説明

静電気放電および放送電波妨害に対する保護を提供する導電性インサートおよびコンピュータ・システム

【目的】 外付けの超小型電子装置を保護するための導電性インサートを提供する。
【構成】 導電性インサートは、超小型電子装置のESD(静電気放電)またはRFI(放送電波妨害)による破壊または動作不能を防ぐように設計される。導電性インサートは、第1の外側面と第2の内側面を有する。第2の内側面は、その上に導電性材料が付着され、外付けの電子装置にESDまたはRFIに対する保護を提供する。外付けの超小型電子部品を保護するために、外付け電子装置を覆う取付け板の内部に導電性インサートが取り付けられる。導電性材料を内側表面に付着させる代わりに、最初に導電性インサートを導電性材料で製造することもできる。さらに、導電性フィンガばねを導電性インサート内に形成して、取付け板と超小型電子装置または導電性製品ケースとの間で電気接続を提供することもできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般に、電磁保護を提供する装置に関し、より詳細には、関連構造物の外側に接続された電子回路に電磁保護を提供する導電インサートに関する。
【0002】
【従来の技術】超小型電子回路、具体的には、その中に組み立てられた集積回路は、静電気放電(ESD)または放送電波妨害(RFI)にさらされると容易に破壊されるかまたは一時的に動作不能になることがある。ここでESDとは、Electro StaticDischargeの略である。物質と物質が摩擦、加圧、衝突など接触・分離することで双方の物質に静電気が発生する。そして絶縁物や絶縁された導電体に残留(帯電)し、残留した静電気は、物体に触れると瞬時に放電する。これを静電気放電という。コンピュータの電子回路に使用されている素子は静電気の影響を受けやすいので、種々の対策が取られている。ここでRFIとは、Radio Frequency Interferenceの略である。電子機器が放射する不要な電磁波や、電源ラインなどを通じて放出される電気的雑音により、放送電波が妨害される現象をいう。通常は、集積回路が完成品の中に組み込まれると、静電気放電または放送電波妨害から隔離される。これは、ESDおよびRFIを遮断または消散する金属かごの中に装置を入れることによって実現される。残念ながら、一部の電子装置は、この金属かごの外側に置かなければならず、したがってESDおよびRFIの問題にさらされる。
【0003】ある種の装置は、たとえば中規模コンピュータやメイン・フレーム・コンピュータなどの大型コンピュータに通常見られる操作パネルを備える。したがって、プラスチックの装飾用ベゼルは、ESDおよびRFIに対する遮蔽を行うために内側面にニッケルまたは銅の導電性塗料が塗られており、システム・フレームにしっかりと固定されて、金属ケースと電気接触を行い導電性外被内に電子回路を格納する。
【0004】この解決法に伴う問題点には、非導電性のままにすべき部分の周りで、費用がかかる広範囲な手によるマスキングを使用することが含まれる。次に、プラスチックのベゼルは、一度導電性塗料を塗ると再利用ができず環境的に好ましくない。さらに、内側の狭い角には塗料を均一に塗りにくいので、塗料を必要な粘稠度で塗ることは難しい。この場合、塗料を吹き付けたときにブリッジができたり吹き戻しが発生したりする。したがって、実施する際に設計や製造に大きな労力を必要とせず費用のかからない、外付けの電子装置を保護する構造が必要とされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、電磁保護を提供することである。
【0006】本発明のもう1つの目的は、関連構造物の外側に接続された電子回路に、静電気放電および放送電波妨害に対する保護のための導電性インサートを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明により、外付けの超小型電子装置を保護するための導電性インサートが開示される。導電性インサートは、静電気放電または放送電波妨害に起因する超小型電子装置の破壊または動作不能を防ぐように設計される。導電性インサートは、第1の外側面と第2の内側面を有する。第2の内側面は、外付けの電子装置にESDまたはRFIに対する保護を提供するために、表面に導電性材料が付着されている。外付けの超小型電子部品を保護するため、外付け電子装置を覆う取付け板の内側に導電性インサートが取り付けられている。導電性材料を内側面に付着させる代わりに、最初に導電性インサートを導電性材料から製造することもできる。さらに、電気接続するフィンガばねを導電性インサート内に形成して、必要ならば導電性インサートと超小型電子装置の間の電気接続を可能にし、あるいは導電性インサートと製品の金属ケースの間の電気接続を強化することもできる。
【0008】
【実施例】導電性インサート12は、導電体で作成された熱成形プラスチック部品からなり、外付け電子装置の電磁保護および放送電波妨害に対する保護を可能にする。導電性インサート12は、インサート12を形成する前に基材に、積層箔を介した真空蒸着により導電性表面膜を付加することによって導電性にする。この方法は、多少費用がかかるが、ESDおよびRFI保護を提供するために、操作パネル・ベゼル自体へのマスキングなどの高価な二次操作が不要で、導電性の操作ベゼルを準備するのに必要なコストの約半分にコストが削減される。
【0009】操作パネル10に導電性を与えるもう1つの方法は、インサート12の熱成形を行う前に原料に導電性粒子を混ぜるものである。もう1つの方法は、すでにすべての開口部およびフィーチャを定位置に設けた、あらかじめ熱成形した非導電性のインサートに、従来技術による解決法で操作パネル・ベゼルに使用されたものと同様の導電性塗料を塗るものである。導電性塗料の利用は、簡単で周知なので好ましい方法である。さらに、導電性塗料の電気特性は周知であり、標準の使用に定評がある。一方、あらかじめ作成された熱成形インサートに、たとえば銅やニッケルの電解メッキまたはアルミニウムやその他の材料の真空蒸着など導電性表面膜を付着させる他の方法を使用することもできる。
【0010】インサートに塗装するのは、むきだしのベゼルに塗装するのと同じに見えるが、重要な利点が得られる。具体的には、熱成形インサートは、スチレンや非充填ポリカーボネート・シートなどの安価な材料で作成でき工具をあまり必要とせず、大量に生産できるので、製造コストが安くつく。さらに、この部品は、塗装や熱付着などの前にマスクをかける必要がない。パネル10に塗装するときには、いくつかの部分は非導電性のままでなければならない。このため、パネル10の装飾部分からはみ出して吹付けしないようにマスキングが必要である。導電性インサート12上で非導電性のままにしなければならない部分に関しては、導電性インサート12が操作パネル10と超小型電子装置の間の単に積層物として機能するように、これらの部分を穴開けすればよい。さらに、操作ベゼルは、通常1回に1つのベゼルが処理される。導電性インサートを使用すると、1回に複数のインサートをシートに熱成形し切断前に塗装できるので、大量生産が可能になる。これは、従来の方法に比べて労力とコストの大幅な節約となる。
【0011】また、導電性インサート12は、導電性のばねフィンガ14がばねフィンガの対象となる素子間で電気接続を提供できるとき、ばねとしても働く。これにより、いくつかの用途で一般に使用される金属フィンガ・ストックをなくし、さらにコストを節約することができる。導電性インサートを準備することによる複雑さの増大は、トリム工具とわずかな設計変更だけである。
【0012】図3は、操作パネル・ベゼル10と超小型電子装置16の間に挟まれた導電性インサート12の拡大図である。超小型電子装置16は、操作パネル・ベゼル10に、小さなねじまたは他の締付け部品(図示せず)によって成形支柱26を介して取り付けられ、それにより導電性インサート12を動かないように固定する。導電性インサート12は、その本体に開けられた穴を介して支柱26にはめ込まれる。これらの穴は、摩擦ばめをもたらし、ベゼル10、超小型電子装置16、および以下に述べる他の組立て部品に対する適正な横方向の位置決めを保証する。この摩擦ばめにより、インサートが横方向にずれず、またその導電性側面とベゼル内の論理回路または部品との間の不慮の接触が起こらないようになる。さらに、操作員が利用可能なキースイッチ22が組み立てられ、成形ボス18を介しナットおよびワッシャ20で操作パネル・ベゼルに取り付けられる。キースイッチ22は、電気的には、導電性表面に取り付けることのできない部品であり、したがって導電性インサート12のクリアランス・ホールを通して突き出る。キースイッチ22は、キースイッチと一体のケーブルおよびコネクタによって超小型電子装置16に電気的に接続される。操作パネル・ベゼル10に導電性塗料を塗った元の構成では、キースイッチ22の取付け部分は高価なマスキングが必要であった。端部にLEDを有する追加の電子ストラップ24が、操作員に情報を提供し、超小型電子装置16を介してシステム性能やその他の状況を伝達する。ストラップ24の端部にあるLEDは、ベゼル10の成形部分にはめ込まれ、キースイッチ22と同様に導電性インサート12に開けられた穴を通って突き出す。導電体性塗料を塗ったベゼルを使用する元の構成では、この部分にも高価なマスキングが必要であった。アセンブリは、ベゼル10のもう1つの成形部分に摩擦ばめし、やはりキースイッチ22と同様に導電性インサート12の打抜き穴から突き出す小型バッテリ28によって完成し、これにより、前述の元の構成で必要とされたマスキングが不要になる。
【0013】導電性インサート12は、支柱26によって横方向の動きを制限され、さらに、このアセンブリが、金属から構成され導電性表面を提供するために塗装されてない装置または計算システムの表面に、ベゼル10の外側フランジを通してねじで取り付けられたときは、超小型電子装置16の平面に垂直な方向でも動きが制限される。このとき、インサート12の外側フランジ(超小型電子装置16の平面に平行で、ベゼル10の外周よりも大きい)は、ベゼルと装置表面の間に動かないように固定され(図示してないが、図の部品の右側)、超小型電子装置16に対して垂直な方向で適正な位置を確保する。上述のようなインサート固定動作によって、インサートと装置表面の間に電気接触が生じ、超小型電子装置16が導電性外被内に配置される。
【0014】図4は、導電性インサート12と操作パネル10が、どのように超小型電子装置16にはめ込まれコンピュータ・システム30に接続されるかを示す分解図である。導電性インサート12は、導電性材料からなりコンピュータ・システム30内部の部品に対するESDおよびRFI保護を提供する、外表面パネル32に電気接続される。図5に示した、組立て済みのコンピュータ・システム30は、超小型電子装置の保護用の導電性外被を提供する。保護カバー板34はコンピュータ・システム30の前面を保護し、かつ操作ベゼル10を、システム・ユーザが利用できるように適切な開口部36を介してはめ込めるようにする。
【0015】インサート12は簡単に再利用することはできないが、普通なら導電性被膜または粒子で製造されているはずの操作ベゼル10は、より簡単に再利用することができる。さらに、インサート12は、ベゼル10よりも材料を必要としないので、ベゼルが破棄された後で通常発生するごみの量がさらに減少する。
【0016】まとめとして、本発明の構成に関して以下の事項を開示する。
【0017】(1)静電気放電(以下、ESD)または放送電波妨害(以下、RFI)による損傷から外付けの超小型電子装置を保護するための導電性インサートであって、第1の外側面と、第2の内側面と、前記第2の内側面に付着され、それにより前記外付けの超小型電子装置にESDおよびRFIに対する保護を提供する導電性材料とを備える導電性インサート。
(2)前記導電性材料を付着したばねフィンガをさらに備えることを特徴とする、上記(1)に記載の導電性インサート。
(3)前記導電性材料が導電性塗料であることを特徴とする、上記(1)に記載の導電性インサート。
(4)前記導電性材料が蒸着により付着された金属であることを特徴とする、上記(1)に記載の導電性インサート。
(5)外付けの超小型電子装置をESDおよびRFIから保護するための導電性インサートであって、第1の外側面と、第2の内側面とを備え、前記第1の外側面と前記第2の内側面が導電性材料で作成され、それにより前記外付け超小型電子装置に前記ESDおよびRFIに対する保護を提供することを特徴とする導電性インサート。
(6)外付けの電子装置にESDおよびRFIに対する保護を提供するための構造であって、前記外付け電子装置を覆う取付け板と、前記取付け板の内部に取り付けられ第1の外側面と第2の内側面を備えた導電性インサートとを備え、前記第2の内側面に、前記ESDおよびRFIに対する保護を提供するために導電性材料が付着されることを特徴とする構造物。
(7)前記電子装置が導電性表面に取り付けられ、それにより前記導電性インサートと前記導電性表面の間に導電性外被を構成することを特徴とする、上記(6)に記載の構造物。
(8)外付け電子装置にESDおよびRFIに対する保護を提供する構造物を備えたコンピュータ・システムであって、外側面を有する導電体システムと、前記外付け電子装置を覆う取付け板と、前記取付け板内側の前記外側面に取り付けられた導電性インサートとを備え、それにより、前記外付けの電子装置に前記ESDおよびRFIに対する保護を提供するための導電性の装置保護外被を構成するコンピュータ・システム。
(9)前記導電性インサートがさらに、導電性ばねフィンガを備えることを特徴とする、上記(8)に記載のコンピュータ・システム。
(10)前記導電性インサートが、少なくとも1つの表面に付着された導電性塗料の使用によって導電性にされることを特徴とする、上記(8)に記載のコンピュータ・システム。
(11)前記導電性インサートがさらに、付着によって付加された金属を含み、それにより前記導電性を提供することを特徴とする、上記(8)に記載のコンピュータ・システム。
(12)前記導電性インサートがさらに、第1の外側面と、第2の内側面とを備え、前記第1の外側面と前記第2の内側面が導電性材料で作成され、それにより前記外付け電子装置に前記ESDおよびRFIに対する保護を提供することを特徴とする、上記(8)に記載のコンピュータ・システム。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の技術において使用される、外付け装置を覆う操作ベゼルまたは操作パネル10の部分切開斜視図である。
【図2】外付け装置とその操作パネル10の間に挿入され、ESDおよびRFIに対する保護を提供する、本発明による導電性インサートの斜視図である。
【図3】図2の導電性インサートが操作ベゼルと保護すべき超小型電子部品との間にどのように挟まるかを示す分解図である。
【図4】本発明によるコンピュータ・システムへの電子装置の取付けを示す分解図である。
【図5】ESDおよびRFIからの保護用のベゼル・インサートを備えた、組立て済みのコンピュータ・システムの部分分解図である。
【符号の説明】
10 操作パネル・ベゼル
12 導電性インサート
14 ばねフィンガ
16 超小型電子装置
18 装飾ボス
20 ナットとワッシャ
22 キースイッチ
24 電子ストラップ
26 支柱
28 小型バッテリ
30 コンピュータ・システム
32 外表面パネル
34 保護カバー板
36 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】静電気放電(以下、ESD)または放送電波妨害(以下、RFI)による損傷から外付けの超小型電子装置を保護するための導電性インサートであって、第1の外側面と、第2の内側面と、前記第2の内側面に付着され、それにより前記外付けの超小型電子装置にESDおよびRFIに対する保護を提供する導電性材料とを備える導電性インサート。
【請求項2】前記導電性材料を付着したばねフィンガをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の導電性インサート。
【請求項3】前記導電性材料が導電性塗料であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性インサート。
【請求項4】前記導電性材料が蒸着により付着された金属であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性インサート。
【請求項5】外付けの超小型電子装置をESDおよびRFIから保護するための導電性インサートであって、第1の外側面と、第2の内側面とを備え、前記第1の外側面と前記第2の内側面が導電性材料で作成され、それにより前記外付け超小型電子装置に前記ESDおよびRFIに対する保護を提供することを特徴とする導電性インサート。
【請求項6】外付けの電子装置にESDおよびRFIに対する保護を提供するための構造であって、前記外付け電子装置を覆う取付け板と、前記取付け板の内部に取り付けられ第1の外側面と第2の内側面を備えた導電性インサートとを備え、前記第2の内側面に、前記ESDおよびRFIに対する保護を提供するために導電性材料が付着されることを特徴とする構造物。
【請求項7】前記電子装置が導電性表面に取り付けられ、それにより前記導電性インサートと前記導電性表面の間に導電性外被を構成することを特徴とする、請求項6に記載の構造物。
【請求項8】外付け電子装置にESDおよびRFIに対する保護を提供する構造物を備えたコンピュータ・システムであって、外側面を有する導電体システムと、前記外付け電子装置を覆う取付け板と、前記取付け板内側の前記外側面に取り付けられた導電性インサートとを備え、それにより、前記外付けの電子装置に前記ESDおよびRFIに対する保護を提供するための導電性の装置保護外被を構成するコンピュータ・システム。
【請求項9】前記導電性インサートがさらに、導電性ばねフィンガを備えることを特徴とする、請求項8に記載のコンピュータ・システム。
【請求項10】前記導電性インサートが、少なくとも1つの表面に付着された導電性塗料の使用によって導電性にされることを特徴とする、請求項8に記載のコンピュータ・システム。
【請求項11】前記導電性インサートがさらに、付着によって付加された金属を含み、それにより前記導電性を提供することを特徴とする、請求項8に記載のコンピュータ・システム。
【請求項12】前記導電性インサートがさらに、第1の外側面と、第2の内側面とを備え、前記第1の外側面と前記第2の内側面が導電性材料で作成され、それにより前記外付け電子装置に前記ESDおよびRFIに対する保護を提供することを特徴とする、請求項8に記載のコンピュータ・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平8−78875
【公開日】平成8年(1996)3月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−193092
【出願日】平成7年(1995)7月28日
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレイション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION