説明

静電荷像現像用シアントナー

【課題】低明度および高明度のシアン領域のいずれについても高い色再現性が得られるシアン着色剤を含む静電荷像現像用シアントナーを提供する。
【解決手段】シアントナー粒子を構成するシアン着色剤が、6座配位のポルフィリン環を有する着色剤化合物Aと、4座配位で、且つ配位に関与しない置換基にヘテロ環を含むポルフィリン着色剤化合物Bが90:10〜50:50の割合で含有するものであることを特徴とする静電荷像現像用シアントナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法に用いるための静電荷像現像用シアントナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー電子写真画像形成装置である複写機、プリンターの高画質化が進み、一部のものにおいては、印刷業界の色再現規格である「ジャパンカラー 2003」の色再現が達成されている。
【0003】
しかしながら、イエロー、マゼンタ、シアンそれぞれのカラートナーが形成する画像における色再現領域は、コンピューターディスプレイ画面上の色再現領域を完全にカバーできていないのが現状である。その技術的な障壁は、コンピューターディスプレイ画面が透過光による加色法で視認されるのに対し、カラートナーを用いて電子写真法によって形成される画像は反射光による減色法で視認されるという原理の違いにも起因する。とりわけ、オフィス用途に多く用いられる電子写真法の画像形成装置においては、退色しない画像保存性が求められたため、特にシアン着色剤の選択幅が限定されてきた。
【0004】
実際上、シアン着色剤としては銅フタロシアニン化合物が用いられてきており、この銅フタロシアニン化合物は、フルカラー画像形成用のシアン色としては、低明度(濃い・暗い色)のシアン領域の発色に優れているものの、高明度(淡い・明るい色)のシアン領域の発色が十分ではなかった。
【0005】
上記問題点の改善のため、様々な技術情報が開示されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、中心金属原子に置換基を有するフタロシアニン化合物を含有するシアン着色剤が開示されており、明度が高く、色調が良好な静電荷現像用トナーが得られている。
【0007】
また、低明度および高明度のシアン領域の色再現性を向上させるためには、2種以上の化合物を併用することが有効であるという技術情報が開示されている。
【0008】
例えば、特許文献2には、銅フタロシアニンとニッケルフタロシアニンを無機塩類と有機溶剤の存在下で湿式粉砕してなるシアン顔料が開示されており、銅フタロシアニンを単独で湿式粉砕したときに比べ粒子径が小さく、彩度の高い顔料が得られている。
【0009】
また、特許文献3には、中心金属原子に置換基を有するフタロシアニン化合物と、中心金属原子に置換基を有さないフタロシアニン化合物を特定の割合で含有するシアン着色剤が開示されている。
【0010】
しかしながら、本発明者らが詳細に検討した結果、低明度および高明度シアン領域のいずれにおいても、色再現性が良好なシアントナーは実用化されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−122496号公報
【特許文献2】特開2009−151162号公報
【特許文献3】特開2009−128750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、低明度および高明度のシアン領域のいずれについても高い色再現性が得られるシアン着色剤を含む静電荷像現像用シアントナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1.少なくとも樹脂およびシアン着色剤を含有するシアントナー粒子よりなる静電荷像現像用シアントナーであって、前記シアントナー粒子を構成するシアン着色剤が、下記一般式(1)で表される着色剤化合物Aと、下記一般式(2)で表される着色剤化合物Bを含有するものであることを特徴とする静電荷像現像用シアントナー。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、Mは中心金属原子を示す。また、Zは置換基を示す。m1およびm2は0または1を表し、m1およびm2が同時に0で有ることはない。また、m1およびm2が同時に1のとき、Zは互いに同一でも相違してもよい。A〜Aは各々独立に置換基を有してもよい芳香環を示す。但し、A〜Aは炭素原子のみからなる芳香環である。〕
【0016】
【化2】

【0017】
〔式中、Mは中心金属原子を示す。B〜Bは各々独立に置換基を有してもよい芳香環を示す。但し、B〜Bの少なくとも1つは含窒素芳香環である。〕
2.前記一般式(1)において、MがSiであることを特徴とする前記1に記載の静電荷像現像用シアントナー。
【0018】
3.前記一般式(1)において、Zが、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基または−OSiR(ただし、R、RおよびRは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基であることを特徴とする前記1または2に記載の静電荷像現像用シアントナー。
【0019】
4.上記着色剤化合物Aの含有質量mAおよび上記着色剤化合物Bの含有質量mBの比(mA:mB)が90:10〜50:50となる割合であることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の静電荷像現像用シアントナー。
【発明の効果】
【0020】
本発明の静電荷像現像用シアントナーによれば、低明度および高明度シアン領域のいずれについても高い色再現性が得られる。この理由は必ずしも明らかではない。しかしながら、着色剤化合物Aは、高明度シアン領域の色再現性のみに優れていることを考慮すると、着色剤化合物Bが相補的に作用し、低明度シアン領域の色再現性も向上させているためと推察される。加えて、着色剤化合物Aと着色剤化合物Bは、トナー作製時に混晶及び類似した状態を形成し、粒子径が小さい顔料になることも寄与していると推察される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0022】
本発明の静電荷像現像用シアントナー(以下、単に「シアントナー」ともいう。)は、以下のようなシアン着色剤を含有するシアントナー粒子よりなるものである。
【0023】
<シアン着色剤>
本発明のシアントナーを構成するシアン着色剤は、一般式(1)で表されるフタロシアニン系の着色剤化合物Aと、一般式(2)で表されるアザフタロシアニン系の着色剤化合物Bを含有するものである。
【0024】
一般式(1)中のM、一般式(2)中のMは中心金属原子を示す。
【0025】
一般式(1)における中心金属原子Mの具体例としては、例えばSi(ケイ素原子),Sn(スズ原子)、Al(アルミニウム原子)、Ti(チタン原子)などを例示することができ、特にSiが好ましい。
【0026】
一般式(2)における中心金属原子Mの具体例としては、例えばMg(マグネシウム原子)、Ca(カルシウム原子)、Mn(マンガン原子)、Co(コバルト原子)、Fe(鉄原子)、Ni(ニッケル原子)、Zn(亜鉛原子)などを例示することができ、特にMg、Znが好ましい。
【0027】
一般式(1)中、Zは、置換基を表し、置換基としては、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基または−OSiR(ただし、R、RおよびRは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基等を挙げることができ、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
【0028】
m1、m2は0または1を表し、m1およびm2が同時に0で有ることはない。また、m1およびm2が同時に1のとき、Zは互いに同一でも相違してもよい。
【0029】
が、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基または−OSiR(ただし、R、RおよびRは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基であることが好ましい。
【0030】
〜Aは各々独立に置換基を有してもよい芳香環を示す。但し、A〜Aは炭素原子のみからなる芳香環である。
【0031】
は、中心金属原子Mからフタロシアニン環に対して垂直方向に位置する。なお、ここでいう垂直方向とは、フタロシアニン環に対して同一平面上にないという意味であり、置換基が当該平面に正確に90℃に位置することは必須ではない。
【0032】
一般式(1)中、A〜Aの具体例としては、例えば下記式(A−1)〜下記式(A−7)に示すものを例示することができ、好ましくは下記式(A−1)に示すものである。
【0033】
【化3】

【0034】
〜Aの有する置換基としては、特に制限はなく、例えばアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、ニトロ基、ハロゲン原子、−SiR(ただし、R、RおよびRは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基、−OSiR(ただし、R、RおよびRは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基などが挙げられる。合成時において不可避的に置換基の位置が異なる異性体を含む場合があるが、これら異性体は互いに区別することなく同一誘導体としてみなしている。
【0035】
一般式(2)中、B〜Bの少なくとも1つは含窒素芳香環である。色調を整える観点から、B〜Bのうち、2つ以上が含窒素芳香環である場合が好ましく、3つ又は4つ全てが含窒素芳香環である場合が更に好ましく、4つ全てが含窒素芳香環である場合が特に好ましい。Bの具体例としては、例えば下記式(B−1)〜下記式(B−29)に示すものを例示することができ、好ましくは(B−1)、(B−2)、(B−3)に示すものである。
【0036】
【化4】

【0037】
一般式(2)で表されるアザフタロシアニン化合物は、合成時において不可避的に窒素原子の位置が異なる異性体を含む場合があるが、これら異性体は互いに区別することなく同一誘導体としてみなしている。
【0038】
Bの有する置換基としては、特に制限はなく、例えばアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、ニトロ基、ハロゲン原子、−SiR(ただし、R、RおよびRは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基、−OSiR(ただし、R、RおよびRは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基などが挙げられる。合成時において不可避的に置換基の位置が異なる異性体を含む場合があるが、これら異性体は互いに区別することなく同一誘導体としてみなしている。
【0039】
本発明の一般式(1)の具体例を、以下(1−1)〜(1−30)に示す。但し、これらの具体例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
本発明の一般式(2)の具体例を、以下(2−1)〜(2−21)に示す。但し、これらの具体例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
本発明にかかる一般式(1)〜一般式(2)で表される化合物は、例えば、下記一般式(3)または下記一般式(4)で表されるフタロシアニン誘導体と金属誘導体を反応させることにより製造することができる。
【0050】
【化13】

【0051】
上記一般式(3)中、Aは一般式(1)におけるA〜Aと同一の芳香環である。
【0052】
【化14】

【0053】
上記一般式(4)中、Bは一般式(2)におけるB〜Bと同一の芳香環である。
【0054】
あるいは、フタロシアニン誘導体の代わりに、イソインドールジイミン誘導体を用いても目的物を得ることができる。
【0055】
金属誘導体としては、一般式(1)の中心金属原子Mおよび一般式(2)中の中心金属原子Mを含む誘導体ならば特に限定されない。具体的には、一般式(1)の場合、Si、Sn、Al、Ti等のハロゲン化物、カルボン酸誘導体、アルコール誘導体、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。また、一般式(2)の場合、Mg、Ca、Mn、Co、Fe、Ni、Zn等のハロゲン化物、カルボン酸誘導体、アルコール誘導体、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
【0056】
合成における金属誘導体と中間体の使用量は、モル比で、1:2〜1:6の範囲とするのが好ましい。
【0057】
合成反応は、適当な溶媒の存在下で行われることが好ましい。このときの溶媒としては、沸点が110℃以上の有機溶媒が好ましく用いられる。例えば、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、キノリン、クロロナフタレン、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、スルフォラン等が挙げられるがこれらに限定されない。合成に使用する溶媒の量は中間体であるジシアノ誘導体の1〜100質量倍、好ましくは5〜20質量倍とすることができる。
【0058】
更に、合成反応においては、1,3−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)あるいはモリブデン酸アンモニウムを添加してもよい。添加量は中間体であるフタロニトリル誘導体1モルに対して、0.1〜10倍モル、好ましくは0.5〜2倍モルとすることができる。
【0059】
反応温度は、80〜300℃、好ましくは110〜230℃である。80℃未満では反応が極端に遅くなる場合があり、また、300℃を超えると目的物の分解が起る場合がある。反応時間は、2〜20時間、好ましくは5〜15時間とすることができる。2時間未満では、未反応原料が多く存在し、20時間を超えると目的物の分解が起る場合がある。
【0060】
本発明の一般式(1)で表される着色剤化合物Aは、650〜680nm附近に強い吸収を有している一方、本発明の一般式(2)で表される着色剤化合物Bは、620〜650nm附近に強い吸収を有している。
【0061】
着色剤化合物Aの含有質量および着色剤化合物Bの含有質量の比mA:mBは特に限定されないが、90:10〜50:50の範囲であることが好ましい。これは、上記の範囲にある場合、低明度および高明度シアン領域の発色性のバランスが、特に優れているためである。
【0062】
シアン着色剤の含有量としては、シアントナー粒子全体に対して好ましくは2〜12質量%、より好ましくは4〜8質量%である。
【0063】
<トナーの製造方法>
次に、本発明に係るトナーの製造方法について説明する。
【0064】
本発明に係るトナーは、少なくとも樹脂と着色剤を含有してなる粒子(以下、着色粒子ともいう)より構成されるものである。本発明に係るトナーを構成する着色粒子は、特に限定されるものではなく、従来のトナー製造方法により作製することが可能である。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法によるトナー製造方法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合トナーの製造方法(たとえば、乳化会合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法等)を適用することにより作製可能である。前記の製造方法では、トナーの耐熱保存性と低温定着性を両立するカプセル構造を設計しやすいため、乳化会合法が好ましい。
【0065】
なお、粉砕法により本発明に係るトナーを製造する場合、混練物の温度を130℃以下に維持した状態で作製を行うことが好ましい。これは、混練物に加える温度が130℃を超えると、混練物に加えられた熱の作用で混練物中における着色剤の凝集状態に変動を来し均一な凝集状態を維持できなくなるおそれがあるためである。仮に、凝集状態にバラツキが発生すると、作製されたトナーの色調にバラツキが生じることになり、色濁りの原因となることが懸念される。
【0066】
次に、本発明に係るトナーを構成する樹脂やワックス等について、具体例を挙げて説明する。
【0067】
先ず、本発明に係るトナーに使用可能な樹脂は、特に限定されるものではないが、下記に記載されるビニル系単量体と呼ばれる重合性単量体を重合して形成される重合体がその代表的なものである。また、本発明で使用可能な樹脂を構成する重合体は、少なくとも1種の重合性単量体を重合して得られる重合体を構成成分とするものであり、これらビニル系単量体を単独あるいは複数種類組み合わせて作製した重合体である。
【0068】
以下に、ビニル系の重合性単量体の具体例を示す。
【0069】
スチレンあるいはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等
メタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等
アクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等
オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等
また、本発明に係るトナーに使用可能な樹脂を構成するビニル系の重合性単量体には、以下に示すイオン性解離基を有するものも使用可能である。たとえば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の官能基を単量体の側鎖に有するものが挙げられ、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0070】
先ず、カルボキシル基を有するものとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。また、スルフォン酸基を有するものとしては、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸等が挙げられ、リン酸基を有するものとしてはアシドホスホオキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0071】
また、以下に示す多官能性ビニル類を使用することにより、架橋構造の樹脂を作製することも可能である。以下に、多官能性ビニル類の具体例を示す。
【0072】
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等
次に、本発明に係るトナーに使用可能なワックスとしては、以下に示す様な公知のものが挙げられる。
【0073】
ポリオレフィン系ワックス
ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等
長鎖炭化水素系ワックス
パラフィンワックス、サゾールワックス等
ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトン等
エステル系ワックス
カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等
アミド系ワックス
エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸ステアリルアミド等
ワックスの融点は、通常40〜125℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセットなどを起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。
【0074】
次に、本発明に係るトナーは、その製造工程で外部添加剤(=外添剤)として数平均一次粒径が4〜800nmの無機微粒子や有機微粒子等の粒子を添加して、トナー作製されることが可能である。
【0075】
<外添剤及び滑剤>
外添剤の添加により、トナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現される。外添剤の種類は特に限定されるものではなく、たとえば、以下に挙げる無機微粒子や有機微粒子、及び、滑剤が挙げられる。
【0076】
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することが可能で、たとえば、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等が好ましいものとして挙げられる。また、必要に応じてこれらの無機微粒子を疎水化処理したものも使用可能である。
【0077】
シリカ微粒子の具体例としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0078】
チタニア微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0079】
アルミナ微粒子としては、たとえば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0080】
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0081】
また、クリーニング性や転写性をさらに向上させるために滑剤を使用することも可能であり、たとえば、以下の様な高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。すなわち、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩が挙げられる。
【0082】
これら外添剤や滑剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。また、外添剤や滑剤の添加方法としては、タービュラーミキサ、ヘンシェルミキサ、ナウターミキサ、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
【0083】
<現像剤>
本発明に係るトナーは、キャリアとトナーより構成される二成分現像剤として、また、トナーのみから構成される非磁性一成分現像剤として使用することが可能である。
【0084】
本発明に係るトナーを二成分現像剤として使用する場合、たとえば、タンデム方式の画像形成装置を用いて、高速でのフルカラープリント作成が可能である。また、トナーを構成する樹脂やワックスを選択することにより、定着時の紙温度が100℃程度のいわゆる低温定着対応のフルカラープリントの作製も可能である。
【0085】
また、二成分現像剤として使用する際に用いられる磁性粒子であるキャリアは、たとえば、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を使用することが可能である。これらの中ではフェライト粒子が好ましい。キャリアの体積平均粒径は15〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。
【0086】
また、キャリアを使用せずに画像形成を行う非磁性一成分現像剤として使用する場合、画像形成時にトナーは帯電部材や現像ローラ面に摺擦、押圧して帯電が行われる。非磁性一成分現像方式による画像形成は、現像装置の構造を簡略化できるので、画像形成装置全体をコンパクト化できるメリットがある。したがって、本発明に係るトナーを非磁性一成分現像剤として使用することにより、コンパクトなカラープリンタを過酷な高温高湿環境下や低温低湿環境下に設けてもプリント作製を安定して行うことができる。たとえば、温湿度の面で画像形成環境が厳しいとされる印刷工場の限られたスペースの中で良好なプリント作製が行える。
【0087】
<シアントナー粒子の粒径>
本発明に係るトナーは、体積基準におけるメジアン径(D50v)を3μm以上8μm以下とすることが好ましい。なお、トナーの体積基準メジアン径(D50v径)は、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピュータシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行いトナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを2500個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパチャー径は50μmのものを使用する。
【0088】
本発明の静電荷像現像用シアントナーによれば、低明度および高明度シアン領域のいずれについても高い色再現性が得られる。この理由は必ずしも明らかではない。しかしながら、着色剤化合物Aは、高明度シアン領域の色再現性のみに優れていることを考慮すると、着色剤化合物Bが相補的に作用し、低明度シアン領域の色再現性も向上させているためと推察される。加えて、着色剤化合物Aと着色剤化合物Bは、トナー作成時に混晶及び類似した状態を形成し、粒子径が小さい顔料になることも寄与していると推察される。
【0089】
本発明における高明度とは、L系表色系において、55≦L≦80の範囲を、低明度とは30≦L<55の範囲を表す。また、シアン領域とは、色相角が180〜240度の範囲を表す。
【0090】
系表色系とは色を数値化して表すのに有用に用いられる手段であり、z軸方向のLは明度を表し、x軸およびy軸のaおよびbの両者で色相と彩度を表す。
【0091】
なお、明度とは色の相対的な明るさをいう。彩度とは色の鮮やかさの度合いをいい、下記式(1)で表される。
【0092】
式(1)
彩度C=(a×a+b×b1/2
色相とは赤、黄、緑、青、紫などの色合いをいい、色相角で表される。
【0093】
色相角とは、例えば明度がある値をとるときの色相と彩度の関係を表すx軸−y軸平面において、ある座標点(a,b)と原点Oとの半直線が、x軸の+方向(赤方向)から半時計回りの方向において、x軸の+方向に伸びる直線となす角度をいう。なお、x軸−y軸平面において、aで示されるx軸の−方向が緑方向であり、bで示されるy軸の+方向が黄方向であり、当該y軸の−方向が青方向である。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0095】
〔シアントナー1(粉砕法によるトナー)の作製〕
下記トナー構成物をヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)に投入し、撹拌羽の周速を25m/秒に設定して5分間混合処理した。
【0096】
ポリエステル樹脂 100質量部
(ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸の縮合物 重量平均分子量20,000)
着色剤化合物Aとして、フタロシアニン系化合物(1−1) 2質量部
着色剤化合物Bとして、アザフタロシアニン系化合物(2−1) 2質量部
離型剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート) 6質量部
荷電制御剤(ジベンジル酸ホウ素) 1質量部
混合物を二軸押出混練機で混練し、次いで、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミル粉砕機(ターボ工業社製)で粉砕処理し、さらに、コアンダ効果を利用した気流分級機で微粉分級処理を行うことで、体積基準メジアン径が5.7μmの着色粒子を得た。
【0097】
次に、上記着色粒子に下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、「シアントナー1」を作製した。
【0098】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm) 0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0099】
〔シアントナー2〜13、イエロートナー1、マゼンタトナー1(重合法によるトナー)の作製〕
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例1〕
n−ドデシル硫酸ナトリウム9.2質量部をイオン交換水160質量部に撹拌溶解し、撹拌を継続しながら、着色剤化合物Aとして、上記フタロシアニン系化合物(1−1)5質量部、および、着色剤化合物Bとして、アザフタロシアニン系化合物(2−1)5質量部を徐々に添加し、次いで、機械式分散機「クレアミックス」(エムテクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔1〕を調製した。このシアン着色剤微粒子分散液〔1〕における着色剤微粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径で88nmであった。
【0100】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例2〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例1において、着色剤化合物Aであるフタロシアニン系化合物(1−1)の添加量を7質量部にすると共に、着色剤化合物Bであるアザフタロシアニン系化合物(2−1)の添加量を3質量部にしたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で86nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔2〕を調製した。
【0101】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例3〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例1において、着色剤化合物Aであるフタロシアニン系化合物〔1−1〕の添加量を3質量部にすると共に、着色剤化合物Bであるアザフタロシアニン系化合物〔2−1〕の添加量を7質量部にしたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で93nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔3〕を調製した。
【0102】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例4〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例2において、着色剤化合物Aとしてフタロシアニン系化合物(1−1)の代わりにフタロシアニン系化合物(1−4)を用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で87nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔4〕を調製した。
【0103】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例5〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例2において、着色剤化合物Aとしてフタロシアニン系化合物(1−1)の代わりにフタロシアニン系化合物(1−8)を用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で85nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔5〕を調製した。
【0104】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例6〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例2において、着色剤化合物Aとしてフタロシアニン系化合物(1−1)の代わりに、フタロシアニン系化合物(1−13)を用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で91nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔6〕を調製した。
【0105】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例7〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例2において、着色剤化合物Bとしてアザフタロシアニン系化合物(2−1)の代わりに、アザフタロシアニン系化合物(2−4)を用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で93nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔7〕を調製した。
【0106】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例8〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例2において、着色剤化合物Bとしてアザフタロシアニン系化合物(2−1)の代わりに、アザフタロシアニン系化合物(2−7)を用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で91nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔8〕を調製した。
【0107】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例9〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例2において、着色剤化合物Bとしてアザフタロシアニン系化合物(2−1)の代わりに、アザフタロシアニン系化合物(2−12)を用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で93nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔9〕を調製した。
【0108】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例10(比較用)〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例1において、着色剤化合物A(フタロシアニン系化合物〔1−1〕)および着色剤化合物B(アザフタロシアニン系化合物〔2−1〕)、合計10質量部の代わりに、フタロシアニン系化合物〔1−1〕のみを10質量部用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で102nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔10〕を調製した。
【0109】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例11(比較用)〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例2において、着色剤化合物Aとしてフタロシアニン系化合物〔1−1〕の代わりに、ニッケルフタロシアニンを用いたことと、着色剤化合物Bとしてアザフタロシアニン系化合物〔2−1〕の代わりに、銅フタロシアニンを用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で105nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔11〕を調製した。
【0110】
〔シアン着色剤微粒子分散液の調製例12(比較用)〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例2において、着色剤化合物Bとしてアザフタロシアニン系化合物〔2−1〕の代わりに、銅フタロシアニンを用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で106nmである着色剤微粒子が分散されたシアン着色剤微粒子分散液〔12〕を調製した。
【0111】
〔イエロー着色剤微粒子分散液の調製例1(イエロートナー用)〕
シアン着色剤微粒子分散液の調製例1において、着色剤化合物A(フタロシアニン系化合物(1−1))および着色剤化合物B(アザフタロシアニン系化合物(2−1))、合計10質量部の代わりに、C.I.Pigment Yellow 74を10質量部用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で102nmである着色剤微粒子が分散されたイエロー着色剤微粒子分散液〔1〕を調製した。
【0112】
〔マゼンタ着色剤微粒子分散液の調製例1(マゼンタトナー用)〕
マゼンタ着色剤微粒子分散液の調製例1において、着色剤化合物A(フタロシアニン系化合物(1−1))および着色剤化合物B(アザフタロシアニン系化合物(2−1))、合計10質量部の代わりに、C.I.Pigment Red 122を10質量部用いたことの他は同様にして、粒子径が体積基準のメジアン径で106nmである着色剤微粒子が分散されたマゼンタ着色剤微粒子分散液〔1〕を調製した。
【0113】
〔樹脂微粒子分散液の製造例1〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、予めアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gをイオン交換水2760gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。一方、離型剤として下記式(W)で表される化合物72.0g、スチレン115.1g、n−ブチルアクリレート42.0g、メタクリル酸10.9gからなる単量体混合液を80℃に加温して溶解させて第1の単量体溶液を調製した。循環経路を有する機械式分散機により、前記界面活性剤溶液(80℃)中に、前記第1の単量体溶液(80℃)を混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子(油滴)の分散液を調製した。次いで、この分散液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.84gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて3時間にわたって加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、ラテックスを調製した。
【0114】
次いで、このラテックスに、重合開始剤(KPS)8.00gおよび水溶性連鎖移動剤として2−クロロエタノール10.0gをイオン交換水240gに溶解させた溶液を添加し、15分経過後、80℃で、スチレン383.6g、n−ブチルアクリレート140.0g、メタクリル酸36.4gからなる第2の単量体溶液を126分間かけて滴下した。滴下終了後、60分にわたって加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行った後、40℃まで冷却し樹脂微粒子〔1〕を含有する樹脂微粒子分散液〔LX−1〕を調製した。
【0115】
式(W):C{CHOCO(CH20CH
〔シアントナー母体粒子1の製造〕
樹脂微粒子分散液〔LX−1〕1250gと、イオン交換水2000gと、シアン着色剤微粒子分散液〔1〕165gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた5リットルの四つ口フラスコに入れて撹拌して会合用溶液を準備した。この会合用溶液の内温を30℃に調整した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10.0に調整した。次いで、塩化マグネシウム6水和物52.6gをイオン交換水72gに溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を6分間かけて90℃まで昇温した(昇温速度=10℃/分)。その状態で、「コールターマルチサイザーTA−III」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の平均粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム115gをイオン交換水700gに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、液温度90℃±2℃にて6時間にわたって加熱、撹拌することにより融着を継続させた。その後、6℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、撹拌を停止した。生成した会合粒子を固液分離し、15リットルのイオン交換水による洗浄を4回繰り返し、その後、40℃の温風で乾燥して、シアントナー母体粒子〔1〕を得た。
【0116】
〔シアントナー2の製造〕
このシアントナー母体粒子〔1〕に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1質量%および疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)を1質量%添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により混合した。その後、45μmの目開きのフルイを用いて粗大粒子を除去し、シアントナー母体粒子〔1〕よりなるシアントナー〔2〕を製造した。
【0117】
なお、シアントナー母体粒子について、疎水性シリカの添加によっては、その粒径は変化しない。
【0118】
〔シアントナー3〜13の製造〕
シアントナー母体粒子1の製造において、シアン着色剤微粒子分散液〔1〕の代わりにそれぞれシアン着色剤微粒子分散液〔2〕〜〔12〕を用いたことの他は同様にして、シアントナー母体粒子〔2〕〜〔12〕を得、シアントナー2の製造と同様にして外添剤処理を行うことにより、シアントナー母体粒子〔2〕〜〔12〕よりなるシアントナー〔3〕〜〔13〕を製造した。なお、シアントナー〔11〕〜〔13〕は、比較用のものである。
【0119】
〔イエロートナーの製造例1〕
シアントナー2の製造において、シアン着色剤微粒子分散液〔1〕の代わりにイエロー着色剤微粒子分散液〔1〕を用いたことの他は同様にして、イエロートナー母体粒子〔1〕を得、シアントナー1の製造と同様にして外添剤処理を行うことにより、イエロートナー粒子〔1〕よりなるイエロートナー〔1〕を製造した。
【0120】
〔マゼンタトナーの製造例1〕
シアントナー2の製造において、シアン着色剤微粒子分散液〔1〕の代わりにマゼンタ着色剤微粒子分散液〔1〕を用いたことの他は同様にして、マゼンタトナー母体粒子〔1〕を得、シアントナー2の製造と同様にして外添剤処理を行うことにより、マゼンタトナー母体粒子〔1〕よりなるマゼンタトナー〔1〕を製造した。
【0121】
〔現像剤の調製〕
上記のシアントナー〔1〕〜〔13〕、イエロートナー〔1〕およびマゼンタトナー〔1〕の各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメジアン径60μmのフェライトキャリアを、前記シアントナーの濃度が6質量%になるよう混合し、二成分現像剤であるシアン現像剤〔1〕〜〔13〕、イエロー現像剤〔1〕、マゼンタ現像剤〔1〕を調製した。なお、シアン現像剤〔1〕〜〔10〕が本発明に係るものであり、シアン現像剤〔11〕〜〔13〕が比較用のものである。
【0122】
<実施例1〜10、比較例1〜3>
分散液の粒子径
シアン着色剤微粒子分散液〔1〕〜〔12〕における着色剤微粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0123】
A:100nm未満
B:100nm以上
低明度シアン領域の発色性
シアン現像剤〔1〕〜〔13〕、イエロー現像剤〔1〕、マゼンタ現像剤〔1〕を用いて、フルカラー高速複合機「bizhub C 6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用い、定着線速310mm/min(約65枚/分)に設定された条件下でプリント画像形成動作を行い、低明度のシアン領域にあたるパッチ画像(L=40、色相角h=210°)を「PODグロスコート紙128g/m」(王子製紙社製)にプリントし、発色性を以下の判断基準で評価した。結果を表1に示す。
【0124】
発色性
A:彩度Cが28以上
B:彩度Cが26以上28未満
C:彩度Cが26未満
上記判断基準で、AもしくはBであれば、実用上問題ない発色を示す。
【0125】
高明度シアン領域の発色性
高明度のシアン領域にあたるパッチ画像(L=70、色相角=210°)を「PODグロスコート紙128g/m」(王子製紙社製)にプリントし、発色性を以下の判断基準で評価した。
【0126】
発色性
A:彩度Cが45以上
B:彩度Cが40以上45未満
C:彩度Cが40未満
上記判断基準で、AもしくはBであれば、実用上問題ない発色を示す。
【0127】
【表1】

【0128】
以上のように、本発明の着色剤化合物Aと着色剤化合物Bを含むシアン現像剤〔1〕〜〔10〕によれば、低明度および高明度シアン領域のいずれでも良好な発色が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂およびシアン着色剤を含有するシアントナー粒子よりなる静電荷像現像用シアントナーであって、前記シアントナー粒子を構成するシアン着色剤が、下記一般式(1)で表される着色剤化合物Aと、下記一般式(2)で表される着色剤化合物Bを含有するものであることを特徴とする静電荷像現像用シアントナー。
【化1】

〔式中、Mは中心金属原子を示す。また、Zは置換基を示す。m1およびm2は0または1を表し、m1およびm2が同時に0で有ることはない。また、m1およびm2が同時に1のとき、Zは互いに同一でも相違してもよい。A〜Aは各々独立に置換基を有してもよい芳香環を示す。但し、A〜Aは炭素原子のみからなる芳香環である。〕
【化2】

〔式中、Mは中心金属原子を示す。B〜Bは各々独立に置換基を有してもよい芳香環を示す。但し、B〜Bの少なくとも1つは含窒素芳香環である。〕
【請求項2】
前記一般式(1)において、MがSiであることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用シアントナー。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Zが、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基または−OSiR(ただし、R、RおよびRは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電荷像現像用シアントナー。
【請求項4】
上記着色剤化合物Aの含有質量mAおよび上記着色剤化合物Bの含有質量mBの比(mA:mB)が90:10〜50:50となる割合であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の静電荷像現像用シアントナー。

【公開番号】特開2011−242720(P2011−242720A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117109(P2010−117109)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】