説明

静電荷像現像用トナー

【課題】 帯電制御剤の色調に影響されず、発色性の良いトナーを提供する。
【解決手段】 結着樹脂、着色剤、並びに帯電制御剤を少なくとも含有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御剤が、昇温速度10℃/分で常温から250℃まで昇温した際の熱分解生成物として少なくとも二酸化硫黄及びブチルフェノールを発生し、ターシャリーブチル基が一以上結合した芳香環とスルホニル基が一以上結合した芳香環とを両方有する化学構造の物質、ターシャリーブチル基が一以上結合した芳香環を有する化学構造の物質とスルホニル基が一以上結合した芳香環を有する化学構造の物質とからなる混合物、もしくはターシャリーブチル基及びスルホニル基の両方がそれぞれ一以上結合した芳香環を含む化学構造の物質のうちのいずれか一またはこれらの混合物で構成される芳香族系化合物であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電記録、電子写真等(以下、「電子写真等」と記す。)において使用される静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と記す。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高画質化の要求から電子写真等の画像はカラー化が望まれ、画像の色再現性を高めるため、トナー特にカラートナーには発色性の良さが求められている。
このトナーの発色性は、トナー中の着色剤自体の色目の影響があるほかに、該着色剤の微粒子化及びトナー中の分散の均一化によって発色性が高められ、例えばマスターバッチ法として、少量の樹脂に所定の着色剤を強い条件で溶融混練して着色剤の分散を向上させた高濃度着色剤含有樹脂(マスターバッチ)を予め作製しておき、これをトナーの着色剤として使用する方法が良く知られている。
また、トナーを構成する着色剤以外の成分、例えば結着樹脂、離型剤、帯電制御剤及び外添剤等のそれぞれの色調によっても、トナーの発色性の良し悪しが影響される。特に、帯電制御剤は、顕著な色調を有する場合が多く、黒色トナーであれば問題なく使用できても、カラートナーでは、色調障害をひき起こすために使用できない場合がある。
公知の帯電制御剤としては、正荷電性帯電制御剤として、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。また、負荷電性帯電制御剤として、Cr、Co、Al、Fe等の金属を含有するアゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物、ホウ素錯体、高分子タイプ帯電制御剤などがある。特に金属錯体系の物質は比較的高い帯電を得ることができる反面、それぞれ特有の顕著な色調を有するものが多い。
【0003】
【特許文献1】特開2007−101593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とする処は、帯電制御剤の色調に影響されず、発色性の良いトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の技術的構成により、上記課題を解決できたものである。
【0006】
(1)結着樹脂、着色剤、帯電制御剤を少なくとも含有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御剤が、次の(A)及び(B)の条件を満足する芳香族系化合物からなることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
(A)昇温速度10℃/分で常温から250℃まで昇温した際の熱分解性生物として少なくとも二酸化硫黄及びブチルフェノールを発生すること
(B)次の(a)〜(c)のいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であること
(a)ターシャリーブチル基が一以上結合した芳香環とスルホニル基が一以上結合した芳香環とを両方有する化学構造の物質
(b)ターシャリーブチル基が一以上結合した芳香環を有する化学構造の物質とスルホニル基が一つ以上結合した芳香環を有する化学構造の物質とからなる混合物
(c)ターシャリーブチル基およびスルホニル基の両方がそれぞれ一以上結合した芳香環を含む化学構造の物質
(2)前記芳香族系化合物が、4置換の芳香環を含むことを特徴とする前記(1)記載の静電荷像現像用トナー。
(3)前記芳香族系化合物が、前記ターシャリーブチル基に対してオルト位またはメタ位に2つの水素がある芳香環構造であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の静電荷像現像用トナー。
(4)前記芳香族系化合物が、保土谷化学工業(株)社製の商品名「T−8」であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
(5)前記結着樹脂が、スチレンとアクリル酸エステルとの共重合体、環状オレフィンと不飽和脂肪族との共重合体もしくはポリエステルのいずれかを含むことを特徴とする前記(1)に記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、帯電制御剤の色目に影響されず、発色性の良いトナーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、並びに帯電制御剤としての芳香族系化合物を少なくとも含有する静電荷像現像用トナーである。本発明のトナーは、溶融混練法、懸濁重合法もしくは乳化重合法等のいずれの方法でも作製することができる。また、本発明のトナーは、結着樹脂の成分として、例えばスチレンとアクリル酸エステルとの共重合体、環状オレフィンと不飽和脂肪族との共重合体もしくはポリエステル等の公知の樹脂を使用することができる。
【0009】
(芳香族系化合物)
本発明のトナーに添加する芳香族系化合物は、前記(A)および(B)の条件を満足することを特徴とする無色の物質である。
前記芳香族系化合物をトナーに添加すると、トナーが帯電しやすくなる(帯電の立ち上がりが速い)とともに帯電量を安定して高く保つことができるようになることを見い出した。すなわち、前記芳香族系化合物がトナーの帯電制御剤として使用できる。この理由については明らかではないが、芳香環を持つ物質は、芳香環が持つπ軌道により外部の電位変化に対して電子配置の柔軟性があるので、その物質の電位を安定化させる性質を持つこと、また、芳香環に電子吸引性の官能基であるスルホニル基が結合しているためにスルホニル基が負側となる分極が促進されること、芳香環に電子供与性の官能基であるターシャリーブチル基が結合することにより芳香環の電子供与性が高められるので前記スルホニル基の分極がさらに高まることが考えられる。これらの相乗効果により、該芳香族系化合物は外部の電位変化に対して電位が安定しているとともに全体で負に帯電しやすくなることから、良好な帯電制御剤としての性能を発現することが考えられる。このような該芳香族系化合物を添加したトナーは負に帯電する。
なお、前記芳香族系化合物は、昇温速度10℃/分で常温から250℃まで昇温した際の熱分解生成物として少なくとも二酸化硫黄及びブチルフェノールを発生する特徴がある。ここでいう常温とは、温度23℃/相対湿度65%をいう。
前記芳香族系化合物は、それ自身の化学構造を安定化し、あるいはトナー添加時におけるトナーに対する帯電制御特性を高めるために、前記の特徴に加えて、4置換の芳香環を含むことが好ましく、または前記ターシャリーブチル基に対してオルト位またはメタ位に2つの水素があることも好ましい。4置換の芳香環を含むとともに前記ターシャリーブチル基に対してオルト位またはメタ位に2つの水素があることはさらに好ましい。
前記(A)及び(B)の条件を満足する芳香族系化合物として、保土谷化学工業(株)社製の商品名「T−8」が好適である。
トナーの帯電制御剤としての前記芳香族系化合物の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部程度が好ましい。前記芳香族系化合物は、トナー粒子の中に配合するか、トナー粒子の表面に付着させることにより、トナーの帯電制御剤として機能させることができる。
【0010】
次に、帯電制御剤以外のトナー原料について説明する。
【0011】
(結着樹脂)
本発明に用いる結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレンなどのスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル、などのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの二重結合を有する環状オレフィン類、などの単独重合体及び共重合体を例示することができる。
また、マレイン酸、フマル酸、フタル酸などのカルボン酸と、ビスフェノールA(EO/PO付加物を含む)、エチレングリコールなどのアルコールから生成されるポリエステル樹脂を例示することができる。
これらの中でも、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−ノルボルネンなどの環状オレフィン共重合樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
特に耐久性の観点からポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
本発明の結着樹脂の量は、非磁性トナーの場合トナー100重量部中に80〜95重量部であることが好ましい。
【0012】
(着色剤)
次に、着色剤について説明する。
イエロー着色剤の顔料系としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
具体的には、C.I.PigmentYellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、73、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、122、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が好適に用いられる。
染料系としては、例えば、C.l.solventYellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperseYellow42.64.201.211が挙げられる。
【0013】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が特に好ましい。
【0014】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用される。
【0015】
黒色着色剤としては、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、ニグロシン、鉄黒、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子等が利用できるほか、上記イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
【0016】
着色剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して2〜20重量部、好ましくは2〜15重量部、さらにはトナー像の好適なOHPフィルムの透過性を考慮すると12重量部未満の範囲で使用されるのが好ましく、通常3〜9重量部であるのが最も好適である。着色剤は、原材料に単体で添加することもできるが、例えばマスターバッチ法などの公知の方法によりトナー中の着色剤の分散を向上させると、トナー中の着色剤がより細かくより均一に分散され、より良好な色調の画像を得ることができるようになるため、より好ましい。マスターバッチ法は、結着樹脂となり得る樹脂に所定の着色剤を強い条件で溶融混練して着色剤の分散を向上させた高濃度着色剤含有樹脂(マスターバッチ)を予め作製しておき、これをトナーの着色剤として使用する。なお、マスターバッチをトナー原料として添加する場合は、マスターバッチ中の着色剤含有量がトナーへの着色剤添加量に相当し、マスターバッチ中の樹脂は結着樹脂成分の一部となることを考慮して、マスターバッチおよび他の結着樹脂等の成分それぞれの添加量を決定する必要がある。
【0017】
(離型剤)
本発明のトナーには必要に応じて離型剤(ワックス)を添加することができる。離型剤を適度に添加することにより、トナーの耐オフセット性、画像の光沢性などを向上することができる。
離型剤としては、蜜ろう、鯨ろう、羊ろう、セラックろう等の動物由来のワックス、カルナウバろう、木ろう、米糠ろう(ライスワックス)、キャンデリラワックス等の植物由来のワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油由来のワックス、モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物由来のワックス、ポリオレフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、油脂系合成ワックス(高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類)、常温で固体の水素硬化油等の合成ワックス、及び芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖を有する長鎖カルボン酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアミド、酸化ワックス、合成樹脂(エチレン酢ビ共重合体、ポリエチレン、合成ロジン等)配合ワックス、変性モンタンワックス等の各種加工・変性ワックスを例示し得る。離型剤は前記例示成分の単体でも混合物でもよい。溶融混練法によりトナーを製造する際に、複数の離型剤を使用する場合には、結着樹脂との溶融混練を行うより前に予め離型剤を混合しておくと、トナー中の離型剤の分散を均一にでき、トナーの耐オフセット性や画像の光沢性などが均一に得えられるので好ましい。複数の離型剤の混合にはバッチ式(例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等)または連続式の熱溶融混練機を用いるが、連続生産できる等の優位性から1軸または2軸の連続式押出機が好ましい。例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出機、栗山製作所社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が好ましい。なお、オープンロール型連続混練機も使用可能である。
離型剤の添加総量は、結着樹脂100重量部に対して30重量部未満、好ましくは2〜20重量部が好適である。30重量部以上では、トナー中か離型剤が離脱してしまう恐れがあり、トナーの帯電特性、熱特性、感光体クリーニング性などの諸特性を悪化させる恐れがある。2重量部未満では熱ローラーによる画像定着時のトナーの耐オフセット性が十分に得られず恐れがあり、オフセット画像となるか、あるいは定着ローラーへの給紙巻きつきを起こす恐れもある。
【0018】
溶融混練法によるトナー製造方法では、結着樹脂、着色剤及び帯電制御剤を含む原料を溶融混練して混練物を得る。原料成分としてさらに離型剤を添加する好ましい。磁性トナーの場合は、原料成分にさらに磁性粉を添加する。
混練工程にはバッチ式(例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等)または連続式の熱溶融混練機を用いるが、連続生産できる等の優位性から1軸または2軸の連続式押出機が好ましい。例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出機、栗山製作所社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が好ましい。なお、オープンロール型連続混練機も使用可能である。その後、冷却工程により混練物を冷却固化する。
【0019】
そして、冷却固化した混練物を粉砕分級して分級トナーを得る。
まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕し、ジェットミル、カウンタージェットミル、高速ローター回転式ミル等で微粉砕し、段階的に所定トナー粒度まで粉砕する。
そして、慣性分級方式のエルボージェット、遠心力分級方式のミクロプレックス、DSセパレーター、乾式気流分級機等でトナーを分級し、体積平均粒子径3〜18μmの分級トナーを得る。
分級時に得られた粗粉は粉砕分級工程に戻し、微粉は混練工程に戻して再利用してもよい。
【0020】
次に、必要に応じて分級トナーに外添剤を付着させる。
分級トナーと各種外添剤を所定量配合して、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速攪拌機などで攪拌・混合する。
この際、外添機内部で発熱があり、凝集物を生成し易くなるので外添機の容器部周囲を水で冷却するなどの手段で温度調整をする方が好ましく、更には外添機容器内部の材料温度は樹脂のガラス転移温度より約10℃低めの管理温度以下が好適である。
【0021】
本発明のトナーは、上述の方法により得られ、体積平均粒径は3μm〜15μmが好ましく、さらに好ましくは5μm〜10μmである。体積平均粒径が3μm未満では、2μm未満の超微粉が多くなるので、カブリ、画像濃度低下、感光体での黒点やフィルミングの発生、現像スリーブや層厚規制ブレードでの融着の発生、等を引き起こす。一方15μmを超えると解像度が低下し、高画質画像が得られない。
なお、本願で体積平均粒径は、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで体積分布を測定することにより求める。
【0022】
また、本発明のトナーの円形度は0.80〜0.98であって、好ましくは0.90〜0.96である。円形度が0.80未満では流動性が劣るため帯電量が不足して画像濃度の低下をもたらし、0.98を超えると、感光体のクリーニング不良や印刷機内でのトナーの飛び散りが起こりやすくなり、トナー消費量が増大したり画質が低下したりする恐れがある。
なお、円形度は、
円形度=π・(粒子像の面積と等しい円の直径)/(粒子像の周囲長)
で表されるもので、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、商品名:FPIA−2000により求めるものである。
【0023】
得られたトナーは、一成分現像方式、二成分現像方式、その他の現像方式に使用できる。二成分現像方式にはキャリアと混合して使用する。
二成分現像方式でのキャリアとしては、例えば、ニッケル、コバルト、酸化鉄、フェライト、鉄、ガラスビーズなどが使用できる。これらのキャリアは単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。キャリアの平均粒子径は20〜150μmであるのが好ましい。また、キャリアの表面は、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの被覆剤で被覆されていていてもよい。
【0024】
本発明のトナーは、モノクロ用トナーであってもカラー用トナーであってもよいが、画像の色調改善が顕著に現れるカラー用トナー、特にフルカラー用トナーとして用いられることが好ましい。
【0025】
(外添剤)
本発明のトナーは、流動性付与の観点から、外添剤が表面に付着していることが好ましい。
外添剤としては無機または有機の各種外添剤を使用することができるが、特にトナーの流動性向上、凝集性抑制を図る為にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、金属石鹸(ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛等)等の無機微粉末が好適である。
外添剤の混合量は、使用する外添剤及びトナー粒子の平均粒径、粒度分布などにより異なるが、所望するトナー流動性を得る量を適宜選択できる。一般的にはトナー粒子100重量部に対して0.05〜10重量部、更には0.1〜8重量部が好適である。
混合量が0.05重量部未満では流動性改善効果が少なく、高温での貯蔵安定性能が悪く、また混合量が10重量部より多いと一部遊離した外添剤により感光体にフィルミングを発生したり、現像槽内部に堆積して現像剤の帯電機能劣化等の障害を引き起こしたりして好ましくない。
また、外添剤は高湿環境下での安定性面より、無機微粉末の場合にはシランカップリングなどの処理剤で疎水化処理されたものがより好ましく、更に、帯電性を考慮する場合には負荷電性を付与する処理剤としてはジメチルジクロルシラン、モノオクチルトリクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイルなど、正荷電性を付与する処理剤としてはアミノシランなどを使用すればよい。
【0026】
この他、外添剤としてトナーの電気抵抗調整、研磨剤などの目的で、流動性改善用以外のマグネタイト、フェライト、導電性チタン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化セリウム、ハイドロタルサイト類化合物、アクリルビーズ、シリコーンビーズ、ポリエチレンビーズなどの微粉末を適量混合してもよく、その混合量はトナー100重量部に対して0.005〜10重量部が好ましい。
【0027】
さらに、外添剤としてポリ4フッ化エチレン樹脂粉末、ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末などの樹脂微粉末を付着してもよい。トナーに対してこれらの樹脂微粉末を添加する割合は、トナー100重量部対して、0.01〜8重量部の範囲から適宜選択でき、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜4重量部である。
【0028】
トナー粒子への前記外添剤の付着はドライブレンドによる混合を行うことが好ましく、混合装置の一例としては、ダブルコーン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等を挙げることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
まず、下記配合の混合物をロール型混練機により30分間混練し、顔料マスターバッチを作製した。
・ポリエステル樹脂 70重量部
(三菱レイヨン社製、Mw25000、Mn5000、Tg(ショルダー)60℃)
・着色剤;シアン顔料 30重量部
(大日精化工業社製、商品名:「ピグメント15:4」)
次いで、下記配合物をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製、商品名:「ヘンシェルミキサー20L」)を使用し、5分間、2800rpmで均一に混合した後、二軸混練押出機(池貝社製、商品名:「PCM−30」)で回転数200rpm、吐出量3.0kg/hrの条件で溶融混練し、混練物を2本ロールで圧延して放置冷却した。
・上記顔料マスターバッチ 11.0重量部
・結着樹脂;ポリエステル樹脂 89.5重量部
(マスターバッチ作製に使用したのと同じもの)
・帯電制御剤;芳香族系化合物 2.0重量部
(保土谷化学工業(株)社製、商品名:「T―8」)
・離型剤;エステルワックス 7.0重量部
(日本油脂社製、商品名:「WEP−8」)
次いで冷却された混練物をハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミル(ホソカワミクロン社製、商品名:「100AFG」)で微粉砕した。
そして、乾式気流分級機(ホソカワミクロン社製、商品名:「100ATP」)で分級して、体積平均粒径7.1μm、円形度0.892の分級トナーを得た。
次に、前記分級トナー100重量部に対し、下記のシリカ及び酸化チタンからなる外添剤を加えて10Lヘンシェルミキサーで回転数2800rpmで5分混合してトナーを得た。
・シリカ 0.2重量部
(クラリアントジャパン社製、平均一次粒子径17.5nm、BET比表面積140m/g)
・酸化チタン 0.5重量
(アエロジル社製、一次粒子径10nm、BET比表面積65±10、処理剤オクチルシラン)
【0031】
さらに、上記シアン顔料をマゼンタ顔料(大日精化工業社製 商品名:「ピグメント57−1」)、イエロー顔料(山陽色素社製、商品名:「Fast Yellow74−16」)及び黒色顔料(三菱化学社製、商品名:「カーボンブラック#40」)に代えて、上記と同様にしてマゼンタトナー、イエロートナー及び黒色トナーを得た。
以上のようにして実施例1の非磁性一成分現像剤を作製した。
【0032】
[実施例2]
実施例1のポリエステル樹脂および離型剤に代えて下記の脂環式オレフィン系樹脂およびを用いた。
・脂環式オレフィン系樹脂:エチレン−ノルボルネン共重合体
(ティコナ社製、商品名:「TOPAS COC」、重量平均分子量(Mw):200,000、数平均分子量(Mn):5,000、Mw/Mn:40)
・離型剤:カルナウバワックス
(加藤洋行社製、商品名:「カルナウバ2号粉末」)
それ以外は実施例1と同様にして実施例2の非磁性一成分現像剤を得た。
【0033】
[実施例3]
実施例1のポリエステル樹脂および離型剤に代えて下記のスチレンアクリルエステル共重合体樹脂およびポリエチレンワックスを用いた。
・スチレンアクリル酸エステル共重合体樹脂
(三井化学社製、商品名:「CPR100」)
・離型剤:ポリエチレンワックス
(ヘキスト社製、商品名:PE−130、融点130℃)
それ以外は実施例1と同様にして実施例3の非磁性一成分現像剤を得た。
【0034】
[実施例4]
実施例1で得られたシアン、マゼンタ、イエロー及び黒色のトナーについて、それぞれ5.0重量部と、平均粒径30μmのフェライトキャリア(パウダーテック社製)95.0重量部とを混合し、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及び黒色の現像剤を得た。
以上のようにして実施例4の非磁性二成分現像剤を作製した。
【0035】
[実施例5]
トナーを実施例2のトナーに変えた以外は実施例4と同様にして、実施例5の非磁性二成分現像剤を作製した。
【0036】
[実施例6]
トナーを実施例3のトナーに変えた以外は実施例4と同様にして、実施例6の非磁性二成分現像剤を作製した。
【0037】
[比較例1〜6]
実施例1〜6で使用した帯電制御剤に代えて下記のサリチル酸系クロム錯体からなる帯電制御剤を用いた。
・帯電制御剤:サリチル酸系クロム錯体
(オリエント化学工業社製、商品名:「BONTRON E−81」)
それ以外は実施例1〜6と同様にして比較例1〜3の非磁性一成分現像剤および比較例4〜6の非磁性二成分現像剤を得た。
【0038】
実施例及び比較例におけるトナー製造の主な条件を表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例及び比較例のトナー及び現像剤について、以下の比較、評価を行った。
【0041】
<一成分現像剤の評価>
実施例1〜3、比較例1〜3の一成分現像剤を、市販の非磁性一成分方式の小型レーザープリンター(プリント速度 A4横:16枚/分)にて、A4サイズコピー用紙(上質紙)に印字率6%にて印字した。
なお、試験環境は25℃/相対湿度65%とした。
<二成分現像剤の評価>
実施例4〜6、比較例4〜6の二成分現像剤を、それぞれ非磁性二成分現像方式の負極性トナー用複写機の現像装置に入れ、A4サイズコピー用紙(上質紙)に印字率6%にて印字した。
なお、試験環境は25℃/相対湿度65%とした。
【0042】
(トナー粒子の帯電性)
2000枚印字後と10万枚印字後の帯電量を測定し、その差を帯電性として評価した。
(2000枚印字後の帯電量)−(10万枚印字後の帯電量)
○:5.0μC/g未満
×:5.0μC/g以上
なお、帯電量はEpping社製、qmメーターにて測定した。
【0043】
次に、実施例及び比較例の一成分現像剤および二成分現像剤を、前記各現像方式のプリンタもしくは複写機で、印字率20%、プリントスピード:一成分現像剤は16枚/分、二成分現像剤は24枚/分として、A4サイズコピー用紙(上質紙)に低現像電位、低転写電位条件(現像電圧:−250V、一次転写電圧:800V)で50000枚までの耐刷試験を実施した。
そして、画像の色調について評価した。
【0044】
(色調)
色調は印字したコピー用紙の黒色以外のカラー印字における色調および発色性を目視で評価した。特に、イエローの発色を重視して評価した。
○:良好、×:くすみ有
【0045】
(画像濃度)
上記10万枚印字後の画像濃度を測定し、評価した。
なお、画像濃度は反射濃度計(マクベス社製、商品名:RD−914)を使用して測定した。
○:1.3以上、実用上問題なし。
×:1.3未満、実用上問題がある。
【0046】
(地汚れ)
上記現像条件におけるコピー用紙の地肌部の汚れについて、転写紙上の地肌部(非画像部)に付着しているトナーの個数を数え、1cm当たり付着個数(個/cm)に換算し、以下の基準で4段階に評価した。
○:0〜100(個/cm
×:101以上
【0047】
実施例及び比較例におけるトナー及び現像剤の比較、評価の結果を表2に示した。
【0048】
【表2】

【0049】
表2に示されるように、実施例1〜6及び比較例1〜6は、色調以外はトナーとして実用上問題なかった。
唯一、色調において、帯電制御剤(製品名:「T−8」)を使用しなかった比較例1〜6に問題があった。これは、帯電制御剤であるサリチル酸系クロム錯体の呈色が着色剤の色に混じり、カラートナーの色調をくすませてしまったためである。この色調がくすんで悪くなる傾向は、淡色系であるイエロートナーにおいて最も顕著であった。逆に、実施例1〜6のトナーの色調が良好であったのは、本発明で使用する帯電制御剤である芳香族系化合物が格別の効果を奏したものである。この芳香族系化合物は、無色でありながら従来の金属錯体系帯電制御剤に匹敵する高くて安定した帯電性能を有している。
【0050】
以上の結果から、本発明によれば、帯電制御剤として前記芳香族系化合物を使用することにより、帯電特性等のトナー性能を損なうことなく、帯電制御剤の色調に影響されず、発色性の良いトナーを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、着色剤、帯電制御剤を少なくとも含有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御剤が、次の(A)及び(B)の条件を満足する芳香族系化合物からなることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
(A)昇温速度10℃/分で常温から250℃まで昇温した際の熱分解性生物として少なくとも二酸化硫黄及びブチルフェノールを発生すること
(B)次の(a)〜(c)のいずれか1つまたはこれらの2つ以上の混合物であること
(a)ターシャリーブチル基が一以上結合した芳香環とスルホニル基が一以上結合した芳香環とを両方有する化学構造の物質
(b)ターシャリーブチル基が一以上結合した芳香環を有する化学構造の物質とスルホニル基が一つ以上結合した芳香環を有する化学構造の物質とからなる混合物
(c)ターシャリーブチル基およびスルホニル基の両方がそれぞれ一以上結合した芳香環を含む化学構造の物質
【請求項2】
前記芳香族系化合物が、4置換の芳香環を含むことを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記芳香族系化合物が、前記ターシャリーブチル基に対してオルト位またはメタ位に2つの水素がある芳香環構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記芳香族系化合物が、保土谷化学工業(株)社製の商品名「T−8」であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記結着樹脂が、スチレンとアクリル酸エステルとの共重合体、環状オレフィンと不飽和脂肪族との共重合体もしくはポリエステルのいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。