チッピング(工具刃先の微小な欠損)が生じ、工具寿命が短く、切削した加工面が粗い等、様々な問題がある。
【0002】
また、ニッケル合金のエンドミル切削加工において、高品質、高能率、低コストを目標に、エンドミル切削工具への冷却効果及び潤滑効果を目的として、工具刃先に多量の切削油剤が噴射されている。
【0003】
切削油剤の種類によっては、環境悪化の要因となる塩素系化合物等が含有されているので、環境等の問題が生じている。さらに、使用後の切削油剤における最終的な廃液処理は、重油を混入して焼却処分されるため、焼却による二酸化炭素の膨大な排出が余儀なくされているのが現状である。あるいは、窒素化合物を含有する切削油剤は、廃液を焼却処理した場合、窒素酸化物(NOx)を生成する可能性があるので、大気汚染の問題が生じる場合があると考えられる。
【0004】
環境問題への関心が高まり、それに伴う産業廃棄物の削減やリサイクル化の促進が謳われているので、使用後の切削油剤の大部分が産業廃棄物として処理されることが問題となっている。
【0005】
そこで、多量の切削油剤を使用しない方法で、環境に負荷をかけない方法において、工具刃先の異常な摩耗、チッピング(工具刃先の微小な欠損)の発生を抑制し、なおかつきれいな加工面を得るエンドミル切削加工装置及びその加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0006】
ニッケルは、材料的に非常に活性で、ドライ(乾式)切削加工では、工具刃先に被削材のニッケルが付着したりする場合あるので、多量の切削油剤を単独で工具刃先に噴射しながら切削加工が行われている。
【0007】
【非特許文献1】「難削材の切削加工技術」狩野 勝吉著 工業調査会
【非特許文献2】「腐食科学と防食技術」伊藤 伍郎著 コロナ社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ニッケル合金のエンドミル切削加工において、上記の多量な切削油剤の使用は、環境問題になる可能性がある。切削油剤を使用してもエンドミル切削工具の刃先における異常な摩耗、チッピング等が発生し、工具寿命が短く、きれいな切削加工面を得ることが困難である。
【0009】
また、圧縮空気によって環境に優しい植物油をベースにした極微量の油剤を霧状に噴霧して、切削加工を行う方法(ミスト)も一部試験的に行われている。しかし、ミストによるエンドミル切削加工の予備試験の結果、過酷な切削加工条件、特に、切削速度
100m/min以上では、工具寿命が非常に短く、良好な切削加工面を得るが困難であった。
【0010】
さらに、水を使用した場合、フライス盤において、錆が発生する可能性がある。ニッケル合金の水溶液中におけるエンドミル切削加工装置及びその加工方法(特願2006−019927)において、切削工具刃先のチッピング発生の抑制、工具刃先の摩耗量の低下、切削加工面の粗さの向上等の切削加工における著しい効果が顕著となった。しかし、水を使用する場合、被削材であるニッケル合金は、水に対して耐食性があるが、工作機械、あるいは周辺機器への錆の発生が問題である。工作機械等の錆の発生は、切削加工精度が低下するので、上記の特許では、切削加工性の向上において問題がある。
【0011】
電解水は、環境に負荷をかけない、すなわち環境にやさしいことが指摘され、工作機械の防食効果等が期待されている。
【0012】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、環境問題になる可能性がある上記の切削油剤を使用せずに、環境に優しい植物油をベースにした極微量の油剤(ミスト)及び電解水を使用し、かつ環境にやさしい冷却方法及び潤滑方法で、工具刃先の異常な摩耗、チッピング(工具刃先の微小な欠損)が発生せず、良好な加工面を得ることができ、さらに、フライス盤等の工作機械の防錆が可能となるニッケル合金のエンドミル切削加工装置及びその加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、電解水を入れた容器中にニッケル合金を電解水に浸漬する容器と、圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにした極微量の油剤を回転しているエンドミル切削工具に噴霧するミスト用ノズルと、電解水を前述のエンドミル切削工具に噴射させるもう一つの冷給電解水用ノズルと、切り屑を除去するために電解水中におけるエンドミル切削工具に向けて切削加工を行う方向に気泡で圧縮空気を送り込む圧縮空気用ノズルと、さらに、電解水中のエンドミル切削工具に向けて電解水を噴射させながら切り屑を除去するために電解水中に浸漬した噴流電解水用ノズルとから構成するニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工装置である。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載した切削加工装置による加工において、容器中に電解水を入れ、さらにニッケル合金を浸漬し、固定した後、ミスト用ノズルから圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにしたエンドミル切削工具に噴霧し、もう一つの冷給電解水用ノズルから電解水を前述のエンドミル切削工具に噴射させ、電解水中に浸漬した圧縮空気用ノズルから、切削加工を行う方向に気泡で圧縮空気を送り込み、電解水中に浸漬した噴流電解水用ノズルから電解水及び圧縮空気(気泡)と同時に電解水中のエンドミル切削工具に噴射させながら切り屑を除去する電解水中におけるニッケル合金のエンドミル切削加工法よりなるものである。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載した切削加工装置による加工において、
容器中に電解水を入れ、さらにニッケル合金を浸漬し、固定した後、ミスト用ノズルから圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにした極微量の油剤をエンドミル切削工具に噴霧し、もう一つの冷給電解水用ノズルから電解水を40cc/s〜100cc/sの範囲で前述のエンドミル切削工具に噴射させ、電解水中に浸漬した圧縮空気用ノズルから、切削加工を行う方向に圧縮空気量が10L/min、気泡の大きさが20mm〜30mmの範囲で圧縮空気を送り込み、電解水中の浸漬した噴流電解水用ノズルから電解水を40cc/s〜100cc/sの範囲において、圧縮空気(気泡)と同時に電解水中のエンドミル切削工具に噴射させながら切り屑を除去する電解水中におけるニッケル合金のエンドミル切削加工法よりなるものである。
【発明の効果】
【0016】
以上の記載より明らかなように、請求項1によれば、電解水を入れた容器中にニッケル合金を電解水に浸漬する容器と、圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにした極微量の油剤を回転しているエンドミル切削工具に噴霧するミスト用ノズルと、電解水を前述のエンドミル切削工具に噴射させるもう一つの冷給電解水用ノズルと、切り屑を除去するために電解水中におけるエンドミル切削工具に向けて切削加工を行う方向に気泡で圧縮空気を送り込む圧縮空気用ノズルと、さらに、電解水中のエンドミル切削工具に向けて電解水を噴射させながら切り屑を除去するために電解水中に浸漬した噴流電解水用ノズルとから構成するニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工装置によって、工作機械(フライス盤)が錆びることなく、エンドミル切削工具刃先の摩耗幅が小さく、良好な加工面粗さを得ることが可能である。
【0017】
以上の記載より明らかなように、請求項2によれば、請求項1に記載した切削加工装置による加工において、容器中に電解水を入れ、さらにニッケル合金を浸漬し、固定した後、ミスト用ノズルから圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにしたエンドミル切削工具に噴霧し、もう一つの冷給電解水用ノズルから電解水を前述のエンドミル切削工具に噴射させ、電解水中に浸漬した圧縮空気用ノズルから、切削加工を行う方向に気泡で圧縮空気を送り込み、電解水中に浸漬した噴流電解水用ノズルから電解水及び圧縮空気(気泡)と同時に電解水中のエンドミル切削工具に噴射させながら切り屑を除去する電解水中におけるニッケル合金のエンドミル切削加工法によって、工作機械(フライス盤)が錆びることなく、エンドミル切削工具刃先の摩耗幅が小さく、良好な加工面粗さを得ることが可能である。
【0018】
以上の記載より明らかなように、請求項3によれば、請求項1に記載した切削加工装置による加工において、容器中に電解水を入れ、さらにニッケル合金を浸漬し、固定した後、ミスト用ノズルから圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにした極微量の油剤をエンドミル切削工具に噴霧し、もう一つの冷給電解水用ノズルから電解水を40cc/s〜100cc/sの範囲で前述のエンドミル切削工具に噴射させ、電解水中に浸漬した圧縮空気用ノズルから、切削加工を行う方向に圧縮空気量が10L/min、気泡の大きさが20mm〜30mmの範囲で圧縮空気を送り込み、電解水中の浸漬した噴流電解水用ノズルから電解水を40cc/s〜100cc/sの範囲において、圧縮空気(気泡)と同時に電解水中のエンドミル切削工具に噴射させながら切り屑を除去する電解水中におけるニッケル合金のエンドミル切削加工法によって、工作機械(フライス盤)が錆びることなく、エンドミル切削工具刃先の摩耗幅が小さく、良好な加工面粗さを得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明をより具体的に説明する。
【0020】
ここで、図1は、電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工装置及びその加工方法の概略図である。
【0021】
図1において、ニッケル合金1を電解水中でエンドミル切削加工を行う場合におけるニッケル合金1と電解水2を入れる容器には例えば純銅製容器3が使用される。純銅製容器3は、四側面及び底面部分が純銅で形成され、上面が開放された構造になっている。純銅製容器3は例えば、外寸が長さ230mmX幅120mmX高さ70mmの容器の内側に内寸が長さ210mmX幅100mmX深さ60mmの穴部を作製したものから構成されている。その内部にニッケル合金1と電解水2が入れられる。ニッケル合金1は電解水2の中に浸漬されている。
【0022】
純銅製容器3の内部に入れられた電解水中のニッケル合金1の側面部分を切削する円柱形状のエンドミル切削工具4が、純銅製容器3の開放された上方から下向きに取り付けられる。図面では、エンドミル切削工具4を装着する装置本体部分は省略している。
【0023】
この下向きに取り付けられたエンドミル切削工具4を挟んでミスト用ノズル5と冷給電解水用ノズル6が取り付けられている。また図面では冷給電解水用ノズル6側の後方側にノズル先端が電解水2の中に浸漬された圧縮空気用ノズル7が取り付けられている。
【0024】
このうちミスト用ノズル5は、圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにした極微量の油剤を回転しているエンドミル切削工具4に向けて噴霧するものである。ミスト用ノズル5のノズルの先端はエンドミル切削工具4に向けて取り付けられている。ミスト用ノズル5には極微量の油剤を圧縮空気によって霧状に送り出すタンク等に一端が接続される図示しないホースの他端側が接続されている。
【0025】
冷給電解水用ノズル6は冷給電解水を回転しているエンドミル切削工具に向けて、電解水を40cc/s〜100cc/sの範囲で噴射するものである。冷給電解水用ノズル6のノズルの先端はエンドミル切削工具4に向けて取り付けられている。冷給電解水用ノズル6には、電解水生成装置及び冷給電解水を溜めたタンク等に一端が接続される図示しないホースの他端側が接続されている。
【0026】
圧縮空気用ノズル7は、エンドミル切削工具4によって切削加工が行われている電解水中のニッケル合金1に向けて、圧縮空気量が10L/min、気泡の大きさが20mm〜30mmの範囲の圧縮空気を送り込んで、電解水中の気泡をエンドミル切削工具4に噴射させる機能を果たす。圧縮空気用ノズル7は圧縮空気を送り込む図示しないホースの一端が接続されている。
【0027】
噴流電解水用ノズル8はエンドミル切削工具4によって切削加工が行われている電解水中のニッケル合金1に向けて、電解水をを40cc/s〜100cc/sの範囲で噴射するものである。電解水中の噴流電解水を噴射させる機能を果たす。噴流電解水用ノズル8には、電解水生成装置及び冷給用電解水を溜めたタンク等に一端が接続される図示しないホースの他端側が接続されている。
【0028】
電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工は、以下のとおりである。
(1)ニッケル合金1を純銅製容器3に固定する。
(2)純銅製容器3に電解水2を入れる。純銅製容器3は、長さ230mmX幅120mmX高さ70mmの容器に長さ210mmX幅100mmX深さ60mmの穴部を作製したものから構成されている。
(3)エンドミル切削工具4を所定の回転数に上げ、所定の回転数になったエンドミル切削工具4に向けて、ミスト用ノズル5からミストを噴霧し、冷給電解水用ノズル6から電解水を噴射する。なお、ミスト用ノズル5及び圧縮空気用ノズル7の形状は、外径7mm、内径3mm、冷給電解水用ノズル6の形状は、外径8mm、内径4mmである。
(4)エンドミル切削工具4に電解水、圧縮空気、ミストを噴射あるいは噴霧を行いながら、ニッケル合金1の側面をエンドミル切削加工を行う。
(5)所定量のエンドミル切削加工が終了すれば、エンドミル切削工具の刃先における摩耗量(逃げ面摩耗幅)を測定し、顕微鏡で工具刃先の摩耗状況を観察した。さらに切削加工を行った加工面の凹凸(加工面の表面粗さ)を測定した。評価については、×は、工具刃先の逃げ面摩耗幅が、20μm以上、チッピング(工具刃先の微小な欠損)が発生した場合、加工面の表面粗さ(最大高さRy)が、3μm以上の場合である。○は、工具刃先の逃げ面摩耗幅が、20μmより小さく、加工面の表面粗さ(最大高さRy)が、3μmより小さい場合である。
【実施例】
【0029】
被削材のニッケル合金は、インコネル600(Ni−16%Cr−9%Fe合金)(ショア硬さ(HS24〜30))を使用した。切削工具は、超硬エンドミル切削工具(外径8mm、3枚刃)、
TiAlNコーテッド超硬エンドミル切削工具(外径8mm、3枚刃)を使用した。ニッケル合金の形状は、長さ100mmX幅50mmX高さ45mmである。
【0030】
電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工試験では、図1に示すエンドミル切削工具にミスト、電解水を噴射させる。さらに、電解水中に浸漬した圧縮空気用ノズルから圧縮空気による気泡をエンドミル切削工具に噴射させて、切り屑を除去しながら切削加工を行った。
【0031】
ニッケル合金の水溶液中におけるエンドミル切削加工装置及びその加工方法(特願2006−19927)における最適な試験条件で、電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工試験を行った。最適な試験条件は、ミスト用ノズル、冷給電解水用ノズル、噴流電解水用ノズル、圧縮空気用ノズルの試験条件は、ミストの油剤量(4cc/時間)、冷給電解水用ノズルの電解水量(40cc/s〜100cc/s)、噴流電解水用ノズルの電解水量(40cc/s〜100cc/s)、電解水中の圧縮空気量(10L/min)(泡の大きさ20mm〜30mm)である。
【0032】
電解水のpH濃度は、pH8〜12の範囲で行った。予備試験の結果、前述のpH濃度の範囲では、pH濃度の変化に伴う逃げ面摩耗幅、表面粗さの変化はなく、工作機械、周辺機器への著しい錆の発生はなかった。また、被削材にニッケル合金において、上記のpH濃度範囲では、腐食等は観察されなかった。
【0033】
予備試験の結果、pH12より高い値は装置上、制御することが困難であった。特に、pH13より高い場合、工作機械の主成分であるFeは、HFeO2- として溶解するアルカリ腐食の範囲になる。pH8より小さい値の場合、工作機械、周辺機器等に錆が発生した。
【0034】
さらに、被削材のニッケル合金をpH8〜pH12濃度範囲の電解水中に浸漬せずに、大気中において、冷給電解水ノズル1本でpH8〜pH12濃度範囲の電解水を噴射して切削加工の予備実験した結果、超硬エンドミル切削工具及びTiAlNコーテッド超硬エンドミル切削工具ともに、逃げ面摩耗幅、表面粗さにおいて、良好な結果を得ることが困難であった。
表1は、超硬エンドミル切削工具における電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工方法による試験結果である。表1の試験結果は、エンドミル切削工具の切削速度は、100m/min、切削距離は、約1mの結果である。なお、比較のために、切削油剤、水中の試験結果を表1に示す。水中の試験結果は、ニッケル合金の水溶液中におけるエンドミル切削加工装置及びその加工方法(特願2006−19927)における水中の試験結果である。表中の水中の試験結果において、ミスト用ノズル、冷給電解水用ノズル、圧縮空気用ノズルの試験条件は、上記の試験条件(ミストの油剤量(4cc/時間)、冷給電解水用ノズルの電解水量(50cc/s)、電解水中の圧縮空気量(10L/min)(泡の大きさ20mm〜30mm))と同一である。表1より、電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工方法は、切削油剤、水中よりも逃げ面摩耗幅、表面粗さが良好な結果が得られた。電解水中にニッケル合金を浸漬せずに、大気中で電解水のみをニッケル合金に噴射させた切削加工方法は、逃げ面摩耗幅、表面粗さが良好な結果が得られなかったが、上記の電解水中に浸漬した場合のエンドミル切削加工方法は、逃げ面摩耗幅、表面粗さが良好な結果が得られた。
【0035】
表2は、TiAlNコーテッド超硬エンドミル切削工具における電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工方法による試験結果である。表2の試験結果は、エンドミル切削工具の切削速度は、100m/min、切削距離は、約1mの結果である。なお、比較のために、切削油剤、水中の試験結果を表2に示す。水中の試験結果は、ニッケル合金の水溶液中におけるエンドミル切削加工装置及びその加工方法(特願2006−19927)における水中の試験結果である。表中の水中の試験結果において、ミスト用ノズル、冷給電解水用ノズル、圧縮空気用ノズルの試験条件は、上記の試験条件(ミストの油剤量(4cc/時間)、冷給電解水用ノズルの電解水量(50cc/s)、電解水中の圧縮空気量(10L/min)(泡の大きさ20mm〜30mm))と同一である。表2より、電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工方法は、切削油剤、水中よりも逃げ面摩耗幅、表面粗さが良好な結果が得られた。電解水中にニッケル合金を浸漬せずに、大気中で電解水のみをニッケル合金噴射させた切削加工方法は、逃げ面摩耗幅、表面粗さが良好な結果が得られなかったが、上記の電解水中に浸漬した場合のエンドミル切削加工方法は、逃げ面摩耗幅、表面粗さが良好な結果が得られた。
【0036】
上記の電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工方法は、水中における切削加工方法に比べて、工作機械(フライス盤)の防錆効果のみならず、切削加工精度が向上し、工具刃先における摩耗防止効果が相乗効果として作用し、逃げ面摩耗幅、表面粗さが極めて良好な結果を得ることができた。
【0037】
なお、この発明は上記発明を実施するための最良の形態に限定されるものでなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明を実施するための最良の形態を示す電解水を利用したニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工装置の模式図である。
【図2】表1は、超硬エンドミル切削工具による切削加工試験結果である。
【図3】表2は、TiAlNコーテッド超硬エンドミル切削工具による切削加工試験結果である。
【符号の説明】
【0039】
1 ニッケル合金
2 電解水
3 純銅製容器
4 エンドミル切削工具
5 ミスト用ノズル
6 冷給電解水用ノズル(電解水生成装置に接続)
7 圧縮空気用ノズル
8 噴流電解水用ノズル(電解水生成装置に接続)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水を入れた容器中にニッケル合金を電解水に浸漬する容器と、圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにした極微量の油剤を回転しているエンドミル切削工具に噴霧するミスト用ノズルと、電解水を前述のエンドミル切削工具に噴射させるもう一つの冷給電解水用ノズルと、切り屑を除去するために電解水中におけるエンドミル切削工具に向けて切削加工を行う方向に気泡で圧縮空気を送り込む圧縮空気用ノズルと、さらに、電解水中のエンドミル切削工具に向けて電解水を噴射させながら切り屑を除去するために電解水中に浸漬した噴流電解水用ノズルとから構成するニッケル合金の電解水中におけるエンドミル切削加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載した切削加工装置による加工において、容器中に電解水を入れ、さらにニッケル合金を浸漬し、固定した後、ミスト用ノズルから圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにしたエンドミル切削工具に噴霧し、もう一つの冷給電解水用ノズルから電解水を前述のエンドミル切削工具に噴射させ、電解水中に浸漬した圧縮空気用ノズルから、切削加工を行う方向に気泡で圧縮空気を送り込み、電解水中に浸漬した噴流電解水用ノズルから電解水及び圧縮空気(気泡)と同時に電解水中のエンドミル切削工具に噴射させながら切り屑を除去する電解水中におけるニッケル合金のエンドミル切削加工法。
【請求項3】
請求項1に記載した切削加工装置による加工において、容器中にpH8〜pH12のアルカリ性電解水を入れ、さらにニッケル合金を浸漬し、固定した後、ミスト用ノズルから圧縮空気によって霧状になった環境に優しい植物油をベースにした極微量の油剤をエンドミル切削工具に噴霧し、もう一つの冷給電解水用ノズルから電解水を40cc/s〜100cc/sの範囲で前述のエンドミル切削工具に噴射させ、電解水中に浸漬した圧縮空気用ノズルから、切削加工を行う方向に圧縮空気量が10L/min、気泡の大きさが20mm〜30mmの範囲で圧縮空気を送り込み、電解水中の浸漬した噴流電解水用ノズルから電解水を40cc/s〜100cc/sの範囲において、圧縮空気(気泡)と同時に電解水中のエンドミル切削工具に噴射させながら切り屑を除去する電解水中におけるニッケル合金のエンドミル切削加工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−221397(P2008−221397A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63015(P2007−63015)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【Fターム(参考)】