説明

静電潜像現像用キャリアとその製造方法、2成分現像剤及び画像形成方法

【課題】極めて高画質でありながら、その最高濃度、かぶり、画像エッジ部での濃度変化等といった特性が、極めて多数枚を印字した後でも劣化しない静電潜像現像用キャリアとその製造方法、2成分現像剤及びそれを用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】芯材粒子上に樹脂層を被覆してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、該樹脂層が2種以上の樹脂と添加剤より構成され、前記樹脂のガラス転移温度が最も高いものを樹脂(A)、そのガラス転移温度を(TgA)とし、ガラス転移温度が最も低いものを樹脂(B)、そのガラス転移温度を(TgB)とした時(いずれも温度の単位は℃)、下記式(1)を満たすことを特徴とする静電潜像現像用キャリア。
70℃≧(TgA−TgB)≧20℃

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて高画質かつ高耐久性を有する静電潜像現像用キャリアとその製造方法並びにそれを用いた2成分現像剤及び画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成方法においては、光導電層に原稿に応じた光像を照射することにより静電潜像を形成し、次いで該静電潜像上にこれとは反対の極性を有するトナーと呼ばれる着色微粉末を付着させて該静電潜像を現像し、必要に応じて紙等の被転写材にトナー画像を転写した後、熱、圧力或いは溶剤蒸気等により定着して複写物を得ている。
【0003】
上記静電潜像をトナーを用いて現像する方法としては、大別して、トナーをキャリアと呼ばれる媒体と混合した所謂2成分系現像剤を用いる方法と、キャリアを用いることなくトナーを単独で使用する所謂1成分系現像剤を用いる方法がある。このうち2成分系現像剤を用いた画像形成方法は、高画質画像が安定して得られる点で特に望ましい方法であり、現在極めて広く用いられている。
【0004】
そして、更に、2成分系現像剤を構成するキャリアは導電性キャリアを用いるものと絶縁性キャリアを用いるものとに大別される。しかし、導電性キャリアとは、通常、酸化又は未酸化の鉄粉であるが、この鉄粉キャリアは、トナーに対する摩擦帯電性が不安定であり、又、現像により形成される可視像にカブリが発生するという問題がある。
【0005】
一方、絶縁性キャリアとは、鉄、ニッケル、フェライト等の強磁性体よりなるキャリア芯材の表面を絶縁性樹脂により均一に被覆したキャリアが代表例である。このキャリアは、キャリア表面にトナー粒子が融着することが導電性キャリアの場合に比べて著しく少ないので、耐久性に優れ、使用寿命が長い点で、特に高速の電子複写機に好適であるという利点がある。
【0006】
一般に、被覆キャリアに使われる芯材の抵抗は低く、被覆層に使われる材料の抵抗は高いから、キャリア表面を如何に被覆するかで該キャリアの抵抗調節も可能である。即ち、被覆層の厚さで抵抗を調節するため、被覆層中にカーボンブラック(例えば、特許文献1及び2参照)、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物(例えば、特許文献3参照)等を分散させて被覆層の抵抗を調整することでキャリアの抵抗を調節している。これにより、高バイアス現像時に現像領域のエッジ部へキャリアが付着するのを防ぐと共に、低バイアス現像時に画像領域へキャリアが付着するのを防ぐ方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、このような方法で初期のキャリア抵抗を調節しても、長時間の使用中に被覆層が摩擦・脱落等で減少して行くから、キャリアの抵抗が徐々に低下して画像領域へキャリアが付着してしまう問題が残されている。
【0008】
キャリアの抵抗及び帯電能力を安定にするため、表層ほどカーボンブラックを多く配向させ、逆に、表層程荷電制御成分(チタン酸バリウム)を少なくすることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。このような方法でキャリア抵抗及び帯電能力を調整すると、確かにキャリア抵抗や帯電能力は安定化する。
【0009】
しかしながら、近年電子写真方式による画像形成方法は、軽印刷分野への展開も行われていて、これにより、従来は考えられなかった高画質、かつ高耐久性能が求められている。これらの要求を満たすほどの高品位画像を、長期に亘って安定的に維持出来る高耐久化技術は現在開発されていないといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭56−126843号公報
【特許文献2】特開昭62−45984号公報
【特許文献3】特開昭64−35561号公報
【特許文献4】特開2008−8938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題を解決するためになされた。
【0012】
即ち、本発明の目的は、極めて高画質でありながら、その最高濃度、かぶり、画像エッジ部での濃度変化等といった特性が、極めて多数枚を印字した後でも劣化しない静電潜像現像用キャリア(以後、単にキャリアということもある)とその製造方法、2成分現像剤及びそれを用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者による詳細な検討の結果、本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成されることがわかった。
【0014】
(1)
芯材粒子上に樹脂層を被覆してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、該樹脂層が2種以上の樹脂と添加剤より構成され、前記樹脂のガラス転移温度が最も高いものを樹脂(A)、そのガラス転移温度を(TgA)とし、ガラス転移温度が最も低いものを樹脂(B)、そのガラス転移温度を(TgB)とした時(いずれも温度の単位は℃)、下記式を満たすことを特徴とする静電潜像現像用キャリア。
【0015】
70℃≧(TgA−TgB)≧20℃
(2)
前記樹脂(A)と前記樹脂(B)との質量比が90:10〜60:40であることを特徴とする(1)記載の静電潜像現像用キャリア。
【0016】
(3)
前記添加剤が、抵抗調整粒子又は帯電調整粒子の少なくともいずれかであることを特徴とする(1)記載の静電潜像現像用キャリア。
【0017】
(4)
前記樹脂層がその厚み方向に添加剤の濃度勾配を持つことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の静電潜像現像用キャリア。
【0018】
(5)
(1)〜(4)のいずれか1項記載の静電潜像現像用キャリアの製造時に、撹拌しながら樹脂(A)のガラス転移点以上に加熱することを特徴とする静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【0019】
(6)
(1)〜(4)のいずれか1項記載の静電潜像現像用キャリアとトナーから構成されることを特徴とする2成分現像剤。
【0020】
(7)
(1)〜(4)のいずれか1項記載の静電潜像現像用キャリアを用いた2成分現像剤により、静電潜像をトナー現像することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、極めて高画質でありながら、その最高濃度、かぶり、画像エッジ部での濃度変化等といった特性が、極めて多数枚を印字した後でも劣化しない静電潜像現像用キャリアとその製造方法、2成分現像剤及びそれを用いた画像形成方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の画像形成方法に用いることが出来るカラー画像形成装置の断面構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、鋭意検討の結果、課題を解決するキャリアの構成として、メイン樹脂に対してよりガラス転移温度がある範囲内で低い樹脂を併用することにより、キャリア被覆層中の狙いの位置に添加剤を固定化することができることを見出した。
【0024】
その理由については詳しく解析したわけではないが、ガラス転移温度がある範囲内で低い樹脂を用いることにより、その樹脂が添加剤の周りに付着し、メイン樹脂の中に均一に分散し、且つ固定化されると考えられる。このようにして作られた被服層は、添加剤が凝集することなく狙いの位置に固定化されているので、結果として性能が安定し、キャリアの耐久性が向上するものと考えられる。
【0025】
本発明のキャリアは、例えばフェライトの芯材〈コア粒子、核粒子ともいう〉とTg100℃のアクリル樹脂(メイン樹脂)と、Tg60℃のアクリル樹脂、添加剤を高速撹拌し、さらに100℃以上の加熱工程を経ることにより製造される。具体的にはコア粒子、Tg100℃のアクリル樹脂、Tg60℃のアクリル樹脂、添加剤を同時に混合しても良いが、Tg60℃のアクリル樹脂と添加剤を先に混合してから、コア粒子およびTg100℃のアクリル樹脂と混合するとより効果が発揮できる。
【0026】
更に、被覆層形成工程を数段に分けて製造することにより、より長期に亘って性能を安定化することができる。具体的には、添加剤としてカーボンブラック(抵抗調整剤)とチタン酸バリウム(帯電調整剤)の2種類を用いて、カーボンブラックは表層ほど多く、チタン酸バリウムは表層ほど少なく配向するようにすると、極めて多数枚を印字した後でもキャリアの抵抗や帯電性を安定化することができるので、長期に亘って高画質の画像を提供することできる。
【0027】
但し、メイン樹脂(樹脂(A))のガラス転移温度TgA(℃)と、より低いガラス転移温度を有する樹脂(樹脂(B))のガラス転移温度TgB(℃)は、
70℃≧(TgA−TgB)≧20℃
の範囲にあることが必要である。
【0028】
その差が20℃よりも小さいと添加効果がほとんどなく、70℃よりも大きいとキャリア同士が完全に融着してしまい作製することが困難である。
【0029】
樹脂(A)と樹脂(B)との質量比は90:10〜60:40が望ましい。樹脂(B)の添加量がこの範囲よりも小さいと添加効果は殆どなく、大きいとキャリア同士の融着が促進され、収率が悪くなる。
【0030】
〈ガラス転移温度の測定方法〉
樹脂のガラス転移温度は、DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー製)を用いて行うことができる。
【0031】
測定手順としては、樹脂4.5mg〜5.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パンに封入し、DSC−7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−Cool−Heatの温度制御で行い、その2nd.Heatにおけるデータをもとに解析を行った。
【0032】
ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点として用いた。
【0033】
〈キャリア被覆用樹脂〉
樹脂(A)および樹脂(B)に用いられる樹脂としては、公知の樹脂を用いることができる。例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂を挙げることができる。これらの中では、スチレン−アクリル系樹脂やアクリル系樹脂が帯電性、耐久性の観点から好ましい。
【0034】
スチレン−アクリル系樹脂やアクリル系樹脂を作製する単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリル酸イソボルニル、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルフェニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0035】
〈添加剤〉
添加剤としては特に限定はないが、代表的なものとしては下記の抵抗調整剤及び帯電調整剤等が挙げられる。
【0036】
(抵抗調整剤)
キャリア抵抗を下げることを目的に添加される添加剤である。カーボンブラック、グラファイト、無機酸化物、金属などが該当する。
【0037】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。
【0038】
無機酸化物としては、酸化鉄(マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなど)酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などがあり、或いはこれらの無機酸化物を用いた複合酸化物および混合物が挙げられる。
【0039】
金属としては、鉄、銅、コバルト、ニッケル、金、白金、パラジウムなどがあり、或いはこれらの金属と、アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
(帯電調整剤)
キャリアの帯電性を上げることを目的に添加される添加剤であり、荷電制御剤、無機酸化物などが該当する。
【0041】
荷電制御剤としは、通常トナーに添加される公知の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩或いはその金属錯体等が挙げられる。含有される金属としては、Al、B、Ti、Fe、Co、Niなどが挙げられる。
【0042】
無機酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0043】
〈キャリアの芯材粒子(コア粒子、核粒子)〉
芯材粒子としては、磁性体粒子であればよく、鉄粉、マグネタイト、各種フェライト系粒子又はそれらを樹脂中に分散したもの等を挙げることができる。好ましくはマグネタイトや各種フェライト系粒子である。
【0044】
フェライトとしては銅、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属を含有するフェライトやアルカリ金属及びアルカリ土類金属の何れかを含有する軽金属フェライトが好ましく、特に好ましくはアルカリ金属及びアルカリ土類金属の何れかを含有する軽金属フェライトである。
【0045】
芯材粒子の径としては、体積平均粒径で10〜80μmが好ましく、20〜60μmがより好ましい。芯材粒子自体が有する磁化特性としては、飽和磁化で20〜80Am/kgが好ましい。
【0046】
体積平均粒径は、たとえば、湿式分散器を備えたレーザー回折式粒度分析装置「HELOS(シンパテック株式会社製)」により測定することができる。また、飽和磁化は、たとえば、「直流磁化特性自動記録装置3257−35(横河電機(株)製)」により測定することができる。
【0047】
《キャリアの作製》
本発明に係るキャリアは、芯材粒子の表面に、湿式コート法或いは乾式コート法、これを組み合わせた方法で樹脂コート層を形成して作製することができる。
【0048】
湿式コート法としては、例えば流動層式スプレーコート法があり、下記の如き工程により、樹脂被覆層を形成する。
【0049】
1:被覆用樹脂を溶剤に溶解した液に添加剤を分散して塗布液を作製する。
【0050】
2:この塗布液を芯材粒子の表面にスプレー塗布、乾燥して被覆層を作製する。
【0051】
尚、樹脂被覆層の膜厚は、スプレーする時間により調整することができる。
【0052】
乾式コート法としては、例えば機械的衝撃や熱を加えてコートする方法があり、下記の如き工程により、樹脂被覆層を形成する。
【0053】
1:芯材粒子と、被覆用樹脂粒子及び添加剤を分散した部材を、機械的に撹拌し、芯材粒子表面に付着させる。
【0054】
2:その後、機械的衝撃や熱を加えて芯材粒子表面に付着した樹脂を溶融或いは軟化させて固着し、被覆層を形成する。
【0055】
尚、被覆層の膜厚は、芯材粒子と混合する樹脂や添加剤の量で調整することができる。
【0056】
乾式コート法の装置としては、例えば「ターボミル」(ターボ工業社製)、ピンミル、「クリプトロン」(川崎重工社製)等のローターとライナーを有する摩砕機又は撹拌羽根付高速撹拌混合機を挙げることができ、これらの中では撹拌羽根付高速撹拌混合機が良好にコート層を形成でき好ましい。
【0057】
加熱する場合には、60〜125℃が好ましい。前記範囲の温度で加熱するとキャリア同士の凝集が発生せず、芯材粒子表面にアクリル樹脂を固着させることができる。
【0058】
〈現像剤〉
次に、本発明に係る現像剤としては、所謂2成分現像剤と呼ばれるキャリアとトナーを混合したものである。2成分現像剤として用いる場合、トナーのキャリアに対する混合量は、通常2〜15質量%が好ましい。トナーとキャリアを混合する混合装置は、特に限定されるものではなく、ナウターミキサ、Wコーン及びV型混合機等が挙げられる。
【0059】
トナーとしては、その製法や結着樹脂の種類に特に限定はない。粉砕法トナーでも重合法トナーでもよく、結着樹脂としては、スチレン/アクリル系共重合樹脂でも、ポリエステル系樹脂でもよい。また、外添剤としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子などの公知の微粒子を使用することができる。但し、トナー粒径は体積メディアン径(D50)が2.5〜7.0μmで、粒径分布が狭いトナーを用いることが望ましい。
【0060】
〈画像形成装置〉
図1は、本発明の画像形成方法に用いることが出来るカラー画像形成装置の一例の断面構成図である。
【0061】
この画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜850nmの半導体レーザー又は発光ダイオードを、像露光光源として用いるのが望ましい。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)から2400dpi、あるいはそれ以上の高解像度の画像をうることができる。
【0062】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0063】
用いられる光ビームとしては半導体レーザーを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0064】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0065】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、ドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、ドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、ドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、ドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0066】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
【0067】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0068】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(帯電器2Yともいう)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Y(あるいは、クリーニングブレード6Yともいう)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0069】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0070】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいは、レーザー光学系などが用いられる。
【0071】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0072】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0073】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0074】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0075】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0076】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明の代表的な実施態様とその性能を示しさらに本発明の説明を行うが、無論、本発明の態様はこれらにより限定されるわけではない。
【0078】
〈被覆用樹脂の作製〉
(樹脂A1の作製)
界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの存在下で、メチルメタクリレート100質量部を乳化重合により合成し、樹脂A1(体積平均一次粒子径100nm)が分散されてなる樹脂粒子分散液を作製した。得られた樹脂粒子分散液を、限外濾過装置を用いて水洗し、その後スプレードライヤーで乾燥し、ガラス転移点(Tg)102℃の「樹脂A1」を作製した。
【0079】
尚、体積平均一次粒子径は、樹脂粒子分散液を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定した。
【0080】
(樹脂B1の作製)
界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの存在下で、メチルメタクリレート75質量部とn−ブチルメタクリレート25質量部とを乳化重合することにより合成し、樹脂B1(体積平均一次粒子径100nm)が分散されてなる樹脂粒子分散液を作製した。得られた樹脂粒子分散液を、限外濾過装置を用いて水洗し、その後スプレードライヤーで乾燥し、ガラス転移点(Tg)62℃の「樹脂B1」を作製した。
【0081】
(樹脂B2〜B5の作製)
樹脂B1の作製において、重合性単量体の組成比を表1のように変更し、「樹脂B2〜B5」を作製した。
【0082】
【表1】

【0083】
〈キャリア1の作製〉
粒子径30μmのコア粒子100質量部、樹脂A1を0.7質量部、樹脂B1を0.3質量部添加し、更に、添加剤としてカーボンブラック「Mogul−L(キャボット社製)」0.02質量部(抵抗調整剤:樹脂に対して2質量部)、チタン酸バリウム(数平均一次粒径200nm)0.08質量部(帯電調整剤:樹脂に対して8質量部)を高速撹拌混合機に投入し、高速撹拌しながら昇温して105℃に達したら30分間その温度に維持し、コア粒子の表面に被覆層1を形成させた。
【0084】
次に、上記混合機に樹脂A1を0.7質量部、樹脂B1を0.3質量部添加し、Mogul−L0.05質量部(樹脂に対して5質量部)、チタン酸バリウム0.04質量部(樹脂に対して4質量部)を投入し、高速撹拌しながら昇温して105℃に達したら30分間その温度に維持し、被覆層1の表面に被覆層2を形成させた。
【0085】
さらに、上記混合機に樹脂A1を0.7質量部、樹脂B1を0.3質量部添加し、Mogul−L0.1質量部(アクリル樹脂に対して10質量部)、チタン酸バリウム0.02質量部(樹脂に対して2質量部)を投入し、高速撹拌しながら昇温して105℃に達したら30分その温度に維持し、被覆層2の表面に被覆層3を形成させた。これをキャリア1とする。
【0086】
上記のように作製されたキャリアを、集束イオンビーム試料作成装置「SM12050」(エスアイアイナノテクノロジー(株)製)を用いてキャリア粒子の薄片を作製し、その後、その薄片の断面を透過型電子顕微鏡「JEM−2010F」(日本電子(株)製)にて40,000倍の倍率で撮影したところ、Mogul−Lは表層ほど多く、チタン酸バリウムは表層ほど少なく配向することを確認した。
【0087】
〈キャリア2〜5、キャリア7〜11の作製〉
下記表2に記載するごとく変更した以外は、キャリア1と同様に作製した。
【0088】
ただし、キャリア4の抵抗調整剤は、導電性酸化チタン「ET−300W(チタン工業製)」、帯電調整剤は、酸価マグネシウム(数平均一次粒径400nm)を、キャリア5の抵抗調整剤は、酸化インジウムコート酸化アルミニウム「EC−700(チタン工業製)」、帯電調整剤は、アジン系化合物「ボントロンN−21(オリエント化学工業製)」を用いた。
【0089】
【表2】

【0090】
(キャリア6の作製)
樹脂A1を0.7質量部、樹脂B1を0.3質量部、カーボンブラック「Mogul−L(キャボット社製)」0.02質量部(樹脂に対して2質量部)、チタン酸バリウム(数平均一次粒径200nm)0.08質量部(樹脂に対して8質量部)をアセトン10質量部に溶解・分散した混合溶液を作製し、流動層撹拌装置で粒子径30μmのコア粒子100質量部を撹拌しながら、混合溶液をスプレーコートし、撹拌しながら昇温して105℃に達したら30分その温度に維持し、コア粒子の表面に被覆層1を形成させた。
【0091】
次に、上記流動層撹拌装置で樹脂A1を0.7質量部、樹脂B1を0.3質量部、Mogul−L0.05質量部(樹脂に対して5質量部)、チタン酸バリウム0.04質量部(樹脂に対して4質量部)を溶解・分散したアセトン混合溶液をスプレーコートし、さらに撹拌しながら昇温して105℃に達したら30分間維持し、被覆層1の表面に被覆層2を形成させた。
【0092】
さらに、上記流動層撹拌装置で樹脂A1を0.7質量部、樹脂B1を0.3質量部、Mogul−L0.1質量部(アクリル樹脂に対して10質量部)、チタン酸バリウム0.02質量部(樹脂に対して2質量部)を溶解・分散したアセトン混合溶液をスプレーコートし、さらに撹拌しながら昇温して105℃に達したらその温度を30分間維持し、被覆層2の表面に被覆層3を形成させた。
【0093】
キャリア1と同様の方法でキャリア断面を観察したところ、Mogul−Lは表層ほど多く、チタン酸バリウムは表層ほど少なく配向することを確認した。
【0094】
〈現像剤の作製〉
キャリア1〜11を各93質量部とbizhub PRO C6500用Bkトナー7質量部をミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社)に投入し、回転速度45rpmで30分間混合し、現像剤1〜11を作製した。
【0095】
〈性能評価〉
現像剤1〜11と、トナーカートリッジを準備し、実験用に改造した複写機(bizhub PRO C6500:コニカミノルタ社製)を用いた。
【0096】
黒色トナー単色にて画素率が10%の画像(文字画像が7%、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像)をA4版上質紙(64g/m)に出力し画質評価を行った。さらに初期、100万枚出力後の画質評価も行った。
【0097】
(エッジ効果)
100万枚出力後に、画像濃度0.5のハーフトーン画像のプリント方向後部に画像濃度1.2〜1.3のベタ画像が存在する画像をプリントし、ベタ画像との境界付近のハーフトーン画像に白抜けが発生するかどうかを評価した。
【0098】
◎:白抜けなし
○:白抜けはしていないが濃度が若干薄くなっている
×:白抜け発生
○以上を合格レベルとした。
【0099】
(かぶり)
カブリ濃度の測定は、まず印字されていない白紙について、マクベス反射濃度計「RD−918」を用いて20ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、白紙濃度とする。次に評価形成画像100万枚目の白地部分について、同様に20ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、この平均濃度から白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。カブリ濃度が0.007未満であれば、カブリは実用的に問題ないといえる。
【0100】
◎:0.002未満
○:0.002〜0.007未満
×:0.007より大きい値
○以上を合格レベルとした。
【0101】
(最高画像濃度)
最高画像濃度の測定は、100万枚目の高濃度ベタ部を濃度計「RD−918」(マクベス社製)を使用し、かぶり濃度同様にして白紙濃度を基準とした相対反射濃度で測定した。
【0102】
◎:Bkベタ画像部の各濃度が1.3以上
○:Bkベタ画像部の各濃度が1.0以上
×:Bkベタ画像部の各濃度が1.0未満
○以上を合格レベルとした。
【0103】
結果は下記表3に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
表3に示される結果を見ると、本発明内であるキャリア1〜8を用いた場合はいずれの特性も良いが、キャリア9、10を用いた場合には、いずれも特性が悪いことがわかる。
【0106】
なお、キャリア11については、性能評価自体が出来なかった。
【符号の説明】
【0107】
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子上に樹脂層を被覆してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、該樹脂層が2種以上の樹脂と添加剤より構成され、前記樹脂のガラス転移温度が最も高いものを樹脂(A)、そのガラス転移温度を(TgA)とし、ガラス転移温度が最も低いものを樹脂(B)、そのガラス転移温度を(TgB)とした時(いずれも温度の単位は℃)、下記式を満たすことを特徴とする静電潜像現像用キャリア。
70℃≧(TgA−TgB)≧20℃
【請求項2】
前記樹脂(A)と前記樹脂(B)との質量比が90:10〜60:40であることを特徴とする請求項1記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項3】
前記添加剤が、抵抗調整粒子又は帯電調整粒子の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項4】
前記樹脂層がその厚み方向に添加剤の濃度勾配を持つことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の静電潜像現像用キャリア。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の静電潜像現像用キャリアの製造時に、撹拌しながら樹脂(A)のガラス転移点以上に加熱することを特徴とする静電潜像現像用キャリアの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載の静電潜像現像用キャリアとトナーから構成されることを特徴とする2成分現像剤。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項記載の静電潜像現像用キャリアを用いた2成分現像剤により、静電潜像をトナー現像することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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