説明

静電荷像現像用トナー

【課題】 幅広い非オフセット温度幅を有するトナーの提供。
【解決手段】 少なくとも脂環式オレフィン系樹脂又はポリエステル樹脂を含む結着樹脂(A)と、金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)と、着色剤とを含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法等に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電荷像現像用トナーの主成分である結着樹脂として、スチレン−アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂が一般的に用いられている。最近、これらとは異なる結着樹脂として、環状オレフィン・コポリマー(COC)を代表とする脂環式オレフィン系樹脂(シクロオレフィン系樹脂)が用いられる例が多数報告されている(例えば、特許文献1)。これらの脂環式オレフィン系樹脂は、高透明性を有することや、低温定着性に優れていること、シャープな分子量分布を有することや、良好な粉砕性を有すること、低吸水性を有していること、無公害であること等、様々な利点を有するため、優れた結着樹脂として利用されることが期待されている。しかし、市販の脂環式オレフィン系樹脂は、一般的に分子量分布が狭いために、トナーの定着時において、オフセット現象が発生しやすいといった問題を有していた。
【0003】
幅広い非オフセット温度幅を得るための手段としては、一般的には(1)結着樹脂の分子量分布を低分子量成分と高分子量成分の2山とする、(2)結着樹脂に架橋成分を導入する、(3)離型剤ワックスを多量添加すること等が知られている。結着樹脂として脂環式オレフィン系樹脂を使用した場合では、(a)結着樹脂の分子量分布を低分子量成分と高分子量成分の2山とする(特許文献2)、(b)結着樹脂に架橋成分を導入する(特許文献3)、(c)結着樹脂にカルボキシル基を導入後金属を添加・溶融混練し、アイオノマーによる架橋構造を形成する(特許文献3)、(d)離型剤ワックスを多量添加する、ことが知られている。
【特許文献1】特開2003−35971号公報
【特許文献2】特開平9−101631号公報
【特許文献3】特開2000−284528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記(1)の方法については、低分子量成分比率を高くしなければならず、高温オフセット性とトナー耐久性が悪化してしまう。(2)については、架橋成分を維持したままでの低温定着化は困難、また、架橋成分は透明性・顔料分散性が悪く色再現性に問題がある。(3)については、ワックスは一般的に結着樹脂と相溶性が悪く、多量に均一分散させることは困難であり、分散の悪いワックスはトナーの流動性を悪化させるともとに部材に融着する等して画像品質に悪影響を与える。(a)については、低分子量成分比率を高くしてもトナー耐久性は十分であるが、高温オフセット性が悪化してしまう。(b)については、架橋成分を維持したままでの低温定着化は困難、また、架橋成分は透明性・顔料分散性が悪く色再現性に問題がある。(c)については、溶融空気酸化法では末端にしかカルボキシル基を導入することが出来ないので多くの該基を導入することが困難であり、過酸化物の存在下カルボン酸無水物を反応させる方法では反応の制御が難しく、未反応で残留したカルボン酸無水物による臭気、また、過剰に反応が進むことで樹脂が黄変するという問題がある。(d)については、環状構造を有するポリオレフィン樹脂はワックスとの相溶性が非常に良好なため、多量に添加し過ぎると樹脂が可塑化されてトナーにベタツキが生じてしまう。そこで、本発明は、幅広い非オフセット温度幅を有するトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(1)は、少なくとも脂環式オレフィン系樹脂又はポリエステル樹脂を含む結着樹脂(A)と、金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)と、着色剤とを含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【0006】
本発明(2)は、前記α−オレフィン系共重合体樹脂が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体である前記発明(1)のトナーである。
【0007】
本発明(3)は、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体がエチレンとメタクリル酸の共重合体、またはエチレンとアクリル酸の共重合体であること特徴とする前記発明(2)のトナーである。
【0008】
本発明(4)は、前記金属イオンがナトリウムイオン、または亜鉛イオンであることを特徴とする前記発明(1)〜(3)のいずれか一つのトナーである。
【0009】
本発明(5)は、前記金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)の軟化温度が60℃以上であることを特徴とする前記発明(1)〜(4)のいずれか一つのトナーである。
【0010】
本発明(6)は、トナー樹脂中の金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)の割合が1〜50質量%であることを特徴とする前記発明(1)〜(5)のいずれか一つのトナーである。
【0011】
ここで、本明細書において使用する各種用語の意味を説明する。「トナー樹脂」とは、結着樹脂(A)と金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)を意味し、ワックス(オイル)、静電制御剤、着色剤、外添剤、その他添加剤はこれに含まれないものとする。また、「金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)」を簡単のために「樹脂(B)」と略称することがある。
【0012】
ここで、本明細書における各種パラメータの測定方法について、説明する。
明細書において重合体の分子量分布で平均分子量を測定するには、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略称する。)により、適正な条件を用いて測定すればよい。その条件例を下記に示す。
1 測定条件温度:40℃、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1.0ml/min
2 使用するカラムとしては市販のシリカゲルカラムを複数本組合せたものを用いる。例えば昭和電工社製Shodex
GPC column
KF−806Lの2本組合せ等が適当である。
3 検量線作成に当っては、標準ポリスチレンを用いて行う。標準ポリスチレンとしては例えばPressure
Chemical Co.製あるいは東洋ソーダ工業(株)製の分子量が6×102,2.1×103,4×103,1.75×104,5.1×104,1.1×105,3.9×105,8.6×105,2×106,4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレンを用いるのが適当である。
4 検出器としてはRI(屈折率)検出器例えば昭和電工社製SE−31を用いる。
【0013】
フロー軟化点は、高架式フローテスター(島津製作所(株)製「CFT−5000」)により下記の測定条件で測定した50%流出点に於ける温度を意味する。
測定条件
・プランジャー;1cm
・ダイの直径;1mm
・ダイの長さ;1mm
・荷重;20kgf
・予熱温度;50〜80℃
・予熱時間;300sec
・昇温速度;6℃/min
【0014】
本明細書でのガラス転移温度(Tg)はDSC(示差走査熱量計)に於ける吸熱ピークのショルダー部の温度をいうものとする。なお、酸価は樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明(1)によれば、幅広い非オフセット温度幅を有するトナーを提供できるという効果を奏する。
【0016】
本発明(2)によれば、樹脂(B)と結着樹脂である脂環式オレフィン系樹脂との相溶性がよくなるため、結着樹脂を化学的修飾したり相溶化剤を添加したりすることなしに、相分離しにくく、均質なトナーを得ることができるという効果を奏する。
【0017】
本発明(3)によれば、樹脂(B)と結着樹脂であるポリエステル樹脂との相溶性が良くなるため、結着樹脂を化学的修飾したり相溶化剤を添加したりすることなしに、相分離にくく、均質なトナーを得ることができるという効果を奏する。
【0018】
本発明(4)によれば、分子間イオン結合が形成され易く、より幅広い非オフセット温度幅を有するトナーを提供できるという効果を奏する。
【0019】
本発明(5)によれば、成形性が良くなるという効果を奏する。
【0020】
本発明(6)によれば、トナー製造時の粉砕性を向上し、トナー定着時の高温オフセットを防止するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
《静電荷現像用トナー》
本最良形態に係る静電荷現像用トナーは、結着樹脂(A)として脂環式オレフィン系樹脂又はポリエステル樹脂と、金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(アイオノマー)(B)と、着色剤と、を含有する。更に、当該トナーは、任意成分としてワックス、帯電制御剤、磁性粉、その他、種々の添加剤や、外添剤を含有してもよい。次に、各成分について順を追って説明する。
【0022】
結着樹脂(A)
結着樹脂(A)は、少なくとも、脂環式オレフィン系樹脂又はポリエステル樹脂を含む。結着樹脂は、前記二種の樹脂の混合物であってもよいし、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα−オレフィン樹脂等)、ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等)、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリ乳酸樹脂、水添ロジン、環化ゴム、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。これらの樹脂の添加量は、結着樹脂100質量%に対して30質量%以下の範囲内から適宜選択できる。
【0023】
(脂環式オレフィン系樹脂)
脂環式オレフィン系樹脂は、少なくとも1種類の環状オレフィンを一原料モノマーとして用いた重合体であれば特に限定されず、下記の重合体(a)、(b)、(c)等が例示できる。(a)1種類の環状オレフィンで構成されている単独重合体、(b)2種類以上の環状オレフィンで構成されている共重合体、及び(c)環状オレフィンと非環式不飽和単量体とで構成されている共重合体。
【0024】
環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環環状オレフィン又はこれらの誘導体、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン等の環状共役ジエン又はこれらの誘導体、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロデセン、テトラシクロドデセン、ヘキサシクロヘプタデセン等の多環状オレフィン又はこれらの誘導体、ビニルシクロブタン、ビニルシクロブテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクタン、ビニルシクロオクテン等のビニル脂環式炭化水素又はこれらの誘導体、スチレン等のビニル芳香族系単量体の芳香環部分の水素化物又はこれらの誘導体、等の、少なくとも1つの二重結合を有する環式及び/又は多環式オレフィン系化合物が例示できる。これらの環状オレフィンは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。前記誘導体としては、アルキル置換体、アルキリデン置換体、アルコキシ置換体、アシル置換体、ハロゲン置換体、カルボキシル置換体等が挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は、成形性及び透明性等の観点から、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個程度である。
【0025】
非環式不飽和単量体としては、環状オレフィンと共重合可能な非環式不飽和単量体であれば特に制限されないが、例えば、オレフィン系単量体;(メタ)アクリル酸系単量体;例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル化エステル単量体;例えば、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;例えば、ブタジエン、1,4−ペンタジエン、イソプレン等ジエン系単量体、等が例示できる。これらの非環式不飽和単量体は単独で又は2種類以上組み合わせて使用してもよい。非環式不飽和単量体は、トナーに柔軟性を付与する点から、オレフィン系単量体を用いるのが好ましい。オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−C2−10オレフィン(好ましくはα−C2−6オレフィン、更に好ましくはα−C2−4オレフィン)、イソブテン、イソプレン等の分枝鎖状オレフィン等が挙げられる。これらのオレフィンは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用してもよい。これらのオレフィンのうち、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0026】
ここで、好適な脂環式オレフィン系樹脂は、不飽和二重結合が無く、無色透明で高い光透過率を有するものである。また、前述の(a)〜(c)の脂環式オレフィン系樹脂の中では、粉砕性、加工性、機械特性等の点で、(c)が好ましい。(c)の中でも特に好適な脂環式オレフィン系樹脂は、エチレン又はプロピレンとノルボルネンとの共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体等)である。尚、非環式不飽和単量体の使用量は、環状オレフィン100モルに対して、0〜100モル、好ましくは5〜90モル、更に好ましくは10〜80モル程度の範囲から選択できる。
【0027】
本最良形態に係る脂環式オレフィン系樹脂は、例えばメタロセン系触媒、チーグラー系触媒及びメタセシス重合(metathese polymerization)、すなわち二重結合開放(double bond opening)及び開環重合反応のための触媒を用いた重合法により得られる重合体であることが好適である(特開平5−339327号公報、特開平5−9223号公報、特開平6−271628号公報、ヨーロッパ特許出願公開(A)第203799号明細書、同第407870号明細書、同第283164号明細書及び同第156464号明細書)。これらの中でも、メタロセン系触媒、チーグラー系触媒を用いることが、上記の不飽和二重結合がない樹脂を合成する観点から好適である。
【0028】
これらによると、脂環式オレフィン系樹脂は、上記環状オレフィンの1種類以上のモノマーを場合によっては1種類以上の上記非環式オレフィン−モノマーと−78〜150℃、好ましくは20〜80℃で圧力0.01〜64バールでアルミノキサン等の共触媒と例えばジルコニウムあるいはハフニウムよりなるメタロセンの少なくとも1種類からなる触媒の存在において重合することにより得られる。他の有用な重合体はヨーロッパ特許出願公開(A)第317262号明細書に記載されており、水素化重合体及びスチレンとジシクロペンタジエンとの共重合体も使用できる。
【0029】
本発明において上記脂環式オレフィン系樹脂は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略称する。)により測定した分子量分布において、少なくとも2つ以上のピークを有するものであることが好ましい。このような脂環式オレフィン系樹脂としては、低分子量フラクションと高分子量フラクションとの混合物であってもよく、または、合成に際して低分子量フラクションと高分子フラクションが、それぞれGPCによる分子量分布においてピークを有するように制御して作製されたものであってもよい。また、低分子量フラクションの数平均分子量(以下、「Mn」と略称する。)は7,500未満であり、高分子量フラクションのMnは7,500以上であり、かつ、高分子量フラクションの割合が結着樹脂中、50質量%〜5質量%であるのが好ましく、30質量%〜5質量%であるのがより好ましい。高分子量フラクションの割合が50質量%よりも多くなると、均一混練性が極度に低下して、トナー性能に支障をきたし、また、低温定着において十分な定着強度を得ることができなくなる。一方、5質量%より小さくなると、十分な非オフセット温度幅が得られない。
【0030】
脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、環状オレフィンと非環式不飽和単量体との組成比で決まり、通常、50〜200℃程度であり、用途や成形温度に応じて適宜選択できる。トナー用としては、50〜80℃、好ましくは50〜70℃、更に好ましくは50℃〜65℃程度である。脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移温度が80℃を超えて高いと、定着特性が悪化するとともに、剛性や耐衝撃性が高くなるためトナーの成形性も十分でなく、50℃未満の場合は、定着特性が悪化するとともに、耐融着性が低下する恐れがある。
【0031】
脂環式オレフィン系樹脂は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等を既知の方法により導入してもよい。更に、カルボキシル基を導入した脂環式オレフィン系樹脂には、亜鉛、銅、カルシウム等の金属の添加により架橋構造を導入してもよい。これらの置換基あるいは金属架橋構造を適量導入することにより、定着特性が向上するとともに、トナー製造時において、熱可塑性エラストマー等他の樹脂や着色剤との混合性が向上するため、トナーの成形性も向上する効果が期待できる。ただし、不均一な導入や未反応残留物質によりトナー性能を悪化させてしまう場合があることに留意が必要である。
【0032】
ここで、本最良形態に係るトナーにおける脂環式オレフィン系樹脂の添加量は、全トナー質量を基準として、20〜95質量%であることが好適であり、30〜90質量%であることがより好適である。
【0033】
(ポリエステル樹脂)
本発明の静電荷像現像用トナーに配合するポリエステル樹脂は、一般に、少なくとも一種のジオールと少なくとも一種のジカルボン酸とを主成分として、重縮合反応を行うことによって得られる樹脂である。更に、分子量分布やガラス転移温度などの調節などを目的として数種類のポリエステル系樹脂を組み合わせて使用することも出来る。上記の重縮合反応を行う際の温度は、一般に、150〜300℃、好ましくは180℃〜270℃、更に好ましくは180℃〜250℃である。反応温度が150℃未満の場合は反応時間が長くなるため好ましくなく、300℃を超える場合は分解が起こるため好ましくない。
【0034】
ポリエステル樹脂の原料として使用されるジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(通称、プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらの中でも水添ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましく用いられる。
【0035】
またポリエステル樹脂のもう一方の原料として使用されるジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸類,マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸,フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸,前記の各種ジカルボン酸の無水物(例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸など)や炭素数1〜6の低級アルキルエステル(例えばコハク酸ジメチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フタル酸ジヘキシルエステルなど)などが挙げられる。これらの中でもアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、更にはテレフタル酸が好ましく用いられる。
【0036】
更に、ポリエステル樹脂の原料として、必要によりグリセリン、2−メチルプロパントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビット、ソルビタンなどの3価以上の多価アルコール,オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの脂肪族モノカルボン酸,分岐や不飽和基を有する脂肪族モノカルボン酸,オクタノール、デカノール、ドデカノール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族モノアルコール,安息香酸、ナフタレンカルボン酸などの芳香族モノカルボン酸,トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸ならびにその酸無水物などを使用することができる。これらの中でもグリセリン、トリメチロールプロパン、ステアリン酸、トリメリット酸、安息香酸が好ましく、更には安息香酸が好ましく用いられる。
【0037】
また、GPCにより測定される分子量分布で、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000〜14000が好ましい。より好ましくは1000〜7000である。数平均分子量が1000未満の場合、耐オフセット性や耐久性の面で好ましくない場合があり、14000を超えた場合は低温での定着性の面で好ましくない。
また、重量平均分子量(Mw)は、5000〜20000が好ましい。より好ましくは5000〜15000である。重量平均分子量が5000未満の場合、耐オフセット性や耐久性の面で好ましくない場合があり、20000を超えた場合は低温での定着性の面で好ましくない。
また、分子量1000未満の分子が10質量%未満であることが好ましい。より好ましくは9質量%未満である。分子量1000未満の分子が10質量%以上の場合、感光体や現像ローラへの融着の原因となることがあるため好ましくない。
【0038】
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、30℃〜80℃が好ましい。更に好ましくは40℃〜70℃である。30℃未満の場合、耐ブロッキング性(保存性)が悪化する場合があり、80℃を超える場合は低温定着性が悪化する場合がある。
また、ポリエステル樹脂のフロー軟化点は、105℃〜145℃が好ましい。更に好ましくは105℃〜140℃である。105℃未満の場合、耐ブロッキング性(保存性)が悪化する場合があり、140℃を超える場合は低温定着性が悪化する場合がある。
【0039】
また、本発明に適用するポリエステル樹脂の酸価は30mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは20mgKOH/g以下であり、更に好ましくは10mgKOH/g以下である。酸価が30mgKOH/gより大きい場合、耐ブロッキング性(保存性)が悪化することがあるため好ましくない。
【0040】
本発明に適用するポリエステル樹脂としては、例えば三井化学(株)製の樹脂(数平均分子量(Mn)2150、重量平均分子量(Mw)9340)や、同社製の樹脂(数平均分子量(Mn)2330、重量平均分子量(Mw)6930)等の樹脂について、分子量1000以下の成分を10質量%未満に取り除いて用いたものが例示される。
【0041】
金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)
ここで金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(アイオノマー)としては、特に限定されないが、例えば、α−オレフィン・不飽和カルボン酸共重合体により構成されることが好適である。α−オレフィンは、組成式C2nで表せるが、本発明においてはnが2〜6の整数の物質、即ち、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンが好適であり、特にエチレン、プロピレンが好適である。nが7以上であると共重合体としたときに側鎖となるアルキル基、例えばn=7のとき−C11(ペンチル基)が長くかさ高くなりすぎて金属イオンによる分子間イオン結合が阻害される恐れがある。nが2又は3であれば、該イオン結合が阻害されることなく好適である。ここで、α−オレフィンとして、エチレンを用いることにより、樹脂(B)の脂環式オレフィン系樹脂に対する相溶性がよくなるため、相分離しにくく、均質なトナーを得ることができる。ここで、α−オレフィン・不飽和カルボン酸共重合体は、α−オレフィンと不飽和カルボン酸とのみからなる共重合体のみならず、任意にその他の共重合成分が共重合された多元共重合体であってもよい。不飽和カルボン酸成分から導かれる構成単位含量(不飽和カルボン酸成分含量)は、0.01〜35質量%が好適であり、0.1〜30質量%がより好適であり、1〜29質量%が更に好適である。
【0042】
ここで、不飽和カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。中でも、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。これらの不飽和カルボン酸の中でも、メタクリル酸又はアクリル酸を用いることにより、樹脂(B)のポリエステル樹脂に対する相溶性が良くなるため、相分離にくく、均質なトナーを得ることができる。加えて、樹脂(B)は高分子の構成単位ごとにカルボキシル基を有することから、カルボキシル基と金属イオンとの相互作用に由来する分子間イオン結合がトナー内部に偏りなく分散することができ、これも均質なトナーを得ることができることに寄与している。
【0043】
また、樹脂(B)の樹脂成分を構成する任意の他の共重合成分としては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;一酸化炭素などが挙げられる。このような多元共重合体を使用すると、軟質のα−オレフィン系共重合体樹脂が得られる傾向にあり、樹脂(B)の成分としては、特に任意共重合成分が、不飽和カルボン酸エステル、とりわけアクリル酸又はメタクリル酸のエステルである多元共重合体が好ましい。このような任意共重合成分の共重合割合は、当然目的とする組成物の性状によって異なるが、40質量%以下が好適であり、30質量%以下が好適である。下限は特に限定されないが、例えば、5質量%以上である。
【0044】
α−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体は、常法により合成可能であり、特に限定されないが、例えば、ラジカル共重合によって得ることができる。樹脂(B)は、このようなα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体を、常法によりイオン化することによって得ることができる。イオン化に使用することができるα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体は、たとえば、メルトフローレート(MFR;JIS K 6760、190℃、2160g荷重)が、0.1〜1000g/10分程度、好ましくは0.5〜300g/10分程度のものである。樹脂(B)はまた、α−オレフィン−不飽和カルボン酸エステル共重合体のケン化によっても得ることができる。
【0045】
樹脂(B)に含まれる金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、銅、鉛、ニッケル、コバルト、アルミニウムなどの多価金属を例示することができる。1価金属の中でも、ナトリウムが、好ましい。特に、少なくとも一部が2価金属イオンであることが好ましい。2価金属としては、亜鉛、マグネシウムが好ましく、中でも亜鉛が最も好ましい。
【0046】
樹脂(B)の樹脂成分として2種以上のものを使用してもよく、また金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体とともにα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体を併用することにより、溶融混合によってα−オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体のイオン化を行なってもよい。樹脂(B)の中和度は、特に限定されないが、例えば、5〜100%が好適であり、10〜90%が好適である。
【0047】
本最良形態で用いられる樹脂(B)のメルトフローレート(JIS K 6760,190℃、2160g荷重)は、0.1〜300g/10分が好適であり、0.2〜250g/10分がより好適であり、0.3〜200g/10分が更に好適である。
【0048】
本最良形態で用いられる樹脂(B)の軟化温度は、60℃以上が好適であり、65℃以上がより好適であり、70℃以上が更に好適である。上限は特に限定されないが、例えば、120℃以下である。軟化温度が60℃より低い場合、軟化温度が低いために成形性が悪く、特に粉砕法トナーの製造段階において、溶融混練時にロール付着が生じやすくなるといった問題が発生する恐れがある。ここで、軟化温度は、JIS K−7206に従って測定する。また、本最良形態に係るトナーにおける樹脂(B)の割合は、トナー樹脂中、1〜50質量%が好適であり、3〜40質量%がより好適であり、5〜30質量%が更に好適である。当該範囲内とすることにより、トナー製造時の粉砕性を向上し、トナー定着時の高温オフセットを防止するという効果を奏する。樹脂(B)のトナー樹脂中の割合が50質量%を超えると、樹脂(B)の弾性の高さがトナー樹脂の性質に強く現れてしまうために、トナー生産時の粉砕性が悪くなる恐れがある。1質量%未満であると、樹脂(B)によってトナー樹脂に付与される弾性が不十分となり、定着温度付近でのトナー粘度が低くなりやすく、即ち静電荷像現像装置におけるトナーの定着時に高温オフセットが発生しやすくなる。
【0049】
着色剤
本最良形態のトナーに用いられる着色剤は、黒トナー用としては、ブラック用顔料、カラートナー用としては、マゼンタ用顔料、シアン用顔料、イエロー用顔料等が使用できる。
【0050】
ブラック用顔料としては、通常、カーボンブラックが使用できる。カーボンブラックとしては、個数平均粒子径、吸油量、PH等に制限されることなく使用できるが、市販品として以下のものが挙げられる。例えば、米国キャボット社製 商品名:リーガル(REGAL)400、660、330、300、SRF−S、ステリング(STERLING)SO、V、NS、R、コロンビア・カーボン日本社製 商品名:ラーベン(RAVEN)H20、MT−P、410、420、430、450、500、760、780、1000、1035、1060、1080、三菱化学社製 商品名:#5B、#10B、#40、#2400B、MA−100等が使用できる。これらのカーボンブラックは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0051】
本最良形態のトナー中のカーボンブラックの添加量は、全トナー質量を基準として、0.1〜20質量%の範囲であることが好適であり、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%(特に1〜3質量%が好ましい)である。カーボンブラックの割合が少なすぎると画像濃度が低下し、多すぎると画質が低下しやすく、トナー成形性も低下する。ブラック用顔料としてはカーボンブラックの他、酸化鉄やフェライト等の黒色の磁性粉も使用できる。
【0052】
マゼンタ用顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50,51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレット1、2、10、13、15、23、29、35等が使用できる。これらのマゼンタ用顔料は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
シアン用顔料としては、C.I.ピグメントブル−2、3、15、16、17;C.I.バットブル−6;C.I.アシッドブル−45等が使用できる。これらのシアン用顔料は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
イエロ−用顔料としては、C.I.ピグメントイエロ−1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、94、97、155、180等が使用できる。これらのイエロ−用顔料は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
フルカラー用のカラー用顔料としては、混色性及び色再現性の観点から、マゼンタ用顔料はC.I.ピグメントレッド57、122が、シアン用顔料は、C.I.ピグメントブルー15が、イエロー用顔料は、C.I.ピグメントイエロー17、93、155、180が好適に使用できる。
【0056】
カラー用顔料の添加量は、全トナー質量を基準として、1〜20質量%の範囲であることが好適であり、より好ましくは3〜10質量%、更に好ましくは4〜9質量%(特に4.5〜8質量%が好ましい)である。これらの顔料の割合が上記範囲より少な過ぎると画像濃度が低下し、多過ぎると帯電安定性が悪化して画質が低下しやすい。またコスト的にも不利である。
【0057】
また、カラー用顔料としては、予め結着樹脂となり得る樹脂中に高濃度で分散させた、いわゆるマスターバッチを使用してもよい。
【0058】
ワックス
次に、本発明に係るワックスについて説明する。ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス、変性ポリエチレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックス、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン等のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、硬化ひまし油、酸性オレフィンワックス、マレイン酸エチルエステル、マレイン酸ブチルエステル、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸ブチルエステル、パルミチン酸セチルエステル、モンタン酸エチレングリコールエステル等の脂肪酸エステル又はその部分ケン化物よりなるエステルワックス、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリル酸アミド、ベヘニン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等のアミド系ワックス等が挙げられる。これらのワックスの中でも、フィッシャートロプシュワックス、酸性オレフィンワックス、エステルワックスが好適であり、フィッシャートロプシュワックスが特に好適である。また、これらのワックスは、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。軟化点(融点)が異なるワックスを混合してもよい。
【0059】
ワックスの含有量は、全トナー質量を基準として、0.1〜10質量%の範囲が好適であり、好ましくは0.5〜7質量%が好適であり、さらに好ましくは1〜5質量%である。ワックスの含有量が0.1質量%未満であると、トナーの離型機能が不足して熱定着ローラにトナーが付着しやすくなることにより画像のオフセットや複写用紙の巻きつきが起きたり、樹脂が溶融しにくくなることにより画像定着強度が弱くなったりする恐れがある。一方、10質量%を超えると、ワックスがトナーから離脱して複写機内部の様々な部材に付着する恐れがあり、印刷品質の低下さらには複写機じたいの不具合を引き起こす恐れがある。
【0060】
本発明に使用される好適なワックスは、比較的低軟化点もしくは低融点の化合物、具体的には軟化点(融点)が50〜170℃、より好ましくは80〜160℃を有するものである。軟化点が50℃よりも低いと、トナーの耐ブロッキング性や貯蔵安定性が不十分であり、170℃を超えると、定着開始温度が高くなり好ましくない。なお、原料ワックスは、軟化点(融点)が異なるものを混合して用いてもよい。
【0061】
その他任意成分
その他、任意成分として、帯電制御剤、磁性粉、添加剤等を添加することができる。以下、各成分について説明する。
【0062】
まず、帯電制御剤としては、正帯電性帯電制御剤と負帯電性帯電制御剤とが挙げられる。正帯電性の帯電制御剤としては、例えばニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の第四級アンモニウム塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート、ピリジウム塩、アジン、トリフェニルメタン系化合物及びカチオン性官能基を有する低分子量ポリマー等が挙げられる。これらの正帯電性の帯電制御剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの正帯電性の帯電制御剤は、ニグロシン系化合物、第四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。負帯電性の帯電制御剤としては、例えばアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体又は塩等の有機金属化合物、キレート化合物、アニオン性官能基を有する低分子量ポリマー等が挙げられる。これらの負帯電性の帯電制御剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。これらの負帯電性の帯電制御剤は、サリチル酸系金属錯体、モノアゾ金属錯体が好ましく用いられる。
【0063】
帯電制御剤の添加量は、トナーに対して、通常、0.1〜5質量%の範囲で選択でき、好ましくは0.5〜4質量%、更に好ましくは1〜4質量%である。また、帯電制御剤は、カラートナー用には無色あるいは淡色であることが好ましい。
【0064】
次に、磁性粉としては、例えば、コバルト、鉄、ニッケル等の金属、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、マグネシウム、スズ、亜鉛、金、銀、セレン、チタン、タングステン、ジルコニウム、その他の金属の合金、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ニッケル等の金属酸化物、フェライト、マグネタイト等が使用できる。磁性粉の添加量は、トナーに対して、通常、1〜70質量%、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。磁性粉の平均粒子径は、0.01〜3μmのものが好適に使用できる。
【0065】
次に、添加剤としては、例えば、安定剤(例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤等)、難燃剤、防曇剤、分散剤、核剤、可塑剤(フタル酸エステル、脂肪酸系可塑剤、リン酸系可塑剤等)、高分子帯電防止剤、低分子帯電防止剤、相溶化剤、導電剤、充填剤、流動性改良剤の一種以上を添加してもよい。
【0066】
外添剤
本最良形態のトナーは、流動性付与の観点から、無機微粒子が表面に付着していることが好ましい。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、カーボンブラック粉末、磁性粉等が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの無機微粒子のうち、シリカが特に好適に使用できる。シリカは、平均粒子径、BET比表面積、表面処理等特に制限されなく、用途に応じ適宜選択できるが、BET比表面積は50〜400m/gの範囲にあるのが好ましく、表面処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
【0067】
前記無機微粒子に加えて、本最良形態のトナーには更に、ポリ4フッ化エチレン樹脂粉末、ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末等の樹脂微粉末を付着してもよい。トナーに対してこれらの無機微粒子や樹脂微粉末を添加する割合は、トナー100重量部に対して、0.01〜8重量部の範囲から適宜選択でき、好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.1〜4重量部(特に0.3〜3重量部)である。添加する割合が前記範囲から外れると、トナーの流動性や帯電安定性が低下して、均一な画像が形成しにくい。
【0068】
本最良形態のトナーは、現像方式に限定されるものではなく、非磁性一成分現像方式、磁性一成分現像方式、二成分現像方式、その他の現像方式に使用できる。磁性一成分現像方式用トナーは、前記の磁性粉を結着樹脂に混合し磁性トナーとして使用し、二成分現像方式用トナーはキャリアと混合して使用する。装置の簡便性やコスト的な観点から、非磁性一成分現像方式用トナーとして使用されることが好ましい。
【0069】
二成分現像方式でのキャリアとしては、例えば、ニッケル、コバルト、酸化鉄、フェライト、鉄、ガラスビーズ等が使用できる。これらのキャリアは単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。キャリアの平均粒子径は20〜150μmであるのが好ましい。また、キャリアの表面は、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の被覆剤で被覆されていていてもよい。
【0070】
本最良形態のトナーは、モノクロ用トナーであってもよくフルカラー用トナーであってもよい。モノクロ用トナーでは、着色剤として非磁性トナーには前記のカーボンブラック、磁性系トナーには前記のカーボンブラックの他、前記の磁性粉の内黒色のものが使用できる。フルカラー用トナーでは、着色剤として、前記のカラー用顔料が使用できる。
【0071】
《製造方法》
本最良形態に係る静電荷像現像用トナーは、特に限定されないが、粉砕法トナーであることが好適であり、例えば、結着樹脂、金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)、着色剤、その他の添加剤を混合する、混合工程と、前記混合物を熱溶融して混練する、熱溶融混練工程と、前記混練物を粉砕する粉砕工程とを有する方法により製造することができる。更に、分級工程や、粉砕したトナーに外添剤を加える工程を有していてもよい。
【0072】
混合工程における混合方法としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンミキサー等の攪拌機による方法を用いることができる。
【0073】
続いて、熱溶融混練方法としては、種々の方法、例えば、2軸押出機による方法、バンバリーミキサーによる方法、加圧ローラによる方法、加圧ニーダーによる方法等の慣用の方法を用いることができる。熱溶融混練方法としては、成形性及び汎用性の観点から2軸押出機による方法が好ましい。溶融混練物は、2軸押出機により溶融混練し、2軸押出機の先端部の口金(ダイ)より押出すことにより得られる。2軸押出機の混練温度は50〜220℃、好ましくは70〜200℃、更に好ましくは80〜180℃程度である。
【0074】
粉砕工程における粉砕方法としては、ハンマーミル、カッターミルあるいはジェットミル等の粉砕機による粉砕方法が挙げられる。また、分級法としては、通常、乾式遠心分級機のような気流分級機が使用できる。このようにして得られたトナーの体積平均粒子径は、通常、6〜10μm程度であり、好ましくは6〜9μm、更に好ましくは6〜8μmである。体積平均粒子径は、粒度分布測定装置(マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した体積50%径である。
【0075】
更に、トナー表面には、タービン型攪拌機、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の攪拌機を用いて攪拌することにより、外添剤として前記の無機微粒子及び樹脂微粉末を付着させてもよい。
【実施例】
【0076】
<結着樹脂>
ティコナ社製、商品名TOPAS TB(エチレン-ノルボルネン共重合体脂環式オレフィン系樹脂、重量平均分子量Mw=200,000、数平均分子量Mn=5,000、2山分子量分布、ガラス転移温度Tg=60℃)
ティコナ社製、商品名TOPAS TM(エチレン-ノルボルネン共重合体脂環式オレフィン系樹脂、重量平均分子量Mw=11,000、数平均分子量Mn=4,800、1山分子量分布、ガラス転移温度Tg=60℃)
三菱レイヨン社製、商品名 FC-1565 (ポリエステル樹脂、ガラス転移温度Tg=62℃、フロー軟化点123℃、酸価6mgKOH/g)
<金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)>
B−1:三井・デュポン・ポリケミカル社製、商品名ハイミラン1555(ナトリウムイオンにより分子間イオン結合されたエチレン-メタクリル酸共重合体、軟化温度=72℃(JISK−7206)、MFR=10g/10分(JIS K7210))
B−2:三井・デュポン・ポリケミカル社製、商品名ハイミラン1706(亜鉛イオンにより分子間イオン結合されたエチレン-メタクリル酸共重合体、軟化温度=65℃(JISK−7206)、MFR=5g/10分(JIS K7210))
B−3:三井・デュポン・ポリケミカル社製、商品名ハイミラン1855(亜鉛イオンにより分子間イオン結合されたエチレン-メタクリル酸共重合体、軟化温度=56℃(JISK−7206)、MFR=1g/10分(JIS K7210))
<着色剤>
キャボット社製、カーボンブラック、商品名MOGUL−L
<帯電制御剤>
保土谷化学社製、アゾ系クロム錯体、商品名T−95
<ワックス>
三洋化成工業社製、ポリプロピレン、商品名ビスコール660P
【0077】
実施例1〜5及び比較例1〜3の原材料をそれぞれオープンロール型混練機で溶融混練した。ついで、溶融混練物をジェットミルにて粉砕し、気流分級機にて分級して、堆積平均粒径が9μmのトナー粒子を得た。次に、得られたトナーに対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、商品名NA50H)0.4質量%と、疎水性シリカ(クラリアント社製、商品名H3004)0.8質量%とを添加し、ヘンシェルミキサーにて5分間攪拌混合して実施例1〜3、5、比較例1〜2のトナーを得た。
得られたトナーの定着性、成形性を評価し、結果を表に示した。
【0078】
<定着特性の評価方法>
得られたトナーとマグネタイトキャリアを質量比5:95にて混合し、2成分現像剤を作成した。次に、得られた2成分現像剤を使用して、市販の複写機(シャープ社製、AR−280)によりA4の転写紙に縦3cm、横6cmの帯状の未定着画像を作成した。
ついで、表層がポリ4フッ化エチレンで形成された加熱ロールと、表層がシリコーンゴムで形成された加圧ロールとが対になって回転する熱ロール型定着機を、ロール速度が200mm/sec.になるように調節し、加熱ロールの表面温度を130℃〜200℃の間で5℃間隔で段階的に下げていき、各表面温度において上記未定着画像を有した転写紙のトナー像の定着を行った。
定着の際、転写紙の余白部分にトナーの汚れが生じるか否かの観察を行い、汚れの生じない温度領域を非オフセット温度幅とした。
【0079】
<成形性>
本発明において「成形」とは、溶融混練粉砕トナーの溶融混練工程において、トナーの原材料を溶融させた結着樹脂に練り混ぜて分散(混練)し、この原材料の溶融混練物を粉砕できる形状すなわち粉砕工程直前の形状として取り出すことを指す。「成形性」の評価としては、溶融混練物を混練機から連続的に回収するのが容易であるかどうか、具体的には混練機のオープンロールに接触している溶融混練物を、ロールと摺動するように設置されている専用刃によりロールから引き剥がして連続的に回収できるかどうかを評価した。
溶融混練物の成形性が悪いと、溶融混練物がロールに強く付着して剥がれず、次々にロール表面に堆積して回収できないため、頻繁に溶融混練機を停止してロール表面に堆積した混練物を叩くなど衝撃を与えて除去回収する作業が必要となるために連続成形ができず、すなわちトナーの連続生産ができないという問題が発生する。
【0080】
<評価結果>
本発明による実施例1〜4のトナーは、非オフセット温度幅の広さ及び成形性に優れ実用上問題がない。実施例5のトナーは金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)の軟化温度が低いために溶融混練時にロール付着が生じ、成形性には問題があるものの、非オフセット温度幅が広く優れている。
これに対し、比較例1、比較例3のトナーは、本発明の金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)を含有しないため、弾性が不足して高温オフセット性に問題がある。
比較例2のトナーは、本発明の金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)を含有しない代わりに高分子量フラクションを多く含有するTOPAS TBのみを結着樹脂として弾性を補っているため高温オフセット性に優れるが、低温オフセット性に問題がある。
以上の結果からもわかるように、本発明によれば、脂環式オレフィン系樹脂又はポリエステル樹脂を含む結着樹脂(A)を構成要素に含む静電荷像現像用トナーにおいて定着時の非オフセット温度幅を広くすることができるので、複写機等の熱ローラー式定着装置の温度設定の自由度を広げることができ、あるいは種々の複写機に使用可能な汎用性の高い静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも脂環式オレフィン系樹脂又はポリエステル樹脂を含む結着樹脂(A)と、金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)と、着色剤とを含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記α−オレフィン系共重合体樹脂が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体である請求項1記載のトナー。
【請求項3】
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体がエチレンとメタクリル酸の共重合体、またはエチレンとアクリル酸の共重合体であること特徴とする請求項2記載のトナー。
【請求項4】
前記金属イオンがナトリウムイオン、または亜鉛イオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のトナー。
【請求項5】
前記金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)の軟化温度が60℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のトナー。
【請求項6】
トナー樹脂中の金属イオンにより分子間イオン結合されたα−オレフィン系共重合体樹脂(B)の割合が1〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のトナー。

【公開番号】特開2010−151899(P2010−151899A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327209(P2008−327209)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】