説明

静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】定着性能の定着速度依存性が少なく、トナーブロッキングが発生せず、熱保管性に優れた静電荷像現像用トナー、該静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像用現像剤、該静電荷像現像用現像剤を用いるトナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、を含有し、トナー0.5gを脱イオン水2gに分散したトナー分散液を、20℃で24時間放置した後の上澄み液は、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が10ppm未満であり、トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド2gに分散したトナー分散液を、20℃で24時間放置した後の上澄み液は、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が2ppm以上50ppm以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスとしては、従来から多数の方法が知られている。例えば、電子写真プロセスにおいては、光導電性物質を利用した感光体上に種々の手段により電気的に潜像を形成し、この潜像を、トナーを用いて現像し、感光体上のトナー潜像を、中間転写体を介して又は介さずに、紙等の被転写フィルムにトナー画像を転写した後、この転写画像を加熱、加圧、加熱加圧あるいは溶剤蒸気等により定着する、という複数の工程を経て、定着画像が形成される。感光体上に残ったトナーは必要により種々の方法でクリーニングされ、前記複数の工程が繰り返される。
【0003】
また、トナーにおいては、結晶性樹脂としてポリエステル樹脂が挙げられ、結晶性ポリエステル樹脂をトナーに用いる技術として、ガラス転移温度40℃以上の非結晶性ポリエステル樹脂と、溶融温度130〜200℃の結晶性ポリエステル樹脂とを混合して用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
更に、低溶融温度結晶性樹脂と非結晶性樹脂とを混合し、相溶化度を制御することで低温定着を獲得する技術が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0004】
一方、少なくとも、結着樹脂、着色剤および荷電制御剤を非水溶性有機溶剤に溶解ないし分散させて着色樹脂溶液とし、この着色樹脂溶液を水性分散液中で乳化分散させた後、非水溶性有機溶剤を除去することによって製造される静電潜像現像用トナーにおいて、トナー中の残存有機溶剤量が5〜100ppmであり、かつトナー中の残存水分量が0.05〜1.0質量%とする技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
また、少なくともポリマーを有機溶剤中に溶解させて調製されたポリマー溶液を、水と混合することにより乳化させて粒子を形成させ、次いで粒子を凝集させる技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0006】
また、自己水分散性熱可塑性樹脂(P)を、前記自己水分散性熱可塑性樹脂(P)を溶解しないが膨潤させることが可能な沸点100℃未満の有機溶剤(S)で膨潤させることにより膨潤体を製造する第1工程と、前記膨潤体を水性媒体中に粒子状に分散させて初期水性分散体を製造する第2工程と、前記初期水性分散体から前記有機溶剤(S)を除去することにより前記自己水分散性熱可塑性樹脂(P)の粒子が前記水性媒体中に分散した分散体を製造する第3工程とからなることを特徴とする技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0007】
また、生分解性樹脂と着色剤を有機溶剤に溶解あるいは分散させて着色液を製造する工程、乳化剤および/または分散安定剤の存在下で、前記着色液と水性媒体を混合することにより前記着色液の粒子が前記水性媒体中に分散した水性分散液を製造する工程、前記粒子中の有機溶剤を除去することにより着色樹脂粒子を生成させる工程、前記着色樹脂粒子を前記水性媒体から分離し、乾燥する工程を順次行うことによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0008】
また、少なくともポリエステル樹脂及び有機溶剤からなる樹脂溶液を水性媒体中に乳化させ、その後、有機溶剤を除去することにより樹脂粒子を形成させ、更に、前記樹脂粒子を凝集させてトナー粒子を製造する静電荷像現像用トナーの製造方法において、前記ポリエステル樹脂の定荷重押し出し形細管式レオメーターによるT1/2温度が120〜160℃の範囲であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が12以上であり、前記樹脂粒子の50%体積平均粒径が1μmを越えて6μm以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法が開示されている(例えば、特許文献8参照)。これにより、生産性が良好で、かつオイルレスのヒートローラー定着方式において良好な定着性を有し、しかも粒度分布が良好で、優れた品質の現像画像が得られるトナーを製造できる。
【0009】
また、重付加あるいは重縮合反応により得られた樹脂粒子を凝集させてなり、トナー粒子中にカルナウバワックスと4〜60ppmのケトン類からなる揮発性成分とを含有することにより厚手の用紙やオフセット印刷用用紙にも良好な定着性を得る技術が開示されている(例えば、特許文献9参照)。
【0010】
また、少なくとも樹脂を含む芯粒子と芯粒子表面の被覆層からなるトナーの残溶剤量を1〜100ppmにすることで芯粒子と芯粒子の表面の被覆層の密着性性を向上させ、優れた帯電性、画像特性を得る技術が開示されている(例えば、特許文献10参照)。
【0011】
また、樹脂成分として軟化点が90〜100℃、ガラス転移温度が35〜50℃で且つ揮発性有機化合物含有量が170ppm以下である熱可塑性ポリエステル樹脂を用いる事により、低温定着性とVOC量を改善する技術が開示されている(例えば、特許文献11参照)。
【0012】
また、結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子と外添剤とを含有するトナーであって、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤をそれぞれ10〜100ppm含有し、前記ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計が20〜150ppmであり、前記トナー粒子がアルミニウム、亜鉛、及びカルシウムから選択される少なくとも1種の金属元素を元素組成比換算で0.05〜0.30%含有することにより、トナー重量の高い画像でのコスレ傷の発生を防止する技術が開示している(例えば、特許文献12参照)。
【特許文献1】特公昭56−13943号公報
【特許文献2】特開2004−206081号公報
【特許文献3】特開2003−50478号公報
【特許文献4】特開平7−325429号公報
【特許文献5】特開2000−250256号公報
【特許文献6】特開2003−231757号公報
【特許文献7】特開2004−177554号公報
【特許文献8】特開2002−351139号公報
【特許文献9】特開2004−287426号公報
【特許文献10】特開2005−321595号公報
【特許文献11】特開2008−40285号公報
【特許文献12】特開2006−276064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、電子写真分野の技術進化により、このような電子写真プロセスは複写機、プリンターのみならず、印刷用途にも使用されるようになり、装置の高速化、高信頼性はもとより、複写物が印刷物同等の高画質、色相を有することがますます厳しく要求されてきている。特に近年は省エネが重要となっており、電子写真プロセスにおいては、最も電力消費が多い定着工程での消費電力削減が大きな課題となっており、ここでは低温での定着性が求められる一方、同じ消費電力においても複写、プリント速度が速いといった生産性の向上が求められる。
【0014】
加熱加圧定着方法においては定着ロールなどの加熱部材と接触することにより加熱溶融して、用紙等の記録媒体に染み込むことにより、定着が生じる。
したがって加熱温度が高い程、または加熱時間が長いほど、用紙等の記録媒体への染み込みが生じやすくなる。しかし、坪量が大きい用紙等の熱容量の大きい記録媒体は、用紙にトナーが染み込みにくく、トナー定着像の折り曲げ耐性が悪かったり、定着不良によるコスレにより、ユーザーの手が汚れたり、紙面汚染の原因となった。
【0015】
これに対し、特許文献1及び2で提案された技術は上記課題を解決するためになされたものであるが、特許文献1で提案された技術では、優れた微粉砕性、耐ブロッキング性を有するが、結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度が高いため、今以上の低温定着性は達成できず問題があった。
また、特許文献2で提案された技術では、結晶性樹脂と非結晶性樹脂の相溶化が進行することで混合樹脂の可塑化が発生し、耐ブロッキング性のみならず、帯電性も悪化するといった不具合が発生してしまう。
【0016】
一方、低温定着性への要求から用いられる離型剤の溶融温度が低温化され、またオイルレス定着への要求から必要となる離型剤添加量も増加するアプローチも近年増えている。従来、トナー製法として主に混練粉砕法が用いられてきたが、混練粉砕法は、結着樹脂と着色剤や離型剤などの添加剤を溶融混練した後粉砕するものであるため、粉砕されたトナー表面に着色剤や離型剤が露出し、帯電性や寿命に悪影響を与える場合がある。また、溶融混練時に離型剤が溶け出し、混練中の系の粘度を低下させ、結果添加剤の分散性が悪化し、帯電性や寿命などに加えて、色や濃度といった画質にまで悪影響を与える場合があった。このような事情から、近年では熔融混練粉砕法に替えて、湿式製法によるトナー作製が増加してきている。湿式製法では、重合性モノマー、有機溶剤や界面活性剤がトナー中に残留しやすいことから、トナー中の残留モノマーや有機溶剤量に着目した技術が開示されている。
【0017】
特許文献3〜12で提案された技術は、トナー中の残留モノマーや有機溶剤量に着目したものである。この中で、特許文献8で提案された技術は、樹脂中に残留する溶剤を積極的に利用したものであるが、やはり、トナー化後は溶剤を完全に除去することが記載されており、トナー化後における溶剤の影響を積極的に利用するものではない。
また、特許文献9で提案された技術では、トナー中にケトン類からなる揮発性成分が過度に存在する事により、トナー結着性樹脂が可塑化し、トナー凝集性(ブロッキング性)が悪化してしまう。
【0018】
また、特許文献10で提案された技術では、芯粒子と被覆層樹脂の溶融性が異なるから、用紙への染み込みムラ等が発生してしまう為、用紙の耐折曲げ性は充分では無い。
更に、特許文献11で提案された技術では、軟化点及びガラス転移温度が低い樹脂を使用している為、トナーの熱保管性の低下や、用紙定着した画像の耐熱保管性が低下し、複写/プリント画像を重ねて保管した場合、定着像同士が付着したり、用紙が汚れたり、画像自体の欠陥がでてしまう。
更にまた、特許文献12で提案された技術では、コスレ傷の発生を防止が出来るものの、トナー中に含有する溶剤量が多く、トナーのブロッキング性、熱保管性等が悪い等の不具合が出てしまう。
【0019】
本発明は、定着性能の定着速度依存性が少なく、トナーブロッキングが発生せず、熱保管性に優れた静電荷像現像用トナー、該静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像用現像剤、該静電荷像現像用現像剤を用いるトナーカートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、
結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、ケトン系溶剤と、アルコール系溶剤と、を含有し、
該トナー0.5gを脱イオン水2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が10ppm未満であり、
該トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が2ppm以上50ppm以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【0021】
請求項2に係る発明は、
前記トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤濃度が1ppm以上10ppm以下であり、前記トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド2gに分散したトナー分散液のアルコール系溶剤の濃度が1ppm以上49ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0022】
請求項3に係る発明は、
前記結着樹脂の全量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、1質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0023】
請求項4に係る発明は、
請求項1に記載の静電荷像現像用トナーを含有することを特徴とする静電荷像現像用現像剤である。
【0024】
請求項5に係る発明は、
トナーが少なくとも収められ、該トナーが請求項1に記載の静電荷像現像用トナーであることを特徴とするトナーカートリッジである。
【0025】
請求項6に係る発明は、
現像剤保持体を少なくとも備え、請求項4に記載の静電荷像現像用現像剤を収容することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0026】
請求項7に係る発明は、
像保持体と、該像保持体上に形成された静電荷像を現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、像保持体上に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、記録媒体上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、前記現像剤が請求項4に記載の静電荷像現像用現像剤であることを特徴とする画像形成装置である。
【0027】
請求項8に係る発明は、
定着速度が55mm/s以上220mm/s以下であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に係る発明によれば、定着性能の定着速度依存性が少なく、トナーブロッキングが発生せず、熱保管性に優れた静電荷像現像用トナーが提供される。
請求項2に係る発明によれば、定着性能の定着速度依存性が少なく、トナーブロッキングが発生せず、熱保管性に優れるという効果が顕著になる。
【0029】
請求項3に係る発明によれば、低温定着性が損なわれず、かつトナー粉体流動性の低下や帯電性の悪化も抑制される。
請求項4に係る発明によれば、定着性能の定着速度依存性が少なく、トナーブロッキングが発生せず、熱保管性に優れた静電荷像現像用現像剤が提供される。
【0030】
請求項5に係る発明によれば、定着性能の定着速度依存性が少ない定着画像が得られるトナーカートリッジが提供される。
請求項6に係る発明によれば、定着性能の定着速度依存性が少ない定着画像が得られるプロセスカートリッジが提供される。
【0031】
請求項7に係る発明によれば、定着性能の定着速度依存性が少ない定着画像が得られる画像形成装置が提供される。
請求項8に係る発明によれば、定着性能を損なわずに高速で画像形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、「本実施形態のトナー」という場合がある。)は、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、ケトン系溶剤と、アルコール系溶剤と、を含有し、該トナー0.5gを脱イオン水2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が10ppm未満であり、該トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が2ppm以上50ppm以下であることを特徴とする。
【0033】
本実施形態のトナーによれば、定着画像の折り曲げ耐性等の定着性能の定着速度依存性を少なくし、更にトナーブロッキングが発生せず、熱保管性に優れたトナーが提供されるが、この効果を発現させるメカニズムは以下のように推定される。
定着画像の折り曲げ耐性は、用紙等の記録媒体へのトナーの染み込みと、記録媒体とトナーの密着性に依存すると考えられる。また、定着速度依存は、定着時の熱量に依存するものであり、すなわち、画像を形成するトナーが、定着ロールなどの加熱部材と接触することにより加熱溶融温度が高いほど、または加熱時間が長いほど、用紙等の記録媒体への染み込みが生じやすくなる。
【0034】
これらのことから加熱時間により、トナーの記録媒体への染み込み状態は異なり、折り曲げ耐性の定着速度耐性の定着速度依存性が発生する。
この為、定着速度依存性を小さくする為には、少ない熱量でトナーの記録媒体への染み込むことと、トナーと記録媒体との密着性を得ることが重要となる。この少ない熱量でトナーの記録媒体への染み込みとトナーと記録媒体の密着性を得ることを検討した結果、トナー中にケトン系溶剤とアルコール系溶剤とを含有させることにより、少ない熱量でトナーの記録媒体への染み込み、かつ、トナーと記録媒体との密着性が得られることを見出した。
【0035】
これは、ケトン系溶剤の存在により、結晶性ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂界面の相溶状態が良化し、結着樹脂の可塑化効果を生み少ない定着熱量で、用紙等の記録媒体へトナーが染み込む。
【0036】
一方、アルコール系溶剤は、定着時の熱により、トナー中のアルコール系溶剤からなる成分が揮発状態あるいはトナーと一緒に用紙を構成する繊維(セルロース)間に入りこむ。植物性繊維であるセルロースは親水性基である多くの水酸基を有しており、アルコール系溶剤の有する水酸基どうしが強い水素結合が作り、これによりトナーと用紙の密着性をより強固になると推測され、これにより記録媒体上の定着像部で折り曲げても画像に欠陥は生じにくくなり、且つ画像折り曲げ耐性の定着速度依存性が小さくなる。
【0037】
但し、アルコール系溶剤は、親水性が高いのと同時に結着樹脂として用いるポリエステル樹脂に対する溶解性が低い為、水媒体中でトナー粒子を作製する湿式製法においては、このアルコール系溶剤をトナー粒子中に取り込むのは困難であり、前記のような作用効果を生むことが困難となる。本実施形態では、アルコール系溶剤との溶解性が高く、ポリエステル樹脂との溶解性が高いケトン系溶剤との併用によりトナー粒子中にアルコール溶剤をトナー粒子に内包される。
【0038】
これらケトン系溶剤及びアルコール系溶剤をトナー中に含有させるための手法としては、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とがケトン系溶剤とアルコール系溶剤に溶解した樹脂溶液に、中和剤と水性媒体とを添加して転相せしめ乳化粒子分散液を形成し、その後の溶剤留去条件により乳化粒子分散液中のケトン系溶剤量及びアルコール系溶剤の絶対量を調整した後、乳化粒子分散液を凝集合一しトナー粒子を形成させ、トナー粒子分散液を洗浄、乾燥条件により異なった溶媒種で抽出されるケトン系溶剤とアルコール系溶剤量を調整する方法が挙げられる。
【0039】
また、他の方法としては、トナー中に結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより溶剤が残留しやすくなることを利用する方法も挙げられる。ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸モノマーとジアルコールモノマーとの重縮合樹脂であり、生成されるエステル結合を含めて、ケトン系溶剤とアルコール系溶剤と分子構造が似ており、相溶性が高い。また、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性を出すために立体障害がほとんど無く、エステル結合を遮蔽するものがないため、溶剤と相互作用しやすい。これらの効果が合わさり、溶剤が残留しやすくなる。
【0040】
しかし、上述のように、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の両方がトナー中に含まれることは画像の折り曲げ耐性を獲得する為には良いものの、ポリエステル樹脂と溶解性の高いケトン系溶剤がトナー粒子表面に存在すると結着樹脂が可塑化状態となってしまう為、トナーのベタツキによるトナー凝集性、熱保管性の悪化、あるいはトナー表面からのVOC成分の放出等の環境被害も発生してしまう為、トナー粒子表面には、極力、ケトン系溶剤とアルコール系溶剤が存在しないほうが良く、トナー内部にのみにケトン系溶剤及びアルコール系溶剤を内包していることが必要である。
【0041】
本実施形態においては、トナー粒子を水媒体に分散し、水により抽出されるトナー表面に存在すると考えられるケトン系溶剤量とアルコール系溶剤量を少なくし、一方、トナー粒子をDMF((N,N−ジメチルホルムアミド))でトナー粒子を溶解し、抽出したトナー内部に内包されるケトン系溶剤とアルコール系溶剤を適度に含有する事により、定着性能(折り曲げ耐性の定着速度依存性)とトナー凝集性、熱保管性の両立することが可能となった。
【0042】
上述のように、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤を含有していることにより、記録媒体上の定着像部で折り曲げても画像に欠陥は生じにくくなり、且つ画像折り曲げ耐性の定着速度依存性が小さくなる、という効果が得られるが、この効果は、トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が2ppm以上50ppm以下であるときに発揮される。尚、該トナー分散液におけるケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度は、トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)2gに分散したトナー分散液を、20℃で24時間放置した後の上澄み液(以下、「DMF溶解上澄み液」という場合がある。)のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度とする。
トナー0.5gをDMF2gに分散することにより、トナーは溶解し、DMF溶解上澄み液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度は、トナー全体に含まれるケトン系溶剤アルコール系溶剤それぞれの濃度に比例する。該DMF溶解上澄み液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度の測定方法については後述する。
【0043】
前記DMF溶解上澄み液におけるケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度は、記録媒体上の定着像部で折り曲げても画像に欠陥は生じにくくなり、且つ画像折り曲げ耐性の定着速度依存性が小さくなる、という効果が顕著になるなる点で、5ppm以上40ppm以下であることが好ましく、10ppm以上35ppm以下であることがより好ましい。前記ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が2ppmより少なすぎると、定着時の揮発効果が得られない場合があり、50ppmより多い場合には、トナー表面へのブリードによりトナー表面のベトツキや帯電性を悪化させることがある。
【0044】
また、前記DMF溶解上澄み液におけるケトン系溶剤量は、1ppm以上10ppm以下であることが好ましく、1ppm以上8ppm以下であることがより好ましい。前記ケトン系溶剤量が1ppmより少ない場合には、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の相溶促進効果が得られないことがあり、10ppmよりも多い場合には、トナー表面へのブリード等により、トナーのフィルミングやベトツキの原因となることがある。
【0045】
一方、前記DMF溶解上澄み液におけるアルコール系溶剤量は、1ppm以上49ppm以下であることが好ましく、5ppm以上30ppm以下であることがより好ましい。前記アルコール系溶剤量が1ppmより少ない場合には、トナーと記録用紙のセルロース繊維との密着効果が小さくなることがあり、49ppmより多い場合は、吸湿性が悪化し帯電性能が低下する場合がある。
【0046】
また、優れたトナー凝集性、熱保管性がえられるという効果は、前記トナー0.5gを脱イオン水2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が10ppm未満であるときに発揮される。尚、該トナー分散液におけるケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度は、トナー0.5gを脱イオン水2gに分散したトナー分散液を、20℃で24時間放置した後の上澄み液(以下、「水分散上澄み液」という場合がある。)のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度とする。
トナー0.5gを脱イオン水2gに分散することにより、トナー表面のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤は、脱イオン水に漏れ出す状態になる。前記水分散上澄み液のケトン系溶剤、アルコール系溶剤の濃度は、トナー表面に存在するケトン系溶剤、アルコール系溶剤それぞれに比例する。前記水分散上澄み液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度の測定方法については後述する。
【0047】
前記水分散上澄み液におけるケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度は、5ppm以下であることが好ましく、2ppm以下であることがより好ましい。前記水分散上澄み液におけるケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が10ppm以上であるとトナー表面がベタつきトナー凝集性が悪化し、熱保管性も悪化する。また、揮発成分による臭いやトナーカートリッジ、現像機等の部材自体も溶剤による汚染が生じこともある。
【0048】
本実施形態に用いられるケトン系溶剤は、ケトン基を有する溶剤をいい、沸点が100℃以下であることが好ましく、より好ましくは85℃以下が好ましい。ケトン系溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどが挙げられるが、なかでもポリエステル樹脂との相溶性、水への溶解性と沸点の関係から、メチルエチルケトンが好ましい。ケトン系以外の溶剤、例えば、テトラヒドロフラン(THF)は水への溶解性が高く、トナー中に残留させることが難しい。トルエンやキシレンは、水への溶解性が低すぎトナー製造工程で粒度分布を悪化させる場合がある。
【0049】
本実施形態に用いられるアルコール系溶剤としては、アルコール基を有する溶剤をいい、沸点が100℃以下であることが好ましく、より好ましくは85℃以下が好ましい。メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられるが、沸点の関係から、イソプロパノールが好ましい。
【0050】
ここで、前記水分散上澄み液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度の測定方法、及び前記DMF溶解上澄み液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度の測定方法について説明する。
(1)水分散上澄み液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度の測定
(1−1)3点検量線の作成
メチルエチルケトン(以下「MEK」と称す)、イソプロピルアルコール(以下「IPA」と称す)をそれぞれ500mlメスフラスコに10mg、50mg、100mgを精秤し、脱イオン水で希釈して500mlにあわせて、検量線サンプルとする。
各検量線サンプルを2mlホールピペットで分取し、ヘッドスペースサンプラー用のバイアル瓶に移し、キャップを閉める。
下記のヘッドスペースサンプラー及びガスクロマトグラフの条件で測定し、検量線サンプル調製時に精秤した重量より、MEK又はIPAの濃度(ppm)を横軸に、各ピーク面積を縦軸にして、検量線を作成し、原点を通る直線の関係式をつくる。
【0051】
(1−2)残溶剤量測定
測定するトナー0.5gに脱イオン水を2g加え、10分撹拌の後、20℃で24時間放置した。放置後の上澄み液を残溶剤量測定用のサンプルとした。該サンプルをホールピペットで2ml分取し、ヘッドスペースサンプラー用のバイアル瓶に移し、前記検量線用サンプルと同時に以下の条件で、ガスクロマトグラフ測定を行う。
※ ヘッドスペースサンプラー設定条件
・測定機器:ヘッドスペースサンプラーHS−40(パーキンエルマー社製)
・オーブン温度: 60℃
・オーブン時間:15分
・ニードル温度:100℃
・トランスファー温度:120℃
【0052】
※ ガスクロマトグラフ測定条件
・ガスクロマトグラフ本体:GC2010((株)島津製作所製)
・カラム:Quadrex社製 キャピラリカラムS2010
(内径0.25mm、膜厚1μm、長さ15m)
・キャリアガス:窒素
・インジェクション温度:150℃
・検出器温度:200℃
・カラム温度:55℃×5分→昇温速度10℃/分→200℃
上記条件で測定して得られた測定サンプルのMEK、IPAそれぞれのピーク面積を検量線(前記関係式)に当てはめ、MEK、IPAの濃度を測定した。
【0053】
(2)DMF溶解上澄み液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の濃度の測定
(2−1)3点検量線の作成
MEK、IPAをそれぞれ500mlメスフラスコに10mg、50mg、100mgを精秤し、N,N−ジメチルホルムアミド(以下「DMF」と称す)で希釈して500mlにあわせる。各検量線サンプルを2mlホールピペットで分取し、ヘッドスペースサンプラー用のバイアル瓶に移し、キャップを閉める。
下記のヘッドスペースサンプラー及びガスクロマトグラフ測定条件で測定し、検量線サンプル調製時に精秤した重量より、MEK又はIPAの濃度(ppm)を横軸に、各ピーク面積を縦軸にして検量線を作成し、原点を通る直線の関係式をつくる。
【0054】
(2−2)残溶剤量測定
トナー0.5gにDMFを2g加え、10分撹拌の後、20℃で24時間放置した。放置後の上澄み液を残溶剤量測定用のサンプルとした。
上記サンプルをホールピペットで2ml分取し、ヘッドスペースサンプラー用のバイアル瓶に移し、検量線用サンプルと同時に以下の条件で、ガスクロマトグラフ測定を行う。
※ ヘッドスペースサンプラー設定条件
・測定機器:ヘッドスペースサンプラーHS−40(パーキンエルマー社製)
・オーブン温度:60℃
・オーブン時間:15分
・ニードル温度:100℃
・トランスファー温度:120℃
【0055】
※ ガスクロマトグラフ測定条件
・ガスクロマトグラフ本体:GC2010((株)島津製作所製)
・カラム:Quadrex社製 キャピラリカラムS2010
(内径0.25mm、膜厚1μm、長さ15m)
・キャリアガス:窒素
・インジェクション温度:150℃
・検出器温度:200℃
・カラム温度:55℃×5分→昇温速度10℃/分→200℃
上記条件で測定して得られた測定サンプルのMEK、IPAそれぞれのピーク面積を(1)で作成した検量線の式に当てはめ、溶剤含有量(2)を算出した。
【0056】
以上、ケトン系溶剤がMEK、アルコール系溶剤がIPAの場合の測定方法を説明したが、ケトン系溶剤又はアルコール系溶剤が他の溶剤である場合は、該当する溶剤を用いて上記と同様の測定を実施する。
【0057】
次に、本実施形態のトナーに含まれる各成分について説明する。
本実施形態に使用する結着樹脂の非晶性ポリエステル樹脂とは、DSCチャートにおいて、Tgに対応した吸熱点の他に、結晶融点に対応した吸熱ピークを示さないポリエステル樹脂を意味する。
ポリエステル樹脂に用いるアルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸以外の他のモノマーとしては、特に限定は無く、例えば、高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているようなモノマー成分である、従来公知の2価又は3価以上のカルボン酸と、2価又は3価以上のアルコールがある。これらのモノマー成分の具体例としては、2価のカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
2価のアルコールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド又は(及び)プロピレンオキシド付加物などのビスフェノール誘導体、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの環状脂肪族アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの線状ジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどの分岐型ジオールなどが挙げられ、帯電性や強度の観点からビスフェノールAのエチレンオキシド又は(及び)プロピレンオキシド付加物が主体として用いられる。
【0059】
また、3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられるが、低温定着性や画像光沢性の観点から、3価以上の架橋性単量体の使用量は全単量体量の10モル%以下であることが好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調製等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールも使用することができる。
【0060】
非晶性ポリエステル樹脂は、前記のモノマー成分の中から任意の組合せで、例えば、重縮合(化学同人)、高分子実験学(重縮合と重付加:共立出版)やポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社編)等に記載の従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は組み合せて用いることができる。具体的には、重合温度140〜270℃で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
【0061】
モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助溶剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、直接重縮合の場合、通常0.9/1〜1/0.9である。エステル交換反応の場合は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなど真空下で脱留可能なモノマーを過剰に用いる場合が多い。
【0062】
非晶性ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、及び、アミン化合物等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。本実施形態においては、2種以上併用することもできるが、この中でもジブチルスズオキシドなどのスズ系触媒を用いることが、帯電性の観点から好ましい。
【0063】
非晶性ポリエステル樹脂はその酸価が5〜25KOHmg/g、水酸基価が5〜40KOHmg/gであることが好ましい。
【0064】
前記分子量及び分子量分布は、それ自体公知の方法で測定することができるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下「GPC」と記載する。)により測定するのが一般的である。分子量分布は以下の条件で測定した。GPC装置として、東ソー(株)HLC−8120GPC、SC−8020装置を用い、カラムはTSK gei, SuperHM−H(6.0mmID×15cm×2)を用い、溶離液として和光純薬社製クロマトグラフ用THF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、検量線はA−500、F−1、F−10、F−80、F−380、A−2500、F−4、F−40、F−128、F−700の10サンプルから作製した。また試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
【0065】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)(以下「DSC」と記載する。)を用いて、0から150℃まで10℃/分で昇温し、150℃で5分間ホールドし、150℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から150℃まで10℃/分で昇温して得られた、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析したオンセット温度と定義できる。非晶質ポリエステルのガラス転移温度は、40〜80℃であることが好ましく、貯蔵安定性とトナーの定着性のバランスの点から、50〜70℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が40℃未満であると、トナーが貯蔵中又は現像機中でブロッキング(トナーの粒子が凝集して塊になる現象)を起こす場合がある。一方、ガラス転移温度が80℃を超えると、トナーの定着温度が高くなる場合がある。
【0066】
本実施形態に用いられる結着樹脂は、結着樹脂の損失弾性率G”(測定周波数1rad/s、歪み量20%以下)が10000Paとなる温度をTmとした時に、Tmが80℃以上150℃以下の範囲にあることが好ましい。ここで結着樹脂の損失弾性率は以下のようにして測定される。測定装置は、レオメトリックス社製のレオメーター、商品名「RDA II」(RHIOSシステムver.4.3)を用い、測定用プレートは直径8mmのパラレルプレートを用い、ゼロ点調整温度90℃、プレート間ギャップ3.5mm、昇温速度毎分1℃、初期測定歪み0.01、測定開始温度30℃で、温度上昇と共に検出トルクが10gcm程度になるように歪みを適宜調節し、最大歪みを20%までとし、検出トルクが測定保証値の下限を下回った時点で測定終了とした。
【0067】
また、本実施形態に用いられる非晶性ポリエステル樹脂は、軟化点が80℃以上140℃以下であることが好ましく、より好ましくは95℃以上135℃以下である。非晶性ポリエステル樹脂の軟化点が80℃未満であると、定着後及び保管時のトナー及びトナーの画像安定性が悪化する場合がある。一方、軟化点が140℃を超えると、低温定着性が悪化してしまう場合がある。ここで、ポリエステル樹脂の軟化点は、フローテスター(島津社製: CFT−500C)を用いて、サンプル量:1.05g、予熱:65℃で300sec,プランジャー圧力:0.980665MPa,ダイサイズ:1mmφ,昇温速度:1.0℃/minの条件下で測定された、溶融開始温度と溶融終了温度との中間温度を指す。
【0068】
本実施形態では、トナーの結着樹脂として画像光沢度の向上と安定化及び低温定着性向上のために結晶性ポリエステル樹脂を使用する。結晶性ポリエステル樹脂は非晶性ポリエステル樹脂との適度な相溶性を必要とするが、中でも脂肪族結晶性ポリエステル樹脂が、非晶性ポリエステル樹脂との相溶性し、結着樹脂の可塑する効果が有り、低温定着性及び画像光沢度を得られる為、好ましい。
【0069】
本実施形態で使用される脂肪族結晶性ポリエステル樹脂は、2価の酸(ジカルボン酸)成分と2価のアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、本実施形態において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。以降の説明においては、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を「酸由来構成成分」と、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を「アルコール由来構成成分」と、それぞれ示す。
【0070】
本実施形態に使用する結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、本実施形態において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。本実施形態において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステル樹脂と呼ぶ。
【0071】
−酸由来構成成分−
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。直鎖型のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。中でも、炭素数6から10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジカルボン酸を、酸由来構成成分の95モル%以上用いることが好ましく、98モル%以上用いることがより好ましい。
【0072】
その他のモノマーとしては、特に限定は無く、例えば、高分子データハンドブック : 基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているようなモノマー成分である、従来公知の2価又のカルボン酸と、2価のアルコールがある。これらのモノマー成分の具体例としては、2価のカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれているのが好ましい。
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。また樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、トナー母粒子を粒子に作製する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能である。このようなスルホン酸基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。前記スルホン酸基を持つジカルボン酸の含有量は0.1から2.0モル%であることが好ましく、0.2から1.0モル%であることが好ましい。含有量が2モル%よりも多いと、帯電性が悪化する。尚、本実施形態において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分、アルコール由来構成成分)をそれぞれ1単位(モル)したときの百分率を指す。
【0074】
−アルコール由来構成成分−
アルコール由来構成成分としては脂肪族ジアルコールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられ、中でも炭素数6から10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジアルコールを、アルコール由来構成成分の95モル%以上用いることが好ましく、98モル%以上用いることがより好ましい。
【0075】
その他のジアルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド又は(及び)プロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調製等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールや、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど3価のアルコールも使用することができる。
【0077】
前記ポリエステル樹脂は、前記のモノマー成分の中から任意の組合せで、例えば、重縮合(化学同人)、高分子実験学(重縮合と重付加:共立出版)やポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社編)等に記載の従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は組み合せて用いることができる。
【0078】
前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、直接重縮合の場合は通常1/1程度、エステル交換法の場合は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなど真空下で脱留可能なモノマー過剰に用いる場合が多い。前記ポリエステル樹脂の製造は、通常、重合温度180〜250℃の間でおこなわれ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。
【0079】
重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と供に重縮合させるとよい。
【0080】
前記ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、及び、アミン化合物等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。この中で、帯電性の観点からスズ系触媒、チタン系触媒が好ましく、中でも、ジブチルスズオキシドが好ましく用いられる。
【0081】
本実施形態の結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度は50℃以上120℃以下が好ましく、さらに好ましくは60℃以上110℃以下である。溶融温度が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる場合がある。また、120℃より高いと、従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない場合がある。
尚、本実施形態において、前記結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。尚、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本実施形態においては、最大のピークをもって溶融温度とみなす。
【0082】
結着樹脂中の結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、1質量%以上20質量%以下が好ましく、4質量%以上14質量%以下がさらに好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の添加量が多いと、結晶性ポリエステル樹脂のドメインサイズが大きくなりトナー表面に露出しやすくなるため、トナー粉体流動性の低下や帯電性の悪化を生じることがある。
【0083】
本実施形態のトナーに用いられる着色剤としては、イエロー顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーメネントイエローNCG等を挙げることができ、特に、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー155、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185等が好ましく用いられる。
【0084】
マゼンタ顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンB レーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ、ナフトール系顔料としては、ピグメントレッド31、146、147、150、176、238、269などが挙げられ、キナクリドン系顔料としては、ピグメントレッド122、202、209などが挙げられ、この中でも特に製造性、帯電性の観点からピグメントレッド185、238、269、122が好ましい。
【0085】
シアン顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどを挙げることができ、特に、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が好ましく用いられる。
【0086】
黒色トナーに用いられる黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等を挙げることができ、特にカーボンブラックが好ましく用いられる。カーボンブラックは比較的分散性が良いため、特に特別な分散を必要としないが、カラー着色剤と同様の製造方法で製造されることが好ましい。
【0087】
本実施形態のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透過性、トナー中での分散性の観点から選択される。そして、着色剤はトナー構成固体分総重量に対して4〜15質量%の範囲で添加することができる。黒色着色剤として磁性体などを用いる場合は、他の着色剤とは異なり、12〜24質量%で添加することができる。具体的には、磁場中で磁化される物質を用いるが、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性の粉末、もしくはフェライト、マグネタイト等の化合物が使用される。水相中でトナーを得るときには、磁性体の水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは予め磁性体の表面を改質し、例えば疎水化処理等を施しておくことが好ましい。
【0088】
本実施形態における着色剤分散液に用いられる分散剤は、一般的には界面活性剤である。界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が好適にあげられる。これらの中でもイオン性界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤がより好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤またはカチオン界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、離型剤分散液など、他の分散液に用いられる分散剤と同極性であることが好ましい。
【0089】
前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネート等のアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類等があげられる。
【0090】
前記カチオン界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類等があげられる。
【0091】
前記非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類等があげられる。
【0092】
用いられる分散剤の添加量は、着色剤に対して、2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。分散剤が少なすぎると粒径が小さくならない場合や、分散液の保存安定性が低下する場合がある。一方、多すぎる場合には、トナー中に残留する分散剤の量が多くなり、トナーの帯電性や粉体流動性が低下する場合がる。
【0093】
用いられる水系分散媒は、蒸留水、イオン交換水など、金属イオンなどの不純物が少ないものであることが好ましい。また、消泡や表面張力調整の目的でアルコールなどを添加することもできる。また、粘度調整のために、ポリビニルアルコールやセルロース系ポリマーなどを添加することもできる。
【0094】
本実施形態のトナーには、定着性や画像保存性を向上させる目的で離型剤を含有させる。
用いられる離型剤としては、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大吸熱ピークが60〜120℃にあり、かつ140℃において1〜50mPasの溶融粘度を有する物質であることが好ましい。溶融温度が60℃未満ではワックスの変化温度が低すぎ、耐ブロッキング性が劣ったり、複写機内温度が高まった時に現像性が悪化したりする。120℃を超える場合には、ワックスの変化温度が高すぎ、高温での定着を行えばいいが、省エネルギーの観点で望ましくない。また、50mPasより高い溶融粘度ではトナーからの溶出が弱く、定着剥離性が不十分となってしまう。
【0095】
本実施形態に用いられる離型剤の粘度は、E型粘度計によって測定される。測定に際しては、オイル循環型恒温槽の備えられたE型粘度計(東京計器製)を用いる。
粘度の測定には、コーン角1.34度を有したコーンプレート/カップの組み合わせのプレートを用いる。カップ内に試料を投入し、循環装置の温度を140℃にセットし、空の測定カップとコーンを測定装置にセットし、オイルを循環させながら恒温に保つ。温度が安定したところで測定カップ内に試料を1g入れ、コーンを静止状態で10分間静置させる。安定後、コーンを回転させ測定を行う。コーンの回転速度は60rpmとする。測定は3回行い、その平均値を粘度ηとする。
【0096】
前記離型剤は示差走査熱量計により測定されるDSC曲線で吸熱開始温度が40℃以上であることが望ましい。より好ましくは50℃以上である。40℃より低いと複写機内やトナーボトル内でトナーの凝集が発生してしまう。
吸熱開始温度はワックスを構成する分子量分布のうち、低分子量のものやその構造のもつ極性基の種類、量で左右される。一般に高分子量化すれば溶融温度とともに吸熱開始温度も上昇するが、このやり方ではワックス本来の低溶融温度と、低粘度をそこなってしまう。よってワックスの分子量分布のうち、これら低分子量のものだけを選別してのぞくことが有効であるが、この方法として、分子蒸留、溶剤分別、ガスクロマトグラフ分別等の方法がある。
【0097】
極大吸熱ピークが50℃を下回ると定着時にオフセットを生じやすくなる場合があり、ピークが140℃を超えると定着温度が高くなり、定着画像表面の平滑性が得られず光沢性が損なわれる場合がある。
DSCの測定は例えばパーキンエルマー社製のDSC−7を用いて行われる。装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットして昇温速度10℃/minで測定を行う。
【0098】
前記離型剤の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、及びそれらの変性物などを挙げることができる。
【0099】
前記離型剤は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、溶融温度以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機(ゴーリンホモジナイザー、ゴーリン社製)で粒子状に分散させ、分散液を作成することができる。なお、前記離形剤粒子分散液の粒子径は、例えばドップラー散乱型粒度分布測定装置やレーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定される。
【0100】
離型剤分散液中の離型剤に対する分散剤の割合が1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、2質量%以上10質量%以下である。分散剤の割合が少なすぎると離型剤が充分に分散されずに保存安定性が劣る場合がある。分散剤の割合が多すぎると、トナーの帯電性とくに環境安定性が悪化する場合がある。分散剤としては、前記着色剤にもちいることができる分散剤と同様のものから、ワックスの種類に対して最適なものを選択できる。
【0101】
本実施形態のトナーの製造方法は、定着性能の定着速度依存性が少なく、トナーブロッキングが発生せず、熱保管性に優れるという効果が発揮される点で、湿式製法であることが好ましく、乳化凝集法がより好ましい。
以下、乳化凝集法を例に本実施形態の電子写真用トナーの製造方法について説明する。乳化凝集法は、少なくとも樹脂粒子を分散させた分散液中で凝集粒子を形成し凝集粒子分散液を調製する工程(凝集工程)と、前記凝集粒子分散液を加熱して、凝集粒子を融合する工程(融合工程)を含む製造方法である(以下、前記製造方法を「凝集融合法」と称することがある)。
【0102】
また、凝集工程と融合工程との間に、凝集粒子分散液中に、粒子を分散させた粒子分散液を添加混合して前記凝集粒子に粒子を付着させて付着粒子を形成する工程(付着工程)を設けたものであってもよい。
【0103】
前記付着工程では、前記凝集工程で調製された凝集粒子分散液中に、前記粒子分散液を添加混合して、前記凝集粒子に前記粒子を付着させて付着粒子を形成するが、添加される粒子は、凝集粒子に凝集粒子から見て新たに追加される粒子に該当するので、本明細書では「追加粒子」と記す場合がある。
前記追加粒子としては、前記樹脂粒子の他に離型剤粒子、着色剤粒子等を単独もしくは複数組み合わせたものであってもよい。前記粒子分散液を追加混合する方法としては、特に制限はなく、例えば徐々に連続的に行ってもよいし、複数回に分割して段階的に行ってもよい。このようにして、前記粒子(追加粒子)を添加混合することにより、微小な粒子の発生を抑制し、得られる電子写真用トナーの粒度分布をシャープにすることができ、高画質化に寄与する。
【0104】
また、前記付着工程を設けることにより、擬似的なシェル構造を形成することができ、着色剤や離型剤などの内添物のトナー表面露出を低減でき、結果として帯電性や寿命を向上させることができることや、融合工程における融合時において、粒度分布を維持し、その変動を抑制することができると共に、融合時の安定性を高めるための界面活性剤や塩基または酸等の安定剤の添加を不要にすることができる、もしくは、それらの添加量を最少限度に抑制することができ、コストの削減や品質を改善できる点で有利である。
従って、離型剤を使用するときには、樹脂粒子を主体とした追加粒子を添加することが好ましい。この方法を用いれば、融合工程において、温度、攪拌数、pHなどの調整により、トナー形状制御を簡単に行うことができる。
【0105】
融合・粒子形成工程を終了した後は、トナー粒子を洗浄し乾燥してトナーを得る。トナーの帯電性を考慮すると、イオン交換水で十分に置換洗浄を施すことが好ましく、洗浄度合いはろ液の伝導度でモニターするのが一般的で、最終的に、伝導度が30mS以下となるようにすることが好ましい。洗浄時に酸やアルカリでイオンを中和する工程を含んでも良く、酸による処理はpHを4.0以下に、アルカリによる処理はpHを8.0以上にすることが好ましい。
【0106】
また、洗浄後の固液分離は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好ましく用いられる。さらに、乾燥も、特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
本実施形態においては、トナー中に適度な量のケトン系溶剤とアルコール系溶剤を含有し、トナー粒子表面を重点的に乾燥する必要がある。このような課題に対するために気流式乾燥機を用いる方法が好ましい。気流式乾燥機は湿潤トナー粒子を高速気流中に分散させると同時に並流で送りながら乾燥するために、湿潤トナー粒子と気流との接触面積を大きくすることが出来る。このため乾燥効率が非常に良く、トナー粒子表面に存在する水分及び微量有機溶剤を瞬間的に蒸発させることができることを特徴としている。
【0107】
また、乾燥時の温度はトナー粒子表面を重点的に乾燥する点で、35℃以上55℃以下が好ましく、40℃以上50℃以下であることがより好ましい。乾燥時の温度が35℃未満では、乾燥が不十分であり、溶剤及び水分が多く残留してしまう場合がある。一方、55℃を超えるとトナーが乾燥の熱によりブロッキングが発生してしまう場合がある。
【0108】
前記乳化凝集法に、ポリエステル樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂を乳化し乳化粒子(液滴)を形成する乳化工程と、該乳化粒子(液滴)の凝集体を形成する凝集工程と、該凝集体を非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度あるいは、結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度以上の温度で融合させ熱合一させる合一工程とを有する。
【0109】
トナー中に溶剤を残留させる方法としては、溶剤を含んだ樹脂を用いてトナー化する方法、トナー作製工程中に溶剤を添加する方法、トナー作製後に溶剤雰囲気下でトナーに吸着させる方法、いずれも利用することができるが、特に、生産性と効果の観点で、溶剤を含んだ樹脂を用いてトナー化する方法が好ましい。中でも、樹脂を溶剤に溶解し、ポリエステル樹脂の自己中和性を利用した転相乳化法による樹脂乳化液を作製するのが好ましい。
【0110】
(転相乳化法による樹脂乳化液の製造)
転相乳化法による樹脂乳化液の製造として、具体的にはポリエステル樹脂を沸点100℃以下又は水と共沸可能な有機溶剤中に溶解させ、さらに塩基性化合物を添加して作製される油相に対し、油相撹拌下、水系媒体を徐々に滴下し、転相させることにより樹脂エマルションを作製した後、余分な有機溶媒を除去することによって樹脂粒子分散液(乳化液)を得ることが好ましい。樹脂酸価が5〜25mgKOH/gであれば、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂いずれも転相乳化法にて樹脂粒子分散液を作製することができるが、特に、非結晶性樹脂粒子分散液を作製する際に転相乳化法を使用することが好ましい。
【0111】
転相乳化法による樹脂乳化液を製造時に使用する溶剤としては、樹脂に対して可塑化能力を有する両親媒性の有機溶剤を必要とする。有機溶媒は、沸点が100℃以下又は水と共沸可能であり、しかも毒性、爆発性や引火性の低い、汎用の有機溶剤が好ましい。沸点が100℃以下又は水と共沸可能な有機溶剤を使用すると、後の工程で十分に除去することが容易であるので好ましい。
【0112】
(有機溶剤)
本実施形態では、前記両親媒性の有機溶剤として、既述のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤を用いる。また、他の両親媒性の有機溶剤として、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−tert−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコール誘導体、アセトニトリル等を例示することができる。これらの溶剤は単一でも、また2種以上を混合しても使用できる。
【0113】
(塩基性化合物)
本実施形態における樹脂は、転相乳化法によって水系媒体に分散させる際に塩基性化合物で中和されることが好ましい。本実施形態において、非結晶性樹脂及び/又は結晶性樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合はポリエステル樹脂のカルボキシル基との中和反応が水性化の起動力であり、しかも生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって、粒子間の凝集を防ぐことができる。塩基性化合物としては揮散する化合物が好ましく、このようなものとしてはアンモニア、沸点が250℃以下の有機アミン化合物等が挙げられる。望ましい有機アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
塩基性化合物は、ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基に応じて、少なくとも部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.2〜4倍当量を添加することが好ましく、0.4〜1.5倍当量を添加することがより好ましい。添加量が0.2倍当量以上であると、塩基性化合物添加の効果が認められ、また4倍当量以下であるとポリエステル樹脂水分散体が著しく増粘することがないので好ましい。
【0114】
(樹脂粒子分散液中有機溶剤量の調整)
有機溶剤等の揮発性物質調整に際しては、減圧加熱処理する方法、窒素や水蒸気などを吹き込むバブリング法、ストリッピング法、フラッシング法などいかなる方法を採用しても良いが、揮発性物質除去の効率が良好な点から減圧加熱処理法が好ましい。
上述の方法により、樹脂エマルション中の有機溶剤などの揮発性物質の量が調整される。
【0115】
蒸発タンク内の圧力は処理温度と分散媒(通常は水)の蒸気圧の関係で決定されるが、本実施形態においては圧力を適当に調整するのがよい。圧力は、5.33×10〜6.67×10Pa(40〜500torr)であることが好ましく、より好ましくは6.67×10〜5.33×10Pa(50〜400torr)の範囲である。蒸発タンク内の圧力が上記範囲内であると、トナーの凝集、器壁へのスケール付着、発泡が効率よく防げる点で好適である。
【0116】
また、分散液中の界面更新を促進して揮発物質の蒸発を促すため、系の温度や圧力のバランスを不安定化させない範囲で、蒸発タンク内の液相に気体を吹込みながら減圧ストリッピング処理することができる。吹込む気体は特に限定されるものではなく、水蒸気、乾燥空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等が挙げられる。これらのうち、不燃性気体であることが好ましい。また、上記気体を吹込む際、重合体粒子の凝集防止の意味から、気体の温度は100℃未満の温度が好ましい。
【0117】
本実施形態においては、樹脂粒子乳化液に界面活性剤を添加混合しておいても良い。界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン系界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0118】
なお、前記アニオン系界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記カチオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0119】
前記凝集工程においては、得られた乳化粒子を、前記ポリエステル樹脂の溶融温度付近の温度でかつ溶融温度以下の温度にて加熱して凝集し凝集体を形成する。乳化粒子の凝集体の形成は、攪拌下、乳化液のpHを酸性にすることによってなされる。前記pHとしては、2〜5が好ましく、2.5〜4がより好ましい。
【0120】
前記凝集工程において凝集体を形成させるために、凝集剤を用いることが好ましい。用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤や、一般の無機金属化合物又はその重合体を樹脂粒子分散液中に溶解して得られるが、無機金属塩を構成する金属元素は周期律表(長周期律表)における2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族に属する2価以上の電荷を有するものであり、樹脂粒子の凝集系においてイオンの形で溶解するものであればよい。好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などである。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。
【0121】
一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上で、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。この価数と添加量で、材料同士の凝集力を変化させることで、トナーの粘弾性を制御することができる点で、また、粒子の安定性を向上させ、粒度分布をシャープにできる点で、本実施形態のトナーには凝集剤が添加されていることが好ましい。
【0122】
本実施形態のトナー中に含まれる、アルミニウム、亜鉛及びカルシウムから選択される少なくとも1種の金属元素は、凝集剤として添加されたものであることが好ましい。凝集剤の添加量は、凝集剤の種類や価数によって変動するが、おおむね、0.05から0.1質量%である。
前記凝集剤は、トナー化工程中に、水系媒体中に流出したり、粗粉を形成するなどにより、添加量すべてがトナー中に残留するわけではない。特にトナー化工程時に、樹脂中の溶剤量が多い場合には、溶剤と凝集剤が相互作用して、水系媒体中に流出しやすいため、残溶剤量に合わせて適宜調節される。
【0123】
前記合一工程においては、凝集工程と同様の攪拌下で、凝集体の懸濁液のpHを5〜10の範囲にすることにより、凝集の進行を止め、前記結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集体を融合させ合一させる。加熱温度としては、前記結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度以上であれば問題は無い。また加熱の時間としては、合一が十分に為される程度行えばよく、0.2〜10時間程度行えばよい。その後、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶化温度以下まで降温して、粒子を固化する際、降温速度によって粒子形状及び表面性が変化する。例えば、早い速度で降温した場合には球形化及び表面が平滑化しやすく、逆にゆっくり降温した場合は、粒子形状が不定形化し、粒子表面に凹凸が生じやすい。そのため、少なくとも0.5℃/分以上の速度で、好ましくは1.0℃/分以上の速度で前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶化温度以下まで降温するのが好ましい。
【0124】
本実施形態のトナーには、無機もしくは有機の粒子を添加することができる。前記粒子の補強効果によりトナーの貯蔵弾性率が大きくなり、耐オフセット性や定着器からの剥離性を向上できる場合がある。また、前記粒子は着色剤や離型剤などの内添物の分散性を向上させる場合がある。
【0125】
前記無機粒子としては、シリカ、疎水化処理シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、コロイダルシリカ、アルミナ処理コロイダルシリカ、カチオン表面処理コロイダルシリカ、アニオン表面処理コロイダルシリカなどを単独もしくは併用して用いることができ、なかでもOHP透明性とトナー中の分散性の観点からコロイダルシリカを用いることが好ましい。
【0126】
前記無機粒子の粒径は、5〜50nmであることが好ましい。また、粒径の異なる粒子を併用することも可能である。前記粒子はトナー製造時に直接添加することもできるが、分散性を高めるためにあらかじめ超音波分散機などを用いて水など水溶性媒体へ分散されたものを用いることが好ましい。分散においては、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基などを用いて分散性を向上させることもできる。
【0127】
本実施形態のトナーには、上記成分の他、帯電制御剤などの公知の材料を添加してもよい。その際に添加される材料の体積平均粒径としては、1μm以下であることが好ましく、0.01〜1μmであるのがより好ましい。前記体積平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られる電子写真用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招く場合がある。一方、前記体積平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。なお、前記体積平均粒径は、例えばマイクロトラックなどを用いて測定することができる。
【0128】
前記種々の添加剤分散液を作製する手段としては、特に制限はないが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなど、その他、着色剤分散液や離型剤分散液の作製と同様の装置など、それ自体公知の分散装置が挙げられ、適宜最適なものを選択して用いることができる。
【0129】
また、本実施形態のトナーは、その帯電量が絶対値で10〜70μC/gの範囲にあるのが好ましく、15〜50μC/gの範囲がより好ましい。前記帯電量が、10μC/g未満であると、背景部汚れが発生し易くなり、70μC/gを越えると、画像濃度の低下が発生し易くなる。
【0130】
また、30℃、80RH%の高湿度下と10℃、20RH%の低湿度下での帯電量の比率は0.5〜1.5の範囲が好ましく、0.7〜1.2の範囲がより好ましい。前記比率が範囲内にあると環境に影響されることなく鮮明な画像を得ることができる。
帯電量は外添剤の寄与も大きいが、未外添時の帯電量が重要であることは言うまでもない。また、着色剤分散液や離型剤分散液などに使用される界面活性剤量をトータルで減らすとともに、残留した界面活性剤やイオンなどを充分に洗浄することが必要である。
【0131】
さらに、本実施形態のトナーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が、2〜30の範囲にあるのが好ましく、3〜20の範囲がより好ましい。前記比(Mw/Mn)で表される分子量分布が、30を越えると、光透過性、着色性が十分でなく、特にフィルム上に電子写真用トナーを現像または定着させた場合において、光透過により映し出される画像が、不鮮明で暗い画像になるか、不透過で発色しない投影画像となり、2未満であると、高温定着時におけるトナーの粘度低下が顕著になり、オフセット現象が発生し易くなる。一方、前記比(Mw/Mn)で表される分子量分布が、前記数値範囲内にあると、光透過性、着色性が十分である上、高温定着時における電子写真用トナーの粘度低下を防止し、オフセット現象の発生を効果的に抑制することができる。
【0132】
本実施形態のトナーには、流動性助剤、クリーニング助剤、研磨剤等の外添剤として、無機粒子および有機粒子等が含有される。
【0133】
この場合の無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、酸化セリウム等の通常トナー表面の外添剤として使用される総ての粒子があげられる。これらの無機粒子は、その表面が疎水化されたものであることが好ましく、帯電性、粉体特性、保存性などのトナー諸特性や、現像性や転写性といったシステム適性を制御するために用いられる。
【0134】
有機粒子としては、例えば、スチレン系重合体、(メタ)アクリル系重合体、エチレン系重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等の通常トナー表面の外添剤として使用される総ての粒子が挙げられる。これらの粒子は転写性を向上させる目的で添加され、その1次粒径は0.05から1.00μmであることが好ましい。
【0135】
さらに、滑剤を添加することもできる。滑剤として、例えば、エチレンビスステアリル酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、ユニリンなどの高級アルコールなどがあげられる。これらは一般にクリーニング性を向上させる目的で添加され、その1次粒径は、0.1から5.0μmのものが用いられる。
【0136】
本実施形態のトナーには、前記無機粒子のなかでも少なくとも2種以上の外添剤を使用し、該外添剤の少なくとも1種の粒径が30nm〜200nmであることが好ましく、30nm〜180nmの平均1次粒子径を有することがより好ましい。
トナーが小粒径化することによって、感光体との非静電的付着力が増大するため、転写不良やホローキャラクターと呼ばれる画像抜けが引き起こされ、重ね合わせ画像等の転写ムラを生じさせる原因となるため、体積平均1次粒子径が30nm〜200nmの大径の外添剤を添加し、転写性を改善させることが好ましい。
【0137】
体積平均1次粒子径が30nmより小さいと、初期的なトナーの流動性は良好であるが、トナーと感光体との非静電的付着力を十分に低減できず転写効率が低下し画像のぬけや、画像の均一性を悪化させてしまい、また経時による現像機内でのストレスによって粒子がトナー表面に埋め込まれ、帯電性が変化しコピー濃度の低下や背景部へのカブリ等の問題を引き起こす。
また、体積平均1次粒子径が200nmより大きいと、トナー表面から脱離しやすく、また流動性の悪化にもつながる。具体的には、シリカ、アルミナ、酸化チタンが好ましく、特に、疎水化されたシリカを必須成分として添加することが好ましい。特にシリカと酸化チタンを併用することが好ましい。また、粒径80から500nmの有機粒子を併用することも転写性向上には好ましい。
【0138】
外添剤を疎水化処理する疎水化剤としては公知の材料が挙げられ、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤、シリコーンオイルやポリマーコーティング処理などが挙げられる。これらの疎水化剤を単独又は組み合わせて用いることができる。これらの中でも、シラン系カップリング剤とシリコーンオイルを好ましく用いることができる。シラン系カップリング剤としては、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤等いずれのタイプも使用することができる。
【0139】
その具体例としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、トリメチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、βー(3.4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γーグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γーメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γークロロプロピルトリメトキシシラン等や、それらの一部の水素原子をフッ素原子に変えた、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、3−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルトリエトキシシランなどのフッ素系シラン化合物、水素原子の一部をアミノ基で置換したアミノ系シラン化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
また、シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。疎水化処理された粒子を用いると高湿度下での帯電量を向上させる事ができ、結果として帯電の環境安定性を向上させる事ができる。本実施形態のトナーでは、少なくとも1種の外添剤にシリコーンオイル系処理が施されたものが含まれていることが好ましい。
【0141】
粒子の疎水化処理法としては、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン等の溶剤で混合希釈した処理剤を、ブレンダー等で強制的に攪拌させた粒子に滴下したり、スプレーしたりして充分に混合し、必要に応じて洗浄、濾過を行った後、加熱乾燥させ、乾燥後凝集物をブレンダーや乳鉢等で解砕して処理する方法や、粒子を処理剤の溶剤溶液に浸析した後、乾燥させる、あるいは、粒子を水中に分散してスラリー状にした上で処理剤溶液を滴下し、その後粒子を沈降させて加熱乾燥して解砕する方法や、粒子へ直接処理剤を噴霧する方法等、従来公知の方法を用いることができる。
【0142】
前記処理剤の粒子への付着量は、粒子に対して0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜25質量%がより好ましい。付着量は、処理の段階で処理剤の混合量を増やしたり、処理後の洗浄工程数を変える等の方法によって変えることができる。また、処理剤の付着量は、XPSや元素分析により定量することができる。処理剤の付着量が少ないと高湿度下で帯電性が低下する場合が有り、処理量が多すぎると低湿度下で帯電が過剰になりすぎたり、遊離した処理剤が現像剤の粉体流動性を悪化させる場合がある。
前記外添剤は、トナー粒子と共にサンプルミルやヘンシェルミキサーなどで機械的衝撃力を加えられてトナー粒子表面に付着又は固着させられる。
【0143】
<静電荷像現像用現像剤>
本実施形態の静電荷像現像用現像剤(以下、「本実施形態の現像剤」という場合がある。)は、既述の本実施形態のトナーを含有することを特徴とする。
本実施形態の現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤やトナーとキャリアとからなる二成分現像剤が挙げられるが、帯電の維持性や安定性に優れる二成分現像剤が好ましい。該キャリアとしては、樹脂で被膜されたキャリアであることが好ましく、窒素含有樹脂で被膜されたキャリアであることがさらに好ましい。
【0144】
前述の窒素含有樹脂としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含むアクリル系樹脂、ウレア、ウレタン、メラミン、グアナミン、アニリン等を含むアミノ樹脂、またアミド樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。またこれらの共重合樹脂でもかまわない。
キャリアの被膜樹脂としては前記窒素含有樹脂の中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。また前記窒素含有樹脂と窒素を含有しない樹脂とを組み合わせて使用してもよい。また前記窒素含有樹脂を粒子状にし、窒素を含有しない樹脂中に分散して使用してもよい。特にウレア樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂は負帯電性が高く、また樹脂硬度が高いため被膜樹脂の剥がれなどによる帯電量の低下を抑制することができ好ましい。
【0145】
一般にキャリアは適度な電気抵抗値を有することが必要であり、具体的には10〜1014Ωcm程度の電気抵抗値が求められている。例えば鉄粉キャリアのように電気抵抗値が10Ωcmと低い場合には、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じたりする等の問題が生じる。一方、絶縁性(体積抵抗率で1014Ωcm以上、以下もこれに準ずる)の樹脂を厚く被覆してしまうと電気抵抗値が高くなりすぎ、キャリア電荷がリークしにくくなり、その結果エッジの効いた画像にはなるが、反面大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなるというエッジ効果という問題が生じる。そのためキャリアの抵抗調整のために樹脂被覆層中に導電性(体積抵抗率で1010Ωcm以下、以下もこれに準ずる)粉末を分散させることが好ましい。
【0146】
導電性粉末の具体例としては、金、銀、銅のような金属や;カーボンブラック;更に酸化チタン、酸化亜鉛のような半導電性(体積抵抗率で10Ωcm以上1010Ωcm以下、以下もこれに準ずる)酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズやカーボンブラック、金属で覆ったもの等が挙げられる。この中でも製造安定性、コスト、導電性の良さからカーボンブラックが好ましい。
【0147】
前記樹脂被覆層を、キャリア芯材の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア芯材の粉末を被膜層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被膜層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被膜層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被膜層形成用溶液を混合し溶剤を除去するニーダーコーター法、被膜樹脂を粒子化し被膜樹脂の溶融温度以上でキャリア芯材とニーダーコーター中で混合し冷却して被膜させるパウダーコート法が挙げられるが、ニーダーコーター法及びパウダーコート法が特に好ましく用いられる。
上記方法により形成される樹脂被膜層の平均膜厚は、通常0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μmの範囲である。
【0148】
前記キャリアにおいて用いられる芯材(キャリア芯材)としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、又は、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、磁気ブラシ法を用いる観点からは、磁性キャリアであるのが望ましい。キャリア芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜100μmが好ましく、20〜80μmがより好ましい。
前記二成分現像剤における本実施形態の電子写真用トナーと前記キャリアとの混合比(質量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であり、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0149】
<画像形成装置>
次に、既述の本実施形態の電子写真用現像剤を用いた本実施形態の画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、該像保持体上に形成された静電荷像を現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、像保持体上に形成されたトナー像を、用紙等の記録媒体上に転写する転写手段と、記録媒体上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、前記現像剤として既述の本実施形態の静電荷像現像用現像剤を用いるものである。
【0150】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、前記の電子写真用現像剤を収容する本実施形態のプロセスカートリッジが好適に用いられる。
以下、本実施形態の画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0151】
図1は、4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1〜第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに所定距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0152】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に所定の張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。
【0153】
上述した第1〜第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2〜第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0154】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を所定の電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0155】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V〜−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0156】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って所定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0157】
現像装置4Y内には、イエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き所定速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が所定の1次転写位置へ搬送される。
【0158】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに所定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0159】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2〜第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0160】
第1〜第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に所定のタイミングで給紙され、所定の2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0161】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0162】
なお、本実施形態の画像形成装置は、定着速度が55mm/s以上220mm/s以下の範囲であることが好ましく、100mm/s以上180mm/s以下であることがより好ましい。
ここで、定着速度とは、記録紙が定着装置を通過する際の速度をいう。
【0163】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
図2は、本実施形態の電子写真用現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体(像保持体)107とともに、帯電ローラ108、現像装置(現像手段)111、感光体クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。なお、300は記録紙である。
【0164】
図2で示すプロセスカートリッジでは、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせることが可能である。本実施形態のプロセスカートリッジでは、感光体107のほかには、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備える。
【0165】
次に、本実施形態のトナーカートリッジについて説明する。本実施形態のトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収めるトナーカートリッジにおいて、前記トナーが既述した本実施形態のトナーであることを特徴とする。なお、本実施形態のトナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収められてもよい。
【0166】
従って、トナーカートリッジの着脱が可能な構成を有する画像形成装置においては、本実施形態のトナーを収めたトナーカートリッジを利用することにより、特に容器が小型化されたトナーカートリッジにおいても保存性を保つことができ、高画質を維持しつつ低温定着化を図ることが可能となる。
【0167】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジを交換することができる。
【実施例】
【0168】
以下、本実施形態を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本実施形態は下記実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は特に指定しない限り質量基準を表すものとする。
本実施形態のトナーの作製方法としては、下記の樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液をそれぞれ調製し、これらを所定の割合で攪拌・混合しながら、金属塩凝集剤を添加しイオン的に中和させて凝集粒子を形成する。次いで、無機水酸化物を添加して系中のpHを弱酸性から中性域に調製した後、前記樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱して融合及び合一する。反応終了後、充分な洗浄、固液分離乾燥の工程を経て所望のトナー粒子を得て、該トナー粒子に外添剤を加えることにより製造される。以下、それぞれの調整方法を説明する。
【0169】
(分子量分布の測定)
分子量分布は以下の条件で行った。
東ソー(株)HLC−8120GPC、SC−8020装置を用い、カラムはTSK gei, SuperHM−H(6.0mmID×15cm×2)を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、検量線はA−500、F−1、F−10、F−80、F−380、A−2500、F−4、F−40、F−128、F−700の10サンプルから作製した。また試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
【0170】
(Tg(ガラス転移温度)の測定)
示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)(以下「DSC」と略記する)を用いて、0から150℃まで10℃/分で昇温し、150℃で5分間ホールドし、150℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から150まで10℃/分で昇温して得られた、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析したオンセット温度をTgとした。
【0171】
(酸価の測定)
樹脂約1gを精秤し、テトラヒドロフラン80mlに溶解する。指示薬としてフェノールフタレイン指示薬を加え、0.1N−KOH−エタノー溶液を用いて滴定し、30秒間色が持続したところを終点とし、使用した0.1N−KOH−エタノール溶液量より、酸価(樹脂1gに含有する遊離脂肪酸を中和するのに必要なKOHmg数 JIS K0070;92記載に準じる)を算出した。
【0172】
(非晶性ポリエステル樹脂(1)の調製)
・ ビスフェノールAエチレンオキサイド2mol付加物:60mol%
・ ビスフェノールAプロピレンオキサイド2mol付加物:40mol%
・ テレフタル酸ジメチルエステル: 65mol%
・ ドデセニルコハク酸 : 30mol%
・ トリメリット酸 : 5mol.%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移温度が57.5℃、酸価が14.8mgKOH/g、重量平均分子量35000、数平均分子量5400である非晶質ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0173】
(結晶性ポリエステル樹脂(a)の調製)
・ デカンジカルボン酸 100mol%
・ ノナンジオール 100mol%
加熱乾燥した三口フラスコに、上記のモノマーと触媒としてジブチル錫オキサイド0.3%とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間攪拌・還流を行った。
その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂(a)を合成した。酸価が13.5mgKOH/gで、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた結晶性ポリエステル樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は23300で数平均分子量(Mn)は7300であった。
また、結晶性ポリエステル樹脂(a)の溶融温度(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確な吸熱ピークを示し、吸熱ピーク温度は72.2℃であった。
【0174】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)の調製)
攪拌動力を与える4枚プロペラ翼の備えられた2Lセパラブルフラスコにメチルエチルケトンを50部、イソプロピルアルコールを30部を添加し、系内を50℃に加熱しながら非晶性ポリエステル樹脂(1)を100部をゆっくり添加し攪拌しながら溶解させた。ついで25%アンモニア水を5部を添加した後、イオン交換水を滴下し乳化した。ついで乳化液をエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、体積平均粒径が160nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を得た。エバポレーター処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)中に含有するMEK量は500ppmであり、IPA量は1000ppmであった。
【0175】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(2)の調製)
非晶性ポリエステル樹脂(1)を、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)の1.5:1(質量比)混合溶剤に溶解した後、45℃の防爆乾燥機内で固形分濃度が95%になるまで乾燥した。この樹脂をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、非晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、その後、排風処理をして、体積平均粒径260nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(2)を得た。排風処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(2)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(2)中に含有するMEK量は350ppmであり、IPA量は270ppmであった。
【0176】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(3)の調製)
攪拌動力を与える4枚プロペラ翼の備えられた2Lセパラブルフラスコにメチルエチルケトンを60部、イソプロピルアルコールを20部を添加し、系内を50℃に加熱しながら非晶性ポリエステル樹脂(1)を100部をゆっくり添加し攪拌しながら溶解させた。ついで25%アンモニア水を5部を添加した後、イオン交換水を滴下し乳化した。ついで乳化液をエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、体積平均粒径が185nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(3)を得た。エバポレーター処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(3)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(3)中に含有するMEK量は40ppmであり、IPA量は150ppmであった。
【0177】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(4)の調製)
攪拌動力を与える4枚プロペラ翼の備えられた2Lセパラブルフラスコにメチルエチルケトンを40部、イソプロピルアルコールを10部を添加し、系内を50℃に加熱しながら非晶性ポリエステル樹脂(1)を100部をゆっくり添加し攪拌しながら溶解させた。ついで25%アンモニア水を5部を添加した後、イオン交換水を滴下し乳化した。ついで乳化液をエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、体積平均粒径が205nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(4)を得た。エバポレーター処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(4)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(4)中に含有するMEK量は0ppmであり、IPA量は10ppmであった。
【0178】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(5)の調製)
ついで、得られた非晶性ポリエステル樹脂(1)を、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、非晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、体積平均粒径240nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(5)を得た。 非晶性ポリエステル樹脂分散液(5)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(5)中に含有するMEK量は0ppmであり、IPA量は0ppmであった。
【0179】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(6)の調製)
攪拌動力を与える4枚プロペラ翼の備えられた2Lセパラブルフラスコにメチルエチルケトンを80部、イソプロピルアルコールを40部を添加し、系内を50℃に加熱しながら非晶性ポリエステル樹脂(1)を100部をゆっくり添加し攪拌しながら溶解させた。ついで25%アンモニア水を10部を添加した後、イオン交換水を滴下し乳化した。ついで乳化液を排風しながら脱溶剤を実施し、体積平均粒径が180nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(6)を得た。排風処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(6)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(6)中に含有するMEK量は2000ppmであり、IPA量は5000ppmであった。
【0180】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(7)の調製)
非晶性ポリエステル樹脂(1)を、メチルエチルケトンに溶解した後、45℃の防爆乾燥機内で固形分濃度が95%になるまで乾燥した。この樹脂をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、非晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、その後、排風処理をして、体積平均粒径220nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(7)を得た。 排風処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(7)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(7)中に含有するMEK量は450ppmであり、IPA量は0ppmであった。
【0181】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(8)の調製)
非晶性ポリエステル樹脂(1)を、この樹脂をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、非晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、その後、イソプロピルアルコールを非晶性樹脂量に対し1%添加した後、排風処理をして、体積平均粒径190nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(8)を得た。排風処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(8)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(8)中に含有するMEK量は0ppmであり、IPA量は610ppmであった。
【0182】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(9)の調製)
非晶性ポリエステル樹脂(1)を、この樹脂をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、非晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、その後、アセトン及びイソプロピルアルコールを非晶性樹脂量に対し各1%添加した後、排風処理をして、体積平均粒径190nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(9)を得た。排風処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(9)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(9)中に含有するアセトン量は250ppmであり、IPA量は420ppmであった。
【0183】
(非晶性ポリエステル樹脂分散液(10)の調製)
非晶性ポリエステル樹脂(1)を、この樹脂をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、非晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、その後、メチルエチルケトン及びイソプロピルアルコールを非晶性樹脂量に対し各1%添加した後、排風処理をして、体積平均粒径190nmの非晶性ポリエステル樹脂分散液(10)を得た。排風処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(10)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、非晶性ポリエステル樹脂分散液(10)中に含有するメチルエチルケトン量は280ppmであり、エタノール量は250ppmであった。
【0184】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)の調製)
攪拌動力を与える4枚プロペラ翼の備えられた2Lセパラブルフラスコにメチルエチルケトンを60部、イソプロピルアルコールを50部を添加し、系内を65℃に加熱しながら結晶性ポリエステル樹脂(a)を100部をゆっくり添加し攪拌しながら溶解させた。ついで25%アンモニア水を15部を添加した後、イオン交換水を滴下し乳化した。ついで乳化液をエバポレーターで減圧しながら脱溶剤を実施し、体積平均粒径が280nmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を得た。エバポレーター処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)中に含有するMEK量は300ppmであり、IPA量は650ppmであった。
【0185】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)の調製)
結晶性ポリエステル樹脂(a)を、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)の1.5:1(質量比)混合溶剤に溶解した後、45℃の防爆乾燥機内で固形分濃度が95%になるまで乾燥した。この樹脂をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、結晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、その後、排風処理をして、体積平均粒径275nmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)を得た。排風処理中に水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)中に含有するMEK量は210ppmであり、IPA量は180ppmであった。
【0186】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)の調製)
攪拌動力を与える4枚プロペラ翼の備えられた2Lセパラブルフラスコにメチルエチルケトンを50部、イソプロピルアルコールを15部を添加し、系内を65℃に加熱しながら結晶性ポリエステル樹脂(a)を100部をゆっくり添加し攪拌しながら溶解させた。ついで25%アンモニア水を15部を添加した後、イオン交換水を滴下し乳化した。ついで乳化液をエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、体積平均粒径が200nmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)を得た。エバポレーター処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)中に含有するMEK量は35ppmであり、IPA量は100ppmであった。
【0187】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)の調製)
攪拌動力を与える4枚プロペラ翼の備えられた2Lセパラブルフラスコにメチルエチルケトンを50部、イソプロピルアルコールを15部を添加し、系内を65℃に加熱しながら結晶性ポリエステル樹脂(a)を100部をゆっくり添加し攪拌しながら溶解させた。ついで25%アンモニア水を15部を添加した後、イオン交換水を滴下し乳化した。ついで乳化液をエバポレータで減圧しながら脱溶剤を実施し、体積平均粒径が205nmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)を得た。エバポレーター処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)中に含有するMEK量は0ppmであり、IPA量は125ppmであった。
【0188】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)の調製)
ついで、得られた結晶性ポリエステル樹脂(a)を、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、結晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、体積平均粒径220nmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)を得た。結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)中に含有するMEK量は0ppmであり、IPA量は0ppmであった。
【0189】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(6)の調製)
攪拌動力を与える4枚プロペラ翼の備えられた2Lセパラブルフラスコにメチルエチルケトンを80部、イソプロピルアルコールを80部を添加し、系内を50℃に加熱しながら結晶性ポリエステル樹脂(a)を100部をゆっくり添加し攪拌しながら溶解させた。ついで25%アンモニア水を20部を添加した後、イオン交換水を滴下し乳化した。ついで乳化液を排風しながら脱溶剤を実施し、体積平均粒径が250nmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(6)を得た。排風処理中は、水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、結晶性ポリエステル樹脂分散液(6)中に含有するMEK量は2000ppmであり、IPA量は6000ppmであった。
【0190】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(7)の調製)
結晶性ポリエステル樹脂(a)を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)の1.5:1(質量比)混合溶剤に溶解した後、45℃の防爆乾燥機内で固形分濃度が95%になるまで乾燥した。この樹脂をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、結晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、その後、排風処理をして、体積平均粒径242nmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(7)を得た。排風処理中に水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。結晶性ポリエステル樹脂分散液(7)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、結晶性ポリエステル樹脂分散液(7)中に含有するアセトン量は110ppmであり、IPA量は190ppmであった。
【0191】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液(8)の調製)
結晶性ポリエステル樹脂(a)を、メチルエチルケトン、エタノールの1.5:1(質量比)混合溶剤に溶解した後、45℃の防爆乾燥機内で固形分濃度が95%になるまで乾燥した。この樹脂をキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。イオン交換水79%、アニオン系界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)が1%(有効成分として)、結晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、その後、排風処理をして、体積平均粒径245nmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(8)を得た。排風処理中に水分が蒸発し固形分濃度が上がってしまうため、適宜中断して蒸留水を添加し固形分を20%に調整した。結晶性ポリエステル樹脂分散液(8)中に含まれる有機溶剤含有量は、トナー粒子分散液同様にガスクロマトグラフを用い測定し、結晶性ポリエステル樹脂分散液(8)中に含有する、メチルエチルケトン量は150ppmであり、エタノール量は80ppmであった。
【0192】
−着色剤分散液(1)の調製−
シアン顔料20部(大日精化社製:ECB−301)、アニオン界面活性剤2部(第一工業製薬社製:ネオゲンSC、有効成分として、着色剤に対して10%)、イオン交換水78部を用い、上記成分をすべて投入した時に液面の高さが容器の高さの1/3程度になるような大きさのステンレス容器に投入し、ホモジナイザー(LKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000回転で5分間分散した後、攪拌器で1昼夜攪拌させて脱泡した。続けて、分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は、トータルしこみ量と装置の処理能力から換算して25パス相当おこなった。その後イオン交換水を加えて、固形分濃度を16.5%に調整した。得られた着色剤分散液の体積平均粒径(D50)をマイクロトラックUPAにて測定したところ115nmであった。
【0193】
−離型剤分散液の調製−
・ポリアルキレンワックス:270部
(日本精鑞社製、HNP−9、溶融温度78℃、180℃粘度2.5mPa・s)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンRK):8.4部
(有効成分として、離型剤に対して3.0%)
・イオン交換水:720部
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で95℃に加熱しながら十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザー)で、分散圧力500kg/cmで、仕込み量と分散能力から換算して10パスに相当する時間分散処理し、離型剤分散液を得た。離型剤粒子の体積平均粒径D50は225nmであった。その後イオン交換水を加えて固形分濃度を25.8%に調整した。
【0194】
<実施例1>
(トナー粒子(1)の作製)
・イオン交換水:400部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1):50部
(結晶性ポリエステル樹脂濃度20%)
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(1):250部
(非晶性ポリエステル樹脂濃度20%)
・アニオン性界面活性剤:2.5部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、有効成分量60%)
上記成分を、温度計、pH計、攪拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
【0195】
その後、
・着色剤分散液(1):47部
(着色剤濃度15%)
・離型剤分散液:32部
(離型剤濃度25%)
を投入し、5分間保持した。そのまま、1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを2.7に調整した。攪拌機、マントルヒーターをはずし、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて、3000rpmで分散しながら、
・ポリ塩化アルミニウム:0.5部
・0.1%硝酸水溶液:37.5部
の混合溶液を、先ず上記成分のうちの1/2(質量基準)を添加した後、分散回転数を5000rpmにして、残りの1/2を1分間かけて添加し、分散回転数を6500rpmにして、6分間分散した。
【0196】
反応容器に、攪拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌するように攪拌機の回転数を適宜調整しながら、42℃まで、0.5℃/分で昇温し、42℃で15分保持した後、0.1℃/分で昇温しながら、10分ごとに、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて、アイソトンを希釈液として測定濃度10%で粒径を測定し、体積平均粒径が5.0μmとなったところで、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を125部を投入した。投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で2時間保持した後、1℃/分で20℃まで降温して粒子を固化させ、トナー粒子分散液を得た。
【0197】
その後、トナー粒子分散液をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が30mS以下となったところで、ケーキ状になった粒子を取り出し、粒子質量の10倍量のイオン交換水中に投入し、スリーワンモータで攪拌し充分に粒子がほぐれたところで、1.0%硝酸水溶液でpHを4.0に調整して10分間保持した。その後再度ろ過、通水洗浄し、ろ液の伝導度が10mS以下となったところで、通水を停止し、固液分離した。得られたケーキ状になった粒子をサンプルミルで解砕して、気流式乾燥機において、乾燥エア量及び気流乾燥機の出口温度が45℃になるように熱風の入口温度を調整し乾燥を行ない、トナー粒子(1)を得た。
【0198】
得られたトナー粒子(1)は、体積平均粒径(D)が6.2μm、GSD(vol)が1.22で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は133、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は2ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は7ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は9ppmであった。また、トナーのDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は6ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は15ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は21ppmであった。
【0199】
なお、GSD(vol.)は下記方法により求めた。
粒度分布は、コールターマルチサイザーIIを用いて測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(分割数:1.26〜50.8μmまでを16チャンネルに、logスケールで0.1間隔となるように分割する。具体的には、チャンネル1が1.26μm以上1.59μm未満、チャンネル2が1.59μm以上2.00μm未満、チャンネル3が2.00μm以上2.52未満・・・、とし、左側の下限数値のlog値が(log1.26=)0.1、(log1.59=)0.2、(log2.00=)0.3、・・・、1.6となるように分割した。)に対して、体積、数をそれぞれ小粒径側から累積分布を引いて、累積16%となる粒径を体積D16(vol.)、数D16(pop.)、累積50%となる粒径を体積D50(vol.)、数D50(pop.)、累積84%となる粒径を体積D84(vol.)、数D84(pop.)と定義する。体積粒度分布指数GSD(vol.)は、(D84(vol.)/D16(vo.))1/2として算出される。
【0200】
形状係数SF1は、下記式に基づいて算出された。
SF1=((トナー粒子径の絶対最大長)2/(トナー粒子の投影面積))×(π/4)×100
トナー粒子径の絶対最大長及びトナー粒子の投影面積はルーゼックスFTにより求めた。
【0201】
(外添トナー(1)の作製)
得られたトナー粒子100部に対して疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)を1.5部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製、T805)を1.0部とを、サンプルミルを用いて10000rpmで45秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー(1)を作製した。
【0202】
<実施例2>
(トナー(2)の作製)
実施例1のトナー粒子(1)の作製において、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)に、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を非晶性ポリエステル樹脂分散液(2)に、変更した以外は同様の操作にて、トナー粒子(2)を得た。
得られたトナー粒子(2)は、体積平均粒径(D)が6.3μm、GSD(vol)が1.23で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は128、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は5ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は3ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は8ppmであった。また、トナー粒子(2)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は15ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は8ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は23ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(2)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(2)を作製した。
【0203】
<実施例3>
(トナー粒子(3)の作製)
実施例1のトナー粒子(1)の作製において、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)に、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を非晶性ポリエステル樹脂分散液(3)に、変更した以外は同様の操作にて、トナー粒子(3)を得た。
得られたトナー粒子(3)は、体積平均粒径(D)が5.8μm、GSD(vol)が1.24で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は133、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は1ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は5ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は6ppmであった。また、トナー粒子(3)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は3ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は8ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は11ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(3)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(3)を作製した。
【0204】
<実施例4>
(トナー粒子(4)の作製)
・イオン交換水:400部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(6):50部
(結晶性ポリエステル樹脂濃度20%)
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(6):250部
(非晶性ポリエステル樹脂濃度20%)
・アニオン性界面活性剤:2.5部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、有効成分量60%)
上記成分を、温度計、pH計、攪拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
【0205】
その後、
・着色剤分散液(1):47部
(着色剤濃度15%)
・離型剤分散液:32部
(離型剤濃度25%)
を投入し、5分間保持した。そのまま、1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを2.7に調整した。攪拌機、マントルヒーターをはずし、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて、3000rpmで分散しながら、
・ポリ塩化アルミニウム:0.5部
・0.1%硝酸水溶液:37.5部
の混合溶液を、先ず上記成分のうちの1/2(質量基準)を添加した後、分散回転数を5000rpmにして、残りの1/2を1分間かけて添加し、分散回転数を6500rpmにして、6分間分散した。
【0206】
反応容器に、攪拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌するように攪拌機の回転数を適宜調整しながら、42℃まで、0.5℃/分で昇温し、42℃で15分保持した後、0.1℃/分で昇温しながら、10分ごとに、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて、アイソトンを希釈液として測定濃度10%で粒径を測定し、体積平均粒径が5.0μmとなったところで、非晶性ポリエステル樹脂分散液(6)125部を投入した。投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で2時間保持した後、1℃/分で20℃まで降温して粒子を固化させトナー粒子分散液を得た。
【0207】
その後、トナー粒子分散液をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が30mS以下となったところで、ケーキ状になった粒子を取り出し、粒子質量の10倍量のイオン交換水中に投入し、スリーワンモータで攪拌し充分に粒子がほぐれたところで、1.0%硝酸水溶液でpHを4.0に調整して10分間保持した。その後再度ろ過、通水洗浄し、ろ液の伝導度が10mS以下となったところで、通水を停止し、固液分離した。得られたケーキ状になった粒子をサンプルミルで解砕して、5℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、再度、25℃のオーブン中で24時間乾燥した。実施例1と同様にして外添剤ブレンド、篩分をおこない、トナー粒子(4)を得た。
【0208】
得られたトナー粒子(4)は、体積平均粒径(D)が6.2μm、GSD(vol)が1.22で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は132、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は3ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は6ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は9ppmであった。また、トナー粒子(4)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は8ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は38ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は46ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(4)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(4)を作製した。
【0209】
<実施例5>
(トナー粒子(5)の製造)
・イオン交換水:400部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1):90部
(結晶性ポリエステル樹脂濃度20%)
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(1):210部
(非晶性ポリエステル樹脂濃度20%)
・アニオン性界面活性剤:2.5部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、有効成分量60%)
上記成分を、温度計、pH計、攪拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
【0210】
その後、
・着色剤分散液(1):47部
(着色剤濃度15%)
・離型剤分散液:32部
(離型剤濃度25%)
を投入し、5分間保持した。そのまま、1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを2.7に調整した。攪拌機、マントルヒーターをはずし、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて、3000rpmで分散しながら、
・ポリ塩化アルミニウム:0.5部
・0.1%硝酸水溶液:37.5部
の混合溶液を、先ず上記成分のうちの1/2(質量基準)を添加した後、分散回転数を5000rpmにして、残りの1/2を1分間かけて添加し、分散回転数を6500rpmにして、6分間分散した。
【0211】
反応容器に、攪拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌するように攪拌機の回転数を適宜調整しながら、42℃まで、0.5℃/分で昇温し、42℃で15分保持した後、0.1℃/分で昇温しながら、10分ごとに、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて、アイソトンを希釈液として測定濃度10%で粒径を測定し、体積平均粒径が5.0μmとなったところで、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を125部を投入した。投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で2時間保持した後、1℃/分で20℃まで降温して粒子を固化させ、トナー粒子分散液を得た。
【0212】
その後、トナー粒子分散液をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が30mS以下となったところで、ケーキ状になった粒子を取り出し、粒子質量の10倍量のイオン交換水中に投入し、スリーワンモータで攪拌し充分に粒子がほぐれたところで、1.0%硝酸水溶液でpHを4.0に調整して10分間保持した。その後再度ろ過、通水洗浄し、ろ液の伝導度が10mS以下となったところで、通水を停止し、固液分離した。得られたケーキ状になった粒子をサンプルミルで解砕して、気流式乾燥機において、乾燥エア量及び気流乾燥機の出口温度が45℃になるように熱風の入口温度を調整し乾燥を行ない、トナー粒子(5)を得た。
【0213】
得られたトナー粒子(5)は、体積平均粒径(D)が6.1μm、GSD(vol)が1.22で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は133、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は3ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は5ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は8ppmであった。また、トナー粒子(5)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は5ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は14ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は19ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(5)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(5)を作製した。
【0214】
<実施例6>
(トナー(6)の作製)
実施例1のトナー粒子(1)の作製において、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、結晶性ポリエステル樹脂分散液(7)に、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を非晶性ポリエステル樹脂分散液(9)に、変更した以外は同様の操作にて、トナー粒子(6)を得た。
得られたトナー粒子(6)は、体積平均粒径(D)が6.4μm、GSD(vol)が1.23で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は135、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のアセトン量は3ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は4ppmであり、アセトンとイソプロピルアルコールの総和は7ppmであった。また、トナー粒子(2)のDMF溶解上澄み液中のアセトン量は5ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は20ppmであり、アセトンとイソプロピルアルコールの総和は25ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(6)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(6)を作製した。
【0215】
<実施例7>
(トナー(7)の作製)
実施例1のトナー粒子(1)の作製において、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、結晶性ポリエステル樹脂分散液(8)に、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を非晶性ポリエステル樹脂分散液(10)に、変更した以外は同様の操作にて、トナー粒子(7)を得た。
得られたトナー粒子(7)は、体積平均粒径(D)が5.9μm、GSD(vol)が1.21で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は131、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は2ppm、水分散上澄み液中のエタノール量は6ppmであり、メチルエチルケトンとエタノールの総和は8ppmであった。また、トナー粒子(2)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は6ppm、DMF溶解上澄み液中のエタノール量は17ppmであり、メチルエチルケトンとエタノールの総和は23ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(7)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(7)を作製した。
【0216】
<比較例1>
(トナー粒子(8)の作製)
実施例1のトナー粒子(1)の作製において、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)に、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、非晶性ポリエステル樹脂分散液(5)に変更した以外は同様の操作にて、8を得た。
得られたトナー粒子(8)は、体積平均粒径(D)が6.2μm、GSD(vol)が1.22で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は132、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は0ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は0ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は0ppmであった。また、トナー粒子(6)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は0ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は0ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は0ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(8)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(8)を作製した。
【0217】
<比較例2>
(トナー粒子(9)の作製)
実施例1のトナー粒子(1)の作製において、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、結晶性ポリエステル樹脂分散液(6)に、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、非晶性ポリエステル樹脂分散液(6)に変更した以外は同様の操作にて、トナー粒子(9)を得た。
得られたトナー粒子(9)は、体積平均粒径(D)が6.3μm、GSD(vol)が1.22で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は130、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は50ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は100ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は150ppmであった。また、トナー粒子(9)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は300ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は160ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は460ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(9)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(9)を作製した。
【0218】
<比較例3>
(トナー粒子(10)の作製)
実施例1のトナー粒子(1)の作製において、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)に、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、非晶性ポリエステル樹脂分散液(4)に変更した以外は同様の操作にて、トナー粒子(10)を得た。
得られたトナー粒子(10)は、体積平均粒径(D)が6.3μm、GSD(vol)が1.23で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は132、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は0ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は2ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は2ppmであった。また、トナー粒子(10)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は0ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は4ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は4ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(10)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(10)を作製した。
【0219】
<比較例4>
(トナー粒子(11)の作製)
実施例1において、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)に、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、非晶性ポリエステル樹脂分散液(8)に変更した以外は同様の操作にて、トナー(11)を得た。
得られたトナー粒子は、体積平均粒径(D)が6.4μm、GSD(vol)が1.23で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は131、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は0ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は20ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は20ppmであった。また、トナー粒子(11)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は0ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は35ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は35ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(11)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(11)を作製した。
【0220】
<比較例5>
(トナー粒子(12)の作製)
実施例1のトナー粒子(1)の作製において、結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)に、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を、非晶性ポリエステル樹脂分散液(7)に変更した以外は同様の操作にて、トナー粒子(12)を得た。
得られたトナー粒子(12)は、体積平均粒径(D)が6.2μm、GSD(vol)が1.24で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は129、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は5ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は0ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は5ppmであった。また、トナー粒子(12)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は9ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は0ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は9ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(12)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(12)を作製した。
【0221】
<比較例6>
(トナー粒子(13)の作製)
比較例5において、同じ材料、同じ操作にてトナー粒子分散液を得た。その後、トナー粒子分散液をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が30mS以下となったところで、ケーキ状になった粒子を取り出し、粒子質量の10倍量のイオン交換水中に投入し、スリーワンモータで攪拌し充分に粒子がほぐれたところで、1.0%硝酸水溶液でpHを4.0に調整して10分間保持した。その後再度ろ過、通水洗浄し、ろ液の伝導度が10mS以下となったところで、通水を停止し、固液分離した。得られたケーキ状になった粒子をサンプルミルで解砕して、5℃のオーブン中で24時間乾燥した。
得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、再度、25℃のオーブン中で24時間乾燥した。実施例1と同様にして外添剤ブレンド、篩分をおこない、トナー粒子(13)を得た。
【0222】
得られたトナー粒子(13)は、体積平均粒径(D)が6.1μm、GSD(vol)が1.24で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は130、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は15ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は0ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は15ppmであった。また、トナー粒子(13)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は30ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は0ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は30ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(13)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(13)を作製した。
【0223】
<比較例7>
(トナー粒子(14)の作製)
比較例4において、同じ材料、同じ操作にてトナー粒子分散液を得た。その後、トナー粒子分散液をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が30mS以下となったところで、ケーキ状になった粒子を取り出し、粒子質量の10倍量のイオン交換水中に投入し、スリーワンモータで攪拌し充分に粒子がほぐれたところで、1.0%硝酸水溶液でpHを4.0に調整して10分間保持した。その後再度ろ過、通水洗浄し、ろ液の伝導度が10mS以下となったところで、通水を停止し、固液分離した。得られたケーキ状になった粒子をサンプルミルで解砕して、5℃のオーブン中で24時間乾燥した。得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、再度、25℃のオーブン中で24時間乾燥した。実施例1と同様にして外添剤ブレンド、篩分をおこない、トナー粒子(14)を得た。
【0224】
得られたトナー粒子(14)は、体積平均粒径(D)が6.0μm、GSD(vol)が1.23で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は133、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は0ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は30ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は30ppmであった。また、トナー粒子(12)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は0ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は52ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は52ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(14)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(14)を作製した。
【0225】
<比較例8>
(トナー粒子(15)の作製)
・イオン交換水:400部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1):175部
(結晶性ポリエステル樹脂濃度20%)
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(1):125部
(非晶性ポリエステル樹脂濃度20%)
・アニオン性界面活性剤:2.5部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、有効成分量60%)
上記成分を、温度計、pH計、攪拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
【0226】
その後、
・着色剤分散液(1):47部
(着色剤濃度15%)
・離型剤分散液:32部
(離型剤濃度25%)
を投入し、5分間保持した。そのまま、1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを2.7に調整した。攪拌機、マントルヒーターをはずし、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて、3000rpmで分散しながら、
・ポリ塩化アルミニウム:0.5部
・0.1%硝酸水溶液:37.5部
の混合溶液を、先ず上記成分の1/2を添加した後、分散回転数を5000rpmにして、残りの1/2を1分間かけて添加し、分散回転数を6500rpmにして、6分間分散した。
【0227】
反応容器に、攪拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌するように攪拌機の回転数を適宜調整しながら、42℃まで、0.5℃/分で昇温し、42℃で15分保持した後、0.1℃/分で昇温しながら、10分ごとに、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて、アイソトンを希釈液として測定濃度10%で粒径を測定し、体積平均粒径が5.0μmとなったところで、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を125部を投入した。投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で2時間保持した後、1℃/分で20℃まで降温して粒子を固化させトナー粒子分散液を得た。
【0228】
その後、トナー粒子分散液をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が30mS以下となったところで、ケーキ状になった粒子を取り出し、粒子質量の10倍量のイオン交換水中に投入し、スリーワンモータで攪拌し充分に粒子がほぐれたところで、1.0%硝酸水溶液でpHを4.0に調整して10分間保持した。その後再度ろ過、通水洗浄し、ろ液の伝導度が10mS以下となったところで、通水を停止し、固液分離した。得られたケーキ状になった粒子をサンプルミルで解砕して、気流式乾燥機において、乾燥エア量及び気流乾燥機の出口温度が38℃になるように熱風の入口温度を調整し乾燥を行ない、トナー粒子(15)を得た。
【0229】
得られたトナー粒子(15)は、体積平均粒径(D)が6.1μm、GSD(vol)が1.22で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は132、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は1ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は12ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は13ppmであった。また、トナー粒子(13)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は5ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は14ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は19ppmであった。
また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(15)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(15)を作製した。
【0230】
<比較例9>
(トナー粒子(16)の作製)
・イオン交換水:400部
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(6):300部
(非晶性ポリエステル樹脂濃度20%)
・アニオン性界面活性剤:2.5部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、有効成分量60%)
上記成分を、温度計、pH計、攪拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
【0231】
その後、
・着色剤分散液(1):47部
(着色剤濃度15%)
・離型剤分散液:32部
(離型剤濃度25%)
を投入し、5分間保持した。そのまま、1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを2.7に調整した。攪拌機、マントルヒーターをはずし、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)にて、3000rpmで分散しながら、
・ポリ塩化アルミニウム:0.5部
・0.1%硝酸水溶液:37.5部
の混合溶液を、先ず上記成分のうちの1/2(質量基準)を添加した後、分散回転数を5000rpmにして、残りの1/2を1分間かけて添加し、分散回転数を6500rpmにして、6分間分散した。
【0232】
反応容器に、攪拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌するように攪拌機の回転数を適宜調整しながら、42℃まで、0.5℃/分で昇温し、42℃で15分保持した後、0.1℃/分で昇温しながら、10分ごとに、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて、アイソトンを希釈液として測定濃度10%で粒径を測定し、体積平均粒径が5.0μmとなったところで、非晶性ポリエステル樹脂分散液(1)を125部を投入した。投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で2時間保持した後、1℃/分で20℃まで降温して粒子を固化させトナー粒子分散液を得た。
【0233】
その後、トナー粒子分散液をろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が30mS以下となったところで、ケーキ状になった粒子を取り出し、粒子質量の10倍量のイオン交換水中に投入し、スリーワンモータで攪拌し充分に粒子がほぐれたところで、1.0%硝酸水溶液でpHを4.0に調整して10分間保持した。その後再度ろ過、通水洗浄し、ろ液の伝導度が10mS以下となったところで、通水を停止し、固液分離した。得られたケーキ状になった粒子をサンプルミルで解砕して、気流式乾燥機において、乾燥エア量及び気流乾燥機の出口温度が45℃になるように熱風の入口温度を調整し乾燥を行ない、トナー粒子(16)を得た。
【0234】
得られたトナー粒子(16)は、体積平均粒径(D)が6.2μm、GSD(vol)が1.24で、ルーゼックス(株式会社ニレコ製、FT)による形状観察により求めた形状係数SF1は132、上述の方法に基づき測定した水分散上澄み液中のメチルエチルケトン量は2ppm、水分散上澄み液中のイソプロピルアルコール量は2ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は4ppmであった。また、トナー粒子(14)のDMF溶解上澄み液中のメチルエチルケトン量は3ppm、DMF溶解上澄み液中のイソプロピルアルコール量は56ppmであり、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールの総和は59ppmであった。
。 また、実施例1における外添トナー(1)の作製において、トナー粒子(1)をトナー粒子(16)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、外添トナー(16)を作製した。
【0235】
実施例1〜7及び比較例1〜9で得られたれるトナー(トナー粒子)の特性を表1にまとめて示す。
【0236】
【表1】

【0237】
(キャリアの作製)
・フェライト粒子(体積平均粒径35μm):100部
・トルエン:14部
・スチレン/メチルメタクリレート共重合体:2部
(共重合比:30/70)
・カーボンブラック(VXC72:キャボット社製):0.15部
先ず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間サンドミルにて攪拌させ、分散した被覆液を秤量し、次にこの被覆液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダーに入れ、攪拌しながら、60℃にて−20mmHgまで減圧し30分混合した後、昇温/減圧させ90℃/−720mmHgで30分間攪拌乾燥させることによりキャリアを得た。このキャリアは1000V/cm印加電界時の体積固有抵抗値が1012Ωcmであった。
【0238】
(現像剤(1)〜(16)の作製)
上記キャリア100部に対して、実施例1〜7及び比較例1〜9で得られたトナー(1)〜(16)それぞれ8部を添加し、V型ブレンダーで20分間ブレンドした後、目開き212μmの振動ふるいにより凝集体を除去して現像剤(1)〜(16)をそれぞれ得た。
【0239】
<評価>
(画像の折り曲げ耐性の評価)
実施例1〜7及び比較例1〜9で得られた現像剤(1)〜(16)それぞれを用いて、Docu Centre Color400 CP(改造機)により、定着ロールの温度を180℃とし、出力速度を55mm/s、160mm/s、220m/sと変えてトナー載量15mg/cmで、普通紙(メートル坪量:82g/m)に、ベタ画像を出力し、出力されたベタ画像を40g/cmで30秒間、内側に折り曲げ、再度開き、破損した画像を柔らかい布で拭き取った後の、画像欠損の幅の最大値を画像の折り曲げ耐性の値とした。その結果を表2に示す。尚、折り曲げ耐性は画像欠陥を生じないものが好ましいが、0.5mm程度でも実用上は問題が無いため、表2には、画像欠損の幅の最大値が0.4mm以下のものを「○」、0.4mmを超え、0.7mm以下のものを「△」、0.7mmを超えるものを「×」と表示した。
【0240】
(ブロッキング性の評価)
実施例1〜7及び比較例1〜9で得られたトナー(1)〜(16)それぞれを、50℃/50%RHの環境下に約24時間放置したサンプルを以下の条件でブロッキング性を評価した。25℃/50%RHの環境下において、約24時間放置したサンプルを、上段より目開き53μm、45μm、及び38μmのふるいを直列的に配置したトナーパウダーテスター(ホソカワミクロン社製)の53μmのふるい上に投入し、振幅1mmで90秒間振動を与え、振動後の各ふるい上のトナー重量を測定し、それぞれ上から0.5、0.3、及び、0.1の重みをかけて加算し、測定前のサンプル量で割った値を、百分率で表した。その結果を表2に示す。尚、ブロッキング性は前記百分率で表した値が30%以下であれば、通常実用上問題無く使用できるが、好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下であるため、20%以下であるものを「○」、20%を超え、30%以下であるものを「△」、30%を超えるものを「×」と表示した。
【0241】
【表2】

【0242】
表2に示すように、実施例1〜7では、定着速度に寄らず画像の折り曲げ耐性が良好であり、トナーのブロッキング性も良好であった。一方、比較例1〜9に用いられるトナーは画像の折り曲げ耐性が悪いものや画像の折り曲げ耐性が良いもののトナーのブロッキング性が悪い等、実使用上問題となる結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0244】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体(像保持体)
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(転写手段)
28、115 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ、
P、300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、ケトン系溶剤と、アルコール系溶剤と、を含有し、
該トナー0.5gを脱イオン水2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が10ppm未満であり、
該トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤及びアルコール系溶剤の合計濃度が2ppm以上50ppm以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド2gに分散したトナー分散液のケトン系溶剤濃度が1ppm以上10ppm以下であり、前記トナー0.5gをN,N−ジメチルホルムアミド2gに分散したトナー分散液のアルコール系溶剤の濃度が1ppm以上49ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記結着樹脂の全量に対する結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、1質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
請求項1に記載の静電荷像現像用トナーを含有することを特徴とする静電荷像現像用現像剤。
【請求項5】
トナーが少なくとも収められ、該トナーが請求項1に記載の静電荷像現像用トナーであることを特徴とするトナーカートリッジ。
【請求項6】
現像剤保持体を少なくとも備え、請求項4に記載の静電荷像現像用現像剤を収容することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
像保持体と、該像保持体上に形成された静電荷像を現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、像保持体上に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、記録媒体上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、前記現像剤が請求項4に記載の静電荷像現像用現像剤であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
定着速度が55mm/s以上220mm/s以下であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−145946(P2010−145946A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325876(P2008−325876)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】