説明

静電スプレイ装置

【課題】狭い空間内において良好な静電スプレイを行えるようにする。
【解決手段】静電スプレイ装置Sは、電極92とノズル87が設けられたノズルヘッド80と、下流端がノズルヘッド80に接続された筒状をなす液剤流路16と、液剤流路16の上流端側に配された高電圧発生器13と、液剤流路16内に臨んで高電圧発生器13と電極92とを導通可能に接続させる導電手段17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電スプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、型開きした金型の間にノズルヘッドとノズルヘッドに接続した液剤流路(ロボットのアーム)の下流端部を進出させ、ノズルから金型に向けて離型剤を吐出するスプレイ装置が開示されている。この塗布装置に、特許文献2に記載されたスプレイガン装置の静電塗装構造を適用すると、離型剤の塗布効率アップの効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−223061号公報
【特許文献2】特開平11−128781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のスプレイガン装置は、先端にノズルが設けられたガン本体に高電圧発生器が内蔵されており、ノズルと高電圧発生器とが接近した位置関係となっている。そのため、離型剤を塗布するときには、ノズルを含むガン本体の全体を金型の間に進出させることになる。ところが、高電圧発生器を内蔵したガン本体は、ノズル単体に比べて径が大きいので、ガン本体を金型の間に進出させるためには、ノズル単体を金型の間に進出させる場合に比べて、型開き時の金型の間隔を広げる必要がある。型開き時の金型の間隔を拡げると、金型の移動ストロークが大きくなる。金型の開閉に要する時間が長くなると、成型サイクルが長くなって生産性の低下を来すため、高電圧発生器を内蔵したガン本体にノズルを設けたスプレイガン装置は、型開きした金型のような狭い空間内での静電スプレイには適さない。
【0005】
尚、特許文献2とは異なる方法でノズルに高電圧を供給する方法としては、ノズルヘッドに液剤流路の下流端を接続するとともに、ノズルヘッドとノズルヘッドから離れた位置に設けた高電圧発生装置とを導電ケーブルで接続し、この導電ケーブルを介してノズルヘッドの電極に高電圧を印加する手段も考えられる。しかし、この場合も、金型の間に、ノズルヘッドと液剤流路だけでなく、液剤流路の外部に並ぶように配索された導電ケーブルの一部も進出させなければならない。そのため、ノズルヘッドと液剤流路の下流端部だけを金型の間に進出させる場合に比べると、型開き時の金型の間隔を広くする必要がある。
【0006】
また、高電圧発生器を内蔵したガン本体を用いた場合、ガン本体は、ノズルヘッドに比べて小回りが効き難いため、ガン本体を箱状部や凹部のような狭い空間に進入させて塗布する場合には、ガン本体を塗布面に対して適正な距離を保って広いパターンで塗布することが困難である。そのため、離型剤の膜厚が不均一になる虞もある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、狭い空間内において良好な静電スプレイを行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、電極とノズルが設けられたノズルヘッドと、下流端が前記ノズルヘッドに接続された筒状をなす液剤流路と、前記液剤流路の上流端側に配された高電圧発生器と、前記液剤流路内に臨んで前記高電圧発生器と前記電極とを導通可能に接続させる導電手段とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記液剤流路のうち少なくとも下流端側の領域が、前記導電手段としての機能を有する金属製のパイプを備えて構成され、前記パイプが、前記ノズルヘッドを変位させるための駆動部材に取り付けられているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記パイプが、銅製又は銅合金製であるところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2または請求項3に記載のものにおいて、前記液剤流路のうち前記パイプよりも上流側の領域の少なくとも一部が、可撓性を有するホースを備えて構成され、前記ホース内に、前記導電手段として機能する金属製のコイルバネが収容されているところに特徴を有する。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記ホースは、前記コイルバネのコイル部よりも下流側及び上流側へ延びており、前記ホースのうち前記コイル部よりも下流側へ延びた部分が、前記パイプに外嵌され、前記ホースのうち前記コイル部よりも上流側へ延びた部分には、別のパイプが内嵌されており、前記コイルバネは、前記コイル部の下流側端部の座面と上流側端部の座面を、夫々、前記パイプの上流側の端面と前記別のパイプの下流側の端面に当接させることで、前記液剤流路の長さ方向において位置決めされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
高電圧発生器と電極を導通させるための導電手段を、液剤流路内に臨む形態としたので、高電圧発生器と電極を導通させるための導電ケーブルを液剤流路の外部に並ぶように配索する必要がない。また、高電圧発生器とノズルヘッドを筒状の液剤流路の両端部に配置したので、液剤流路を長くすることによって、高電圧発生器をノズルヘッドから離れ位置に配置することができる。つまり、ノズルヘッドの近傍には、筒状の液剤流路が存在するだけであって、大きなスペースを占める部材を配置せずに済む。このように、本願発明によれば、型開きした金型のような狭い空間内での静電スプレイに好適である。
【0013】
<請求項2の発明>
パイプは、駆動部材の駆動力をノズルヘッドに伝えるための駆動力伝達機能と、導電手段としての機能とを兼ね備えているので、この2つの機能を別々の部材で構成した場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【0014】
<請求項3の発明>
パイプは、銅製又は銅合金製なので、曲げ可能でありながら、所定の形状を保持することができる。これにより、ノズルヘッドの位置やノズルの向きを手作業によって微調整することができる。
【0015】
<請求項4の発明>
駆動部材によってパイプとノズルヘッドを変位させたときに、液剤流路のうちパイプと高電圧発生器との間の領域が、ホースとコイルバネをその軸線を湾曲させながら追従変形するので、高電圧発生器を固定して設置することができる。
【0016】
<請求項5の発明>
コイル部の両端部の座面とパイプの肉厚を利用して、コイルバネを位置決めしたので、コイルバネとは別の専用の位置決め手段を設ける場合に比べると、部品点数の削減や構造の簡素化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1の静電スプレイ装置で型開きした金型に離型剤を塗布している状態をあらわす一部切欠側面図
【図2】高電圧ユニットと接続ユニットの上端部の構造をあらわす拡大断面図
【図3】接続ユニットと配管ユニットの一部の構造をあらわす拡大断面図
【図4】配管ユニットの下端部とノズルヘッドの構造をあらわす拡大断面図
【図5】図3における短尺パイプと第4コイルバネとの接続構造をあらわす部分拡大断面図
【図6】図3における第4コイルバネと長尺パイプとの接続構造をあらわす部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図6を参照して説明する。
【0019】
本実施形態の静電スプレイ装置Sは、図1に示すように、型開きした一対の金型Mの間にノズルヘッド80を進出させて、金型Mに離型剤Pを噴出するようにしたものである。静電スプレイ装置Sは、構造的には、上下方向に長い高電圧ユニット10と、上下方向に長い接続ユニット20と、配管ユニット40と、駆動部材70と、ノズルヘッド80とを組み付けて構成されている。また、機能的には、静電スプレイ装置Sは、離型剤Pを吐出するノズル87と、ノズル87に離型剤Pを供給するための液剤流路16と、液剤流路16内に臨むように設けられて電極92に高電圧を印加するための高電圧発生器13と、液剤流路16内に臨むように設けられた導電手段17とを備えて構成されている。導電手段17は、高電圧発生器13と、ノズル87に設けた電極92とを導通可能に接続するためのものである。
【0020】
図2に示すように、高電圧ユニット10は、絶縁性材料からなる縦長のボディ11と、ボディ11に内蔵した高電圧発生器13と、金属製の第1コイルバネ15とを備えて構成されている。高電圧発生器13の下端面の端子部14は、ボディ11の下端面に開口する収容部12内に臨んでいる。収容部12内には、第1コイルバネ15が軸線を上下方向に向けた姿勢で収容されている。
【0021】
図2,3に示すように、接続ユニット20は、絶縁性材料からなるハウジング21と、絶縁性材料からなるアダプタ22と、絶縁性材料からなるブッシング23とを備えている。ハウジング21の上端部には、アダプタ22の下端部がねじ込みにより液密状態に組み付けられている。ハウジング21の下端部には、ブッシング23の上端部がねじ込みにより液密状態に組み付けられている。アダプタ22の外周には、貫通形態の袋ナット24が相対回転可能に取り付けられている。
【0022】
図2に示すように、ハウジング21内には、ハウジング21の下端面に開口する上下方向の流入孔25と、流入孔25の上端部に連通してハウジング21の上端面に開口する取付孔26が形成されている。ブッシング23内には、上下方向に貫通する連通孔27が、流入孔25と同軸状に連通するように形成されている。ハウジング21の外周面には、L字形に屈曲した形態の継ぎ手28が、流入孔25の上端部(上流端)に連通する形態で液密状に取り付けられている。この継ぎ手28には、離型剤Pの供給源(図示省略)が接続されている。
【0023】
アダプタ22内には、軸線を上下方向に向けた金属製の接続ピン29が、その上下両端部をアダプタ22の上下両端面に露出させた状態でねじ込みにより収容されている。取付孔26における上側の空間には金属製の第2コイルバネ30が収容され、取付孔26における下側の空間には金属製の皿ネジ31が収容されている。
【0024】
接続ユニット20には、金属製の第3コイルバネ32が設けられている。第3コイルバネ32は、1本のバネ素線に曲げ加工等を施して成形されたものであって、図2,3に示すように、軸線を上下方向に向けたコイル部33と、コイル部33の下端から下方へ延出する延出部34と、延出部34の下端から更に延出する接触部35とから構成されている。延出部34は、コイル部33の軸線とほぼ同軸状に延びた形態であり、接触部35は、延出部34に対して斜め下方向へ延びた形態である。第3コイルバネ32のコイル部33は、流入孔25と連通孔27に収容されている。また、図3に示すように、延出部34と接触部35は、ブッシング23の下端よりも更に下方へ延出するように位置している。
【0025】
アダプタ22の上端部は、アダプタ22に外嵌されている袋ナット24をボディ11の下端部外周にねじ込むことにより、ボディ11の下端部に液密状に内嵌され、これにより、接続ユニット20の上端部が高電圧ユニット10の下端部に同軸状に組み付けられている。両ユニット10,20を組み付けた状態では、第1コイルバネ15の弾性復元力により、第1コイルバネ15の上端部が高電圧発生器13の端子部14に対して弾性的に且つ電気的導通可能(以下、単に「導通可能」という)に当接し、第1コイルバネ15の下端部が接続ピン29の上端面に対して弾性的に且つ導通可能に当接する。また、第2コイルバネ30の弾性復元力により、第2コイルバネ30の上端部が接続ピン29の下端部に対して弾性的に且つ導通可能に当接し、第2コイルバネ30の下端部が皿ネジ31の上端部に対して弾性的に且つ導通可能に当接する。
【0026】
図3,4に示すように、配管ユニット40は、絶縁材料からなる可撓性を有するホース41と、絶縁性材料からなる上下一対のニップル43,44と、銅製又は銅合金製(導電性材料)からなる短尺パイプ45(本発明の構成要件である別のパイプ)と、銅製又は銅合金製(導電性材料)からなる長尺パイプ46(本発明の構成要件であるパイプ)と、金属製の第4コイルバネ50(本発明の構成要件であるコイルバネ)とを備えて構成されている。
【0027】
図2〜6に示すように、ホース41は、その軸線を湾曲させるように変形し得るようになっており、ホース41の内部は、流通孔42となっている。ホース41の上端(上流端)よりも少し下方の位置には、短尺パイプ45がその外周を流通孔42の内周に密着させた状態で内嵌され、ホース41の下端(下流端)よりも少し上方の位置には、長尺パイプ46がその外周を流通孔42の内周に密着させた状態で内嵌されている。
【0028】
図3,5,6に示すように、ホース41の内部には、第4コイルバネ50が流通孔42の内周に接触した状態で収容されている。図5,6に示すように、第4コイルバネ50は、軸線を湾曲させるような形態で弾性変形可能なコイル部51(本発明の構成要件であるコイル部)と、コイル部51の上下両端部に形成した座面52,53とを備えて構成されている。第4コイルバネ50の弾性復元力により、図5に示すように、第4コイルバネ50のコイル部51の上端側座面52(本発明の構成要件であるコイル部の上流側端部の座面)が、短尺パイプ45の下端面47(本発明の構成要件である別のパイプの下流側の端面)に弾性的に且つ導通可能に当接するとともに、図3に示すように、短尺パイプ45の上端面がニップル43の下端面に当接する。また、図6に示すように、第4コイルバネ50のコイル部51の下端側座面53(本発明の構成要件であるコイル部の下流側端部の座面)が、長尺パイプ46の上端面48(本発明の構成要件であるパイプの下流側の端面)に弾性的に且つ導通可能に当接し、図3に示すように、長尺パイプ46の下端面がニップル44の上端面に当接する。
【0029】
図3に示すように、ホース41の上端部(短尺パイプ45よりも上方の領域)には、上側のニップル43の下端部が内嵌されている。そして、長ナット54のテーパ部55をホース41の上端部に外嵌し、その長ナット54をニップル43の外周にねじ込むことにより、ホース41の上端部にニップル43が液密状に取り付けられている。ニップル43には、上下方向に貫通する接続孔56が形成され、接続孔56の下端部はホース41の流通孔42の上端部と連通している。ニップル43の外周には、貫通形態の袋ナット57が相対回転可能に取り付けられている。
【0030】
図4に示すように、ホース41の下端部(長尺パイプ46よりも下方の領域)には、下側のニップル44の上端部が内嵌されている。そして、長ナット58のテーパ部59をホース41の下端部に外嵌し、その長ナット58をニップル44の外周にねじ込むことにより、ホース41の下端部にニップル44が液密状に取り付けられている。ニップル44には、上下方向に貫通する接続孔60が形成され、接続孔60の上端部はホース41の流通孔42の下端部と連通している。ニップル44の外周には、貫通形態の袋ナット61が相対回転可能に取り付けられている。
【0031】
図3に示すように、上側のニップル43の上端部は、接続ユニット20のブッシング23の下端部に液密状に内嵌され、上側の袋ナット57がブッシング23の外周にねじ込まれている。これにより、接続ユニット20の下端部に配管ユニット40の上端部が組み付けられている。両ユニット20,40を組み付けた状態では、接続ユニット20の連通孔27と配管ユニット40の上端部の接続孔56とが同軸状に連通する。また、第3コイルバネ32の延出部34が、ニップル43の接続孔56を貫通し、接触部35が短尺パイプ45の内周に対して弾性的に且つ導通可能に当接する。さらに、第3コイルバネ32のコイル部33の上端部が、皿ネジ31の下端面に弾性的に当接するとともに、第3コイルバネ32のコイル部33の下端部が、上側のニップル43の上端面に弾性的に当接する。
【0032】
図1,3,4に示すように、駆動部材70は、ロボットアーム71に取り付けられており、三次元的に移動するようになっている。上記の配管ユニット40は、上下一対のブラケット72を介して駆動部材70に取り付けられている。配管ユニット40におけるブラケット72の取付け位置は、長尺パイプ46と対応する領域内であり、ブラケット72はホース41の外周に外嵌されている。これにより、配管ユニット40のうち長尺パイプ46が内嵌されている下端部は、駆動部材70と一体となって三次元的に変位し得るようになっている。
【0033】
図4に示すように、ノズルヘッド80は、絶縁性材料からなるヘッド本体81と、絶縁材料からなる筒状のノズル87と、絶縁材料からなるエアキャップ93と、絶縁材料からなるブッシング84と、電極92とを備えて構成されている。ヘッド本体81内には、ヘッド本体81の側面に開口する凹部82と、上下方向の供給孔83とが形成されている。供給孔83の上端部は、ヘッド本体81の上端面に開口している。供給孔83の下端部は、凹部82の奥端部に連通している。ヘッド本体81の上端部には、ブッシング84の下端部がねじ込みにより液密状に取り付けられている。ブッシング84の内部には、上下方向に貫通して下端部を供給孔83に対して同軸状に連通させた連通孔85が形成されている。
【0034】
凹部82内には、軸線を水平に向けた筒状部材86がねじ込みにより取り付けられている。筒状部材86の内周には、軸線を水平に向けたノズル87の後端部が同軸状にねじ込みにより取り付けられている。ノズル87の後端面と凹部82の奥端面との間には、導電性材料からなる支持部材90が、その後端部を供給孔83の下端部に臨ませた状態でノズル87と同軸状に配置されている。支持部材90には、軸線をノズル87と同軸状に向けたピン状の電極92の後端部が支持されている。電極92はノズル87内の吐出路88を貫通し、電極92の前端部が、吐出路88の前端の吐出口89から突出している。また、支持部材90の外周には、供給孔83と吐出路88とを連通させる複数の連通溝91が形成されている。
【0035】
ヘッド本体81の前端部には、エアキャップ93が取り付けられている。エアキャップ93の前面壁には、ノズル87の前端部と電極92をエアキャップ93外へ露出させる中心孔94と、中心孔を包囲するように配された霧化エア噴出口95が形成されている。また、エアキャップ93の上下両端部には、パターンエア噴出口96が形成されている。
【0036】
ノズルヘッド80には、金属製の第5コイルバネ100が設けられている。第5コイルバネ100は、1本のバネ素線に曲げ加工等を施して成形されたものであって、軸線を上下方向に向けたコイル部101と、コイル部101の上端から上方へ延出する延出部102と、延出部102の上端から更に延出する接触部103とから構成されている。延出部102は、コイル部101の軸線とほぼ同軸状に延びた形態であり、接触部103は、延出部102に対して斜め上方向へ延びた形態である。第5コイルバネ100のコイル部101は、供給孔83と連通孔85に収容されている。また、延出部102と接触部103は、ブッシング84よりも更に上方へ延出するように位置している。
【0037】
ノズルヘッド80のブッシング84の上端部は、配管ユニット40の下側のニップル44の下端部に外嵌され、下側のニップル44の袋ナット61が、ブッシング84の外周にねじ込まれている。これにより、ノズルヘッド80が配管ユニット40の下端部に組み付けられている。両ユニット40,80が組み付けられた状態では、配管ユニット40の下側のニップル44の接続孔60が、ノズルヘッド80のブッシング84の連通孔85と同軸状に連通する。また、ノズル87からの離型剤Pの吐出方向は、配管ユニット40の下端部(長尺パイプ46)に対して直角を向いている。
【0038】
また、ノズルヘッド80を配管ユニット40の下端部に取り付けた状態では、第5コイルバネ100の延出部101が、ニップル44の接続孔60を貫通し、接触部103が長尺パイプ46の内周に対して弾性的に且つ導通可能に当接する。さらに、第5コイルバネ100のコイル部101の上端部が、ニップル44の下端面に弾性的に当接するとともに、第5コイルバネ100のコイル部101の下端部が、支持部材90の後端部に弾性的に当接する。
【0039】
上記静電スプレイ装置Sにおける液剤流路16は、接続ユニット20内、配管ユニット40内及びノズルヘッド80内に形成されている。即ち、液剤流路16は、上流側から下流側に向かって順に並ぶように配された、継ぎ手28、ハウジング21の流入孔25、接続ユニット20のブッシング23の連通孔27、配管ユニット40の上側のニップル43の接続孔56、短尺パイプ45、ホース41のうち短尺パイプ45と長尺パイプ46との間の領域、長尺パイプ46、配管ユニット40の下側のニップル44の接続孔60、ノズルヘッド80のブッシング84の連通孔85、ヘッド本体81の供給孔83、支持部材90の連通溝91、ノズル87の吐出路88、及びノズル87の吐出口89によって構成されている。
【0040】
静電スプレイ装置Sにおける導電手段17は、高電圧ユニット10内、接続ユニット20内、配管ユニット40内及びノズルヘッド80内に形成されている。即ち、導電手段17は、高電圧発生器13側(液剤流路16における上流側)から電極92側(液剤流路16における下流側)に向かって順に配された、第1コイルバネ15、接続ピン29、第2コイルバネ30、皿ネジ31、第3コイルバネ32、短尺パイプ45、第4コイルバネ50、長尺パイプ46、第5コイルバネ100、及び支持部材90によって構成されている。これらの導電手段17を構成する複数の部材は、いずれも、液剤流路16を構成する部材・部位のうち離型剤Pが流れる空間内に直接、臨むように配置されている。
【0041】
次に、本実施形態の作用を説明する。型開きした金型Mに離型剤Pを塗布する際には、ロボットアーム71の駆動部材70を移動させ、ノズルヘッド80と配管ユニット40の下端側部分を、両金型Mの間に進出させ、高電圧発生器13で発生させた高電圧を、導電手段17を介して電極92に印加するとともに、液剤流路16に離型剤Pを供給する。ノズル87に達した離型剤Pは、ノズル87に挿通された電極92により高電圧を印加された状態で先端の吐出口89から吐出され、霧化エア噴出口95から噴出されたエアにより霧化されるとともに、パターンエア噴出口96から噴出されたエアにより所定のパターンに成形され、静電作用によって金型Mに塗着される。
【0042】
離型剤Pを塗布している間、ロボットアーム71が移動して、ノズルヘッド80の位置及びノズル87の向きを金型Mの形状に合わせて変位させることにより、金型Mには均一な膜圧で離型剤Pが塗布される。また、高電圧ユニット10は固定した状態で設けられているのであるが、ノズルヘッド80の位置が変化するのに伴い、ホース41のうち短尺パイプ45と長尺パイプ46が内嵌されていない領域が湾曲するように追従変形する。
【0043】
上述のように、本実施形態の静電スプレイ装置Sは、電極92とノズル87が設けられたノズルヘッド80と、下流端がノズルヘッド80に接続された筒状をなす液剤流路16と、液剤流路16の上流端側に配された高電圧発生器13と、高電圧発生器13と電極92とを導通可能に接続させる導電手段17とを備えている。この静電スプレイ装置Sは、高電圧発生器13と電極92を導通させるための導電手段17を、液剤流路16内に臨む形態としたので、高電圧発生器13と電極92を導通させるための導電ケーブルを液剤流路16の外部に並ぶように配索する必要がない。また、高電圧発生器13を液剤流路16の上端部近傍に配置するとともに、ノズルヘッド80を液剤流路16の下流側端部に配置した。つまり、高電圧発生器13とノズルヘッド80を、筒状をなす液剤流路16の長さ方向における上下両端部に振り分けて配置した。したがって、液剤流路16を長くすることにより、高電圧発生器13をノズルヘッド80から離れ位置に配置することが可能となっている。本実施形態によれば、ノズルヘッド80の近傍には、筒状の液剤流路16が存在するだけであって、大きなスペースを占める部材を配置せずに済むので、型開きした金型Mのような狭い空間内での静電スプレイに好適である。
【0044】
また、液剤流路16のうち少なくとも下流端側の領域が、導電手段17としての機能を有する金属製の長尺パイプ46を備えて構成され、この長尺パイプ46が、ノズルヘッド80を変位させるための駆動部材70に一体的に変位するように取り付けられている。本実施形態では、長尺パイプ46が、駆動部材70の駆動力をノズルヘッド80に伝えるための駆動力伝達機能と、導電手段17としての機能とを兼ね備えているので、この2つの機能を別々の部材で構成した場合に比べて、部品点数が少なくて済んでいる。
【0045】
また、長尺パイプ46を銅製又は銅合金製とした。したがって、手作業によって長尺パイプ46を曲げることが可能でありながら、曲げた長尺パイプ46を所定の形状に保持することができる。駆動部材70によってノズルヘッド80の位置や向きを変位させたときに、作業者が手作業によって、ノズルヘッド80の位置やノズル87の向きを微調整することができる。
【0046】
また、液剤流路16のうち長尺パイプ46よりも上流側(つまり、ノズルヘッド80とは反対側)の領域の一部が、可撓性を有するホース41を備えて構成され、このホース41内には、導電手段17として機能する金属製の第4コイルバネ50が収容されている。この構成によれば、駆動部材70によって長尺パイプ46とノズルヘッド80を変位させたときに、液剤流路16のうち長尺パイプ46と高電圧発生器13との間の領域では、ホース41と第4コイルバネ50がその軸線を湾曲させながら追従変形する。これにより、高電圧発生器13を固定して設置することが実現できた。したがって、高電圧ユニット10をロボットアーム71(駆動部材70)によって変位させる必要がなく、ロボットアーム71の負荷が軽減されている。
【0047】
また、ホース41は、第4コイルバネ50のコイル部51よりも下流側及び上流側へ延びており、ホース41のうちコイル部51よりも下流側へ延びた部分が長尺パイプ46に外嵌され、ホース41のうちコイル部51よりも上流側へ延びた部分には、短尺パイプ45が内嵌されている。そして、第4コイルバネ50は、そのコイル部51の下端側座面53と上端側座面52を、夫々、長尺パイプ46の上端面48と短尺パイプ45の下端面47に当接させることで、液剤流路16の長さ方向において位置決めされている。このように本実施形態においては、コイル部51の両端部の座面52,53と長短両パイプ45,46の肉厚を利用して、第4コイルバネ50を位置決めしているので、第4コイルバネ50とは別の専用の位置決め手段を設ける場合に比べて、部品点数の削減及び構造の簡素化が実現されている。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、駆動部材の駆動力をノズルヘッドに伝えるための駆動力伝達手段機能を有するパイプが、導電手段としての機能も兼ね備えているが、パイプを絶縁材料とし、パイプとは別の導電手段を設けてもよい。
(2)上記実施形態では、パイプを銅製又は銅合金製としたが、パイプは、銅製又は銅合金製以外の金属であってもよい。
(3)上記実施形態では、液剤流路の一部のみを導電性のパイプとしたが、液剤流路を、その全長に亘って導電性のパイプで構成してもよい。
(4)上記実施形態では、液剤流路のうちパイプよりも上流側の領域の少なくとも一部のみに、可撓性を有するホースと金属製のコイルバネを配したが、液剤流路におけるパイプよりも上流側の全領域に亘り、ホースとコイルバネを配してもよい。
(5)上記実施形態では、コイル部の両端部の座面とパイプの肉厚を利用してコイルバネを位置決めしたが、コイルバネとは別の専用の位置決め手段を設けてもよい。
(6)上記実施形態では、導電手段として液剤以外の部材を用いたが、液剤が水性のものである場合には、その液剤を導電手段として利用してもよい。この場合、導電手段を構成するパイプやコイルバネをなくしたり、液剤流路と導電手段を兼ねるパイプを絶縁性材料にすることができる。
(7)上記実施形態では、金型に離型剤を塗布する場合について説明したが、本発明は、離型剤に限らず、塗料等、他の液剤をスプレイするための静電スプレイ装置に適用することができる。
(8)上記実施形態では、ノズルからの離型剤の吐出方向が配管ユニットの下端部(長尺パイプ)に対して直角をなす場合について説明したが、このノズルヘッドに替えて、ノズルからの離型剤の吐出方向を配管ユニットの下端部(長尺パイプ)に対して斜め方向をなす別のノズルヘッドに交換してもよい。
【符号の説明】
【0049】
S…静電スプレイ装置
13…高電圧発生器
16…液剤流路
17…導電手段
41…ホース
45…短尺パイプ(別のパイプ)
46…長尺パイプ(パイプ)
47…短尺パイプの下端面(別のパイプの下流側の端面)
48…長尺パイプの上端面(パイプの上流側の端面)
50…第4コイルバネ(コイルバネ)
51…コイル部
52…コイル部の上流側座面(コイル部の上流側端部の座面)
53…コイル部の下端側座面(コイル部の下流側端部の座面)
70…駆動部材
80…ノズルヘッド
87…ノズル
92…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極とノズルが設けられたノズルヘッドと、
下流端が前記ノズルヘッドに接続された筒状をなす液剤流路と、
前記液剤流路の上流端側に配された高電圧発生器と、
前記液剤流路内に臨んで前記高電圧発生器と前記電極とを導通可能に接続させる導電手段とを備えていることを特徴とする静電スプレイ装置。
【請求項2】
前記液剤流路のうち少なくとも下流端側の領域が、前記導電手段としての機能を有する金属製のパイプを備えて構成され、
前記パイプが、前記ノズルヘッドを変位させるための駆動部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の静電スプレイ装置。
【請求項3】
前記パイプが、銅製又は銅合金製であることを特徴とする請求項2記載の静電スプレイ装置。
【請求項4】
前記液剤流路のうち前記パイプよりも上流側の領域の少なくとも一部が、可撓性を有するホースを備えて構成され、
前記ホース内に、前記導電手段として機能する金属製のコイルバネが収容されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の静電スプレイ装置。
【請求項5】
前記ホースは、前記コイルバネのコイル部よりも下流側及び上流側へ延びており、
前記ホースのうち前記コイル部よりも下流側へ延びた部分が、前記パイプに外嵌され、
前記ホースのうち前記コイル部よりも上流側へ延びた部分には、別のパイプが内嵌されており、
前記コイルバネは、前記コイル部の下流側端部の座面と上流側端部の座面を、夫々、前記パイプの上流側の端面と前記別のパイプの下流側の端面に当接させることで、前記液剤流路の長さ方向において位置決めされていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の静電スプレイ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−17921(P2013−17921A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151404(P2011−151404)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】