説明

静電気除去方法

【課題】半導体装置のパッケージ表面から静電気を確実に除去する。
【解決手段】パッケージ化された半導体装置12はキャリア13により噴霧装置10まで搬送される。ノズルガン19の噴霧部19aから霧状のアルコール30が半導体装置12のパッケージ表面12aに噴き付けられる。アルコールの揮発によってパッケージ表面12aに帯電した静電気が除去される。噴霧室15を出た半導体装置12はイオナイザ11に送られる。電源供給器33により針状電極35に電圧が加えられると、コロナ放電が発生する。コロナ放電により針状電極35の周囲にイオンが集まる。送風器34は針状電極35に対して風34aを送る。イオン化エアー40が半導体装置12のパッケージ表面12aに当てられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気を帯びた帯電体の表面、特に、半導体装置のパッケージ表面から静電気を除去する静電気除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、半導体装置のパッケージ表面(以下単に「パッケージ表面」とする)に静電気が帯電することがある。パッケージ表面に静電気が帯電した状態で、半導体装置の信号端子が金属などに接触した場合には、激しい放電が発生し、その放電が原因で半導体装置内の電子回路が破壊されてしまうおそれがある。この放電は、静電気放電(ESD;Electro-Static Discharge)と呼ばれている。
【0003】
これまで、静電気放電の発生を防ぐため、即ち、静電気を除去するために様々な試みがなされてきた(特許文献1〜3参照)。特許文献1の発明は、コロナ放電によりイオン化エアを効率よく発生させ、そのイオン化エアを静電気を帯びた帯電体に当てることによって、静電気を除去している。特許文献2の考案は、導電性の静電気除去ブラシを帯電体に接触させることによって、静電気を除去している。特許文献3の考案は、帯電体に静電気中和剤を噴射して、静電気を除去している。
【特許文献1】特開昭55−62503号公報
【特許文献2】実開昭55−99100号公報
【特許文献3】実開昭57−140099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の静電気を除去する方法をパッケージ表面における静電気の除去に用いる場合には、以下のような問題がある。特許文献1の発明については、パッケージ表面に帯電した静電気を除去するものとして有効である。ところが、パッケージ表面の帯電量は常に一定とは限らないため、イオン化エアに含まれるイオンの電荷量とパッケージ表面の帯電量とが釣り合わない場合には、逆にパッケージ表面の帯電量を増加させてしまうことがある。
【0005】
また、特許文献2の考案については、静電気除去ブラシの接触により、パッケージ表面に傷が付いてしまうおそれがある。また、特許文献3の考案については、中和剤の成分によっては、中和剤の乾燥に時間がかかってしまい、その場合には乾燥設備を別途設ける必要がある。
【0006】
本発明は、静電気を帯びた帯電体の表面、特に半導体装置のパッケージ表面から静電気を確実に除去することが可能な静電気除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、静電気を帯びた帯電体の表面に対して揮発性の液体を霧状にして噴き付け、前記揮発性の液体を揮発させることによって、前記帯電体の表面から前記静電気を除去することを特徴とする。
【0008】
前記揮発性の液体を霧状にして前記帯電体に噴き付けた後に、イオンを伴った風を前記帯電体の表面に噴き付けることが好ましい。前記帯電体は半導体装置のパッケージであることが好ましい。前記揮発性の液体はアルコールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、静電気を帯びた帯電体の表面に対して霧状のアルコールを噴き付け、前記アルコールを揮発させることによって、前記帯電体の表面から前記静電気を除去することで、静電気を帯びた帯電体の表面から静電気を確実に除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明を実施するための噴霧装置10及びイオナイザ11の概略図を示している。半導体装置12は、ボール・グリッド・アレイ型などの周知の形態でパッケージされた後に、キャリア13によって噴霧装置10及びその下流のイオナイザ11まで搬送される。
【0011】
噴霧装置10は、噴霧室15と、センサ16と、ストックタンク17と、コンプレッサ18と、ノズルガン19とから構成されている。
【0012】
噴霧室15には入口としての開口15a及び出口としての開口15bが形成されており、キャリア13に載置された半導体装置12は、開口15aから入って、噴霧室15内を通過し、開口15bから出る。センサ16は噴霧室15の開口15a付近に取り付けられており、半導体装置12の噴霧室15内への侵入を検出する。センサ16はコンプレッサ18内の制御部18aに配線19によって接続されている。センサ16の検出信号は、配線19を通じて、コンプレッサ18内の制御部18aに送信される。
【0013】
ストックタンク17は、アルコール20を収容するタンク本体21と、タンク本体21の開口部を塞ぐ蓋22と、蓋22に取り付けられた圧力供給管23及び給液管24とから構成される。圧力供給管23の一端は、ストックタンク17から露出し、配管27によってコンプレッサ18と接続している。一方、圧力供給管23の他端は、タンク本体21内に位置している。同様にして、給液管24の一端は、ストックタンク17から露出し、配管28によってノズルガン19と接続している。一方、給液管24の他端は、タンク本体21内の底部に位置している。
【0014】
コンプレッサ18は制御部18aを備えており、制御部18aの指示によって、圧縮空気を発生させる。発生した圧縮空気は配管27を通じて圧力供給管23に送られる。
【0015】
ノズルガン19の先端には多数の孔が形成された噴霧部19aが設けられ、噴霧部19aから霧状のアルコール30が噴き出される。ノズルガン19は、キャリア13に載置された半導体装置12のパッケージ表面12a(以下単に「パッケージ表面」とする)に、まんべんなく霧状のアルコール30を吹き付けることが出来るように、噴霧室15内の上面から所定の位置に取り付けられている。パッケージ表面12aに霧状のアルコール30が吹き付けられ、アルコールがパッケージ表面12aに付着すると、パッケージ表面12aに帯電した静電気がアルコールに移動する。そして、アルコールに移動した静電気は、アルコールの揮発とともに、パッケージ表面12aから除去される。そのため、アルコールは揮発性が極めて高いものが好ましく、特に、アルコール成分が99.99%以上の高純度工業用アルコールであることが好ましい。また、アルコールは例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、アセトンなどであることが好ましい。
【0016】
イオナイザ11は、センサ32と、電源供給器33と、送風器34と、針状電極35とから構成される。電源供給器33と針状電極35とは配線37によって、センサ32と電源供給器33内の制御部33aとは配線38によって接続されている。また、電源供給器33はアース線39によって接地されている。
【0017】
センサ32は、噴霧室15を出た半導体装置12が、イオナイザ11に接近したことを検出する。センサ32の検出信号は、配線38を通じて、電源供給器33の制御部33aに送信される。
【0018】
電源供給器33は制御部33aを備えており、制御部33aの指示によって、電圧を針状電極35に加える。送風器34は針状電極35の上方に設けられ、針状電極35に向けて風34aを送る。
【0019】
針状電極35は針状の導電体、例えば銅から構成される。電源供給器33によって針状電極35に電圧が加えられると、コロナ放電が発生する。このコロナ放電によって、針状電極35の周囲にイオンが集まる。針状電極35の周囲に集まったイオンは、送風器34からの風34aとともに、イオン化エアー40としてパッケージ表面12aに当てられる。このイオン化エアー40によって、アルコールの揮発によって除去されなかった静電気がパッケージ表面12aから除去されるとともに、パッケージ表面12aに残ったアルコールの揮発を促進することができる。なお、針状電極35は、ノズルガン19の取付位置と同様に、イオン化エアー40がパッケージ表面12aにまんべんなく当たるように、キャリア13の上方の所定の位置に設けられている。
【0020】
イオナイザ11を通過した半導体装置12は、吸着パッド(図示省略)を有する昇降及び回転自在なアーム(図示省略)によって、キャリア13から検査ステージ(図示省略)に移動される。検査ステージ上にて、半導体装置12の接続端子(図示省略)とブローブカードのブローブ針(図示省略)とを接触させて、半導体装置12の電気的特性の測定及び検査を行う。この測定及び検査のときに、パッケージ表面12a帯電している場合には、静電気放電が発生して、半導体装置12が故障するおそれがある。しかしながら、噴霧装置10及びイオナイザ11を用いて、パッケージ表面12aから静電気を除去しているので、静電気放電は発生せず、半導体装置12が故障するおそれはない。
【0021】
次に、本発明の作用を説明する。パッケージされた半導体装置12は、キャリア13により噴霧装置10まで搬送される。半導体装置12が噴霧室15の開口15aを通過すると、センサ16が、その通過を検出し、検出信号をコンプレッサ18内の制御部18aに送信する。制御部18aがセンサ16からの検出信号を受信すると、所定時間経過後に、コンプレッサ18は圧縮空気を配管27を通じて圧力供給管23に送る。圧力供給管23に圧縮空気が送られて、タンク本体21内のアルコール20が加圧されると、アルコール20が、給液管24及び配管28を通じて、ノズルガン19に送られる。ノズルガン19に送られたアルコール20は噴霧部19aにおいて霧状とされ、パッケージ表面12aに霧状のアルコール30が噴き付けられる。パッケージ表面12aに付着したアルコールは気化して、パッケージ表面12aから静電気が除去される。
【0022】
そして、半導体装置12が噴霧室15の開口15bを出てイオナイザ11に接近すると、センサ32がその接近を検出する。センサ32からの検出信号は電源供給器33内の制御部33aに送信される。制御部33aがセンサからの検出信号を受信すると、所定時間経過後に、電源供給器33は針状電極35に電圧を加える。針状電極35に電圧が加えられると、コロナ放電が発生し、針状電極35の周囲にイオンが集まる。針状電極の周囲に集まったイオンは、送風器34からの風34aとともに、イオン化エアー40としてパッケージ表面12aに噴き付けられる。これにより、アルコールの噴霧によって除去されなかった静電気がパッケージ表面12aから完全に除去される。
【0023】
なお、本実施形態では、静電気を除去する対象を半導体装置のパッケージ表面としたが、これに限らず、静電気を帯びた部材等の表面であってもよい。
【0024】
なお、本実施形態では、噴霧装置に噴霧室を備えたが、アルコールをまんべんなく半導体装置のパッケージ表面に噴霧することが可能であれば、噴霧室を設けなくてもよい。
【0025】
なお、本実施形態では、噴霧装置の下流にイオナイザを設けたが、アルコールの噴霧によって半導体装置のパッケージ表面から静電気を完全に除去することが可能であれば、イオナイザを設けなくてもよい。
【0026】
なお、本実施形態では、半導体のパッケージ表面に霧状のアルコールを噴き付け、そのアルコールを揮発させることによって、半導体のパッケージ表面の除電を行ったが、アルコールに限らず、揮発性の液体であれば、例えば、アセトンやベンゼンなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を実施するための噴霧装置及びイオナイザを示す概略図である。
【符号の説明】
【0028】
10 噴霧装置
11 イオナイザ
12 半導体装置
12a 半導体装置のパッケージ表面
30 霧状のアルコール
40 イオン化エアー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電気を帯びた帯電体の表面に対して揮発性の液体を霧状にして噴き付け、前記揮発性の液体を揮発させることによって、前記帯電体の表面から前記静電気を除去することを特徴とする静電気除去方法。
【請求項2】
前記揮発性の液体を霧状にして前記帯電体に噴き付けた後に、イオンを伴った風を前記帯電体の表面に噴き付けることを特徴とする請求項1記載の静電気除去方法。
【請求項3】
前記帯電体は半導体装置のパッケージであることを特徴とする請求項1または2記載の静電気除去方法。
【請求項4】
前記揮発性の液体はアルコールであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の静電気除去方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−47336(P2008−47336A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219773(P2006−219773)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】