説明

静電噴霧用電極部

【課題】 噴霧ノズルから噴出する液滴を帯電させる静電機能を備えていない噴霧装置に対し、簡単かつ低コストに静電噴霧機能を付加することができるようにする。
【解決手段】 本発明の静電噴霧用電極部1は、液体を無数の液滴Dにして噴出する噴霧ノズル12を有する噴霧装置10に取り付けられ、該噴霧装置10に該液滴Dを帯電させる静電機能を付加する静電噴霧用電極部1であって、基端側が噴霧装置10に取り付けられ、電気絶縁性を有する電極支持部2と、電極支持部2の先端側に支持され、液滴Dを帯電させるための環状電極3とを備え、前記液体及び環状電極3の間に印加される高電圧により液滴Dを帯電させるように構成されている。電極支持部2における環状電極3から噴霧装置10までの途中部5には、環状電極3の電位が該電極支持部2を伝って漏電することを防止する漏電防止部4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧装置の噴霧ノズルから噴出される液滴を帯電させるための静電噴霧用電極部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の静電噴霧装置として、特許文献1に開示された静電式薬液散布装置を例示する。この装置は作業者の背中に背負われる背負動力噴霧機を利用したものであり、図5に示すように、導電性の薬液を帯電させるため電極82を噴頭81に備えるとともに、該電極に高電圧を印加するための高電圧発生部83を備えている。
【0003】
【特許文献1】実公平6−41641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の静電噴霧装置は、特に、噴頭81及び電極82が特有の構造となっており、この特有の構造を備えた両者の組合せで静電機能を発揮するように構成されている。このため、仮に、従来の静電噴霧装置における静電機能のための構造を、静電機能を備えていない既存の噴霧装置に対して利用しようとすると、少なくとも該既存の噴霧装置の噴霧ノズル部全体を噴頭81及び電極82に置き換える必要があり、コストが掛かるという課題がある。
【0005】
また、作物に効率よく付着させるため、薬液は浸透性及び展着性を備えるように作成されているので、薬液の噴霧は噴頭81の電極82はもちろんながら、送風パイプ84や薬液用ホース85の表面にもよく付着し、蓄積される。また、電極82はプラスに、噴霧はマイナスに誘導帯電するため、マイナス帯電の噴霧はプラスの電極82に引きつけられて付着し、蓄積される。特に長時間にわたって連続噴霧をしていると、噴頭81から送風パイプ84や薬液用ホース85へと薬液の連続膜が形成されて行く。前述したように薬液は導電性を備えているので、この連続膜を介して電極82の高電圧が背負動力噴霧機側(作業者側)へ伝わることになる。このため、例えば、この連続膜に作業者の手が触れたり、この連続膜が静電噴霧装置のアースされた部位に達したりすれば漏電が発生し、高電圧発生部83に過大な電流が流れ、十分な静電効果が得られないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の静電噴霧用電極部は、
液体を無数の液滴にして噴出する噴霧ノズルを有する噴霧装置に取り付けられ、該噴霧装置に該液滴を帯電させる静電機能を付加する静電噴霧用電極部であって、
基端側が前記噴霧装置に取り付けられ、電気絶縁性を有する電極支持部と、
前記電極支持部の先端側に支持され、前記液滴を帯電させるための電極と
を備え、
前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成されている。
【0007】
この構成によれば、前記電極支持部の基端側を前記噴霧装置に取り付けて、前記噴霧ノズルと前記液体の間に高電圧を印加することにより、前記噴霧装置に簡単に前記静電機能を付加することができる。しかも、本発明の静電噴霧用電極部は、簡単な構造であるため、低コストに実現することができる。
【0008】
前記電極支持部における前記電極から前記噴霧装置までの途中部には、前記電極の電位が該電極支持部を伝って漏電することを防止する漏電防止部が設けられている態様を例示する。
【0009】
この構成によれば、前記電極支持部には、前記漏電防止部が設けられているので、前記噴霧ノズルと前記液体の間に高電圧を確実に印加することができ、静電機能を安定的に発揮させることができる。
【0010】
前記漏電防止部は、前記電極支持部の前記途中部の全周に渡る環状凹部を備えている態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、前記漏電防止部の前記環状凹部の内側には、前記液滴が入り込み難いので、前記電極支持部への前記液滴の付着による連続膜を前記環状凹部で途切れさせるようにすることができる。これにより、導電性を有する前記液滴を通じて前記電極の高電位が前記噴霧装置側に伝わることを防止することができる。
【0012】
前記漏電防止部は、前記環状凹部の奥行きが前記途中部の延設方向へ延びている態様を例示する。
【0013】
この構成によれば、前記漏電防止部の大型化を抑制しつつ、前記環状凹部の奥行きを広く確保することができ、該環状凹部の奥側に前記液滴が、より付着し難くなる。このため、前記電極支持部への前記液滴の連続膜を前記環状凹部でより確実に途切れさせることができる。
【0014】
前記漏電防止部は、前記環状凹部の開口部が前記途中部の延設方向へ開口しているとともに、該開口部に対峙して該開口部の開口を狭める鍔部を備えた態様を例示する。
【0015】
この構成によれば、前記電極や前記電極支持部に付着した前記液滴が溜まって前記漏電防止部側に流れたときに、前記環状凹部内へ流れ込むことを防止することができ、また、前記環状凹部内へ浮遊している前記液滴が入り込むことを防止することができる。
【0016】
前記電極支持部は、前記電極を片持ち支持するように構成された態様を例示する。
【0017】
この構成によれば、単純な構造であるため、低コストに実現できる。
【0018】
前記電極支持部は、前記噴霧装置に着脱可能に取り付けられた態様を例示する。
【0019】
この構成によれば、必要に応じて前記噴霧装置に適宜着脱することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る静電噴霧用電極部によれば、噴霧ノズルから噴出する液滴を帯電させる静電機能を備えていない噴霧装置に対し、簡単かつ低コストに静電噴霧機能を付加することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1〜図3は本発明を具体化した第一実施形態の静電噴霧用電極部1を装着した噴霧装置10を示している。
【0022】
噴霧装置10は、図示しないポンプにより加圧された薬液を送る噴管11と、該噴管11の先端に装着され、薬液の液滴Dからなる噴霧Sを噴出する噴霧ノズル12とを含んでいる。噴霧ノズル12は、本例では導電性材料で形成されているが、これに限定されず、プラスチックやセラミックで形成されたものも適宜採用できる。
【0023】
静電噴霧用電極部1は、噴霧装置10に該液滴Dを帯電させる静電機能を付加するためのものであり、基端側が噴霧装置10の噴管11に取り付けられ、電気絶縁性を有する電極支持部2と、該電極支持部2の先端側に支持され、液滴Dを帯電させるための電極としての環状電極3とを備えている。そして、電極支持部2における環状電極3から噴管11までの途中部5には、環状電極3の電位が該電極支持部2を伝って漏電することを防止する漏電防止部4が設けられている。この静電噴霧用電極部1は、薬液と環状電極3の間に印加される高電圧により液滴Dを帯電させるように構成されている。薬液と環状電極3の間に高電圧を印加する方法としては、特に限定されないが、薬液に接する導電性部位(噴霧ノズル12や、導電性材料で形成された薬液供給管、薬液タンク等)や薬液中に浸けられた電極等と、環状電極3との間に高電圧を印加することを例示する。
【0024】
電極支持部2の先端側は、環状電極3の内周縁部が噴霧ノズル12から噴出される液滴Dの拡散範囲の外側に近接するようにして、該環状電極3を片持ち支持するように構成されている。また、電極支持部2の基端側は、噴霧装置10の噴管11に着脱可能に取り付けられている。本例では、電極支持部2の基端側には、電極支持部本体2aに可撓性を有する取付ベルト2bの一端側が取り付けられている。そして、取付ベルト2bを噴管11に弛み無く巻き掛けて、固定手段としてのネジ2cで電極支持部本体2aに固定することにより、噴管11に着脱可能に取り付けるように構成されている。
【0025】
環状電極3は、導電性材料による円環形の板材からなっている。この環状電極3の反噴霧ノズル側の面及び外周縁部は、電気絶縁性を有するカバー3aにより覆われている。
【0026】
漏電防止部4は、電極支持部2の途中部5の外周に装着された円環部6と、該円環部6の外周縁部に一体形成されて途中部5の延設方向両側へ延びる筒部7と、筒部7の各開口部7aに対峙して該各開口部7aの開口を狭めるように途中部5の外周にそれぞれ装着された一対の鍔部8を備えている。この鍔部8は、途中部5の外周全体にわたって径方向へ突出したフランジ状に形成されてなっている。また、円環部6及び鍔部8は、それぞれ途中部5の外周に対し、薬液が通過しないよう密着した状態で装着されている。このように、電極支持部2の途中部5と筒部7との間には、該途中部5の外周の全周にわたる環状凹部9,9が形成されている。この該環状凹部9,9は、それぞれの開口部7a,7aが途中部5の延設方向へ開口するとともに、その奥行きが途中部5の延設方向へ延びている。
【0027】
また、漏電防止部4は、例えば、以下のように変更することもできる。
【0028】
(1)図3(a)に示すように、電極支持部2の途中部5の外周に装着された円環部20と、該円環部20の外周縁部に一体形成されて途中部5の延設方向の一方側(本例では、噴管11側)へ延びる筒部21と、筒部21の開口部21aに対峙して該開口部21aの開口を狭めるように途中部5の外周に装着された鍔部8を備えているように漏電防止部4を構成すること。この構成例においても、電極支持部2の途中部5と筒部21との間には、該途中部5の外周の全周にわたる環状凹部9が形成されている。この該環状凹部9は、開口部21aが途中部5の延設方向へ開口するとともに、その奥行きが途中部5の延設方向へ延びている。なお、鍔部8における筒部21の開口部21aへの対峙面には、例えば図3(a)に二点鎖線で示すように、筒部21の内周面に対峙する外周面を有する環状凸部22を設けることにより、筒部内側へ液滴Dがさらに入りにくくすることもできる。
【0029】
(2)図3(b)に示すように、途中部5の延設方向に列設された複数(本例では、3つ)の鍔部8を備えているように漏電防止部4を構成すること。この構成においても、隣接する鍔部8の間には環状凹部9が形成される。また、鍔部8を1つ備えているように漏電防止部4を構成してもよいが、この構成では環状凹部9が形成されない。
【0030】
このような構成で噴霧ノズル12から噴出する液滴Dは誘導帯電されることになる。本例では、薬液に対して環状電極3に直流正電圧を印加し、噴霧ノズル12先端において液滴Dをマイナスに誘導帯電させるように構成されている。
【0031】
以上のように構成された本例の静電噴霧用電極部1によれば、電極支持部2の基端側を噴霧装置10に取り付けて、薬液と環状電極3の間に高電圧を印加することにより、噴霧装置10に簡単に前記静電機能を付加することができる。しかも、本発明の静電噴霧用電極部1は、簡単な構成からなっているので、低コストに実現することができる。
【0032】
また、電極支持部2には漏電防止部4が設けられているので、薬液と環状電極3の間に高電圧を確実に印加することができ、静電機能を安定的に発揮させることができる。
【0033】
また、漏電防止部4は、電極支持部2の途中部5の全周に渡る環状凹部9を備えている。このため、漏電防止部4の環状凹部9の内側には、液滴Dが入り込み難いので、電極支持部2への液滴Dの付着による連続膜Mを環状凹部9で途切れさせるようにすることができる。これにより、導電性を有する液滴Dを通じて環状電極3の高電位が噴霧装置10側に伝わることを防止することができる。
【0034】
また、前記(2)以外の構成例のように、漏電防止部4は、環状凹部9の奥行きが途中部5の延設方向へ延びているように構成すると、漏電防止部4の大型化を抑制しつつ、環状凹部9の奥行きを広く確保することができ、該環状凹部9の奥側に液滴Dが、より付着し難くなる。このため、電極支持部2への液滴Dの連続膜Mを環状凹部9でより確実に途切れさせることができる。
【0035】
また、前記(2)以外の構成例のように、漏電防止部4は、環状凹部9の開口部が途中部5の延設方向へ開口しているとともに、該開口部に対峙して該開口部の開口を狭める鍔部8を備えているように構成すると、環状電極3や電極支持部2に付着した液滴Dが溜まって漏電防止部4側に流れたときに、環状凹部9内へ流れ込むことを防止することができ、また、環状凹部9内へ浮遊している液滴Dが入り込むことを防止することができる。
【0036】
また、電極支持部2は、環状電極3を片持ち支持するように構成されており、単純な構造であるため、低コストに実現できる。
【0037】
また、電極支持部2は、噴霧装置10に着脱可能に取り付けられているので、必要に応じて噴霧装置10に適宜着脱することができる。
【0038】
次に、図4は本発明を具体化した第二実施形態を示している。この静電噴霧用電極部30は、電極支持部31の基端側が噴霧装置10における噴管11以外の部位35に固定手段としてのネジ32で着脱可能に取り付けられるように構成されている点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く。本例の静電噴霧用電極部30によっても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)本発明を他の構造の噴霧装置に対して適用可能に構成すること。例えば、本例のように先端部がL字状に形成された噴管11ではなく、直線状に延びる噴管11に対して取付可能に電極支持部2を構成すること。
(2)電極支持部2による環状電極3の支持構造を片持ち支持以外の構造に適宜変更すること。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る静電噴霧用電極部を装着した噴霧装置の側断面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】同静電噴霧用電極部における漏電防止部の変更例の側断面図であり、(a)は第一の変更例、(b)は第二の変更例をそれぞれ示す図である。
【図4】本発明を具体化した第二実施形態に係る静電噴霧装置の側断面図である。
【図5】従来の静電噴霧装置の側断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 静電噴霧用電極部
2 電極支持部
3 環状電極
4 漏電防止部
5 途中部
6 円環部
7 筒部
7a 開口部
8 鍔部
9 環状凹部
10 噴霧装置
11 噴管
12 噴霧ノズル
20 円環部
21 筒部
21a 開口部
22 環状凸部
30 静電噴霧用電極部
31 電極支持部
D 液滴
M 連続膜
S 噴霧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を無数の液滴にして噴出する噴霧ノズルを有する噴霧装置に取り付けられ、該噴霧装置に該液滴を帯電させる静電機能を付加する静電噴霧用電極部であって、
基端側が前記噴霧装置に取り付けられ、電気絶縁性を有する電極支持部と、
前記電極支持部の先端側に支持され、前記液滴を帯電させるための電極と
を備え、
前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成された静電噴霧用電極部。
【請求項2】
前記電極支持部における前記電極から前記噴霧装置までの途中部には、前記電極の電位が該電極支持部を伝って漏電することを防止する漏電防止部が設けられた請求項1記載の静電噴霧用電極部。
【請求項3】
前記漏電防止部は、前記電極支持部の前記途中部の全周に渡る環状凹部を備えた請求項2記載の静電噴霧用電極部。
【請求項4】
前記漏電防止部は、前記環状凹部の奥行きが前記途中部の延設方向へ延びている請求項3記載の静電噴霧用電極部。
【請求項5】
前記漏電防止部は、前記環状凹部の開口部が前記途中部の延設方向へ開口しているとともに、該開口部に対峙して該開口部の開口を狭める鍔部を備えた請求項3又は4記載の静電噴霧用電極部。
【請求項6】
前記電極支持部は、前記電極を片持ち支持するように構成された請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電噴霧用電極部。
【請求項7】
前記電極支持部は、前記噴霧装置に着脱可能に取り付けられた請求項1〜6のいずれか一項に記載の静電噴霧用電極部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−15293(P2006−15293A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197783(P2004−197783)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】