説明

静脈フィルタ

【課題】血管内フィルタ、特に管内の血栓を捕捉するための静脈フィルタを提供する。
【解決手段】本発明による血管フィルタは、第1の領域及び第2の領域を含み、前記第1の領域は、粒子を捕捉するためのフィルタ区域を含み、かつ第1の横方向寸法を有し、前記第2の領域は、フィルタを血管内に取り付けるための取付区域を含み、前記取付区域は、前記第1の横方向寸法よりも大きな第2の横方向寸法を有し、かつフィルタを保持するための血管係合構造を含み、前記第1の領域は、更に、回収領域を含み、該回収領域は、回収鞘の一部分を受けるような寸法を有する環状内面を露出する切り欠きを有するフックを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、5/18/04出願の米国特許仮出願出願番号第60/572,274号からの優先権を請求し、かつ2004年1月22日出願の米国特許仮出願出願番号第60/538,379号からの優先権を請求する2004年3月22日出願の米国特許出願出願番号第10/805,796号の一部継続出願である。これらの出願の全内容は、本明細書において引用により組み込まれている。
本出願は、血管内フィルタ、詳細には管内の血栓を捕捉するための静脈フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
血栓が肺に入ることは、肺塞栓症として公知である。このような血塊は、通常下肢静脈で生じ、脈管系を通って肺へ移動することができ、そこで血流を遮断して血液の酸素化を妨げる可能性がある。肺塞栓症はまた、ショックを引き起こして死に至る可能性さえある。
いくつかの事例では、血液の抗凝固薬、例えば、ヘパリン又はワルファリン・ナトリウムのような抗凝血薬を患者に投与することができる。しかし、このような薬物は、手術又は発作後の患者に投与すること、又は内出血の危険性の高い患者に与えることはできない場合があるので使用が制限されている。また、この薬物療法が、血栓の再発防止に必ずしも有効であるとは限らない。
【0003】
従って、血栓が肺に到達するのを実際に防止することによってこのような肺塞栓症を予防する外科的な方法が開発されている。1つの外科的な方法は、静脈、例えば、血液を体の下部から心臓及び肺へ輸送する下大静脈の周りに結紮糸又はクリップを設置して管腔の大きさを制限する大手術を伴うものであった。このようにして、危険なほど大きい血栓が静脈から肺へ通ることが防がれた。しかし、このような手法は、腹部切開及び全身麻酔を必要とし、かつ頻繁に血管の血栓症及び下肢の腫脹を引き起こす侵襲性の外科的処置である。また、このような大手術には、患者の回復に長い時間を要し、入院及び手術の費用が余分に掛かることになる。実際に、多くの場合に手術を要する患者は病身であり、大手術及び全身麻酔それ自体に、かつそれ自体の危険性がある。
【0004】
このような侵襲性の手術を避けるために、より少ない侵襲性の技術が開発されてきた。これらには、下大静脈に機械的障壁を設置することが含まれる。これらの障壁は、フィルタの形態であり、通常は局所麻酔下で患者の足の大腿静脈、患者の首の右頚静脈、又は腕から挿入される。フィルタは、その後血管内を下大静脈まで進められ、そこで広げられて身体の下部から心臓及び肺へ血栓が移動するのを阻止する。
【0005】
これらの従来のフィルタは様々な形態をとる。フィルタの1つの型は、米国特許第5,893,869号及び第6,059,825号に開示されているようなコイル状のワイヤで構成されている。別の型のフィルタは、フィルタを保持するために血管壁に埋め込む固定を有する自由端の付いた脚から成る。これらのフィルタは、例えば、米国特許第4,688,553号、第4,781,173号、第4,832,055号、及び第5,059,205号、第5,984,947号、及び第6,007,558号に開示されている。別の型のフィルタは、半径方向の力を及ぼすために互いにより合わされて血管内壁表面に適合する円筒形の固定部分を形成するワイヤ、及び円錐形のフィルタ部分から成り、米国特許第6,214,025号に開示されている。
【0006】
静脈フィルタの設計にはいくつかの要素が考慮されるべきである。1つの要素として、フィルタが血管壁内に確実に固定され、同時に壁への外傷性の係合及び損傷、並びに隣接する腹部大動脈への損傷を避ける必要がある。別の要素として、フィルタは、容易に操作され、組織を傷つけることなく下大静脈又は他の目標とする管まで血管内を進められるように十分に小さく折り畳めなければならない。3つ目に、フィルタは、血栓を血管の中心へ向かわせ、血流による血管内での塊の溶解を向上させるべきである。
【0007】
上述のパラメータを満たす静脈フィルタを提供することは有利であろう。つまり、そのような静脈フィルタは、有利な態様においては、血管壁と非外傷的な接触をもたらしながらフィルタを血管内に保持するのに十分な固定する力を有し、手術部位まで脈管系を通る送出を容易にするための最小挿入(折り畳み)プロフィールを有し、捕捉した血栓の血管の中心への移動を可能にすると考えられる。更に、大腿部又は右頚部の静脈又は腕を通る下大静脈内への挿入を簡単にすることができるフィルタを提供することもまた有利であろう。
【0008】
更に、多くの患者において、静脈フィルタの必要性は一時的なものである。このような場合、上述の要素を満たした上で、更に患者から容易に取り除くことができる静脈フィルタを提供することが有利であろう。従って、フィルタは、有利な態様においては、十分な固定を提供すると同時に、一定期間の後には血管から非外傷的に取り除くことを可能にする構造を有するという均衡を達成するものである。更に、フィルタを最小の侵襲性で、例えば血管内で取り除くことができれば有利であろう。
一時的であるフィルタは、通常は、フィルタを回収鞘に引き入れる回収係蹄によって取り除かれる。係蹄による把持を容易にし、並びに回収鞘内への滑らかな移行をもたらすことにより引き抜きを容易にするフィルタを提供することが有利であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第60/572,274号
【特許文献2】米国特許仮出願出願番号第60/538,379号
【特許文献3】米国特許出願出願番号第10/805,796号
【特許文献4】米国特許第5,893,869号
【特許文献5】米国特許第6,059,825号
【特許文献6】米国特許第4,688,553号
【特許文献7】米国特許第4,781,173号
【特許文献8】米国特許第4,832,055号
【特許文献9】米国特許第5,059,205号
【特許文献10】米国特許第5,984,947号
【特許文献11】米国特許第6,007,558号
【特許文献12】米国特許第6,214,025号
【特許文献13】米国特許出願番号2002−0193827−A1
【特許文献14】米国特許出願出願番号第09/911,097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術の問題及び欠陥を克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、血管へ送出するための折り畳まれた位置と血管内で配置するための拡張された位置との間を移動可能な血管フィルタを提供する。フィルタは、粒子をフィルタの中央に向けるための収束領域を有するフィルタ部分を有する第1の領域を有する。第1の領域は、複数の離間した伸長ストラットと、伸長ストラットからある一定の角度で延びる複数の結合ストラットとを含む。
隣接する結合ストラットは、接合して第1の領域において閉じた幾何学形状を形成する。
フィルタの第2の領域は、拡張位置で広がり、フィルタ部分の反対側の第2の端部部分に向けて横方向寸法が増大し、第2の端部部分で血管係合部分を含むものである。
好ましい実施形態では、1つの伸長ストラットから延びる結合ストラットは、隣接する伸長ストラットの結合ストラットの方へ角度を成し、結合ストラットは、接合領域で接合され、接合領域の各々から1つの伸長ストラットが延びている。一実施形態では、閉じた幾何学形状は、実質的に6角形の区域である。別の実施形態では、閉じた幾何学形状は、実質的にダイヤモンド形の区域である。1つ又はそれ以上のストラットは、血管係合フックで終端することが好ましい。
【0012】
一実施形態では、第2の領域において、隣接するストラットは、ストラットに対してある一定角度で延びる相互結合ストラットによって結合される。この実施形態では、好ましくは、1つのストラットから延びる相互結合ストラットは、隣接するストラットの相互結合ストラットの方向にある一定角度を成し、血管係合構造で終端する結合領域でストラットを接合する。
一実施形態では、結合ストラットの各々は、第1の領域のストラットを実質的に等しい2つの結合ストラットに分割することによって形成され、この結合ストラットは、接合して第2の領域を通って延びる伸長ストラットへ移行する。一実施形態では、隣接するストラットの結合ストラットは、中間領域で接合し、更に互いに離れるように延びて別の結合ストラットと接合し、第2の組の閉じた幾何学形状を形成する。
フィルタは、レーザカットチューブから形成されるのが好ましく、形状記憶材料から成るのが好ましい。
一実施形態では、結合ストラットは、接合領域で接合され、伸長取付ストラットは、第2の領域を通って接合領域から延びる。
【0013】
本発明はまた、血管へ送出するための折り畳まれた位置と血管内に配置するための拡張された位置との間を移動可能な血管フィルタを提供する。フィルタの第1の領域は、収束領域を有するフィルタ部分を有し、フィルタの第2の領域は、フィルタを血管内に取り付けるための取付部分を有する。第1の領域は、1つの伸長ストラットの結合ストラットが隣接する伸長ストラットの結合ストラットと接合するように、異なる方向に延びる結合ストラットに分かれる複数の伸長ストラットを含む。
【0014】
好ましくは、フィルタは、拡張された位置において実質的にベル形であり、取付部分は、張り出し領域を含み、従って、フィルタが拡張された位置にある時に、取付部分は、フィルタ部分よりも大きな横方向寸法を有し、従って、フィルタの第1の終端部は、フィルタの第2の終端部よりも小さな横方向寸法を有する。一実施形態では、結合ストラットは、更に延びて別の結合ストラットに接合する。一実施形態では、接合した結合ストラットは、第2の領域まで延びて取付部分ストラットを形成し、取付部分ストラットは、それに対してある一定角度で延びる2つの相互結合ストラットに分かれ、隣接する相互結合ストラットは接合される。
第1の領域は、好ましくは、環状内面を露出する切り欠きを有するフックを含む回収領域を含み、この環状面は、回収鞘の一部分を受けるような寸法にされている。回収領域は、遠位側に内方へ延びる第1及び第2の曲面を有する丸みを付けた領域を更に含むことができる。
取付部分は、フィルタの保持を強化させるためにフックの形態の血管係合部材を含むことが好ましい。一実施形態では、血管係合部材は、第1の組のフックと第2の組のフックを含み、各組のフックは、取付部分の端部又は第2の終端部に位置決めされ、第1の組のフックは、第2の組のフックの横方向寸法よりも大きな横方向寸法を有する。一実施形態では、第1の組のフックは、第2の組のフックから軸線方向にずれており、第2の組の各フックは、第2の組の他のフックに対して軸線方向にずれている。
【0015】
本発明はまた、血管へ送出するための折り畳まれた位置と血管内に配置するための拡張された位置との間を移動可能な血管フィルタを提供する。フィルタの第1の領域は、粒子をフィルタの中央へ向けるための収束領域を有するフィルタ部分を有し、複数の離間したフィルタストラットと、フィルタストラットからある一定角度で延びて隣接するフィルタストラットに接合する複数の結合フィルタストラットとを含む。拡張された位置におけるフィルタの第2の領域は、フィルタ部分と反対側の第2の端部部分へ向って横方向寸法が増大する。第2の領域は、複数の離間した取付ストラットと、取付ストラットからある一定角度で延びて隣接する取付ストラットに接合する複数の結合取付ストラットとを含む。
好ましくは、フィルタは、第2の端部部分において、隣接する結合取付ストラットが接合する領域から延びる血管係合部分を含む。好ましくは、第1の領域は、回収鞘の一部分を受けるような寸法にされた環状内面を露出する切り欠きを有するフックを含む回収領域を更に含む。
【0016】
本発明はまた、複数の伸長ストラットを作り出すために切断される単一のチューブから作られた本体を含む血管フィルタを提供する。ストラットは、伸長領域と第1及び第2の傾斜領域とを有する。第1の傾斜領域は、本体のフィルタ領域に相互結合ストラットを有して閉じた幾何学形状を形成し、第2の傾斜領域は、本体の取付領域に相互結合ストラットを有する。フィルタ領域にある相互結合ストラットの領域は、取付領域にある相互結合ストラットを有する領域の横方向寸法よりも小さな横方向寸法を有する。
切断されたチューブは、好ましくは、環状内面を露出する切り欠きを有するフックを含む回収領域と、取付領域に血管係合フックとを更に含む。
好ましい実施形態では、上述のフィルタは、形状記憶材料から成るレーザカットチューブから形成される。
本開示の好ましい実施形態をここで図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】折り畳まれた構成の本発明の静脈フィルタの第1の実施形態の斜視図である。
【図2】図1の静脈フィルタの一部分の拡大側面図である。
【図3】拡張された構成の図1の静脈フィルタの斜視図である。
【図4A】別の拡張された構成の図1の静脈フィルタの側面図である。
【図4B】拡張された構成の図4の静脈フィルタの正面図である。
【図5】拡張された構成の図3の静脈フィルタの側面図である。
【図6A】尖った端部を有する固定要素の一実施形態を示すストラットの一部分の拡大図である。
【図6B】半球状の切り欠きの形態の固定要素の別の実施形態を示すストラットの1つの一部分の拡大図である。
【図7】拡張された構成で示された本発明の静脈フィルタの代替的実施形態の斜視図である。
【図8】図7の静脈フィルタの側面図である。
【図9】折り畳まれた構成で示された図7の静脈フィルタの一部分の側面図である。
【図10】拡張された構成で示された本発明の静脈フィルタの別の代替的実施形態の斜視図である。
【図11A】拡張された構成で示された本発明の静脈フィルタの更に別の代替的実施形態の斜視図である。
【図11B】フックの代替的実施形態を示す図11Aと同様の図である。
【図11C】フックの別の代替的実施形態を示す図11Aと同様の図である。
【図11D】本発明のフィルタの更に別の代替的実施形態を示す図11Aと同様の図である。
【図11E】折り畳まれた位置での図11Dの静脈フィルタの斜視図である。
【図11F】図11Dの保持フックの拡大図である。
【図11G】図11Dの保持フックを有する図7のフィルタの代替的実施形態の斜視図である。
【図11H】折り畳まれた位置での図11Gの保持フックの拡大図である。
【図12A】回収係蹄を受けるための一連の切り欠きを有するフィルタの端部の代替的実施形態の拡大斜視図である。
【図12B】回収係蹄を受けるための切り欠きを有するフィルタの端部の代替的実施形態の拡大斜視図である。
【図12C】コイルの間の切り欠きの1つに配置された回収係蹄を示す図12Bの実施形態の側面図である。
【図13A】回収係蹄を受けるフックを有するフィルタの端部の別の代替的実施形態の拡大斜視図である。
【図13B】回収係蹄を受けるフックの別の代替的実施形態を示すフィルタの端部の斜視図である。
【図13C】回収係蹄を受けるフックの代替的実施形態の斜視図である。
【図13D】回収係蹄を受けるフックの代替的実施形態の上面図である。
【図13E】図13Cのフックの代替的実施形態の上面図である。
【図13F】回収係蹄を受けるフックの別の代替的実施形態の斜視図である。
【図13G】回収係蹄を受けるフックの別の代替的実施形態の側面図である。
【図13H】係蹄が1つの向きから近づく時に回収係蹄を利用してフィルタを取り除くために図13Fのフックを係合させる方法の段階を示す側面図である。
【図13I】係蹄が1つの向きから近づく時に回収係蹄を利用してフィルタを取り除くために図13Fのフックを係合させる方法の段階を示す側面図である。
【図13J】係蹄が1つの向きから近づく時に回収係蹄を利用してフィルタを取り除くために図13Fのフックを係合させる方法の段階を示す側面図である。
【図13K】係蹄が図13Hの向きと反対の向きから近づく時に回収係蹄を利用してフィルタを取り除くために図13Fのフックを係合させる方法の段階を示す側面図である。
【図13L】係蹄が図13Hの向きと反対の向きから近づく時に回収係蹄を利用してフィルタを取り除くために図13Fのフックを係合させる方法の段階を示す側面図である。
【図13M】係蹄が図13Hの向きと反対の向きから近づく時に回収係蹄を利用してフィルタを取り除くために図13Fのフックを係合させる方法の段階を示す側面図である。
【図13N】係蹄が図13Hの向きと反対の向きから近づく時に回収係蹄を利用してフィルタを取り除くために図13Fのフックを係合させる方法の段階を示す側面図である。
【図14】下大静脈への図1の血管フィルタの送出及び配置を示し、かつ大腿静脈を通る送出鞘の初めの挿入を示す図である。
【図15】下大静脈への図1の血管フィルタの送出及び配置を示し、かつ送出鞘が腎動脈の接合点の直ぐ下(上流)の下大静脈へ向って進められている図である。
【図16】下大静脈への図1の血管フィルタの送出及び配置を示し、かつ送出鞘が下大静脈に拡張された配置構成でフィルタを配置するために完全に引き抜かれた図である。
【図17】静脈フィルタのための送出システムの一実施形態の斜視図である。
【図18】図17の送出システムの分解組立図である。
【図19】ハブ付きカートリッジの連動レールの係合を示す断面図である。
【図20A】フィルタが拡張された構成で示された、フィルタ部分に相互結合ストラットを有する本発明のフィルタの代替的実施形態の斜視図である。
【図20B】図20Aのフィルタの正面図である。
【図20C】図20Aのフィルタの側面図である。
【図20D】折り畳まれた構成で示された図20Aのフィルタの斜視図である。
【図20E】保持フックを示す図20Dのフィルタの端部部分の拡大図である。
【図20F】保持フックの軸線方向の関係を示す図20Dのフィルタの端部部分の拡大展開図である。
【図21】フィルタ部分に相互結合ストラットを有するフィルタの別の代替的実施形態の斜視図である。
【図22A】フィルタ部分及び取付部分に相互結合ストラットを有する本発明のフィルタの別の代替的実施形態の斜視図である。
【図22B】図22Aのフィルタの正面図である。
【図22C】図22Aのフィルタの側面図である。
【図22D】折り畳まれた構成で示された図22Aのフィルタの斜視図である。
【図22E】折り畳まれた構成の図22Dのフィルタの端部領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、いくつかの図を通じて同じ数字が同様又は同じ構成要素を示す図面を見ると、そうでなければ肺へ通ることができるであろう血栓又は他の粒子を捕捉するために下大静脈内に設置される本発明の静脈フィルタの様々な実施形態が示されている。
フィルタは、送出鞘を通しての挿入を容易にする扁平の折り畳まれた構成から、血管壁と非外傷的に係合して下大静脈内にフィルタを固定(取り付け)することができるようにする大きく拡張された配置構成へ移動可能である。フィルタは、実質的にベル形であるのが好ましく、張り出し領域又は取付領域(部分/区域)及びフィルタ領域(部分/区域)を有するのが好ましい。以下により詳細に示すように、フィルタ部分は、内方に向うストラットを有し、収束領域で終端し、それによって粒子をフィルタの中心軸線へ向ける。粒子を中央に向けることにより、粒子の溶解を向上させるより強い血流に曝すことになるであろう。他の部分は、横方向寸法が増大して張り出し領域を形成する。張り出しは、直線的な領域よりも接触面積が少なく、内に伸びる組織が少ないために、必要な場合にフィルタの取り外しを容易にする。張り出しはまた、湾曲した静脈に挿入される場合の管の捩れを起こりにくくする。
【0019】
ここで、図1及び図2をまず参照して本発明のフィルタの詳細を見ると、フィルタは、全体的に参照番号10で表わされ、送出するための折り畳まれた構成で示されている。フィルタ10は、単一のチューブ11で形成されるのが好ましい。好ましい実施形態では、フィルタ10は、ニチノール、ニッケルチタン合金、又は「elgiloy」のような形状記憶材料から成るが、ステンレススチールのような他の材料もまた考えられる。複数の切り欠き12が、好ましくはレーザカットによってフィルタ10に形成されるが、他の技術も考えられる。図示の実施形態では、6つの細長い切り欠きが形成され、切り欠き12によって分けられて管状部分18から延びている実質的に一様な幅の6つのストリップ又はストラット14を作り出す。
【0020】
フィルタ10の折り畳まれた構成は、全体のプロフィールを縮小して部位までの送出を容易にする。折り畳まれた構成でのフィルタ10の直径又は横方向寸法は、参照記号D1に示されており、好ましくは約2mmであり、更に好ましくは約1.7mmである。他の大きさもまた考えられる。拡張された配置構成(例えば、図4A及び5)の直径又は横方向寸法は、折り畳まれた(送出)構成の直径又は横方向寸法よりも大きい。フィルタは、従って、6フレンチの送出システム及び6フレンチのカテーテルを通した挿入に合わせた寸法にされるのが好ましい。
【0021】
図3〜5は、フィルタ10の拡張された配置構成を示している。フィルタ10は、一般的にベル形の構成である。フィルタ10は、張り出し領域17とフィルタ区域19に収束領域21を有する。張り出し(又は取付/固定)領域17でのフィルタの横方向寸法は、従って、フィルタ区域19での横方向寸法よりも大きい。より大きな血管においては、フィルタは、図5に示されている直径D2まで広げることができる。より小さい血管においては、フィルタは、例えば図4に示されているD3のようなより小さい直径まで広げられる。直径(又は横方向寸法)D2−D3は、以下に詳しく説明するように、血管の内径によって約18mmから約32mmまでの範囲であることが好ましい。他の寸法もまた考えられる。
【0022】
伸長ストラット14は、図示のように間隔が空いており、張り出しを提供する領域17では、フィルタ10の縦軸線Lからある一定角度で延びている。好ましくは、この角度又はテーパは約10°であるが、他の寸法も考えられる。フィルタの中間部分(第1及び第2の領域17及び19間の移行部)で始まるフィルタ領域19においては、ストラット14は、縦軸線に向けて内方に湾曲し又は曲がり(領域23)、その後、管状部分18に対してある一定角度で内方に延び、それによって縦軸線とある一定角度を形成する。図示の実施形態では、拡張時に、6つのストラット14は、約60度離間して示されている。より少ない又はより多い数のストラットが設けられて、60度以外の間隔であることも考えられる。
【0023】
拡張された配置構成において、各伸長ストラット14の一部分は、血管壁と係合するための外面20を有してフィルタ10を血管内に保持する。この領域は、縦軸線に対してある一定角度をなしている。ストラット14の外面20は、係合を容易にするために租面にすることもできる。代替的に、複数の非外傷性タブ、返し、他の穿通性の部材がストラット14の外面20から延びて血管壁と係合し、フィルタを保持することもできる。図6Bにおいて、フィルタは、ストラット154の長さに沿って形成された一連の半球状の切り欠き152を有し、血管壁と係合する尖った縁部156を形成する。切り欠き152は、ストラット154の長さに沿って形成するか又は代わりに長さの一部分に沿ってのみ形成することができる。切り欠きはまた、全てのストラットには形成しないこともある。
【0024】
図6Aの実施形態では、フィルタは、ストラット164の端部にある切り欠き163によって形成された固定要素162を有する。固定要素162は、尖った端部165を有する。折り畳まれた構成において、固定要素162及びそれらの尖った端部165は、ストラット164と一直線に並んでおり、実質的にフィルタの縦軸線と平行になって縮小されたプロフィールを維持している。フィルタが拡張された構成に転じると、尖った端部165は、図6Aに示すように外側を向く。固定要素162は、ストラットの端部又は他の位置に配置することができる。固定要素はまた、図とは反対方向に配置されることもある。
【0025】
図11Aの実施形態では、フィルタ170のストラット174は、ストラットから実質的に垂直に延びるフック172で終端する。フックは、結合ストラット174a及び174bの接合によって形成された実質的にV字形の領域179から延びている。図11Cの別の実施形態では、フィルタ180のストラット184もまた実質的に垂直のフック182で終端するが、この配置は、結合ストラット184a及び184bを湾曲部185で捻ることによって達成され、そのためにフックは平面から外へ曲がっている。図示のように、フック182は、結合ストラット184a及び184bによって形成されたV字形領域189から延びている。図11Bの別の実施形態では、フィルタ190(ストラット194を有する)のフック192は、結合ストラット194a及び194bの平面にあって、結合ストラット194a及び194bのV字形領域199の幅広の表面「w」と同一平面である。
【0026】
図11D〜11Fの代替的実施形態では、フック302は、図11Bと同様にストラット310の結合ストラット304a及び304bと同じ平面にあるが、フィルタ301のフックは2つの異なる寸法である。より具体的には、第1の組のフック302aは、第2の組のフック302bよりも大きい。レーザカットチューブで形成される場合、フック302aは、隣接するストラット2つ分の横方向寸法に相当する範囲を占めるように形成されるのが好ましい。例えば、折り畳まれた構成において、フック302aは、4つの結合ストラットの領域(寸法)を占め、一方で小さいフック302bは、2つの結合ストラットの領域(寸法)を占めるに留まるであろう。小さいフック302bは、大きいフック302aに対して軸線方向に内方に離間し、挿入のために折り畳まれた時のフィルタの折り畳まれたプロフィール(横方向寸法)を最小にする。この好ましい実施形態では、小さいフック302bは、大きいフック302aによって作り出されたスペースを占めるために、大きいフック306a内に収まっていると見なすことができる。言い換えれば、各フック302bは、フック306aの内面309と同じ(輪郭に沿った)外面307を有する。フック302a及び302bにある穿通性のチップ306a及び306bの各々は、フィルタを保持するために、好ましくは一時的に組織を穿通する。
上述のフック172、182、192、302(並びに以下に示すフック)は、開示された実施形態のいずれでも使用することができる(図11Gの例を参照)。このようなフックはまた、全てのストラットよりも少なく形成又は設けることが可能である。
【0027】
図3〜5に戻って参照し、ここでフィルタ10のフィルタ部分について説明する。上述のように、フィルタの第1の端部にあるフィルタ10のフィルタ区域は、全体的に参照番号19で示されており、収束領域21を含む。フィルタ区域19は、張り出し領域17から延びており、フィルタ10の中心縦軸線Lに向けて延び、部分32で管状部分18に収束する。フィルタ領域及び張り出し領域19及び17の間の移行部で、ストラット14は内方に曲がり(領域23)、その後管状部分18に向けて半径方向に内方に延びて管状部分18へと移行する。フィルタ10の管状部分18及び収束領域19は、ストラット14の湾曲部23から軸線方向に外側に、かつ半径方向に内方に離れている。(図4Aにおいて、軸線方向に外側は矢印「a」、半径方向に内側は矢印「b」で示している)。フィルタは、粒子をフィルタ及び血管の中心に向けるように設計されている。(血管の縁部では血流が少なく、中心では粒子をより良く溶解するためのより多くの血流があるために、フィルタの縁部ではなく中心で粒子を捕らえることがより望ましい。)明瞭にするために、図中では各ストラット14のこれらの区域の全てにはラベル付けしていないが、数字のないストラットは、同じ構成を有することができるということである。
【0028】
ここで、張り出し又は取付(固定)領域17を見ると、各ストラット14は、2つの結合ストラット部分14a及び14bに分割される。各ストラット部分14a及び14bは、分割されていないストラット14の約2分の1の幅であることが好ましいが、他の幅も考えられる。各分割されたストラット14のストラット部分14a及び14bは、反対の方向へ延び、ストラット部分14a及び14bがそれぞれ隣接するストラットの対応するストラット部分14a又は14bへ向って延びる湾曲領域25を含む。つまり、1つのストラットの結合ストラット14aは、隣接するストラットの結合ストラット14bと結合されるために、ストラット部分14a及び14bは、隣接するストラット14に結合する結合部分を形成する。1つのストラット上の結合ストラット部分14a及び別のストラットの部分14bは、フィルタの端部29で収束し、実質的にV字形領域を形成する。各部分が隣接するストラットに繋がって、このような6つのV字形端部部分が形成されることが好ましい。6つのストラット14全てが相互結合されて示されているが、全てよりも少ないストラットが相互結合される場合も考えられることに注意されたい。
図示の実施形態における縦方向の、傾斜した、曲がった、湾曲した、結合した、接合した、相互結合した、結合ストラットなどの呼称は、同じ一体的なストラットに言及しており、理解を容易にするためにこのような領域に分割されたものである。
【0029】
伸長ストラット14は、折り畳まれた位置から拡張された配置構成へ移る時に曲がることを理解すべきである。その結果、言い換えれば、フィルタ10は、第1の端部に管状部分18から延びているフィルタ区域19を有するように見ることができる。図から分るように、各ストラット14は、管状部分18からある一定角度で出て、中心から湾曲部分23への移行部まで外側に延びている。湾曲部分23は、縦軸線から外側に延び、張り出し又は徐々に横方向寸法を増す領域を形成している。この張り出し領域17において、フィルタの第2の端部の近く(管状部分18を含む端部とは反対側)で、ストラット14は、隣接するストラットの結合ストラット14a及び14bへ向って内方に湾曲した結合ストラット14a及び14bにより相互結合され、実質的にV字形の端部部分を形成する。
【0030】
配置(拡張)構成において、フィルタ10は、記憶された位置に動き、完全に記憶された位置に復帰する程度は、フィルタ10が挿入される血管の大きさによることになる。(血管が大きくなればなるほど、フィルタは、完全に記憶された位置近くに復帰する)。これは、フィルタの2つの可能な拡張された幅の例として示す図4Aと5を比較することによって理解することができる。図4は、小さな直径の血管に起こる小さな幅までの拡張を示し、図5は、大きな直径の血管に起こる大きな幅までの拡張を示している。
【0031】
拡張された構成及び折り畳まれた構成の間の移動を可能にするために、本明細書に示す実施形態のフィルタのチューブは、ニチノール、ニッケルチタン合金のような形状記憶合金材料から形成されるのが好ましい。フィルタ10の記憶された形は、図1に示されている。フィルタを送出鞘100のルーメンに通して(挿入方法に関しては図14に示す)血管内に移動することを容易にするために、冷塩水を送出鞘又はカテーテル100内及び送出鞘100内で折り畳まれた状態のフィルタ10の周りに注入する。この形状記憶材料は、典型的に、オーステナイト状態では剛性、及びマルテンサイト状態ではより柔軟性を示す。冷塩水は、温度依存性フィルタ10を、それが鞘内ではマルテンサイト状態であるから、比較的柔軟な状態に維持する。これは、フィルタが剛性すなわちオーステナイト状態のままであったならば、フィルタ10と鞘の内面の間に摩擦接触が起こると考えられるので、フィルタ10が鞘100から出ることを容易にするものである。
【0032】
送出鞘又はカテーテル100から排出された状態で、フィルタは、もはや冷却されず、より温かい体温に曝され、それによってフィルタ10は、オーステナイトの記憶された形に戻る。
フィルタ10(及び、本明細書に説明した他のフィルタ)は、患者の首にある頚静脈から又は患者の足にある大腿静脈又は腕から挿入することができる。フィルタはまた、上大静脈に配置することができる。
【0033】
図14〜16は、一例として下大静脈におけるフィルタ10の送出及び配置を示している。送出カテーテル100は、大腿静脈「f」から挿入されて、腸骨動脈を通り下大静脈に進められる。送出カテーテルは、鞘の先端がその構造体に近接した状態で引き抜かれ、従って、鞘を引き抜いてフィルタを図16の希望する位置に配置することになる。チューブ104とバルブ構体106により、塩水の注入が可能になる。送出カテーテル100は、引き抜かれると、フィルタ10は、体温に温められて拡張された配置構成に変化することができる。本明細書に説明した他のフィルタも同様にして挿入することができる。フィルタ区域19が張り出し区域17の下流になるような向きで移植されることに注意されたい。すなわち、血栓又は他の粒子は、ある一定角度に傾いたストラットによってフィルタ区域の中央に向けることができる。従って、上流方向又は下流方向のような挿入の方向により、送出カテーテル内でフィルタをいかに配置するかが判断されることになる。
【0034】
フィルタの代替的実施形態では、ストラットの幅が異なることがある。例えば、ストラットは、張り出し部分においてフィルタ領域よりも幅広にすることができる。これは、細い部分を作り出すために材料を取り除くことにより達成されるのが好ましい。これらの細い部分は、配備時にある一定角度に傾いた又は湾曲した部分を形成するためのフィルタの柔軟性を増大させる。代替的に、フィルタは、フィルタ部分の傾いた又は湾曲した領域よりも張り出し領域において、広いよりもより細いストラットを有することができる。これによって、湾曲領域により安定性を提供することになるであろう。幅の調節は、フィルタの様々な領域の安定性と柔軟性の間の均衡をよく考えて設計される。従って、各ストラット内で及び/又は異なるストラットにおいて、複数の幅に変化するような他の幅の変動が考えられる。
【0035】
図7〜9は、参照番号110で示されるフィルタの代替的実施形態を示している。フィルタ110は、端部領域121を除いてフィルタ10と同様である。すなわち、フィルタ10と同じく、フィルタ110は、張り出し(固定/取付)領域117から延び、フィルタ110の中心縦軸線Lに向けて延びて、部分132で管状部分118に収束するフィルタ領域119を有する。ストラット114は、領域123においてフィルタ10の縦軸線に向けて内方に曲がっている。明瞭にするために、図中では、各ストラット14のこれらの区域全てにはラベル付けしていないが、数字のないストラットは、同じ構成を有することができるということである。フィルタ10と同様に張り出し領域117は、ある一定角度、好ましくは約8度であるが、他の角度も考えられる。
【0036】
ストラット114が相互接合するフィルタ110の端部領域121は、フィルタ10とは異なっている。フィルタ110では、ストラット114は、中心軸から外側に、その後互いに向けて内方に湾曲する結合ストラット部分114a及び114bによって相互結合され、実質的にV字形端部部分127を形成する。外側に曲がった又は湾曲した部分124において、結合ストラットは、隣接するストラット114の結合ストラットに接合する(領域125)。従って、閉じた幾何学形状133が図のように形成される。図示の閉じた形は、実質的に長円形の形であるが、他の形も考えられる。6つのこのような閉じた幾何学形状が形成され、それぞれ隣接するストラットと結合していることが好ましいが、全てよりも少ないストラットが相互結合されている場合には、より少ない閉じた形が考えられる。また、ストラットが接合する領域125の長さは、図のそれよりも短いか又は長いことがあり、それによって閉じた幾何学形状を変化させる(例えば、長くしたり短くする)。
【0037】
言い換えれば、各ストラット114は、まず互いから外側に延びる2つの結合ストラット部分114a及び114bに分割される。各ストラットが外側に延びると、ストラット部分114aは、領域125において隣接するストラットのストラット部分114bに接合する。この接合領域125を過ぎて、同じストラットから出ているストラット部分114a及び114bは互いに向けて内方へ延び、それらの端部で接合して参照番号127で示すような実質的にV字形の端部になる。
フィルタ110の折り畳まれた構成は、切り欠き112が6つのストラット114を形成するように図9に示されている。領域113は、ストラット114が2つに分かれるところを示している。
【0038】
図10の代替的実施形態では、フィルタ150は、付加的な結合ストラット又はリブ152を除いて図1のフィルタ10に似ている。これらのリブは、フィルタ150の安定性を増大させるものである。図示のように、2つのリブ152が、隣接するストラット154から延び、互いに向けて内方へ湾曲して領域156で接合する(V字状結合を形成する)。リブ152は、図10にあるように軸線方向に整列するように配列されるか、又は代替的に互い違いに、すなわち軸線方向に離間して配列することができる(図示しない)。また、リブは、全てよりも少ないストラット間に配置することも可能であり、リブはまた、上述の実施形態のいずれにも利用することができる。リブは、フィルタと一体形成されて、上述のレーザカット処理により形成されるのが好ましいが、代わりにリブをストラットに取り付けることも可能であることに注意されたい。ストラット154は、図10の実施形態では、結合ストラット154a及び154bに分かれる。
【0039】
図11G及び11Hは、図11Dのフィルタ301のフックを有する図7のフィルタの代替的実施形態を示している。フィルタ350は、フィルタ110と同じく、結合ストラット部分354a及び354bによって相互結合したストラット354を有する。結合ストラット部分は、外側に湾曲した後、互いに向けて内方に湾曲してV字形部分357を形成し、フック356で終端する。図11Dのように、大きなフック356aは、軸線方向にずれた小さなフック356bと互い違いになっており、図11Dのフック306a及び306bと同じである。
別の実施形態では、リブは、先端付近で半径方向外側に湾曲し、従って、血管壁に接触して保持機構として作用することができる。
【0040】
図20は、本発明のフィルタの代替的実施形態を示すものである。この実施形態では、ストラットは、張り出し取付(固定)領域ではなく、フィルタ領域で相互結合される。これによってフィルタ領域で閉じた幾何学形状が作り出され、フィルタが血塊を捕捉する能力を高めることになる。また、相互結合部をフィルタのより前方(下流)、すなわち、フィルタ領域(濾過ゾーン)に設けることにより、フィルタの直線移動が容易になり、フィルタの除去を高めることになる。
【0041】
まず図20A及び20Cを見ると、ベル形フィルタ700は、フィルタ領域719と、より大きい横方向寸法の張り出し固定(取付)領域721とを有する。張り出し領域721は、フィルタの縦軸線に対して約8度の角度であることが好ましいが、他の角度も考えられる。この張り出し領域721では、横方向寸法は、フィルタ700の固定端部へ向って増大し、本明細書で説明した他の実施形態のように、領域719にあるフィルタの終端部は、領域721にある反対側の終端部よりも小さな横方向寸法を有する。フィルタ領域719は、張り出し領域721からフィルタ700の縦軸線へ向って延び、部分732で収束してフィルタ700のフィルタ端部部分にある管状部分718になる。
【0042】
フィルタ領域719は、管状部分718から外側に湾曲する6つのストラット714を有する。各フィルタのストラット又はストラット部分714は、管状部分718から半径方向に延び、2つの結合フィルタストラット又はストラット部分714a及び714b(好ましくは等幅)に分かれ、互いからある一定角度で(異なる方向に)離れて隣接するストラット714の結合ストラット部分まで延びている。従って、1つのストラット714の結合ストラット部分714aは、隣接するストラットの結合ストラット部分714bと接合領域714dにおいて相互接合する。これは、好ましくは、実質的にダイヤモンド形の輪郭を有する閉じた幾何学形状725を形成する。明瞭にするために、図中では同一部分の全てにはラベル付けしていない。図示の実施形態では、6つのストラットが設けられて12の結合ストラットを形成することが好ましいが、他のストラット数の閉じた幾何学形状が設けられることもある。また、全てよりも少ないストラットが相互結合される場合もある。ストラット714は、半分の幅の結合ストラット714a及び714bに分かれるのが好ましいが、他の寸法も考えられる。
【0043】
ストラット部分714a及び714bは、接合領域714dで収束した後に、張り出し取付又は固定領域721を形成する伸長取付ストラット部分714cへ移行する。固定領域721にあるストラット部分714cの長さを変えることができ、増加/減少した長さによってストラットの柔軟性/剛性を増大させる。ストラット部分の厚さもまた変えることができ、柔軟性/剛性に影響する。
ストラット部分714cは、図11Dのフック302a及び302bと同様のフック740a及び740bで終端することが好ましい。つまり、フック740a及び740bは、ストラット714cの平面内にあり、フック740aは、フック740bよりも大きく、2つの隣接するストラットの横方向寸法に等しい領域を占めるように形成されている。小さいフック740bは、フック302a及び302bに関連して上述したように大きいフック740a内に収まっている。図20Fにおいて、フックがチューブから形成されているために理解し易いように表された展開図中で3つの異なる距離E1、E2、及びE3を示す矢印で表されるように、小さいフック740bは、フック740aから軸線方向(内方)に間隔を置くと同時に、互いに対して軸線方向に間隔を置いていることに注意されたい。本明細書に説明した様々なフックの実施形態を含み、他のフックの設計形状を代わりに設けることができるであろう。
管状部分718は、好ましくは、他の実施形態に関して本明細書に説明したような回収フックの形態であり、好ましくは、図13Fの回収フック290の形態である。他の回収構造もまた、利用することができる。
【0044】
図21の代替的実施形態では、フィルタは、全体的に参照番号800で示されており、フィルタ領域819及び張り出し固定(取付)領域821を有する。フィルタ800は、結合ストラットの付加的接合領域においてフィルタ700とは異なっている。具体的には、フィルタストラット814は、図20Aのストラット714と同様に管状部分818から半径方向に延びている。ストラット814は、結合ストラット又はストラット部分814a及び814bに分かれ、異なる方向へ延び、その後に第1の接合領域814cで隣接するストラット814の結合ストラットに接合する。接合領域814cから出ると、結合ストラット又はストラット部分814f及び814gは、互いから離れて異なる方向へ延び、第2の接合領域814dで別の隣接するストラット814f及び814gに接合する。領域814dで、取付ストラット又はストラット部分814hは、縦に延びて張り出し取付又は固定領域821を形成する。相互結合ストラットは、図のような実質的にダイヤモンド形の閉じた幾何学形状830の第1の組、及び実質的に六角形の閉じた幾何学形状832の第2の組を形成するのが好ましい。他の形も考えられ、異なる数のストラット814、相互結合ストラット、及び閉じた幾何学形状がある。明瞭にするために、図中では同一部分の全てにはラベル付けしていない。
取付部分821におけるストラット814の終端部に保持フックが設けられる。図示のように、フック840a及び840bは、図20のフック740a及び740bと同じであることが好ましい。フィルタ800のフィルタ端部部分の管状端部部分818における回収フック850は、フィルタ700の回収フック750と同じであることが好ましい。他のフックの設計形状及び回収構造を代わりに利用することもできる。
【0045】
図22は、本発明のフィルタの代替的実施形態を示している。この実施形態では、ストラットは、フィルタ領域(濾過ゾーン)及び張り出し取付(固定)領域において相互接合する。フィルタ領域におけるこれらの相互結合ストラットは、フィルタが血塊を捕捉する力を高めるものである。また、取付領域における相互結合部は、ストラットの柔軟性を低減することによりフィルタの安定性及び血管保持機能を高めるものである。
【0046】
図22A及び22Cを参照すると、ベル形フィルタ900は、フィルタ領域919と、より大きい横方向寸法の張り出し固定(取付)領域921とを有する。張り出し領域921は、フィルタの縦軸線に対して約8度の角度であることが好ましいが、他の角度も考えられる。この張り出し領域921では、横方向寸法がフィルタ900の固定端部へ向って増大し、領域919のフィルタの終端部は、領域921の反対側の終端部よりも小さな横方向寸法を有する。フィルタ領域919は、張り出し領域921からフィルタ900の縦軸線に向けて延び、領域932でフィルタ900のフィルタ端部部分にある管状部分918に収束する。
【0047】
フィルタ領域919は、管状部分918から外側に湾曲する6つのストラット914を有する。各伸長フィルタストラット又はストラット部分914は、管状部分918から半径方向に延び、2つの結合フィルタストラット又はストラット部分914a及び914b(好ましくは等幅)に分かれ、これらは、互いからある一定角度で(異なる方向に)離れて隣接するストラット914の結合ストラット部分まで延びる。従って、1つのストラット914の結合ストラット部分914aは、接合領域914dにおいて隣接するストラットの結合ストラット部分914bと相互接合する。これによって、好ましくは、実質的なダイヤモンド形の輪郭を有する閉じた幾何学形状925を形成する。明瞭にするために、図中では同一部分の全てにはラベル付けしていない。図示の実施形態では、6つのストラットが設けられて、フィルタ領域で12個の相互結合ストラットを形成するのが好ましいが、他のストラット数の閉じた幾何学形状が設けられることもある。また、全てよりも少ないストラットが相互結合される場合もある。ストラット914は、半分の幅の結合ストラット914a及び914bに分かれるのが好ましいが、同じ幅のような他の寸法も考えられる。
【0048】
接合領域914dにおけるストラット部分914a及び914bの収束後に、それは、張り出し取付又は固定領域921を形成する伸長取付ストラット部分914cに移行する。固定領域921における取付ストラット部分914cの長さは変えることができ、増加/減少した長さによってストラットの柔軟性/剛性を増大させる。ストラット部分の厚さもまた変えることができ、柔軟性/剛性に影響する。各ストラット914cは、2つの結合取付ストラット部分914e及び914fに分かれる。各ストラット部分914e及び914fは、分かれていないストラット14の幅の半分とすることができるが、同じ幅のような他の幅も考えられる。各分かれたストラット914cのストラット部914e及び914fは、反対方向に延び、ストラット部分914e及び914fがそれぞれ隣接するストラットの対応するストラット部分914e及び914fに向けて延びる時の湾曲領域を含む。つまり、ストラット部分914e及び914fは、1つのストラットの結合ストラット914eが隣接するストラットの結合ストラット914fと結合される時に、隣接するストラット914cに結合する結合部分を形成する。1つのストラット上の結合ストラット部分914e及び別のストラットの部分914fは、端部(接合)領域929で収束し、閉じた幾何学形状935が形成される。端部領域929は、伸長領域(又は、フックストラット)931を有し、以下に示すフックで終端するのが好ましい。6つの取付ストラット914全てが相互接続されているように示されているが、全てよりも少ないストラットが相互接続されることも考えられることに注意されたい。
【0049】
従って、認めることができるように、伸長ストラットは、フィルタ領域919における相互接続(結合)ストラット914a及び914bの第1の傾斜領域と、取付領域921における相互接続(結合)ストラット914e及び914fの第2の傾斜領域とを有する。第1の領域(フィルタ領域)における相互結合ストラットの領域は、取付領域における相互結合ストラットを有する領域の横方向寸法よりも小さな横方向寸法を有する。
【0050】
図22の実施形態では、フィルタストラット部分及び取付ストラット部分は、それぞれ幅が半分の結合ストラットに分かれる。代替的実施形態では、フィルタストラット及び取付ストラットは、やはり2つに分かれるが、結合ストラットの幅は大きくされ、ストラットの幅の半分よりも大きく、例えば、ストラットと等幅にされることもある。このように幅を大きくして2つに分けることは、本明細書に説明したフィルタの他の実施形態にも適用することができる。幅を小さくして2つに分けることもまた考えられる。
【0051】
ストラット部分914cは、図11Dのフック302a及び302bと同様のフック940a及び940bで終端することが好ましい。すなわち、フック940a及び940bは、ストラット914の平面内にあり、フック940aは、フック940bよりも大きく、2つの隣接するストラットの横方向寸法に等しい領域を占めるように形成される。小さいフック940bは、フック302a及び302bに関連して上述したものと同じ方法で大きいフック940aの中に収まっている。フィルタ700のフック740bに関して説明し、展開図で3つの異なる距離E1、E2、及びE3を示す図20Fで示したのと同じ方法で、小さいフック940bは、フック940aから軸線方向(内方)に間隔を置くと同時に、互いに対しても軸線方向に間隔を置くことに注意されたい。本明細書に説明した様々なフックの実施形態を含み、他のフックの設計形状を代わりに設けることができるであろう。
管状部分918は、他の実施形態に関して本明細書に説明したような回収フック950の形態であることが好ましく、また、図13Fの回収フック290の形態であることが好ましい。他の回収構造もまた利用することができる。
【0052】
フィルタ700、800、及び900は、切断チューブから製造されるのが好ましく、また、レーザカットが望ましい。従って、本明細書に説明した他の実施形態中と同様に相互結合した、結合した、接合したなどの用語は、説明を容易にするために使用されており、これらの部分が好ましくは単一のチューブから形成されるので一体化していることが好ましいことは理解されるものとする。また、本明細書に説明した様々な実施形態を説明するために使用した取付ストラット、及びフィルタストラットは、フィルタが一体的に、例えば切断チューブから形成される場合、同じストラットの取付ストラット「部分」又は「区域」、及びフィルタストラット「部分」又は「区域」と見なすことができる。
【0053】
上述のフィルタは、大腿静脈から又は代わりに内頚静脈を通して挿入することができる。それは、内頚静脈又は大腿静脈を通して接触から取り除くことができる。フィルタを取り除くために、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれる、現在公開されている2001年12月19日公開の米国特許出願番号2002−0193827−A1である2001年7月23日出願で本出願人に譲渡された現在特許出願中の米国特許出願出願番号第09/911,097号に記載のもののような、例えば、溝付きフック、捕捉器具などを含む様々な方法を使用することができる。凹部又は切り欠きもまた、係蹄又は他の除去装置を受けるために管状端部部分に設けることができる。管状部分220でのフック222は、図13Aの実施形態に示されており、係蹄を受けるように形成されている。図13Bは、フックの別の実施形態を示している。管状部分230に形成されたフック232は、係蹄又は他の除去装置を受けるための切り欠き234を形成する。係蹄は、両耳235を囲んで掴むことができる。しかし、両耳の間の切れ目237もまた、回収係蹄を切れ目237内に入れて2つの耳235のうちの一方を囲んで掴むことが可能である。
【0054】
図13C及び13Dの代替的実施形態では、フック272は、その間に切れ目277を持った2つの耳275を有する図13Bのフック232と同様である。しかし、壁279の間に形成された底部切り欠き278を有する点が異なっている。また、耳275の表面274が丸くなっており、外側近位壁278aが湾曲の頂点276まで外側に(近位側に)傾斜し、その後内方(壁278b)に傾斜して回収鞘に滑らかに移行するようになっている点が異なる。従って、2つの傾斜した移行部が設けられている。
【0055】
図13Eの代替的実施形態では、回収鞘への回収を容易にする移行を更に強化するために、フック282の耳285内に延びる側壁284は、縦軸線に向けて内側に傾斜している。その結果、3つの傾斜した移行部が存在し、すなわち、1)両耳285の縁部285aから湾曲の頂点285bまで近位側に外側に傾斜する傾斜壁288aによって形成された第1の方向の傾斜移行部(フックの近位端は、参照番号283によって全体的に示されている)、2)湾曲の頂点285bから遠位側に外側に傾斜する傾斜壁288bによって形成された第2の方向の傾斜移行部、及び3)壁284が近位端に向けて近づくために近位側に内方に傾斜する壁284によって形成された傾斜移行部である。この結果、フィルタの近位端、すなわち、フックは、鞘の縁部に捕らえられる可能性を縮小するために回収鞘に滑らかに移行するようになる。フィルタのあらゆる接近(360度の範囲)に対してカム表面を作る傾斜した縁部は、フックの縁部が鞘内に摺ることを助けることになる。
【0056】
図13F及び13Gは、本発明の回収フックの代替的実施形態を示している。これは、図11D及び11Gのフィルタ301に関連して示された回収フックである。フック290は、最近位端で湾曲フック292を有する。このフック292は、回収係蹄又は他の回収装置を受けるように形成されている。フック290の壁の部分は、切り抜かれて環状内面294を露出している。すなわち、レーザカットチューブから形成されているために、壁部分が取り除かれて、湾曲した内壁表面294を露出している。この環状内面294は、丸みを付けた領域295から最近位縁部296まで延びている。内面294は、説明を容易にするために、丸みを付けた領域259に内面294a、及びフック292に内面294bを有すると考えることができる。内面294bは、管状係蹄鞘の一部分を収容する。すなわち、係蹄鞘(チューブ)の外壁は、切り欠き領域293内に部分的に嵌合することができる。これによって、係蹄がフィルタフックを係蹄チューブと同一線上の配置に引っ張るために除去が強化される。これは、以下に説明する図13H〜13Jを参照して理解することができる。フック292から軸線方向に(遠位側に)間隔を置いた丸みを付けた領域295は、丸みを付けた側壁297a及び297c及び上部壁297bによって形成された丸みを付けた又は湾曲した縁部を含む。傾斜側壁297a及び297cは、カム表面を形成してフック290及びフィルタを回収鞘内に向けるものである。これは、以下に説明する図13K〜13Nを参照して理解することができる。
フックは、表面294と同様に機能するための、すなわち、係蹄チューブを受けるための環状内面を設ける他の方法で形成することができることを認めるべきである。
回収フックのいずれも本明細書で説明したフィルタのいずれかと共に使用することができることを認めるべきである。
【0057】
図13H〜13Jにおいて、係蹄は、図示の向きで回収フック290に接近する。この結果、同一線上の配置がもたらされる。より詳細には、係蹄502は、係蹄502が通過して延びる係蹄鞘又はチューブ504を含む回収システムの一部である。係蹄鞘504の遠位壁503は、係蹄502を締めるために含まれている。係蹄鞘504は、回収鞘510の中に挿入される。上述のように、除去処置の間、除去を容易にする柔軟なマルテンサイト状態へ変化するまで鞘を冷却するために冷塩水が注入されるのが好ましい。
【0058】
図示の向きで係蹄502がフィルタを引っ込める時、係蹄鞘504は、その外壁がフック292の内壁面294bに適合するので切り欠き領域293内に嵌合する。従って、図13Jに示すように、フック290と係蹄鞘504は実質的に一直線になる。この一直線の配列により、フックの壁が回収鞘510の遠位縁部512に掴まることが減り、図13Jに示すように鞘への移動がより滑らかになるために、回収鞘510への引き込みが容易になる。
【0059】
図13K〜13Nは、係蹄が図13Hとは反対の向き、すなわち、図13Kの向きで示すようにフックの下から近づく時の回収段階を示している。係蹄502がフィルタを鞘510の方へ引き込む時、壁297bが回収鞘510の縁部512に接触し、傾斜壁297a及び297bにより(接触の側に依存して)、フックは、図13Nに示すように回収鞘510内に(図13Mの向きに)下方にカム結合する。これによって、フックが鞘の縁部に掴まることが減るために、回収鞘510内へ滑らかに移動するようになる。
【0060】
図12Aは、管状部分212の長さに沿った一連の凹部210を有する別の実施形態を示している。これによって、管状部分212は、長さに沿って数箇所を掴まれることが可能になり、除去のためにフィルタを掴み易くなる。これらの複数の凹部又は切り欠き210は、図示のように軸線方向に間隔を空けている。図12Bの実施形態では、管状部分240の端部は、コイル状の係合構造を形成する軸線方向に間隔を空けた一連の切り欠き242を有する。この係合構造は、回収係蹄のようなフィルタを掴むための回収(除去)装置用に複数の係合区域を提供し、装置は、例えば、螺旋状コイルの巻回246間の(切り欠きによって形成された)空間のいずれにも掴まれることが可能である。図12Cは、切り欠き242の1つに配置された係蹄300を示している。
【0061】
血管からフィルタを除去し易くするために、冷塩水を移植されたフィルタに注入してフィルタの温度を変化させ、フィルタを回収鞘に引き入れ易くする比較的柔らかい状態にすることができる。つまり、冷塩水を注入することにより、フィルタをマルテンサイト状態に近づけ、フィルタをより柔軟な状態にすることになる。柔軟な状態により、フィルタと回収鞘の内面の間の摩擦接触が減少し、フィルタを折り畳んで回収鞘内に引き入れることが容易になる。
【0062】
本発明のフィルタのための送出システムは、図17及び18に示されている。送出システム600は、ハブ602、フィルタを入れるカートリッジ604、プッシャー606、及びプッシャー606を通って延びるワイヤ608を含む。ワイヤ608は、カートリッジ604を通り、更にチューブの長さを通って延び、送出システムの挿入及びフィルタの送出の間、例えば図11Gのフィルタ350のフック402のようなフックの分離を維持するものである。カートリッジ604は、好ましくは、スナップ式装着によりハブ602に取外し可能に装着されるが、他の装着方法も考えられる。カートリッジは、使用者にカートリッジ604をハブ602に装着するための向きが分るように、外面に大腿部又は頚部方向を示すしるし(図示しない)を有するのが好ましい。
【0063】
装着された状態で、プッシャー606の遠位縁部がフィルタの近位端に当接するために、プッシャー606を進めることにより、フィルタは、カートリッジから出て更にチューブ608を通って進む。ワイヤ608(例えば、ニチノールワイヤ)は、保持フックのもつれを防止する。ワイヤ608はまた、プッシャー606がワイヤ608上を進む時に、プッシャー606のための支持(安定性)を提供するものである。フィルタは、チューブの遠位端の外に押しやられると、そこではもはや冷塩水に冷却されることはなく、体温で温められて記憶された形状に戻る。
【0064】
ハブ602内のカートリッジ604を維持し易くするために、図19の機構のようなロック機構を設けることができる。カートリッジ604は、各々がそれぞれの凹部614a及び614bを含む一対のロッキングレール612a及び612bを有する。ハブ602は、図示のように戻り止め620を含む。カートリッジ604がハブ602に挿入されると、ロッキングレール612aの凹部614aが戻り止め620に保持される。これによって、使用中にカートリッジ604をハブ602に固定し、カートリッジ604がハブ602から不必要に離れることを防止する。大腿動脈の代わりに頚動脈からの接近が望ましい場合は、カートリッジは、レール612bの凹部614bがハブ602の戻り止め620に係合するようにして挿入される。
【0065】
上述の説明は多くの詳細を含むが、これらの詳細は、本開示の範囲を限定するように解釈されるべきではなく、むしろその好ましい実施形態の例示に過ぎないものである。例えば、フィルタは、身体の他の領域から挿入することが可能である。また、上述のフィルタのいずれも様々な厚さの取付区域を有することができる。上述のフィルタは、形状記憶材料以外の材料からも作ることができる。当業者は、本明細書に特許請求の範囲によって規定された本開示の精神及び範囲内の他の多くの可能な変形を想起するであろう。
【符号の説明】
【0066】
10 フィルタ
11 チューブ
12 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域及び第2の領域を含み、
前記第1の領域は、粒子を捕捉するためのフィルタ区域を含み、かつ第1の横方向寸法を有し、
前記第2の領域は、フィルタを血管内に取り付けるための取付区域を含み、
前記取付区域は、前記第1の横方向寸法よりも大きな第2の横方向寸法を有し、かつフィルタを保持するための血管係合構造を含み、
前記第1の領域は、更に、回収領域を含み、該回収領域は、回収鞘の一部分を受けるような寸法を有する環状内面を露出する切り欠きを有するフックを含む、
ことを特徴とする血管フィルタ。
【請求項2】
前記回収領域は、遠位側かつ内方に延びる第1及び第2の曲面を有する丸みを付けた領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の血管フィルタ。
【請求項3】
前記回収領域は、前記フックから軸線方向に離間した湾曲壁を含んで回収鞘内に入り易くするためのカム表面を形成することを特徴とする請求項1に記載の血管フィルタ。
【請求項4】
切断されて一組のストラットと第1及び第2の組のフックとを形成するレーザカットチューブから形成され、
前記第1の組のフックは、前記第2の組のフックよりも大きな横方向寸法を有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の血管フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図13G】
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【図13H】
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【図13I】
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【図13J】
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【図13K】
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【図13L】
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【図13M】
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【図13N】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図20E】
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【図20F】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図22E】
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【公開番号】特開2011−457(P2011−457A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196677(P2010−196677)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【分割の表示】特願2006−551084(P2006−551084)の分割
【原出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(505301837)レックス メディカル リミテッド パートナーシップ (22)
【Fターム(参考)】