説明

静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像用キャリアの製造方法、静電荷像現像用現像剤、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】従来に比べ被覆層の耐久性が高い、乾式製造されたキャリアを提供する。
【解決手段】静電荷像現像用キャリア10は、芯材12上に少なくとも導電性粒子16と有機樹脂粒子14とを付着させ被覆層が形成されて成り、前記被覆層は、空隙18を有し、有機樹脂粒子14の樹脂は、動的粘弾性測定時において3.14rad/secの剪断速度、毎分2℃の温度変化条件のもとで、損失弾性率G’’と貯蔵弾性率G’の比tanδが極小となるときの貯蔵弾性率G’が1.2×10Pa以下であり、静電荷像現像用キャリアの電気抵抗が、500V/cmの電界で1011Ω・cm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像用キャリアの製造方法、静電荷像現像用現像剤、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法では、帯電、露光工程により潜像保持体(感光体)に静電潜像を形成しトナーで現像し、現像像を転写体上に転写し、加熱等により定着し画像を得る。この様な電子写真法で用いられる現像剤は、結着樹脂中に着色剤を分散させたトナーを単独で用いる一成分現像剤と前記トナーとキャリアからなる二成分現像剤とに大別することができる。二成分現像剤は、キャリアが帯電・搬送の機能を有するため制御性が高いことから現在広く用いられている。二成分現像剤はキャリアが現像剤の攪拌・搬送・帯電などの機能を有し、現像剤としての機能は分離されているため制御性が良いなどの特徴があり、現在広く用いられている。
【0003】
一方、二成分現像剤に用いられるキャリアの製造方法は、大別して、溶剤製法と乾式製法とがある。乾式製法は、基本的に溶剤を用いず芯材表面に機械的衝撃力により導電性粒子や樹脂粒子を付着させて被覆層を形成する方法である。
【0004】
特許文献1には、乾式製法により製造され芯材上に少なくとも無機粒子と樹脂を含む被覆樹脂層を有するキャリアと、トナーよりなる静電潜像現像用現像剤が記載され、該キャリアの被覆樹脂の重量平均分子量(Mw)が300,000〜600,000であり、該キャリア被覆樹脂層中の無機粒子は、長軸R1と厚みDとの比R1/Dが3.0〜100である扁平形状であり、一方トナーは、外添剤として個数平均粒径80〜300nmの無機微粒子を含有してなることが記載されている。
【0005】
一方、特許文献2には、白色系導電剤を含有する絶縁性樹脂で表面を被覆した電子写真現像剤用キャリアが記載され、前記白色系導電剤が球状から塊状のTiO2 、ZnO2 又はSnO2 からなる平均粒子径の異なる2種以上の粉体であり、該粉体はその表面に第V族金属を固溶させたSnO2 の導電層を有し、該導電層の厚みが5〜50Åであることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、芯材粒子と前記芯材粒子を被覆する被覆層とからなる電子写真現像剤用キャリアが記載され、前記キャリアの被覆層が白色の導電性微粒子を含有し、白色の導電性微粒子の基体が酸化アルミニウムであり、白色の導電性微粒子の導電性被覆層として下層が二酸化スズを含み、上層が酸化インジウムを含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−009000号公報
【特許文献2】特開2000−242044号公報
【特許文献3】特開2008−262155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の乾式製法により得られたキャリアの被覆層に比べ、衝撃緩和性が高く衝撃に対する芯材からの剥離が抑制された耐久性の高い被覆層を有するため、画像の細線再現性が向上したキャリアを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す本発明を完成するに至った。本願発明は、以下の特徴を有する。
【0010】
(1)芯材上に少なくとも導電性粒子と有機樹脂粒子とを付着させ被覆層が形成されて成る静電荷像現像用キャリアであり、前記被覆層は、空隙を有し、前記有機樹脂粒子の樹脂は、動的粘弾性測定時において3.14rad/secの剪断速度、毎分2℃の温度変化条件のもとで、樹脂が溶融状態であって、損失弾性率G’’と貯蔵弾性率G’の比tanδが極小となるときの貯蔵弾性率G’が1.2×10Pa以下であり、静電荷像現像用キャリアの電気抵抗が、500V/cmの電界で1011Ω・cm以下である静電荷像現像用キャリアである。
【0011】
(2)前記有機樹脂粒子の樹脂が、ヘキシルメタクリレートを50モル%以上用いて重合された樹脂である上記(1)に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0012】
(3)前記導電性粒子が、白色系導電粉である上記(1)または(2)に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0013】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリアの被覆層は、機械的衝撃力を加えることにより形成される静電荷像現像用キャリアの製造方法である。
【0014】
(5)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリアとトナーからなる静電荷像現像用現像剤である。
【0015】
(6)潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、上記(5)に記載の静電荷像現像用現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体に転写する転写手段と、前記像保持体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を含むプロセスカートリッジである。
【0016】
(7)潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を静電荷像現像用現像剤を用いて現像する現像手段と、現像されたトナー画像を中間転写体を介してまたは介さずに被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上のトナー画像を定着する定着手段と、を含む画像形成装置であり、前記静電荷像現像用現像剤が、上記(5)に記載の静電荷像現像用現像剤である画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、乾式製造されたキャリアの被覆層は衝撃緩和性が高く衝撃による芯材からの剥離が抑制され、耐久性が向上する。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、導電パスを形成し易く比較的嵩高い構造を有する樹脂を有機樹脂粒子に用いても、本構成を有しない場合に比べ、被覆層の衝撃による剥離が抑制される。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、導電性粒子としてカーボンブラックを用いた場合に比べ、仮にキャリアの被覆層が一部剥がれて結果的にトナーとともに画像形成されたとしても、画像の色くすみが抑制される。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、溶剤製法に比べ、溶剤揮発工程が不要となり、且つ、導電性粒子が有機樹脂粒子間の限られた箇所に配され、導電パスが形成されやすい。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、経時に亘って安定した高品質の画像が得られる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、経時に亘って安定した高品質の画像が得られる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、経時に亘って安定した高品質の画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明におけるキャリアの被覆層に含まれる有機樹脂粒子に用いる樹脂の粘弾性特性を説明する図である。
【図3】本発明におけるキャリアの構造の一例を説明する断面模式図である。
【図4】図3の破線で囲んだX領域の拡大模式図である。
【図5】本発明におけるキャリアの一例の被覆層の断面を撮影した走査型透過電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態における静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像用キャリアの製造方法、静電荷像現像用現像剤、プロセスカートリッジおよび画像形成装置について、以下に説明する。
【0026】
[静電荷像現像用キャリアおよびその製造方法]
前記溶剤製法では、キャリア製造時に溶剤を用いることから最終的に溶剤をキャリアから揮発させる必要がある。一方、乾式製法では基本的に溶剤を用いないことから、トナーの製造時における溶剤の揮発工程が省かれるものの、溶剤製法に比べ、キャリアの被覆層が部分的に剥離する場合がある。
【0027】
本実施の形態の静電荷像現像用キャリア(以下単に「キャリア」ともいう)は、図3に示すように、芯材12上に少なくとも導電性粒子16と有機樹脂粒子14とを付着させ被覆層が形成されて成る静電荷像現像用キャリア10であり、前記被覆層は、空隙18を有する。そして、有機樹脂粒子14の樹脂は、図2に示すように、動的粘弾性測定時において3.14rad/secの剪断速度、毎分2℃の温度変化条件のもとで、樹脂が溶融状態であって(すなわち、図2の二点破線を越える高温領域で)、損失弾性率G”(図2において太破線で示す)と貯蔵弾性率G’(図2において一点破線で示す)の比tanδ(=G”/G’)が極小となるときの貯蔵弾性率G’が1.2×10Pa以下(すなわち、図2の細破線以下)であり、静電荷像現像用キャリアの電気抵抗が、500V/cmの電界で1011Ω・cm以下である。
【0028】
なお空隙率の制御方法としてキャリア作製時の攪拌条件(温度、時間、装置)や材料の処理(親水、疎水処理)条件等で制御が可能であり、例えば混合機内で適当に粘度が低下する条件下で長時間攪拌を行うと粒子の混合性改善と凝集粒子の解砕が充分に施されて空隙が少量になり、さらにキャリアの芯剤になるフェライト等の磁性粉との密着性を上げるために該磁性粉を疎水化処理等を施すことにより空隙が少量になる。逆に未処理のまま急に強い攪拌を与えキャリアを作製すると空隙が多量になる。
【0029】
動的粘弾性測定は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の「動的粘弾性測定装置 DMA」を用い、角速度3.14rad/secの剪断速度で、30℃から130℃まで、毎分2℃で昇温して測定した。
【0030】
損失弾性率G”と貯蔵弾性率G’の比tanδが極小となるときの貯蔵弾性率G’が1.2×10Pa以下となる樹脂は、従来のキャリアの被覆層に用いる樹脂に比べ、衝撃により割れやすい組成であることを示しているが、本実施の形態におけるキャリアは、被覆層に空隙が設けられ、この空隙により被覆層への衝撃が緩和され、また、被覆層に含有される導電性粒子が有機樹脂粒子間の繋ぎとなり、芯材からの大幅な被覆層の剥離が抑制される。
【0031】
被覆層の空隙の有無は、キャリア断面を走査型透過電子顕微鏡 (Scanning Transmission Electron Microscope; STEM)により撮影し、観察した。また、被覆層における空隙率は、STEMにより得られた画像を画像処理解析装置LUZEX AP(ニレコ製)にて2値化処理し、図4に示すように単位面積あたりの空隙率を測定した。本実施の形態のキャリアの被覆層における空隙率は、1%以上、50%以下が好ましい。
【0032】
キャリアの電気抵抗とは、磁気ブラシによる現像条件下に動的に測定される抵抗である。感光体ドラムと同寸法のアルミ製電極ドラムを感光体ドラムに置き換え、現像スリーブ上に粒子を供給して磁気ブラシを形成させ、この磁気ブラシを電極ドラムと摺擦させ、このスリーブとドラムとの間に電圧(500V)を印加して両者間に流れる電流を測定することにより、キャリア粒子の抵抗を下記式により求めた。
【0033】
DVR(Ωcm)=(V/I)×(N×L/Dsd)
DVR:キャリア抵抗(Ωcm)
V:現像スリーブとドラム間の電圧(V)
I:測定電流値(A)
N:現像ニップ幅(cm)
L:現像スリーブ長(cm)
Dsd:現像スリーブとドラム間距離(cm)
本実施の形態及び後述する実施例では、V=500V、N=1cm、L=6cm、Dsd=0.6mmにて測定を行うものとする。
【0034】
キャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが好ましい。フェライトの例としては、一般的に下記式で表される。
【0035】
(MO)X (FeY
(式中、Mは、Cu、Zn、Fe、Mg、Mn、Ca、Li、Ti、Ni、Sn、Sr、Al、Ba、Co、Mo等から選ばれる少なくとも1種を含有する:またX、Yは重量mol比を示し、かつ条件X+Y=100を満たす)。
【0036】
有機樹脂粒子に用いる樹脂は、損失弾性率G”と貯蔵弾性率G’の比tanδが極小となるときの貯蔵弾性率G’が1.2×10Pa以下となる樹脂であって、例えば、ヘキシルメタクリレート(以下「CHMA」と略す場合がある)を50モル%以上用いて重合された単重合体または共重合体からなる樹脂である。ここで、ポリヘキシルメタクリレート共重合体に用いる他のモノマーは、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類などが挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
有機樹脂粒子に用いる樹脂の重量平均分子量は、100,000以上、1000,000以下であり、ポリヘキシルメタクリレート単重合体の場合、100,000以上、200,000以下であり、ポリヘキシルメタクリレート共重合体の場合、100,000以上、1000,000以下である。樹脂の重量平均分子量が100,000未満の場合、現像剤としての使用の際にキャリアの被覆層が剥がれやすくなり、一方、1000,000を超えると、乾式製造時における芯材への有機樹脂粒子の固着が阻害される。
【0038】
有機樹脂粒子の体積平均粒径は限定しないが、導電性制御などを目的とした導電性粒子などの添加剤が充分に分散配置されるために、有機微粒子の体積平均粒径は1μm以下が望ましく、300nm以下が更に望ましく、小さいほど望ましい。
【0039】
導電性粒子は、特に限定されないが、カーボンブラックや、以下に示す白色系導電粉が用いられる。白色系導電粉としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、マグネシウムとカルシウムとアルミニウムと珪素などの金属との複合酸化物などが挙げられるが、キャリアの被覆層が一部剥離しトナー像に混ざって転写されても色くすみが生じ難い点で、特に白色度の高い酸化チタンが好ましい。
【0040】
導電性粒子の体積平均粒径は、被覆層内での分散配置の点で、1μm以下が望ましく、300nm以下より望ましく、40nm以下が更に望ましく小さいほど望ましい。
【0041】
本実施の形態におけるキャリアの製造方法は、芯材に乾式被覆法にて被覆層を形成する。本実施の形態における乾式被覆法では、被覆しようとする芯材の表面に、前記導電性粒子及び有機樹脂粒子、必要に応じ荷電制御粒子及び低抵抗微粒子を非加熱下、もしくは加熱下で機械的衝撃力が付与できる高速攪拌混合機を用い、高速攪拌して当該混合物に衝撃力を繰り返して付与し、芯材表面に被着した導電性粒子及び有機樹脂粒子等を溶融或いは軟化させて固着し被覆層を形成する。加熱する場合には、60〜125℃が好ましい。加熱温度が高すぎるとキャリア粒子同士の凝集が発生しやすくなるためである。
【0042】
[静電荷像現像用トナー]
以下、本実施の形態におけるトナーは、結着樹脂を有し、有色トナーの場合は着床剤をさらに含有し、さらに必要に応じて、離型剤や他の成分を含有する、まず、結着樹脂について以下に説明する。
【0043】
結着樹脂が、ポリエステル系樹脂の場合について以下に説明する。
【0044】
−結晶性ポリエステル樹脂−
本実施の形態における結晶性ポリエステル樹脂について、以下に説明する。なお、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークを有するものを指す。本発明の静電荷像現像用トナーに用いられる『結晶性』とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が6℃以内であることを意味する。
【0045】
また、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、4000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)が、4000未満であると、定着時にトナーが紙等の記録媒体の表面へしみ込んで定着ムラを生じたり、定着画像の耐折り曲げ強度が低下してしまう場合がある。
【0046】
結晶性ポリエステルは、酸(ジカルボン酸)成分と、アルコール(ジオール)成分とから合成されるものである。以下、酸(ジカルボン酸)成分と、アルコール(ジオール)成分について、さらに詳しく説明する。尚、本発明では、結晶性ポリエステルの主鎖に対して、他成分を50質量%以下の割合で共重合した共重合体も結晶性ポリエステルとする。
【0047】
上記酸(ジカルボン酸)成分としては、脂肪族ジカルボン酸が含まれていることが好ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,10−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
前記酸(ジカルボン酸)成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸成分のほか、二重結合を持つジカルボン酸成分の構成成分が含まれていても良い。尚、前記二重結合を持つジカルボン酸成分には、二重結合を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、二重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
【0049】
前記二重結合を持つジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着強度を得るために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸化合物以外にカルボン酸成分に含まれていてもよい2価のカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸成分としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環式カルボン酸;及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体等が挙げられる。
【0050】
一方、前記アルコール(ジオール)成分としては脂肪族ジオールが含まれていることが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられるが、この限りではない。
【0051】
一方、必要に応じて、二重結合を持つジオール成分3価以上の多価アルコール等の構成成分が含まれていても良い。
【0052】
前記二重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。3価以上の多価アルコール成分としては、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール;1,4−ソルビタン等の脂環式アルコール等が挙げられる。
【0053】
前記結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては特に制限はなくカルボン酸成分とアルコール成分を反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
【0054】
前記結晶性ポリエステルの製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合はあらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定のカルボン酸成分またはアルコール成分とを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0055】
前記結晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、およびアミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられる。
【0056】
例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0057】
また、結晶性ポリエステル末端の極性基を封鎖し、トナー帯電特性の環境安定性を改善する目的において単官能単量体が結晶性ポリエステルに導入される場合がある。
【0058】
単官能単量体としては、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、スルホ安息香酸モノアンモニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n−ドデシルアミノカルボニル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクタンカルボン酸、ラウリル酸、ステアリル酸、及びこれらの低級アルキルエステル等のモノカルボン酸類;又は脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環族アルコール等のモノアルコール;が用いられる。
【0059】
−非晶性ポリエステル樹脂−
本実施の形態のトナーに用いる非晶性ポリエステル樹脂としては、公知の非晶性ポリエステル樹脂が利用される。
【0060】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)の範囲は、好ましくは45℃以上85℃以下であり、より好ましくは50℃以上75℃以下である。ガラス転移温度(Tg)が45℃よりも低いとトナーの保存が困難となる場合があり、85℃よりも高いと定着における消費エネルギーが増加する場合がある。
【0061】
また、非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は5000以上100000以下の範囲であることが好ましいが、低温定着性と機械強度の観点から、重量平均分子量(Mw)は8000以上50000以下の範囲であることがより好ましい。
【0062】
非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、前述した結晶性ポリエステル樹脂の製造方法と同様に、特に制限はなく、結晶性ポリエステルと同様に一般的なポリエステル重合方法で製造される。
【0063】
非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いる酸(ジカルボン酸)成分としては、結晶性ポリエステル樹脂に関して挙げた種々のジカルボン酸が同様に用いられる。特に、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が好ましく用いられる。前記アルコール(ジオール)成分としても、非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いる種々のジオールが用いられるが、結晶性ポリエステル樹脂に関して挙げた脂肪族ジオールに加えて、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物や水素添加ビスフェノールA等が用いられる。また、酸(ジカルボン酸)成分、アルコール成分とも複数の成分を含んでもよい。
【0064】
また、前述した結晶性ポリエステル樹脂と同様に、非晶性ポリステル樹脂末端の極性基を封鎖し、トナー帯電特性の環境安定性を改善する目的において単官能単量体が非晶性ポリエステル樹脂に導入される場合がある。単官能単量体としては、結晶性ポリエステル樹脂に関して挙げた種々の化合物が用いられる。
【0065】
また、本実施の形態における他のトナーに使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体および共重合体が例示され、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0066】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーメネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、 ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレレーとなどの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料;などが挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
離型剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、脂肪酸エステル、モンタン酸エステル、カルボン酸エステル等のエステル系ワックス、及びそれらの変性物などを挙げることができる。これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
その他、必要に応じて内添剤、帯電制御剤、有機粒子等の種々の成分を添加することができる。内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、又はこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。帯電制御剤としては、例えば4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
【0069】
本実施の形態におけるトナーの体積平均粒子径は、3〜10μmであり、3〜9μmが好ましく、3〜8μmがより好ましい。また、本実施の形態のトナーの数平均粒子径は、3〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。粒子径が小さすぎると製造性が不安定になるばかりでなく、帯電性が不十分になり、現像性が低下することがあり、大きすぎると画像の解像性が低下する。
【0070】
また、本実施の形態におけるトナーの製造方法としては、例えば、上述した結着樹脂と、離型剤と結着樹脂の色相に対し補色関係にある顔料とを混練、粉砕、分級する混練粉砕法、混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、結着樹脂の色相に対し補色関係にある顔料の分散液と離型剤の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法、結着樹脂を得るための重合性単量体と結着樹脂の色相に対し補色関係にある顔料と離型剤との溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法、結着樹脂と結着樹脂の色相に対し補色関係にある顔料と離型剤との溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等が使用できる。また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。
【0071】
混練粉砕法、溶解懸濁法で作成される透明トナーは顔料が局在化しやすく、定着後も局在化が解消され難いのに対し、乳化凝集法で作成される透明トナーは顔料が均一に分散し、定着後も顔料が均一分散しやすい。
【0072】
上述した混練粉砕法としては、例えば以下の方法にて製造される。まず、上述の結着樹脂、着色剤、赤外線吸収剤等の成分を混合した後、溶融混練を行う。溶融混練機としては、三本ロール型、一軸スクリュー型、二軸スクリュー型、バンバリーミキサー型が挙げられる。得られた混練物を粗粉砕した後、例えば、マイクロナイザー、ウルマックス、ジェット−O−マイザー、ジェットミル、クリプトロン、ターボミル等の粉砕機により粉砕を行い、エルボージェット、ミクロプレックス、DSセパレーターなどの分級装置により分級処理を施してトナーが得られる。
【0073】
また、本実施の形態では、トナーの形状および表面構造の制御を意図的に行うことが可能な乳化重合凝集法がより好ましく、特許第2547016号明細書や特開平6−250439号公報等の乳化重合凝集法によりトナーを製造してもよい。乳化重合凝集法は、通常1μm以下の、微粒化された原材料を出発物質とするため原理的に小径トナーを効率的に作製される。この製造方法は、一般に乳化重合などにより樹脂分散液を作成し、一方同じ液体中に着色剤を分散した着色剤分散液を作成し、これらの樹脂分散液と着色剤分散液を混合し、トナー粒径に相当する凝集粒子を形成し、その後加熱することによって凝集粒子を融合合一しトナーが得られる。
【0074】
また、結着樹脂として、ポリエステル樹脂を用いる場合には、特に、結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂との相溶性を向上させるために以下に示す乳化工程を行う。
【0075】
−乳化工程−
本発明の乳化工程は、一種類以上の結晶性樹脂及び一種類以上の非結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂の融点、ガラス転移温度のいずれかの高い温度以上、且つ使用する有機溶剤の沸点以下の温度に加熱、溶解し、均一な溶液とした後、これに中和剤として塩基性水溶液を加え、次いで純水を加えながらpH7〜9に保ち攪拌せん断を与えることによって転相させ該樹脂のO/W型の乳化液(エマルション)を得る。ついで、得られた乳化液を減圧蒸留することで溶媒を除去し、樹脂粒子乳化液を得るものである。
【0076】
中和した後のpHを7〜9、好ましくはpH7〜8であり、塩基性水溶液としては、例えばアンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物を用いてもよい。pHが7未満の場合には、乳化液中に粗大な粒子が発生しやすくなるという不具合があり、pHが9を超えると、次工程の凝集で凝集粒度が拡大するという不具合がある。
【0077】
結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂が以上のように相溶化した粒子を用いることで離型剤粒子はより酸価の低い、樹脂粒子部分と凝集が生じやすくなるため、結果として本願発明の構造体を有するトナーが得られる。
【0078】
〈乳化分散液〉
前記樹脂粒子の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを超えると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性が向上する点で有利である。なお、前記平均粒径は、例えばコールターマルチサイザー、レーザー散乱粒度測定装置などを用いて測定される。
【0079】
前記分散液における分散媒体としては、例えば水系媒体や有機溶剤などが挙げられる。
【0080】
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類、酢酸エステル、或いはケトン、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、2種以上を併用することが望ましい。
【0081】
本発明においては、前記水系媒体に界面活性剤を添加混合しておいてもかまわない。界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
なお、前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤等のイオン性界面活性剤が好ましい。
【0083】
前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンとイソプロピルアルコールのごときアルコールが用いられ、前記結着樹脂に応じて適宜選択して用いる。
【0084】
前記樹脂粒子が、結晶性ポリエステル及び非結晶性ポリエステル樹脂である場合、中和によりアニオン型となり得る官能基を含有した自己水分散性をもっており、親水性となり得る官能基の一部又は全部が塩基で中和された、水性媒体の作用下で安定した水分散体を形成できる。結晶性ポリエステル及び無定形ポリエステル樹脂において中和により親水性基と成り得る官能基はカルボキシル基やスルフォン基等の酸性基である為、中和剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0085】
また、結着樹脂として、それ自体水に分散しない、すなわち自己水分散性を有しないポリエステル樹脂を用いる場合には、後述する離型剤と同様、樹脂溶液及び又はそれと混合する水性媒体にイオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基等の高分子電解質と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて処理すると、容易に1μm以下の粒子にされ得る。このイオン性界面活性剤や高分子電解質を用いる場合には、その水性媒体中における濃度は、0.5質量%から5質量%程度になるようにすることである。
【0086】
非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂は、離型剤とをブレンドしても良いし、適当な溶剤に溶解してブレンドしても良く、また、お互いに乳化物とした後に、混合凝集した後合一させてブレンドしても良い。この溶融混合ブレンドの場合、トナーは粉砕法で作製されるのが好ましい。溶剤に溶解してブレンドした場合、溶剤と分散安定剤とともに湿式造粒するトナー製法が好ましく、お互いに乳化物として混合する場合は、特に制限はないが、凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法など、水中でトナー粒子を作製する湿式製法が、現像器内でトナー破壊を起こりにくくする形状制御ができるため好ましい。特に形状制御および、樹脂被覆層形成が容易な乳化物の凝集合一法でトナー作製することが望ましい。粒子径制御や、表面被覆層を形成するためには、乳化物の凝集合一法でトナー作製することが望ましい。
【0087】
乳化粒子を形成する際に用いる乳化機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、キャビトロン、クレアミックス、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
【0088】
[静電荷像現像用現像剤]
以上説明した本実施の形態の静電潜像現像キャリアとトナーとを組み合わせて、二成分系の静電潜像現像剤として調製される。なお、静電潜像現像剤における、静電潜像現像トナーと、キャリアとの混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。
【0089】
[画像形成装置]
次に、本実施の形態の画像形成装置について説明する。
【0090】
図1は、本実施の形態の画像形成方法により画像を形成するための、画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置200は、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。電子写真感光体401a〜401dは、例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成することが可能である。
【0091】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0092】
さらに、ハウジング400内の所定の位置には露光装置403が配置されており、露光装置403から出射された光ビームを帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0093】
ここで、帯電ロール402a〜402dは、電子写真感光体401a〜401dの表面に導電性部材(帯電ロール)を接触させて感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである(帯電工程)。なお本実施形態において示した帯電ロールの他、帯電ブラシ、帯電フィルム若しくは帯電チューブなどを用いて接触帯電方式による帯電を行ってもよい。また、コロトロン若しくはスコロトロンを用いた非接触方式による帯電を行ってもよい。
【0094】
露光装置403としては、電子写真感光体401a〜401dの表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等を用いることができる。これらの中でも、非干渉光を露光可能な露光装置を用いると、電子写真感光体401a〜401dの導電性基体と感光層との間での干渉縞を防止することができる。
【0095】
現像装置404a〜404dには、上述の二成分静電潜像現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行うことができる(現像工程)。そのような現像装置としては、二成分静電荷像現像用現像剤を用いる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のものを選択することができる。一次転写工程では、1次転写ロール410a〜410dに、像担持体に担持されたトナーと逆極性の1次転写バイアスが印加されることで、像担持体から中間転写ベルト409へ各色のトナーが順次1次転写される。
【0096】
クリーニングブレード415a〜415dは、転写工程後の電子写真感光体の表面に付着した残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0097】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。
【0098】
2次転写ロール413に、中間転写体上のトナーと逆極性の2次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルトから記録媒体へトナーが2次転写される。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416或いは、除電器(不図示)により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0099】
[画像形成方法]
本実施の形態における画像形成方法は、少なくとも、像保持体を帯電させる工程と、像保持体上に潜像を形成する工程と、潜像担持体上の潜像を上述した静電荷現像用現像剤を用いて現像する工程と、現像されたトナー像を中間転写体上に転写する1次転写工程と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、記録媒体に転写する2次転写工程と、前記トナー画像を熱と圧力によって定着する工程とを有する。前記現像剤は、少なくとも、本発明の静電荷像現像用トナーを含有する現像剤である。前記現像剤は、一成分系、二成分系のいずれの態様であってもよい。
【0100】
上記の各工程は、いずれも画像形成方法において公知の工程が利用できる。
【0101】
潜像保持体としては、例えば、電子写真感光体及び誘電記録体等が使用できる。電子写真感光体の場合、該電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電潜像を形成する(潜像形成工程)。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電潜像にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー画像を形成する(現像工程)。形成されたトナー画像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される(転写工程)。さらに、必要に応じて、被転写体表面に転写されたトナー画像は、定着機により熱定着され、最終的なトナー画像が形成される。
【0102】
なお、前記定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常の定着機における定着部材には、離型剤が供給されるが、本実施の形態における画像形成装置の定着機には、離型剤は供給する必要がなく、オイルレスで定着がなされる。
【0103】
熱定着に用いる定着部材であるローラあるいはベルトの表面に、離型剤を供給する方法としては、特に制限はなく、例えば、液体離型剤を含浸したパッドを用いるパッド方式、ウエブ方式、ローラ方式、非接触型のシャワー方式(スプレー方式)等が挙げられ、中でも、ウエブ方式、ローラ方式が好ましい。これらの方式の場合、前記離型剤を均一に供給でき、しかも供給量をコントロールすることが容易な点で有利である。なお、シャワー方式により前記定着部材の全体に均一に前記離型剤を供給するには、別途ブレード等を用いる必要がある。
【0104】
トナー画像を転写する被転写体(記録材)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらにより本発明は限定されるものではない。
【0106】
まず、本実施例において、各測定は次のように行った。
【0107】
−粒度及び粒度分布測定方法−
粒径(「粒度」ともいう。)及び粒径分布測定(「粒度分布測定」ともいう。)について述べる。
【0108】
測定する粒子直径が2μm以上の場合、測定装置としてはコールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
【0109】
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100ml中に添加した。
【0110】
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザー−II型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布、個数平均分布を求めた。測定する粒子数は50,000であった。
【0111】
また、トナーの粒度分布は以下の方法により求めた。測定された粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、粒度の小さい方から体積累積分布を描き、累積16%となる累積体積粒径をD16vと定義し、累積50%となる累積体積粒径をD50vと定義する。更に累積84%となる累積体積粒径をD84vと定義する。
【0112】
本発明における体積平均粒径は該D50vであり、体積平均粒度指標GSDvは以下の式によって算出した。
式:GSDv={(D84v)/(D16v)}0.5
【0113】
また、測定する粒子直径が2μm未満の場合、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定した。測定法としては分散液となっている状態の試料を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、約40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、約2分間待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を、体積平均粒径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とした。
【0114】
なお、外添剤などの粉体を測定する場合は、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液50ml中に測定試料を2g加え、超音波分散機(1,000Hz)にて2分間分散して、試料を作製し、前述の分散液と同様の方法で、測定した。
【0115】
−ガラス転移温度の測定方法−
トナーのガラス転移温度は、DSC(示差走査型熱量計)測定法により決定し、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大ピークより求めた。
【0116】
主体極大ピークの測定には、パーキンエルマー社製のDSC−7を用いることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行った。
【0117】
−トナー、樹脂粒子の分子量、分子量分布測定方法−
分子量分布は、以下の条件で行ったものである。GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0118】
−動的粘弾性測定−
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の「動的粘弾性測定装置 DMA」を用い、角速度3.14rad/secの剪断速度で、30℃から130℃まで、毎分2℃で昇温して測定した。
【0119】
−キャリアの被覆層の空隙の有無−
キャリア断面を走査型透過電子顕微鏡 (Scanning Transmission Electron Microscope; STEM)により撮影し、観察した。また、被覆層における空隙率は、STEMにより得られた画像を画像処理解析装置LUZEX AP(ニレコ製)にて2値化処理し、単位面積あたりの空隙率を測定した。
【0120】
−キャリアの電気抵抗−
磁気ブラシによる現像条件下に動的に測定される抵抗である。感光体ドラムと同寸法のアルミ製電極ドラムを感光体ドラムに置き換え、現像スリーブ上に粒子を供給して磁気ブラシを形成させ、この磁気ブラシを電極ドラムと摺擦させ、このスリーブとドラムとの間に電圧(500V)を印加して両者間に流れる電流を測定することにより、キャリア粒子の抵抗を下記式により求めた。
【0121】
DVR(Ωcm)=(V/I)×(N×L/Dsd)
DVR:キャリア抵抗(Ωcm)
V:現像スリーブとドラム間の電圧(V)
I:測定電流値(A)
N:現像ニップ幅(cm)
L:現像スリーブ長(cm)
Dsd:現像スリーブとドラム間距離(cm)
なお、V=500V、N=1cm、L=6cm、Dsd=0.6mmにて測定を行った。
【0122】
以下に本発明におけるより具体的比較例および実施例について説明を行うが、以下の実施例は本発明の内容について何ら限定するものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0123】
−実施例1から実施例6及び比較例1−
[キャリアの製造例]
−キャリア(A)の作製−
Mn−Mgフェライトコア粒子(芯材、平均粒径:35μm) 100質量部
ポリヘキシルメタクリレート単重合体 2.25質量部
(重量平均分子量:20000、体積平均粒径:250nm)
白色系導電粉 0.94質量部
(チタニア、チタン工業社製STT−65C、体積粒径:30nm)
上記原料を撹拌羽根付き高速混合機(「ノビルタ NOB−130」:ホソカワミクロン(株)製)に投入し、攪拌羽根を2,000rpmで回転させ、50℃で1時間撹拌混合して、フェライトコア粒子の表面へ被覆用樹脂と酸化マグネシウム粒子とを付着させた混合物を作製した。当該混合物を目開き75μmのメッシュを通すことにより分別してキャリア(A)を作製した。
【0124】
−キャリア(B)の作製−
ポリヘキシルメタクリレート単重合体の代わりに、ポリ(ヘキシルメタクリレート−メチルメタクリレート)共重合体(重量平均分子量:40000、CHMA:MMAのモル比=80:20、体積平均粒径:250nm)を用いた以外は、キャリア(A)の作製にしたがい、キャリア(B)を作製した。
【0125】
−キャリア(C)の作製−
ポリヘキシルメタクリレート単重合体の代わりに、ポリ(ヘキシルメタクリレート−メチルメタクリレート)共重合体(重量平均分子量:80000、CHMA:MMAのモル比=50:50、体積平均粒径:250nm)を用いた以外は、キャリア(A)の作製にしたがい、キャリア(C)を作製した。
【0126】
−キャリア(D)の作製−
ポリヘキシルメタクリレート単重合体(重量平均分子量:20万、体積平均粒径:250nm)の代わりに、ポリヘキシルメタクリレート単重合体(重量平均分子量:100000、体積平均粒径:250nm)を用いた以外は、キャリア(A)の作製にしたがい、キャリア(D)を作製した。
【0127】
−キャリア(E)の作製−
白色系導電粉(チタニア、体積平均粒径:40nm)の代わりに、カーボンブラック(「バルカンXC−72R」:石福金属工業(株)製)を0.47部、ポリヘキシルメタクリレート単重合体を2.61部とした以外は、キャリア(A)の作製にしたがい、キャリア(E)を作製した。
【0128】
−キャリア(F)の作製−
白色系導電粉(酸化亜鉛、ハクスイテック社製パゼット23−K、体積平均粒径:200nm)1.91部を用いた以外は、キャリア(A)の作製にしたがい、キャリア(F)を作製した。
【0129】
−キャリア(G)の作製−
下記成分からなる樹脂被覆層形成原料溶液(a)を60分間スターラーにて撹拌/分散し、被覆層形成用原料溶液(a)を調製した。更に、次にこの樹脂被覆層形成原料溶液(a)とMn−Mgフェライトコア粒子(芯材、平均粒径:65μm)100重量部を真空脱気型ニーダーに入れ、70℃で30分撹拌した後、更に減圧して脱気、乾燥させた。更に目開き75μmのメッシュを通すことによりキャリア(G)を作製した。
<樹脂被覆層形成原料溶液(a)>
トルエン: 18重量部
ポリヘキシルメタクリレート単重合体(重量平均分子量:20万):2.25重量部
白色系導電粉: 0.94重量部
(チタニア、チタン工業社製STT−65C、体積粒径:30nm)
【0130】
[トナーの製造例]
−結着樹脂の作製−
<非晶性ポリエステル樹脂(A)の合成>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物: 15モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物: 35モル%
テレフタル酸: 50モル%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、上記3成分の総量を100質量部として、この100質量部に対してチタンテトラエトキシドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2.5時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が63℃、重量平均分子量(Mw)17000である非晶性ポリエステル樹脂(A)を得た。
【0131】
<結晶性ポリエステル樹脂(A)の合成>
コハク酸679.4部、ブタンジオール450.5部、フマル酸40.6部、ジブチルスズ2.5部フラスコ内で混合し、減圧雰囲気下で240℃に加熱して6時間脱水縮合し結晶性ポリエステル樹脂(A)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を前述の方法にて測定したところ14000であった。また、得られた結晶性ポリエステル樹脂(A)の吸熱ピーク温度を、前述の測定方法により示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ91℃であった。
【0132】
−シアン着色剤分散液の調製−
C.I.PigmentBlue15:3(大日精化製) 30質量部
イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 3質量部
イオン交換水 70質量部
上記成分を混合し、超音波分散機を10パス通過させて、顔料分散液を得た。分散した顔料の数平均粒径は130nmであった。
【0133】
−離型剤分散液の調製−
エステルワックスWE5(日本油脂(株)製) 50部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK):5部
イオン交換水 :200部
以上を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理し、平均粒径が0.21μmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(1)(離型剤濃度:26質量%)を調製した。
【0134】
(トナー1の作製)
非晶性ポリエステル樹脂(A) 12.8質量部
結晶性ポリエステル樹脂(A) 100質量部
シアン着色剤分散液 15.0質量部
アニオン性界面活性剤(Dowfax2A1 20%水溶液) 4.1質量部
離型剤分散液 12質量部
上記組成をヘンシェルミキサーにより粉体混合し、これを設定温度100℃のエクストルーダーにより熱混練し、冷却後、粗粉砕、微粉砕、分級し、体積平均粒径D50が8.2μmのトナー母粒子を得た。
【0135】
このトナー母粒子100質量部と、ジメチルシリコーンオイル処理シリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名:RY200)0.7質量部をヘンシェルミキサーにより混合しトナーを得た。
【0136】
−現像剤の調製−
次に外添トナー8質量部と、キャリア(A)からキャリア(G)のそれぞれを100質量部とを混合して二成分現像剤を調製した。
【0137】
[評価項目]
静電潜像現像用現像剤、感光体及び画像形成方法にて、図1に示すDocuCentreColor400CP改造機(富士ゼロックス社製)により、高温・高湿(30℃,85%RH)下で100枚、10,000枚、50,000枚のプリントテスト(画像面積:5%)を行い、細線再現性の評価を行った。
【0138】
[細線再現性評価]
細線60μmの線画像作製時の線の途切れ、線のエッジシャープさをデジタルマイクロスコープVH−6200(キーエンス社製)にて観察して判断した。具体的な評価基準は、以下の通りであり許容できるのは○までである。
◎:細線がトナーにより均一に埋まり、エッジ部の乱れもない。
○:細線がトナーにより均一に埋まっているが、エッジ部で僅かなぎざつきが見られる。
×:細線がトナーによりほぼ均一に埋まっているが、エッジ部でぎざつきが目立つ。
【0139】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の活用例として、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置への適用がある。
【符号の説明】
【0141】
10 静電荷像現像用キャリア、12 芯材、14 有機樹脂粒子、16 導電性粒子、18 空隙、200 画像形成装置、400 ハウジング、401a〜401d 電子写真感光体、402a〜402d 帯電ロール、403 露光装置、404a〜404d 現像装置、405a〜405d トナーカートリッジ、406 駆動ロール、407 テンションロール、408 バックアップロール、409 中間転写ベルト、410a〜410d 1次転写ロール、411 トレイ(被転写媒体トレイ)、412 移送ロール、413 2次転写ロール、414 定着ロール、415a〜415d,416 クリーニングブレード、500 被転写媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材上に少なくとも導電性粒子と有機樹脂粒子とを付着させ被覆層が形成されて成る静電荷像現像用キャリアであり、
前記被覆層は、空隙を有し、
前記有機樹脂粒子の樹脂は、動的粘弾性測定時において3.14rad/secの剪断速度、毎分2℃の温度変化条件のもとで、樹脂が溶融状態であって、損失弾性率G’’と貯蔵弾性率G’の比tanδが極小となるときの貯蔵弾性率G’が1.2×10Pa以下であり、
静電荷像現像用キャリアの電気抵抗が、500V/cmの電界で1011Ω・cm以下であることを特徴とする静電荷像現像用キャリア。
【請求項2】
前記有機樹脂粒子の樹脂が、ヘキシルメタクリレートを50モル%以上用いて重合された樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項3】
前記導電性粒子が、白色系導電粉であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアの被覆層は、機械的衝撃力を加えることにより形成されることを特徴とする静電荷像現像用キャリアの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアとトナーからなることを特徴とする静電荷像現像用現像剤。
【請求項6】
潜像保持体と、
前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、
請求項5に記載の静電荷像現像用現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体に転写する転写手段と、
前記像保持体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、
を含むことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
潜像担持体上に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を静電荷像現像用現像剤を用いて現像する現像手段と、現像されたトナー画像を中間転写体を介してまたは介さずに被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上のトナー画像を定着する定着手段と、を含む画像形成装置であり、
前記静電荷像現像用現像剤が、請求項5に記載の静電荷像現像用現像剤であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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