説明

静電荷像現像用カラートナー

【課題】画像濃度及び彩度が従来よりも高く、且つ、従来よりも低い温度で定着する静電荷像現像用カラートナーを提供する。
【解決手段】少なくとも結着樹脂、着色剤、帯電制御剤及び離型剤を含有する着色樹脂粒子と、外添剤とを含む静電荷像現像用カラートナーであって、前記着色剤は、その表面が樹脂により被覆され、且つ、平均一次粒径が30〜300nmの樹脂被覆顔料であり、前記樹脂被覆顔料は、被覆されている樹脂のテトラヒドロフラン不溶分が80〜100質量%であることを特徴とする静電荷像現像用カラートナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において静電潜像を現像するために用いられる静電荷像現像用カラートナー(以下、単に「トナー」と称することがある。)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置において、感光体上に形成される静電潜像は、先ず、トナーにより現像される。次いで、形成されたトナー像は、必要に応じて紙等の転写材上に転写された後、加熱、加圧又は溶剤蒸気等の種々の方式により定着される。
【0003】
このような画像形成装置において、デジタルフルカラー複写機やデジタルフルカラープリンターが実用化されてきている。デジタルフルカラー複写機は、カラー画像原稿を、ブルー、グリーン及びレッドの各フィルターで色分解した後、オリジナルのカラー原稿に対応した20〜70μmのドット径からなる静電潜像を、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各トナーを用いて現像し、減色混合作用を利用してフルカラー画像を形成する。
【0004】
顔料は一般に不溶性の色材であるため、塗料、印刷インキ、カラーフィルター、トナー等の製造やプラスチックの着色において、溶剤や樹脂等の媒体中に顔料粒子を均一に分散させる事が重要な課題になっている。
顔料の分散性は顔料粒子の表面の性質に大きく依存することから、様々な表面処理による分散性の向上が試みられている。これらの処理方法としては、ロジン処理やカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤処理、顔料誘導体処理、ポリマー処理がある。
【0005】
これらの処理方法のうち、顔料表面にポリマーをコートさせることで分散性の向上を図るポリマー処理法には、in−situ重合法、相分離(コアセルベーション)法、液中乾燥法等がある。
ポリマー処理法の中でも、in−situ重合法に代表されるような、in−situ条件下で重合反応又は縮合反応等を行い顔料の表面をポリマーコートする方法は、顔料製造工程途中において、合成直後の一次粒径に近い状態で分散している顔料の表面をポリマーコートできるという観点から有用である。
【0006】
in−situ重合法により顔料の表面をポリマーコートする技術は、これまでにも知られている。
例えば、特許文献1には、有機顔料、界面活性剤、及び水を含む水性顔料分散液を調製する工程、疎水性有機化合物により安定化され、且つ、重合性モノマー、及び界面活性剤からなる、水中のモノマー微小エマルジョンを準備する工程、前記水性顔料分散液及び前記モノマー微小エマルジョンより顔料含有モノマー微小エマルジョンを生成させる工程、並びに、当該顔料含有モノマー微小エマルジョンを、形成するポリマーにより前記顔料をカプセル化しつつ重合させる工程を含む、ポリマーカプセル化顔料の水性分散液を製造する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、少なくとも、結着樹脂と、着色剤とを含むトナーであって、前記着色剤として、カチオン性基を表面に有する顔料粒子が、アニオン性基と疎水性基と重合性基とを有するアニオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有するポリマーにより被覆されたものを用いることを特徴とするトナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2007−534810号公報
【特許文献2】特開2006−317711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された方法によりポリマーコートした有機顔料は、重合性単量体を含む有機溶剤中に顔料を分散させた際、ポリマーが顔料表面から脱離して有機溶剤に溶解し、有機溶剤中における顔料の高い分散状態が保てないという問題があった。
また、特許文献2に開示されたトナーは、ポリマーコートされた有機顔料を用いるため特許文献1と同様の問題があるばかりか、顔料粒子がイオン成分を含有するために、得られたトナーが高温高湿環境下でカブリを発生するという問題があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、樹脂被覆した顔料の分散性を高く保つことにより、画像濃度及び彩度が従来よりも高く、且つ、従来よりも低い温度で定着する静電荷像現像用カラートナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、少なくとも着色樹脂粒子及び外添剤を含有するトナーの製造方法において、特定の物性を有する樹脂被覆顔料を着色剤として用いることにより、上記課題が解決できることを見いだした。
即ち、本発明によれば、少なくとも結着樹脂、着色剤、帯電制御剤及び離型剤を含有する着色樹脂粒子と、外添剤とを含む静電荷像現像用カラートナーであって、前記着色剤は、その表面が樹脂により被覆され、且つ、平均一次粒径が30〜300nmの樹脂被覆顔料であり、前記樹脂被覆顔料は、被覆されている樹脂のテトラヒドロフラン不溶分が80〜100質量%であることを特徴とする静電荷像現像用カラートナーが提供される。
【0012】
本発明の静電荷像現像用カラートナーは、湿式法により得られることが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記樹脂被覆顔料の全質量を100質量%としたときの、前記樹脂の含有割合が5〜40質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記の如き本発明によれば、平均一次粒径が30〜300nmであり、且つ、被覆されている樹脂のテトラヒドロフラン不溶分、すなわちゲル分が高い樹脂被覆顔料を含むことにより、顔料の分散性を高く保持できる結果、画像濃度及び彩度が従来よりも高く、且つ、従来よりも低温定着性に優れたカラートナーが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の静電荷像現像用カラートナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、帯電制御剤及び離型剤を含有する着色樹脂粒子と、外添剤とを含む静電荷像現像用カラートナーであって、前記着色剤は、その表面が樹脂により被覆され、且つ、平均一次粒径が30〜300nmの樹脂被覆顔料であり、前記樹脂被覆顔料は、被覆されている樹脂のテトラヒドロフラン不溶分が80〜100質量%であることを特徴とする。
【0016】
以下、本発明の静電荷像現像用カラートナー(以下、単に「トナー」と称することがある。)について説明する。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤としての樹脂被覆顔料、帯電制御剤、及び離型剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する。
以下、本発明に用いられる着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子を用いた本発明のトナーの製造方法及び本発明のトナーについて、順に説明する。
【0017】
1.着色樹脂粒子の製造方法
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
【0018】
上記乳化重合凝集法は、乳化させた重合性単量体を重合し、樹脂微粒子エマルションを得て、着色剤分散液等と凝集させ、着色樹脂粒子を製造する。また、上記溶解懸濁法は、結着樹脂や着色剤等のトナー成分を有機溶媒に溶解又は分散した溶液を水系媒体中で液滴形成し、当該有機溶媒を除去して着色樹脂粒子を製造する方法であり、それぞれ公知の方法を用いることができる。
【0019】
本発明の着色樹脂粒子は、湿式法、又は乾式法を採用して製造することが出来る。湿式法の中でも好ましい懸濁重合法を採用し、以下のようなプロセスにより行われる。
【0020】
(A)懸濁重合法
(A−1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体、着色剤としての樹脂被覆顔料、帯電制御剤及び離型剤、さらに必要に応じて添加されるその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いて行う。
【0021】
本発明で重合性単量体は、重合可能な官能基を有するモノマーのことをいい、重合性単量体が重合して結着樹脂となる。重合性単量体の主成分として、モノビニル単量体を使用することが好ましい。モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等の二トリル化合物;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;が挙げられる。これらのモノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、モノビニル単量体として、スチレン、スチレン誘導体、及びアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルが、好適に用いられる。
【0022】
ホットオフセット改善及び保存性改善のために、モノビニル単量体とともに、任意の架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つモノマーのことをいう。架橋性の重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等の2個以上の水酸基を持つアルコールにカルボン酸が2つ以上エステル結合したエステル化合物;N,N−ジビニルアニリン、及びジビニルエーテル等の、その他のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で用いることが望ましい。
【0023】
また、さらに、重合性単量体の一部として、マクロモノマーを用いると、得られるトナーの保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有するもので、数平均分子量が、通常、1,000〜30,000の反応性の、オリゴマー又はポリマーである。マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」と称することがある。)よりも、高いTgを有する重合体を与えるものが好ましい。マクロモノマーは、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.03〜5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部用いることが望ましい。
【0024】
本発明に用いられる樹脂被覆顔料中の顔料としては、ブラック顔料、シアン顔料、イエロー顔料、及びマゼンタ顔料等が使用できる。
一般に、顔料粒子の表面には、アミン置換基(第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン)、第4級アンモニウム基(−N)、第4級ホスホニウム基(−P)、及びスルホニウム基(−S)、ピリジニウム基等のカチオン性基が存在する。しかし、樹脂で被覆することにより、顔料粒子の表面を電気的に安定(中性的)なものとすることができる。その結果、最終的に得られるトナーの帯電特性を向上させることができる。
【0025】
ブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等が挙げられる。特に、カーボンブラックは、それ自体ではトナーの帯電特性や定着特性を阻害する傾向が強いことから、樹脂被覆による本発明の効果が顕著に現れる。
【0026】
シアン顔料としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、及びアントラキノン化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー2、3、6、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17:1、及び60等が挙げられる。
【0027】
イエロー顔料としては、例えば、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、93、97、120、138、155、180、181、185、及び186等が挙げられる。
【0028】
マゼンタ顔料としては、モノアゾ顔料、及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料等の化合物が用いられ、C.I.ピグメントレッド31、48、57:1、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、170、184、185、187、202、206、207、209、213、237、251、269及びC.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、各顔料は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明に用いられる樹脂被覆顔料は、顔料粒子の水性分散液に、後述する被覆用重合性単量体を加えて乳化重合することにより、好適に製造できる。乳化重合法を用いることにより、比較的粒径の小さい顔料粒子も被覆できるため、樹脂被覆顔料の粒径をトナー粒子の粒径よりも十分に小さくできる。その結果、各トナー粒子間での樹脂被覆顔料の含有量をより確実に均一なものとすることができる。
【0031】
樹脂被覆顔料は、より具体的には、以下の手順によって好適に製造される。
まず、上記顔料を水に分散させた、水性顔料分散液を調製する。ビーズミル、ボールミル、ロールミル、アイガーミル、ジェットミル等の一般的な分散機を用いて分散処理を行ってもよい。
なお、高分散の分散液を得る観点から、水性顔料分散液に界面活性剤を加えてもよい。
【0032】
次に、被覆用重合性単量体を準備する。被覆用重合性単量体とは、重合可能な官能基を有するモノマーのことをいい、上記顔料の存在下で被覆用重合性単量体が重合することにより、当該顔料を被覆する樹脂となる。被覆用重合性単量体としては、上述した、結着樹脂を構成する重合性単量体と同様のものを用いることができる。なお、被覆用重合性単量体は、イオン成分を含有しない単量体を用いることが好ましい。
【0033】
顔料を被覆する樹脂は、架橋性単量体から誘導された繰り返し構造単位を有することが好ましい。架橋性単量体から誘導された繰り返し構造単位を有することにより、樹脂中に架橋構造が形成され、樹脂の耐久性を向上させることができる。架橋性単量体としては、上述した、結着樹脂を構成する架橋性単量体と同様のものを用いることができる。
【0034】
顔料を被覆する樹脂は、架橋性単量体を所定量含むことにより、上述した重合性単量体(すなわち、顔料を被覆する樹脂以外の、トナーそのものを構成する結着樹脂を構成する重合性単量体)に溶解しなくなる。しかし、顔料を被覆する樹脂中の架橋性単量体の割合が高くなりすぎると、当該樹脂自体が硬くなり、トナーの定着性に悪影響を及ぼすと考えられる。したがって、顔料を被覆する樹脂を構成する単量体の質量を100質量%としたときの、架橋性単量体の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは5〜10質量%である。
【0035】
被覆用重合性単量体、好ましくはさらに架橋性単量体を含む水性媒体中に、被覆用重合開始剤を加え、被覆用重合性単量体組成物を調製する。調製にあたり、上述した分散機を用いて分散処理を行ってもよい。水性溶媒とは、水を主成分とする溶媒のことであり、水の他に、例えば、グリセリン類やグリコール類のような水溶性溶媒等を含んでいても良い。
このような被覆用重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤が好ましく、後述する結着樹脂の重合に用いられる重合開始剤と同様のものを用いることができる。
【0036】
上記水性顔料分散液と上記被覆用重合性単量体組成物を混合し、被覆用重合性単量体を乳化重合することにより、所望の樹脂被覆顔料が得られる。
被覆用重合開始剤の活性化は、混合物を所定の重合温度まで昇温することにより好適に実施できる。重合温度は、60〜90℃であるのが好ましい。重合にあたり、超音波発生器、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、及び温度調節器等を備える反応容器を用いてもよい。
【0037】
本発明に用いられる樹脂被覆顔料の平均一次粒径は30〜300nm、好ましくは50〜150nm、より好ましくは80〜120nmである。当該平均一次粒径が小さいほど、顔料が細かく分散されていると考えられる。当該平均一次粒径を30nm未満とすることは、物理的に極めて困難である。一方、当該平均一次粒径が300nmを超えると、画像濃度が高くならない等の問題がある。
樹脂被覆顔料の平均一次粒径は、例えば、所定の個数の樹脂被覆顔料の電子顕微鏡写真を、画像処理解析装置(ニレコ社製、商品名「ルーゼックスIID」)等により解析して得られる。
【0038】
本発明において、テトラヒドロフラン不溶分(以下、THF不溶分と称する場合がある。)とは、本発明に用いられる樹脂被覆顔料の、被覆されている樹脂の全質量を100質量%としたときの、テトラヒドロフラン(THF)に溶けない成分の割合のことを指す。本発明に用いられる樹脂被覆顔料から、その顔料自体を除いた、被覆する樹脂中の不溶性成分、すなわちゲル分である。
THF不溶分が樹脂被覆顔料の80〜100質量%を占めるということは、樹脂被覆顔料がゲル分を多量に含有することを意味する。
【0039】
本発明におけるTHF不溶分の測定は、以下の通りに行うことができる。すなわち、サンプルである樹脂被覆顔料10.0gをソックスレー抽出器に加え、THF100mLを用いて5時間還流した後の抽出液から不揮発成分を得、下記計算式からTHF不溶分を算出する。
THF不溶分(%)=〔(S−(100−C)×T)/(T×C)〕×100
T:樹脂被覆顔料量(g)
S:抽出不揮発成分量(g)
C:理論樹脂割合(%)
なお、樹脂量が明らかでない樹脂被覆顔料については、以下の方法で樹脂量を算出できる。まず、飛行時間二次イオン質量分析計(Time−of−flight secondary ion mass spectrometer:TOF−SIMS)等で顔料を特定する。次に、当該顔料中の特徴的な元素についてガスクロマトグラフィ質量分析(GC/MS)等を行うことにより、顔料を定量できる。樹脂被覆顔料全体の質量と、定量した顔料の質量との差が、当該樹脂被覆顔料に含まれる樹脂量となる。
【0040】
本発明によれば、樹脂被覆顔料の被覆されている樹脂のTHF不溶分を80〜100質量%とすることにより、樹脂被覆顔料の分散性が高く保たれる結果、画像濃度及び彩度が従来よりも高く、且つ、低温定着性に優れたトナーが得られる。樹脂被覆顔料のTHF不溶分が80質量%未満であると、ゲル分が少ないため樹脂被覆顔料中に低分子量の重合体を含有することとなり、ホットオフセットが生じるおそれがある。
樹脂被覆顔料の被覆されている樹脂のTHF不溶分は、85〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましい。
【0041】
樹脂被覆顔料全体の質量を100質量%としたときの、顔料を被覆する樹脂の割合は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは15〜25質量%である。顔料を被覆する樹脂量は、可能な限り少ない方が好ましいが、当該割合が5質量%未満であると、顔料の表面が樹脂で被覆されなくなり、顔料が凝集するおそれがある。一方、当該割合が40質量%を超えると、樹脂被覆顔料中に占める顔料の割合が少なすぎる結果、画像濃度を高くするために樹脂被覆顔料の添加量を増やす必要が生じる。
【0042】
定着時におけるトナーの定着ロールからの離型性を改善する観点から、重合性単量体組成物には、離型剤を添加する。離型剤としては、一般にトナーの離型剤として用いられるものであれば、特に制限無く用いることができる。
【0043】
上記離型剤は、エステルワックス及び/又は炭化水素系ワックスを含有することが好ましい。これらのワックスを離型剤として使用することにより、低温定着性と保存性とのバランスを好適にすることができる。
本発明において離型剤として好適に用いられるエステルワックスは、多官能エステルワックスがより好適であり、例えば、ペンタエリスリトールテトラパルミネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミネート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミネート等のジペンタエリスリトールエステル化合物;等が挙げられ、中でもグリセリンエステル化合物が好ましく、また、ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミネート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネートがより好ましく、ヘキサグリセリンオクタベヘネートが特に好ましい。
【0044】
本発明において離型剤として好適に用いられる炭化水素系ワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、石油系ワックス等が挙げられ、中でも、フィッシャートロプシュワックス、石油系ワックスが好ましく、石油系ワックスがより好ましい。
炭化水素系ワックスの数平均分子量は、300〜800であることが好ましく、400〜600であることがより好ましい。また、JIS K2235 5.4で測定される炭化水素系ワックスの針入度は、1〜10であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
【0045】
上記離型剤の他にも、例えば、ホホバ等の天然ワックス;オゾケライト等の鉱物系ワックス;等を用いることができる。
離型剤は、上述した1種又は2種以上のワックスを組み合わせて用いてもよい。
上記離型剤は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部用いられ、更に好ましくは1〜20質量部用いられる。
【0046】
トナーの帯電性を向上させるために、正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤が用いられる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、さらに、正帯電性トナーを得る観点からは、正帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム基含有共重合体、及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸基含有共重合体、スルホン酸塩基含有共重合体、カルボン酸基含有共重合体及びカルボン酸塩基含有共重合体等が挙げられる。
本発明では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が、0.01質量部未満の場合にはカブリが発生することがある。一方、帯電制御剤の添加量が10質量部を超える場合には印字汚れが発生することがある。
【0047】
その他の添加物として、重合して結着樹脂となる重合性単量体を重合する際に、分子量調整剤を用いることが好ましい。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いることが望ましい。
【0048】
(A−2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
本発明では、少なくとも重合性単量体、着色剤としての樹脂被覆顔料、帯電制御剤及び離型剤を含む重合性単量体組成物を、分散安定剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行う。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(荏原製作所社製、商品名「マイルダー」)、高速乳化分散機(特殊機化工業製、商品名「T.K.ホモミクサー MARK II型」)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
【0049】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩:4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルブタノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシオキシイソフタレート、及びt−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中で、残留重合性単量体を少なくすることができ、印字耐久性も優れることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0050】
有機過酸化物の中でも、開始剤効率がよく、残留する重合性単量体も少なくすることができることから、パーオキシエステルが好ましく、非芳香族パーオキシエステルすなわち芳香環を有しないパーオキシエステルがより好ましい。
【0051】
重合開始剤は、前記のように、重合性単量体組成物が水系媒体中へ分散された後、液滴形成前に添加されても良いが、水系媒体中へ分散される前の重合性単量体組成物へ添加されても良い。
【0052】
重合性単量体組成物の重合に用いられる、重合開始剤の添加量は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、さらに好ましくは0.3〜15質量部であり、特に好ましくは1〜10質量部である。
【0053】
本発明において、水系媒体は、水を主成分とする媒体のことを言う。
【0054】
本発明において、水系媒体には、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、例えば、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等の無機化合物や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びゼラチン等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;等の有機化合物が挙げられる。上記分散安定化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
上記分散安定化剤の中でも、無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドが好ましい。無機化合物、特に難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることにより、着色樹脂粒子の粒径分布を狭くすることができ、また、洗浄後の分散安定化剤残存量を少なくできるため、得られる重合トナーが画像を鮮明に再現することができ、更に環境安定性を悪化させない。
【0056】
(A−3)重合工程
上記(A−2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
【0057】
着色樹脂粒子は、そのまま外添剤を添加して重合トナーとして用いてもよいが、この着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、所謂コアシェル型(又は、「カプセル型」ともいう)の着色樹脂粒子とすることが好ましい。コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点を有する物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
【0058】
上述した、上記着色樹脂粒子を用いて、コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法によって製造することができる。in situ重合法や相分離法が、製造効率の点から好ましい。
【0059】
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
着色樹脂粒子が分散している水系媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0060】
シェル用重合性単量体としては、前述の重合性単量体と同様なものが使用できる。その中でも、スチレン、アクリロニトリル、及びメチルメタクリレート等の、Tgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0061】
シェル用重合性単量体の重合に用いる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の、過硫酸金属塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、及び2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の、アゾ系開始剤;等の水溶性重合開始剤を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。重合開始剤の量は、シェル用重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
【0062】
シェル層の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
【0063】
(A−4)洗浄、ろ過、脱水、及び乾燥工程
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
【0064】
上記の洗浄の方法としては、分散安定化剤として無機化合物を使用した場合、着色樹脂粒子の水分散液への酸、又はアルカリの添加により、分散安定化剤を水に溶解し除去することが好ましい。分散安定化剤として、難水溶性の無機水酸化物のコロイドを使用した場合、酸を添加して、着色樹脂粒子水分散液のpHを6.5以下に調整することが好ましい。添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸、並びに蟻酸、及び酢酸等の有機酸を用いることができるが、除去効率の大きいことや製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
【0065】
脱水、ろ過の方法は、種々の公知の方法等を用いることができ、特に限定されない。例えば、遠心ろ過法、真空ろ過法、加圧ろ過法等を挙げることができる。また、乾燥の方法も、特に限定されず、種々の方法が使用できる。
【0066】
(B)溶解懸濁法
本発明においては、上記懸濁重合法の他にも、例えば、溶解懸濁法を用いて着色樹脂粒子を製造することができる。溶解懸濁法により着色樹脂粒子を製造する方法としては、例えば、特開2003−140395号公報等を参照することができるが、必ずしも当該公報に記載された方法のみに限定されない。なお、溶解懸濁法に用いられる重合性単量体、着色剤としての樹脂被覆顔料、帯電制御剤及び離型剤、さらに必要に応じて添加されるその他の添加物は、前述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。
【0067】
(C)粉砕法
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂、着色剤としての樹脂被覆顔料、帯電制御剤及び離型剤、さらに必要に応じて添加されるその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、ヘンシェルミキサー(:商品名)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー、フォールバーグ等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
【0068】
なお、粉砕法に用いられる結着樹脂、着色剤としての樹脂被覆顔料、帯電制御剤及び離型剤、さらに必要に応じて添加されるその他の添加物は、前述の(A)懸濁重合法で挙げたものを用いることができる。また、粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、前述の(A)懸濁重合法により得られる着色樹脂粒子と同じく、in situ重合法等の方法によりコアシェル型の着色樹脂粒子とすることもできる。
【0069】
結着樹脂としては、他にも、従来からトナーに広く用いられている樹脂を使用することができる。粉砕法で用いられる結着樹脂としては、具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂等を例示することができる。
【0070】
2.着色樹脂粒子
上述の(A)懸濁重合法、(B)溶解懸濁法、又は(C)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
【0071】
着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は、好ましくは4〜12μmであり、更に好ましくは5〜10μmである。Dvが4μm未満である場合には、重合トナーの流動性が低下し、転写性が悪化したり、画像濃度が低下したりする場合がある。Dvが12μmを超える場合には、画像の解像度が低下する場合がある。
【0072】
また、着色樹脂粒子は、その体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が、好ましくは1.0〜1.3であり、更に好ましくは1.0〜1.2である。Dv/Dnが1.3を超える場合には、転写性、画像濃度及び解像度の低下が起こる場合がある。着色樹脂粒子の体積平均粒径、及び個数平均粒径は、例えば、粒度分析計(ベックマン・コールター製、商品名「マルチサイザー」)等を用いて測定することができる。
【0073】
本発明の着色樹脂粒子の平均円形度は、画像再現性の観点から、0.96〜1.00であることが好ましく、0.97〜1.00であることがより好ましく、0.98〜1.00であることがさらに好ましい。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が0.96未満の場合、印字の細線再現性が悪くなるおそれがある。
【0074】
本発明において、円形度は、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値として定義される。また、本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、着色樹脂粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、平均円形度は着色樹脂粒子が完全な球形の場合に1を示し、着色樹脂粒子の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。
【0075】
着色樹脂粒子は正帯電性を示すことが好ましい。負帯電性の着色樹脂粒子を使用すると、トナーの帯電量が低下し、かつカブリが発生しやすくなるおそれがある。
【0076】
3.本発明のトナーの製造方法
上述した(A)懸濁重合法、(B)溶解懸濁法、又は(C)粉砕法により得られる着色樹脂粒子は、外添剤と共に混合攪拌することにより、着色樹脂粒子の表面に、均一かつ好適に付着添加(外添)させることができる。
【0077】
外添剤を着色樹脂粒子の表面に付着添加(外添)する方法は、特に限定されず、混合攪拌が可能な装置を用いて行うことができる。混合攪拌が可能な装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー(:商品名、三井鉱山社製)、スーパーミキサー(:商品名、川田製作所社製)、Qミキサー(:商品名、三井鉱山社製)、メカノフュージョンシステム(:商品名、ホソカワミクロン社製)、メカノミル(:商品名、岡田精工社製)、及びノビルタ(:商品名、ホソカワミクロン社製)等の高速攪拌機が代表的に挙げられる。
【0078】
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、及び/又は酸化セリウム等からなる無機微粒子;ポリメタクリル酸メチル樹脂、シリコーン樹脂、及び/又はメラミン樹脂等からなる有機微粒子;等が挙げられる。これらの中でも、無機微粒子が好ましく、無機微粒子の中でも、シリカ、及び/又は酸化チタンが好ましく、特にシリカからなる微粒子が好適である。
なお、これらの外添剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用して用いることができる。中でも粒径の異なる2種以上のシリカを併用することが好ましい。
【0079】
本発明では、外添剤を、着色樹脂粒子100質量部に対して、通常、0.05〜6質量部、好ましくは0.2〜5質量部の割合で用いることが望ましい。外添剤の添加量が0.05質量部未満の場合には転写残が発生することがある。外添剤の添加量が6質量部を超える場合にはカブリが発生することがある。
【0080】
本発明において、外添剤として、個数平均一次粒径が5〜30nmのシリカ微粒子Aを含有していることが好ましい。
シリカ微粒子Aの個数平均一次粒径が、5nm未満である場合には、着色樹脂粒子の表面から内部に、当該シリカ微粒子が埋没し易くなり、流動性をトナー粒子に十分に付与させることができず、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、シリカ微粒子Aの個数平均一次粒径が、30nmを超える場合には、トナー粒子の表面に対して、当該シリカ微粒子が占める割合(被覆率)が低下するため、流動性をトナー粒子に十分に付与させることができない場合がある。
シリカ微粒子Aの個数平均一次粒径は、10〜30nmであることがより好ましく、15〜25nmであることが更に好ましい。シリカ微粒子Aはフュームドシリカであることが好ましく、更に疎水化処理されているとより好ましい。
【0081】
本発明において、外添剤として、個数平均一次粒径が35〜80nmのシリカ微粒子Bを含有していることが好ましい。
シリカ微粒子Bの個数平均一次粒径が、35nm未満である場合には、スペーサー効果が低下し、カブリの発生など印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、シリカ微粒子Bの個数平均一次粒径が、80nmを超える場合には、トナー粒子の表面から、当該シリカ微粒子が遊離し易くなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。
シリカ微粒子Bの個数平均一次粒径は、40〜80nmであることがより好ましく、更に疎水化処理されているとより好ましい。
【0082】
シリカ微粒子Aの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましく、0.2〜1.5質量部であることがより好ましく、0.3〜1質量部であることが更に好ましい。
シリカ微粒子Bの含有量は、着色樹脂粒子100質量部に対して、0.2〜3質量部であることが好ましく、0.3〜2質量部であることがより好ましく、0.5〜1.5質量部であることが更に好ましい。
シリカ微粒子Aの含有量が0.1質量部未満の場合、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、流動性が低下したり、保存性や耐久性が低下したりする場合がある。一方、シリカ微粒子Aの含有量が2質量部を超える場合、トナー粒子の表面から、当該シリカ微粒子が遊離し易くなり、高温高湿環境下での帯電性が低下してカブリが発生する場合がある。
シリカ微粒子Bの含有量が0.2質量部未満の場合、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、シリカ微粒子Bの含有量が3質量部を超える場合、トナー粒子の表面から、当該シリカ微粒子が遊離し易くなり、外添剤としての機能が低下し、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。
【0083】
本発明において、より好ましく用いられる疎水化処理されているシリカ微粒子A及びシリカ微粒子Bの疎水化処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル、脂肪酸及び脂肪酸金属塩等の疎水化処理剤を用いることができる。疎水化処理剤としては、高画質が得られるという観点から、シランカップリング剤、及びシリコーンオイルがより好ましい。
【0084】
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等のジシラザン;環状シラザン;トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びビニルトリアセトキシシラン等のアルキルシラン化合物、並びにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物;等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
疎水化処理剤は、上記のうち、1種のみを用いてもよく、又は2種以上用いてもよい。
また、正帯電性トナーを得る場合、良好な正帯電性を持つトナーが得られ易いことから、アミノシラン化合物やアミノ変性シリコーンオイル等のアミノ基を含有するケイ素化合物を用いることがさらに好ましく、アミノ変性シリコーンオイルを用いることが特に好ましい。この場合、高い正帯電性と疎水性を付与するためには、疎水化処理剤として、アミノ基を含有するケイ素化合物と、アミノ基を含有しないケイ素化合物とを併用することが特に好ましい。
【0085】
4.本発明のトナー
上記工程を経て得られる本発明のトナーは、平均一次粒径が30〜300nmであり、且つ、被覆されている樹脂のテトラヒドロフラン不溶分、すなわちゲル分が高い樹脂被覆顔料を含むことにより、顔料の分散性を高く保持できる結果、画像濃度及び彩度が従来よりも高く、且つ、従来よりも低温定着性に優れたカラートナーである。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0087】
1.樹脂被覆マゼンタ顔料の製造
[製造例1]
イオン交換水180部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.8部を混合、溶解させた。この溶液に、着色剤として赤色顔料であるC.I.ピグメントレッド122(クラリアント社製、商品名「Toner Magenta E」)を20部計量して投入した後、混合、分散させて分散液を得、この分散液をマイルダー(商品名、太平洋機工社製)にて15,000rpmで30分間処理を行った。次いで、この分散液を直径0.3mmのジルコニアビーズを80体積%充填したビーズミル(浅田鉄工社製、商品名「ピコミル」)にて、周速8m/s、1.0kg/minの処理レートにて1時間分散処理を行って、水性顔料分散液を得た。
【0088】
被覆用重合性単量体としてスチレン24部、2−エチルヘキシルメタクリレート4部、エチレングリコールジメタクリレート2部、及び被覆用重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名「パーブチルO」)0.3部を、イオン交換水120部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部に溶解させた水溶液に添加、混合した後、この混合物をマイルダーにて、15,000rpmにて30分間処理を行い、乳化分散を行って、被覆用重合性単量体組成物を得た。
【0089】
上記水性顔料分散液100.9部と被覆用重合性単量体組成物12.5部とを30℃で20分間混合攪拌を行った後、90℃に昇温して重合を開始し、その温度で3時間維持し重合を行った。重合後、重合反応液を25℃とした後、反応液をろ過、及びイオン交換水による洗浄及び乾燥を行って樹脂被覆マゼンタ顔料1を得た。樹脂被覆マゼンタ顔料1の個数平均一次粒径は95nmであり、テトラヒドロフラン不溶分は100%であった。
【0090】
[製造例2]
製造例1において、ビーズミルによる顔料分散処理の時間を1時間から20分に変更した以外は、製造例1と同様にして、樹脂被覆マゼンタ顔料2を得た。樹脂被覆マゼンタ顔料2の個数平均一次粒径は130nmであり、テトラヒドロフラン不溶分は100%であった。
【0091】
[製造例3]
製造例1において、被覆用重合性単量体組成物の量を、12.5部から33.3部に変更した以外は、製造例1と同様にして、樹脂被覆マゼンタ顔料3を得た。樹脂被覆マゼンタ顔料3の個数平均一次粒径は100nmであり、テトラヒドロフラン不溶分は100%であった。
【0092】
[製造例4]
製造例1において、被覆用重合性単量体を、スチレン24部、2−エチルヘキシルメタクリレート4部、エチレングリコールジメタクリレート2部から、スチレン26部、2−エチルヘキシルメタクリレート4部に変更した以外は、製造例1と同様にして、樹脂被覆マゼンタ顔料4を得た。樹脂被覆マゼンタ顔料4の個数平均一次粒径は95nmであり、テトラヒドロフラン不溶分は5%であった。
【0093】
2.樹脂被覆マゼンタ顔料の評価
樹脂被覆マゼンタ顔料1〜4について、個数平均一次粒径、及びテトラヒドロフラン不溶分を測定した。
【0094】
2−1.個数平均一次粒径の測定
まず、樹脂被覆マゼンタ顔料粒子の電子顕微鏡写真を撮影した。次に、その写真について、画像処理解析装置(ニレコ社製、商品名「ルーゼックスIID」)により、フレーム面積に対する粒子の面積率:最大2%、トータル処理粒子数:100個の条件で粒子の投影面積に対応する円相当径を算出した。得られた算術平均の値を、その樹脂被覆マゼンタ顔料粒子の個数平均一次粒径とした。
得られた樹脂被覆マゼンタ顔料粒子1〜4の個数平均一次粒径を、後述する表1に示す。
【0095】
2−2.テトラヒドロフラン不溶分の測定
樹脂被覆マゼンタ顔料10.0gを秤量し、円筒ろ紙(東洋ろ紙製:No.86R、サイズ28×100mm)の入ったソックスレー抽出器に加え、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)100mLを用いて5時間還流して抽出液を得た。抽出液からTHFを蒸発留去し、さらに50℃で1時間真空乾燥した後、得られた不揮発成分を精秤した。テトラヒドロフラン不溶分は、以下の計算式から算出した。
テトラヒドロフラン不溶分(%)=〔(S−(100−C)×T)/(T×C)〕×100
T:樹脂被覆顔料量(g)
S:抽出不揮発成分量(g)
C:理論樹脂割合(%)
得られた樹脂被覆マゼンタ顔料1〜4のテトラヒドロフラン不溶分を、後述する表1に示す。
【0096】
3.静電荷像現像用マゼンタトナーの製造
[実施例1]
モノビニル単量体としてスチレン65部、アクリル酸ブチル25部、及び製造例1で得られた樹脂被覆マゼンタ顔料1を7.5部入れ、攪拌して、重合性単量体混合物を調製し、メディア型分散機にて分散処理を行い、微細に分散し重合性単量体分散液を得た。
【0097】
次に、重合性単量体分散液97部に、モノビニル単量体としてスチレン10部、正帯電制御樹脂(スチレン/アクリル樹脂)1.5部、離型剤としてヘキサグリセリンオクタベヘネートを2部、パラフィンワックスを5部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.0部及び架橋性単量体としてジビニルベンゼン0.4部を添加し、攪拌溶解して重合性単量体組成物を調製した。
【0098】
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム8.2部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム5.8部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)水系分散媒体液を調製した。
【0099】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド水系分散媒体液に、上記重合性単量体組成物を投入し、攪拌後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名「パーブチルO」)5部をさらに投入し、インライン型乳化分散機を用いて、周速40m/s、循環回数θを10回の条件で、高剪断攪拌して、重合性単量体組成物の液滴を形成した。
【0100】
重合性単量体組成物の液滴が分散した水系分散媒体液を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃で重合反応を開始させた。重合転化率がほぼ100%に達した後、重合温度はそのままにして、シェル用重合性単量体のメチルメタクリレート2部と、イオン交換水10部に溶解した2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業株式会社製、商品名「VA086」)0.1部を添加し、90℃で3時間反応を継続した後、反応を停止し、コア−シェル構造を有するマゼンタ着色樹脂粒子の水分散液を得た。水分散液のpHは、9.5であった。
【0101】
上記により得たマゼンタ着色樹脂粒子の水分散液を攪拌しながら、硫酸により水分散液のpHを6以下とし、濾過により水相を分離した。その後、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化して、10分間攪拌を行い、水洗浄を行った。濾過、脱水、水洗浄を数回繰り返し行ってからマゼンタ着色樹脂粒子を濾過分離して、湿潤したマゼンタ着色樹脂粒子を得た。湿潤したマゼンタ着色樹脂粒子を温度45℃で真空乾燥し、体積平均粒径Dvが7.2μm、粒径分布Dv/Dnが1.13、平均円形度が0.981のマゼンタ着色樹脂粒子を得た。
【0102】
上記により得られたマゼンタ着色樹脂粒子100部に、疎水化処理された平均一次粒径が7nmのシリカ微粒子0.7部と、疎水化処理された平均一次粒径が35nmのシリカ微粒子1.5部を添加してFMミキサーを用いて混合し、実施例1の静電荷像現像用マゼンタトナーを製造した。
【0103】
[実施例2]
実施例1において、樹脂被覆マゼンタ顔料1を7.5部添加する替わりに、製造例2で得られた樹脂被覆マゼンタ顔料2を7.5部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例2の静電荷像現像用マゼンタトナーを製造した。
【0104】
[実施例3]
実施例1において、樹脂被覆マゼンタ顔料1を7.5部添加する替わりに、製造例3で得られた樹脂被覆マゼンタ顔料3を10部添加した他は、実施例1と同様にして、実施例3の静電荷像現像用マゼンタトナーを製造した。
【0105】
[実施例4]
攪拌棒及び温度計を備えた反応容器中に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(三洋化成工業製、商品名「エレミノールRS−30」)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部、及び過硫酸アンモニウム1部を加え、400回転/分で15分間攪拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液を30部加え、75℃で5時間熟成させてビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(微粒子分散液)を得た。微粒子分散液をレーザ回折/散乱粒度分布測定装置(堀場製作所社製、商品名「LA−920」)で測定した平均粒径は、0.14μmであった。微粒子分散液の一部を乾燥して樹脂分を単離した。当該樹脂分のTgは152℃であった。
【0106】
水990部、上記微粒子分散液83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(三洋化成工業製、商品名「エレミノールMON−7」)37部、酢酸エチル90部を混合攪拌し、乳白色の液体を得た。これを水相とする。
【0107】
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管を備えた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物220部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物561部、テレフタル酸218部、アジピン酸48部及びジブチルチンオキサイド2部を加え、常圧条件下、230℃で8時間反応させ、さらに10〜15mmHgの減圧条件下で5時間反応させた後、反応容器に無水トリメリット酸45部を加え、180℃、常圧で2時間反応させ、低分子ポリエステルを得た。低分子ポリエステルは、数平均分子量2,500、重量平均分子量6,700、Tg43℃、酸価25であった。
【0108】
冷却管、攪拌機、及び窒索導入管を備えた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部、及びジブチルチンオキサイド2部を加え、常圧条件下、230℃で8時間反応させ、さらに10〜15mmHgの減圧条件下で5時間反応させ、中間体ポリエステルを得た。中間体ポリエステルは、数平均分子量2,100、重量平均分子量9,500、Tg55℃、酸価0.5、水酸基価49であった。次に、冷却管、攪拌機、及び窒素導入管を備えた反応容器中に、中間体ポリエステル411部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を加え100℃で5時間反応させ、プレポリマーを得た。プレポリマーの遊離イソシアネート割合は、1.53質量%であった。
【0109】
攪拌棒及び温度計を備えた反応容器中に、イソホロンジアミン170部及びメチルエチルケトン75部を加え、50℃で5時間反応を行い、ケチミン化合物を得た。ケチミン化合物のアミン価は418であった。
【0110】
攪拌棒を備えた反応容器中に、製造例1で得られた樹脂被覆マゼンタ顔料1 91.8部、酢酸エチル385.6部を加え、15分混合し、原料分散液を得た。攪拌棒及び温度計を備えた反応容器中に、上記低分子ポリエステル242.7部、カルナバワックス45.9部、正帯電制御樹脂(スチレン/アクリル樹脂)1.5部、酢酸エチル394.9部を加え、攪拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、原料溶解液を得た。上記原料分散液482部を反応容器に移し、ビーズミル(浅田鉄工社製、商品名「ピコミル」)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度10m/秒、0.3mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、樹脂被覆マゼンタ顔料1の分散を行った。次いで、上記低分子ポリエステルの65%酢酸エチル溶液700部、及び原料溶解液693部を加え、上記条件のビーズミルで3パスし、顔料・ワックス分散液を得た。顔料・ワックス分散液の固形分濃度(130℃、30分)は50.1%であった。
【0111】
顔料・ワックス分散液648部、上記プレポリマー154部、上記ケチミン化合物6.6部を反応容器に加え、TKホモミキサー(商品名、特殊機化製)で5,000rpmで1分間混合した後、反応容器に上記水相1200部を加え、マイルダー(商品名、太平洋機工製)で、回転数15,000rpmで20分間混合し乳化スラリーを得た。攪拌機及び温度計を備えた反応容器に、上記乳化スラリーを投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、分散スラリーを得た。当該分散スラリーは、体積平均粒径7.53μm、個数平均粒径6.72μm(マルチサイザーII(商品名)で測定)であった。
【0112】
上記乳化スラリー100部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーにより12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。
濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーにより12,000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。このアルカリ洗浄を再度行った。次いで、アルカリ洗浄した濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーにより12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。更に、その濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーにより12,000rpmで10分間混合した後濾過する操作を2回行った後、45℃で真空乾燥し、体積平均粒径Dv7.51μm、粒径分布Dv/Dn1.12、平均円形度が0.976のマゼンタ着色樹脂粒子を得た。
【0113】
上記により得られたマゼンタ着色樹脂粒子100部に、疎水化処理された平均一次粒径が7nmのシリカ微粒子0.7部と、疎水化処理された平均一次粒径が35nmのシリカ微粒子1.5部を添加してFMミキサーを用いて混合し、実施例4の静電荷像現像用マゼンタトナーを製造した。
【0114】
[比較例1]
実施例1において、樹脂被覆マゼンタ顔料1を7.5部添加する替わりに、マゼンタ顔料の一種であるC.I.ピグメントレッド122(クラリアント社製、商品名「Toner Magenta E」)を6部添加した他は、実施例1と同様にして、比較例1の静電荷像現像用マゼンタトナーを製造した。
【0115】
[比較例2]
実施例1において、樹脂被覆マゼンタ顔料1を7.5部添加する替わりに、製造例4で得られた樹脂被覆マゼンタ顔料4を7.5部添加した他は、実施例1と同様にして、比較例2の静電荷像現像用マゼンタトナーを製造した。
【0116】
4.静電荷像現像用マゼンタトナーの評価
上記実施例1〜実施例4、及び比較例1〜比較例2の静電荷像現像用マゼンタトナーについて物性を調べた。詳細は以下の通りである。
【0117】
4−1.印字濃度の測定及び彩度(c)の評価
市販の非磁性一成分現像方式のプリンターを用い、ベタ画像の紙面上マゼンタ量が0.37(mg/cm)となるようにプリンターの調整を行った後、当該プリンターの現像装置内のトナーカートリッジに、上記静電荷像現像用マゼンタトナーを100g充填した後、定着ロールの温度(定着温度)を180℃にして、5cm四方のベタ画像を複写機用普通紙(80g/m)に印字した。得られた5cm四方のベタ画像を、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名「RD914」)を用いて測定した。
また、ベタ画像を分光色差計(日本電色社製、商品名「SE−2000」)で色調をL空間の座標として表して測定した。彩度(c)は、前記色調から、下記式により求めた。
(c=(a+(b
【0118】
4−2.最低定着温度の測定
市販の非磁性一成分現像方式のプリンターの定着ロール部の温度を変えられるように改造したプリンターを用い、当該プリンターの現像装置内のトナーカートリッジに、上記静電荷像現像用マゼンタトナーを100g充填した後、複写機用普通紙(80g/m)の転写材をセットし、下記のように定着試験を行った。
定着試験は、ベタ(印字濃度100%)印字して、改造プリンターの定着ロールの温度を150〜200℃の範囲で5℃ずつ変化させ、それぞれの温度における静電荷像現像用マゼンタトナーの定着率を測定し、定着率が80%以上となる最も低い温度を最低定着温度とした。
なお、5℃ずつ変化させる各温度において、定着ロールの温度を安定化させるために、5分以上その温度状態を維持させた。
定着率は、ベタ(印字濃度100%)の印字領域においてテープ剥離を行い、テープ剥離前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度(Image Density)をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、下記式により算出できる。
定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
ここで、テープ剥離前の印字物の反射濃度が1.15±0.01になるように濃度を調整した。
また、テープ剥離操作とは、試験用紙の測定部分に粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名「スコッチメンディングテープ810−3−18」)を貼り、円盤型の金属ロール(直径15cm×厚さ2cm、重さ:1kg)を用いて、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名「RD914」)を用いて測定した。
【0119】
実施例1〜実施例4、及び比較例1〜比較例2の静電荷像現像用マゼンタトナーの測定及び試験結果を、使用した樹脂被覆マゼンタ顔料の物性等と併せて表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
5.トナー評価
以下、表1を参照しながら、静電荷像現像用マゼンタトナーの測定及び試験結果について検討する。
表1より、比較例1のトナーは、着色剤として、樹脂被覆されていないC.I.ピグメントレッド122を用いて製造されたトナーである。
表1より、比較例1のトナーは、画像濃度(ID)が0.98、彩度(c)が67.2であった。したがって、従来のマゼンタ顔料を用いたマゼンタトナーは、画像濃度が低く、彩度に乏しいことが分かる。また、表1より、比較例1のトナーは、最低定着温度が160℃であり、低温定着性にやや劣ることも分かる。
【0122】
表1より、比較例2のトナーは、架橋性単量体としてエチレングリコールジメタクリレートを用いずに製造した樹脂被覆マゼンタ顔料4を用いたトナーである。樹脂被覆マゼンタ顔料4のTHF不溶分は5%である。
表1より、比較例2のトナーは、画像濃度(ID)が1.00、彩度(c)が67.1であった。したがって、THF不溶分が5%の樹脂被覆マゼンタ顔料4を用いたマゼンタトナーは、画像濃度が低く、彩度に乏しいことが分かる。また、表1より、比較例2のトナーは、最低定着温度が160℃であり、低温定着性にやや劣ることも分かる。
【0123】
一方、表1より、実施例1〜4のトナーは、個数平均一次粒径が95〜130nm、且つ、THF不溶分がいずれも100%の樹脂被覆マゼンタ顔料1〜3を用いて製造したトナーである。
表1より、実施例1〜4のトナーは、画像濃度(ID)が1.08以上、彩度(c)が72.9以上であった。したがって、個数平均一次粒径が95〜130nm、且つ、THF不溶分が100%の樹脂被覆マゼンタ顔料を用いたマゼンタトナーは、従来のマゼンタトナーよりも、画像濃度及び彩度が格段に高いことが分かる。
また、表1より、特に実施例1、実施例2、及び実施例4のトナーは、最低定着温度が155℃であった。したがって、特に実施例1、実施例2、及び実施例4のトナーは、低温定着性に優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、着色剤、帯電制御剤及び離型剤を含有する着色樹脂粒子と、外添剤とを含む静電荷像現像用カラートナーであって、
前記着色剤は、その表面が樹脂により被覆され、且つ、平均一次粒径が30〜300nmの樹脂被覆顔料であり、
前記樹脂被覆顔料は、被覆されている樹脂のテトラヒドロフラン不溶分が80〜100質量%であることを特徴とする静電荷像現像用カラートナー。
【請求項2】
湿式法により得られることを特徴とする、請求項1に記載の静電荷像現像用カラートナー。
【請求項3】
前記樹脂被覆顔料の全質量を100質量%としたときの、前記樹脂の含有割合が5〜40質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用カラートナー。

【公開番号】特開2013−73086(P2013−73086A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212971(P2011−212971)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】