説明

静電荷像現像用トナー

【課題】 粘着性の極めて低い表面性が長期間にわたって維持され、その結果、十分な保管性、流動性および画像保存性が得られる静電荷像現像用トナーの提供。
【解決手段】 トナーは、着色剤担持樹脂および着色剤よりなる着色微粒子が、結着樹脂中に分散されてなるトナー粒子よりなるものであって、着色剤担持樹脂は、着色剤に対する親和性が結着樹脂の当該着色剤に対する親和性よりも大きいものであり、着色剤担持樹脂が、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位およびスチレンに由来の構造単位並びに必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構造単位を含む共重合体からなるものであって、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位の共重合比率が7〜30質量%、スチレンに由来の構造単位の共重合比率が55〜70質量%、(メタ)アクリル酸アクリルエステルに由来の構造単位の共重合比率が0〜38質量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成に用いられる静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)における着色剤としては、一般に、有機顔料(以下、単に「顔料」という。)または有機染料(以下、単に「染料」という。)が用いられている。
これらの顔料または染料の中でも、例え優れた色調を有するものであっても、吸湿性が高い、あるいは水溶性を有するものは、得られるトナーの帯電量が湿度によって過度に変動することから、現像および転写特性が不安定なものとなる結果、得られる画像の階調性が湿度環境によって変動されたものとなるなどの現象が生じるため、用いることができない、という問題があった。この現象は、染料を用いた場合により顕著に生じる。
【0003】
このような問題を解決するために、特許文献1および特許文献2には、結着樹脂中に、当該結着樹脂と異なる組成の樹脂からなる樹脂微粒子に染料を含有させた着色樹脂微粒子を分散させる技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、このような技術によるトナーにおいても、微量ながら、染料分子そのものまたは顔料/染料が含有する低分子の不純物がトナー粒子の表面に分子レベルで滲出してしまい、そのため、トナー粒子の表面に粘着性が生じてしまう。
このため、(1)長期間にわたって保管したときに画像欠陥が発生するほどのトナー粒子の凝集体が発生するなど、十分な保管性が得られず、また、(2)トナーの流動性が低いものとなるために転写性が低下してライン画像の中抜けが発生し、さらに、(3)画像形成後における定着画像について耐ドキュメントオフセット性が低いなど、十分な画像保存性が得られない、などの問題がある。
また、トナー粒子の表面に粘着性が生じると、トナーの製造工程においては、篩通過率が大幅に低下して乾燥工程によって得られたトナー粒子を外添剤添加工程へ移行する際の移動速度が大幅に低下するなど、生産性に問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−106561号公報
【特許文献2】特開2007−140259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、粘着性の極めて低い表面性が長期間にわたって維持され、その結果、十分な保管性、流動性および画像保存性が得られる静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電荷像現像用トナーは、着色剤担持樹脂および着色剤よりなる着色微粒子が、結着樹脂中に分散されてなるトナー粒子よりなる静電荷像現像用トナーであって、
前記着色剤担持樹脂は、前記着色剤に対する親和性が前記結着樹脂の当該着色剤に対する親和性よりも大きいものであり、
前記着色剤担持樹脂が、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位、および、スチレンに由来の構造単位、並びに必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構造単位を含む共重合体からなるものであって、
前記(メタ)アクリル酸に由来の構造単位の共重合比率が7〜30質量%、
前記スチレンに由来の構造単位の共重合比率が55〜70質量%、
前記(メタ)アクリル酸アクリルエステルに由来の構造単位の共重合比率が0〜38質量%
であることを特徴とする。
【0008】
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、前記着色剤が油溶性染料であることが好ましく、特に、前記油溶性染料が金属錯体染料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の静電荷像現像用トナーによれば、染料、または、顔料に含まれる反応中間体などの低分子不純物が、着色剤に対する親和性が結着樹脂の当該着色剤に対する親和性よりも大きい着色剤担持樹脂に担持されるために、着色微粒子に存在する状態となり、従って、これらがトナー粒子の表面に滲出することが有効に抑制されて、粘着性の極めて低い表面性が長期間にわたって維持される。
そして、粘着性の極めて低い表面性が長期間にわたって維持されることにより、当該トナーに十分な保管性が得られてトナー粒子の凝集体が発生せず、また十分な流動性が得られて良好な転写性が得られて画像欠陥やライン画像の中抜けなどのない、良好な画質の画像を形成することができ、さらに十分な画像保存性が得られて耐ドキュメントオフセット性が得られ、その結果、良好な画質の画像を長期間にわたって保存することができる。
【0010】
本発明の静電荷像現像用トナーにおいて、染料、または、顔料に含まれる反応中間体などの低分子不純物が着色剤担持樹脂に担持される理由としては、明確でないが、上記の染料、または、顔料に含まれる反応中間体などの低分子不純物は、結着樹脂中に存在するよりも着色剤担持樹脂中に存在する方が安定する傾向があることがわかっており、具体的な理由としては、以下のように推察される。
すなわち、着色剤担持樹脂に多く含有されるメタクリル酸などに由来する酸性基に、上記の染料、または、顔料に含まれる反応中間体などの低分子不純物が水素結合や配位結合のような分子間相互作用の働きによって結合され、その結果として、これらが着色微粒子に担持されると考えられる。
【0011】
また、本発明の静電荷像現像用トナーによれば、着色剤が着色剤担持樹脂に担持された着色微粒子の状態で結着樹脂中に分散されたトナー粒子が構成されているために、着色剤がトナー粒子の表面に露出することが防止されることにより、当該トナー粒子に高い耐光性が得られる。
【0012】
さらに、本発明の静電荷像現像用トナーによれば、十分な流動性が得られることから製造工程において外添剤の添加工程へ移送する際に十分な篩通過性が得られ、その結果、高い生産性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のトナーの一例を模式的に示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0015】
〔静電荷像現像用トナー〕
本発明のトナーは、図1に示されるように、着色剤担持樹脂および着色剤よりなる着色微粒子13が、結着樹脂中に分散されてなるトナー粒子10よりなり、着色剤担持樹脂の着色剤に対する親和性が、結着樹脂の当該着色剤に対する親和性よりも大きいものであり、着色剤担持樹脂が、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位、および、スチレンに由来の構造単位、並びに必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構造単位が、それぞれ、共重合比率が7〜30質量%および55〜70質量%並びに0〜38質量%で含まれる共重合体からなるものである。
【0016】
本発明に係るトナー粒子の着色剤担持樹脂および結着樹脂の着色剤に対する親和性の大小関係について、従来の結着樹脂中に着色微粒子が分散されてなるトナー粒子と比較すると、着色剤担持樹脂の着色剤に対する親和性が結着樹脂の着色剤に対する親和性よりも高くなるメカニズムは、本発明に係る着色剤担持樹脂が、従来の結着樹脂に対して(メタ)アクリル酸に由来の構造単位の共重合比率が高く、かつ、従来の着色剤担持樹脂に対してスチレンに由来の構造単位の共重合比率が高いからであると推察される。すなわち(メタ)アクリル酸に由来の構造単位を極性構造単位とし、スチレンに由来の構造単位を非極性構造単位として、着色剤担持樹脂についてその二極化を徹底したことによって前記大小関係が生じるものと推察される。具体的には、着色剤分子は1分子中に極性基および非極性基の両方を有するため、当該着色剤担持樹脂の分子構造の極性構造単位の部分が着色剤の極性基に高い親和性を示すと共に、着色剤担持樹脂の非極性構造単位の部分が着色剤の非極性基に高い親和性を示す状態が達成されたことにより、着色剤分子の着色剤担持樹脂への高いトラップ性能が得られたものと考えられる。
また、第3の構造単位である(メタ)アクリル酸アクリルエステルに由来の構造単位は必須の成分ではないが、これは中間極性を示すことからトラップ性能の向上に寄与していると考えられる。このため、スチレンおよび(メタ)アクリル酸に加えて第3の成分を有するトナー粒子を得る場合は、第3の成分として、(メタ)アクリル酸アクリルエステルを選択することが好ましい。
以上のような着色剤担持樹脂に係る親和性は、特に、染料、および、顔料に含まれる反応中間体などの低分子不純物に対して著しく発揮される。
【0017】
一方、結着樹脂の着色剤に対する親和性について、これを抑制するためには、例えば結着樹脂として、スチレン−アクリル酸エステル共重合体などのビニル系樹脂を用いる場合、着色剤担持樹脂に対して、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位の共重合比率を抑制する必要があり、スチレンに由来の構造単位の共重合比率は(メタ)アクリル酸に由来の構造単位に対して相対的に決まる部分もあるが70質量%より大きい必要がある。
また、結着樹脂として酸価の高いポリエステル系樹脂など縮合系樹脂を用いる場合は、公知の一般的な樹脂である限り、結着樹脂の着色剤に対する親和性は、着色剤担持樹脂の着色剤に対する親和性よりも低くなる。これは、ポリエステル系樹脂が有する極性残基、具体的にはカルボキシル基、スルホン酸基などは、ポリエステル系樹脂分子の主鎖が、本発明に係る着色剤担持樹脂に比較して、極めて剛直であるので、立体学的に着色剤分子に親和する要素が極めて少ないためである。一方、本発明に係る着色剤担持樹脂分子はビニル系共重合体であるためにその主鎖は炭素−炭素単結合で柔軟にねじれる構造を有し、しかも、(メタ)アクリル酸に由来のカルボキシル基、スチレンに由来のフェニル基も主鎖を回転軸として比較的自由に回転することができ、従って、着色剤分子に対して立体学的に高い対応性を有する。
以上のように、着色剤担持樹脂の着色剤に対する親和性が結着樹脂の当該着色剤に対する親和性よりも大きいことにより、着色剤が結着樹脂に滲出せずに着色剤担持樹脂に担持される状態を得ることができる。
【0018】
本発明のトナーは、トナー粒子が、着色微粒子13が結着樹脂中に分散されてなるコア粒子と、その外周面を被覆する、結着樹脂に対する相溶性の低いシェル樹脂よりなるシェル層とよりなるコア−シェル構造のものとされていてもよい。トナー粒子がコア−シェル構造のものとして構成されることにより、トナー粒子について高い製造安定性および保存安定性が得られ、また、例えば4色のカラートナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)についてシェル層を構成する樹脂を同一のものとすることにより、4色のトナーの帯電性が実質上同等になるため、高い品質のカラー画像を容易に形成することができる。
【0019】
このコア−シェル構造のトナー粒子とは、シェル層がコア粒子を完全に被覆している形態のみならず、コア粒子の一部を被覆しているものであってもよい。また、シェル層を構成するシェル樹脂の一部がコア粒子中にドメインなどを形成しているものであってもよい。さらに、シェル層は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよい。
【0020】
〔着色剤担持樹脂〕
本発明のトナーの着色微粒子13を構成する着色剤担持樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位、および、スチレンに由来の構造単位、並びに必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構造単位が、それぞれ、共重合比率が7〜30質量%および55〜70質量%並びに0〜38質量%で含まれる共重合体からなるものである。
(メタ)アクリル酸に由来の構造単位の共重合比率が7質量%未満である場合は、着色剤担持樹脂の着色剤に対する親和性が結着樹脂の当該着色剤に対する親和性よりも大きなものとすることができず、着色剤を確実に着色微粒子13に担持させることができない。一方、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位の共重合比率が30質量%を超える場合は、着色剤担持樹脂内に水素結合が過剰に存在してトナーの低温定着性に支障をきたす場合がある。
また、スチレンに由来の構造単位の共重合比率が55質量%未満である場合は、着色剤担持樹脂と着色剤分子の非極性基との親和性が低いものとなって本発明の効果が十分に得られない場合がある。一方、スチレンに由来の構造単位の共重合比率が70質量%を超える場合は、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位が相対的に低下して着色剤担持樹脂の極性構造単位と非極性構造単位のバランスが結着樹脂に近いものとなるために、着色剤担持樹脂の着色剤に対する親和性を結着樹脂の当該着色剤に対する親和性よりも大きなものとすることができない。従って、着色剤を確実に着色微粒子13に担持させることができない。
【0021】
〔着色剤〕
本発明のトナーを構成する着色微粒子13に含有される着色剤としては、例えば染料および顔料を挙げることができる。
【0022】
〔染料〕
本発明に係る染料としては、一般に知られている染料を用いることが出来るが、油溶性染料を用いることが好ましく、特に金属錯体染料を用いることが特に好ましい。
また、所望に応じて、金属成分を含有する染料と金属成分を含有しない非金属含有染料とを含む複数種類の染料を組み合わせて使用することもできる。
【0023】
染料の具体例としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー88、同83、同82、同79、同56、同29、同19、同16、同14、同4、同3、同2、同1、C.I.ソルベントレッド84:1、同84、同218、同132、同73、同72、同51、同43、同27、同24、同18、同1、C.I.ソルベントブルー70、同67、同44、同40、同35、同11、同2、同1、C.I.ソルベントブラック43、同70、同34、同29、同27、同22、同7、同3、C.I.ソルベントバイオレット3、C.I.ソルベントグリーン3および同7、「Plast Yellow DY352」、「Plast Red 8375」(以上、有本化学工業社製)などを挙げることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
【0024】
染料として用いられる油溶性染料とは、通常、カルボン酸やスルホン酸などの水溶性基を有さない有機溶剤に可溶で水に不溶である染料をいい、水溶性染料を長鎖の塩基と造塩することにより油溶性を示す染料、例えば酸性染料、直接染料、反応性染料と長鎖アミンとの造塩染料なども含まれる。
【0025】
油溶性染料としては例えば分散染料を用いることができ、その具体例としては、例えば、C.I.ディスパーズイエロー5、同42、同54、同64、同79、同82、同83、同93、同99、同100、同119、同122、同124、同126、同160、同184:1、同186、同198、同199、同204、同224および同237;C.I.ディスパーズオレンジ13、同29、同31:1、同33、同49、同54、同55、同66、同73、同118、同119および同163;C.I.ディスパーズレッド54、同60、同72、同73、同86、同88、同91、同92、同93、同111、同126、同127、同134、同135、同143、同145、同152、同153、同154、同159、同164、同167:1、同177、同181、同204、同206、同207、同221、同239、同240、同258、同277、同278、同283、同311、同323、同343、同348、同356および同362;C.I.ディスパーズバイオレット33;C.I.ディスパーズブルー56、同60、同73、同87、同113、同128、同143、同148、同154、同158、同165、同165:1、同165:2、同176、同183、同185、同197、同198、同201、同214、同224、同225、同257、同266、同267、同287、同354、同358、同365および同368;C.I.ディスパーズグリーン6:1および同9などを挙げることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
【0026】
また、油溶性染料としては、フェノール、ナフトール類、ピラゾロン、ピラゾロトリアゾールなどの環状メチレン化合物、開鎖メチレン化合物などのカプラー、p−ジアミノピリジン類、アゾメチン色素、インドアニリン色素なども好ましく用いることができる。
【0027】
染料として用いられる油溶性染料のうちの金属錯体染料とは、金属イオンに色素原子団が1座以上で配位している化合物をいい、色素原子団以外の配位子を有してもよい。ここに、配位子とは、金属イオンに配位可能な原子団をいい、この原子団は電荷を有していても有していなくてもよい。
トナー粒子10に分散される着色微粒子13を構成する染料が堅牢な金属錯体染料であることにより、形成される画像を保存性の極めて高いものとすることができる。
【0028】
本発明に係る染料として用いられる金属錯体染料の具体例としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0029】
一般式(1):M(Dye)l (A)
【0030】
上記一般式(1)において、Mは金属イオンを表し、Dyeは金属イオンと配位結合される色素を表す。Aは色素以外の配位子を表し、lは1〜3の整数、mは0〜3の整数を表す。mが0であるとき、lは2または3であり、この場合、Dyeで表される色素は、同種のものでも異種のものでもよい。
【0031】
Mで表される金属イオンとしては、周期律表の第I〜VIII族に属する金属、例えば、Al、Co、Cr、Cu、Fe、Mn、Mo、Ni、Sn、Ti、Pt、Pd、ZrおよびZnのイオンが挙げられる。色調および各種の耐久性からNi、Cu、Cr、Co、Zn、Feのイオンであることが好ましい。
金属錯体染料としては、Mで表される金属イオンと2座以上で配位可能な部位を有する芳香族炭化水素環または複素環からなるDyeおよびAとしてキレート剤を有するものが好ましく、特に好ましくは特開平9−277693号公報、特開平10−20559号公報、特開平10−30061号公報に示されるような金属錯体染料である。
【0032】
以上の染料は、所望に応じて、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
〔顔料〕
本発明に係る顔料としては、一般に知られている顔料のうち、着色微粒子13に担持させることができる分散径、例えば30〜200nmの分散径が得られるものであれば特に限定されず、例えば、特開2006−328262号公報に開示される製造方法によって得られたキナクリドン化合物が挙げられる。このキナクリドン化合物は、原料のキナクリドン化合物を23〜30質量%含有するポリリン酸溶液を調製し、これを加水分解処理することによって前記の分散径に対応するキナクリドン化合物結晶を析出させることにより、得られる。市販のキナクリドン化合物としては、C.I.ピグメントレッド122「クロモフタールジェットマゼンタ DMQ」(チバ・ジャパン社製)が挙げられる。このキナクリドン化合物は、数平均1次粒径が50〜100nmであって球状または立方体状の形状を有する。
顔料には、通常、反応中間体などの低分子不純物が不可避的に含有されており、例えばキナクリドン化合物には、反応中間体である2,5−ジアニリノテレフタル酸が低分子不純物として含有されている。
キナクリドン化合物は、通常の結晶の大きさのもの、すなわち分散径が200nmよりも大きいものを用いる場合は、当該結晶を着色微粒子中に内包させにくいが、当該キナクリドン化合物中における反応中間体の含有量が多くないためにこれがトナー粒子10の表面へ滲出したとしても実用上問題になるほどの流動性の低下は生じないが、上記の微細な結晶のものを用いる場合に、この微細な結晶を製造するためには反応中間体を多く残存させることとなる。このために、そのまま用いるとその表面に粘着性を有する流動性の低いトナー粒子が形成されてしまうところ、本発明に係るトナー粒子10の構成とすることにより、着色剤として微細な結晶のキナクリドン化合物を用いた場合にも、良好な流動性を示す表面状態が得られる。
【0034】
以上のような着色剤の含有量は、当該着色剤が染料である場合は、着色微粒子13において例えば20〜80質量%であることが好ましく、特に好ましくは40〜65質量%である。また顔料である場合は、着色微粒子13において例えば15〜65質量%であることが好ましく、特に好ましくは20〜60質量%である。
【0035】
〔結着樹脂〕
トナーの結着樹脂としては、公知の種々のものを用いることができる。例えば、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体や、ポリエステル、ポリエステルポリオール、ウレタン変性ポリエステル、ウレア変性ポリエステルなどのポリエステル樹脂が挙げられ、特に好ましいものはスチレン−ブチルアクリレート共重合体である。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
結着樹脂としてスチレン−ブチルアクリレート共重合体を用いる場合、スチレンとブチルアクリレートの好ましい共重合比は、耐熱保管性の観点から、質量基準で65:35〜85:15とされる。
結着樹脂としてスチレン−ブチルアクリレート共重合体を用いる場合は、当該スチレン−ブチルアクリレート共重合体が(メタ)アクリル酸も共重合した3元共重合体であってもよいが、この場合、当該(メタ)アクリル酸の共重合比率が6.5質量%以下とされたものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸の共重合比率が6.5質量%より大きい共重合体を結着樹脂として用いたトナー粒子においては、着色微粒子13に着色剤を担持させにくい傾向にある。これは、当該共重合体の極性が着色微粒子13を構成する着色剤担持樹脂の極性に近いものとなるためと考えられる。
【0037】
結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合は、その酸価が40mgKOH/g、水酸基価が60mgKOH/g以下であるものを用いることが好ましい。この酸価、水酸基価は定法により測定される値である。
【0038】
〔離型剤〕
本発明に係るトナー粒子10中には、オフセット現象の抑止に寄与する離型剤が含有されていてもよい。離型剤としては、公知の種々のものを使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレンなどの低分子量オレフィン系ワックス、これら低分子量オレフィン系ワックスの変性物、カルナウバワックスやライスワックスなどの天然ワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、脂肪酸ビスアミドなどのアミド系ワックスなどを挙げることができる。
【0039】
トナー粒子10を構成する好適な離型剤として、下記一般式(2)で示される結晶性のエステル化合物(以下、「特定のエステル化合物」という。)からなるものを挙げることができる。
一般式(2):R1 −(OCO−R2 n
(式中、R1 およびR2 は、それぞれ、置換基を有していてもよい炭素数が1〜40の炭化水素基を示し、nは1〜4の整数である。)
特定のエステル化合物を示す一般式(2)において、R1 およびR2 は、それぞれ、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。炭化水素基R1 の炭素数は1〜40とされ、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5とされる。炭化水素基R2 の炭素数は1〜40とされ、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26とされる。また、一般式(2)において、nは1〜4の整数とされ、好ましくは2〜4、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4とされる。特定のエステル化合物は、アルコールとカルボン酸との脱水縮合反応により好適に合成することができる。
【0040】
トナー粒子10中における離型剤の含有割合としては、通常1〜30質量%とされ、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%とされる。
【0041】
〔帯電制御剤〕
また、本発明に係るトナー粒子10中には、荷電制御剤が含有されていてもよい。荷電制御剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば、「ボントロンS−22」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンS−34」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンE−81」(オリエント化学工業社製)、「ボントロンE−84」(オリエント化学工業社製)、「スピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)などの金属錯体、チオインジゴ系顔料、「ボントロンE−89」(オリエント化学工業社製)などのカリックスアレーン化合物、「LR147」(日本カーリット社製)などのホウ素化合物などを挙げることができる。
トナー粒子10中における荷電制御剤の含有割合としては、通常0.1〜10質量%とされ、好ましくは0.5〜5質量%とされる。
【0042】
〔トナーの製造方法〕
本発明のトナーを製造する方法としては、着色微粒子13および結着樹脂などの構成成分を加熱溶融させ混練、冷却、粉砕、分級して製造する粉砕法、結着樹脂を得るための重合性単量体、油溶性重合開始剤および着色微粒子13などを水系媒体中で乳化分散後、加熱して重合させる懸濁重合法、結着樹脂を得るための重合性単量体および着色微粒子13などを水系媒体中で乳化分散させ、これに水溶性重合開始剤を添加し加熱して重合させる乳化重合法、乳化重合法により製造した結着樹脂よりなる微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう。)および着色微粒子13などを水系媒体中で分散後、凝集剤を添加し加熱して微粒子を凝集させる乳化重合凝集法などを挙げることができる。
本発明のトナーを製造する方法として懸濁重合法、乳化重合法を用いる場合、着色微粒子13を結着樹脂中に分散させるために、着色微粒子13を構成する染料や着色剤担持樹脂が有機溶剤などに溶解しないものとする必要がある。
本発明のトナーを製造する方法としては、トナー粒子10中に着色微粒子13の領域と結着樹脂微粒子に由来の領域とを明瞭に残存させる観点から、乳化重合凝集法を用いることが好ましい。
【0043】
ここで、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0044】
本発明のトナーを製造するための方法として、乳化重合凝集法を用いる場合に形成させる結着樹脂微粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の構成とすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した第1樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する方法を採用することができる。
【0045】
本発明のトナーを製造するための方法として、乳化重合凝集法を用いる場合の一例を具体的に示すと、
(1)着色剤および着色剤担持樹脂を含有する着色微粒子13を得る着色微粒子形成工程。
(2)必要に応じて離型剤、荷電制御剤などを含有した結着樹脂微粒子を得るための結着樹脂微粒子重合工程。
(3)結着樹脂微粒子と着色微粒子13とを水系媒体中で塩析、凝集、融着させてトナー粒子10を形成する塩析、凝集、融着工程。
(4)トナー粒子10の分散系から(水系媒体)トナー粒子10を濾別し、当該トナー粒子10から界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程。
(5)洗浄処理されたトナー粒子10を乾燥する乾燥工程。
から構成され、必要に応じて、
(6)乾燥処理されたトナー粒子10に外添剤を添加する外添剤添加工程。
を加えることができる。
【0046】
〔着色微粒子の形成方法〕
着色微粒子形成工程において、着色微粒子13は、例えば、〔1〕着色剤担持樹脂と着色剤とを酢酸エチル、トルエンなどの水非混和性有機溶剤中に溶解または分散させた着色微粒子形成用溶液を調製し、この着色微粒子形成用溶液を水系媒体中で乳化分散させ、その後、有機溶剤を除去することにより、得ることができる。また例えば、〔2〕乳化重合によって着色剤担持樹脂を形成する過程において、好ましくは重合転化率が20〜80%の時点において、着色微粒子の水性分散液を添加し、着色剤担持樹脂よりなる微粒子中に着色剤を、当該着色剤が染料である場合は含浸、当該着色剤が顔料である場合は内包させることにより、得ることもできる。
【0047】
この着色微粒子形成工程において得られる着色微粒子13の平均粒子径は、体積基準のメジアン径で例えば10〜300nmの範囲にあることが好ましい。
なお、体積基準のメジアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
【0048】
〔界面活性剤〕
この着色微粒子形成工程において、着色微粒子13を乳化重合法によって製造する場合に、着色剤担持樹脂を得るために使用する界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩;オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなどの脂肪酸塩などのイオン性界面活性剤を好適なものとして例示することができる。
また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレノキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。
以上の界面活性剤は、所望に応じて、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
結着樹脂微粒子重合工程において界面活性剤を使用する場合は、例えば上述の着色微粒子13を得るために使用することのできる界面活性剤と同じものを挙げることができる。
【0050】
〔重合開始剤〕
結着樹脂微粒子重合工程において使用される重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤であれば適宜のものを使用することができる。重合開始剤の具体例としては、例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなど)、アゾ系化合物(4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸およびその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩など)、パーオキシド化合物などが挙げられる。
【0051】
〔連鎖移動剤〕
結着樹脂微粒子重合工程においては、結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えば2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタンおよびスチレンダイマーなどを挙げることができる。
【0052】
この結着樹脂微粒子重合工程において得られる結着樹脂微粒子の平均粒子径は、体積基準のメジアン径で例えば30〜500nmの範囲にあることが好ましい。
なお、体積基準のメジアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
【0053】
〔凝集剤〕
塩析、凝集、融着工程において使用する凝集剤としては、例えばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を挙げることができる。凝集剤を構成するアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが挙げられ、凝集剤を構成するアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。これらのうち、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の対イオン(塩を構成する陰イオン)としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
【0054】
〔トナー粒子の粒径〕
本発明のトナー粒子10の粒径は、例えば体積基準のメディアン径で3〜9μmであることが好ましく、更に好ましくは3〜8μmとされる。この粒径は、トナーの製造方法が例えば乳化重合凝集法などである場合には、使用する凝集剤(塩析剤)の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
体積基準のメディアン径が上記の範囲にあることにより、定着工程において飛散して加熱部材に付着し、オフセット現象を発生させる付着力の大きいトナー粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0055】
トナー粒子10の体積基準のメディアン径は「コールターマルチサイザー」(ベックマン・コールター社製)に、粒度分布を出力するインターフェース(日科機製)、パーソナルコンピューターを接続した測定装置を用いて測定・算出したものである。コールターマルチサイザーにおけるアパーチャーとしては100μmのものを用いて、2μm以上(例えば2〜40μm)のトナーの体積分布を測定して粒度分布および平均粒子径を算出した。
【0056】
〔外添剤〕
上記のトナー粒子10は、そのままトナーとして用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー粒子10に、いわゆる流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加した状態で使用してもよい。
【0057】
流動化剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化鉛、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、フェライト、ベンガラ、フッ化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ジルコニウム、マグネタイト、ステアリン酸マグネシウムなどよりなる無機微粒子などが挙げられる。
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、トナー粒子10の表面への分散性向上、環境安定性向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
【0058】
クリーニング助剤としては、例えば、ポリスチレン微粒子、ポリメチルメタクリレート微粒子などが挙げられる。
【0059】
これらの流動化剤、クリ−ニング助剤の添加量は、その合計の添加量がトナー中に好ましくは0.1〜20質量%とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0060】
〔現像剤〕
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。本発明のトナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。
キャリアの体積基準のメディアン径としては15〜100μmであることが好ましく、更に好ましくは20〜80μmとされる。キャリアの体積基準のメディアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0061】
好ましいキャリアとしては、磁性粒子の表面が樹脂により被覆されている樹脂被覆キャリア、樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを挙げることができる。樹脂被覆キャリアを構成する樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂、フッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0062】
〔画像形成方法〕
以上のトナーは、一般的な電子写真方式の画像形成方法に用いることができる。
【0063】
このようなトナーによれば、染料、または、顔料に含まれる反応中間体などの低分子不純物が、特定の組成を有する着色剤担持樹脂に担持されて着色微粒子13として存在するために、これらがトナー粒子10の表面に滲出することが有効に抑制され、当該トナーに十分な保管性が得られてトナー粒子10の凝集体が発生せず、また十分な流動性が得られて良好な転写性が得られて画像欠陥やライン画像の中抜けなどのない、良好な画質の画像を形成することができ、さらに十分な画像保存性が得られて耐ドキュメントオフセット性が得られ、その結果、良好な画質の画像を長期間にわたって保存することができる。
【0064】
また、このトナーによれば、着色剤が着色剤担持樹脂に担持された着色微粒子13の状態で結着樹脂中に分散されたトナー粒子10が構成されているために、着色剤がトナー粒子10の表面に露出することが防止されることにより、当該トナー粒子10に高い耐光性が得られる。
【0065】
さらに、このトナーによれば、十分な流動性が得られることから製造工程において外添剤の添加工程へ移送する際に十分な篩通過性が得られ、その結果、高い生産性が得られる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
〔着色微粒子形成用溶液の製造例1〕
アクリル酸(AA)/スチレン(St)/ブチルアクリレート(BA)が6/65/29の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−1)13.5g、顔料(C.I.Pigment RED 122「クロモフタールジェットマゼンタ DMQ」(チバ・ジャパン社製、数平均一次粒径=54nm))16.0gおよび酢酸エチル123.5gをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌することにより、着色剤分散樹脂溶液〔1〕を調製した。
次いで、この着色剤分散樹脂溶液〔1〕に、「アクアロンKH−05」(第一工業製薬社製)8.0gが水(230g)に溶解されてなる溶液238gを滴下して撹拌した後、「クリアミックスWモーションCLM−0.8W」(エム・テクニック社製)を用いて、300秒間乳化し、その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、着色剤(顔料)を担持する着色微粒子〔1〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔1〕を調製した。
得られた着色微粒子〔1〕の体積基準のメディアン径は264nmであった。なお、体積基準のメディアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定した。以下において同じである。
【0068】
[着色微粒子形成用溶液の製造例2]
アクリル酸(AA)/スチレン(St)/ブチルアクリレート(BA)が31/65/4の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−2)13.5g、下記式(A−1)で表される染料(A−1)16.0gおよび酢酸エチル123.5gをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌して染料を完全に溶解させることにより、着色剤分散樹脂溶液〔2〕を調製した。
次いで、この着色剤分散樹脂溶液〔2〕に、「アクアロンKH−05」(第一工業製薬社製)8.0gが水(230g)に溶解されてなる溶液238gを滴下して撹拌した後、「クリアミックスWモーションCLM−0.8W」(エム・テクニック社製)を用いて、300秒間乳化し、その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔2〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔2〕を調製した。
得られた着色微粒子〔2〕の体積基準のメディアン径は34nmであった。
【0069】
【化1】

【0070】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例3〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてアクリル酸(AA)/スチレン(St)/ブチルアクリレート(BA)が15/50/35の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−3)13.5g、下記式(A−2)で表される染料(A−2)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔3〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔3〕を調製した。得られた着色微粒子〔3〕の体積基準のメディアン径は37nmであった。
【0071】
【化2】

【0072】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例4〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてメタクリル酸(MAA)/スチレン(St)/2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA)が15/72/13の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−4)13.5g、下記式(A−3)に示される染料(A−3)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔4〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔4〕を調製した。得られた着色微粒子〔4〕の体積基準のメディアン径は43nmであった。
【0073】
【化3】

【0074】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例5〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてメタクリル酸(MAA)/スチレン(St)/2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA)が31/50/19の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−5)13.5g、染料(A−3)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔5〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔5〕を調製した。得られた着色微粒子〔5〕の体積基準のメディアン径は39nmであった。
【0075】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例6〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてメタクリル酸(MAA)/スチレン(St)/ブチルアクリレート(BA)が6/50/44の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−6)13.5g、染料(A−1)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔6〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔6〕を調製した。得られた着色微粒子〔6〕の体積基準のメディアン径は41nmであった。
【0076】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例7;特開2007−140259の実施例3の態様〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてスチレン(St)/アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)/ステアリルメタクリレート(SMA)/メタクリル酸(MAA)が50/15/20/15の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−7)13.5g、染料(A−1)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔7〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔7〕を調製した。得られた着色微粒子〔7〕の体積基準のメディアン径は48nmであった。
【0077】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例8;特開2006−106561の実施例1の態様〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてスチレン(St)/アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)/ステアリルメタクリレート(SMA)が50/30/20の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−8)13.5g、染料(A−3)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔8〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔8〕を調製した。得られた着色微粒子〔8〕の体積平均粒子径は30nmであった。なお、体積平均粒子径は「ゼータサイザー」(マルバーン社製)を用いて測定した。
【0078】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例9〕
着色微粒子形成用溶液の製造例1において、着色剤担持樹脂としてアクリル酸(AA)/スチレン(St)/ブチルアクリレート(BA)が9/68/23の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−9)を用いたことの他は同様にして、着色剤(顔料)を担持する着色微粒子〔9〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔9〕を調製した。得られた着色微粒子〔9〕の体積基準のメディアン径は239nmであった。
【0079】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例10〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてメタクリル酸(MAA)/スチレン(St)/ブチルアクリレート(BA)が9/68/23の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−10)13.5g、染料(A−1)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔10〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔10〕を調製した。得られた着色微粒子〔10〕の体積基準のメディアン径は34nmであった。
【0080】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例11〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてメタクリル酸(MAA)/スチレン(St)/ブチルアクリレート(BA)が25/57/18の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−11)13.5g、染料(A−2)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔11〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔11〕を調製した。得られた着色微粒子〔11〕の体積基準のメディアン径は42nmであった。
【0081】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例12〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてメタクリル酸(MAA)/スチレン(St)/ブチルアクリレート(BA)が25/68/7の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−12)13.5g、染料(A−3)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔12〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔12〕を調製した。得られた着色微粒子〔12〕の体積基準のメディアン径は48nmであった。
【0082】
〔着色微粒子形成用溶液の調製例13〕
着色微粒子形成用溶液の製造例2において、着色剤分散樹脂溶液の原料としてメタクリル酸(MAA)/スチレン(St)/ブチルアクリレート(BA)が12/62/26の質量比で共重合された着色剤担持樹脂(P−13)13.5g、染料(A−3)16.0gおよび酢酸エチル123.5gを用いたことの他は同様にして、着色剤(染料)を担持する着色微粒子〔13〕が分散されてなる着色微粒子形成用溶液〔13〕を調製した。得られた着色微粒子〔13〕の体積基準のメディアン径は36nmであった。
【0083】
〔結着樹脂微粒子分散液の調製例1〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けたセパラブルフラスコに、アニオン系活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)7.08gをイオン交換水2760gに溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
一方、スチレン115.1g、n−ブチルアクリレート42.0gおよびメタクリル酸10.9g、並びにペンタエリスリトールテトラストアレート(離型剤)72.0g混合し、80℃に加温して溶解させることにより、第1の単量体溶液を調製し、この第1の単量体溶液を循環経路を有する機械式分散機により混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子を含有する乳化分散液を調製した。
次いで、重合開始剤(過硫酸カリウム)0.84gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し、80℃において3時間加熱・撹拌することによって樹脂粒子を形成させ、さらに、重合開始剤(過硫酸カリウム)8.00gおよび水溶性の連鎖移動剤(2−クロロエタノール)10.0gをイオン交換水240gに溶解させた溶液を添加し、15分後、80℃でスチレン383.6g、n−ブチルアクリレート140.0g、メタクリル酸36.4gの混合液(第2の単量体溶液)を120分かけて滴下し、滴下終了後60分間加熱・撹拌させた後、40℃まで冷却して、結着樹脂微粒子〔B1〕が分散されてなる結着樹脂微粒子分散液〔B1〕を得た。結着樹脂微粒子〔B1〕の体積基準のメディアン径は112nmであった。
【0084】
〔結着樹脂微粒子分散液の調製例2〕
結着樹脂微粒子分散液の調製例1において、第1の単量体溶液、第2の単量体溶液ともにメタクリル酸を用いなかったことの他は同様にして、結着樹脂微粒子〔B2〕が分散されてなる結着樹脂微粒子分散液〔B2〕を得た。結着樹脂微粒子〔B2〕の体積基準のメディアン径は120nmであった。
【0085】
〔結着樹脂微粒子分散液の調製例3〕
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに、下記の多価カルボン酸モノマーおよび多価アルコールモノマーを合計3質量部仕込み、1時間かけて反応系を190℃まで上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、多価カルボン酸モノマーの全量に対し0.003質量%の触媒Ti(OBu)4 を投入した。
(多価カルボン酸モノマー)
テレフタル酸: 12.50g
フマル酸: 13.90g
イソフタル酸: 0.55g
5−スルホイソフタル酸: 0.27g
トリメリット酸: 5.20g
(多価アルコールモノマー)
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンプロピレンオキサイド2モル付加物:76g
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンエチレンオキサイド2モル付加物: 24g
生成する水を留去しながら同温度から6時間かけて240℃まで温度を上昇させ、240℃でさらに6時間脱水縮合反応を継続して重合を行い、非結晶性ポリエステル樹脂〔B3〕を得た。得られた非結晶性ポリエステル樹脂〔B3〕の酸価は15.4mgKOH/gであった。
次いで、得られた非結晶性ポリエステル樹脂〔B3〕を、溶融状態のまま「キャビトロンCD1010」(ユーロテック社製)に毎分100gの速度で移送した。一方、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を調製し、別途準備した水性媒体タンクに投入した。この希アンモニア水を熱交換器で160℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記溶融状態の非結晶性ポリエステル樹脂〔B3〕と同時に「キャビトロンCD1010」に移送した。回転子の回転速度60Hz、圧力が5kg/cm2 の条件で「キャビトロンCD1010」を運転し、非結晶性ポリエステル樹脂〔B3〕からなる結着樹脂微粒子〔B3〕が分散されてなる結着樹脂微粒子分散液〔B3〕を得た。結着樹脂微粒子〔B3〕の体積基準のメディアン径は260nmであった。
【0086】
〔トナーの製造例1〕
結着樹脂微粒子分散液〔B1〕1250g、イオン交換水2000gおよび着色微粒子形成用溶液〔1〕250gを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を付けた5Lの四つ口フラスコに入れて撹拌し、30℃に調整した後、この溶液に5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10.0に調整した。次いで、塩化マグネシウム6水和物52.6gをイオン交換水72gに溶解した水溶液を撹拌下、30℃にて10分間で添加した。3分間放置し、その後、昇温を開始し、液温度90℃まで昇温速度10℃/分で6分間昇温した。その状態において粒径を「コールターカウンターTA−II」(コールター・ベックマン社製)によって測定し、体積基準のメディアン径が6.5μmになった時点で塩化ナトリウム115gをイオン交換水700gに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに継続して液温度90℃±2℃にて、6時間加熱・撹拌し、融着させた。その後、6℃/min降温速度で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、撹拌を停止した。
生成した会合粒子を固液分離し、15Lのイオン交換水による洗浄を4回繰り返し行い、その後、40℃の温風で乾燥して、比較用のトナー粒子〔1〕よりなる比較用のトナー〔1〕を得た。
このトナー〔1〕に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1質量%となる割合で添加すると共に、疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)を1質量%となる割合で添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により混合した。その後、45μmの目開きのフルイを用いて粗大粒子を除去することにより、外添剤添加処理を施した。なお、これらのトナー粒子について、疎水性シリカおよび疎水性酸化チタンの添加によっては、その形状および粒径は変化しなかった。
【0087】
〔比較用のトナーの作製例2〜6、および本発明用のトナーの作製例1〜5〕
トナーの製造例1において、着色微粒子形成用溶液および結着樹脂微粒子分散液を、表1の処方に従ったものとしたことの他は同様にして、比較用のトナー〔2〕〜〔6〕、および本発明用のトナー〔1〕〜〔5〕を得た。
【0088】
【表1】

【0089】
〔比較用現像剤の作製例1〜6、および本発明用の現像剤の作製例1〜5〕
この比較用のトナー〔1〕〜〔6〕、および本発明用のトナー〔1〕〜〔5〕の各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積基準のメディアン径60μmのフェライトキャリアを、前記現像剤用トナーの濃度が6質量%になるよう混合し、比較用現像剤〔1〕〜〔6〕、および本発明用の現像剤〔1〕〜〔5〕を作製した。
【0090】
〔実施例1〜5、比較例1〜6〕
外添剤処理前のトナー〔1〕〜〔5〕および比較用のトナー〔1〕〜〔6〕、外添剤処理後のトナー〔1〕〜〔5〕および比較用のトナー〔1〕〜〔6〕、並びに、現像剤〔1〕〜〔5〕および比較用現像剤〔1〕〜〔6〕を用いて、下記(1)〜(4)の評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
(1)篩通過性(流動性)
48メッシュのステンレスメッシュを張った口径220mmの試験篩の上に、外添剤処理前のトナー20gを載せ、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)を振動強度4に設定し、試験篩に振動を付与し、振動の付与を開始してから60秒後の篩通過率を測定し、これによって篩通過性を評価した。なお、この篩通過率が50質量%以上である場合に、乾燥工程によって得られたトナー母体粒子の外添剤添加工程へ移行において生産性に支障をきたさないと判断される。
【0092】
(2)保管性
外添剤処理後のトナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り蓋を閉めて、「タップデンサー KYT−2000」(セイシン企業社製)を用いて室温で600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量の比率(質量%)を測定し、下記式(3)に基づいてトナー凝集率を算出し、これによって評価した。なお、このトナー凝集率が20質量%以下である場合に、実用上問題ないと判断される。
式(3):トナー凝集率(%)={篩上の残存トナー質量(g)/0.5(g)}×100
【0093】
(3)転写性(流動性)
電子写真方式の複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を使用し、温度25℃、相対湿度55%の常温常湿環境下で、転写紙「PODグロスコート(A4、80g/m2 )」(王子製紙社製)を用い、現像剤を用いて3ポイントのラインで4mm間隔の方眼を全面に形成したライン画像を、10,000枚連続印刷したのちに、3ポイントのライン上に中抜け(転写抜け)による画像欠陥がないか肉眼で注視することにより観察し、以下の評価基準に従って評価した。なお、この結果が優良(◎)、良好(○)、実用可(△)である場合に、実用上問題ないと判断される。
−評価基準−
優良(◎):画像欠陥も、画像欠陥とまでは言えないが若干濃度が薄い部分も、認められない。
良好(○):画像欠陥は1箇所もないが、画像欠陥とまでは言えないが若干濃度の薄い部分が1〜3箇所認められる。
実用可(△):画像欠陥は1箇所もないが、画像欠陥とまでは言えないが若干濃度の薄い部分が4箇所以上認められる。
不良(×):画像欠陥が1箇所以上認められる。
【0094】
(4)耐ドキュメントオフセット性(画像保存性)
電子写真方式の複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を使用し、温度25℃、相対湿度55%の常温常湿環境下で、高光沢転写紙「PODスーパーグロスコート(A4、80g/m2 )」(王子製紙社製)の片面上に、現像剤を用いて6.0ポイントのアルファベットを36行印字し、このプリント物のアルファベット画像に接触するよう、印字していない高光沢転写紙(白紙)を重ね合わせ、9.6kPa(200g/cm2 )相当の圧力が加わる状態におもりを載せ、24時間後、プリント物と白紙を剥離する実験を行い、下記の評価基準に従って評価した。なお、この結果が優良(◎)、良好(○)、実用可(△)である場合に、実用上問題ないと判断される。
−評価基準−
優良(◎):剥離時に軽微な貼付きもなく、また、白紙への画像移行やプリント物における画像欠損もない。
良好(○):剥離時に、かすかにパリッという音がして軽微な貼付きは認められるものの、白紙への画像移行やプリント物における画像欠損はない。
実用可(△):アルファベット画像上に若干のグロスむらの発生は認められるが画像欠損はない。
不良(×):白紙への画像移行が認められる、もしくは、アルファベット画像上に白紙のコート層の一部が移行した白点状欠損が認められる。
【0095】
【表2】

【符号の説明】
【0096】
10 トナー粒子
13 着色微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤担持樹脂および着色剤よりなる着色微粒子が、結着樹脂中に分散されてなるトナー粒子よりなる静電荷像現像用トナーであって、
前記着色剤担持樹脂は、前記着色剤に対する親和性が前記結着樹脂の当該着色剤に対する親和性よりも大きいものであり、
前記着色剤担持樹脂が、(メタ)アクリル酸に由来の構造単位、および、スチレンに由来の構造単位、並びに必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来の構造単位を含む共重合体からなるものであって、
前記(メタ)アクリル酸に由来の構造単位の共重合比率が7〜30質量%、
前記スチレンに由来の構造単位の共重合比率が55〜70質量%、
前記(メタ)アクリル酸アクリルエステルに由来の構造単位の共重合比率が0〜38質量%
であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記着色剤が油溶性染料であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記油溶性染料が金属錯体染料であることを特徴とする請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。


【図1】
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【公開番号】特開2011−118260(P2011−118260A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277319(P2009−277319)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】