説明

静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】低温定着性を実現しつつ、帯電特性の悪化を抑制した静電荷像現像用トナーを提供する。
【解決手段】少なくとも、非晶性樹脂と、繰り返し単位における酸素原子当量M(繰り返し単位の分子量/繰り返し単位中の酸素原子数)が100以上であり、下記一般式(1)で表される繰り返し単位のみを有する[−(CH2)n−O−]一般式(1)(前記一般式(1)中、nは6以上12以下の範囲内の整数を表す)結晶性ポリエーテルと、を含有する静電荷像現像用トナーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々の分野で利用されている。電子写真法においては、帯電工程、露光工程により感光体上に形成される静電潜像がトナーを含む現像剤により現像されて、転写工程、定着工程を経て可視化される。
【0003】
例えば、特許文献1には、「少なくとも結着樹脂と着色剤とからなる電子写真用トナーであって、前記結着樹脂中に、エステル濃度が、0.01以上0.12以下である結晶性ポリエステル樹脂を主成分として含むことを特徴とする電子写真用トナー」が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、「キャリアとトナーとからなる電子写真用現像剤であって、該キャリアが、芯材表面にフッ素含有樹脂を含む被覆樹脂層が設けられた電子写真用キャリアであり、前記トナーが、少なくとも着色剤と、エステル濃度が0.06以上0.12以下、融点が50〜120℃の範囲であり、スルホン酸基を実質的に含まない結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、からなる正帯電電子写真用トナーであることを特徴とする電子写真用現像剤」が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、「少なくとも着色剤と、エステル濃度及びスルホン酸基を有する2価以上のカルボン酸を共重合成分として含有し、融点が50〜120℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と、4級アンモニウム含有帯電制御剤とを含有してなり、スルホン酸基を有する2価以上のカルボン酸の共重合量が特定の関係を示すことを特徴とする正帯電性電子写真用トナー」が提案されている。
【0006】
また、特許文献4には、「結晶性ポリエステルと2種類以上の離型剤とを含むコア層と、該コア層を被覆し、無定形高分子を含むシェル層と、を有する電子写真用トナーであって、前記結晶性ポリエステルの融点が、50〜100℃の範囲内であり、前記2種類以上の離型剤のうちから選択される少なくとも2種の融点が相互に異なり、且つ、融点が特定の関係を示すことを特徴とする電子写真用トナー」が提案されている。
【0007】
また、特許文献5には、「少なくとも結着樹脂及び着色剤を含んでなる静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が結晶性樹脂を含み、該結晶性樹脂が、特定の構造を持つモノマーを重合して得られる結晶性ポリエステルであることを特徴とする静電荷像現像用トナー」が提案されている。
【0008】
また、特許文献6には、「少なくとも、着色剤と、エステル濃度が特定の範囲内である結晶性ポリエステルと、アルコール成分および酸成分を合成してなり、前記アルコール成分のうちビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を50モル%以上90モル%以下用い、且つ前記アルコール成分のうち炭素数8以上20以下の直鎖脂肪族ジオールを10モル%以上30モル%以下用いた非結晶性ポリエステルと、を含み、前記非結晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルとの含有比(質量比)が特定の値であることを特徴とする電子写真用トナー」が提案されている。
【0009】
また、特許文献7には、「分子内にエーテル結合を持ち、分子末端にOH基を持つポリエーテルポリオールと長鎖直鎖飽和脂肪酸から得られるエステルを含有する電子写真用トナー」が提案されている。
【0010】
また、特許文献8には、「酸価が1以下かつ水酸基価が150以上である水酸基及びエーテル基を有するポリエーテルポリオール樹脂を含有する磁気潜像現像用トナー」が提案されている。
【0011】
また、特許文献9には、「ピークトップ分子量が3000以上、数平均分子量が2700以上の架橋型ポリエステル樹脂、及び又は、架橋型ポリエーテルポリオール樹脂を用いた静電荷像現像用トナー」が提案されている。
【0012】
また、特許文献10には、「ポリエーテル樹脂と、ポリエステル系樹脂と、着色剤とを必須の成分とする着色樹脂溶融体を、水中に分散し、次いで冷却し、乾燥することを特徴とする、電子写真用球形トナーの製造方法」が提案されている。
【0013】
さらに、特許文献11には、「少なくともスチレン系モノマー、アクリレート系モノマーと活性水素基含有モノマーとを共重合してなる共重合体と、ポリエーテル構造又はポリエステル構造を有する両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーとを架橋反応させて得られるトナー用樹脂組成物」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−82485号公報
【特許文献2】特開2004−177496号公報
【特許文献3】特開2004−271575号公報
【特許文献4】特開2005−234046号公報
【特許文献5】特開2007−33828号公報
【特許文献6】特開2008−203779号公報
【特許文献7】特開平08−227173号公報
【特許文献8】特開平10−293422号公報
【特許文献9】特開2002−023418号公報
【特許文献10】特開2002−229257号公報
【特許文献11】特開2009−168915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、低温定着性を実現しつつ、帯電特性の悪化を抑制した静電荷像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、以下の手段により解決される、即ち、
請求項1に係る発明は、
少なくとも、
非晶性樹脂と、
繰り返し単位における酸素原子当量M(繰り返し単位の分子量/繰り返し単位中の酸素原子数)が100以上である結晶性ポリエーテルと、
を含有する静電荷像現像用トナー。
【0017】
請求項2に係る発明は、
前記結晶性ポリエーテルが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位のみを有する請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
[−(CH−O−] 一般式(1)
上記一般式(1)中、nは6以上12以下の範囲内の整数を表す。
【0018】
請求項3に係る発明は、
前記一般式(1)中のnが8以上12以下の範囲内の整数である請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【0019】
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを少なくとも含む静電荷像現像剤。
【0020】
請求項5に係る発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【0021】
請求項6に係る発明は、
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【0022】
請求項7に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体上に形成された前記トナー画像を被転写体上に転写する転写手段と、
前記被転写体上に転写された前記トナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【0023】
請求項8に係る発明は、
像保持体を帯電する帯電工程と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、請求項4に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体上に形成された前記静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、前記像保持体上に形成された前記トナー画像を被転写体上に転写する転写工程と、前記被転写体上に転写された前記トナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、結晶性ポリエステルのみを用いた場合に比べ、低温定着性を実現しつつ、帯電特性の悪化を抑制した静電荷像現像用トナーが提供できる。
請求項2に係る発明によれば、一般式(1)で表される結晶性ポリエーテル以外のポリエーテルを用いた場合に比べ、低温定着性に優れた静電荷像現像用トナーが提供できる。
請求項3に係る発明によれば、一般式(1)で表され、nが6以上7以下の結晶性ポリエーテルを用いた場合に比べ、帯電特性に優れた静電荷像現像用トナーが提供できる。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、結晶性ポリエステルのみを用いた静電荷像現像用トナーを適用した場合に比べ、低温定着性を実現しつつ、帯電特性の悪化を抑制した静電荷像現像剤を提供できる。
また、請求項5、6、7、8に係る発明によれば、結晶性ポリエステルのみを用いた静電荷像現像用トナーを適用した場合に比べ、低温定着性を実現するとともにトナーの帯電特性の悪化に起因する画像欠陥を抑制したトナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本願発明の一例である実施形態について詳細説明する。
【0028】
(静電荷像現像用トナー)
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と称することがある)は、非晶性樹脂と、結晶性ポリエーテルと、を含んで構成されている。
結晶性ポリエーテルは、繰り返し単位における酸素原子当量Mが100以上である。
ここで、本実施形態において、酸素原子当量Mとは、繰り返し単位の分子量を、繰り返し単位中の酸素原子数で割った値のことを示す。
また、2種以上の繰り返し単位で結晶性ポリエーテルが構成される場合、酸素原子当量Mは、それぞれの繰り返し単位において酸素原子当量Mの平均値とする。
【0029】
従来、トナーの低温定着性を実現するためには、トナー中に、結着樹脂として非晶性樹脂とともに結晶性ポリエステル樹脂を含めることが知られている。
しかしながら、トナー中に、結着樹脂として非晶性樹脂とともに結晶性ポリエステル樹脂を添加すると、低温定着性が実現する反面、帯電特性が悪化することがある。
【0030】
そこで、本実施形態におけるトナーでは、結着樹脂として、非晶性樹脂とともに、繰り返し単位における酸素原子当量Mが100以上の結晶性ポリエーテルを含有させる。
これにより、本実施形態に係るトナーでは、低温定着性を実現しつつ、帯電特性の悪化が抑制される。
この理由は、定かではないが、以下に示す理由によるものと推測される。
【0031】
まず、トナー中に結晶性ポリエーテルを含ませると、結晶性ポリエーテルが結晶性を有するが故に、溶融温度及びシャープメルト性(定着温度前後でトナーの粘度が急速に低下する性質)を有することから、低温定着性が実現されると考えられる。
【0032】
一方、結晶性ポリエーテルを構成する「酸素原子」は、トナーの帯電特性に影響すると考えられる。
具体的には、酸素原子量が多くなると帯電特性が悪化する傾向がある。
これは、酸素原子が多くなるとトナーの極性が高くなることにより絶縁性が低下したり、極性が高くなったことによって吸湿しやすくなるためと考えられる。
【0033】
また、酸素原子量は低温定着性にも影響を与える。
具体的には、酸素原子量が少なくなると低温定着性が悪くなる傾向がある。
これは、酸素原子が少なくなると結晶性ポリエーテルの溶融温度が高くなるためと考えられる。
【0034】
ここで、結晶性ポリエーテルにおいて、繰り返し単位における酸素原子当量Mが100以上とは、結晶性ポリエーテル全体に対する酸素原子の割合が少ないことを意味しており、この酸素原子当量Mが上記範囲の結晶性ポリエーテルをトナー中に含ませても、酸素原子によるトナーの帯電特性への影響は抑えられると考えられる。
【0035】
したがって、本実施形態に係るトナーは、低温定着性を実現しつつ、帯電特性の悪化が抑制されると考えられる。
【0036】
以下、本実施形態に係るトナーの構成について詳細に説明する。
【0037】
まず、トナーについて説明する。
本実施形態に係るトナーは、結晶性ポリエーテルと、非晶性樹脂と、必要に応じて、例えば、着色剤及び離型剤等の他の添加剤を含んで構成されている。
【0038】
ここで、結晶性樹脂(結晶性ポリエーテル)とは、示差走査熱量測定(DSC)を用いた熱分析測定において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものをいう。一方、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)を用いた熱分析測定において、明確な吸熱ピークではなく、階段状の吸熱変化のみを有するものであり、常温固体(例えば、25℃で固体)で、ガラス転移温度以上の温度において熱可塑化するものを指す。
具体的には、例えば、結晶性樹脂(結晶性ポリエーテル)とは、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを意味し、非晶性樹脂とは、半値幅が10℃を超える樹脂や、明確な吸熱ピークが認められない樹脂を意味する。
【0039】
結晶性ポリエーテルについて説明する。
結晶性ポリエーテルは、酸素原子当量Mが100以上であるが、望ましくは120以上、さらに望ましくは、140以上である。
ここで、酸素原子当量Mは帯電性の悪化の抑制の観点からは、大きければ大きいほどよいが、非晶性樹脂など他の成分との相溶性の観点や、結晶性ポリエーテルを合成するための原材料入手の観点から、その上限は300以下であることが望ましい。
【0040】
結晶性ポリエーテルとして具体的には、例えば、多価アルコールの単独重合体、2種以上の多価アルコールの共重合体が挙げられる。
より具体的には、結晶性ポリエーテルとしては、1)脂肪族系の多価アルコールの重合体、2)脂肪族系の多価アルコールと芳香族系の多価アルコールとの重合体、3)芳香族系の多価アルコールの重合体、が挙げられる。
ここで、結晶性ポリエーテルとしては、結晶性を付与する観点から、1)脂肪族系の多価アルコールの重合体及び2)脂肪族系の多価アルコールと芳香族系の多価アルコールとの重合体がよく、特に、1)が望ましい。
【0041】
脂肪族系の多価アルコールとしては、例えば、炭素数6以上20以下(望ましくは6以上12以下、より望ましくは8以上12以下)のアルキレン基を有するアルキレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
芳香族系の多価アルコールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、あるいはそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加物、キシリレングリコール等が挙げられる。
【0042】
結晶性ポリエーテルとして、特に望ましくは、以下の一般式(1)で表される繰り返し単位のみを有する結晶性ポリエーテルが挙げられる。
[−(CH−O−] 一般式(1)
上記一般式(1)中、nは6以上20以下の範囲の整数を示す。
【0043】
特に、一般式(1)のnは、6以上12以下の範囲内の整数を示すことが望ましく、より望ましくは、nが8以上12以下の範囲内の整数を示すことである。
nが6以上12以下の範囲となることで、結晶性ポリエーテルの酸素原子当量Mは100以上の範囲となる傾向があり、結晶性ポリエーテル全体に対する酸素原子の割合が少なくなるので、トナーの帯電性の悪化が抑制され易くなる。
また、nは8以上12以下の範囲となることで、さらに酸素原子当量Mの範囲が大きくなる傾向があり、結晶性ポリエーテル全体に対する酸素原子の割合が少なくなるため、トナーの帯電特性が優れ易くなる。
【0044】
結晶性ポリエーテルの重量平均分子量(Mw)は、例えば、2000以上200000以下がよく、望ましくは、3000以上100000以下、さらに望ましくは、3000以上30000以下である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行った。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
以下、同様である。
【0045】
結晶性ポリエーテルの溶融温度としては、例えば、40℃以上120℃以下がよく、望ましくは、50℃以上100℃以下である。
なお、溶融温度は、前記の示差走査熱量測定(DSC)により得られた吸熱ピークのピーク温度として求めた値である。
また、結晶性ポリエーテルは、複数の溶融ピークを示す場合があるが、本実施形態においては、最大のピークをもって溶融温度とみなす。
以下、同様である。
【0046】
以下に一般式(1)で示される化合物の具体例を示すが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化1】

【0048】
結晶性ポリエーテルの含有量は、トナーに対して、3質量%以上50質量%以下であることがよく、望ましくは、5質量%以上45質量%以下、さらに望ましくは、10質量%以上質量%以下である。
【0049】
非晶性樹脂としては、特に制限はないが、スチレン類(例えばスチレン、クロロスチレン等)、モノオレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等)、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)等の単独重合体および共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0050】
特に代表的な非晶性樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、代表的な非晶性樹脂としては、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等も挙げられる。
【0051】
非晶性樹脂の含有量は、例えば、40質量%以上95質量%以下であることがよく、望ましくは50質量%以上90質量%以下であり、より望ましくは60質量%以上85質量%以下である。
【0052】
着色剤について説明する。
着色剤としては、公知の着色剤であれば特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン等の無機顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料が挙げられる。
【0053】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0054】
着色剤の含有量としては、トナーに対して、1質量%以上30質量%以下の範囲が望ましい。
【0055】
離型剤について説明する。
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成或いは鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
離型剤の溶融温度は、保存性の観点から、50℃以上であることが望ましく、60℃以上であることがより望ましい。また、耐オフセット性の観点から、110℃以下であることが望ましく、100℃以下であることがより望ましい。
【0057】
離型剤の含有量としては、トナーに対して、例えば、2質量%以上30質量%以下の範囲が望ましい。
【0058】
その他の添加剤について説明する。
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等が挙げられる。
【0059】
トナーの特性について説明する。
トナーは、単層構造のトナーであってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナーであってもよい。
コア・シェル構造のトナーは、例えば、非晶性樹脂と結晶性ポリエーテルと、必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、非晶性樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0060】
トナーの体積平均粒径は、例えば2.0μm以上10μm以下であり、望ましくは3.5μm以上7.0μm以下μm以下である。
なお、トナーの体積平均粒径の測定法としては、分散剤として界面活性剤、望ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5質量%水溶液2ml中に、測定試料を0.5mg以上50mg以下加え、これを前記電解液100ml以上150ml以下中に添加した。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で1分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーII型(ベックマン−コールター社製)により、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0μm以上60μm以下の範囲の粒子の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000とする。
得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0061】
本願のトナーは上記成分を含んで構成されるものをトナー粒子とし、これに外添する外添剤を有してもよい。
【0062】
次に、外添剤について説明する。
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられ、該無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0063】
外添剤の表面は、予め疎水化処理をしてもよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量%以上10質量%程度である。
【0064】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー100質量部に対して0.5質量%以上2.5質量%以下がよい。
【0065】
(静電荷像現像剤)
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0066】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア、樹脂分散型キャリア等が挙げられる。
【0067】
二成分現像剤における、本実施形態に係るトナーと上記キャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100程度の範囲が望ましく、3:100乃至20:100程度の範囲がより望ましい。
【0068】
(画像形成装置/画像形成方法)
次に、本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体上に形成されたトナー画像を被転写体上に転写する転写手段と、被転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を有する。そして、静電荷像現像剤として、上記本実施形態に係る静電荷像現像剤を適用する。
【0069】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0070】
本実施形態に係る画像形成方法は、像保持体を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体上に形成されたトナー画像を被転写体上に転写する転写工程と、被転写体上に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する。そして、そして、静電荷像現像剤として、上記本実施形態に係る静電荷像現像剤を適用する。
【0071】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0072】
図1は、4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着されるプロセスカートリッジであってもよい。
【0073】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図1における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーが供給される。
【0074】
上述した第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0075】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配置されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0076】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0077】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0078】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む本実施形態に係る静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0079】
感光体1Y上のイエロートナー画像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0080】
また、第2のユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0081】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0082】
この後、記録紙Pは定着装置(ロール状定着手段)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0083】
トナー画像を転写する被転写体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
被転写体としては、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等も挙げられる。
【0084】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー画像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー画像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0085】
(プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ)
図2は、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例の実施形態を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図2において符号300は被転写体を示す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置に対して着脱自在としたものである。
【0086】
図2で示すプロセスカートリッジ200では、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態のプロセスカートリッジでは、感光体107のほかには、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備える。
【0087】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。本実施形態に係るトナーカートリッジは、画像形成装置に脱着され、少なくとも、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用の静電荷像現像用トナーを収容するトナーカートリッジである。
【0088】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱する構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0089】
以下、本願発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本願発明を制限するものではない。
なお、文中、特に断りがない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」を意味する。
【0090】
[結晶性ポリエーテルの合成]
(合成例1:結晶性ポリエーテル(5)の合成)
1,10−デカンジオール200質量部、25%硫酸4質量部を200℃、窒素気流下で12時間反応させた。冷却後イソプロピルアルコールで2度再結晶することで結晶性ポリエーテル(5)を得た。
重量平均分子量5600、溶融温度77℃であった。
【0091】
(合成例2:結晶性ポリエーテル(4)の合成)
合成例1における1,10−デカンジオールを1,9−ノナンジオールに変えた以外は合成例1と同様にしてポリエーテル(4)を得た。
重量平均分子量6100、溶融温度74℃であった。
【0092】
(合成例3:結晶性ポリエーテル(12)の合成)
1,10−デカンジオール110質量部、p−キシリレングリコール90質量部、スルファミン酸0.2質量部を180℃で1時間反応させた。冷却後イソプロピルアルコールで2度再結晶することでポリエーテル(12)を得た。
重量平均分子量7600、溶融温度76℃であった。
【0093】
(合成例4:結晶性ポリエーテル(1)の合成)
合成例1における1,10−デカンジオールを1,6−ヘキサンジオールに変えた以外は合成例1と同様にしてポリエーテル(1)を得た。
重量平均分子量6600、溶融温度57℃であった。
【0094】
(合成例5:結晶性ポリエーテル(9)の合成)
合成例1における1,10−デカンジオールを1,18−オクタデカンジオールに変えた以外は合成例1と同様にしてポリエーテル(9)を得た。
重量平均分子量8200、溶融温度99℃であった。
【0095】
(合成例6:結晶性ポリエーテル(6)の合成)
合成例1における1,10−デカンジオールを1,12−ドデカンジオールに変えた以外は合成例1と同様にしてポリエーテル(6)を得た。
重量平均分子量7000、溶融温度83℃であった。
【0096】
(合成例7:結晶性ポリエーテル(3)の合成)
合成例1における1,10−デカンジオールを1,8−オクタンジオールに変えた以外は合成例1と同様にしてポリエーテル(3)を得た。
重量平均分子量6200、溶融温度74℃であった。
【0097】
(比較合成例:結晶性ポリエステル樹脂(A)の合成)
1,4−ブタンジオール90.1質量部、アジピン酸ジメチル174.2質量部、ジブチル錫オキサイド0.3質量部を180℃窒素気流下で5時間反応させた。その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
重量平均分子量9800、溶融温度54℃であった。
【0098】
[実施例1]
(トナーの作製)
C.I.ピグメントブルーB15:3:20質量部、酢酸エチル75質量部、溶媒を除去したディスパロンDA−703−50(ポリエステル酸アマイドアミン塩、楠本化成(株)社製)4質量部、ソルスパース5000(顔料誘導体、ゼネカ(株)社製)1質量部、をサンドミルを用いて溶解/分散し、顔料分散液を作製した。
【0099】
また離型剤としてパラフィンワックス(溶融温度89℃)30質量部と酢酸エチル270質量部をDCPミルを用い10℃に冷却した状態で、湿式粉砕し、ワックス分散液を作製した。
【0100】
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物及びテレフタル酸誘導体の縮重合体からなるポリエステル樹脂(重量平均分子量=6000、ガラス転移温度=60℃、軟化点温度=106℃、酸価4mgKOH/g)136質量部、結晶性ポリエーテル(5)34質量部、顔料分散液34質量部、及び酢酸エチル56質量部を攪拌後、混合物にワックス分散液75質量部を加え、得られた混合物を撹拌した(この液をA液とした)。一方、炭酸カルシウム40質量部、水60質量部に分散した炭酸カルシウム分散液124質量部、セロゲンBS−H(第一工業製薬(株))の2%水溶液99質量部、及び水157質量部をホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて5分間攪拌した(この液をB液とした)。
【0101】
さらにホモジナイザー(ウルトラタラックス:IKA社製)を用いて前記B液345質量部と前記A液250質量部を攪拌し混合液を懸濁した。室温(25℃)、常圧で48時間プロペラ型攪拌機でこの混合液を攪拌し溶媒を除去した。次に混合液に塩酸を加えて、炭酸カルシウムを除去した後、反応混合物を水洗、乾燥、分級してトナーを得た。トナー粒子の平均粒径は6μmであった。
【0102】
得られたトナー粒子の表面形状は走査型電子顕微鏡(SEM)で加速電圧5kV,10000倍で観察した。
【0103】
次にこのトナー粒子100質量部にシリコーンオイルで処理された平均粒径40nmの酸化珪素粒子(RY50:日本アエロジル社製)1.3質量部、平均粒径100nmの爆燃法で製造された酸化珪素粒子(KMP−105:信越化学社製の分級物)2質量部、及び平均粒径20nmの酸化チタン(MT150AW:テイカ(株)製)をデシルトリメトキシシラン20%で処理した粒子1.5質量部をサンプルミルで混合し、静電荷像現像用トナーを作製した。
【0104】
得られたトナーの被覆率は、XPSにより着色粒子のみと、無機粒子のみと、無機粒子の付着した着色粒子の無機粒子の金属(Ti,Si)のシグナル強度A,B,Cを測定し、被覆率=(C−A)/(B−A)×100の式からそれぞれの被覆率を求め、Ti,Siのそれぞれの被覆率を合計して求めた。
【0105】
[実施例2〜9、比較例1〜4]
表1に従って結晶性ポリエーテルの種類及び添加量を代えたこと以外は、実施例1と同様にして、トナーを作製した。
【0106】
[評価]
各例で得られたトナーを用いて、現像剤を作製した後、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0107】
なお、現像剤は、次のようにして作製した。
フェライト粒子(パウダーテック社製、平均粒径50μm)100部とメチルメタクリレート樹脂(三菱レイヨン社製、重量平均分子量95000)1.5部を、トルエン500部と共に加圧式ニーダーに入れ、常温(25℃)で15分間攪拌混合した後、減圧混合しながら70℃まで昇温してトルエンを留去し、その後冷却し、105μmの篩を用いて分級して樹脂被覆フェライトキャリアを得た。
この樹脂被覆フェライトキャリアと、各例で得られたトナーと、をそれぞれ混合し、トナー濃度が7質量%の現像剤(二成分系静電荷像現像剤)を作製した。
【0108】
(帯電特性の評価)
作製した現像剤を富士ゼロックス社のDocuCentre400に適用し、ソリッド部を形成するように画像形成を夏環境(30℃、88%RH)で行い、さらに100枚連続画像形成を行い、1枚目と100枚目の画像についてソリッド部の画質を以下の基準で目視評価した。
○:1枚目、100枚目の双方の画像でムラ、カブリなし。
△:100枚目の画像でカブリが発生。
×:1枚目の画像からムラが発生。
【0109】
(定着温度の評価)
作製した現像剤を用い、定着機を改造した富士ゼロックス社のDocuCentre400により、記録紙表面に画像形成を行い、作製した現像剤の低温定着性の評価を行った。評価においては、温度を80℃から200℃まで10℃置きに変化させ、それぞれの定着温度において定着画像を作製した後、得られた各定着画像の画像面を谷折りにし、折れ目部の画像のはがれ度合いを観察し、画像が殆んどはがれない最低の定着温度を最低定着温度とした。
【0110】
【表1】

【0111】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、帯電特性及び低温定着性において、共に良好な結果が得られた。
【符号の説明】
【0112】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体(像保持体)
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K 111 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K 113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y、8M、8C、8K 現像剤カートリッジ
10Y、10M、10C、10K 第1〜第4ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(転写手段)
28、115 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
P、300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
非晶性樹脂と、
繰り返し単位における酸素原子当量M(繰り返し単位の分子量/繰り返し単位中の酸素原子数)が100以上である結晶性ポリエーテルと、
を含有する静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記結晶性ポリエーテルが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位のみを有する請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
[−(CH−O−] 一般式(1)
(前記一般式(1)中、nは6以上12以下の範囲内の整数を表す)
【請求項3】
前記一般式(1)中のnが8以上12以下の範囲内の整数である請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを少なくとも含む静電荷像現像剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項6】
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項4に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体上に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体上に形成された前記トナー画像を被転写体上に転写する転写手段と、
前記被転写体上に転写された前記トナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置
【請求項8】
像保持体を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項4に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体上に形成された前記静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体上に形成された前記トナー画像を被転写体上に転写する転写工程と、
前記被転写体上に転写された前記トナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−255885(P2012−255885A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128418(P2011−128418)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】