説明

静電気保護構造

【課題】電子回路の動作に静電気の影響を与えない静電気保護構造を得る。
【解決手段】プリント基板に搭載された半導体素子を静電気から保護する静電気保護構造において、静電気放電用金属板が、半導体素子と対向する部分に開口部を備えていて、上記半導体素子と上記静電気放電用金属板との間の距離が、上記静電気放電用金属板を流れる放電電流による電磁場が上記半導体素子に干渉せぬような距離である。
【効果】放電用金属板にグランドへの電流が流れても基板の半導体素子に影響しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は回路基板に印加される静電気に対する保護構造に関するものであり、特に、プリント基板に搭載された半導体素子を静電気から保護するために、静電気印加地点とグランド間に静電気放電経路を形成するための静電気放電用金属板を備えた静電気保護構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回路基板に対する静電気保護構造においては、静電気印加地点とグランドまでを低インピーダンスで繋ぐことが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−241888号公報(図1、図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような静電気保護構造に対しては、静電気印加地点とグランドまでを低インピーダンスで繋ぐため、静電気をグランドへ逃がす経路の金属部分(静電気放電用金属)の寸法を大きくする必要があった。その結果、静電気放電用金属部分と半導体素子との間の距離が小さくなり、静電気放電用金属を流れる静電気放電電流が発生する電磁場と、回路基板上の半導体素子とが干渉し、素子が誤動作する虞があった。
【0005】
従ってこの発明の目的は、静電気が回路基板の動作に実質的な影響を与えないような静電気保護構造を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によれば、プリント基板に搭載された半導体素子を静電気から保護するために、静電気印加地点とグランド間に静電気放電経路を形成するための静電気放電用金属板を備えた静電気保護構造において、上記静電気放電用金属板が、上記半導体素子の上方で上記プリント基板と平行に配置されており、上記半導体素子と対向する部分が、開口部を備えていて、上記半導体素子と上記静電気放電用金属板との間を所定距離離したこと(上記静電気放電用金属板を流れる放電電流による電磁場が上記半導体素子に干渉することによる素子誤動作が実質的に無視できるような距離にされていること)を特徴とする静電気保護構造が得られる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、静電気放電用金属部分に穴、あるいは切り欠きなどの開口部を設けることにより、静電気によるノイズ電圧が印加され、静電気放電用金属板を静電気電流が流れた場合においても、回路基板上の半導体素子に誤動作という点で実質的な影響を無くして、静電気をグランドに逃がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による静電気保護構造を適用した半導体装置1を示す概略平面図であり、図2は図1の線II−IIに沿った概略側面図である。これらの図において、半導体装置1は、プリント基板2上に搭載された半導体素子3を静電気から保護するために、矢印Aで示す静電気印加地点(例えば外部アクセス用コネクタ4あるいは人体接触部分5など)とグランド6との間に静電気の放電電流路7を形成するための静電気放電用金属板9を備えた静電気保護構造を持っている。
【0009】
静電気放電用金属板9は、図示の例では正方形の導電性金属板部材であって、プリント基板2に設けられた支持体10によって、半導体素子3から所定の距離離間した位置で、プリント基板2に対して平行に支持されている。静電気放電用金属板9の、半導体素子3と対向する部分には、半導体素子3から離間して、半導体素子3を囲む閉じた縁11持つ正方形の穴である開口部12が設けられている。開口部12は、静電気放電用金属板9に、プリント基板2に設置されている半導体素子3を垂直投影した場合の投影像よりも大きいことが望ましく、図1、図2はその具体例を示したものである。
【0010】
静電気放電用金属板9とプリント基板2上の半導体素子3との間の距離は、静電気印加地点である外部アクセス用コネクタ4あるいは人体接触部分5からグランド6に向かって静電気放電用金属板9内を流れる放電電流による電磁場の半導体素子3への干渉による半導体素子3の誤動作の確率を所定値以下に抑えることのできる距離に設定される。静電気放電用金属板9の開口部12の縁11と静電気放電用金属板9の外縁13との間の距離、すなわち放電電流路7の幅となる寸法は、放電電流に対して低いインピーダンスとなるように十分に大きくされている。ここで「低インピーダンス」とは、静電気放電用金属板9の電位が実質的に接地電位とみなせて、それにより半導体素子が実質的に誤動作しないようなインピーダンスのことを言う。
【0011】
このような構成によれば、放電電流路7の幅寸法が大きいため、静電気印加地点である外部アクセス用コネクタ4や人体接触部分5などのその他の印加地点から静電気放電用金属板9に印加された静電気ノイズを低インピーダンスの電流路を介してグランドへ逃がすことが出来る。また、静電気放電用金属板9には開口部12が空けられていて半導体素子3から所定の距離離間しているので、静電気放電用金属板9上を流れる静電気電流による電磁場の半導体素子3への干渉による半導体素子3の誤動作の確率を所定値以下に抑えることができるため回路動作への悪影響も実質的になくすことができる。
【0012】
実施の形態2.
また、静電気放電用金属板9をこのような開口部12を持つ穴空き構造にすることによって、図3のような静電気印加地点である外部アクセス用コネクタ4が複数あるような場合にも、プリント基板2上の半導体素子3の動作への影響を実質的に無くすことができ、全ての静電気印加地点Aから低インピーダンスでグランド6へ静電気ノイズを逃がすことが出来る。
【0013】
実施の形態3.
同様に、図4のように金属筐体を持った外部アクセス用コネクタ4などが無い部分において人体接触部分5などのようにプリント基板2の周辺に外部から静電気が印加される場合を想定しても、静電気放電用金属板9が静電気ノイズの避雷針となり、プリント基板2上の回路動作への悪影響を実質的に無くして、静電気ノイズをグランド6へ低インピーダンスで逃がすことが出来る。
【0014】
実施の形態4.
また、静電気放電用金属板9の外形形状は正方形に限らない。開口部12の形状も、閉じた縁11を持つ正方形の開口部12などの穴あき構造には限られない。例えば図5に示すように半導体素子3を距離をおいて囲む開いた縁14を持つ切欠15を持つU字型の静電気放電用金属板9であっても良い。静電気を接地に逃がす低インピーダンス電流路を確保することができ、且つ、半導体素子3の近傍が電流路にならないような構造であれば、同様な効果を奏することができる。
【0015】
実施の形態5.
また、図6に示すように半導体素子3を離間して部分的に囲む縁16を持つ切欠17を持つL字型の静電気放電用金属板9でも良い。このような構成においても、静電気印加地点A(外部アクセス用コネクタ4など)からグランド6へと至る静電気の放電電流路7とプリント基板2上の半導体素子3は干渉せず、その結果、回路動作への悪影響を実質的に無くして、静電気ノイズをグランド6へ速やかに逃がすことが出来る。その他の構成は図1および2に示すものと同様である。
【0016】
実施の形態6.
図7および図8には、静電気放電用金属板18が半導体素子3の放熱板としても兼用された場合の実施の形態を示す。半導体素子3は非導電性の熱伝導性部材19を介して、放電用金属板に熱的に接続されていて、半導体素子3の熱が非導電性の熱伝導性部材19を介して静電気放電用金属板18に伝達され、静電気放電用金属板18から放熱される。このように半導体素子3と静電気放電用金属板18を繋ぐものとして、非導電性の熱伝導性部材19を用いていても、静電気が印加された際に放電用金属板を流れる静電気電流と半導体素子は干渉することはない。その他の構成は図1および2に示すものと同様である。
【0017】
実施の形態7.
図9および図10に示す静電気保護構造においては、静電気放電用金属板20に開口部21が設けられており、この開口部21内に半導体素子3に熱的に接続された放熱金属板22が設けられている。図示の例では放熱金属板22は、静電気放電用金属板20から連続して一体に延びた細い吊りピン状の接続部材23によって支持されていて、接続部材23はまた、放熱金属板22にも一体的に連続したものであり、例えば一枚の金属板を打ち抜き加工などすることにより図9に示すような平面形を得ることができる。このような細い吊りピン状の接続部材23によって放熱金属板22を開口部21内に支持すれば、放熱金属板22は静電気放電用金属板20からインピーダンス的に分離されているので、静電気印加地点Aである例えば外部アクセス用コネクタ4に静電気が印加されても、放熱金属板22に実質的な放電電流が流れることがなく、半導体素子3に静電気による実質的な影響がおよぶことがない。
【0018】
実施の形態8.
図11および図12に示す静電気保護構造においても、静電気放電用金属板20に開口部21が設けられており、この開口部21内に半導体素子3に熱導通関係に接続された放熱金属板22が設けられている。図示の例では開口部21内の接続部材24は、静電気放電用金属板20から連続して一体に十文字型に延びた細い吊りピン状の部材である。開口部21内に配置された放熱金属板22は、この十文字型の接続部材24の上に、非導電性の熱伝導性部材25を介して固着されている。このように放熱金属板22は、熱伝導性部材25によって接続部材24に熱的に接続され、接続部材24は半導体素子3に熱的に接続されている。このような細い吊りピン状の接続部材24によって放熱金属板22を開口部21内に支持すれば、放熱金属板22は静電気放電用金属板20からインピーダンス的に分離されているので、静電気印加地点Aである例えば外部アクセス用コネクタ4に静電気が印加されても、放熱金属板22に実質的な放電電流が流れることがなく、半導体素子3に静電気による実質的な影響がおよぶことがない。
【0019】
実施の形態9.
図13および図14に示す静電気保護構造は、静電気放電用金属板26と開口部27内に配置された放熱金属板28とが互いに離間していて電気的にも構造的にも完全に分離された構造である。放熱金属板28は絶縁性の熱伝導性部材29によって半導体素子3上に固着されて支持されている。この静電気保護構造においては、印加された静電気ノイズを放電するための金属部分である静電気放電用金属板26と半導体素子3の熱を放熱するための金属部分である放熱金属板28とは電気的に完全に分離されており、放熱金属板28は半導体素子3には熱的に接続されているため、静電気ノイズの速やかな放電と半導体素子3の放熱を両方とも効率的に行える構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の静電気保護構造を適用した半導体装置の概略平面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿って静電気保護構造を示す半導体装置の概略断面図である。
【図3】本発明の静電気保護構造の別の例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の静電気保護構造のさらに別の例を示す概略平面図である。
【図5】本発明の静電気保護構造のさらに別の例を示す概略平面図である。
【図6】図5の線VI−VIに沿った概略断面図である。
【図7】本発明の静電気保護構造のなお別の例を示す概略平面図である。
【図8】図7の線VIII−VIIIに沿った概略断面図である。
【図9】本発明の静電気保護構造のまた別の例を示す図である。
【図10】図9の線X−Xに沿った概略断面図である。
【図11】本発明の静電気保護構造のさらにまた別の例を示す図である。
【図12】図11の線XII−XIIに沿った概略断面図である。
【図13】本発明の静電気保護構造の別の例を示す図である。
【図14】図13の線XIV−XIVに沿った概略断面図である。
【符号の説明】
【0021】
2 プリント基板、3 半導体素子、6 グランド、7 静電気放電経路、9 静電気放電用金属板、11、14、16 縁、12、15、17、21、27 開口部、15、17 切欠、19 熱伝導性部材、22 放熱金属板、23、24 接続部材、25 熱伝導部材、26 静電気放電用金属板、28 放熱金属板、A 静電気印加地点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板に搭載された半導体素子を静電気から保護するために、静電気印加地点とグランド間に静電気放電経路を形成するための静電気放電用金属板を備えた静電気保護構造において、
上記静電気放電用金属板が、上記半導体素子の上方で上記プリント基板と平行に配置されており、上記半導体素子と対向する部分が、開口部を備えていて、上記半導体素子と上記静電気放電用金属板との間を所定距離離したことを特徴とする静電気保護構造。
【請求項2】
上記開口部が、上記静電気放電用金属板に設けられて上記半導体素子を囲む閉じた縁を持つ穴であることを特徴とする請求項1記載の静電気保護構造。
【請求項3】
上記開口部が、上記静電気放電用金属板に設けられて上記半導体素子を囲む開いた縁を持つ切欠であることを特徴とする請求項1記載の静電気保護構造。
【請求項4】
上記半導体素子と上記静電気放電用金属板とを互いに熱的に接続する非導電性の熱伝導性部材を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項記載の静電気保護構造。
【請求項5】
上記開口部内に上記半導体素子に熱的に接続された放熱金属板を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項記載の静電気保護構造。
【請求項6】
上記放熱金属板が上記開口部の上記縁から連続して延びた上記静電気放電用金属板と一体の接続部材によってインピーダンス的に分離されて支持されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項記載の静電気保護構造。
【請求項7】
上記接続部材が、上記放熱金属板にも連続して一体に延びたものであることを特徴とする請求項6記載の静電気保護構造。
【請求項8】
上記接続部材と上記放熱金属板との間に、上記接続部材と上記放熱金属板とを熱的に接続する非導電性の放熱板を備えたことを特徴とする請求項6記載の静電気保護構造。
【請求項9】
上記放熱金属板が、上記静電気放電用金属板に対して離間していて、上記半導体素子により支持されていることを特徴とする請求項6記載の静電気保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−288092(P2008−288092A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133085(P2007−133085)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】