説明

静電荷像現像用トナー

【課題】トナー中における顔料の分散性が良好で、顔料が本来有している彩度、色相などの色特性をトナー中において再現することができ、色濁りが無く、彩度の高いカラー画像を形成することができるカラートナーを提供する。
【解決手段】少なくとも結着樹脂、顔料、及び顔料分散剤を含有するトナーであって、該顔料分散剤が特定のジスアゾ化合物であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーに関し、更に詳しくは電子写真方式の画像形成装置に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)を用いた電子写真方式による画像形成方法においては、従来からのモノクロ画像に加え、近年、フルカラー画像を形成する機会が増加している。電子写真方式によるフルカラー画像形成方法においては、印刷用の版を必要としないことから必要枚数分の印刷物をオンデマンドに作製できるので、軽印刷分野において広く利用されている。
【0003】
特にカタログや広告などのフルカラー画像を形成する場合においては、原物の色相をより忠実に再現することが求められている。そして、このようなフルカラー画像において人物などが含まれる場合においては、その人物の肌色の色再現性が画像全体の印象を大きく左右する。
【0004】
一般に、電子写真方式によるフルカラー画像形成方法においては、イエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナーの3色のカラートナーの組み合わせにより色再現を行うが、例えば赤色を再現する場合においては、イエロートナーのトナー画像とマゼンタトナーのトナー画像とを重ね合わせるために、彩度や明度が低下することにより所望の赤色を再現することが難しいという問題がある。
【0005】
また、近年では、コンピューターグラフィックス等による画像をディスプレイ上で作成し、その画像を出力する機会が増加している。しかしながら、電子写真方式によるフルカラー画像形成方法により形成することができるフルカラー画像の色再現範囲は、ディスプレイ上に表示することができるフルカラー画像の色再現範囲よりもはるかに狭いため、ディスプレイ上に表示されるフルカラー画像をそのままの色相で紙などの転写材上に再現することが難しいという問題がある。
【0006】
電子写真プロセスにおける画像の画質は、濃度、彩度、階調性、解像性、光沢度等種々の観点から評価されることとなるが、これらは紙上に定着されたトナー像に入射した光が、どのような反射光となって観察者の目に入るかによって評価される。したがって高画質の画像を得るためには、トナーの光学的特性が重要であり、トナーを構成する結着樹脂や着色剤の吸収率や反射率、着色剤の量や着色剤の空間的な配置(分散性)を考慮してトナーの設計を行う必要がある。
【0007】
画像の濃度、彩度を向上するためにはトナー中の着色剤濃度を上げることが有効である。しかし、トナー中の着色剤分散が不十分で、着色剤が凝集している状態では濃度、彩度の向上には寄与しないため、着色剤の高分散性が重要となる。
【0008】
また、良好な画像を形成するためには、トナー中に着色剤が高分散されていることだけではなく、電子写真プロセスにおいてトナーが良好な現像特性、転写特性等を有することが同時に必要とされる。
【0009】
樹脂中に顔料を高分散させる目的で、顔料の製造方法や、顔料分散剤を工夫する検討が成されてきている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、樹脂中に顔料を高分散させることができる顔料分散剤であっても、トナーに使用した場合には、トナーの電気特性を変化させ、現像特性、転写特性等が悪化し、結果良好な画像形成が行えない場合があった。特に、顔料分散剤或いはその合成過程の中間生成物が構造中にアミノ基やその塩を含む場合には、顔料分散剤や製造過程の不純物が正帯電性の電荷制御剤の如く機能し、負帯電性のトナーの帯電性能等を悪化させることが懸念された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−20645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、トナー中における顔料の分散性が良好で、顔料が本来有している彩度、色相などの色特性をトナー中において再現することができ、色濁りが無く、彩度の高いカラー画像を形成することができるトナーを提供することを目的としている。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、トナー中に顔料を高分散させることによって、帯電特性、帯電安定性に優れ、高画質な画像形成を可能とするトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は下記の構成とすることによって解決される。
1.
少なくとも結着樹脂、顔料、及び顔料分散剤を含有するトナーであって、該顔料分散剤が下記の一般式(1)或いは一般式(3)のジスアゾ化合物であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0014】
【化1】

【0015】
(但し、一般式(1)中のXはスルホン酸基を1個以上有し、かつ他の置換基を有していてもよい芳香族環または芳香族複素環残基であり、Yはスルホン酸基以外の置換基を有していてもよい芳香族環または芳香族複素環残基であり、Zは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基または下記一般式(2)で表される基である。)
【0016】
【化2】

【0017】
(但し、一般式(2)中のRは各々同じでも異なっていてもよく、水素原子または置換基を表し、LはO、CH、HNCO、S、N=NまたはCH=CHを表す。)
【0018】
【化3】

【0019】
(但し、一般式(3)中のXはスルホン酸基を1個以上有しかつ置換基を有していてもよい芳香族環基または複素環基であり、Yはスルホン酸基以外の置換基を有していてもよい芳香族環基または複素環基であり、Zはスルホン酸基以外の置換基を有していてもよい芳香族環基または複素環基である。)
2.
前記一般式(1)において、Xが、スルファニル酸のカップリング残基であり、Zが、2,5−ジメチルフェニレンジアミンの縮合残基であり、Yが、3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミドのカップリング残基であることを特徴とする前記1に記載の静電荷像現像用トナー。
3.
前記一般式(3)において、Yが、4−スルホフェニル基であり、Xが、2−クロロ−5−トリフロオロメチルフェニル基、Zが、スルホン酸基以外の置換基を有してもよいフェニル基またはビフェニル基であることを特徴とする前記1に記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記の構成とすることにより、トナー中における顔料の分散性が向上し、分子レベルに近い状態まで微粒化されることによって、トナーとした時に、彩度、色相など顔料が本来持っている色を発現することが可能になり、色濁りが無く、彩度の高いカラー画像を得ることができる。また、顔料の分散性が高くなることにより、トナーとした時に帯電特性、帯電安定性に優れ、従って現像特性に優れ、結果として高画質の画像を安定して得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に発明を実施するため最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明のトナーは、前記一般式(1)、若しくは一般式(3)で表される顔料分散剤を含有させることによって、顔料が粒径の小さな微粒子としてトナー中に均一に分散されるため色むらや色濁りおよび明度の低下が小さく顔料本来の持つクリアな色相が再現されるものと考えられる。これは一般に顔料の粒径が小さいと吸収波長域がシャープになり、色濁りが無く、特に2次色においても色濁りが発生しにくいことによるものである。
【0023】
また、顔料の分散性が優れることにより、トナー中において、顔料の凝集粒子が存在せず顔料がトナー粒子中に均一に分散されることによって、トナー粒子表面の組成も均一となるため、トナー粒子個々の帯電量のばらつきが小さく帯電量分布がシャープになり、現像特性が良好で、高画質の画像を安定して得ることが出来る。
【0024】
本発明の顔料分散剤はアミノ基を構造中に含むため、負帯電性トナーに導入した場合、帯電性能の悪化や、飽和帯電量の悪化は認められず、むしろ帯電の安定性は向上する傾向が見られる。これは顔料分散剤が構造中にアミノ基のみならず、スルホン酸基等、負帯電性を示すイオン性基等を同時に含むため飽和帯電量が低下せず、更には正帯電性基と負帯電性基の双方を含むため外的要因に対して帯電性能の安定化効果が得られるものと推察される。
【0025】
次に本発明の構成について詳細に説明する。
【0026】
〔顔料分散剤〕
本発明の前記一般式(1)で表わされる顔料分散剤は、スルホン酸基などのイオン性基を持つアセト酢酸系ジスアゾ構造を有することに特徴があり、本発明の顔料分散剤は種々の顔料に対する優れた親和性を有しており、広範囲の顔料に使用可能である。また、本発明の顔料分散剤は優れた顔料分散効果を有していることより、トナーに使用される顔料の製造に使用することができる。
【0027】
本発明の前記一般式(1)で表される顔料分散剤は、まず、置換基を有していてもよいジアミノフェニレン、ジアミノビフェニレン、ジアミノナフチレン、または前記一般式(2)で表される構造単位を有するジアミンなどの芳香族ジアミンをキシレン、モノクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどの不活性な溶媒中、ケテンダイマー(ジケテン)、あるいはアセト酢酸エステルを2モル比に反応させ、カップラー(カップリング成分)を合成する。次いで、置換基を有していてもよいスルホン酸基を有する芳香族アミンまたは芳香族ヘテロアミンを常法によりジアゾ化後、上記のカップリング成分に1モル比でカップリングさせ、さらに、スルホン酸基以外の置換基を有していてもよい芳香族アミンまたは芳香族ヘテロアミンを常法により1モル比でジアゾ化後、カップリングさせることによって得ることができる。また、上記のカップリングの順序を逆にしても得ることができる。
【0028】
前記一般式(1)で表される顔料分散剤の製造に使用されるスルホン酸基を有する芳香族化合物アミン(X−NH)としては、スルホン酸化合物として、例えば、o−アミノベンゼンスルホン酸(オルタニル酸)、m−アミノベンゼンスルホン酸(メタニル酸)、p−アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)、4−クロロアニリン−3−スルホン酸、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸、2−アミノフェノール−4−スルホン酸、o−アニシジン−5−スルホン酸、p−アニシジン−5−スルホン酸、o−トルイジン−4−スルホン酸、m−トルイジン−4−スルホン酸、p−トルイジン−2−スルホン酸、2−クロロ−p−トルイジン−3−スルホン酸、2−クロロ−p−トルイジン−5−スルホン酸、3−アミノ−6−クロロトルエン−4−スルホン酸、3−アミノ−6−クロロ−4−スルホ安息香酸、1−アミノ−8−ナフタレンスルホン酸、2−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、5−アミノ−3−ナフタレンスルホン酸、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、6−アミノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、7−アミノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−5−アントラキノンスルホン酸、1−アミノ−8−アントラキノンスルホン酸、1−アミノ−2−アントラキノンスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、6−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−3,6,8−ナフタレントリスルホン酸などが挙げられる。以上において、特に好ましいアミンはスルファニル酸、ナフチオン酸、1−アミノアントラキノン−5−スルホン酸である。
【0029】
前記一般式(1)の顔料分散剤の製造に使用されるアミノ基を有し、スルホン酸基以外の置換基を有していてもよい芳香族または芳香族複素環化合物(Y−NH)としては、例えば、アニリン、トルイジン(o−、m−またはp−)、2,4−キシリジン、3,4−キシリジン、p−クレシジン、アニシジン(o−、m−またはp−)、アミノフェノール(o−、m−またはp−)、アントラニル酸アミド、p−アミノ安息香酸アミド、ニトロアニリン(o−、m−またはp−)、クロロアニリン(o−、m−またはp−)、2,5−ジクロロアニリン、3,4−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2,4,5−トリクロロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−クロロ−2−ニトロアニリン、2,6−ジクロロ−4−ニトロアニリン、o−フルオロアニリン、2,4−ジフルオロアニリン、m−トリフルオロメチルアニリン、2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリン、2−アミノチオフェノール、2−アミノ−5−ニトロベンゾニトリル、2−アミノ−3−ブロモ−5−ニトロベンゾニトリル、ジフェニルアミン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール、3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−4−クロロ−N−フェニルフェニルベンズアミド、3−アミノ−4−クロロ−N−(3−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−4−メトキシ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−4−メトキシ−N−フェニルルベンズアミド、3−アミノ−4−メトキシ−N−(3−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−1,9−アントラピリミジン、2−アミノ−5−ニトロチアゾール、2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール、5−アミノ−3−メチルイソアゾール、3−アミノ−5−ニトロ−2,1−ベンズイソチアゾール、2−アミノ−3,5−ジニトロチオフェン、5−アミノ−4−シアノピラゾールなどが挙げられる。以上において、特に好ましいアミンは3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、1−アミノアントラキノン、3−アミノ−9エチルカルバゾール、2,5−ジクロロアニリンである。
【0030】
前記一般式(1)の顔料分散剤の製造に使用されるジアミノ芳香族化合物(HN−Z−NH)としては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、o−アニシジン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノクロロベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノスチルベンなどが挙げられる。上記において特に好ましいいジアミンは、p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチルフェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−p−フェニレンジアミンである。
【0031】
前記一般式(1)で表わされる顔料分散剤のスルホン酸基はフリーでもよいし、その塩でもよい。例えば、スルホン酸基の如きアニオン性基の場合には、塩を形成する金属としては、例えば、Li、NaおよびKなどのアルカリ金属、Ca、Ba、Al、Mn、Sr、MgおよびNiなどの多価金属が挙げられる。
【0032】
本発明の前記一般式(3)で表わされる顔料分散剤は、スルホン酸基のようなイオン性基を持つ縮合アゾ構造を有することに特徴があり、本発明の顔料分散剤は種々の顔料に対する優れた親和性を有しており、広範囲の顔料に使用可能である。また、本発明の顔料分散剤は優れた顔料分散効果を有していることより、トナーに使用される顔料の製造に使用することができる。
【0033】
本発明の前記一般式(3)で表される化合物を含む顔料分散剤は以下の如く方法で製造することが好ましい。すなわち、先ず、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の酸クロライド化物を、スルホン酸基以外の置換基を有していてもよいジアミノ芳香族化合物またはジアミノ複素環化合物(HN−Z−NH)とをニトロベンゼンなどの不活性な溶媒中、110〜180℃で反応させ下記一般式(4)で表される化合物を生成させる。該一般式(4)で表される化合物を好ましくはアルカリメタノール中に溶解・分散させ、カップリング成分とし、該カップリング成分約1モル当たり、約1モルのスルホン酸基を有する芳香族アミンまたは複素環アミン(第一アミン)を常法によりジアゾ化し、該ジアゾニウム化合物をカップリングさせ、次いで約1モルのスルホン酸基以外の置換基を有していてもよい芳香族アミンまたは複素環アミン(第二アミン)を常法によりジアゾ化し、該ジアゾニウム化合物をカップリングさせることによって得ることができる。
【0034】
【化4】

【0035】
(一般式(4)中、Zは前記一般式(3)におけるZと同義の基を表す。)
上記方法において第二アミンを最初にジアゾ化およびカップリングすると、前記一般式(3)で表される化合物の収率が低い。また、第一アミンおよび第二アミンを同時にジアゾ化およびカップリングした場合にも、前記一般式(3)で表される化合物の生成率が低い。本発明では、第一アミンおよび第二アミンを順次ジアゾ化およびカップリングすることにより、前記一般式(3)で表される顔料分散剤の生成率を向上させることができるので好ましい。
【0036】
前記第一アミンとしては、例えば、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、2−クロロアニリン−3−スルホン酸、4−クロロアニリン−2−スルホン酸、4−クロロアニリン−3−スルホン酸、2,5−ジクロロアニリン−4−スルホン酸、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸、2−アミノフェノール−4−スルホン酸、o−アニシジン−5−スルホン酸、p−アニシジン−5−スルホン酸、o−トルイジン−4−スルホン酸、m−トルイジン−4−スルホン酸、p−トルイジン−2−スルホン酸、2−クロロ−p−トルイジン−3−スルホン酸、2−クロロ−p−トルイジン−5−スルホン酸、4−クロロ−m−トルイジン−2−スルホン酸、3−アミノ−6−クロロトルエン−4−スルホン酸、3−アミノ−6−クロロ−4−スルホ安息香酸、1−アミノ−8−ナフタレンスルホン酸、2−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、5−アミノ−3−ナフタレンスルホン酸、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アミノ−2−ヒドロキシ−4−ナフタレンスルホン酸、6−アミノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、7−アミノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−2−アントラキノンスルホン酸、1−アミノ−5−アントラキノンスルホン酸、1−アミノ−8−アントラキノンスルホン酸、3−アミノカルバゾールスルホン酸、9−アミノアクリジンスルホン酸、6−アミノインダゾールスルホン酸などが挙げられる。特に好ましい第一アミンはスルファニル酸である。
【0037】
また、前記第二アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン(o−、m−またはp−)、2,4−キシリジン、3,4−キシリジン、p−クレシジン、アニシジン(o−、m−またはp−)、アミノフェノール(o−、m−またはp−)、アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、ニトロアニリン(o−、m−またはp−)、クロロアニリン(o−、m−またはp−)、2,5−ジクロロアニリン、3,4−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2,4,5−トリクロロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−クロロ−2−ニトロアニリン、2,6−ジクロロ−4−ニトロアニリン、o−フルオロアニリン、2,4−ジフルオロアニリン、m−トリフルオロメチルアニリン、2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリン、2−アミノチオフェノール、2−アミノ−5−ニトロベンゾニトリル、2−アミノ−3−ブロモ−5−ニトロベンゾニトリル、ジフェニルアミン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール、2−アミノチアゾール、2−アミノ−5−ニトロチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、o−(フェニルスルホニル)アニリン、2−エチルスルホニル−5−トリフルオロメチルアニリン、4−ベンジルスルホニル−o−アニシジン、o−アニシジン−4−スルホンジエチルアマイド、o−アニシジン−4−スルホンエチル、6−ベンズアミド−m−4−キシリジン、4,4−ジクロロ−2−アミノジフェニルエーテル、4−ベンズアミド−2,5−ジメトキシアニリン、9−アミノアクリジン、6−アミノインダゾールなどが挙げられる。特に好ましい第二アミンは2,5−ジクロロアニリンおよび2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリンである。
【0038】
前記一般式(3)で表される顔料分散剤の製造に使用されるジアミノ芳香族化合物(HN−Z−NH)としては、フェニレンジアミン(o−、m−またはp−)、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン、2−シアノ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−5−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、6−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、5−クロロ−1,2−フェニレンジアミン、3,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノクロロベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、o−トリジン、m−トルイレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジンなどが挙げられる。特に好ましいジアミノ芳香族化合物はフェニレンジアミン(o−、m−またはp−)、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミンおよび3,3’−ジクロロベンジジンである。
【0039】
また、前記一般式(3)で表される顔料分散剤のスルホン酸基が塩基との塩である場合の塩基としては、例えば、Li、NaおよびKなどのアルカリ金属;Ca、Ba、Al、Mn、Sr、MgおよびNiなどの多価金属;アンモニア;(モノ、ジまたはトリ)アルキルアミン類、置換または未置換のアルキレンジアミン類、アルカノールアミン類およびアルキルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0040】
〔顔料の分散方法〕
顔料の分散液は、顔料と本発明の顔料分散剤とを水系媒体中に分散することにより調製することができる。顔料の分散処理においては、顔料が均一に分散されることから、水系媒体中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度以上にした状態で行われることが好ましい。顔料の分散処理に使用する分散機は公知の分散機を用いることができる。この工程では、水系媒体中に、顔料と本発明の顔料分散剤、及び界面活性剤を添加した後、公知の方法による機械的エネルギーの作用で分散処理を行って顔料分散液を作製する。機械的エネルギーによる顔料分散を行う分散装置は、特に限定されるものではなく、たとえば高速回転するロータを備えた市販の分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)(エム・テクニック(株)製)」、「ウルトラビスコミル(アイメックス社製)」等が代表的な装置に挙げられる。前述した分散装置の他にも、超音波分散機や機械式ホモジナイザ、マントンゴーリン及び圧力式ホモジナイザ等の装置が挙げられる。これらの装置により水系媒体中に20nmから1000nm前後の顔料の分散粒子を形成し、顔料微粒子分散液とすることができる。
【0041】
また、使用することのできる界面活性剤としては、公知のもの、例えば高級アルコールやアルキルフェノール、脂肪酸エステルエチレングリコール付加物等、市販のノニオン性界面活性剤からHLB9〜12のものを選択するか、アニオン性界面活性剤を選択して使用すればよい。
【0042】
本発明ではトナーの生産安定性の観点からアニオン性界面活性剤が好ましく用いられ、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキル硫酸塩アルキルポリオキシエチレン硫酸塩が好ましく用いることができる。
【0043】
前記顔料分散剤の顔料に対する配合割合は、顔料100質量部に対して、0.5〜20質量部の割合が好ましく、さらに好ましくは3〜7質量部の割合である。分散剤の配合割合が少なすぎると、目的とする分散剤の効果が十分に得られにくくなる。また、分散剤の配合割合が多すぎると、多く用いただけの効果が得られず、逆にその結果得られるトナーの諸物性の低下をもたらし、さらには、分散剤自体の持つ色によって、分散されるべき顔料の色相が大きく変化してしまう。
【0044】
〔顔料分散粒子の粒径〕
本発明の顔料分散粒子の分散粒径は、20nmから1000nmが好ましく、30nmから250nmが更に好ましい。この範囲であれば、画像の彩度が向上し、飽和帯電量の安定が著しい。
【0045】
〔顔料分散粒子の分散粒径測定方法〕
顔料分散粒子の水系媒体中における分散粒径は、体積基準のメディアン径(D50)であり、このメディアン径は、「MICROTRAC UPA150」(HONEYWELL社製)を用いて測定することができる。
【0046】
(測定条件)
(1)サンプル屈折率:1.59
(2)サンンプル比重:1.05(球状粒子換算)
(3)溶媒屈折率 :1.33
(4)溶媒粘度 :30℃にて0.797
20℃にて1.002
測定セルにイオン交換水を入れ、ゼロ点調節を行った。
【0047】
〔顔料分散剤の具体例〕
前記一般式(1)および一般式(3)で表される本発明に有効な顔料分散剤としては、例えば以下のものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(例示化合物1:一般式(1)で表される顔料分散剤)
【0049】
【化5】

【0050】
【化6】

【0051】
(例示化合物2:一般式(3)で表される顔料分散剤)
【0052】
【化7】

【0053】
〔顔料〕
本発明のトナーに使用できる顔料としては、溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン顔料および金属錯体顔料等を好ましく用いることができる。特に好ましい顔料としては、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー15:3等が好ましく用いられる。これらの顔料はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0054】
〔結着樹脂〕
本発明のトナーに含有される結着樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。
【0055】
例えばスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などを用いることができる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0056】
このうち、好ましく用いられるのは、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂であり、特に好ましくはスチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂である。
【0057】
また、各色のトナーが懸濁重合法、乳化凝集法、ミニエマルション重合凝集法などによって製造される場合には、トナー粒子を構成する結着樹脂を得るための重合性単量体として、公知の種々の重合性単量体を用いることができ、重合性単量体としては、例えばビニル系単量体などが挙げられる。
【0058】
スチレン−(メタ)アクリル系共重合体からなる結着樹脂を得るための重合性単量体として、具体的には例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレンあるいはスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル誘導体;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物類;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸、またはメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
また、結着樹脂を得るための重合性単量体として、上記の重合性単量体にイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの置換基を構成基として有するものであって、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルホン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0060】
さらに、重合性単量体として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの多官能性ビニル類を用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0061】
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としてはポリエステル樹脂も好適に用いることができる。一般にポリエステル樹脂は、モノマーとして多価カルボン酸(酸モノマー)と多価アルコールとを重縮合反応することによって得ることが出来る。
【0062】
(多価カルボン酸)
ポリエステル樹脂には、酸モノマーとして他の多価カルボン酸を構成成分として含有することが出来る。これらの多価カルボン酸としては、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。このうち、2価のカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、たとえば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸等を挙げることができる。
【0063】
また、2価のカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、たとえば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
【0064】
多価カルボン酸誘導体としては、多価カルボン酸のアルキルエステル、酸無水物および酸塩化物が例示でき、多価アルコール誘導体としては、多価アルコールのエステル化合物およびヒドロキシカルボン酸が例示できる。
【0065】
(多価アルコール)
また、多価アルコールとしては、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、2価のポリオール(ジオール)は1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等を挙げることができる。また、2価のポリオール以外のポリオールとしては、たとえば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。
【0066】
(ポリエステル樹脂重合用触媒)
本発明のポリエステル樹脂の重合用触媒としては、一般的な公知の触媒が使用可能であり、例えば、チタンテトライソプロポキシド等が挙げられる。
【0067】
〔離型剤〕
本発明のトナーは定着分離性確保の観点から離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、公知のものが使用でき、例えばクエン酸トリベヘネートワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、メタロセン触媒を用いたポリプロピレンワックス、カルナウバワックス、合成エステルワックス等が挙げられる。特に好ましい離型剤としては、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エステルワックス、パラフィンワックスがある。
【0068】
〔荷電制御剤〕
本発明のトナーにおいて、必要に応じて荷電制御剤を添加することが可能である。荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体等が挙げられる。
【0069】
〔外添剤〕
本発明のトナーにおいて、必要に応じて外添剤を添加することが可能である。外添剤としては、公知の疎水性シリカ、疎水性金属酸化物の他に、酸化セリウム粒子或いは炭素数20〜50の高級アルコール粒子を添加することが耐フィルミング性の観点から特に好ましい。酸化セリウム粒子を添加する場合、耐フィルミング性を高める観点から個数平均粒径が150〜800nmのものを用いることが好ましく、250〜700nmのものを用いることがより好ましい。また、酸化セリウム粒子の添加量は、トナーに対して0.5〜3.5質量%とすることが好ましく、0.5〜3.5質量%の範囲とすることにより、良好なクリーニング性が維持されて耐フィルミング性の効果を安定して得ることができる。また、添加量が過剰なケースでは加熱定着時に溶融したトナー粒子の接着力が抑制されて定着強度が低下するが、上記範囲とすることによりこのような定着強度低下の問題も生じない。
【0070】
〔トナーの製造方法〕
本発明のトナーを製造する方法としては特に限定されず、例えば粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、その他の公知の方法などを挙げることができるが、乳化凝集法を用いることが好ましい。この乳化凝集法によれば、製造コストおよび製造安定性の観点から、トナー粒子の小粒径化を容易に図ることができる。
【0071】
ここに、乳化凝集法とは、乳化重合法によって製造された結着樹脂の微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう)の分散液を、着色剤の微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望のトナー粒子径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂微粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の微粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などを含有していてもよい。
【0072】
トナーの製造方法として、乳化凝集法を用いる場合の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)着色剤微粒子の分散液と結着樹脂微粒子の分散液とを混合して、着色剤微粒子および結着樹脂微粒子を凝集、融着させてトナー粒子を形成する工程
(4)トナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(5)トナー粒子を乾燥する工程
(6)トナー粒子に外添剤を添加する工程
乳化凝集法によってトナーを製造する場合においては、乳化重合法によって得られる結着樹脂微粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよく、このような構成の結着樹脂微粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調整し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
【0073】
また、乳化凝集法によってはコア−シェル構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にコア−シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とを凝集、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂微粒子を添加して、コア粒子表面にシェル層用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0074】
特に、本発明のイエロートナーは、水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる分散液と、水系媒体中に結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液とを混合して、着色剤微粒子および結着樹脂微粒子を凝集、融着させる工程を経ることにより得られるものであること、すなわち乳化凝集法などの製造方法により得られるものであることが好ましい。
【0075】
また、トナーの製造方法として、粉砕法を用いる場合の一例を以下に示す。
(1)結着樹脂、着色剤および必要に応じて内添剤をヘンシェルミキサーなどにより混合する工程
(2)得られた混合物を押出混練機などにより加熱しながら混練する工程
(3)得られた混練物をハンマーミルなどにより粗粉砕処理した後、更にターボミル粉砕機などにより粉砕処理を行なう工程
(4)得られた粉砕物を、例えばコアンダ効果を利用した気流分級機を用いて微粉分級処理しトナー粒子を形成する工程
(5)トナー粒子に外添剤を添加する工程
〔トナー粒子の粒子径〕
本発明のトナー粒子の粒子径は、例えば体積基準のメディアン径で4〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜9μmとされる。
【0076】
体積基準のメディアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0077】
トナー粒子の体積基準のメディアン径は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマン・コールター製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター製)を接続した装置を用いて測定、算出する。
【0078】
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作成する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定機において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を100μmにし、測定範囲である2.0〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メディアン径(体積D50%径)とする。
【0079】
〔トナーの軟化点温度〕
本発明のトナーの軟化点温度(Tsp)は70℃以上130℃以下となるものが好ましく、70℃以上120℃以下となるものがより好ましい。本発明に用いられる各色のトナーを構成する着色剤は、熱の影響を受けてもスペクトルが変化することのない安定した性質を有するものであるが、軟化点温度(Tsp)が上記範囲であることにより定着時にトナーに加わる熱の影響をより低減させることができる。従って、着色剤に負担をかけずに画像形成が行えるので、より広く安定した色再現性を発現させることが期待される。
【0080】
また、トナーの軟化点温度(Tsp)が上記範囲であることにより、従来技術よりも低い温度でトナー画像定着が行えることができ、電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成を実現することができる。
【0081】
なお、トナーの軟化点温度(Tsp)は、例えば、以下の方法を単独で、または、組み合わせることにより制御することができる。すなわち、
(1)結着樹脂を形成すべき単量体の種類や組成比を調節する。
(2)連鎖移動剤の種類や添加量により結着樹脂の分子量を調節する。
(3)離型剤等の種類や添加量を調節する。
【0082】
〔軟化点温度測定〕
トナーの軟化点温度(Tsp)の測定方法は、例えば「フローテスターCFT−500(島津製作所社製)」を用い、高さ10mmの円柱形状に成形し、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーより1.96×10Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより当該フローテスターのプランジャー降下量−温度間の曲線(軟化流動曲線)を描き、最初に流出する温度を溶融開始温度、降下量5mmに対する温度を軟化点温度とする。
【0083】
〔トナーのガラス転移点〕
本発明のトナーは、そのガラス転移点(Tg)が20〜90℃であることが好ましく、より好ましくは30〜65℃である。
【0084】
〔ガラス転移温度の測定〕
本発明のトナーのガラス転移温度は、DSC−7示差走査カロリーメーター(パーキンエルマー製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー製)を用いて行うことができる。
【0085】
測定手順としては、トナー4.5mg〜5.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パン(KITNO.0219−0041)に封入し、DSC−7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd Heatにおけるデータをもとに解析を行った。
【0086】
ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(ガラス転移点)として示す。
【0087】
〔現像剤〕
本発明のイエロートナーは、非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
【0088】
二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛などの合金、フェライトおよびマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散したバインダー型キャリアなどを用いることもできる。コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0089】
キャリアの体積基準のメディアン径は、20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜60μmである。
【0090】
キャリアの体積基準のメディアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0091】
〔転写材〕
本発明のイエロートナーの画像形成に用いられる転写材としては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0092】
次に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0093】
〔本発明の顔料分散剤の合成〕
(合成例1:顔料分散剤(A)の合成)
攪拌しながら、N,N’−(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)ビス(3−オキソブタンアミド)6.1質量部を、水酸化ナトリウム1.8質量部を溶かしたメタノール100質量部に溶解させた。これに酢酸5.0質量部を加えてスラリーにした(下漬液)。別に、スルファニル酸3.5質量部を炭酸ナトリウム1.2質量部と水30質量部に溶かし、濃塩酸5.3質量部を加えてスラリーとし、10℃以下で30%亜硝酸ナトリウム5質量部を加えて1時間攪拌した(ジアゾ液A)。ジアゾ液Aを上記下漬液に10℃以下で加え、酢酸ナトリウムでpH3.0〜3.5に調整して2時間攪拌させた(反応液)。別に、3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド5.4質量部を濃塩酸8.5質量部、50%酢酸30質量部でスラリー状とし、5℃以下で30%亜硝酸ナトリウム5質量部を加えて2時間攪拌した(ジアゾ液B)。ジアゾ液Bを上記の反応液に加え、酢酸ナトリウムでpH3.0〜3.5に調整して5℃以下で5時間攪拌させた。生成物をろ過、水洗後、得られたペーストを水中でリスラリー化して塩酸酸性として1時間攪拌した。ろ過、水洗、乾燥して下記構造で表される顔料分散剤(A)13.6質量部を得た。
【0094】
【化8】

【0095】
(合成例2:顔料分散剤(B)の合成)
合成例1で得られた分散剤(A)の水ペースト(固形分5.0質量部)を水50質量部に加えて十分にスラリー化し、テトラエチルアンモニウムクロリド5.0質量部を加えて3時間攪拌後に混合物をろ過して、フィルターケーキを十分に水洗し、顔料分散剤(B)4.7質量部を得た。
【0096】
【化9】

【0097】
(合成例3:顔料分散剤(K)の合成)
常法により、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸60質量部をニトロベンゼン400質量部中において、塩化チオニル40質量部を用いて酸クロライド化し、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン25質量部を加え130〜135℃で5時間加熱する。冷却後、メタノール200質量部を加え、ろ過しメタノール、次いで水で洗浄、乾燥し、反応生成物60質量部を得た。
【0098】
上記反応生成物10質量部(0.02モル)に、メタノール100質量部、水酸化ナトリウム3質量部、酢酸ナトリウム3水和物11質量部を加えて下漬液とする。スルファニル酸3.5質量部(0.02モル)を常法によりジアゾ化し、上記下漬液にカップリングさせ、1時間後、2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリンを4.3質量部(0.022モル)を常法によりジアゾ化し、カップリングさせ、硫黄の元素分析の結果より1分子あたり平均1個のスルホン酸基が導入されている下記式で表される化合物を主成分とする顔料分散剤(K)15質量部を得た。
【0099】
【化10】

【0100】
(合成例4:顔料分散剤(L)の合成)
合成例3の2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン25質量部の代わりに3,3’−ジクロロベンジジン35質量部を使用する以外は合成例3と同様にして、硫黄の元素分析の結果より1分子あたり平均1個のスルホン酸基が導入されている顔料分散剤(L)15質量部を得た。
【0101】
【化11】

【0102】
〔比較用顔料分散剤の合成〕
(合成例5:顔料分散剤(M)の合成)
1、2−ビス−(2−アミノフェノキシ)−エタン10質量部を、水250質量部に攪拌分散しながら、35質量%塩酸24質量部を加えた。1時間攪拌後、氷浴中、40質量%亜硝酸ソーダ15質量部を加え、ジアゾ化反応を行った。一時間以上攪拌後、過剰の亜硝酸イオンを除去するため、4.4質量部のスルファミン酸を加え10分以上攪拌してビスジアゾニウム塩溶液の調整を行った。
【0103】
一方、3−オキソ−N−フェニル−ブタンアミド7.6質量部を水175質量部中に加え、さらに、25質量%苛性ソーダ20質量部を加え、攪拌溶解した。また2−〔(1、3−ジオキソブチル)アミノ〕−安息香酸9.5質量部を水175質量部中に加え、さらに、25%苛性ソーダ20質量部を加え、攪拌溶解した。
【0104】
水200質量部に90質量%酢酸16.7質量部を加え、さらにこの中に20質量%苛性ソーダを加えてpHを6.0に調整した。氷浴で内温を20℃に保持しながら、前記ビスジアゾニウム塩溶液および2−〔(1、3−ジオキソブチル)アミノ〕−安息香酸溶液を、同時に滴下してカップリング反応を行った。このときカップリング混合物中で過剰のジアゾニウム塩を検出し得ないように注意しながら、約90分で2−〔(1、3−ジオキソブチル)アミノ〕−安息香酸溶液を滴下し終えた。2−〔(1、3−ジオキソブチル)アミノ〕−安息香酸溶液を滴下終了後、ビスジアゾニウム塩溶液の滴下を中断し15分以上攪拌後、ビスジアゾニウム塩溶液および3−オキソ−N−フェニル−ブタンアミド溶液を同時に滴下してカップリング反応を続行した。カップリング混合物中で過剰のジアゾニウム塩を検出し得ないように注意しながら、約90分で3−オキソ−N−フェニル−ブタンアミド溶液を滴下し終え、カップリングを終了させた。なおカップリング中は約20質量%苛性ソーダ溶液を適時滴下して、常にカップリング反応溶液内のカップリングpHを6.0になるように調整した。
【0105】
カップリング終了後、90℃に加温し、2時間保持した。次いで、ろ過、水洗し、90℃の乾燥機で乾燥した。得られた固形物をジューサーミキサーで粉砕し、下記式で表される顔料分散剤(M)を得た。
【0106】
【化12】

【0107】
〔トナー用結着樹脂「樹脂微粒子A」の作成〕
トナーの構成材料となる結着樹脂として、以下に離型剤を含有する「樹脂微粒子A」の調製方法を示す。
【0108】
(「樹脂微粒子(1H)」の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部とイオン交換水3000質量部を添加し、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら内温を80℃に昇温した。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を添加して、液温を80℃に調整した。
【0109】
次に、下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体混合液を反応容器に1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌して重合を行い、樹脂微粒子を調製した。これを「樹脂微粒子(1H)」とする。
【0110】
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 16質量部
(「樹脂微粒子(1HM)」の作製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた溶液を添加した。反応容器を、98℃に加熱後、前記「樹脂微粒子(1H)」を260質量部と、下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体混合液をそのまま添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEAMIX(エム・テクニック(株)製)」を用いて1時間混合分散させて乳化粒子(油滴)を含有する分散液を調製した。
【0111】
スチレン 245質量部
n−ブチルアクリレート 120質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.5質量部
ポリエチレンワックス(融点81℃) 190質量部
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を添加し、82℃の温度下で1時間加熱撹拌して重合を行い、樹脂微粒子を得た。これを「樹脂微粒子(1HM)」とする。
【0112】
(「樹脂微粒子A」の作製)
更に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させてなる重合開始剤溶液を添加し、82℃の温度下で下記に示す化合物を含有してなる重合性単量体溶液を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し樹脂微粒子を得た。これを「樹脂微粒子A」とする。
【0113】
スチレン 435質量部
n−ブチルアクリレート 130質量部
メタクリル酸 33質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
〔トナーの作成〕
(実施例1:トナーAの作製)
C.I.ピグメントレッド122を20部、合成例1で得られた顔料分散剤(A)を水139部に加え、プレミキシングの後、ビーズミルの循環式ウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、0.3mmジルコニアビーズを80体積%充填し、送液速度が1kg/時間、ディスク周速度が8m/秒の条件で5回循環して、「顔料分散液A」を作製した。
【0114】
次に、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、下記物質を添加し、液温を30℃に調整した。
【0115】
「樹脂微粒子A」 300質量部(固形分換算)
イオン交換水 1400質量部
「顔料分散液A」 120質量部
5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整し、塩化マグネシウム35質量部をイオン交換水35質量部に溶解させた30℃の水溶液を、撹拌状態にある反応系中に10分間かけて添加した。そして、添加後3分経過してから昇温を開始し、反応系を60分間かけて90℃まで昇温し、凝集を進行させた。凝集により形成される粒子の大きさは「マルチサイザー3」で観察した。体積基準におけるメディアン径(D50)が6.5μmになった時、20%塩化ナトリウム水溶液750質量部を添加して凝集を停止させた。
【0116】
20質量%塩化ナトリウム水溶液添加後、液温を98℃にして撹拌を継続し、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2100」で粒子の平均円形度を観察しながら、凝集した樹脂微粒子の融着を進行させた。平均円形度が0.965になった時、液温を30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを4.0に調整し、撹拌を停止した。
【0117】
上述した凝集・融着工程にて生成した粒子をバスケット型遠心分離機「MARKIII型式番号60×40(松本機械(株)製)」で固液分離し、粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μmS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して粒子を作製した。
【0118】
更に得られた粒子に、疎水性シリカ(数平均1次粒子径=12nm)を1質量%、疎水性チタニア(数平均1次粒子径=20nm)を0.3質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナーA」を作製した。
【0119】
(実施例2〜4:トナーB、C、Dの作製)
実施例1の顔料分散剤(A)の代わりにそれぞれ合成例2〜4で得られた顔料分散剤(B)、(K)、(L)を使用し、その他は実施例1と同様にして、「トナーB」、「トナーC」、「トナーD」を作製した。
【0120】
(実施例5、6:トナーE、Fの作製)
実施例1の顔料C.I.ピグメントレッド122の代わりにそれぞれC.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントブルー15:3を使用し、その他は実施例1と同様にして、「トナーE」、「トナーF」を作製した。
【0121】
(実施例7:トナーGの作製)
顔料分散剤(A)を10部使用すること以外は実施例1、と同様にして、「トナーG」を作製した。
【0122】
(比較例1、2:トナーH、Iの作製)
顔料分散剤(A)を使用しないこと以外は実施例1、実施例5と同様にして、「トナーH」、「トナーI」を作製した。
【0123】
(比較例3:トナーJの作製)
実施例1の顔料分散剤(A)の代わりに合成例5で得られた顔料分散剤(M)を使用し、その他は実施例1と同様にして、比較用トナーJを作製した。
【0124】
作製したトナーに用いた顔料分散剤及び顔料種、それぞれの添加部数を表1に整理する。
【0125】
【表1】

【0126】
上記のようにして得られた表1のトナーについて、飽和帯電量、帯電安定性及び、定着画像の色特性の評価を行った。
【0127】
〔飽和帯電量、帯電安定性〕
トナー組成物0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)20gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを23℃、50%R.H.で8時間以上調湿した後、ターブラーシェーカーミキサーにて50rpm×1、3、5、10、20及び60分間摩擦撹拌し、それぞれの時間毎に帯電量を測定した。測定にはブローオフ帯電量測定装置[東芝ケミカル(株)製]を用いた。摩擦時間10分の帯電量をもって飽和帯電量とした。また、摩擦時間60分の帯電量/摩擦時間10分の帯電量を計算し、帯電安定性とした。
【0128】
〔飽和帯電量の評価基準〕
◎:飽和帯電量の絶対値が25μC/g以上
○:飽和帯電量の絶対値が20μC/g以上、25μC/g未満
△:飽和帯電量の絶対値が15μC/g以上、20μC/g未満
×:飽和帯電量の絶対値が15μC/g未満
〔帯電安定性の評価基準〕
◎:0.8以上
○:0.7以上、0.8未満
△:0.6以上、0.7未満
×:0.6未満
トナーの定着画像は、以下のようにして作成した。定着画像の作成には市販の複合機bizhub920(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)、A4サイズoriginal80紙(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用いた。トナー付着量は0.3mg/cm、定着温度170℃で評価を行った。
【0129】
得られた定着画像について、色再現性(色彩値)を評価した。色再現性の評価は、定着画像のCIEのL、a、bを測定した。具体的には、ISO/CD13655に基づき、X−Rite社製色差計938Spectrodentitometer(測定光源CIE−D65)を用いて測定を行った。
【0130】
これより、L表色系による色差を下記式(1)(JIS Z8730)、及び彩度を下記式(2)(JIS Z8729)によって求めた。
【0131】
式(1)
ΔEab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
ここで、ΔEabは、L表色系による色差を表しており、ΔL、Δa、ΔbはJIS Z8729に規定するL表色系におけるふたつの物体色のCIE明度Lの差及び色座標a、bの差である。基準となる色はISO/Japan Colorオフセット枚様印刷色標準Japan Color色再現印刷2001解説書記載のアート紙標準色を使用した。一般的にΔEabが3以上の差があると、人が見たときに色差が有ると認識される。
【0132】
式(2)
ab=[(a+(b1/2である。
【0133】
ここで、Cabは、彩度を表す。
【0134】
トナーの着色力は、上記定着画像をX−Rite社製色差計938Spectrodentitometer(測定光源CIE−D65)を用いて画像濃度の測定を行った。表1のトナーの飽和帯電量、帯電安定性及び、定着画像の色特性を下記表2に示す。
【0135】
【表2】

【0136】
表2の結果から、実施例1〜実施例7のトナーは、比較例1〜比較例3のトナーに対して彩度、着色力、及び色差といった定着画像の色特性と、飽和帯電量、帯電安定性などの現像特性に優れていることがわかる。本発明の請求項に記載の顔料分散剤をトナーに使用することで、トナーの現像性能を悪化させることなく、トナー中の顔料分散性を向上させることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、顔料、及び顔料分散剤を含有するトナーであって、該顔料分散剤が下記の一般式(1)或いは一般式(3)のジスアゾ化合物であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【化1】

(但し、一般式(1)中のXはスルホン酸基を1個以上有し、かつ他の置換基を有していてもよい芳香族環または芳香族複素環残基であり、Yはスルホン酸基以外の置換基を有していてもよい芳香族環または芳香族複素環残基であり、Zは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基または下記一般式(2)で表される基である。)
【化2】

(但し、一般式(2)中のRは各々同じでも異なっていてもよく、水素原子または置換基を表し、LはO、CH、HNCO、S、N=NまたはCH=CHを表す。)
【化3】

(但し、一般式(3)中のXはスルホン酸基を1個以上有しかつ置換基を有していてもよい芳香族環基または複素環基であり、Yはスルホン酸基以外の置換基を有していてもよい芳香族環基または複素環基であり、Zはスルホン酸基以外の置換基を有していてもよい芳香族環基または複素環基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、Xが、スルファニル酸のカップリング残基であり、Zが、2,5−ジメチルフェニレンジアミンの縮合残基であり、Yが、3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミドのカップリング残基であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記一般式(3)において、Yが、4−スルホフェニル基であり、Xが、2−クロロ−5−トリフロオロメチルフェニル基、Zが、スルホン酸基以外の置換基を有してもよいフェニル基またはビフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。

【公開番号】特開2012−159708(P2012−159708A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19551(P2011−19551)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】