説明

静的混合器

【課題】多相流体流れを混合して搬送されることができ、かつ、流体の均一な分散を維持する静的混合器を提供する。
【解決手段】流体案内手段1内に設置する混合要素12は、入口開口9内の流れの主方向11に対して実質的に垂直に配置された第1の断面を有する少なくとも2つの成分のための入口開口9と、出口開口10内の流れの主方向11に対して実質的に垂直に配置された第2の断面を有する混合物のための出口開口10とを含み、混合要素12は、第1の断面から第2の断面へ実質的に連続して増大する断面を有する。流れ分割層2、3、4は、実質的に連続して拡張する流体案内手段1内への混合要素12の正確なはめ込みを可能にするように、混合要素内に配置される。このタイプの混合要素12を有する静的混合器は、特に天然ガス処理、自動車構成、或いは化学反応技術で使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる静的混合器のための混合要素、並びにそのような混合要素及びこのタイプの混合要素を有する静的混合器の使用に関する。静的混合器は、2つ以上の流体成分、特に気液混合物の混合のために使用される。混合要素は、特に、ディフューザ・セクションとして作られた流体案内手段で使用されるべきである。混合要素は、ディフューザにおける均一な混合状態の維持に少なくとも寄与し、混合要素は、その構造上の設計により偏析に対抗し、及び/又はディフューザ・セクションを通って流れる成分の均一な混合を生じさせる。したがって、静的混合器は、流体案内手段を含み、流体案内手段は、第1の直径の成分のための入口開口及び第2の直径の混合物のための出口開口を有し、流体案内手段は、第1の直径から第2の直径へ実質的に連続して増大する直径展開部を有し、並びに混合要素は、ディフューザ・セクションに配置される。流体案内手段は、特に実質的に連続する拡張線状片として作成することができる。
【背景技術】
【0002】
ディフューザとして拡張する混合器ハウジングに設備を提供することは、欧州特許出願公開第918146号により従来から知られている。これらの設備は、円錐台形状の同心ジャケット表面から形成される。円錐先端は、少なくともほぼ一点に配置され、各設備の入口断面は、流れ方向に対してテーパ形状を有するそれらの縁部を有する表面を形成する。ディフューザを通って流れる気体、欧州特許出願公開第918146号の場合における汚染物は、設備によって下流側触媒へ均一に導かれる。
【0003】
欧州特許出願公開第918146号による汚染物を低減するためのデバイスにおいて、チャンネリングとも呼ばれるいわゆる周辺効果は、気体の通過で生じる。これら周辺効果は、周辺流れによって引き起こされ、周辺流れによって、中心部と比較して流れの低速化を生じる。これら周辺流れは、主にディフューザの内壁での摩擦効果から生じる。円錐体における広がり部で、前述の摩擦効果によって引き起こされる制動効果により壁に近接する領域で速度が低下することがある。この速度低下により、滴状又は気泡状相、すなわち分散相特に液体成分が、連続相、特にガス等の連続相及び懸濁液内に保持できない結果となることもある。
【0004】
このタイプの気液混合物は、例えば、LNG(液体天然ガス)の処理における冷却剤として使用される。この冷却剤は、異なる気体状及び液状成分からなり、特に高揮発性の脂肪族炭化水素、好ましくはメタン、エタン、プロパン、及び/又はブタンを含む部分を有する。冷却のために、冷却剤は、一般にチューブ束熱交換器として設計される熱交換器に導入される。熱交換器は、均一な冷却剤混合物を必要とする冷却能力を有するように設計される。そうでなければ冷却能力が最適にならないからである。もしも冷却混合物が分離が生ずると、所望の冷却能力及び必要な能力を得られなくなる可能性がある。したがって、従来は、熱交換器を非常に大きくする必要があった。従来の静的混合器は、実質的に連続する拡張ライン片に適合されることができないという問題点を有していた。
【0005】
2つの円筒状混合要素の静的混合器を使用する解決手段が提供され、これら混合要素のうちの第1の混合要素は、それぞれ、供給ラインすなわちパイプの直径と同じ直径を有し、第2の混合要素は、熱交換器入口の直径と同じ直径を有する。このタイプの静的混合器で測定を行なったところ、気体及び液体成分が、このいずれの場合も均一に分散されなかった。混合距離は、この目的のために短すぎて寸法決めされ、加えて、この混合器構成で、供給ラインの直径と同じ直径を有する円筒状混合要素が、熱交換器入口の直径と同じ直径を有する混合要素に隣接する点において、急に変化する。この場合、2つの混合要素は、移行が中心で前記変化をするように同一の長さに作られることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第918146号
【特許文献2】スイス国特許第547120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は多相流体流れ、特に液体滴で充填された気体流れ又は気泡が充填された液体流れを、実質的に連続して拡張するライン片を通して混合して搬送することができ、且つ、流体の均一な分散を維持することができる、静的混合器のための混合要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に規定される混合要素によって達成される。特にハウジングとして又は容器ジャケットとして作ることができる流体案内手段に設置するための混合要素は、入口開口内の流れの主方向に対して実質的に垂直にある面に配置された第1の断面を有する少なくとも2つの成分のための入口開口と、出口開口内の流れの主方向に対して実質的に垂直にある面に配置された第2の断面を有する混合物のための出口開口とを含み、混合要素は、第1の断面から第2の断面へ実質的に連続して増大する断面構造を有する。流れ分割層は、実質的に連続して拡張する流体案内手段内への混合要素の正確なはめ込みを可能にするように、混合要素内に配置される。混合要素は、入口開口と出口開口との間の領域に少なくとも部分的に設けられる。周辺流れが、流体案内手段の内壁から主流れの方向に逸らされ、且つ観察される流れ断面を介して少なくともほぼ同一の速度分布でディフューザを通る主流れとともに案内され、より速い流れ速度の流体は、断面の中央領域から壁領域の方向に平衡流れとして流れ、それによって交差混合が発生し、その結果、流体成分の混合が改善されることは、正確なはめ込みによって達成されるものである。流れ分割層は、流体通路を含み、流体通路は、例えばスイス国特許第547120号明細書に開示されるなど、好ましくは開放して交差する流体通路を有するディフューザの態様で特に作られる。実装要素又は層は、このタイプの混合要素における断面の少なくとも一部を覆って提供され、成分は、せん断流れが流れ経路を交差することによって生成されるように、それらの層によって案内されることができ、連続する渦が、重ね合わせられた流れに生じ、それによって、混合物の連続する混合並びに混合器の出口の方向への流れが同時に生ずる。
【0009】
有利な実施例において、混合要素は、薄い壁を設けられた材料の少なくとも2つの層を含む。最も簡単な場合に、このタイプの層は、平坦な薄い壁を設けられた金属シートで作ることができ、平坦な薄い壁を設けられた金属シートは、流体案内手段の拡張する断面にはめ込まれ、各断面における個別層は、互いに平行の部分表面として見えるが、層の部分表面の間隔は、流れの方向に連続して増大する。このタイプの拡張する平坦な層は、クランピング・タイ(clamping ties)又はプラグ・コネクタではめ込まれる締め付け手段のフレームワークによって所定位置に保持される。少なくとも静的混合器の入口開口である入口断面の領域、及び静的混合器の出口開口である出口断面の領域で、各層が締め付けられる可能性がある。2つの隣接する層と、流れの主方向に対して実質的に垂直に配置された流体案内手段との間に形成される領域は、したがって、ディフューザの態様で増大する。個別層間を流れる混合物は、次に、混合器の断面の増大にしたがって拡張する狭い通路を通って実質的に流れる。
【0010】
このタイプの層は、一面で解かれることができ且つ薄い壁を設けられたプレート材料で作られる折り畳まれた構造を含むことができ、折り畳みは、特にリブとして作成することができる。層は、開放通路を形成する構造を含むことができ、特に、折り畳まれた、波形状、又はぎざぎざ状の構造とすることができる。代わりに又はそれと組み合わせて、特にハニカム状又は管状構のような閉鎖された通路を形成する構造を使用することができる。少なくとも1つの層は、特に少なくとも1つの流体通路を含むことができる。構造は、金属材料からなり、好ましくは、流れる媒体の温度、圧力、及び/又は性質に僅かしか影響を受けない、シート状の金属及び/又は鋼及び/又は鋼合金を使用することができる。輸送されるべき媒体の温度が必要であれば、高温に耐える鋼を使用することもできる。腐食性混合物の輸送及び混合は、腐食抵抗材料、特に腐食抵抗シート、またセラミック材料、シリコン化合物、炭素、及び/又はPTFE、エポキシ、halar、TNi合金、及び/又は炭化物を含む被覆、及び/又はガルバニック被覆、特にクロムめっき又はニッケルめっきによって塗付される被覆の使用を必要とする。混合物が、塵などの固体部分も含むなら、混合要素の設備に対する高いスクラッチ抵抗性が要求される。静的混合器の耐用寿命は、混合要素及び/又は流体案内手段の層のスクラッチ抵抗性被覆を用いることで伸びる。それぞれの場合において、汚れをはじく層を取り付けることも好ましい。冷却又は冷凍プラントへ適用する場合、静的混合器は、低温における低ひずみ、腐食抵抗性、及び低温適性を有する材料304L、及び/又はSS316、及び/又は904L、及び/又はduplex、及び/又は14878で作成される。プラスチック、特にポリプロピレン、PVDF、又はポリエチレンは、高温に曝されない静的混合器に使用される。混合要素を、内部で化学反応が生じることができる静的混合器に適用することができる。化学反応を起こさせるために互いに接触されるべき流体成分を高速で且つ均一で混合させるべきである。この目的のために、触媒材料のそれ自体の流れを導く層を製造すること、又は好ましくは、シート金属などの非浸透材料、或いは織物又は編まれた織物又は少なくとも部分的に多孔性材料からなる層に触媒材料を塗布することができる。他の適用分野においては、上述の実施例のうちの1つにより作られる層は、微生物、特にバクテリアを堆積させる手段を含むことができる。
【0011】
さらに他の実施例によれば、静的混合器には、複数のジャケット表面を有する流体案内手段がはめ込まれ、ジャケット表面は、それら全体として流体案内手段を作る台形ジャケット表面を形成する断面において、特に矩形又は方形断面表面において平坦である。このタイプの静的混合器は、前述の実施例のうちの1つによる少なくとも1つの混合器要素を含む。
以下、本発明の好ましい実施態様1〜12を説明する。実施態様11及び12は本発明の使用に関する。
実施態様1:入口開口(9)内の流れの主方向(11)に対して垂直な第1の断面を有する少なくとも2つの成分のための入口開口(9)と、出口開口(10)内の前記流れの主方向(11)に対して垂直な第2の断面を有する混合物のための出口開口(10)とを含む、混合要素(12)と流体案内手段(1)であって、前記混合要素(12)は、前記第1の断面から前記第2の断面へ連続して拡張する断面展開部を有し、前記連続して拡張する流体案内手段(1)内へ前記混合要素(12)が正確にはめ込まれるように、流れを分割する層(2、3、4)が、前記混合要素内に配置され、且つ、該流れを分割する層(2、3、4)が、開放して交差する流体通路(5、6)を有することを特徴とする混合要素と流体案内手段。
実施態様2:少なくとも1つの層(3、4)は、少なくとも1つの流体通路(5、6)を含む実施態様1の混合要素。
実施態様3:隣接する層(3、4)の前記流体通路(5、6)は、ディフューザの態様で作られる実施態様1又は2の混合要素。
実施態様4:流体通路が、少なくとも2つの部分表面(13、14)によって囲まれ、層(3、4)の2つのそれぞれ隣接する部分表面が共通縁部(15)を形成する実施態様1から3までのいずれか1つの混合要素。
実施態様5:境界(16)が、層(3、4)の前記縁部(15)によって形成され、且つ平坦及び/又は少なくとも部分的に円錐である実施態様1から4までのいずれか1つの混合要素。
実施態様6:1つの層に属する前記縁部(15)は、0°から120°の範囲の角度αだけ互いに対して傾斜し、隣接層(3、4)の縁部は、前記流れの主方向に等しく且つ反対である角度α/2を含む実施態様1から5までのいずれか1つの混合要素。
実施態様7:前記混合要素の断面は、前記第1の断面から前記第2の断面へ拡張し、出口断面の直径は、入口断面の直径に対して2倍から5倍だけ大きい、実施態様1から6までのいずれか1つの混合要素。
実施態様8:前記流体案内手段(1)への壁ギャップは、2つの隣接する境界(16)の通常の間隔より小さい実施態様1から7までのいずれか1つの混合要素。
実施態様9:前記流体案内手段(1)への壁ギャップは、表面拡大構造の流体通路(5、6)の高さより小さい実施態様1から7までのいずれか1つの混合要素。
実施態様10:実施態様1から9までのいずれか1つの混合要素は円錐形であり、円筒状の混合要素と実施態様1から9までのいずれか1つの少なくとも1つの円錐形の混合要素とを有する静的混合器であって、隣接する混合要素は、互いに対して60°から90°だけ回転されて配置される静的混合器。
実施態様11:前記円筒状の混合要素及び円錐形の混合要素は、熱交換器の入口領域内において流体案内手段(1)に配置される実施態様10の静的混合器。
実施態様12:天然ガス処理及び/又は放出物の脱窒素の方法における実施態様1から11までのいずれか1つの静的混合器の使用。
実施態様13:触媒及び/又は有機物により生じた反応を実行するための実施態様1から11までのいずれか1つの静的混合器の使用。
【0012】
混合要素の少なくとも1つの層は、表面拡大構造、特に流体通路を含む。以下の説明において、ジグザク・セクションを有する層という用語は、代表的な表面拡大構造を有する層という意味で使用される。このタイプの表面拡大構造は、波状セクション、リブが設けられたセクション、任意の所望の幾何形状及び/又は流れ方向に対して任意の角度位置の突出部を有するセクションを含む。ジグザク・セクションは、通路構造の断面表面上の視野方向で観察したとき、一連の縁部からなる。各々の縁部は、開始断面から終了断面まで混合要素における三次元層内のラインを形成する。最も簡単な場合に、ラインは直線ラインであるが、場合によっては、任意の所望の曲線形状、特に周期的に繰り返す曲線形状とすることができる。湾曲された形状を備える縁部を有するこのタイプの層は、例えば、主流れの方向の変化を有する流体案内手段のための混合要素で使用されることができ、流れ断面の拡張に加えて流体案内手段によって、混合物の流れる方向が変化する。
【0013】
ジグザク断面などの対称セクションを有する層で、開放通路は、2つの隣接する縁部間に配置され、その壁は、平坦及び/又は縁部の曲率に従う少なくとも2つの部分表面によって形成される。この場合、通路の下方境界は、反対方向に面する縁部によって同じ様に形成されるので、該通路はV形状の断面を有する。従って、この実施例において、隣接する部分表面は互いに対して180°未満の鋭角に配置される。
【0014】
一実施例により、反対方向に面する縁部を有する2つの隣接層が互い上に載るように、隣接層の縁部が、線形形態で互いの上に載る。その結果、流れる混合物が通って案内される閉鎖された通路が、2つの隣接層間に形成される。この実施例により、混合物の成分は、同一の通路に残り、この同一の通路は、入口開口から出口開口まで混合器内で、流れの主方向に流体案内手段の拡張にしたがいディフューザのように拡張する。2つの隣接層の間隔は、流れの主方向に対して垂直な流体案内手段の拡張にしたがい、入口開口の断面から出口開口の断面まで増大する。縁部の高さ及び2つの隣接縁部間の間隔が、拡張する混合要素の方向に増大するように、すなわちディフューザの態様で作られる混合要素のように、各層を、平坦なプレート材料から製造することができる。これに関連して、隣接層の縁部は、共通縁部に沿って隣接層の線形接触が生じるように互いの上に載る。流体通路は、全体のディフューザ断面が覆われるべきである場合、その断面が、入口開口から出口開口へ連続して増大する構造によって形成される。層は、平坦及び/又は縁部の曲率に従う少なくとも2つの部分表面で作ることができ、並びに/或いは輪郭表面自体は、特に波状又はぎざぎざ状リブ又は薄片として作られ、且つリブ又は薄片間に延びる一連の開放通路を含むことができる追加の構造を有する。このタイプの構造は、例えば、スイス国特許第547120号明細書に開示される。さらなる実施例により、1つの平坦層と表面拡大構造を有する1つの層とが、交互に互いに続くように、部分表面を有する層と表面拡大構造を有する層とを組み合わせることも可能である。これによって、一方側では平坦層によって、他方側では表面拡大構造を有する層によって境界付けられる閉鎖通路が形成される。
【0015】
好ましい実施例による混合要素において、隣接層の流体通路は、互いに開放して交差するように及び/又はディフューザの態様で作られる。この構成により、混合されるべき成分は、特に高速で且つ良好に混合される。さらなる変形により、良好な混合のために、互いに点接触するだけの隣接層の縁部よりむしろ、表面拡大構造を有する2つの隣接層の線形接触が生じないようにすることができる。2つの隣接層を互いにある角度で配置することによりこの点接触が達成される。それによって、第1の層に属する縁部だけが、隣接層の多数の対応する縁部と点接触をすることになる。この実施例の実質的な利点は、媒体が、前に示された変形例のように同一の通路を常には流れず、逆に毎時異なる通路を流れる、すなわち通路が連続的に変化することにある。この場合、流れる媒体は、実質的に前の実施例の場合よりも逸らされ、結果として混合がさらに改善される。この代わりに、混合を改善するために0°から180°の間の角度に互いに向かって同様に配置される異なるセクションを有する2つの隣接層を、互いに組み合わせることもできる。
【0016】
さらなる実施例により、各層は、表面拡大構造を有する中空本体を形成するが、特にリブが設けられ、ぎざぎざ状、又は波状表面で作られる。したがって、表面拡大構造の縁部は、円錐形状を有する中空本体として考えことができる境界を形成する。表面拡大構造は、0°から180°の間の角度で流れの方向に向かって傾斜される。複数のこのタイプの中空本体は、互いに差し込まれることができる。流れを、表面拡大構造上で複数回逸らすことができるように、表面拡大構造の角度は好ましくは、中空本体として形成する2つの隣接層とは異なる。
【0017】
流体通路は、少なくとも2つの部分表面によって境界付けられ、一つの層の各部分表面は共通縁部を形成する。平坦な部分表面を有する流体通路は、低いコストで且つ簡単に製造することができる。境界は、平坦な形態及び/又は少なくとも部分的に円錐状に作られる層の縁部によって形成される。層が、このタイプの境界をともに形成する複数の縁部を有するなら、平坦又は円錐状の境界は、例えば、平坦な部分表面によって容易に製造することができる。なぜなら、必要な寸法が、簡単な方法で設定され且つチェックすることができるので、厳しい公差で平坦な部分表面を作ることができるからである。境界の形状は、互いに上に配置され、且つ隣接層の縁部が互いに少なくとも点接触する複数の層が、混合要素の製造の際に必要であるときに、特に重要になる。
【0018】
混合要素において、境界は、平坦な形態及び/又は少なくとも部分的に円錐状に作られる層の縁部によって形成される。これに関連して、全ての縁部の接続表面は、境界と呼ばれる。表面拡大構造を有する層のほとんどの前述の実施例は複数の境界を有し、各隣接層は、共通のこれら平坦な境界の1つを有する。表面拡大構造が無い層において、境界は、層の表面に一致する。さらなる実施例により、境界は、空間における任意の所望の態様で湾曲された表面を呈することもできる。表面拡大構造を有する層で、表面拡大構造の縁部は、空間において湾曲された表面を同様に形成する。層間に円錐状に形成された境界を有する層の使用は、流体案内手段の円錐状拡張を有する静的混合器に適している。
【0019】
好ましい実施例により、混合要素の1つの層に属する縁部は、0°から120°、特に60°から90°の範囲の角度αだけ互いに対して傾斜して作られることができる。隣接層の交差縁部は、好ましくは、流れの主方向とは反対で且つ等しい角度α/2を含む。
【0020】
混合要素の断面は、第1の断面から第2の断面に、特に円錐状態様で拡張し、出口断面の直径は入口断面の直径に対して2倍から5倍に特に拡大するが、これは4倍から最大25倍の断面積の拡大に等しい。好ましい実施例において、混合要素は、第1の断面から第2の断面に円錐状に拡張し、入口断面の直径は特に2倍から5倍に拡がる。流体案内手段は、またこの実施例において円錐状に拡張するので、通常は管状ラインである入口開口内に開口する入口ラインの断面から、出口開口の断面への急激な移行が避けられる。出口開口は、熱交換器又は反応器の内への入口開口とすることができる。混合物は、この反応器内に非常に均一に導入されなければならない。混合物の気体、液体、及び/又は固体成分は、特に懸濁状態に維持される。混合状態は、他の方法でディフューザとして偏析に寄与する円錐で1つ又は複数の混合要素によって維持される。ほとんどの場合において、成分の混合の改善は、成分が、入口断面の下流側の円錐の各断面にわたって均一に分散されるように、特に交差する流体通路を有する混合要素によっても達成可能である。円錐形状は、流体案内手段の円錐状形状が、円錐混合要素の設置のための中心合わせ手段として作用するので、層の設置に関して大きな利点をさらに提供する。混合要素は、円錐状の流体案内手段にはめ込まれるので、設置に関して必要な溶接作業が最小となる。混合要素は、好ましくは拡張する断面に適合する混合要素であり、すなわち、それ自体が円錐状形状を有するディフューザの態様で作られる。はめ込みは、円錐内に1つ又は複数の混合要素の位置決めによって、混合要素の円錐状形状に基づき行われ、それによって、円錐状の流体案内手段内に混合要素の位置は、しっかりと固定される。
【0021】
層は、可能であれば、混合器の内壁である流体案内手段に直接隣接すべきである。円錐に対する層の傾斜に依存して、楕円状、放物線状、又は双曲線境界ラインである線形接触円錐状のセクションは、平坦な層の部分曲線、又は表面拡大構造、特に、円錐状内壁を有するジグザグ構造などの平坦なセグメントからなる表面拡大構造を有する層の結果である。上述の各層は、一面で展開することができる。したがって、展開は、混合器内の層の設計位置からドロー系グラフィックツールにより生成することができる。これらの展開は、各角度が異なり、且つしたがって非常に複雑な曲げ処理が必要である場合にも、層を安価に製造可能なように、層の境界ラインの他に曲げるラインも含む。
【0022】
混合器の製造のための可能な方法は、以下のステップを含む。すなわち、まず、第1の断面を有する入口開口と、第2の断面を有する出口開口とを有する流体案内手段を製造する。流体案内手段は、第1の断面から第2の断面へ連続して増大する断面形態を有する。混合要素は、さらなるステップで作られる。混合要素は、複数の層を含み、複数の層は、個別に事前製造され、且つ接続要素により混合要素を形成するようにともに接合される。層の表面構造を、1つの面に展開することができるとき、製造は単純化される。なぜなら、平坦なプレート形状のベース材料からの各層は、切断手段で切り出すことにより展開することができ、且つ次に表面構造の製造のための曲げ手段により折り畳むことができる。この製造は、特に金属材料の層に適している。プラスチックの層は、押し出し工程又は射出成形工程でそれらの折り畳まれた形態に製造され、且つその後、特に円錐状の混合要素である拡張する混合要素の形状に切断される。次のステップで、混合要素を形成するために接合された層は混合器内に配置される。混合要素が、既に組み立てられた状態の円錐状の流体案内手段にはめ込まれる場合は、溶接工程が最小限になる。混合要素を形成するためにともに接合される層は、混合器内に位置決めされる。円錐状混合器において、層の集中は円錐内で生ずるので、展開体から折り畳まれた層の組立も流体案内手段内で直接行うことができる。なぜなら、層の位置決めは、流体案内手段自体の円錐状の形状を通して行われ、互いに対する層の整列は、事前に決定されるからである。これとは異なり、混合要素全体を、射出成形工程又はロスト成形(loot mold)で製造することもできる。
【0023】
交差通路構造に対応する層の設計を用いる場合は、入口断面流れ経路で層が、内壁に隣接する層の一部の角度整列によって遮断されるので、デッド・スペースが生じる可能性がある。このために、ハウジング側の通路は、製造後、必要であるときチェックされ且つ開放される。混合要素とハウジングの内壁との間のギャップ(壁ギャップ)は、いわゆる「チャンネリング効果」が顕著には生じないように、各断面の2%以下の量であり、詳細には各断面の1%以下の量であり、特に好ましくは各断面の0.5%以下の量である。
【0024】
流体案内手段に対する壁ギャップは、2つの隣接界面の通常の間隔より小さく、特に表面拡大構造の流体通路の高さより小さくする必要がある。流体通路の高さは、表面拡大構造の縁部によって形成される2つの界面間の通常の間隔として定義される。壁ギャップは、例えば、流体通路の高さの半分の最大値に達する。
【0025】
入口開口の領域における光偏析現象によって、液体層を、いわゆる「ライザ・プレート(riser plate)」を介して中心内に再び案内されることができ、且つ混合器の断面にわたって分散することができる。これに関連して、「ライザ・プレート」は、流体案内手段の内側に固定され、特に流体案内手段の内側に溶接される設置要素として定義される。この設置要素は、流体案内手段の最も深い点で収集された成分を混合要素構成部品へ逆方向に案内するように作用する。これに関して、「設置要素」という用語はセクション、ランプ、プレートなどの特定の実施例を代表することを意図している。
【0026】
前述の各解決方法により、良好な分散効果及び/又は混合効果に加えて、圧力損失がわずかになる効果が得られる。
【0027】
有利な配置において、一定断面の管セクションに設置される混合要素、及び任意の1つの前述の実施例による混合要素は、互いに組み合わせることができる。混合効果を改善するために、従来の混合要素は、拡張する断面を有する流体案内手段を有する静的混合器内の入口前の管セクションに配置される。前述の各実施例により、2つの隣接する混合要素は、0°と90°との間、特に60°と90°との間の角度で互いに対して回転できるように配置することができる。流れのさらなる偏向を、回転によって生じさせることができ、少なくとも部分通路流れに関する実施例に関して有利であることが特に明らかとなった。
【0028】
混合要素の配置は、熱交換器の上流側、特に熱混合器の入口領域内に配置することができる。拡張混合要素で、流れは、流れの方向における拡大された平均断面積の全体にわたって均一に分布し、流れの均一性は、全断面にわたって確実にされる。
【0029】
混合要素は、触媒表面にわたる放出の分布のための放出物の脱窒素の方法、特に熱交換装置内のLNGガス処理のための冷凍媒などの気液混合物の導入のためのLNG(液体天然ガス)の製造方法に使用される。熱交換装置は、特に熱交換器、好ましくは管束熱交換器である。
【0030】
液体カルバミドは、放出物の脱窒素のために蒸発され且つ気体流れと混合される。蒸発及び混合の両方とも、静的混合器内で同時に行わせることができる。工程管理が組み合わされているので、混合された状態で次に行われる工程ステップのためのさらなる処理のためにカルバミド/気体混合物を供給することが必要である。他の応用可能な混合は、蒸発、及び拡張断面を有する静的混合器内で前記蒸発と同時に行われる液体の混合である。このタイプの混合器の使用は、混合された状態でより大きな直径への拡張で混合物を得るために、利用可能な空間が狭いプラントで特に有利である。
【0031】
冷媒は、天然ガス処理にさらに使用するために冷却されなければならない。冷媒は、様々な気体成分及び液体成分からなり、大半は、メタン及びエタンを含む。気体成分及び液体冷媒の混合物は、熱交換器、特に管束熱交換器へ通常管ラインにより案内され、熱交換器で、それは次にマルチパス(複数通路)システムを介して冷却される。通常、管束熱交換器の入口は、DN1500からDN2400(1.5mから2.4m)の寸法を有し、これは、混合物が、管束熱交換器の入口内へ円錐を介して実質的にDN600(0.6m)から拡張されることを意味する。熱交換器が、その全容量を利用することができるように、気体成分及び液体成分は、断面にわたって均一に混合され、且つ同じ部分で個別の管に供給されなければならない。熱交換器は実質的に、気体/液体混合物のために設計され、すなわち、気体/液体混合物は、熱交換器内への入口断面にわたる均一な分布を有するべきである。
【0032】
混合要素を自動車に適用する場合は、その触媒表面での触媒反応による汚染物、特に窒素酸化物(NOx)及び結合剤の触媒分離、触媒変換器への機関排気ガスの入口に関連する。排気装置内の静的混合器のための利用可能な空間は、自動車、特にトラックにおいて比較的小さいので、上述の拡張する断面を有する静的混合器は、追加の構造空間が必要ではないので、このような適用には非常に有利である。排気ガス及び液体及び/又は固体成分の偏析の問題は、放出物が、比較的小さい排気パイプからより大きな触媒変換器ハウジング内に開く排気システムでも生じる。触媒が、一方向に消耗されないようにするためには完全な蒸発及び良好な均一性が必要であるという課題があり、この課題は前述の実施例の1つによる圧力損失が小さい静的混合器を使用することにより解決することができる。
【0033】
前述の実施例のうちの1つによる混合要素のさらなる適用分野は、特に反応器内への単相又は複数相の流体混合物の入口のための拡張する断面で、触媒及び/又は有機物により生じた反応を実行するための化学反応技術である。気体成分及び液体成分は、反応器へ流れる前に分散されなければならない場合が多い。気泡床の生成及び成分の均一な分散の後で、流れは拡張される場合が多い。なぜなら、流れは、ライン直径に対して拡大された直径を有する触媒を含む反応器内に導入されるからである。静的混合器は、混合物の均一性を維持するために使用される。供給管から反応器容器内の入口断面への急激な断面変化と比較して静的混合器内では制動効果が低いので、気泡がより遅く合体することができる。
【0034】
静的混合器のさらなる使用は、気体液化の分野においてでる。気体液化において、様々な気体流れが、混合され、且つ次に複数管システム内に案内される。設計された適用において、気体は、DN600(0.6m)の管内で混合され、次にDN12000(12m)の直径のハウジング内の他の管内に均一に分割されなければならない。本出願時に知られている従来技術の、バッフルが、この目的のために使用される。各管が、同一の気体部分を受けるように、前の実施例のうちの1つによる静的混合器を使用できる。
【0035】
静的混合器の適用のさらなる領域は、ピストン流れが維持される、プラグ流れ反応器と称される反応器の分野である。このプラグ流れ反応器において、混合要素は、流体を、ピストン流れで円筒状ハウジングを通って確実に案内にする。直径を変更する、必要がある場合、ピストン流れは、混合要素の不足により円錐セクションで乱される。円錐セクション内の流れ特性は、円錐混合要素を使用することにより維持することができる。
【0036】
上述のように、前述の構造タイプの静的混合器を他の静的混合器と組み合わせて使用することができる。この場合の他の静的混合器とは、予混合器として作用し、且つ一定の断面展開、特に中空円筒状の断面展開を有する混合器である。個別の流体成分の混合は、円筒状構造の静的混合器で行われ、拡張する断面を有する静的混合器は、主に、拡張及び/又は混合物を均一に分散する機能を有する。
【0037】
圧力損失を低減するために、流れが管ライン内の流れよりも強い混合要素を複数個用い、各混合要素間に間隔を与えることもできる。個別の円錐状の混合要素間の距離を短かくすれば顕著な偏析を生ぜず、圧力損失無しに再び流れを分割するように作用する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】平坦な層の混合要素の第1の実施例を示す。
【図2】ジグザグ・セクションを有する層の混合要素の第2の実施例を示す。
【図3】平坦な層とジグザグ・セクションを有する層との組み合わせの混合要素の第3の実施例を示す。
【図4a】円錐状の混合器ハウジング内のジグザグ・セクションを有する層の設置を示す。
【図4b】ジグザグ・セクションを有する一連の層を通る断面を示す。
【図4c】ジグザグ・セクションを有する2つの交差層を示す。
【図5a】円錐状の中空本体を形成するジグザグ・セクションを有する第1の層を示す。
【図5b】円錐状の中空本体を形成するジグザグ・セクションを有する第2の層を示す。
【図6a】円錐状の混合器ハウジング内への図5aのジグザグ・セクションを有する層の設置を示す。
【図6b】流れの主方向に対して傾斜するジグザグ・セクションを有する周辺層を示す。
【図7】円錐状の静的混合器のための2つの混合要素の配置を示す。
【図8a】方形断面を有する流体案内手段を示す。
【図8b】矩形断面を有する流体案内手段を示す。
【図8c】開放して交差する流体通路を有する混合要素の2つの隣接層を示す。 本発明は、図面を参照して以下に説明される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0039】
混合要素の第1の実施例が図1に示される。流体案内手段又はハウジング1は、実質的に円錐形状を有し、且つ図1に示されるだけである。混合要素は、多数の台形の装置又は層2を含む。示される実施例における各層は、平坦な表面を有するものとして示されるが、前述された実施例の1つによる任意の所望の表面拡張構造は、少なくともいくつかの示される層上に設けられることができる。示される構成において、流体混合物の流れは、入口断面9から出口断面10へ層間の領域に案内され、矢印11は、流れの主方向を示す。流体混合物は、特に気体/液体混合物、或いは気体の混合物又は液体の混合物として理解されるべきである。各相は、さらに固体部分を含むことができる。流れは、流体案内手段の形状に一致する層2の整列によって、均一に拡張され且つ分散される。層の数及び間隔は、各層における混合効果に本質的に応じる。これは、次に流れ速度、特にそれらの密度又は粘性などの流れる成分の特性に特に影響される。摩擦効果は、結果として周辺領域及び壁領域でより少ない流量になる周辺流れが、生じるように、各層の壁及びハウジングで生じることができる。なぜなら、壁に近い流れは、摩擦効果のために主流れより低い速度を有するからである。示される実施例において、各層2は、保持デバイス7、8によって間隔を置いて保持される。示されていない他の実施例により、層は、プラグ接続又はクランプ接続によって実際の流体案内手段の内壁に締め付けられることもできる。円錐状に設計された流体案内手段内への層の取付けは、層が、保持デバイスでアセンブリされ、次いでプレハブ方式で製造された混合要素12としてハウジング内に挿入されることにより行われることができる。ハウジング1の円錐状形状は、したがって、このようにプレハブ方式で製造された混合要素12の中心合わせも行う。
【0040】
ジグザグ・セクションを有する層の混合要素を有する第2の実施例は、図2に示される。図2において、理解を容易するため、そのような層(3、4)が2つだけ示されている。流れる混合物は、V形状の流体通路を形成する層を通って案内される。示される場合において、層3は、層4上の共通縁部15に沿って支持される。1つの縁部15が、層4に属し、図において上方ハウジング壁として示される流体案内手段の方向に、矢印11によって示される流れの主方向に対して垂直に面する。1つの縁部15が層3に属し、したがって層4の縁部15と線接触する。それぞれ層を形成するジグザグ・セクションの部分表面(13、14)は、縁部で合流し且つそれを通って混合されるべき成分が流れる流体通路を形成する。したがって流れ経路は、部分表面(13、14)によって境界を付けられる。隣接する層の縁部が、入口断面9と出口断面10との間の全流れにわたって互いに接触するとき、隣接する層によって閉鎖され、且つ2つのそれぞれ開放する流体通路(5、6)で作られる流れ経路が形成される。このように閉じた流れ経路は、実質的にダイヤモンド形状の断面を有する。構成を単純にしたこと又は個別の流れが改善されたことにより、図1に示されるのと類似する態様で、層(3、4)間に空間を設けることができる。互いの上に配置された2つの隣接する層の縁部15は、次に、互いにもはや接触せず、共通縁部15がもはや形成されない。開放流体通路は、次に、部分表面(13、14)によって形成される。
【0041】
層(3、4)の締め付け、並びに図2に示されていないさらなる層は、図1に示されるような同じ据え付け手段によって行われることができ、溶接による接続、特にスポット溶接による接続及び/又ははんだによる接続及び/又は接着接合による接続などによって行なうこともできる。
【0042】
流れ偏向及び混合を改善するために、通路に、示されていない流れ偏向手段を設けることもできる。流体通路内に挿入され且つバルク材料の態様で分散された穿孔された金属シート、通路壁内の突出部、タブ、又は表面拡大構造は、特にこの目的のために設けられる。このタイプの構造は、気体/液体吸収の際にカラムを取り付けるために用いられ、特に、ラシヒ(Rasching)リング、バールサドル(Berl saddle)、インタロックスサドル(Intalox saddle)、パールリング(Pall ring)、テラーレッテ(Tellerette)構造である。また、流れ偏向構造、特に延伸された金属と共に、前述の混合要素の概略的な記載において説明した構造のうちの1つと匹敵する構造を、層自体に設けることもできる。
【0043】
図3による第3の実施例は、平坦な複数の層2と、部分表面(13、14)、特にジグザグ・セクションを有する層との組み合わせの混合要素を含む。理解を容易するために層2は1つだけ示している。平坦な層2の代わりに、ジグザグ・セクションを有する部分表面とは異なる部分表面を有する層を使用することもできる。閉鎖された流体通路が、層4によって及び2つの層2によって形成される。層4の縁部15は、層2に接触するが、層3の縁部15には接触しない。したがって流体通路は、実質的に三角形断面になる。混合要素の拡張断面に相似して、隣接層(2、3、4)によって形成される流体通路の断面は、流れの主方向に連続して増大する。流体通路を形成する層を有する混合要素の利点は、圧力損失が低いこと、及び簡単な構造設計を有する均一な混合物を生成及び/又は維持することである。流れる媒体は、流体案内手段によって予じめ前決定された流れ経路の行程に従わなければならない。したがって流れる混合物の成分は、化学反応が静的混合器内に生じない限り、連続の方程式に従がい流体通路を通って一定である。流れは、短い期間の間に流体案内手段内だけに生じる。なぜなら、流体案内手段は、通常、流体をより小さい直径の第1の断面からより大きな直径の第2の断面へ移動させるだけであるからである。したがって、経路は、流体案内手段を通る流れに沿って偏析が顕著に生ずる程は長くない。流れの各部分は全て、流体通路の端部にほぼ一致する出口断面10へ案内される。
【0044】
速い流れ速度により渦を、出口断面の面に位置する流体通路の端部でカルマン渦の原理により放出することができ、それによって混合を、より改善することができる。
【0045】
図4aに示すさらに有利な実施例により、図2に示した2つの隣接縁部15、又は図3に示した複数の縁部15であって各縁部15の間に配置された層2を有する各縁部15の線形接触は無いが、図4cに示したようにジグザグ・セクションを有する2つの交差する隣接層(3、4)が、縁部15が1ヵ所でのみ互いに接触することにより、より良好な混合を行なうことができる。この1ヵ所でのみの接触は、縁部15の接触点17で生じ、この接触によって、2つの隣接層(3、4)が、互いにある角度に配置される。これにより、第1の層3に属する縁部15は、層4の縁部15と1つの接触点17を有するのみとなる。隣接層の2つの縁部15間の角度αは、0°から120°との間、特に60°と90°との間にある。特に有利な実施例において、層3の一縁部15は、一方の側部に対してα/2だけ傾斜し、隣接層4の一縁部は、流れの主方向に対して他方の側部に対してα/2だけ傾斜する。この配置は、スイス国特許第547120号明細書に記載されるように後で述べる「交差通路構造(cross−passage structure)」を生成する。図4a、図4b、又は図4cの実施例における層3の縁部は、層の界面16と呼ばれる面を形成する。界面は、隣接層が共通界面を形成するように、隣接層が配置されたとき、隣接層の接触点を全て含む。この実施例による交差通路構造としても知られるこの配置の実質的な利点は、流れる混合物は、前に示される変形例と同じ流体通路内を常に流れるとは限らず、毎回他の流体通路に配置され、すなわち流体通路を連続して変化することに見出される。流れる混合物は前の実施例におけるより実質的により著しく逸らされ、その結果として混合におけるさらなる改善を生じる。ジグザグ・セクション及び平坦な界面を有する層(3、4)のはめあい図4aに示され、この図4のにおいては各層3が一つ置きに示され隣接層4は図示を明瞭にするために省略されている。流れの主方向に垂直な断面で測定される2つの隣接縁部の最も短い間隔が、入口断面9から出口断面10に連続して増大するように、層が作られる。流れの主方向に垂直な断面で測定される2つの隣接境界16間の通常の間隔が、入口断面9から出口断面10に連続して増大し、又は一定に維持されることも同様に可能であり、それによって層の界面は、互いに平行になる。図4aに示される実施例によれば、隣接界面は、入口断面9から出口断面10に向かってディフューザの態様で拡張される。
【0046】
少なくともいくつかの接触点17は、混合要素を形成するためにともに隣接層(3、4)を接合するために溶接スポットとして作成することができる。
【0047】
さらなる変形例によれば、隣接縁部(3、4)の界面16は、一致せず隣接層が互いに接触しないように、互いに対して小さな間隔で離れている。この変形によれば、流れる混合物のうちの一部は完全には偏向されず、その結果、流速はほんのわずかしか低下しない。混合に対する効果は、混合されるべき成分、異なる相の割合、及び偏析への傾向に依存する。静的混合器の圧力損失は、層の間隔の変化によっても影響を受ける。
【0048】
可能であれば、ごく僅かの空間が層3と内壁との間に残るように、層は、図4aに示されるように流体案内手段の内壁に直接隣接すべきである。層3の線形接触で、円錐セクション、すなわち内壁に対する層の傾斜に応じて、楕円状、放物線状、又は双曲線境界ラインは、平坦な又は任意の所望の態様で折り畳まれ、且つ平坦なセグメントから作られ、且つ図5a及び図5bで示される円錐状内壁を有する層の部分曲線となる。1つの層が図5aに示される上述の各層は、一つの平面として展開することができる。展開は、ドロー系グラフィックツールを用いて混合器内の層の所望位置から生成することができる。これらの展開は、各角度が異なり且つしたがって非常に複雑な曲げ処理が必要である場合にも層を安価に製造可能とするために、境界ラインの他に曲げラインも含む。図5aには、交差通路構造を通る断面を示しており、第2の層3だけを図4aの場合と同様に一つ置きに示している。このような交差通路構造に対応する層を用いると、流れ経路の入口断面10での層が、内壁に隣接する層の一部分の角度配置構造によって遮断されるので、デッド・スペースを生じ得ることとなる。従って、ハウジング側方、すなわち内壁上の通路は、層を組立てて混合要素を形成した後に必要に応じて閉鎖・開放される。混合要素と流体案内手段1の内壁との間のギャップ(壁ギャップ)は、いわゆる「チャンネリング効果」が顕著には生じないように、2つの隣接界面16の通常の間隔より小さく、特に表面拡大構造、特に図示されるジグザグ・セクションの流体通路(5、6)の高さより小さい。
【0049】
混合要素の境界領域における層3を、図5bに示す。層3は、流体案内手段の内壁に隣接する部分曲線18を有する。層の部分表面(13、14)が、内壁に直接隣接するなら、流体通路5を通る流れは起きない。したがって、これら部分表面は、内壁から少なくとも部分的にある間隔をもって配置され、又は混合要素を組立てた後の流れのために開放される。
【0050】
図6a及び図6bに示すさらなる実施例の場合、各層は、表面拡大構造を有する中空本体19を形成する。中空本体19の表面拡大構造、特にリブ、ぎざぎざ、又は波は、流れの主方向に対して0°から180°の角度で傾斜される。このタイプの中空本体を複数個用い、それらを、互いにプラグ接続可能なように作成することができる。図示した例の場合、中空本体19は、中空本体20にプラグ接続され、該中空本体20と完全に一体にすることができる。図示した実施例において、中空本体(19、20)は、ジグザグ・セクションを有する。外側にも内側にも向けられた縁部は、それぞれ円錐状の界面を形成する。中空本体19の寸法が、中空本体20よりもかなり大きな場合、中空本体20の内側界面が、中空本体19の外側界面内に位置することとなり、混合要素が設置された状態で中空本体上を流れる媒体に力が加わる場合であっても、溶接スポットや締め付けデバイスなどの中空本体を固定するための手段を全く不要とするために、2つの中空本体(19、20)は傾けられて設置される。締め付け力は、動作中に層の位置が変化しないことを確実にする。設置の場所の環境の条件面で可能であれば、流れの主軸が実質的に垂直であるこのタイプの混合要素は、混合物を、底部から頂部へ静的混合器を通って流れるように設置することができる。層が、軽金属又はプラスチックなどの軽い材料で作られるので、層が、互いに対して変位され、又は流れによって出口断面を通って沿って均一に搬送される危険性があるなら、保持デバイスを、出口断面11の領域内に任意に設けることができる。
【0051】
図7は、互いに直接隣接するように配置される円錐状の静的混合器のための2つの混合要素12を示す。これらの混合要素は、特に前の実施例のうちの1つによるジグザグ・セクションを有する層3で作られ、隣接層は、0°以外の角度で互いに対して傾斜される。各混合要素12は、高い安定性を有する。なぜなら、層は、互いに支持し、且つ流体案内手段の内壁によって支持されるからである。流れの主方向は、矢印11によって示される。
【0052】
図示されていないさらなる変形例により、2つの混合要素12は、互いからある間隔で配置されることもできる。
【0053】
図8aは方形断面を有する流体案内手段を示している。断面表面は、入口断面9から出口断面10へ連続して増大する。方形の各側方長さは、連続して増大する。
【0054】
図8bは矩形断面を有する流体案内手段を示している。断面表面は、入口断面9から出口断面10へ連続して増大する。1つ置きの矩形断面の側方長さだけが連続して増大しており、図8bにおいて、これは、側方長さ21である。図8bにおいて、混合要素の層の界面16が示されている。
【0055】
図8cは、図8a又は図8bに示される実施例の1つのためのジグザグ・セクションを有する2つの隣接する層(3、4)の配置を示す。その他の層は、図8cを明瞭にするためにそれらの界面16によって示されるだけである。この変形例において、部分的に平坦なジャケット表面を備える流体案内手段1を有する混合要素の製造コストを安くするため、流体案内手段1の内壁に隣接する周辺層の実行のための特定の機械加工ステップを必要としない。図4aから図4cを用いて説明したジグザグ・セクションを用いてもよい。これらのジグザグ・セクションは、入口断面9から出口断面10への個別層の通路の拡張に関して、本明細書において言及された層の全ての他の実施例についても用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 流体案内手段
2 層
3 層
4 層
5 流体通路
6 流体通路
7 保持デバイス
8 保持デバイス
9 入口断面
10 出口断面
11 矢印
12 混合要素
13 部分表面
14 部分表面
15 縁部
16 界面
17 接触点
18 部分曲線
19 中空本体
20 中空本体
21 側方長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口開口(9)内の流れの主方向(11)に対して垂直な第1の断面を有する少なくとも2つの成分のための入口開口(9)と、出口開口(10)内の前記流れの主方向(11)に対して垂直な第2の断面を有する混合物のための出口開口(10)とを含む、流体案内手段(1)内に設置する混合要素(12)であって、前記混合要素(12)は、前記第1の断面から前記第2の断面へ連続して増大する断面展開部を有し、前記連続して拡張する流体案内手段(1)内へ前記混合要素(12)が正確にはめ込まれるように、流れを分割する層(2、3、4)が、前記混合要素内に配置されることを特徴とする混合要素。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図8c】
image rotate


【公開番号】特開2012−206123(P2012−206123A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167938(P2012−167938)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2007−128225(P2007−128225)の分割
【原出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(505150095)スルザー ケムテック アクチェンゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】