説明

電解質測定方法及び電解質測定装置

【課題】装置全体の構成を複雑化することなく、試料溶液を増やすことなく、試料溶液の濃度によらず、正確に測定できる電解質測定方法及び電解質測定装置を実現する。
【解決手段】電極部を用いて標準液と試料溶液それぞれの起電力を測定する測定部190と、試料液を希釈液により希釈して試料溶液を生成する希釈槽110と、試料液を希釈槽に供給する試料供給手段140と、希釈液を希釈槽に供給する希釈液供給手段120と、標準液を希釈槽に供給する標準液供給手段130と、希釈槽から標準液と試料溶液とを電極部に供給する測定液供給手段150と、標準液と試料溶液とを希釈槽から交互に電極部に供給するよう制御すると共に、試料溶液を生成する前に、希釈槽に希釈液を所定量供給して排出するよう制御する制御部101とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液中の電解質濃度を測定する電解質測定方法及び電解質測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イオンセンサー、とくにイオン選択性電極を医療分野の測定に応用し、血液や尿等の試料中に溶解しているイオン、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオンなどの定量を行うことが盛んに行われている。
【0003】
例えば尿や血清等の試料中の電解質濃度(イオン濃度)を、イオン選択性電極を用いて測定する電解質測定装置、つまり、イオン選択性電極を用いた測定原理を採用した電解質測定装置が知られている。また、それら複数のイオンを一度に測定するものとして、フロー型電解質測定装置がある。
【0004】
なお、このような電解質測定装置は、作用電極(イオン選択性電極)および比較電極を用いて、試料の起電力(イオン選択性電極での電位と比較電極での電位との電位差)を計測するとともに、標準液の起電力を計測し、これら試料と標準液のそれぞれの計測データから試料に含まれる被測定成分の電解質濃度を測定するものである。
【0005】
この種の電解質測定方法及び電解質測定装置については、以下の特許文献にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−109686号公報
【特許文献2】特開2009−19960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したイオン電極法による電解質測定装置では、安定した電位測定を行うために、標準液と試料とを交互に測定する手法がとられている。
【0008】
この場合において、試料は、イオン強度とpHとを揃えるために、緩衝液に希釈され測定されることもある。このとき、対象として測定する標準液も同様の緩衝液で作成され、その中に測定対象イオンを一定濃度で存在させている。
【0009】
この標準液内の測定対象イオン濃度の調整方法は2通り考えられている。
【0010】
第1の手法は希釈後の試料溶液濃度より薄い標準液濃度であり、第2の手法は試料を希釈した後の試料溶液濃度にほど近い標準液濃度である。
【0011】
この第1の手法により、薄い濃度に調整した標準液は、測定の基準になるほか、その標準液で試料を希釈して測定を行うことができ、希釈液と標準液とを統一することができる。しかしながら、試料濃度と標準液濃度が離れているために、温度変化が起きたときの出力電位変化が大きくなり、温度補正を行ったとしても、電極の温度特性による個体差を除くことができない問題がある。
【0012】
なお、温度変化と出力電位変化との関係はネルンストの式により求められ、温度に比例して出力電位が上昇する傾向が知られている。
【0013】
それに対し、第2の手法により、試料溶液濃度に近く標準液を調整した場合、温度変化による出力電位変化は、ネルンストの式により、試料溶液,標準液共に同程度で発生するため、温度による影響が少なくなり、温度によって測定精度が変化しないメリットがある。このため、この第2の手法が現実の装置で用いられることが多い。
【0014】
しかし、この第2の手法では、標準液濃度が希釈液よりは濃い濃度であるため、希釈槽によって試料と希釈液とを混ぜ合わせて試料溶液を生成するシステム構成において、希釈槽内に標準液のキャリーオーバー(残存)が発生すると、次に測定する試料溶液の濃度が上昇してしまう不具合が発生することがある。
【0015】
このような不具合は試料溶液の濃度が低くなったときに顕著に現れることになり、試料溶液の低濃度側の測定結果の直線性が悪化する欠点を生じさせている。また、このような不具合は試料の量を減らしたとき顕著に発生する。
【0016】
なお、このような不具合の減少については、希釈槽での残液である標準液の性質と量により決定されるため、従来は以下の(1)〜(3)のような対策がとられていた。
(1)試料を希釈する希釈槽を、標準溶液の供給経路と別にする。
(2)試料を希釈する希釈槽で、残存する標準液をノズルにより吸引する。
(3)上記(1),(2)の対策を取らず、試料・希釈液を多くして、相対的に標準液の残存を無視できるようにする。
【0017】
なお、上記特許文献1では、希釈液槽での希釈の際に希釈液の量を管理することが提案されているが、標準液が残存した場合の対処は何ら提案されていない。
【0018】
また、上記特許文献2では、以上の対策(1)のように、試料溶液と標準液との経路を分けて、試料を希釈液で希釈する希釈槽には標準液が通過しないように配慮したものが提案されている。この場合、希釈槽における標準液の残存は回避されるものの、配管の取り回しが複雑になり、装置が複雑化する問題が新たに発生する。
【0019】
さらに、希釈槽において標準液の残存をノズルで吸引する吸引手段を設けた対策(2)においても、装置が複雑化する問題が新たに発生する。
【0020】
また、構成を変更せず、標準液に対して試料溶液の量を増やすことで、相対的に標準液の影響を無視できるようする対策(3)では、試料が従来より大量に必要になるため、被検体への負担増加が発生したり、試料が少ない場合には対応できないといった問題が生じる。
【0021】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置全体の構成を複雑化することなく、試料溶液を増やすことなく、試料溶液の濃度によらず、正確に測定できる電解質測定方法及び電解質測定装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
すなわち、上記の課題を解決する本願発明は、以下のそれぞれに述べるようなものである。
【0023】
(1)この電解質測定方法の発明では、作用電極と比較電極を有する電極部を用いて標準液と試料溶液それぞれの起電力を測定する測定部と、試料液を希釈液により希釈して前記試料溶液を生成する希釈槽と、前記標準液を前記希釈槽に供給する標準液供給手段と、前記希釈液を前記希釈槽に供給する希釈液供給手段と、前記試料液を前記希釈槽に供給する試料供給手段と、前記希釈槽から前記標準液と前記試料溶液とを交互に前記電極部に供給する測定液供給手段と、を備え、前記標準液と前記試料溶液とを前記希釈槽から交互に前記電極部に供給して測定する際に、前記試料溶液を生成する前に、前記希釈槽に前記希釈液を所定量供給して排出する、ことを特徴とする。
【0024】
なお、以上の電解質測定方法の発明において、前記測定部での測定のために前記標準液が前記希釈槽を通過した後に、前記試料溶液の生成前における前記希釈液の供給と排出とを行う、ことを特徴とする。
【0025】
(2)この電解質測定装置の発明では、作用電極と比較電極を有する電極部を用いて標準液と試料溶液それぞれの起電力を測定する測定部と、試料液を希釈液により希釈して前記試料溶液を生成する希釈槽と、前記試料液を前記希釈槽に供給する試料供給手段と、前記希釈液を前記希釈槽に供給する希釈液供給手段と、前記標準液を前記希釈槽に供給する標準液供給手段と、前記希釈槽から前記標準液と前記試料溶液とを前記電極部に供給する測定液供給手段と、前記標準液と前記試料溶液とを前記希釈槽から交互に前記電極部に供給するよう制御すると共に、前記試料溶液を生成する前に、前記希釈槽に前記希釈液を所定量供給して排出するよう制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
なお、以上の電解質測定装置の発明において、前記制御部は、前記測定部での測定のために前記標準液が前記希釈槽を通過した後に、前記試料溶液の生成前における前記希釈液の供給と排出とを行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上の発明によると、希釈槽から標準液と試料溶液とを交互に電極部に供給して標準液と試料溶液それぞれの起電力を測定部で測定する際に、希釈槽で試料溶液を生成する前に希釈槽に希釈液を所定量供給して排出するため、希釈槽に残存する標準液が試料溶液に混入する影響を極めて小さくすることができる。このため、標準液内の測定対象イオン濃度は試料あるいは試料溶液に近い濃度である場合にも、測定精度低下を予防できる。すなわち、装置全体の構成を複雑化することなく、試料溶液を増やすことなく、試料溶液の濃度によらず、電解質濃度を正確に測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態を適用した電解質測定装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態の電解質測定の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態を適用した電解質測定による特性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の電解質測定方法及び電解質測定装置を実施するための形態(実施形態)を詳細に説明する。
【0030】
〈構成〉
まず図1を参照して本実施形態の電解質測定装置100の構成を説明する。
【0031】
なお、図1においては、電解質測定装置100や周辺の各部を保持するための既知の基本的部材や筐体などについては省略し、実施形態の特徴部分の配置を中心に示した状態で電解質測定装置を示している。
【0032】
図1に示される電解質測定装置100は、大きく分けて、各部を制御する制御部101、試料液を希釈液により希釈して試料溶液を生成する容器としての希釈槽110、希釈液を希釈槽110に供給する希釈液供給手段120、標準液を希釈槽110に供給する標準液供給手段130、試料液を希釈槽110に供給する試料供給手段140、標準液と試料溶液とを希釈槽110から交互に電極部180に供給する測定液供給手段150、標準液と試料溶液のそれぞれについて作用電極と比較電極との間で所定の電位差を発生させる電極部180、標準液と試料溶液それぞれについて電極部180で発生する起電力を測定する測定部190、を備えて構成されている。
【0033】
ここで、制御部101は、CPUや制御プログラム等により電解質測定装置100の各部を制御すると共に、測定の際に希釈槽110で試料溶液を生成する前に希釈槽110に希釈液を所定量供給して排出する制御を行う。
【0034】
希釈槽110では、試料分注ノズル142から吐出される試料が、希釈液供給ノズル125から吐出される希釈液により20〜30倍程度に希釈されて、図示されない撹拌機構によって均一に撹拌されて、試料溶液が生成される。また、この試料溶液と、標準液供給ノズル135から吐出される標準液とが、交互に希釈槽110から測定液供給手段150を介して電極部180に供給される。
【0035】
希釈液供給手段120は、希釈液を収容する希釈液容器121、希釈液を希釈液容器121から導入するための希釈液導入配管122、希釈液導入配管122を介して希釈液容器121から希釈液を吸い出すポンプ123、ポンプ123から押し出された希釈液を希釈槽110に向けて供給する希釈液供給配管124、ポンプ123から押し出された希釈液を希釈槽110に向けて吐出する希釈液供給ノズル125、を備えて構成されている。
【0036】
標準液供給手段130は、標準液を収容する標準液容器131、標準液を標準液容器131から導入するための標準液導入配管132、標準液導入配管132を介して標準液容器131から標準液を吸い出すポンプ133、ポンプ133から押し出された標準液を希釈槽110に向けて供給する標準液供給配管134、ポンプ133から押し出された標準液を希釈槽110に向けて吐出する標準液供給ノズル135、を備えて構成されている。なお、標準液内の測定対象イオン濃度は試料あるいは試料溶液に近い濃度である。
【0037】
試料供給手段140は、試料を収容する試料容器141、試料容器141から一定量の試料を希釈槽110に供給する試料分注ノズル142、試料分注ノズル142の移動並びに分注(吸入・吐出)を制御するノズル駆動部143、を備えて構成されている。
【0038】
測定液供給手段150は、希釈槽110からの試料溶液もしくは標準液を測定液として電極部180に供給する測定液供給配管151、電極部180で測定後の測定液を廃液として排出するための廃液配管153、電極部180に測定液を供給すると共に測定後の測定液を廃液として廃液配管153を介して吸い出すポンプ154、ポンプ154から押し出された廃液を外部に排出するための廃液配管155、を備えて構成されている。
【0039】
電極部180は、作用電極(イオン選択性電極:図1中のNa,K,Cl)および比較電極(図1中のRef)を備えて構成されており、通過する測定液(試料溶液、標準液)のそれぞれに対して、作用電極での電位と比較電極での電位との間に電解質濃度に応じた所定の電位差を発生する。ここで、作用電極は、例えばNa(ナトリウム)イオン、K(カリウム)イオン、Cl(塩素)イオン等の特定のイオンに感応して電位を示す電極である。
【0040】
測定部190は、試料溶液と標準液とのそれぞれについて、作用電極での電位と比較電極での電位との間における電解質濃度に応じた所定の電位差を計測する。また、この電位差に応じて、Na(ナトリウム)イオン、K(カリウム)イオン、Cl(塩素)イオン等の電解質濃度を算出する。なお、図示されていないが、電極部180へ標準液と試料溶液とを交互に供給する測定液供給配管151の金属部分を基準電位に接地することにより電極部180での電位を安定させることが望ましい。
【0041】
〈動作〉
ここで、電解質測定装置100の動作として電解質測定方法について、試料溶液中の被測定成分の電解質濃度の測定について説明する。
【0042】
まず、測定開始の指示が発生すると(図2中のステップS101でYES)、制御部101は以下の測定動作を開始する。
【0043】
標準液洗浄:
ここで、制御部101の制御によってポンプ133を駆動し、標準液導入配管132と標準液供給配管134を介して標準液容器131から標準液を吸い出し、標準液供給ノズル135から所定量の標準液を希釈槽110に注出する。同様に制御部101の制御により、図示されない撹拌機構を駆動して標準液で希釈槽110内を洗浄する。そして、制御部101の制御により、ポンプ154を駆動し、希釈槽110内の洗浄後の標準液を吸引し、廃液配管153,155を介して外部に廃棄する(図2中のステップS102)。
【0044】
標準液測定:
つぎに、制御部101の制御によってポンプ133を駆動し、標準液導入配管132と標準液供給配管134を介して標準液容器131から標準液を吸い出し、標準液供給ノズル135から所定量の標準液を希釈槽110に注出する(図2中のステップS103)。
【0045】
そして、制御部101の制御によりポンプ154が駆動され、この標準液は、測定液として測定液供給配管151を通過して電極部180に到達する。そして、標準液が電極部180(作用電極および比較電極)を通過する場合に、測定部190が作用電極および比較電極を通じて標準液の起電力を測定する(図2中のステップS104)。このようにして測定部190で測定された起電力は、制御部101に通知される。そして、制御部101の制御により、ポンプ154を駆動して測定後の標準液を吸引し、廃液配管153,155を介して外部に廃棄する(図2中のステップS105)。
【0046】
希釈液洗浄:
ここで、制御部101の制御によってポンプ123を駆動し、希釈液導入配管122と希釈液供給配管124を介して希釈液容器121から希釈液を吸い出し、希釈液供給ノズル125から所定量の希釈液を希釈槽110に注出する。同様に制御部101の制御により、図示されない撹拌機構を駆動して希釈液で希釈槽110内を洗浄する。なお、この希釈液洗浄とは、直前の標準液のキャリーオーバーの影響を低減させるものであるため、いわゆる洗浄を行わず、単に希釈液を希釈槽110に供給してから排出する動作であってもよい。そして、制御部101の制御により、ポンプ154を駆動し、希釈槽110内の洗浄後の希釈液を吸引し、廃液配管153,155を介して外部に廃棄する(図2中のステップS106)。
【0047】
試料溶液測定:
つぎに、制御部101の制御によってポンプ123を駆動し、希釈液導入配管122と希釈液供給配管124を介して希釈液を希釈液容器121から吸い出し、試料溶液生成に必要な所定量の希釈液を希釈液供給ノズル125から希釈槽110に注出する。
【0048】
そして、制御部101の制御により、試料容器141に収容されている試料を試料分注ノズル142で一定量だけ分取し、この分取した一定量の試料を、希釈液が注出されている希釈槽110に分注する。これにより、希釈槽110では、試料が希釈液によって所定の比率で希釈されて、測定のための試料溶液が生成される(図2中のステップS107)。
【0049】
このようにして希釈槽110で生成された試料溶液は、ポンプ154の駆動により吸引され、測定液として測定液供給配管151を通過して電極部180に到達する。そして、試料溶液が電極部180(作用電極および比較電極)を通過する際に、測定部190が作用電極および比較電極を通じて試料溶液の起電力を測定する(図2中のステップS108)。このようにして測定部190で測定された起電力は、制御部101に通知される。
【0050】
そして、引き続きポンプ154の駆動により吸引されて電極部180を通過した測定後の試料溶液は、廃液配管153,155を介して廃液として外部に廃棄される(図2中のステップS109)。
【0051】
また、制御部101は、測定部190で測定され通知された標準液と試料溶液の起電力のデータに基づいて、電解質濃度を算出する(図2中のステップS110)。なお、制御部101は、算出した電解質濃度を図示されない表示部に表示したり、図示されない他の機器に通知する。
【0052】
継続処理:
なお、制御部101は、これ以後も測定が必要か測定終了かを判断し(図2中のステップS111)、継続が必要と判断された場合には(図2中のステップS111でNO)、希釈槽110の標準液洗浄(図2中のステップS102)、標準液の測定(図2中のステップS103〜S105)、希釈槽110の希釈液洗浄(図2中のステップS106)、試料溶液の測定(図2中のステップS107〜S109)、標準液測定結果と試料溶液測定結果とから電解質濃度算出(図3中のステップS110)、を繰り返す。
【0053】
終了処理:
一方、これ以後も測定が必要か測定終了かを制御部101が判断し(図2中のステップS111)、終了と判断された場合には(図2中のステップS111でYES)、以上の一連の処理を終了し、制御部101は終了に伴う既知の各種処理を実行する。
【0054】
以上の実施形態によると、希釈槽110から標準液と試料溶液とを交互に電極部180に供給して標準液と試料溶液それぞれの起電力を測定部190で測定する際に、希釈槽110で試料溶液を生成する前に希釈槽110に希釈液を所定量供給して排出することで洗浄しているため、希釈槽110に残存する標準液が試料溶液に混入する影響を極めて小さくすることができる。このため、標準液の測定対象イオン濃度が試料あるいは試料溶液に近い濃度である場合にも、測定精度低下を予防できる。すなわち、本実施形態によると、装置全体の構成を複雑化することなく、試料溶液を増やすことなく、試料溶液の濃度によらず、電解質濃度を正確に測定することが可能になる。
【0055】
ここで、従来例と本実施形態とで具体的な測定を行い、その結果を図3に示す。この図3において、横軸は試料溶液のNa濃度(目標値)[mmol/L]である。また、縦軸は測定結果(試料溶液のNa測定値[mmol/L]−Na目標値[mmol/L])を示しており、測定誤差を意味するものであるため、縦軸の値が0に近いことが望ましい。
【0056】
ここで、従来例では、標準液洗浄、標準液測定、試料溶液測定の2液3サイクルで測定している。また、本実施形態では、標準液洗浄、標準液測定、希釈液洗浄、試料溶液測定の2液4サイクルで測定している。
【0057】
この図3に示す3サイクルの従来例では、試料溶液濃度が140[mmol/L]より薄くなるにつれて、試料溶液より濃い濃度の標準液の残存の影響が相対的に強く表れるようになっており、測定誤差が徐々に大きくなっていることがわかる。
【0058】
一方、図3に示す4サイクルの本実施形態では、試料溶液の測定の前に希釈液での洗浄工程が入るため、試料溶液濃度が140[mmol/L]より薄くなっても、試料溶液より濃い濃度の標準液の残存の影響は発生せず、幅広い濃度範囲で測定誤差は小さいままである。
【0059】
すなわち、本実施形態によると、装置全体の構成を複雑化することなく、試料溶液を増やすことなく、試料溶液の濃度によらず、電解質濃度を正確に測定することが可能になる。
【符号の説明】
【0060】
100 電解質測定装置
110 希釈槽
120 希釈液供給手段
130 標準液供給手段
140 試料供給手段
150 測定液供給手段
180 電極部
190 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用電極と比較電極を有する電極部を用いて標準液と試料溶液それぞれの起電力を測定する測定部と、
試料液を希釈液により希釈して前記試料溶液を生成する希釈槽と、
前記標準液を前記希釈槽に供給する標準液供給手段と、
前記希釈液を前記希釈槽に供給する希釈液供給手段と、
前記試料液を前記希釈槽に供給する試料供給手段と、
前記希釈槽から前記標準液と前記試料溶液とを交互に前記電極部に供給する測定液供給手段と、を備え、
前記標準液と前記試料溶液とを前記希釈槽から交互に前記電極部に供給して測定する際に、前記試料溶液を生成する前に、前記希釈槽に前記希釈液を所定量供給して排出する、
ことを特徴とする電解質測定方法。
【請求項2】
前記測定部での測定のために前記標準液が前記希釈槽を通過した後に、前記試料溶液の生成前における前記希釈液の供給と排出とを行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の電解質測定方法。
【請求項3】
作用電極と比較電極を有する電極部を用いて標準液と試料溶液それぞれの起電力を測定する測定部と、
試料液を希釈液により希釈して前記試料溶液を生成する希釈槽と、
前記試料液を前記希釈槽に供給する試料供給手段と、
前記希釈液を前記希釈槽に供給する希釈液供給手段と、
前記標準液を前記希釈槽に供給する標準液供給手段と、
前記希釈槽から前記標準液と前記試料溶液とを前記電極部に供給する測定液供給手段と、
前記標準液と前記試料溶液とを前記希釈槽から交互に前記電極部に供給するよう制御すると共に、前記試料溶液を生成する前に、前記希釈槽に前記希釈液を所定量供給して排出するよう制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記測定部での測定のために前記標準液が前記希釈槽を通過した後に、前記試料溶液の生成前における前記希釈液の供給と排出とを行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の電解質測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189405(P2012−189405A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52399(P2011−52399)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)