説明

静電噴霧装置

【課題】装置の小型化を図る。
【解決手段】液体が充填された容器と、該容器に取り付けられるとともに先端が該容器の外部に開口し且つ後端が該容器の内部に開口するノズル20と、接地点Gに接地された接地電極44を備え、該容器内の液体に電圧を印加することで該ノズル20と該接地電極44との間に形成される電界によって液体を噴霧する静電噴霧装置であって、ノズル20近傍の接地電極44は、所定の抵抗値を有する抵抗材料で構成されており、ノズル20と接地電極44との電位差が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器内の液体をノズルから噴射する噴霧装置は、幅広い分野に適用されている。この種の噴霧装置としては、電気流体力学(EHD:Electro Hydrodynamics)により液体を霧化して噴霧する静電噴霧装置が知られている。この静電噴霧装置は、ノズルの先端近傍に電界を形成し、その電界の不平等性を用いてノズルの先端の液体を霧化して噴射するものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、この種の静電噴霧装置が開示されている。この静電噴霧装置は、噴霧装置本体と、この噴霧装置本体に着脱自在に取り付けられる噴霧カートリッジとを備えている。噴霧カートリッジは、人体に有用な水溶液等の液体が貯留される容器と、この容器と連通するノズルとを備えている。噴霧カートリッジのノズルは、第1の電極を構成している。また、ノズルの周囲には、第2の電極としてのリング電極が設けられている。この静電噴霧装置では、電源からノズル及びリング電極に電位差が付与される。その結果、ノズルの先端近傍に電界が形成され、このノズルの先端から液体が霧化されて放出される。このように、室内等に放出された液体は、使用者の体内に空気とともに吸い込まれ、使用者に対してリラックス効果等の作用をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−205157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、静電噴霧装置は、携帯性等を考慮すると、できるだけコンパクトな形状にすることが好ましい。そこで、装置全体を小型化するために、2つの電極間の距離を短く設定することが考えられる。
【0006】
しかしながら、2つの電極間の距離を短く設定した場合には、静電噴霧能力が低下してしまうという問題がある。具体的に、電界E[V/m]、電極間の距離d[m]、及び電極間の電位差V[V]の間には、E=V/dという関係が成立する。ここで、距離dをd(d>d)に変更した場合には、その距離を変更する前と同じ電界Eを得るために、電位差V、すなわちノズルに印加する電圧VをV'(V>V')に変更する必要がある。これにより、E=V/d=V'/dという条件を満たすことができる。
【0007】
このように、電極間の距離を短く設定した場合には、電極間の電位差を低減させるために、ノズルに印加する電圧を低く設定しなければならず、液体を遠方に噴霧するための静電噴霧能力が低下してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の小型化を図るとともに、液体の噴霧距離を十分に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明は、ノズル近傍に配設される接地電極を、所定の抵抗値を有する抵抗材料で構成するようにした。
【0010】
具体的に、本発明は、液体が充填された容器(11)と、該容器(11)に取り付けられるとともに先端が該容器(11)の外部に開口し且つ後端が該容器(11)の内部に開口するノズル(20)と、接地点(G)に接地された接地電極(44)とを備え、該容器(11)内の液体に電圧を印加することで該ノズル(20)と該接地電極(44)との間に形成される電界によって液体を噴霧する静電噴霧装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、前記接地電極(44)は、前記ノズル(20)近傍に配設されるとともに、該ノズル(20)と該接地電極(44)との電位差を低減させる所定の抵抗値を有する抵抗材料で構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、接地電極(44)がノズル(20)近傍に配設される。そして、ノズル(20)と接地電極(44)との電位差を低減させるために、接地電極(44)が所定の抵抗値を有する抵抗材料で構成される。
【0013】
このような構成とすれば、接地電極(44)をノズル(20)近傍に配設して装置全体の小型化を図ることができる。また、小型化のためにノズル(20)と接地電極(44)との距離を短く設定した場合でも、ノズル(20)に印加する電圧を低く設定する必要が無く、液体の噴霧距離を十分に確保することができる。
【0014】
具体的に、ノズル(20)と接地電極(44)との距離dをd(d>d)に変更した場合には、距離を変更する前と同じ電界Eを得るために、これら電極間の電位差、すなわちノズル(20)に印加する電圧VをV'(V>V')に変更する必要がある。これにより、E=V/d=V'/dという条件が満たされる。
【0015】
これに対し、本発明では、接地電極(44)を所定の抵抗値を有する抵抗材料で構成するようにしたから、接地電極(44)の表面電位がVとなる。その結果、ノズル(20)に印加する電圧をVのままとしても、E=V/d=(V−V)/d(ここで、V−V=V')という条件を満たすことができ、ノズル(20)と接地電極(44)との距離を短く設定した場合でも、その距離を変更する前と同じ電界Eを得ることができる。これにより、ノズル(20)に印加する電圧を低く設定する必要が無いため、液体の噴霧距離を十分に確保することができる。
【0016】
また、接地電極(44)を抵抗材料で構成することで、ノズル(20)から噴霧された帯電した液体が接地電極(44)に付着することを防止する帯電防止効果を得ることができる。これにより、帯電した液体が接地電極(44)に付着することで表面電位が変動してしまうことがなく、安定した電界強度を確保することができる。
【0017】
第2の発明は、前記接地電極(44)は、前記ノズル(20)近傍に配設され、
前記接地電極(44)から前記接地点(G)までの接地経路には、前記ノズル(20)と該接地電極(44)との電位差を低減させる所定の抵抗値を有する抵抗体(18)が接続されていることを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明では、接地電極(44)がノズル(20)近傍に配設される。そして、ノズル(20)と接地電極(44)との電位差を低減させるために、所定の抵抗値を有する抵抗体(18)が接地電極(44)から接地点(G)までの接地経路に接続される。
【0019】
このような構成とすれば、接地電極(44)から接地点(G)までの接地経路に抵抗体(18)を接続することで、接地電極(44)の表面電位がVとなる。その結果、ノズル(20)に印加する電圧をVのままとしても、ノズル(20)と接地電極(44)との距離を短く設定する前と同じ電界Eを得ることができ、液体の噴霧距離を十分に確保することができる。
【0020】
第3の発明は、第1の発明において、
前記接地電極(44)から前記接地点(G)までの接地経路には、前記ノズル(20)と該接地電極(44)との電位差を低減させる所定の抵抗値を有する抵抗体(18)が接続されていることを特徴とするものである。
【0021】
第3の発明では、ノズル(20)と接地電極(44)との電位差を低減させるために、所定の抵抗値を有する抵抗体(18)が接地電極(44)から接地点(G)までの接地経路に接続される。このような構成とすれば、第2の発明と同様の効果を得ることができる。
【0022】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記接地電極(44)は、使用者の操作により前記容器(11)内の液体に電圧を印加するための電圧用スイッチ(47)を構成していることを特徴とするものである。
【0023】
第4の発明では、使用者の操作により容器(11)内の液体に電圧を印加するための電圧用スイッチ(47)が設けられる。この電圧用スイッチ(47)は、接地電極(44)により構成される。
【0024】
このような構成とすれば、使用者が静電噴霧装置を作動又は停止させるために電圧用スイッチ(47)を操作する際に、使用者に帯電している電荷を接地電極(44)を介して逃がすことができ、使用者が静電気により電撃を受けることが防止できる。すなわち、静電噴霧装置を作動又は停止させる際に使用者が必ず触れる箇所である電圧用スイッチ(47)を、接地点(G)に接地された接地電極(44)で構成することで、使用者が意図することなく容易に静電気の除電を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、接地電極(44)をノズル(20)近傍に配設して装置全体の小型化を図ることができる。また、小型化のためにノズル(20)と接地電極(44)との距離を短く設定した場合でも、ノズル(20)に印加する電圧を低く設定する必要が無く、液体の噴霧距離を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1に係る第1カバー側から見た静電噴霧装置を示す斜視図である。
【図2】第2カバー側から見た静電噴霧装置を示す斜視図である。
【図3】静電噴霧装置を示す正面図である。
【図4】静電噴霧装置を示す概略縦断面図である。
【図5】静電噴霧装置を示す概略縦断面図である。
【図6】静電噴霧装置の接地経路を示す概略図である。
【図7】静電噴霧装置の噴霧状態を示す概略図である。
【図8】加圧機構の構成を示す斜視図である。
【図9】静電噴霧装置の噴霧状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
《発明の実施形態1》
図1〜図5に示すように、本実施形態1に係る静電噴霧装置(1)は、卓上等に設置されて使用されるものである。この静電噴霧装置(1)は、ハウジング(41)と噴霧カートリッジ(10)とを備えている。また、静電噴霧装置(1)では、噴霧カートリッジ(10)がハウジング(41)に対して着脱可能となっている。
【0029】
前記噴霧カートリッジ(10)は、扁平な袋状容器として構成された容器(11)と、容器(11)の内部に挿入される導電部材(12)及びノズル(20)と、ノズル(20)内の液体の乾燥を防止するノズルキャップ(23)とを備えている。なお、噴霧カートリッジ(10)についての詳細は後述する。
【0030】
前記ハウジング(41)は、ハウジング本体(41a)と、ハウジング本体(41a)の両端をそれぞれ覆う一対の第1カバー(41b)及び第2カバー(41c)とを備えている。ハウジング(41)の内部には、加圧手段である加圧機構(50)と、電源部(17)(図7参照)とが収納されている。
【0031】
前記ハウジング本体(41a)は、円筒状に形成され、下部には、ハウジング本体(41a)を支持する支持部(43)が設けられている。支持部(43)の下部には、ハウジング本体(41a)を支える台座としての台座用カバー(42)が取り付けられている。
【0032】
前記ハウジング本体(41a)の上部には、ノズル(20)を保護するシュラウド(48)が形成されている。このシュラウド(48)は、ハウジング本体(41a)から外部に膨出して形成され、略中央部に凹部が形成されている。そして、シュラウド(48)には、噴霧カートリッジ(10)を装着するための孔部が形成されている。
【0033】
また、前記ハウジング本体(41a)の上部の孔部の下側には、LED(46)が取り付けられている(図1では2個)。このLED(46)は、ノズル(20)の先端から噴霧される液体に向かって照射され、静電噴霧装置(1)の使用者が、その噴霧状態を確認し得るようにするためのものである。
【0034】
前記第1カバー(41b)は、ハウジング本体(41a)の一端面と略同外形の円形に形成され、ハウジング本体(41a)の一端面を覆うように取り付けられている。第1カバー(41b)は、使用者が、ハウジング本体(41a)の周方向に回すことができるように取り付けられている。そして、使用者が第1カバー(41b)をハウジング本体(41a)の周方向に回すことで、ノズル(20)に電圧を印加するか否かを切り換えることができるようになっている。すなわち、第1カバー(41b)は、電源のオンオフを切り換える電圧用スイッチ(47)を構成している。
【0035】
そして、前記第1カバー(41b)の上側半分、すなわち、第1カバー(41b)におけるノズル(20)近傍は、所定の抵抗値を有する高抵抗材料で形成され、電荷を帯びた液体に対する接地電極(44)を構成している。具体的に、この接地電極(44)を構成する抵抗材料は、樹脂と導電材とを所定の割合で混合して成形され、電気抵抗率が1.0×10Ωcm以上1.0×10以下の範囲の値になるように設定されている。これにより、ノズル(20)と接地電極(44)との電位差を低減させることができるようになっている。
【0036】
前記第1カバー(41b)の裏面には、図示はしないが、第1カバー(41b)より小径の円筒状の巻上部が形成されている。この巻上部には、巻上部の周方向に沿って螺旋状に切り込まれた切欠が形成され、後述する加圧ステージ(52)の移動を規制している。
【0037】
前記第2カバー(41c)は、ハウジング本体(41a)の他端面と略同外形の円形に形成され、ハウジング本体(41a)の他端面を覆うように取り付けられている。そして、第2カバー(41c)の上側半分、すなわち、第2カバー(41c)におけるノズル(20)近傍は、所定の抵抗値を有する抵抗材料で形成され、電荷を帯びた液体に対する接地電極(44)を構成している。具体的に、この接地電極(44)を構成する抵抗材料は、樹脂と導電材とを所定の割合で混合して成形され、電気抵抗率が1.0×10Ωcm以上1.0×10以下の範囲の値になるように設定されている。これにより、ノズル(20)と接地電極(44)との電位差を低減させることができるようになっている。
【0038】
また、前記第2カバー(41c)の表面には、後述する電源部(17)の出力調整ボリュームと連動するボリュームツマミ(45)が設けられている。
【0039】
図6は、静電噴霧装置の接地経路を示す概略図である。図6に示すように、第1カバー(41b)及び第2カバー(41c)の接地電極(44)は、ハウジング本体(41a)内に収納された内部基板(15)の内部接地電極(16)に電気的に接続され、内部接地電極(16)を介して接地点(G)に接地されている。
【0040】
このような構成とすれば、静電噴霧装置(1)の小型化のためにノズル(20)と接地電極(44)との距離を短く設定した場合でも、ノズル(20)に印加する電圧を低く設定する必要が無く、液体の噴霧距離を十分に確保することができる。
【0041】
具体的に、電界E[V/m]、電極間の距離d[m]、及び電極間の電位差V[V]の間には、E=V/dという関係が成立する。ここで、従来の静電噴霧装置(1)のように、接地電極(44)を高抵抗材料で構成していない場合には、小型化のために距離dをd(d>d)に変更すると、その距離を変更する前と同じ電界Eを得るために、電位差V、すなわちノズルに印加する電圧VをV'(V>V')に変更する必要がある。これにより、E=V/d=V'/dという条件が満たされる。
【0042】
これに対し、本発明では、接地電極(44)を抵抗材料で構成したから、図7に示すように、接地電極(44)の表面電位がVとなる。その結果、ノズル(20)に印加する電圧をVのままとしても、E=V/d=(V−V)/d(ここで、V−V=V')という条件を満たすことができ、ノズル(20)と接地電極(44)との距離を短く設定した場合でも、その距離を変更する前と同じ電界Eを得ることができる。これにより、ノズル(20)に印加する電圧を低く設定する必要が無いため、液体の噴霧距離を十分に確保することができる。
【0043】
また、前記接地電極(44)を高抵抗材料で構成することで、ノズル(20)から噴霧された帯電した液体が接地電極(44)に付着することを防止する帯電防止効果を得ることができる。これにより、帯電した液体が接地電極(44)に付着することで表面電位が変動してしまうことがなく、安定した電界強度を確保することができる。
【0044】
また、使用者が静電噴霧装置(1)を作動又は停止させるために第1カバー(41b)を回して電圧用スイッチ(47)を操作する際に、使用者に帯電している電荷を接地電極(44)を介して逃がすことができ、使用者が静電気により電撃を受けることが防止できる。すなわち、静電噴霧装置(1)を作動又は停止させる際に使用者が必ず触れる箇所である電圧用スイッチ(47)を、接地点(G)に接地された接地電極(44)で構成することで、使用者が意図することなく容易に静電気の除電を行うことができる。
【0045】
図1〜図5に示すように、前記台座用カバー(42)は、静電噴霧装置(1)の停止時(保管時)には、ノズル(20)を保護する一方、使用時には、ハウジング(41)を支える台座として用いられる。台座用カバー(42)は、ハウジング本体(41a)の円筒状の側面に沿った碗状に形成される。台座用カバー(42)は、停止時(保管時)には、ハウジング本体(41a)の上側側面の孔部を覆ってハウジング(41)に取り付けられる一方、使用時には、ハウジング(41)から取り外され、ハウジング本体(41a)の下側の支持部(43)に取り付けられる。
【0046】
なお、前記静電噴霧装置(1)は、支持部(43)の下部に台座用カバー(42)が取り付けられて、ハウジング(41)が台座用カバー(42)に下側から支持された状態と、ハウジング(41)が支持部(43)のみによって下側から支持された状態との2段階の高さに調節することができる。
【0047】
図8は、加圧機構の構成を示す斜視図である。図8に示すように、加圧機構(50)は、噴霧カートリッジ(10)の容器(11)を圧迫して容器(11)内の液体をノズル(20)の先端に搬送するためのものである。加圧機構(50)は、定荷重ゼンマイ(51)と、加圧ステージ(52)と、仕切板(53)とを備えている。具体的に、加圧機構(50)は、ハウジング(41)の内部で、定荷重ゼンマイ(51)が、加圧ステージ(52)を第2カバー(41c)側に移動させて、加圧ステージ(52)と仕切板(53)との間で容器(11)を挟み込んで圧迫する。
【0048】
前記加圧ステージ(52)は、有底の円筒形状に形成され、両側端部に、それぞれ定荷重ゼンマイ(51)が取り付けられるゼンマイ保持部(52a)が形成されている。また、図示はしないが、加圧ステージ(52)の内側面には、加圧ステージ(52)の中心方向に向かって突出する凸部が形成されている。この凸部を第1カバー(41b)の巻上部に形成された切欠に当接させて、第1カバー(41b)をハウジング本体(41a)の周方向に回転させると、この凸部が、螺旋状の切欠に沿って第1カバー(41b)側に案内される。これに伴って、加圧ステージ(52)が第1カバー(41b)側に移動することで、加圧ステージ(52)は第1カバー(41b)に保持される。この状態において、噴霧カートリッジ(10)の容器(11)は、加圧ステージ(52)と離間している。そして、第1カバー(41b)を逆回転させて凸部を螺旋状の切欠に沿って第2カバー(41c)側に案内すると、凸部が巻上部から外れる。このときに、加圧ステージ(52)は、第1カバー(41b)に対して移動可能な状態となる。つまり、第1カバー(41b)を回転させることで、加圧ステージ(52)の保持と開放とを切り換えるように構成されている。
【0049】
前記定荷重ゼンマイ(51)は、一定の曲率に形成された帯状の金属板が渦巻状に巻かれているゼンマイである。定荷重ゼンマイ(51)は、ストロークが所定値を超えると、それ以上ストロークが大きくなっても復元力が一定になるという特性を有している。定荷重ゼンマイ(51)の本体は、加圧ステージ(52)のゼンマイ保持部(52a)に取り付けられ、渦巻状に巻かれた金属板の一端は、ハウジング本体(41a)の内部に取り付けられている。
【0050】
前記仕切板(53)は、平板状の板部材で形成され、ハウジング(41)内において、加圧ステージ(52)に対して、噴霧カートリッジ(10)の容器(11)を挟んで対向するように設置される。仕切板(53)は、ハウジング本体(41a)に取り付けられている。
【0051】
前記電源部(17)は、図示はしないが、仕切板よりも第2カバー(41c)側に設けられている。電源部(17)は、ハウジング(41)内に収納された電池からの出力電圧を、例えば6kVの高電圧に変換する。変換した高電圧は、導電部材(12)を介して噴霧カートリッジ(10)の容器(11)内の液体に印加される。また、電源部(17)には、出力される電圧を調整するための出力調整ボリュームが設けられ、この出力調整ボリュームは、第2カバー(41c)に取り付けられたボリュームツマミ(45)と連動して回転するよう構成されている。つまり、ボリュームツマミ(45)を回転させることで、電源部(17)からの出力電圧を適宜調整できるよう構成されている。なお、電源部(17)は、0kV以上で、12kV以下の値に電圧を変換するように構成されていればよい。
【0052】
前記噴霧カートリッジ(10)は、図4及び図5に示すように、扁平な袋状容器として構成された容器(11)と、容器(11)の内部に挿入される導電部材(12)及びノズル(20)と、ノズル(20)内の液体の乾燥を防止するノズルキャップ(23)とを備えている。また、噴霧カートリッジ(10)は、ノズル(20)を保護するノズルベース(30)が取り付けられた状態でハウジング(41)内に収納される。そして、噴霧カートリッジ(10)がハウジング(41)に収納されると、ノズル(20)の先端が斜め上方を向くように調整される。この噴霧カートリッジ(10)は、容器(11)が圧迫されることで、容器(11)の内部の液体がノズル(20)に供給されるよう構成されている。なお、噴霧カートリッジ(10)は、容器(11)の内部の液体が少なくなると交換される。
【0053】
前記容器(11)は、液体を浸透させない比較的柔軟な材料によって形成された2枚の矩形状のシートを重ね合わせることによって形成されている。2枚の矩形状シートは、それぞれの4辺を互いに貼り合わせることで中空の容器が形成されている。この容器(11)の上面の中央部には、後述する導電部材(12)及びノズル(20)が挿入される。容器(11)の内部には、保湿成分や抗酸化成分を含んだ液体が充填されている。この液体は、電気抵抗率が1.0×10Ωcm以上1.0×10以下の範囲の値になるように濃度が調節されている。また、容器(11)は、ハウジング(41)内においてノズル(20)とともに応じて傾いた状態で保持される。
【0054】
前記導電部材(12)は、容器(11)内に充填された液体に電荷を付与するためものである。導電部材(12)は、導電性樹脂で形成され、容器(11)内の液体に接触する一方で、電源部(17)と接続されている。
【0055】
前記ノズルベース(30)は、シュラウド(48)の一部を構成するものである。ノズルベース(30)は、横長の略直方体状に形成されるとともに、中央部に、ノズル(20)の先端が突出される貫通孔(34)が形成されている。ノズルベース(30)の長手方向の両端には、それぞれ上方に向かって延びる壁部(31)が形成される一方、下方に向かって延びる脚部(33)が形成されている。ノズルベース(30)が噴霧カートリッジ(10)に装着されると、貫通孔(34)からノズル(20)が突出した状態で固定される。ここで、壁部(31)は、その高さがノズル(20)の先端の高さ以上に突出されて形成されている。ノズルベース(30)が、噴霧カートリッジ(10)に装着された状態でハウジング(41)に取り付けられると、壁部(31)が、シュラウド(48)の長手方向の両端を形成することになる。つまり、ノズルベース(30)の壁部(31)と、シュラウド(48)の内側面(48a)とが、連続する壁面を形成して、突出するノズル(20)を包囲している。この連続する壁面は、ノズル(20)の先端から、ノズル(20)の周りに形成された電界を阻害しない距離(本実施形態1では1cm)以上を隔てて形成されている。なお、シュラウド(48)の内側面(48a)の高さは、ノズルベース(30)の壁部(31)の高さと同等の高さになるように形成されている。
【0056】
次に、前記ノズル(20)の構成について図4及び図5に基づいて説明する。ノズル(20)は、容器(11)内に充填された液体を外部に排出させるためのものである。ノズル(20)は、細管であるノズル本体(21)と、ノズル本体(21)に一体成形されるノズル保持部(22)とを備えている。
【0057】
前記ノズル本体(21)は、後端から先端に亘って内径が一様なチューブ状に形成され、後端が容器(11)の内部で開口する一方、先端が容器(11)の外部で開口している。ノズル本体(21)は、外径が、例えば0.35mmに形成され、内径(直径)が、例えば0.1mmに形成される。ノズル本体(21)は、柔軟な樹脂材料によって形成され、導電部材(12)に挿入されている。
【0058】
なお、前記ノズル本体(21)には、容器(11)から送り込まれる液体の単位時間あたりの液体量を調整するために、先端に向かう液体の流路抵抗となる流路抵抗体を設けるようにしてもよい。
【0059】
前記ノズル保持部(22)は、柔軟な樹脂材料で形成されたノズル本体(21)を保持しつつ、容器(11)に固定するためのものである。ノズル保持部(22)は、ノズル本体(21)よりも大形の略円筒状の樹脂部材で形成され、その中心にノズル本体(21)を貫通させた状態で、ノズル本体(21)をインサート成形している。ノズル保持部(22)は、ノズル本体(21)の外周面に当接する脚部が隙間を存して形成され、ノズル本体(21)を3点で支持している。そして、ノズル保持部(22)の下端は、導電部材(12)の上端面に形成された凹部に係合している。つまり、ノズル保持部(22)は、ノズル(20)の根元部を形成している。
【0060】
−運転動作−
次に、本実施形態1の静電噴霧装置(1)の動作について説明する。この静電噴霧装置(1)では、いわゆるコーンジェットモードのEHD噴霧が行われる。
【0061】
前記静電噴霧装置(1)は、使用者が噴霧カートリッジ(10)をハウジング(41)内に挿入すると運転可能な状態となる。このとき、加圧ステージ(52)には、定荷重ゼンマイ(51)で発生する荷重が加わっている。
【0062】
まず、使用者が手動で第1カバー(41b)をハウジング本体(41a)の周方向に回すと、加圧ステージ(52)に対する第1カバー(41b)の規制が解除される。規制が解除されると、加圧ステージ(52)には、定荷重ゼンマイ(51)のバネ力が加わり、加圧ステージ(52)が、仕切板(53)に向かって移動する。移動した加圧ステージ(52)と仕切板(53)とで、液体の充填された容器(11)を圧迫する。圧迫された容器(11)内の液体は、ノズル本体(21)の内部に流入する。そして、ノズル本体(21)の内部に流入した液体は、ノズル本体(21)の先端に移動する。
【0063】
一方、前記第1カバー(41b)を周方向に回すと、電圧用スイッチ(47)がオンされ、電源部(17)より導電部材(12)を介して容器(11)内の液体に高電圧が印加される。高電圧が印加されて電荷を帯びた液体は分極し、ノズル本体(21)の先端部の気液界面の近傍に+(プラス)の電荷を帯びた液体が集まる。そして、ノズル本体(21)の先端では、接地電極(44)との電位差によって気液界面が引き延ばされて円錐状となり、この円錐状となった気液界面の頂部から一部の水溶液が引きちぎられて液滴化する。
【0064】
なお、本実施形態の印加電圧の大きさ及び液体の電気抵抗率であれば、ノズル本体(21)の先端から飛散する液滴の大きさは、概ね50μmから200μmの範囲の大きさになる。ノズル本体(21)から飛散した液体は、ノズル本体(21)の先端から40〜50cm程度離れた距離まで到達する。使用者が、50cm程度前方に、顔面にノズル本体(21)の先端を向けて静電噴霧装置(1)を設置すると、飛散した液滴が使用者の顔面に付着する。
【0065】
そして、使用者が手動で第1カバー(41b)をハウジング本体(41a)の逆方向に回すと、加圧ステージ(52)が第1カバー(41b)に規制されるとともに、電圧用スイッチ(47)がオフされ、電源部(17)からの電圧が停止して噴霧が停止する。
【0066】
以上のように、本実施形態1に係る静電噴霧装置(1)によれば、接地電極(44)をノズル(20)近傍に配設して装置全体の小型化を図ることができる。また、小型化のためにノズル(20)と接地電極(44)との距離を短く設定した場合でも、ノズル(20)に印加する電圧を低く設定する必要が無く、液体の噴霧距離を十分に確保することができる。
【0067】
また、前記接地電極(44)を抵抗材料で構成することで、ノズル(20)から噴霧された帯電した液体が接地電極(44)に付着することを防止する帯電防止効果を得ることができる。これにより、帯電した液体が接地電極(44)に付着することで表面電位が変動してしまうことがなく、安定した電界強度を確保することができる。
【0068】
《発明の実施形態2》
図9は、本実施形態2に係る静電噴霧装置の構成を示す概略図である。前記実施形態1との違いは、接地電極(44)と接地点(G)との接地経路に抵抗体(18)を接続して点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0069】
図9に示すように、接地電極(44)と接地点(G)との接地経路には、所定の抵抗値を有する抵抗体(18)が接続されている。この抵抗体(18)は、電気抵抗率が1.0×10Ωcm以上1.0×10以下の範囲の値に設定されており、ノズル(20)と接地電極(44)との電位差を低減させることができるようになっている。
【0070】
このような構成とすれば、接地電極(44)の表面電位がVとなって、ノズル(20)に印加する電圧をVのままとしても、E=V/d=(V−V)/dという条件を満たすことができ、静電噴霧装置(1)の小型化のためにノズル(20)と接地電極(44)との距離を短く設定した場合でも、その距離を変更する前と同じ電界Eを得ることができる。すなわち、ノズル(20)に印加する電圧を低く設定する必要が無いため、液体の噴霧距離を十分に確保することができる。なお、本実施形態2では、接地電極(44)は抵抗材料や導電材で構成することができる。
【0071】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態1及び2について、以下のような構成としてもよい。
【0072】
本実施形態1及び2では、噴霧する液体としてヒアルロン酸を含有した水溶液やテアニンの水溶液を用いてもよい。その他、カテキンやプロアントシアニジン等の抗酸化剤の水溶液を用いてもよい。また、微生物の繁殖を抑制する機能や微生物を死滅させる機能を有する物質を含んだ液体や、空気中の臭気分子を中和などによる化学変化で無臭化する物質を含んだ液体を用いてもよい。また、各種の香料や害虫の忌避剤等を含んだ液体を用いてもよい。
【0073】
また、前記実施形態1及び2では、本発明に係る噴霧ユニットは、少なくとも容器(11)とノズル(20)とが一体的に交換可能な噴霧カートリッジ(10)によって構成されていたが、本発明に係る噴霧ユニットはこれに限られない。例えば、容器(11)のみが交換可能に構成された噴霧カートリッジであってもよい。
【0074】
また、本実施形態1及び2では、第1カバー(41b)及び第2カバー(41c)の上側半分に、所定の抵抗値を有する高抵抗材料で形成した接地電極(44)を設けた構成について説明したが、この形態に限定するものではなく、例えば、第1カバー(41b)及び第2カバー(41c)の全体を所定の抵抗値を有する高抵抗材料で形成しても良い。
【0075】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、装置の小型化を図るとともに、液体の噴霧距離を十分に確保できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0077】
1 静電噴霧装置
11 容器
18 抵抗体
20 ノズル
44 接地電極
47 電圧用スイッチ
G 接地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填された容器(11)と、該容器(11)に取り付けられるとともに先端が該容器(11)の外部に開口し且つ後端が該容器(11)の内部に開口するノズル(20)と、接地点(G)に接地された接地電極(44)とを備え、該容器(11)内の液体に電圧を印加することで該ノズル(20)と該接地電極(44)との間に形成される電界によって液体を噴霧する静電噴霧装置であって、
前記接地電極(44)は、前記ノズル(20)近傍に配設されるとともに、該ノズル(20)と該接地電極(44)との電位差を低減させる所定の抵抗値を有する抵抗材料で構成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項2】
液体が充填された容器(11)と、該容器(11)に取り付けられるとともに先端が該容器(11)の外部に開口し且つ後端が該容器(11)の内部に開口するノズル(20)と、接地点(G)に接地された接地電極(44)とを備え、該容器(11)内の液体に電圧を印加することで該ノズル(20)と該接地電極(44)との間に形成される電界によって液体を噴霧する静電噴霧装置であって、
前記接地電極(44)は、前記ノズル(20)近傍に配設され、
前記接地電極(44)から前記接地点(G)までの接地経路には、前記ノズル(20)と該接地電極(44)との電位差を低減させる所定の抵抗値を有する抵抗体(18)が接続されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記接地電極(44)から前記接地点(G)までの接地経路には、前記ノズル(20)と該接地電極(44)との電位差を低減させる所定の抵抗値を有する抵抗体(18)が接続されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記接地電極(44)は、使用者の操作により前記容器(11)内の液体に電圧を印加するための電圧用スイッチ(47)を構成していることを特徴とする静電噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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