説明

電解液組成物及びこれを備えるエネルギー保存装置

【課題】本発明は、エネルギー保存装置の充放電効率を向上させることができる電解液組成物及びこれを備えるエネルギー保存装置を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態による電解液組成物は、リチウムイオンを含むリチウム塩と、リチウム塩の加水分解量を減少させる非リチウム塩と、リチウム塩及び非リチウム塩を溶解させる溶媒とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液組成物及びこれを備えるエネルギー保存装置に関するもので、より詳しくは、エネルギー保存装置の容量及び寿命を増加させることができる電解液組成物及びこれを備えるエネルギー保存装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代エネルギー保存装置のうち、スーパーキャパシタは速い充放電速度、高い安定性及び親環境的特性を有して、次世代エネルギー保存装置として脚光を浴びている。一般的なスーパーキャパシタは、多孔性電極、集電体、隔離膜、電解質(Eletrolyte)などから成る。このスーパーキャパシタは、該多孔性電極の各々に電圧を加えて、電解液組成物内のイオンを選択的に該多孔性電極に吸着させる電気化学的触媒反応メカニズムを原理として駆動される。より具体的に、現在、代表的なスーパーキャパシタには、電気二重層キャパシタ(electric double layer capacitor:EDLC)、擬似キャパシタ(pseudo−capacitor)、ハイブリッドキャパシタ(hybrid capacitor)などが挙げられる。電気二重層キャパシタは、活性炭(activated carbon)から成る電極を用いて、電気二重層電荷吸着(double layer charging)を反応メカニズムとするスーパーキャパシタである。擬似キャパシタは、遷移金属酸化物(transition metal oxide)または導電性高分子(conductive polymer)を電極として用いて、擬似容量(pseudo−capacitance)を反応メカニズムとするスーパーキャパシタである。また、ハイブリッドキャパシタは、該EDLCと電解キャパシタとの中間特性を有するキャパシタである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2010−0035870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
該スーパーキャパシタの構成のうち電解液組成物は、スーパーキャパシタの電圧範囲及びイオン伝導度等に大きい影響を及ぼす。一例として、前記電気二重層キャパシタは、主にプロピレンカーボネート(PC)及びアセトニトリルのような有機溶媒にテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF4)、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEMABF4)のような非リチウム塩から成る電解液組成物を使用する。しかし、電気二重層キャパシタは、相対的に低い充放電電圧で駆動されるため、該電気二重層キャパシタの充放電電圧を高めるためには、高い溶液安定性の電解液組成物が必要である。しかし、これらのTEABF4及びTEMABF4のような非リチウム塩は、溶液安定性が低く、高い駆動電圧で駆動されるエネルギー保存装置の電解液としては用い難い。そのため、前述のような非リチウム塩は、電解液組成物の安定性が低下し、高い電圧駆動方式を有するエネルギー保存装置の電解液として用いるのに限界がある。
【0005】
他の例として、リチウムイオンキャパシタ(Lithium ion Capacitor:LIC)はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートのような環状カーボネート化合物及びジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの線状カーボネート化合物が混ざり合った混合液を電解液組成物の溶媒として使用する。電解液組成物の溶質であるリチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiCoなどが広く用いられる。前述のようなリチウム塩付き電解液組成物は、相対的に高い溶液安定性を有する。そのため、リチウム塩付き電解液組成物は、相対的に高い充放電電圧で駆動されるエネルギー保存装置の電解液組成物として用いられる。しかし、前述のようなリチウム塩はスーパーキャパシタの製造時に発生する水分により、容易に加水分解されるという短所がある。リチウム塩が加水分解されると、フッ酸イオン(HF)が発生する。このようなフッ酸イオンは、電解液組成物溶媒を分解させる触媒の役割をすると共に、電極腐食、容量低下及び膨れ現象(swelling)を発生させるため、スーパーキャパシタの特性を低下させる要因になる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、エネルギー保存装置の充放電効率を向上させることができる電解液組成物及びこれを備えるエネルギー保存装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、容量を向上させることができる電解液組成物及びこれを備えるエネルギー保存装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明のさらに他の目的は、加水分解による影響が少なく、高い駆動電圧で溶液安定性を有する電解液組成物及びこれを備えるエネルギー保存装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するために、本発明による電解液組成物は、リチウムイオンを含むリチウム塩、前記リチウム塩の加水分解量を減少させる非リチウム塩及び前記リチウム塩及び前記非リチウム塩を溶解させる溶媒を含む。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiC1O、LiN、CFSO及びLiCのうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記非リチウム塩は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF4)、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEMABF4)、エチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(ethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:EMBF4)、ジエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(diethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:DEMEBF4)及びスピロビピロリジニウムテトラフルオロボラート(spirobipyrrolidinium tetrafluoroborate:SBPBF4)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記非リチウム塩は、アンモニウムイオン(NH4)を含むことができる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)及びジブチルカーボネート(DBC)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記リチウム塩と前記非リチウム塩との組成比は、1:4であってもよい。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記リチウム塩及び前記非リチウム塩は、総0.1mol%〜1.5mol%に調節されることができる。
【0016】
本発明によるエネルギー保存装置は、筐体と、該筐体の内で互いに離間して配設される陰極及び陽極と、前記筐体の内で前記陰極と前記陽極とを区切る分離膜と、前記筐体の内に満たされた電解液組成物とを含み、前記電解液組成物は、リチウムイオンを含むことができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記リチウム塩は、 LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiC1O、LiN、CFSO及びLiCのうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記非リチウム塩は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF4)、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEMABF4)、エチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(ethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:EMBF4)、ジエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(diethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:DEMEBF4)及びスピロビピロリジニウムテトラフルオロボラート(spirobipyrrolidinium tetrafluoroborate:SBPBF4)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)及びジブチルカーボネート(DBC)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記リチウム塩と前記非リチウム塩との組成比は、1:4であってもよい。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記リチウム塩及び前記非リチウム塩は、総0.1mol%〜1.5mol%に調節されることができる。
【0022】
本発明によるエネルギー保存装置は、筐体と、該筐体の内で互いに離間して配設される複数の電極と、前記筐体の内で前記複数の電極を区切る分離膜と、前記筐体の内に満たされた電解液組成物とを含み、前記電解液組成物は、前記電極の内部に吸蔵及び脱離される充放電反応メカニズムを有する第1の電解質塩と、前記電極の表面で吸着及び脱着される充放電反応メカニズムを有する第2の電解質塩と、前記第1の電解質塩及び前記第2の電解質塩を溶解させる溶媒とを含むことができる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記第1の電解質塩は、リチウムイオン(Li)を含み、前記第2の電解質塩は、アンモニウムイオン(NH)を含むことができる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記第1の電解質塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiC1O、LiN、CFSO及びLiCのうちの少なくともいずれか一つを含み、前記第2の電解質塩は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF4)、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEMABF4)、エチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(ethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:EMBF4)、ジエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(diethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:DEMEBF4)及びスピロビピロリジニウムテトラフルオロボラート(spirobipyrrolidinium tetrafluoroborate:SBPBF4)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)及びジブチルカーボネート(DBC)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記第1の電解質塩の重量比と前記第2の電解質塩の重量比とは、1:1〜1:4であってもよい。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記第1の電解質塩と前記第2の電解質塩との総含量は、前記電解液組成物内で総0.1mol/L〜1.5mol/Lであってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明による電解液組成物は、リチウム塩及び非リチウム塩を含み、前記リチウム塩と前記非リチウム塩との組成比は、前記リチウム塩の加水分解による問題を最小化し、高い駆動電圧でも安定性を維持して、エネルギー保存装置の出力及び容量を増加させるような調節が可能である。これにより、本発明による電解液組成物は、エネルギー保存装置の高電圧充放電動作が可能で、寿命、出力及び容量を増加させることができる。
【0029】
本発明によるエネルギー保存装置は、電極構造体、分離膜及び電解液組成物を備え、前記電解液組成物は、前記リチウム塩の加水分解による問題を最小化して、高い駆動電圧でも安定性を維持して、エネルギー保存装置の出力及び容量を増加させるように、その含量の調節されたリチウム塩と非リチウム塩とを含むことができる。これにより、本発明によるエネルギー保存装置は、高電圧充放電動作が可能で、寿命、出力及び容量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態による電解液組成物を含むエネルギー保存装置を示す図面である。
【図2】図1のエネルギー保存装置の反応メカニズムを示す図面である。
【図3】本発明の実施形態による電解液組成物よって変化するエネルギー保存装置の容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下に示している各実施の形態に限定されることなく他の形態で具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0032】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限するものではない。本明細書において、単数形は文句で特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子が、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明による電解液組成物及びこれを備えるエネルギー保存装置に対して詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態によるエネルギー保存装置を示す図面であり、図2は、図1のエネルギー保存装置の反応メカニズムを示す図面である。
【0035】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態によるエネルギー保存装置100は電極構造体110と、分離膜120と、電解液組成物130とを含むことができる。
【0036】
前記電極構造体110は、第1の電極112、第2の電極114及び第3の電極116を含むことができる。前記第1〜第3の電極112、114、116は、筐体(図示せず)内に配設され、一部が前記筐体の外部に露出するように構成されることができる。前記第1の電極112と前記第2の電極114とは、前記電解液組成物130を介して電気化学反応の媒介体であるキャリアイオンをやりとりすることができる。前記第1の電極112は前記エネルギー保存装置100の陰極であってもよい。前記第1の電極112はリチウムイオンの吸脱着が可能な炭素材料から成ることができる。例えば、前記第1の電極112はグラファイト(graphite)から成ることができる。前記第2の電極114は前記エネルギー保存装置100の陽極であってもよい。前記第2の電極114は活性炭(activated carbon)から成る電極であってもよい。また、前記第3の電極116はリチウム電極であってもよい。前述のような第1〜第3の電極112、114、116は上下に積層されて複層構造をなすことができる。
【0037】
前記分離膜120は、前記第1〜第3の電極112、114、116間に選択的に配設されることができる。前記分離膜120は、前記第1〜第3の電極112、114、116を互いに区切るように、前記第1〜第3の電極112、114、116間に介在されてもよい。
【0038】
前記電解液組成物130は、前記第1の電極112と前記第2の電極114との間に配設され、前記第1の電極112と前記第2の電極114との間で陽イオン132及び陰イオン134が移動媒介体として利用されることができる。前記電解液組成物130は、所定の溶媒に電解質塩を溶解させて製造されたものでもよい。前記電解質塩は、第1の電解質塩及び第2の電解質塩を含むことができる。前記第1の電解質塩は、前記第1及び第2の電極112、114の内部に吸蔵される充電反応メカニズムを有する陽イオン132を有することができる。前記第2の電解質塩は、前記第1及び第2の電極112、114の表面で吸脱着される充放電反応メカニズムを有する陽イオン132を有することができる。一例として、前記第1の電解質塩はリチウム系電解質塩であり、前記第2の電解質塩は、非リチウム系電解質塩でもよい。
【0039】
前記リチウム系電解質塩は、エネルギー保存装置の充放電動作時、前記第1の電極112と前記第2の電極114との間にキャリアイオンとしてリチウムイオン(Li)を含む塩でもよい。例えば、前記リチウム系電解質塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiC1O、LiN、CFSO及びLiCのうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。または、前記リチウム系電解質塩は、LiN(SOCF、LiN(SO、LiC(SOCF、LiPF(CF)2、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso−C、LiPF(iso−C)、(CF(SONLi及び(CF(SONLiのうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。前記リチウム系電解質塩は、相対的に高い溶液安定性を有するため、エネルギー保存装置100の充放電駆動電圧の増加に寄与することができる。また前記リチウム系電解質塩は、物理的な電荷の吸脱着による反応メカニズムを有する非リチウム系電解液に比べて、前記エネルギー保存装置100の容量及びエネルギー密度増加に寄与できる。
【0040】
前記非リチウム系電解質塩は、エネルギー保存装置の充放電動作時、前記第1の電極112と前記第2の電極114との間にキャリアイオンとして用いられる非リチウムイオンを含む塩であってもよい。例えば、前記非リチウム系電解質塩は、アンモニウムイオン(NH)を含むことができる。より具体的に、前記非リチウム系電解質塩は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(tetraethyl ammonium tetrafluoroborate:TEABF4)、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(tetraethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:TEMABF4)、エチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(ethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:EMBF4)及びジエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(diethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:DEMEBF4)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。または、前記非リチウム系電解質塩は、スピロビピロリジニウムテトラフルオロボラート(spirobipyrrolidinium tetrafluoroborate:SBPBF4)を含むことができる。前記非リチウム系電解質塩は、電極表面でイオン等の物理的な吸脱着により、電荷の蓄積及び放出が行われるため、充放電速度がリチウム系電解質塩に比べて相対的に速くなる。これにより、前記非リチウム系電解質塩は、前記エネルギー保存装置100の充放電効率の向上に寄与できる。また、前記非リチウム系電解質塩は、電極の吸蔵及び脱離により収縮されたり膨張されるような現象が発生されないため、前記非リチウム系電解質塩を有する前記エネルギー保存装置100は単にリチウム系電解質塩を有するエネルギー保存装置に比べて、長い寿命を有することができる。さらに、前記リチウム系電解質塩及び前記非リチウム系電解質塩をともに使用する場合、相対的に前記リチウム系電解質塩の使用量が減少されるため、前記リチウム系電解質塩の加水分解量を減少させ、前記リチウム塩によるエネルギー保存装置100の特性が低下するのを防止することができる。
【0041】
前記溶媒は、環状カーボネート及び線状カーボネートのうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。例えば、前記環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)のうちの少なくともいずれか一つが挙げられる。前記線状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)及びジブチルカーボネート(DBC)のうちの少なくともいずれか一つが挙げられる。その他にも、多様な種類のエーテル、エステル及びアミド系列の溶媒が挙げられる。
【0042】
前述のような構造のエネルギー保存装置100は、充電時、前記第1の電極112にマイナス電圧が印加され、前記第2の電極114にプラス電極が印加されることができる。これにより、前記電解液組成物130内の陽イオン132は前記第1の電極112に吸着され、陰イオン134は前記第2の電極114に吸着されることができる。これにより、前記陽イオン132は前記第1の電極112から脱着され、前記陰イオン134は前記第1の電極112に吸着されることができる。一方、前記エネルギー保存装置100の放電時には、前記第2の電極114と前記第3の電極116との間の電気的な接続が行われることができる。
【0043】
ここで、前記陽イオン132はリチウムイオン(Li)及びアンモニウムイオン(NH)を含むことができ、このような陽イオン132は前記エネルギー保存装置100の充放電反応メカニズムのキャリアイオンとして用いられることができる。前記陽イオン132のうち前記リチウムイオン(Li)は、前記第1及び第2の電極112、114内部に吸蔵される充放電メカニズムを構成するため、前記エネルギー保存装置100の容量増加に相対的に大きく寄与できる。また、前記陽イオン132のうちアンモニウムイオン(NH)のような非リチウム系電解液を構成する陽イオンは、前記第1及び第2の電極112、114の表面で吸脱着されるため、前記エネルギー保存装置100の充放電速度の増加に相対的に大きく寄与できる。また、前記非リチウム系電解液は、吸蔵及び脱離により収縮されたり膨張されるという問題がないため、前記エネルギー保存装置100の寿命増加に寄与できる。これにより、前記のようにリチウム系電解液及び非リチウム系電解液をともに使用するエネルギー保存装置100は、容量が増加すると共に充放電速度及び寿命が増加することができる。
【0044】
一方、前記リチウム塩は、前記エネルギー保存装置100の製造過程で発生される水分により、容易に加水分解される特徴がある。前記リチウム塩が加水分解される場合、エネルギー保存装置100の特性を低下させることができるフッ酸イオン(HF)が発生するため、前記リチウム塩の含量を減らすことが前述のような問題を解決するのに有利である。また、前記リチウム塩は、相対的に高い安定性を有するため、高い充放電電圧にも溶液安定性が維持されるという特徴がある。これにより、前記リチウム塩は、溶液安定性が維持された条件で、前記加水分解による特性低下を防止できるようにその含量を調節することが望ましい。これに対し、前記非リチウム塩は、前述のような加水分解の問題は発生しないが、溶液安定性が相対的に低い。例えば、前記非リチウム塩は、略4.2Vの充放電電圧では溶液安定性が低下し、前記エネルギー保存装置100の充放電特性を低下させることができる。これにより、前記非リチウム塩は、前記リチウム塩の溶液安定性を妨害しない条件で、前記リチウム塩の加水分解量を減らすことができるようにその含量を調節することが望ましい。
【0045】
前述の条件を考慮して、前記電解液組成物は、前記リチウム塩及び前記非リチウム塩の各々の長所を維持すると共に、各々の短所が互いに補完されるように構成されることができる。例えば、前記電解液組成物130のうち前記リチウム塩と前記非リチウム塩とは、概ね類似なmol濃度割合で混合して使用し、前記エネルギー保存装置100の種類及び応用分野によって、前記リチウム塩と前記非リチウム塩との相対的な含量比率を調節してもよい。例えば、前記エネルギー保存装置100が出力特性の強調される分野に用いられる場合、前記非リチウム塩の重量比(wt%)を前記リチウム塩の重量比(wt%)に比べて同じまたは増加させることが望ましい。一例として、前記電解液組成物130のうち前記リチウム塩と前記非リチウム塩との総含量は、0.5mol/L〜1.5mol/Lに調節されるが、前記リチウム塩の重量比(wt%)と前記非リチウム塩との重量比(wt%)は略1:1〜1:4に調節されることができる。前記電解液組成物130内の前記リチウム塩が前記比率を基準に前記非リチウム塩に比べて含量が少ない場合、前記エネルギー保存装置100の容量が減少すると共に、初期充放電時、初期SEI film formationによるリチウムイオンの消耗のため、電極の非可逆容量が大きくなり、前記エネルキー保存装置100の溶液安定性が低くなる。これに対し、前記電解液組成物130内の前記リチウム塩が前記比率を基準に前記非リチウム塩に比べて含量が高い場合、前記リチウム塩の加水分解によって前記エネルギー保存装置100の充放電特性が低下するという問題が発生する。
【0046】
図3は、本発明の実施形態による電解液組成物よって変化されるエネルギー保存装置の容量を示すグラフである。図3を参照して、本発明のように、リチウム塩及び非リチウム塩を有する電解液組成物を含むエネルギー保存装置の場合、リチウム塩のみを有する電解液組成物を含むエネルギー保存装値に比べて、容量が増加するのを確認することができる。すなわち、図3に示すように、リチウム塩であるLiPFに、非リチウム塩であるテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF4)、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEMABF4)及びエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(ethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:EMBF4)のうちのいずれか一つを選択的に混合した電解液組成物を備えるスーパーキャパシタはリチウム塩のみであるLiPFを有する電解液組成物を備えるスーパーキャパシタに比べて、高い容量を有することができる。
【0047】
前述のように、本発明による電解液組成物130は、リチウム塩及び非リチウム塩を含み、前記リチウム塩と前記非リチウム塩との組成比は、前記リチウム塩の加水分解による問題を最小化して、高い駆動電圧でも安定性を維持し、エネルギー保存装置100の出力及び容量を増加させることができるように調節されてもよい。これにより、本発明による電解液組成物130はエネルギー保存装置の高電圧充放電動作が可能で、出力及び容量を増加させることができる。
【0048】
本発明によるエネルギー保存装置100は電極構造体110、分離膜120及び電解液組成物130を備え、前記電解液組成物130は前記リチウム塩の加水分解による問題を最小化して、高い駆動電圧でも安定性を維持し、エネルギー保存装置100の出力及び容量を増加させることができるように、その組成比の調節されたリチウム塩と非リチウム塩とを含むことができる。これにより、本発明によるエネルギー保存装置100は高電圧充放電動作が可能で、出力及び容量を増加させることができる。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
100 エネルギー保存装置
110 電極構造体
112 第1の電極
114 第2の電極
116 第3の電極
120 分離膜
130 電解液組成物
132 陽イオン
134 陰イオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー保存装置の電解液組成物において、
リチウムイオンを含むリチウム塩と、
前記リチウム塩の加水分解量を減少させる非リチウム塩と、
前記リチウム塩及び前記非リチウム塩を溶解させる溶媒と
を含む電解液組成物。
【請求項2】
前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiC1O、LiN、CFSO及びLiCのうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項3】
前記非リチウム塩は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF4)、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEMABF4)、エチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(ethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:EMBF4)、ジエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(diethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:DEMEBF4)及びスピロビピロリジニウムテトラフルオロボラート(spirobipyrrolidinium tetrafluoroborate:SBPBF4)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項4】
前記非リチウム塩は、アンモニウムイオン(NH)を含む請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項5】
前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)及びジブチルカーボネート(DBC)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項6】
前記リチウム塩の重量比と前記非リチウム塩の重量比とは、1:1〜1:4である請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項7】
前記リチウム塩と前記非リチウム塩との総含量は、前記電解液組成物内で総0.1mol/L〜1.5mol/Lである請求項1に記載の電解液組成物。
【請求項8】
筐体と、
前記筐体の内で互いに離間して配設される陰極及び陽極と、
前記筐体の内で前記陰極と前記陽極とを区切る分離膜と、
前記筐体の内に満たされた電解液組成物とを含み、
前記電解液組成物は、
リチウムイオンを含むリチウム塩と、
前記リチウム塩の加水分解量を減少させる非リチウム塩と、
前記リチウム塩及び前記非リチウム塩を溶解させる溶媒とを含むエネルギー保存装置。
【請求項9】
前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiC1O、LiN、CFSO及びLiCのうちの少なくともいずれか一つを含む請求項8に記載のエネルギー保存装置。
【請求項10】
前記非リチウム塩は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF4)、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEMABF4)、エチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(ethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:EMBF4)、ジエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(diethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:DEMEBF4)及びスピロビピロリジニウムテトラフルオロボラート(spirobipyrrolidinium tetrafluoroborate:SBPBF4)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項8に記載のエネルギー保存装置。
【請求項11】
前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)及びジブチルカーボネート(DBC)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項8に記載のエネルギー保存装置。
【請求項12】
前記リチウム塩の重量比と前記非リチウム塩の重量比とは、1:1〜1:4である請求項8に記載のエネルギー保存装置。
【請求項13】
前記リチウム塩と前記非リチウム塩との総含量は、前記電解液組成物内で総0.1mol/L〜1.5mol/Lである請求項8に記載のエネルギー保存装置。
【請求項14】
筐体と、
前記筐体の内で互いに離間して配設される複数の電極と
前記筐体の内で前記複数の電極を区切る分離膜と、
前記筐体の内に満たされた電解液組成物とを含み、
前記電解液組成物は、
前記電極の内部に吸蔵及び脱離される充放電反応メカニズムを有する第1の電解質塩と、
前記電極の表面で吸着及び脱着される充放電反応メカニズムを有する第2の電解質塩と、
前記第1の電解質塩及び前記第2の電解質塩を溶解させる溶媒と
を含むエネルギー保存装置。
【請求項15】
前記第1の電解質塩は、リチウムイオン(Li)を含み、
前記第2の電解質塩は、アンモニウムイオン(NH)を含む請求項14に記載のエネルギー保存装置。
【請求項16】
前記第1の電解質塩は、 LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiC1O、LiN、CFSO及びLiCのうちの少なくともいずれか一つを含み、
前記第2の電解質塩は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEABF4)、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TEMABF4)、エチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(ethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:EMBF4)、ジエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボラート(diethylmethyl ammonium tetrafluoroborate:DEMEBF4)及びスピロビピロリジニウムテトラフルオロボラート(spirobipyrrolidinium tetrafluoroborate:SBPBF4)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項14に記載のエネルギー保存装置。
【請求項17】
前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルブチルカーボネート(MBC)及びジブチルカーボネート(DBC)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項14に記載のエネルギー保存装置。
【請求項18】
前記第1の電解質塩の重量比と前記第2の電解質塩の重量比とは、1:1〜1:4である請求項14に記載のエネルギー保存装置。
【請求項19】
前記第1の電解質塩と前記第2の電解質塩との総含量は、前記電解液組成物内で総0.1mol/L〜1.5mol/Lである請求項14に記載のエネルギー保存装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate