説明

電解装置、水素の製造方法、水素、内燃機関システム、燃焼システムおよび燃料電池システム

【課題】水蒸気の含有割合が抑えられた水素を製造するための電解装置、水素の製造方法、水素を提供する。
【解決手段】電解装置10は、陰極22が設けられた陰極室20と、陽極32が設けられた陽極室30と、陰極室20と陽極室30とを隔てる隔膜40と、陰極室20内に設けられた水蒸気を捕捉する第1の水蒸気捕捉部50と、第1の水蒸気捕捉部50を通過した水素を排出する水素排出部56と、を含み、第1の水蒸気捕捉部50は、1つ又は複数の第1の管状体を含んで構成され、第1の管状体は、管路に水を導入するための第1の導入口と、管路から陰極室20に水を排出するための第1の排出孔とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電解するための電解装置、水素の製造方法、水素、内燃機関システム、燃焼システムおよび燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電解装置を利用して水素を発生させる技術が提案されている(特許文献1参照)。この技術は、水を電気分解することで、陰極室で水素を発生させ、した水素を発生させる技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−84042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、水蒸気の含有割合が抑えられた水素を製造するための電解装置、水素の製造方法、水素を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、水蒸気の含有割合が抑えられた水素を利用した内燃機関システム、燃焼システムおよび燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の電解装置は、
陰極が設けられた陰極室と、
陽極が設けられた陽極室と、
前記陰極室と前記陽極室とを隔てる隔膜と、
前記陰極室内に設けられた水蒸気を捕捉する第1の水蒸気捕捉部と、
前記第1の水蒸気捕捉部を通過した水素を排出する水素排出部と、を含み、
前記第1の水蒸気捕捉部は、1つ又は複数の第1の管状体を含んで構成され、
前記第1の管状体は、管路に水を導入するための第1の導入口と、管路から前記陰極室に水を排出するための第1の排出孔とを含む。
【0007】
本発明において、水素を生成する際に、電解質水溶液は一般的に50℃以上に上昇し、電解質水溶液の水が蒸発して水蒸気が発生するが、燃料電池などでは水分は燃料電池の劣化を促進する。本発明の電解装置においては、第1の管状体に水を流すことで、水蒸気の少なくとも一部は、第1の水蒸気捕捉部で冷却され、結露し、水滴として電解質水溶液に戻ることとなる。したがって、得られる水素において、水蒸気の含有割合を抑えることができる。
【0008】
また、電気分解において水が消耗されることとなるが、本発明の電解装置では、第1の水蒸気捕捉部の管状体により水を供給すると共に、その水が冷却水となり水蒸気を結露させ、結露した水は陰極室の電解質水溶液に戻している。したがって、第1の水蒸気捕捉部にて水を供給しているため、別途に水の供給部を設ける必要がない。
【0009】
本発明において、前記第1の管状体は、一端に前記第1の導入口が設けられ、他端は閉鎖され、前記第1の排出孔は、前記第1の管状体の側壁に設けられていることができる。
【0010】
これによれば、第1の管状体の端部に水を供給するための供給管を接続することができるので、接続が容易となる。また、第1の排出孔が側壁にあることで、第1の管状体の管路の途中で、水を順次排出することができ、むらなく電極室内に水を供給することができる。
【0011】
本発明において、前記第1の水蒸気捕捉部は、複数の前記第1の管状体が束状となって構成され、前記第1の管状体は、その管径が50〜150μmとすることができる。
【0012】
これによれば、第1の管状体同士の隙間を抑えることができ、水蒸気を逃が難い構造となる。
【0013】
本発明において、前記陽極室内に設けられた水蒸気を捕捉する第2の水蒸気捕捉部と、
前記第2の水蒸気捕捉部を通過した酸素を収容する酸素収容部と、を含み、
前記第2の気液分離体は、1つ又は複数の第2の管状体を含んで構成され、
前記第2の管状体は、管路に水を導入するための第2の導入口と、管路から前記陽極室に水を排出するための第2の排出孔とを含むことができる。
【0014】
本発明において、酸素を生成する際に、第2の管状体に水を流すことで、水蒸気の少なくとも一部は、第2の水蒸気捕捉部で冷却され、結露し、水滴として電解質水溶液に戻ることとなる。したがって、得られる酸素において、水蒸気の含有割合を抑えることができる。
【0015】
また、電気分解において水が消耗されることとなるが、本発明の電解装置では、第2の水蒸気捕捉部の管状体により水を供給すると共に、その水が冷却水となり水蒸気を結露させ、結露した水は陰極室の電解質水溶液に戻している。したがって、第1の水蒸気捕捉部と相まって第2の水蒸気捕捉部にて水を供給しているため、確実に水の供給を行うことができる。
【0016】
本発明において、前記第2の管状体は、一端に前記第2の導入口が設けられ、他端は閉鎖され、前記第2の排出孔は、前記第2の管状体の側壁に設けられていることができる。
【0017】
これによれば、第2の管状体の端部に水を供給するための供給管を接続することができるので、接続が容易となる。また、第2の排出孔が側壁にあることで、第2の管状体の管路の途中で、水を順次排出することができ、むらなく電極室内に水を供給することができる。
【0018】
本発明において、前記第2の水蒸気捕捉部は、複数の前記第2の管状体が束状となって構成され、前記第2の管状体は、その管径が50μm〜150μmとすることができる。
【0019】
これによれば、第2の管状体同士の隙間を抑えることができ、水蒸気を逃が難い構造となる。
【0020】
本発明の第2の電解装置は、
陽極および陰極が設けられた電解室と、
前記電解室内に設けられた水蒸気を捕捉する水蒸気捕捉部と、
前記水蒸気捕捉部を通過した水素を排出する水素排出部と、を含み、
前記水蒸気捕捉部は、1つ又は複数の管状体を含んで構成され、
前記管状体は、管路に水を導入するための導入口と、管路から前記陰極室に水を排出するための排出孔とを含む。
【0021】
本発明の第2の電解装置は、本発明の第1の電解装置と同様に、水蒸気の含有割合が抑えられた水素を得ることができる。
【0022】
本発明の水素の製造方法は、本発明の電解装置を利用して水素を製造する水素の製造方法であって、前記陰極室で生じた水蒸気を前記第1の水素捕捉部により捕捉する工程を含む。
【0023】
本発明の水素の製造方法は、水蒸気の含有割合が抑えられた水素を製造することができる。
【0024】
本発明の水素は、本発明の水素の製造方法により得られた水素である。
【0025】
本発明の電解装置は、内燃機関システム、燃焼システムおよび燃料電池システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態に係る電解装置を模式的に示す図である。
【図2】第1の水蒸気捕捉部および第2の水蒸気捕捉部の設置例を模式的に示す図である。
【図3】管状体の束を模式的に示す図である。
【図4】第1の水蒸気捕捉部を模式的に示す図である。
【図5】第1の水蒸気捕捉部の機能の原理を模式的に示す図である。
【図6】第1の水蒸気捕捉部の固定例を模式的に示す図である。
【図7】第1の水蒸気捕捉部を模式的に示す図である。
【図8】第1の水蒸気捕捉部と水供給管の接続例を示す図である。
【図9】電解装置における水素および酸素の排出例を示す図である。
【図10】陰極と陽極との大きさの違いによる効果を説明するための図である。
【図11】電解装置の変形例を模式的に示す図である。
【図12】電解装置の変形例を模式的に示す図である。
【図13】電解装置の変形例を模式的に示す図である。
【図14】電解装置の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
1.電解装置
電解装置10は、陰極室20と陽極室30と第1の隔膜40とを含む。陰極室20には陰極22が設けられ、陽極室30には陽極32が設けられている。第1の隔膜40は、陰極室20と陽極室30とを隔てている。第1の隔膜40は、特に限定されないが、たとえば、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜や不織布からなることができる。
【0030】
陰極室20内には、図1および図2に示すように、第1の水蒸気捕捉部50が設けられている。第1の水蒸気捕捉部50は、電気分解により陰極室20で生じた水蒸気を捕捉するためのものである。第1の水蒸気捕捉部50は、陰極22の上で、かつ、陰極室20に貯められる電解質水溶液の水面より上に設けられている。第1の水蒸気捕捉部50は、陰極室20を仕切るように(陰極室20に貯められる電解質水溶液の全体を覆うように)設けることができる。第1の水蒸気捕捉部50は、陰極室20に貯められる電解質水溶液の水面に対して、間隔を置いて設けられることができる。この間隔は、特に限定されるものではないが、たとえば5mm〜15mmとすることができる。
【0031】
第1の水蒸気捕捉部50は、図3に示すように、複数の管状体52を含んで束となって構成することができる。管状体52は、図4に示すように、管路に水を導入するための導入口52aと、管路から水を排出するための排出孔52bとを含む。管状体52は、たとえば、一端に導入口52aが設けられ、他端は封止され、管状体52の側壁に排出孔52bが設けられることができる。管状体52の管径は、たとえば50〜150μmであることができる。管路の径は、たとえば、5〜15μmであることができる。管状体52は、たとえば、中空糸が好適である。管状体52の導入口52aから水が導入されることで、管状体52に水蒸気が触れると、図5に示すように、その水が冷却水として作用し凝集して結露する。これにより、水蒸気を捕捉することができる。結露した水滴92は、垂れて陰極室20の水面90に落ちることとなる。したがって、陰極室20で発生した水素を採取する際に採取された気体中の水蒸気の含有割合を減らすことができる。第1の水蒸気捕捉部50の厚さは、たとえば10mmとすることができる。第1の水蒸気捕捉部50は、図6に示すように、束状になった複数の管状体を枠体50aに押し入れてもよい。
【0032】
第1の水蒸気捕捉部は、図7に示すように、その端部において、複数の管状体52を結束させるための結束部50aを設けることができる。また、第1の水蒸気捕捉部50は、結束部50aの逆の端部において、接続部58aを介して水供管58に接続されている。接続部58aはたとえば管状で伸縮が可能な弾性体(たとえばゴム)からなることができ、図8に示すように、第1の水蒸気捕捉部50の開口側に接続部を接続して、水供給管58と第1の水蒸気捕捉部50とを接続することができる。水供給管58から供給された水は、冷却水として機能すると共に、第1の水蒸気捕捉部50の排出孔52bを通じて、陰極室20内に供給される。
【0033】
陰極室20内の第1の水蒸気捕捉部50の上には、図9に示すように、水素収容室54が設けられている。水素収容室54には、水素排出管56が接続されている。水素収容室54に収容された水素は、水素排出管56を通じて排出される。水素排出管56には、気体を通して、液体を通さない第1の気液分離部56aを設けるとよい。これによれば、水素収容室54まで電解質水溶液があふれ出しても、その電解質水溶液が水素排出管56を通じて排出されるのを防ぐことができる。第1の気液分離部56aは、公知の気液分離膜などを適用することができ、たとえば、ゴアテックス(登録商標)などを適用することができる。
【0034】
陽極室30内にも、図1および図2に示すように、第2の水蒸気捕捉部60を設けることができる。第2の水蒸気捕捉部60は、電気分解により陽極室30で生じた水蒸気を捕捉するためのものである。第2の水蒸気捕捉部60は、陽極32の上で、かつ、陽極室30に貯められる電解質水溶液の水面より上に設けられている。第2の水蒸気捕捉部60は、陽極室30を仕切るように(陽極室30に貯められる電解質水溶液の全体を覆うように)設けることができる。第2の水蒸気捕捉部60は、陽極室30に貯められる電解質水溶液の水面に対して、間隔を置いて設けられることができる。この間隔は、特に限定されるものではないが、たとえば5mm〜15mmとすることができる。
【0035】
第2の水蒸気捕捉部60の構成は第1の水蒸気捕捉部50と同様の構成を取ることができる。すなわち、第2の水蒸気捕捉部60は、複数の管状体を含んで構成されることでき、この管状体は、第1の水蒸気捕捉部60の管状体で説明したものを適用することができる。第2の水蒸気捕捉部60においても、管状体の導入口から水が導入されることで、管状体に水蒸気が触れると、その水が冷却水として作用し凝集して結露する。これにより、水蒸気を捕捉することができる。結露した水は、垂れて陽極室30の水面に落ちることとなる。したがって、陽極室30で発生した酸素を採取する際に採取された気体中の水蒸気の含有割合を減らすことができる。
【0036】
第2の水蒸気捕捉部60は、図2に示すように、水供給管68と接続部68aにより接続されることができる。接続部68aは、第1の水蒸気捕捉部50に接続される接続部58aと同様の態様を取ることができる。水供給管68から供給された水は、冷却水として機能すると共に、第2の水蒸気捕捉部60の排出孔を通じて、陰極室30内に供給される。
【0037】
陽極室30内の第2の水蒸気捕捉部60の上側には、図1に示すように、酸素収容室64が設けられている。酸素収容室64には、図9に示すように、酸素排出管66が接続されている。酸素収容室64に収容された酸素は、酸素排出管66を通じて排出される。酸素排出管66には、気体を通して、液体を通さない第2の気液分離部66aを設けるとよい。これによれば、酸素収容室64まで電解質水溶液があふれ出しても、その電解質水溶液が酸素排出管66を通じて排出されるのを防ぐことができる。第2の気液分離部66aは、公知の気液分離膜、たとえばゴアテックス(登録商標)などを適用することができる。
【0038】
陰極22および陽極32の種類は、特に限定されないが、公知の電極を適用することができる。図10に示すように、陰極22の表面積は、陽極32の表面積よりも大きくすることができる。これによれば、電解質水溶液と陰極22との接触面積を大きくすることができるので、陰極22における水素発生効率を高めることができる。陰極22の表面積は、たとえば、陽極32の表面積の2倍以上、好ましくは2〜5倍とすることができる。陰極22および陽極32は、網状又は多孔質状のものから構成することができる。これにより単位体積当たりの表面積を大きくすることができ、陰極22および陽極32の電解効率をより高めることができる。なお、陰極22および陽極32が網状又は多孔質状のものからなる場合には、次の関係式(1)を満たすようにすることで、陰極における水素発生効率をより高めることができる。
2≦V1/V2・・・(1)
V1=陰極の縦の長さ×陰極の横の長さ×陰極の厚さ
V2=陽極の縦の長さ×陽極の横の長さ×陽極の厚さ
なお、V1/V2の上限値は、求める電解効率により異なるが、たとえば5以下とすることができる。
【0039】
陰極22は直流電源80の−側に接続され、陽極32は直流電源80の+側に接続されている。直流電源80は、その電圧や電流を任意に設定できる構成になっている。直流電源80は、たとえば、電圧は1.3〜24ボルト程度の範囲で任意に選択でき、電流についても3〜10アンペアの範囲で適宜選択して設定することができるものとすることができる。陰極22および陽極32は、網目状の電極や、たとえば1.5mm前後でパンチング穴加工した電極などからなることができる。なお、パンチング加工した電極は、パンチングで取り除いた面積と電極として使用される面積とがたとえば50%程度になるようにすることができる。電極の材質は公知のものを適用することができる。
【0040】
直流電源80には、家庭用の電源の電気を適用できると共に、風力発電や太陽光発電により生じた電気を使用することができる。
【0041】
陰極室20および陽極室30内の電解質水溶液に電解質を加えるため、図1に示すように、その電解質水溶液を電解質供給源70に供給して、電解質が加えられた電解質水溶液を陰極室20および陽極室30に還流させてもよい。電解質供給源70には、電解質と飽和電解質水溶液が貯留されており、電解質水溶液が電解質供給源を通過することで、水の電解質濃度が高まる。
【0042】
陰極室20および陽極室30の下には、電解質水溶液収容室72を設けることができる。電解質水溶液は、電解質水溶液収容室72を通じて陰極室20および陽極室30から電解質供給源70に供給されると共に、電解質供給源70から還流してきた電解質水溶液は電解質水溶液収容室72を通じて陰極室20および陽極室30に供給される。電解質供給源70からの電解質水溶液は、ポンプ74を通じて電解質水溶液収容室72に供給することができる。電解質としては、たとえば、水酸化物(水酸化ナトリウムなど)が好適である。塩化物でなく水酸化物であることにより、塩素ガスが陽極室30で発生するのを防ぐことができる。
電解質水溶液収容室72は、陰極室20および陽極室30と第2の隔膜42により隔てることができる。第2の隔膜42は、たとえば、不織布などからなることができる。
【0043】
電解装置10には、水位計82を設けてもよい。水位計82で計測された水位に基づき、水の供給量を制御することができる。
【0044】
2.動作
次に、電解装置10の動作を説明する。
【0045】
まず、陰極室20と陽極室30にそれぞれ電解室水溶液を加える。水の水位は、たとえば、陰極室20および陽極室30の高さの半分程度とすることができる。陽極22と陰極32の間に電位を印加し、電気分解を行う。たとえば、電気分解時の電圧は、3〜24Vとし、電流は電極の大きさにより異なるが3Aまたはそれ以上の電流とする。特に、陰極室20に供給される水1リットル当たり数万クーロンとなるようにすると、陰極22にスケールが付き難くなる。陽極22と陰極32との間に電位を印加すると、陰極室20では水素が発生し、陽極室30では酸素が発生する。
【0046】
また、水供給管58により、第1の水蒸気捕捉部50に水(たとえば常温の水)を流し、管状体52の排出孔52bから水を陰極室20に供給する。同様に、水排出管68から供給された水は、第2の水蒸気捕捉部60の排出孔から水(たとえば常温の水)を陽極室30に供給する。
【0047】
陰極室20において、水素を含む気体は、第1の水蒸気捕捉部50にて水蒸気の一部又は全部が結露して捕捉され、その結露した水は陰極室20に戻ることとなる。水素は、第1の水蒸気捕捉部50を通過し、水素収容室54を経て、水素排出管56から排出される。
【0048】
陽極室30において、酸素を含む気体は、第2の水蒸気捕捉部60にて水蒸気の一部又は全部が結露して捕捉され、その結露した水は陽極室30に戻ることとなる。酸素は、第2の水蒸気捕捉部60を通過し、酸素収容室64を経て、酸素排出管66から排出される。
【0049】
電解質水溶液は、電解質供給源70に供給され、ポンプ74を通じて陰極室20および陽極室30に還流されることとなる。
【0050】
3.作用効果
次に、本実施の形態に係る電解装置の作用効果について説明する。
【0051】
(1)水素を生成する際に、電解質水溶液は一般的に50℃以上に上昇し、電解質水溶液の水が蒸発して水蒸気が発生するが、燃料電池などでは水分は燃料電池の劣化を促進する。実施の形態に係る電解装置10においては、熱せられた水蒸気の一部は、水が流されている第1の水蒸気捕捉部50で冷却され、結露し、水滴として電解質水溶液に戻ることとなる。したがって、得られる水素において、水蒸気の含有割合を抑えることができる。
【0052】
(2)電気分解において水が消耗されることとなるが、実施の形態に係る電解装置10では、第1の水蒸気捕捉部50の管状体52により水を供給すると共に、その水が冷却水となり水蒸気を結露させ、結露した水は陰極室20の電解質水溶液に戻している。したがって、第1の水蒸気捕捉部50にて水を供給しているため、別途に水の供給部を設ける必要がない。
【0053】
(3)水素は、第1の水蒸気捕捉部50を通ることとなるので、水素の温度を低くすることができるので、燃料電池の腐食を抑えることができる。
【0054】
(4)電解質水溶液の温度が上昇しても、第1の水蒸気捕捉部50から冷えた水が供給されることで、電解質水溶液に供給された水は、下に移動し、電解質の水溶液内において還流し冷却効果も高まる。
【0055】
(5)第2の水蒸気捕捉部60を設けることで、得られる酸素に含まれる水蒸気の含有割合を抑えることができる。第2の水蒸気捕捉部60を設けることで、第2の水蒸気捕捉部60を通じても水を陽極室30に供給することができ、また、陽極室30内の電解質水溶液を温度を下げることができる。
【0056】
4.変形例
上記の実施の形態に係る電解装置10は、たとえば次の変形が可能である。
【0057】
(1)図11に示すように、陰極室20内に2つの陰極22を設け、陰極室20の両側に陽極室30を設けることができる。陰極室20内に第1の水蒸気捕捉部50を設け、各陽極室30内に第2の水蒸気捕捉部60を設けることができる。
【0058】
(2)図12に示すように、陽極室30の両側に、陰極室20を設けることができる。各陽極室30内に第2の水蒸気捕捉部60を設け、陰極室20に第1の水蒸気捕捉部50を設けることができる。
【0059】
(3)上記の実施の形態においては、陰極室と陽極室とを第1の隔膜で隔てた例を示したが、図13に示すように、第1の隔膜がない1室型の電解装置であってもよい。しかし、この場合は、水素と酸素とは混合気体として得られることとなる。
【0060】
(4)図14に示すように、陰極室20と陽極室30との間に、電解質水溶液を収容した中間室94が設けられた電解装置であってもよい。陰極室20と中間室94とは陽イオン交換膜96により仕切られ、陽極室30と中間室とは陰イオン交換膜98により仕切ることができる。
【0061】
(5)上記の実施の形態では、電解質水溶液を用いる例を示したが、純水であってもよい。
【0062】
(6)第1および第2の水蒸気捕捉部は、1本の管状体を折りたたんで膜状にして構成させてもよい。
【0063】
5.応用例
実施の形態に係る電解装置は、たとえば、内燃機関システム、燃焼システム、燃料電池システムに適用することができる。
【0064】
内燃機関システムは、実施の形態に係る電解装置を含み、その電解装置で得られた水素を内燃機関の燃料として使用するものである。
【0065】
燃焼システムは、実施の形態に係る電解装置を含み、その電解装置で得られた水素を燃焼装置の燃料として使用するものである。
【0066】
燃料電池システムは、実施の形態に係る電解装置を含み、その電解装置で得られた水素を燃料電池に蓄える燃料として使用するものである。
【0067】
これら応用例において、水素を酸素と反応させて得られた水を電解装置に還流させてもよい。
【0068】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の電解装置は、燃料電池などの燃料源に好適な水素の製造に適用が可能である。。
【符号の説明】
【0070】
10 電解装置
20 陰極室
22 陰極
30 陽極室
32 陽極
40 第1の隔膜
42 第2の隔膜
50 第1の水蒸気捕捉部
50a 枠体
52 管状体
52a 導入口
52b 排出孔
54 水素収容室
56 水素排出管
56a 第1の気液分離膜
58 水供給管
58a 接続体
60 第2の水蒸気捕捉部
64 酸素収容室
66 酸素排出管
66a 第2の気液分離膜
70 電解質供給源
72 電解質水溶液収容室
74 ポンプ
80 電源
82 水位計
84 枠体
90 水面
92 水滴
94 中間室
96 陽イオン交換膜
98 陰イオン交換膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極が設けられた陰極室と、
陽極が設けられた陽極室と、
前記陰極室と前記陽極室とを隔てる隔膜と、
前記陰極室内に設けられた水蒸気を捕捉する第1の水蒸気捕捉部と、
前記第1の水蒸気捕捉部を通過した水素を排出する水素排出部と、を含み、
前記第1の水蒸気捕捉部は、1つ又は複数の第1の管状体を含んで構成され、
前記第1の管状体は、管路に水を導入するための第1の導入口と、管路から前記陰極室に水を排出するための第1の排出孔とを含む電解装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の管状体は、一端に前記第1の導入口が設けられ、他端は閉鎖され、
前記第1の排出孔は、前記第1の管状体の側壁に設けられている電解装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の水蒸気捕捉部は、複数の前記第1の管状体が束状となって構成され、
前記第1の管状体は、その管径が50〜150μmである電解装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記陽極室内に設けられた水蒸気を捕捉する第2の水蒸気捕捉部と、
前記第2の水蒸気捕捉部を通過した酸素を収容する酸素収容部と、を含み、
前記第2の気液分離体は、1つ又は複数の第2の管状体を含んで構成され、
前記第2の管状体は、管路に水を導入するための第2の導入口と、管路から前記陽極室に水を排出するための第2の排出孔とを含む電解装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記第2の管状体は、一端に前記第2の導入口が設けられ、他端は閉鎖され、
前記第2の排出孔は、前記第2の管状体の側壁に設けられている電解装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記第2の水蒸気捕捉部は、複数の前記第2の管状体が束状となって構成され、
前記第2の管状体は、その管径が50μm〜150μmである電解装置。
【請求項7】
陽極および陰極が設けられた電解室と、
前記電解室内に設けられた水蒸気を捕捉する水蒸気捕捉部と、
前記水蒸気捕捉部を通過した水素を排出する水素排出部と、を含み、
前記水蒸気捕捉部は、1つ又は複数の管状体を含んで構成され、
前記管状体は、管路に水を導入するための導入口と、管路から前記陰極室に水を排出するための排出孔とを含む電解装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電解装置を利用して水素を製造する水素の製造方法であって、
前記陰極室で生じた水蒸気を前記第1の水素捕捉部により捕捉する工程を含む水素の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の水素の製造方法により得られた水素。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の電解装置を含む内燃機関システム。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の電解装置を含む燃焼システム。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の電解装置を含む燃料電池システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−58028(P2011−58028A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206507(P2009−206507)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【特許番号】特許第4598868号(P4598868)
【特許公報発行日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(500111806)
【Fターム(参考)】