説明

静電霧化装置

【課題】静電霧化により発生して対向電極の開口部から外部に放出される発生成分の放出割合や性質を可変できる。
【解決手段】放電電極1と、放電電極1から距離を隔てて位置する対向電極2と、放電電極1に水を供給する水供給手段3と、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加する高電圧印加手段4とを具備し、放電電極1が保持する水に高電圧を印加して帯電微粒子水を放出する静電霧化装置5である。対向電極2は開口縁部が電極部となった開口部16を有し、該対向電極2の開口部16の径を可変自在とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電霧化現象を利用して帯電微粒子水を生成する静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1などにより、放電電極1と、放電電極1から距離を隔てて位置する対向電極2と、放電電極1に水を供給する水供給手段3と、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加する高電圧印加手段4とを具備し、放電電極1が保持する水に高電圧を印加して帯電微粒子水を放出する静電霧化装置5が知られている。上記特許文献1に示されるものは図6に示す概略構成図のようなもので、水供給手段3としては、ペルチェユニット10の冷却部11に放電電極1を接続することで構成してあり、放電電極1を冷却することで、空気中の水分を結露水として生成して放電電極1に供給するようにしている。
【0003】
この静電霧化装置5は、高電圧印加手段4によって放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加することで電界を発生させ、放電電極1が保持する水にマイナスの電荷を集中させることで水に分裂、飛散を繰り返す静電霧化現象を発生させ、この静電霧化現象によって、活性種(ラジカル)を含む弱酸性のナノメータサイズの帯電微粒子水を生成し、このようにして生成した帯電微粒子水は、電気力線に乗せて装置外の空間へと放出され、高い保湿効果、脱臭効果、及びダニや花粉等のアレルゲン物質の不活性効果等を発揮する。
【0004】
上記静電霧化装置5からの発生成分は、帯電微粒子水の他に空気負イオンを発生させるのであるが、対向電極2が図6に示す特許文献1のような中央部に開口部16を有するリング板状のものの場合、対向電極2の中央の開口部16から放出される空気負イオンの量は対向電極2の開口部16の径により変化する。
【0005】
つまり、空気負イオンは帯電微粒子よりもはるかに小さいため、慣性力の影響を受けず、開口部16の径が小さいと放電電極1に吸引される量が多くなり、したがって、空気負イオンの開口部16からの放出量が少なく、開口部16の径が大きくなると空気負イオンの開口部16からの放出量が多くなる。一方、静電霧化の際に電気力線により開口部16から外部に放出する方向の力が与えられて開口部16側に向けて移動した帯電微粒子水はナノメータサイズであるとはいえ空気負イオンよりもはるかに大きいため慣性力により電極部6に吸引されずにそのまま開口部16から外部に放出される量が多くなる。したがって、開口部16の径により静電霧化で発生する帯電微粒子水と空気負イオンとの開口部16から外部に放出される放出割合は異なるのである。
【0006】
また、図7に示すような対向電極2が放電電極1を向く内面が半球面状をし且つ頂部が開口部16となっている場合には空気負イオンが殆ど放出されず、帯電微粒子水が開口部16から放出されることになる。
【0007】
これは、空気負イオンは帯電微粒子水よりもはるかに小さいため、内面が半球面状となり且つ頂部に開口部16を有する対向電極2においては略半球状をした内面に吸引されてしまって、頂部の開口部16から外部には殆ど放出されないからである。
【0008】
ところで、本発明者は本発明に至る過程で、上記のような内面が半球面状をし且つ頂部が開口部16となった対向電極2につき更に研究を重ねた結果、内面が半球面状をし且つ頂部が開口部16となった対向電極2の開口部16の径が変わると帯電微粒子水の性質が変化することを突き止めた。
【0009】
しかしながら、対向電極2の開口部16の径を変化させて静電霧化により発生させて開口部16から外部に放出される発生成分や性質を変えるものは従来なかった。
【特許文献1】特開2005−131549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、静電霧化により発生して対向電極の開口部から外部に放出される発生成分の外部への放出割合や性質を可変することができる静電霧化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る静電霧化装置は、放電電極1と、放電電極1から距離を隔てて位置する対向電極2と、放電電極1に水を供給する水供給手段3と、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加する高電圧印加手段4とを具備し、放電電極1が保持する水に高電圧を印加して帯電微粒子水を放出する静電霧化装置5において、上記対向電極2は静電霧化により生成した生成物を外部に放出するための開口部16を有し、該対向電極2の開口部16の径を可変自在として成ることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成とすることで、対向電極2の開口部16の径を変えることで、開口部16から外部に放出される静電霧化により発生する発生成分の外部への放出割合を変えたり、発生成分の性質を変えたりすることが可能となる。
【0013】
また、リング板25に、リング板25の周方向に一定間隔でそれぞれ複数枚の羽根26を軸27を中心に回転自在に取付けて、該複数枚の羽根26を正面視で中央部に複数枚の羽根26の内縁部で囲まれた開口部16が形成されるように隣合う羽根26をそれぞれ一方向回りに順次重ね合わせることで対向電極2を形成し、該対向電極2の複数枚の羽根26の重ね合わせ量を可変することで開口部16の径を可変自在とすることが好ましい。
【0014】
このような構成とすることで、複数枚の羽根26の重ね合わせ量を可変するという簡単な構成で、開口部16の径を可変して開口部16から外部に放出される静電霧化により発生する発生成分の外部への放出割合を変えたり、発生成分の性質を変えたりすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記のように対向電極の開口部の径を可変自在とするので、開口部から外部に放出される発生成分の放出割合や性質を可変することができ、これにより対向電極の開口部から外部に放出される静電霧化で発生させた発生成分の外部への放出割合や性質を使用目的に応じて容易に選択することができる。
【0016】
また、複数枚の羽根を正面視で中央部に複数枚の羽根の内縁部で囲まれた開口部が形成されるように丸く一方に回るように重ね合わせたものにおいては、複数枚の羽根の重ね合わせ量を可変することで開口部の径を変えるという簡単な構成で開口部の径を変えて対向電極の開口部から外部に放出する発生成分の放出割合や性質を使用目的に応じて容易に変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0018】
静電霧化装置5は、放電電極1と、放電電極1と対向する対向電極2と、放電電極1に水を供給する水供給手段3と、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加する高電圧印加手段4とを具備したものである。
【0019】
図1には本発明の静電霧化装置5の一実施形態の概略構成図が示してある。図1に示す実施形態においてはペルチェユニット10のような冷却手段により空気中の水分を冷却して結露水を生成することで放電電極1に水を供給するようになっている。したがって、本実施形態ではペルチェユニット10のような冷却手段が放電電極1に水を供給する水供給手段3を構成している。
【0020】
ペルチェユニット10は、熱伝導性の高いアルミナや窒化アルミニウムからなる絶縁板の片面側に回路を形成してある一対のペルチェ回路板12を、互いの回路が向き合うように対向させ、多数列設してある例えばBiTe系の熱電素子13を両ペルチェ回路板12間で挟持すると共に隣接する熱電素子13同士を両側の回路で電気的に接続させ、ペルチェ入力リード線23を介してなされる熱電素子13への通電により一方のペルチェ回路板12側から他方のペルチェ回路板12側に向けて熱が移動するように構成したものである。更に、上記一方の側のペルチェ回路板12の外側には冷却部11を接続してあり、また、上記他方の側のペルチェ回路板12の外側には放熱部14が接続してあり、実施形態では放熱部14として放熱フィンの例が示してある。ペルチェユニット10の冷却部11には放電電極1の後端部が接続してある。
【0021】
放電電極1は絶縁材料からなる筒状をした基材15で囲まれており、該基材15の先端開口部15aに対向電極2が配設してある。
【0022】
ここで、本発明においては、対向電極2は開口縁部が電極部6となった開口部16を有したもので、この対向電極2の開口部16は径が可変する構造となっている。
【0023】
図1乃至図3には開口部16の径が可変する構造となった対向電極2の一例が示してある。
【0024】
この図1乃至図3において、対向電極2は、筒状をした基材15の先端開口部15aに取付けられるリング板25に複数枚の羽根26を取付けることで構成してある。
【0025】
すなわち、リング板25に、リング板25の周方向に一定間隔でそれぞれ複数枚の羽根26を軸27を中心に回転自在に取付けてある。複数枚の羽根26は、隣合う羽根26をそれぞれ一方向回りに順次重ね合わせてあり、このように複数枚の羽根26を一方向回りに順次重ね合わせることで、正面視で中央部に複数枚の羽根26の内縁部により開口部16が形成されるように構成してあり、複数枚の羽根26の重ね合わせ量を可変することで開口部16の径が可変自在となっている。
【0026】
図1乃至図3に示す実施形態では、リング板25にリング状をした回動板29が回動自在に重ねてあり、回動板29に周方向に一定間隔で突設した複数のピン30を、リング板25に周方向に一定間隔で設けた複数の弧状長孔31にスライド自在にはめ込んであり、更に、各複数のピン30の先端部が各羽根26に設けた軸27側に向けて長くなった長孔32にスライド自在に嵌め込んである。
【0027】
上記リング板25は基材15の先端開口部15aに取付けてあり、回動板29をリング板25に対して回動して、各ピン30を弧状長孔31に沿って移動することで、各ピン30が軸27側に向けて長くなった長孔32の縁部を押しながら移動することになり、これにより各羽根26が軸27を中心に時計回り方向又は反時計回り方向に回転して複数枚の羽根26の内縁部により形成される開口部16の径を可変するようになっている。
【0028】
上記例では複数枚の羽根26を用いて開口部16の径を可変する構造の一例を示したが、この例にのみ限定されるものではなく、開口部16の径を可変できるものであれば、他の構造のものであってもよい。
【0029】
本発明の静電霧化装置5は、高電圧印加手段4によって放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加することで電界を発生させ、放電電極1が保持する水にマイナスの電荷を集中させることで水に分裂、飛散を繰り返す静電霧化現象を発生させ、この静電霧化現象によって、活性種(ラジカル)を含む弱酸性のナノメータサイズの帯電微粒子水を生成し、このようにして生成した帯電微粒子水は、電気力線に乗せて装置外の空間へと放出され、高い保湿効果、脱臭効果、及びダニや花粉等のアレルゲン物質の不活性効果等を発揮する。
【0030】
ところで、静電霧化装置5からの発生成分は、帯電微粒子水の他に空気負イオンを発生させるのであるが、本発明においては、対向電極2の開口部16の径を可変自在としてあるので、対向電極2の開口部16を可変することで、対向電極2の開口部16を通過して外部に放出される帯電微粒子水と空気負荷イオンとの放出割合を可変することができる。
【0031】
すなわち、空気負イオンは帯電微粒子よりもはるかに小さいため、慣性力の影響を受けず、開口部16の径が小さいと放電電極1に吸引される量が多くなり、したがって、空気負イオンの開口部16からの放出量が少なく、開口部16の径が大きくなると空気負イオンの開口部16からの放出量が多くなる。
【0032】
一方、静電霧化の際に電気力線により開口部16から外部に放出する方向の力が与えられて開口部16側に向けて移動した帯電微粒子水はナノメータサイズであるとはいえ空気負イオンよりもはるかに大きいため慣性力により電極部6に吸引されずにそのまま開口部16から外部に放出される量が多くなる。
【0033】
したがって、本実施形態においては、開口部16の径を可変することで静電霧化で発生する発生成分である帯電微粒子水と空気負イオンとの開口部16から外部に放出される放出割合を変えることができる。
【0034】
図4、図5には本発明の他の実施形態が示してある。本実施形態においては、リング板25’の内周縁部に周方向に一定間隔で複数の羽根26’の下端を回動自在に軸27’を中心に回動自在に取付けてある。羽根26’はリング板15の内周の曲率半径とほぼ同じ曲率半径をした断面円弧状となっており、リング板25’の表面と羽根26’とのなす角度を可変自在とするようにリング板25’の表面に対して起倒自在に軸27’により軸支してある。また、複数枚の羽根26’は、隣合う羽根26’をそれぞれ一方向回りに順次重ね合わせてあり、このように複数枚の羽根26’を一方向回りに順次重ね合わせることで、リング板25’から表面側に突出する略半球形状をし且つ頂部が開口部16’となった曲面体よりなる対向電極2を構成するようになっており、隣合う断面円弧状をした羽根26’同士の重ね合わせ量を可変することで、頂部開口部16’の径を変えることができるようになっている。
【0035】
上記リング板25’は基材15の先端開口部15aに取付けてある。
【0036】
本実施形態では放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加して放電電極1の先端部に供給された水を空気中で静電霧化することによりラジカルを含む弱酸性のナノメータサイズの帯電微粒子水、空気負荷イオンが発生するのは前述の実施形態と同様であるが、本実施形態においては、対向電極2がリング板25’から表面側に突出する略半球形状をし且つ頂部が開口部16’となった曲面体よりなるので、略半球形状をし且つ頂部が開口部16’となった曲面体よりなる対向電極2の頂部の開口部16’から帯電微粒子水は放出されるが、空気負イオンは殆ど放出されない。
【0037】
これは、帯電微粒子水は電気力線により開口部16’から外部に放出する方向の力が与えられて開口部16’側に向けて移動するとナノメータサイズであるため略半球状をした対向電極2に吸引されるものが比較的少なくて慣性力によりそのまま開口部16’から外部に放出されるが、空気負イオンは帯電微粒子水よりもはるかに小さいため、内面が半球面状となり且つ頂部に開口部16’を有する対向電極2の場合は頂部の開口部16’に至るまでの間に略半球面状となった対向電極2の内面に吸引されてしまって、頂部の開口部16’から外部には殆ど放出されないからである。
【0038】
しかしながら、本実施形態においては、羽根26’の重複量を変えることで、曲面体よりなる対向電極2の頂部の開口部16’の径を変えることができる。
【0039】
そして、実験によれば、内面が略半球面状となった対向電極2の開口部16’の径が変わると、理由は不明だが開口部16’の径を小さくすると酸性が強くなり、また、開口部16’の径が大きくなると開口部16’から外部に放出されるラジカルの絶対量が増えることが判明した。したがって、羽根26’の重複量を多くして開口部16’の径を小さくすると酸性が強くなり、重複量を少なくして開口部16’の径を大きくすると開口部16
から放出されるラジカル量が増えることになる。
【0040】
このように、上記各実施形態においては、対向電極2の開口部16’の径を変えることで、対向電極2の開口部16(16’)から外部に放出される静電霧化により発生する発生成分の放出割合や性質を可変することができる。
【0041】
次に、上記各実施形態に示す静電霧化装置5の使用の一例につき説明する。すなわち、本発明の静電霧化装置5は形状の異なる複数の電極部6の中から任意の形状の電極部6を選択的に放電電極1に対向させるようにして静電霧化における発生成分の外部への放出割合や性質を可変するのであるが、本発明の静電霧化装置5は様々な機器に組み込んで使用することができる。
【0042】
なお、上記各実施形態では放電電極1を冷却して空気中の水分を結露させることで放電電極1に水を供給するようにした例を示したが、水供給手段3としてタンクなどの水溜め部に溜めた水を毛細管現象などにより放電電極1に供給するようにしたものであってもよいのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】(a)は対向電極の開口部の径を大きくした場合の概略構成図であり、(b)は同上の開口部の径を小さくした場合の概略構成図である。対向電極の一実施形態を示す平面図である。
【図3】同上の対向電極の分解斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示し、(a)は対向電極の開口部の径を小さくした場合の概略構成図であり、(b)は同上の開口部の径を大きくした場合の概略構成図である。
【図5】同上の対向電極の斜視図である。
【図6】従来例の静電霧化装置の一例の概略構成図である。
【図7】従来例の静電霧化装置の他例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0044】
1 放電電極
2 対向電極
3 水供給手段
4 高電圧印加手段
5 静電霧化装置
16 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、放電電極から距離を隔てて位置する対向電極と、放電電極に水を供給する水供給手段と、放電電極と対向電極との間に高電圧を印加する高電圧印加手段とを具備し、放電電極が保持する水に高電圧を印加して帯電微粒子水を放出する静電霧化装置において、上記対向電極は静電霧化により生成した生成物を外部に放出するための開口部を有し、該対向電極の開口部の径を可変自在として成ることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
リング板に、リング板の周方向に一定間隔でそれぞれ複数枚の羽根を軸を中心に回転自在に取付けて、該複数枚の羽根を正面視で中央部に複数枚の羽根の内縁部で囲まれた開口部が形成されるように隣合う羽根をそれぞれ一方向回りに順次重ね合わせることで対向電極を形成し、該対向電極の複数枚の羽根の重ね合わせ量を可変することで開口部の径を可変自在として成ることを特徴とする請求項1記載の静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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